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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】荷役支援システム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
B66F9/24 L
B66F9/24 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019020420
(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公開番号】P2020128270
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】井上 順治
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩伸
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-20881(JP,A)
【文献】特開2007-084162(JP,A)
【文献】特開平11-106198(JP,A)
【文献】特開2000-318996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 9/06
B66F 9/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークを備えた荷役装置と、前記フォークの揚高を検出する揚高センサと、を有するフォークリフトを備え、
荷載置面を有する荷棚に対する前記フォークリフトの荷役作業の支援を行う荷役支援システムにおいて、
前記揚高センサが検出する前記フォークの揚高および前記フォークが支持するパレットの寸法に基づいて前記パレットの底面の高さを求めるとともに、予め設定された値又はオペレータの入力により前記荷載置面の高さを求める制御装置と、
前記荷載置面の高さおよび前記パレットの底面の高さを横棒として描画表示する表示装置と、を備えることを特徴とする荷役支援システム。
【請求項2】
前記パレットにより支持される荷の高さが予め前記制御装置に設定され、
前記表示装置は、前記パレットの底面および前記荷載置面とともに前記荷を描画表示することを特徴とする請求項1記載の荷役支援システム。
【請求項3】
前記表示装置は、前記荷載置面と前記パレットの底面との離間距離を数値表示することを特徴とする請求項1又は2記載の荷役支援システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記荷載置面に前記パレットが載置されているとき、前記パレットを前記表示装置に描画表示することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の荷役支援システム。
【請求項5】
前記荷棚は、上下方向に複数の前記荷載置面を有し、
前記表示装置は、前記複数の荷載置面の高さおよび前記パレットの底面の高さを横棒として描画表示することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の荷役支援システム。
【請求項6】
前記フォークリフトの走行および前記荷役装置による荷役を遠隔操作する遠隔操作装置を備え、
前記遠隔操作装置は、前記表示装置を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の荷役支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォークリフトの荷役を支援する荷役支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、立体倉庫におけるフォークリフトの作業で、運転者がフォークと立体倉庫の棚との高さ関係を簡単に認知することができ、確実かつ迅速な荷の入出庫作業を可能としたフォークリフトが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
特許文献1に開示されたフォークリフトは、立体倉庫の送信機より送信された立体倉庫の各棚の高さ情報を受信する受信機と、フォークの高さを検出する揚高検出器と、を備えている。また、このフォークリフトは、受信機の受信信号をもとに各棚のフォーク差込口高さを演算し、揚高検出器の検出値に最も近いフォーク差込口高さの演算値と揚高検出器の検出値を比較する制御装置を備えている。制御装置は、この比較値に基づき、フォーク差込口高さよりフォークが、一定範囲内の低い位置、一定範囲内の高い位置、同じ高さ位置の各々に応じて三種類のランプを点灯させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-106198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、フォーク差込口高さよりフォークが、一定範囲内の低い位置、一定範囲内の高い位置、同じ高さ位置の各々に応じて三種類のランプを点灯させる。このため、実際にパレット底面と棚の載置面との間にどの程度の距離があるのかが直感的に分かりにくいという問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、オペレータが荷役を対象とする荷載置面を確実に把握でき、フォークに差し込まれたパレットの底面と荷載置面との間の離間状況を確認することができる荷役支援システムの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、フォークを備えた荷役装置と、前記フォークの揚高を検出する揚高センサと、を有するフォークリフトを備え、荷載置面を有する荷棚に対する前記フォークリフトの荷役作業の支援を行う荷役支援システムにおいて、前記揚高センサが検出する前記フォークの揚高および前記フォークが支持するパレットの寸法に基づいて前記パレットの底面の高さを求めるとともに、予め設定された値又はオペレータの入力により前記荷載置面の高さを求める制御装置と、荷載置面の高さおよび前記パレットの底面の高さを横棒として描画表示する表示装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、制御装置は、揚高センサにより検出されるフォークの揚高および制御装置に予め設定されるパレットの寸法に基づいてパレットの底面の高さを求める。荷棚が備える荷載置面の高さは、予め設定された値又はオペレータの入力により求められる。表示装置は、荷載置面の高さおよびパレットの底面の高さを横棒として描画表示する。このため、オペレータは、表示装置を確認することにより、荷役を対象とする荷載置面を確実に把握でき、フォークに差し込まれたパレットの底面と荷載置面との間の離間距離を確認することができる。
【0009】
また、上記の荷役支援システムにおいて、前記パレットにより支持される荷の高さが予め前記制御装置に設定され、前記表示装置は、前記パレットの底面および前記荷載置面とともに前記荷を描画表示する構成としてもよい。
この場合、フォークに支持される荷がパレットの底面および荷載置面とともに表示装置に描画表示される。このため、オペレータは、パレットに支持されている荷と荷の上側の荷載置面との干渉の有無を確認することができる。
【0010】
また、上記の荷役支援システムにおいて、前記表示装置は、前記荷載置面と前記パレットの底面との離間距離を数値表示する構成としてもよい。
この場合、荷載置面とパレットの底面との離間距離が表示されることにより、オペレータは、荷載置面とパレットの底面との間がどれだけ離れているかを把握することができる。
【0011】
また、上記の荷役支援システムにおいて、前記制御装置は、前記荷載置面に前記パレットが載置されているとき、前記パレットを前記表示装置に描画表示する構成としてもよい。
この場合、パレットが荷載置面に載置されている場合、荷載置面に載置されたパレットが表示されるので、フォークが支持するパレットの底面と荷載置面に載置されているパレットとの干渉の有無を確認することができる。
【0012】
また、上記の荷役支援システムにおいて、前記荷棚は、上下方向に複数の荷載置面を有し、前記表示装置は、前記複数の荷載置面の高さおよび前記パレットの底面の高さを横棒として描画表示する構成としてもよい。
この場合、表示装置は、各荷載置面の高さおよびパレットの底面の高さに基づき、複数の荷載置面およびパレットの底面を横棒として描画表示する。このため、オペレータは、表示装置を確認することにより、カメラ画像を必要とすることなく荷役を対象とする荷載置面を確実に把握でき、フォークに差し込まれたパレットの底面と荷載置面との間の離間距離を確認することができる。
【0013】
また、上記の荷役支援システムにおいて、前記フォークリフトの走行および前記荷役装置による荷役を遠隔操作する遠隔操作装置を備え、前記遠隔操作装置は、前記表示装置を備える構成としてもよい。
この場合、遠隔操作装置が表示装置を備えることにより、遠隔操作されるフォークリフトの荷役を効果的に支援することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オペレータが荷役を対象とする荷載置面を確実に把握でき、フォークに差し込まれたパレットの底面と荷載置面との間の離間状況を確認することができる荷役支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る荷役支援システムの電気的構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る荷棚の斜視図である。
図3】第1の実施形態に係るリーチ式フォークリフトの側面図である。
図4】第1の実施形態に係るリーチ式フォークリフトの斜視図である。リーチ式フォークリフトの遠隔操作システムによる荷役を説明する説明図である。
図5】荷棚および荷置き前のリーチフォークリフトを示す側面図である。
図6】荷役支援システムにおけるフローチャート図である。
図7】(a)は下の棚板を荷置き対象の荷載置面とする表示部における表示例であり、(b)は床面を荷置き対象の荷載置面とする表示部における表示例を示す図である。
図8】第2の実施形態に係る荷役支援システムによる荷役を説明する説明図である。
図9】別例に係る表示部の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る荷役支援システムについて図面を参照して説明する。本実施形態の荷役支援システムは、リーチ式フォークリフトの遠隔操作システムに適用した例である。
【0017】
図1に示すように、荷役支援システム10は、リーチ式フォークリフト11と、リーチ式フォークリフト11を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置12と、を備えている。本実施形態では、リーチ式フォークリフト11は、作業場Eに配置される。遠隔操作装置12は、作業場Eと別に設けた操作室Rに配置されている。そして、オペレータは、遠隔操作装置12を用いて操作室Rから、作業場Eのリーチ式フォークリフト11を遠隔操作することができる。
【0018】
図2に示すように、作業場Eには荷棚13が設置されている。荷棚13は、複数の支柱14と、支柱14を繋ぐ横架材15、16と、支柱14において水平に設けられた複数の棚板17を備えている。本実施形態の荷棚13では、荷Wを載置可能な荷載置部は、上下2段の棚板17のほか、下段の棚板17の下方の床18を含めて上下3段となっている。従って、棚板17および棚板17の下方の床18は荷載置部に相当し、棚板17の上面17Aおよび床面18Aは荷載置面に相当する。なお、床面18Aおよび棚板17の上面17Aは水平である。荷棚13では棚板17および棚板17の下方の床面18Aに荷Wが載置される。
【0019】
荷Wはいずれもパレット20に載置されている。パレット20の上面20Aには荷Wが載置され、底面20Bは棚板17又は床18と接触する。パレット20にはフォーク34を差し込む差込口21が備えられている。オペレータは、リーチ式フォークリフト11を遠隔操作して荷棚13から荷Wを取り出したり、空いている棚板17へ荷Wを載置したりする。
【0020】
図3図4に示すように、リーチ式フォークリフト11の車体25には、左右一対のリーチレグ26が備えられている。左右一対のリーチレグ26は車体25の前部から前方へ向けて延在する。左右一対のリーチレグ26の前部には前輪27がそれぞれ備えられている。車体25の後部には後輪28およびキャスタ輪(図示せず)が設けられている。後輪28は操舵可能な駆動輪である。
【0021】
リーチ式フォークリフト11は荷役装置29を備えている。荷役装置29は車体25の前部における左右一対のリーチレグ26の間に位置する。荷役装置29は、左右一対のアウタマスト30およびアウタマスト30に対して昇降するインナマスト31を備えている。また、荷役装置29は、インナマスト31に連結されたリフトシリンダ32を備える。インナマスト31は、リフトシリンダ32への作動油の給排によって昇降する。インナマスト31に対して昇降可能なリフトブラケット33が備えられている。リフトブラケット33には、左右一対のフォーク34が備えられている。左右一対のフォーク34はティルトシリンダ(図示せず)により前後に傾動可能である。フォーク34は、前後方向に延在する載置部34Aと載置部34Aの基部(後部)から立ち上がる立ち上がり部34Bを有している。また、荷役装置29は、フォーク34の揚高を検出する揚高センサ36を備えている。
【0022】
図4に示すように、リフトブラケット33には、フォーク34の上方に位置するようにバックレスト37が取り付けられている。バックレスト37は、フォーク34に荷Wが載置されたときに荷Wの後面を支持する。バックレスト37の左右方向の長さは、車体25の幅より小さいがアウタマスト30の外側へはみ出す長さに設定されている。
【0023】
車体25には、荷役装置29に連結されたリーチシリンダ38が備えられている(図3を参照)。リーチシリンダ38は作動油の給排によってロッドが前後方向に進退する。リーチシリンダ38の作動により荷役装置29は、リーチレグ26に沿って前後に移動する。リーチ式フォークリフト11は、後輪28を駆動させる走行モータ39と後輪28を操舵する操舵モータ(図示せず)を備える。
【0024】
図1に示すように、リーチ式フォークリフト11は、車両通信部としての無線部40と、車両制御部41と、画像信号処理部42と、走行用カメラ43、44と、を有する。無線部40は、次に説明する遠隔操作装置12と無線通信を行うためのものである。車両制御部41は、リーチ式フォークリフト11の各部と接続され、車両制御部41と接続された各部を制御するほか、揚高センサ36および無線部40と接続されている。走行用カメラ43は、走行に必要なフォーク34の先端部およびフォーク34の前方を撮影する。走行用カメラ44は、車体25の後方を撮影する。画像信号処理部42は、走行用カメラ43、44により撮影された撮影画像を通信可能に信号処理する。なお、図示はされないが、リーチ式フォークリフト11には、障害物を検出する複数のセンサが備えられている。
【0025】
次に、遠隔操作装置12について説明する。遠隔操作装置12は、無線部45と、制御部46と、操作部47と、表示装置としての表示部48と、画像信号処理部49と、入力部50を有する。無線部45はリーチ式フォークリフト11の無線部40と無線通信可能である。制御部46は、制御装置に相当し、無線部45、操作部47、表示部48および画像信号処理部49と接続されている。制御部46は、操作部47の操作出力をリーチ式フォークリフト11へ指令する機能を備えるほか、パレット20の寸法、荷棚13の各部の高さを設定して記憶する。また、制御部46は、設定されたパレット20の寸法および荷棚13の各部の高さから、パレット20の底面20Bと荷載置面との離間距離を算出する機能を有する。
【0026】
操作部47における操作方式として、タッチパネル方式、マウス方式、ジョイスティック方式等が用いられる。表示部48は、画面48Aを備える画像モニタであり、例えば、画面48A上にて各種図形を描画表示するほか、無線部45を通じて受信された撮影画像を画面48Aに表示したり、遠隔操作に必要な各種の情報を表示したりする。画像信号処理部49は、画像認識部および画像処理部に相当し、走行用カメラ43、44により撮影された撮影画像の画像認識の処理のほか、表示部48に表示する撮影画像の並び替え等の編集や加工を行う。入力部50はデータ等の入力を可能としており、具体的には、例えば、キーボードやテンキー等である。
【0027】
そして、遠隔操作装置12の操作部47がオペレータにより操作されると、制御部46は無線部45を介して操作内容をリーチ式フォークリフト11側に送る。リーチ式フォークリフト11では、遠隔操作装置12からの操作内容が無線部40にて受信され、車両制御部41は遠隔操作装置12側からの指示に基づきリーチ式フォークリフト11の各部を制御する。具体的には、走行駆動系の機器(走行モータ39、操舵モータ等)および荷役系の機器(リフトシリンダ32、リーチシリンダ38、ティルトシリンダ等)が車両制御部41の指令に基づいて駆動される。このように、遠隔操作装置12は、リーチ式フォークリフト11の走行および荷役装置29による荷役を遠隔操作することができる
ようになっている。
【0028】
ところで、本実施形態では、図5に示す下側の棚板17の上面17Aの床面18Aからの高さH1と、上側の棚板17の上面17Aの床面18Aからの高さH2と、は、予め制御部46に設定されて記憶されている。高さH1、H2の制御部46への設定は、オペレータによる入力部50の操作により行われる。また、オペレータの入力部50の操作により、パレット20の寸法を制御部46に設定して記憶させる。
【0029】
フォーク34にパレット20が差し込まれている状態では、パレット20の底面20Bの高さH4は、揚高センサ36により検出されたフォーク34の高さ(揚高)H3と、制御部46に設定されたパレット20の寸法と、に基づいて制御部46により算出される。従って、床面18Aからの高さH1、H2およびパレット20の底面20Bの高さH4により、制御部46は、パレット20の底面20Bと床面18Aとの離間距離や底面20Bと棚板17の上面17Aとの離間距離を算出することが可能である。パレット20の底面20Bと荷置き先である荷載置面との離間距離△Hは、棚板17の上面17Aを荷載置面とするときは高さH4から高さH1又は高さH2を差し引けばよく、床面18Aを荷載置面とするときは高さH4が離間距離である。
【0030】
荷役対象の荷Wの寸法が予め判明している場合には、制御部46に荷Wの寸法を設定し記憶させておく。制御部46に荷Wの寸法が設定され、パレット20の寸法の設定と併せることによりフォーク34に支持される状態の荷Wの上面の床面18Aからの高さH5が制御部46により算出可能となる。また、荷棚13の最上部の横架材15は、上の棚板17に対して荷役の際にフォーク34や荷Wと干渉するおそれがあるため、横架材15の床面18Aからの高さH6を制御部46に設定して記憶させる。
【0031】
本実施形態では、リーチ式フォークリフト11が荷棚13に接近して対向したとき、制御部46は、図6に示すフローに従い、表示部48にパレット20の底面20Bおよび荷載置面(棚板17の上面17A又は床面18A)を描画表示させる。まず、制御部46は、揚高センサ36による検出信号からフォーク34の高さH3を検出する(ステップS01を参照)。次に、検出されたフォーク34の高さH3からフォーク34に支持されたパレット20の底面20Bの高さH4を算出する(ステップS02を参照)。次に、制御部46は、パレット20の底面20Bと荷載置面(棚板17の上面17A又は床面18A)との離間状況が判るようにパレット20の底面20Bと載置面を表示部48に描画表示する(ステップS03を参照)。具体的には、制御部46は、パレット20の底面20Bよりも低い荷載置面(棚板17の上面17A又は床面18A)およびフォーク34より高い荷載置面(棚板17の上面17A)を表示部48に描画表示する。そして、一連のステップS01~S03を繰り返す。リーチ式フォークリフト11が荷棚13から離れて対向しなくなると、一連のステップS01~S03は終了する。
【0032】
表示部48では、パレット20の底面20B、フォーク34より低い荷載置面(棚板17の上面17A又は床面18A)およびフォーク34より高い荷載置面(棚板17の上面17A)は、例えば、図7(a)、図7(b)に示すように描画されて表示される。下側の荷載置面は横棒L1により描画され、上側の荷載置面は横棒L2により描画される。フォーク34を示す図形F1と、リフトブラケット33を示す図形F2と、荷Wを示すF3と、が描画されている。また、パレット20の底面20Bが横棒L3により描画される。横棒L1~L3および図形F1~F3は、高さH1、H2、H4と対応する位置に描画される。また、横棒L1、L2の左隣には、横棒L1、L3に対応するそれぞれの高さH1、H2が数値表示される。横棒L3の右隣には高さH4が数値表示される。横棒L1、L2の右隣には、荷載置面である床面18Aを1段目として数える段数が表示される。なお、フォーク34が支持する荷Wが存在する場合には、荷Wの上面の高さH5が数値表示される。
【0033】
例えば、図7(a)では、横棒L1は下の棚板17の上面17Aを示し、横棒L2は上の棚板17の上面17Aを示す。図7(a)に示すように、横棒L1の右隣には、下の棚板17の段数である「2」が表示され、横棒L2の右隣には、上の棚板17の段数である「3」が表示される。横棒L1の左隣には、下の棚板17の上面17Aの床面18Aからの高さH1が数値表示される。横棒L2の左隣には、上の棚板17の上面17Aの床面18Aからの高さH2が数値表示される。横棒L3の右隣には、パレット20の底面20Bの床面18Aからの高さH4が数値表示される。
【0034】
また、図7(b)では、横棒L1は床面18Aを示し、横棒L2は下の棚板17の上面17Aを示す。図7(b)に示すように、横棒L1の右隣には、床面18Aの段数である「1」が表示され、横棒L2の右隣には、下の棚板17の段数である「2」が表示される。床面18Aは高さの基準であるため、横棒L1の左隣には0が数値表示される。横棒L2の左隣には、下の棚板17の上面17Aの床面18Aからの高さH1が数値表示される。横棒L3の右隣には、パレット20の底面20Bの床面18Aからの高さH4が数値表示される。
【0035】
本実施形態では、パレット20の底面20Bが、下の棚板17の上面17Aより高く、かつ、上の棚板17の上面17Aよりも低いとき、制御部46は、横棒L1を下の棚板17とし、横棒L2を上の棚板17と判別する。また、パレット20の底面20Bの高さH4が、床面18Aより高く、かつ、下の棚板17の上面17Aよりも低いとき、制御部46は、横棒L1を床面18Aとし、横棒L2を下の棚板17と判別する。つまり、フォーク34の上下の荷載置面の高さに基づいて横棒L1、L2の対象である荷載置面を判別する。
【0036】
次に、本実施形態の荷役支援システム10の作用について説明する。本実施形態のリーチ式フォークリフト11はオペレータの遠隔操作により走行し、荷役作業を行う。リーチ式フォークリフト11は、パレット20に載置された荷Wをフォーク34により支持している。オペレータの遠隔操作により、図5に示すように、リーチ式フォークリフト11が荷棚13と対向する。
【0037】
オペレータが、例えば、2段目の荷載置面である下の棚板17上に荷Wを載置させたいとき、図7(a)に示すように、フォーク34を下の棚板17と上の棚板17の間に位置させる。このとき、制御部46は、一連のステップS01~S03を実行し、表示部48にパレット20の底面20Bをおよび複数の荷載置面(上下の棚板17の上面17A)を描画表示する。オペレータは、表示部48に描画された横棒L1~L3、図形F1~F3および高さH1、H2、H4、H5を確認すればよい。オペレータは、画面48Aにおいてフォーク34と荷棚13との干渉の有無を確認しつつ、リーチ式フォークリフト11を遠隔操作して荷Wをパレット20とともに下の棚板17上に載置する。
【0038】
一方、オペレータが、例えば、1段目の荷載置面である床面18A上に荷Wを載置させたいとき、図7(b)に示すように、フォーク34を床面18Aと下の棚板17の間に位置させる。このとき、制御部46は、一連のステップS01~S03を実行し、表示部48にパレット20の底面20Bおよび複数の荷載置面(床面18A、下の棚板17の上面17A)を描画表示する。オペレータは、表示部48に描画された横棒L1~L3、図形F1~F3および高さH1、H2、H4、H5を確認すればよい。オペレータは、画面48Aにおいてフォーク34と荷棚13との干渉の有無を確認しつつ、リーチ式フォークリフト11を遠隔操作して荷Wをパレット20とともに床面18Aに載置する。
【0039】
なお、図示はしないが、オペレータが、例えば、3段目の荷載置面である上の棚板17上に荷Wを載置させたいとき、フォーク34を上の棚板17と横架材15の間に位置させる。このとき、制御部46は、一連のステップS01~S03を実行し、表示部48にパレット20の底面20Bおよび複数の荷載置面(上の棚板17の上面17A、横架材15)を描画表示する。この場合、制御部46は、横架材15を荷載置面とみなして描画表示する。オペレータは、表示部48に描画された横棒L1~L3、図形F1~F3および高さH1、H2、H4、H5を確認すればよい。オペレータは、フォーク34と荷棚13との干渉の有無を確認しつつ、リーチ式フォークリフト11を遠隔操作して荷Wをパレット20とともに上の棚板17上に載置する。
【0040】
表示部48において横棒L1~L3および図形F1~F3は、高さH1、H2、H4、H5の関係が判るように描画表示されている。このため、オペレータはパレット20の底面20Bと棚板17との離間状況や、荷Wの上面と上の棚板17との離間状況を直感的に認識できる。各高さH1、H2、H4、H5が数値表示されているためパレット20の底面20Bと棚板17との離間距離△Hや荷Wの上面と上の棚板17との離間距離を把握できる。つまり、オペレータは、カメラ画像を必要とすることなく、荷役を対象とする荷載置面を確実に把握でき、フォーク34に差し込まれたパレット20の底面20Bと荷載置面との間の離間状況および離間距離を確認することができる。また、パレット20の底面20Bが上下方向においてどの位置にあっても、荷置き先となる荷載置面を間違える可能性はない。
【0041】
本実施形態の荷役支援システム10は以下の作用効果を奏する。
(1)制御部46は、揚高センサ36により検出されるフォーク34の揚高H3および制御部46に予め設定されるパレット20の寸法に基づいてパレット20の底面20Bの高さH4を求める。荷棚13が備える複数の荷載置面(床面18Aおよび棚板17の上面17A)の高さは、予め制御部46に設定され記憶されている。表示部48は、各荷載置面の高さおよびパレット20の底面20Bの高さを横棒として描画表示する。このため、オペレータは、表示部48を確認することにより、カメラ画像を必要とすることなく荷役を対象とする荷載置面を確実に把握でき、フォーク34に差し込まれたパレット20の底面20Bと荷置き先の荷載置面との間の離間距離を確認することができる。
【0042】
(2)フォーク34に支持される荷Wがパレット20の底面20Bおよび荷載置面(床面18A又は棚板17の上面17A)とともに表示部48に描画表示される。このため、オペレータは、パレット20に支持されている荷Wと荷Wの上方の荷載置面との干渉の有無を確認することができる。
【0043】
(3)上下方向における荷載置面(床面18A又は棚板17の上面17A)とパレット20の底面20Bとの離間距離△Hが表示されることにより、オペレータは、荷載置面とパレット20の底面20Bとの間がどれだけ離れているかを把握することができる。
【0044】
(4)荷役支援システム10が、リーチ式フォークリフト11の走行および荷役装置29による荷役を遠隔操作する遠隔操作装置12を備え、遠隔操作装置12が表示部48を備える。このため、遠隔操作されるリーチ式フォークリフト11の遠隔操作による荷役を効果的に支援することができる。特に、遠隔操作されるリーチ式フォークリフト11が荷役用カメラを備えない場合には、荷役支援システム10は必ず必要となる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る荷役支援システムについて説明する。本実施形態の荷役支援システムは、荷載置面にパレットが載置されているとき、パレットを表示部に描画表示する点で、第1の実施形態と相違する。本実施形態のリーチ式フォークリフトおよび遠隔操作装置は第1の実施形態と同一であるため、第1の実施形態の説明を援用し共通の符号を用いる。
【0046】
図8(a)に示すように、荷載置面である床面18A又は棚板17の上面17Aにパレット20のみが多数載置されている場合がある。図8(b)に示すように、表示部48は、荷載置面に載置された1枚以上のパレット20を図形F4により描画表示する機能を備えている。つまり、表示部48の画面48Aは、1枚以上のパレット20を描画できるように設定されている。載置されているパレット20の数をオペレータが確認してパレット20の数を入力部50に入力することによりパレット20の数に対応する数の図形F4が描画表示される。なお、本実施形態では5枚のパレット20を載置可能な荷載置面としている。
【0047】
制御部46は、最上部の図形F4の上面を荷載置面と認識し、パレット20の底面20Bを示す横棒L2を最上部の図形F4の上面に対応させて描画表示する。パレット20の寸法は予め制御部46に設定され記憶されているので、制御部46は最上部の図形F4の上面の床面18Aからの高さは算出可能である。
【0048】
本実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果と同等の作用効果を奏する。また、本実施形態によれば、表示部48は、荷載置面にパレット20のみが多数載置されている場合であっても画面48A上において図形F4により描画表示することができる。また、制御部46は、最上部の図形F4の上面を荷載置面として認識し、パレット20の底面20Bを示す横棒L2を最上部の図形F4の上面に対応させて描画表示することができる。従って、荷載置面に載置されたパレット20上へのパレット20の積み降ろしや、荷載置面に載置されたパレット20の取り出しが容易となる。
【0049】
(変形例)
次に、変形例に係る表示部における表示例について説明する。第1、第2の実施形態では、表示部の画面における横棒および図形の描画表示は、主にフォークおよび荷載置面を側面視したものであった。本変形例では、主にフォークおよび荷載置面を後面(正面)視したものとしている。
【0050】
例えば、図5に示すように、フォーク34がパレット20および荷Wを支持し、上下の棚板17の間に位置する場合では、例えば、表示部48は図9に示す通り画面48Aに描画表示する。図9では、左右一対のフォーク34を示す図形F5と、荷Wを示す図形F6と、下の棚板17の上面17Aを示す横棒L5と、上の棚板17の上面17Aを示す横棒L6と、パレット20の底面20Bを示す横棒L7とが表示部48の画面48Aに描画表示される。また、横棒L5、L6は横棒L1、L2と同様に、対応する荷載置面の段数および高さH1、H2と、パレット20の底面20Bの高さH4と、荷Wの上面の高さH5が数値表示される。
【0051】
本変形例によれば、フォーク34および荷載置面を後面(正面)視したように横棒L5、L6および図形F5、F6を表示部48に描画表示する。このため、リーチ式フォークリフト11の運転席からの視野と同じ方向となる。その結果、フォーク34および荷載置面を側面視したように横棒および図形を表示部48に描画表示することと比較すると、オペレータは荷載置面とパレット20の底面20Bとの離間状況をより直感的に把握し易くなる。
【0052】
本発明は、上記の実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0053】
○ 第1の実施形態(変形例を含む)では、表示装置において荷を描画表示するとしたがこの限りではない。荷の描画表示は必須ではなく、表示装置において荷の描画表示を省略してもよい。
○ 上記の実施形態では、制御装置が、フォークの揚高およびフォークが支持するパレットの寸法に基づいてパレットの底面の高さを求めるとともに、予め設定された値により荷載置面の高さを求めたが、この限りではない。制御装置は、例えば、フォークの揚高およびフォークが支持するパレットの寸法に基づいてパレットの底面の高さを求めるとともに、オペレータの入力により荷載置面の高さを求めてもよい。より具体的には、オペレータが適宜の入力装置により荷載置面の高さの数値を入力すればよい。
○ 上記の実施形態では、各種の高さを表示装置の画面にて数値表示するとしたがこの限りではない。各種の高さを表示装置の画面にて数値表示をしなくてもよい。また、例えば、パレットの底面と載置先となる荷載置面との離間距離のみ画面に数値表示してもよい。
○ 第2の実施形態では、荷載置面に載置された複数枚のパレットを示す図形を表示装置の画面に描画表示するとしたが、これに限定されない。荷載置面に載置された複数枚のパレットを示す図形を描画表示しなくてもよい。
○ 上記の実施形態では、リーチ式フォークリフトの遠隔操作システムに適用した例を説明したが、この限りではない。本発明は、オペレータが運転する有人式のフォークリフトに適用できる。この場合、フォークリフトに搭載されるコントローラが制御部に相当し、表示装置はフォークリフトの運転席に備えられる。
○ 上記の実施形態では、荷棚として上下に荷を保管できる三段式の荷棚を例示したが、荷棚は、これに限らない。二段以上(n+1段)の棚を有する荷棚であればよい。また、荷棚は、大型トラック等の車両の荷棚であってもよい。
○ 上記の実施形態では、表示装置において図形および横棒のみが描画されたが、例えば、表示装置の画面を分割して、一方に図形および横棒のみを描画表示し、他方に走行用カメラの撮影画像を表示してもよい。
○ 上記の実施形態では、フォークリフトとしてリーチ式フォークリフトについて説明したが、フォークリフトはリーチ式フォークリフトに限定されない。フォークリフトは、例えば、カウンタウエイト式フォークリフトであってもよく、フォークリフトの形式や種類を問われない。
○ 上記の実施形態では、荷役用カメラを搭載しないとしたが、荷役用カメラを搭載してもよい。例えば、バックレストやフォークに荷役用カメラを設けてもよく、荷役作業場の状況に応じて表示装置における描画表示と荷役用カメラの撮影画像とを併用したり、表示装置における描画表示のみにより荷役作業を行ってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 荷役支援システム
11 リーチ式フォークリフト
12 遠隔操作装置
13 荷棚
17 棚板
17A 棚板の上面(荷載置面)
18 床
18A 床面(荷載置面)
20 パレット
20A 上面
20B 底面
25 車体
26 リーチレグ
27 前輪
28 後輪
29 荷役装置
34 フォーク
36 揚高センサ
39 走行モータ
41 車両制御部
46 制御部(制御装置)
47 操作部
48 表示部(表示装置)
50 入力部
E 作業場
F1、F2、F3、F4、F5、F6 図形
H1、H2、H3、H4、H5、H6 高さ
L1、L2、L3、L5、L6、L7 横棒
R 操作室
S01、S02、S03 ステップ
W 荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9