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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】供給ラインの共通接続構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 8/00 20060101AFI20220511BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220511BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220511BHJP
   B60K 15/01 20060101ALN20220511BHJP
   B60K 15/03 20060101ALN20220511BHJP
   B60K 15/073 20060101ALN20220511BHJP
   H01M 8/00 20160101ALN20220511BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220511BHJP
   F17C 13/00 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
B60K8/00
B60K1/04 Z
H01M8/04 N
B60K15/01 B
B60K15/03 E
B60K15/073
H01M8/00 Z
H01M8/10 101
F17C13/00 301C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019058068
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020157872
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康平
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-085151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0306520(US,A1)
【文献】特開2012-217297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0092271(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 8/00
B60K 1/04
B60K 15/00 - 15/10
H01M 8/00 - 8/2495
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される燃料ガスタンクとガス供給ラインとを接続する接続構造、又は、車両に搭載される蓄電池と電力供給ラインとを接続する接続構造のいずれにも用いることのできる供給ラインの共通接続構造であって、
前記ガス供給ラインと連通可能な第1ガス流通経路、及び、前記電力供給ラインと電気的に導通可能な第1電気導通経路、並びに、前記第1ガス流通経路及び前記第1電気導通経路が繋がる所定の接合部を有し、前記ガス供給ライン又は前記電力供給ラインに接続される接続部材と、
前記燃料ガスタンクと連通可能な第2ガス流通経路、又は、前記蓄電池と電気的に導通可能な第2電気導通経路、並びに、前記第2ガス流通経路又は前記第2電気導通経路が繋がる所定の被接合部を有し、前記燃料ガスタンク側又は前記蓄電池側に設けられる被接続部材と、
前記接合部と前記被接合部とが圧接した状態で接合された前記接続部材と前記被接続部材の接続状態を維持可能な維持手段とを備えたことを特徴とする供給ラインの共通接続構造。
【請求項2】
前記維持手段は、前記接続部材に対し相対変位可能に組付けられる係合部材を備え、該係合部材は、前記被接続部材に設けられた被係合部と係合可能な係合部を有していることを特徴とする請求項1に記載の供給ラインの共通接続構造。
【請求項3】
前記維持手段は、前記係合部材の係合部を前記被接続部材の被係合部に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の供給ラインの共通接続構造。
【請求項4】
前記係合部又は前記被係合部の一方に凸部が設けられ、他方に前記凸部が嵌入可能な凹部が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の供給ラインの共通接続構造。
【請求項5】
前記係合部材は、前記電力供給ラインと電気的に導通可能かつ前記係合部と電気的に導通可能な第3電気導通経路を有し、
前記蓄電池側に設けられる被接続部材は、前記蓄電池と電気的に導通可能かつ前記被係合部に電気的に導通可能な第4電気導通経路を有していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の供給ラインの共通接続構造。
【請求項6】
前記接合部及び前記被接合部は、円環状に形成され、
前記被接続部材の被係合部は、前記被接合部を中心に円環状に形成されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の供給ラインの共通接続構造。
【請求項7】
前記係合部材は、前記接合部の周囲を囲むように設けられる円筒状の本体部を備え、該本体部に前記係合部が設けられ、前記接合部を中心に回動させることにより前記係合部を前記被係合部に係合可能に構成されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の供給ラインの共通接続構造。
【請求項8】
前記燃料ガスタンク及び前記蓄電池は、略同一径の円筒形状に構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の供給ラインの共通接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における供給ラインの共通接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境に配慮した車両として、天然ガスや水素ガスなどを燃料として内燃機関を駆動させ走行する天然ガス自動車や水素自動車などの開発が行われてきた。さらに近年では、内燃機関に代わり、電動モータを駆動力源として走行する電動車両が注目を集めている。
【0003】
電動車両としては、例えば電動モータを駆動するための電気エネルギーを発生させる燃料電池を搭載した燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)や、蓄電池に蓄積した電気エネルギーだけを使用して走行する電気自動車(EV:Electric Vehicle)などがある。
【0004】
このうち、天然ガス自動車や水素自動車、燃料電池自動車など、燃料ガスを使用する車両においては、燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクが搭載され、ここからガス配管(ガス供給ライン)を介して内燃機関や燃料電池に対し燃料ガスが供給される構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
これに対し、電気自動車においては、搭載した蓄電池から電気配線(電力供給ライン)を介して電動モータに対し電力供給が行われる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-160541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、燃料ガスタンクや蓄電池など、車両に搭載するエネルギー供給源が異なる場合には、これらの種別に応じて、車種ごとに、その仕様や設計を変更しなければならず、自動車メーカーにとってはコストの増大が懸念されている。
【0008】
これに鑑み、仮にエネルギー供給源となる燃料ガスタンクと蓄電池とを載せ替え可能な共通の車両プラットフォームを採用した場合には、この車両プラットフォームに対し、使用の有無に拘らず、予めガス供給系(ガス配管及びこれと燃料ガスタンクを接続する部材など)と、電力供給系(電気配線及びこれと蓄電池を接続する部材など)の2系統を設置しておく必要が生じる。
【0009】
結果として、部品点数の増加や構造の複雑化は勿論のこと、これら全てを設置しておくだけのスペースを確保することが困難となるおそれもある。
【0010】
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、車両プラットフォームの共通化、並びに、部品点数の増加抑制、構造の簡素化、省スペース化及びコストの削減等を図ることのできる供給ラインの共通接続構造を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.車両に搭載される燃料ガスタンクとガス供給ラインとを接続する接続構造、又は、車両に搭載される蓄電池と電力供給ラインとを接続する接続構造のいずれにも用いることのできる供給ラインの共通接続構造であって、
前記ガス供給ラインと連通可能な第1ガス流通経路、及び、前記電力供給ラインと電気的に導通可能な第1電気導通経路、並びに、前記第1ガス流通経路及び前記第1電気導通経路が繋がる所定の接合部を有し、前記ガス供給ライン又は前記電力供給ラインに接続される接続部材と、
前記燃料ガスタンクと連通可能な第2ガス流通経路、又は、前記蓄電池と電気的に導通可能な第2電気導通経路、並びに、前記第2ガス流通経路又は前記第2電気導通経路が繋がる所定の被接合部を有し、前記燃料ガスタンク側又は前記蓄電池側に設けられる被接続部材と、
前記接合部と前記被接合部とが圧接した状態で接合された前記接続部材と前記被接続部材の接続状態を維持可能な維持手段とを備えたことを特徴とする供給ラインの共通接続構造。
【0013】
上記手段1によれば、第1ガス流通経路及び第1電気導通経路を有し、ガス供給ライン又は電力供給ラインのいずれにも接続可能な接続部材を備えると共に、これと接続可能な被接続部材を燃料ガスタンク及び蓄電池のいずれにも共通して備えることにより、供給ラインの接続構造の共通化を図ることができる。
【0014】
このように供給ラインの接続構造を共通化することで、車両製造時や、車両の使用状況の変化時(例えば通勤距離の大幅な変化)において、車両プラットフォームに対し燃料ガスタンク若しくは蓄電池のいずれか一方を選択、又は、燃料ガスタンク若しくは蓄電池の双方を複数個組み合わせて設置可能となると共に、設置された燃料ガスタンク又は蓄電池に応じて、ガス供給ライン又は電力供給ラインのいずれか一方を選択して接続可能となり、車両プラットフォームを共通化することができる。
【0015】
ひいては、車両プラットフォームに対し、予めガス供給系と電力供給系の2系統を設置しておく必要もなく、部品点数の増加抑制、構造の簡素化、省スペース化及びコストの削減等を図ることができる。
【0016】
また、車両プラットフォームに設置される燃料ガスタンク又は蓄電池に応じて、接続部材の交換を行う必要もなく、同一の接続部材を用いることで、該接続部材等を車両プラットフォームに固定する固定構造も共通化することができる。
【0017】
加えて、上記維持手段を備えることにより、接続部材と燃料ガスタンク側の被接続部材とを接続する場合には、接合部及び被接合部間におけるシール性を適切に維持することができ、接続部材と蓄電池側の被接続部材とを接続する場合には、接合部及び被接合部間における電気導通性を適切に維持することができる。
【0018】
尚、「被接続部材」については、被接合部が設けられるなど、少なくとも接続部材に接続可能な構成を有していればよく、その形状が完全同一でなくとも、主要部の構成が略同一であれば、細部の構成は問わない。例えば蓄電池に設けられる被接続部材においては、ガス流通経路(第2ガス流通経路)が形成されていなくてもよく、燃料ガスタンクに設けられる被接続部材においては、電気導通経路(第2電気導通経路)が形成されていなくてもよい。電気エネルギーを貯蔵する蓄電池や、燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクのように、貯蔵するエネルギー形態が異なる貯蔵体では、その材質や機能など、細部の構成を変える必要がある。
【0019】
手段2.前記維持手段は、前記接続部材に対し相対変位可能に組付けられる係合部材を備え、該係合部材は、前記被接続部材に設けられた被係合部と係合可能な係合部を有していることを特徴とする手段1に記載の供給ラインの共通接続構造。
【0020】
上記手段2によれば、少なくとも係合部材が接続部材に対し組付けられ一体化されることで、取り扱う部品点数の増加抑制を図ることができる。
【0021】
手段3.前記維持手段は、前記係合部材の係合部を前記被接続部材の被係合部に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする手段2に記載の供給ラインの共通接続構造。
【0022】
上記手段3によれば、係合部と被係合部の係合状態、ひいては接続部材と被接続部材の接続状態の安定性を高めることができる。
【0023】
手段4.前記係合部又は前記被係合部の一方に凸部が設けられ、他方に前記凸部が嵌入可能な凹部が設けられていることを特徴とする手段2又は3に記載の供給ラインの共通接続構造。
【0024】
上記手段4によれば、係合部と被係合部の係合状態、ひいては接続部材と被接続部材の接続状態の安定性を高めることができる。
【0025】
手段5.前記係合部材は、前記電力供給ラインと電気的に導通可能かつ前記係合部と電気的に導通可能な第3電気導通経路を有し、
前記蓄電池側に設けられる被接続部材は、前記蓄電池と電気的に導通可能かつ前記被係合部に電気的に導通可能な第4電気導通経路を有していることを特徴とする手段2乃至4のいずれかに記載の供給ラインの共通接続構造。
【0026】
上記手段5によれば、上記接合部及び被接合部を介して電気的に導通可能に接続される第1電気導通経路及び第2電気導通経路に加えて、係合部及び被係合部を介して電気的に導通可能に接続される第3電気導通経路及び第4電気導通経路を備えた構成となる。
【0027】
これにより、仮に正極用の電気導通経路と負極用の電気導通経路の両経路を共に接合部及び被接合部に設けた構成などと比較して、正負両経路を離間して設けることができ、誤接続や短絡などの不具合の発生を抑制することができる。
【0028】
手段6.前記接合部及び前記被接合部は、円環状に形成され、
前記被接続部材の被係合部は、前記被接合部を中心に円環状に形成されていることを特徴とする手段2乃至5のいずれかに記載の供給ラインの共通接続構造。
【0029】
上記手段6によれば、接続部材及び被接続部材の接続作業を行う際、両者の相対位置関係が接続方向を軸心に周方向へ変化してしまった場合でも適切に接続することができる。結果として、接続作業性の向上を図ることができる。また、接続後において接続部材及び被接続部材の周方向における相対位置関係の位置調整を行うことも可能となる。
【0030】
尚、上記手段4に係る構成の下では、例えば「前記係合部に凸部が設けられると共に、前記被係合部に前記凸部が嵌入可能な凹部が設けられ、前記被係合部の周方向に沿って前記凹部が円環状に構成されること」が好ましい。
【0031】
手段7.前記係合部材は、前記接合部の周囲を囲むように設けられる円筒状の本体部を備え、該本体部に前記係合部が設けられ、前記接合部を中心に回動させることにより前記係合部を前記被係合部に係合可能に構成されていることを特徴とする手段2乃至5のいずれかに記載の供給ラインの共通接続構造。
【0032】
上記手段7によれば、接合部及び被接合部を保護することができる。結果として、接続部材と燃料ガスタンク側の被接続部材とを接続する場合には、接合部及び被接合部間におけるシール性を適切に維持することができ、接続部材と蓄電池側の被接続部材とを接続する場合には、接合部及び被接合部間における電気導通性を適切に維持することができる。
【0033】
手段8.前記燃料ガスタンク及び前記蓄電池は、略同一径の円筒形状に構成されていることを特徴とする手段1乃至7のいずれかに記載の供給ラインの共通接続構造。
【0034】
上記手段8によれば、貯蔵するエネルギー形態が異なる2種類のエネルギー貯蔵体、つまり所定の燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクと、電気エネルギーを貯蔵する蓄電池の形状を略同一径の円筒形状とすることにより、所定の取付構造を有する同一の貯蔵体設置部に対し、いずれか一方を選択して設置することが可能となる。結果として、車両プラットフォームの共通化を図ることができ、ひいてはコストの削減等を図ることができる。
【0035】
尚、「円筒型燃料ガスタンク」及び「円筒型蓄電池」は、例えばバンド締めなど所定の取付構造を有する貯蔵体設置部に対し少なくとも着脱自在に設置可能であればよく、その形状が完全同一でなくとも、例えば円筒型の本体部の直径が同一又は略同一となるなど、主要部の構成が略同一であれば、その長さや細部の構成は問わない。燃料ガスを貯蔵する円筒型燃料ガスタンクや、電気エネルギーを貯蔵する円筒型蓄電池のように、貯蔵するエネルギー形態が異なるエネルギー貯蔵体では、その材質や機能など、細部の構成を変える必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】(a)は燃料電池自動車の概略構成図であり、(b)は電気自動車の概略構成図である。
図2】(a)は高圧水素タンクを示す正面図であり、(b)は(a)のA―A線断面図である。
図3】(a),(b)は、バルブ取着時の高圧水素タンクを示す斜視図及び正面図である。
図4】(a),(b)は、接続ユニットを示す斜視図及び正面図であり、(c)は(a)のB―B線断面図である。
図5】(a),(b)は、接続部材を示す斜視図及び正面図であり、(c)は(a)のC―C線断面図である。
図6】(a),(b)は、連結機構部を示す斜視図及び正面図であり、(c)は(a)のD―D線断面図である。
図7】(a)は、接続状態にあるバルブ及び接続ユニットを示す正面図であり、(b)は(a)のE―E線断面図である。
図8】接続状態にある高圧水素タンク、バルブ及び接続ユニットを示す斜視図である。
図9】(a)は、接続状態にある高圧水素タンク、バルブ及び接続ユニットを示す正面図であり、(b)は(a)のF―F線断面図である。
図10】(a),(b)は、バッテリーパックを示す斜視図及び正面図であり、(c)は(b)のG―G線断面図である。
図11】(a)は端子部材の断面図であり、(b)は端子部材の分解斜視図である。
図12】(a),(b)は、接続状態にあるバッテリーパック、端子部材及び接続ユニットを示す斜視図及び正面図であり、(c)は(b)のH―H線断面図である。
図13】第2実施形態について説明するための図であって、(a)は、接続状態にあるバルブ及び接続ユニットを示す断面図であり、(b)は、接続状態にある端子部材及び接続ユニットを示す断面図である。
図14】第3実施形態について説明するための図であって、(a)は、接続状態にあるバルブ及び接続ユニットを示す断面図であり、(b)は、接続状態にある端子部材及び接続ユニットを示す断面図である。
図15】第4実施形態について説明するための図であって、(a),(b)は、アーム部を示す斜視図である。
図16】第4実施形態について説明するための図であって、(a),(b)は、バルブの頭部を示す斜視図及び斜視断面図である。
図17】第4実施形態について説明するための図であって、(a)は、接続状態にあるバルブ及び接続ユニットを示す断面図であり、(b)は、接続状態にある端子部材及び接続ユニットを示す断面図である。
図18】第5実施形態について説明するための図であって、(a),(b)は、接続状態にある高圧水素タンク、バルブ及び接続ユニットを示す斜視図及び斜視断面図である。
図19】第5実施形態について説明するための図であって、(a)~(c)は、接続ユニットの外筒部を示す斜視図、斜視断面図及び底面図である。
図20】第5実施形態について説明するための図であって、(a)~(c)は、バルブの頭部を示す斜視図、斜視断面図及び平面図である。
図21】第5実施形態について説明するための図であって、(a),(b)は、接続状態にあるバッテリーパック、端子部材及び接続ユニットを示す斜視図及び斜視断面図である。
図22】第5実施形態について説明するための図であって、(a)~(c)は、端子部材を示す斜視図、斜視断面図及び平面図である。
図23】第6実施形態について説明するための図であって、(a),(b)は、接続状態にある高圧水素タンク、バルブ及び接続ユニットを示す正面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る供給ラインの共通接続構造を備えた共通の車両プラットフォームを基に製造される車両の概略構成図であって、(a)は、エネルギー供給源として燃料ガスタンクを搭載した燃料電池自動車1Aを示し、(b)は、エネルギー供給源として蓄電池を搭載した電気自動車1Bを示す。
【0038】
但し、図1(a),(b)においては、本発明に係る主要な構成要素だけを図示している。勿論、この他にも、車両1A,1Bには、車両としての種々の構成要素が搭載されているが、簡素化のため、それらの図示及び説明は省略する。また、車両1A,1Bに重複する部分については、同一の部材名称、同一の符号を用いる等して重複説明を省略する。
【0039】
尚、本実施形態における車両1A,1Bの基本骨格を構成する車両プラットフォームには、燃料ガスタンクの形状に合わせて、円筒型貯蔵体を搭載可能な貯蔵体設置部10が設けられている。つまり、この車両プラットフォームの仕様においては、燃料ガスが貯蔵される燃料ガスタンクや、電気エネルギーを蓄える蓄電池など、貯蔵するエネルギー形態が異なるエネルギー貯蔵体の形状を円筒形状に統一することにより、同一の貯蔵体設置部10に対し、いずれかを選択して設置することができるよう構成されている。
【0040】
まず図1(a)に示す燃料電池自動車1Aについて詳しく説明する。燃料電池自動車1Aは、主要な構成要素として、車両本体としての車体(ボディ)2と、駆動輪としての左右一対の前輪3と、従動輪としての左右一対の後輪4と、前輪3を駆動させる駆動力源としての電動モータ5と、該電動モータ5への電力供給を制御するパワーコントロールユニット6(以下、「PCU6」という)と、電動モータ5(PCU6)へ供給する電気を発生させる燃料電池システム7と、燃料ガスとしての水素ガスを貯蔵する燃料ガスタンクとしての高圧水素タンク8と、高圧水素タンク8から燃料電池システム7へ水素ガスを供給するガス供給ラインとしての水素供給用配管LAとを備えている。
【0041】
燃料電池システム7は、反応ガスである酸化ガスおよび水素ガスの供給を受けて電気化学反応により発電する燃料電池スタック7Aを備えている。
【0042】
この他、図示は省略するが、燃料電池システム7には、酸化ガスを燃料電池スタック7Aに供給する酸化ガス供給系や、水素ガスを燃料電池スタック7Aに供給する水素ガス供給系、冷却媒体を循環させる冷却系、各種オフガスや生成水などを車外へ排出するための排出系などが設けられている。
【0043】
燃料電池スタック7Aは、多数の発電セル(単セル)が積層されたスタック構造を有する固体高分子型燃料電池である。発電セルは、電解質膜の両側に、それぞれ触媒層とガス拡散層とからなるアノード(燃料極)及びカソード(空気極)を配設した膜電極複合体(MEA)が一対のセパレータにより挟持されてなる。
【0044】
燃料電池スタック7Aには、水素ガスや酸化ガス、冷却媒体を流通させるための各種流路が発電セルの積層方向に沿って形成されている。かかる構成の下、各発電セルのアノードには水素ガスが供給され、カソードには酸化ガスとしての空気が供給される。アノードに水素ガスが供給されることで、これに含まれる水素がアノードを構成する触媒層の触媒と反応し、これによって水素イオンが発生する。発生した水素イオンは電解質膜を通過して、カソードで空気に含まれる酸素と化学反応を起こす。この化学反応によって電気が発生する。燃料電池スタック7Aで発生した電気は、図示しない昇圧コンバータ等を介してPCU6へ入力される。
【0045】
次に、貯蔵体設置部10に設置される高圧水素タンク8、並びに、これと水素供給用配管LAとを接続する接続構造について説明する。以下、これら各種構成について説明する際には、貯蔵体設置部10に設置される円筒型貯蔵体(高圧水素タンク8や後述するバッテリーパック50)の中心軸を通る軸線C1を、接続構造における共通の基準線として用いることとする。
【0046】
高圧水素タンク8は、水素ガスを高圧で貯蔵するためのものである。図2(a),(b)に示すように、高圧水素タンク8の本体部20(以下、「タンク本体部20」という)は、円筒形状をなす直胴部21と、その両端に形成された略半球状のドーム部22とからなる。
【0047】
尚、詳細な図示は省略するが、タンク本体部20は、例えばガスバリア機能を有するプラスチックライナー、その外側に耐圧強度を高めるための炭素繊維強化プラスチック(CFRP)層、さらにその外側に表面を保護するガラス繊維強化プラスチック(GFRP)層を有する3層構造となっている。
【0048】
高圧水素タンク8には、タンク本体部20の軸線C1方向一端部において金属製の口金23が設けられている。図3(a),(b)に示すように、口金23にはバルブアッセンブリ25(以下、単に「バルブ25」という)が取付けられている。
【0049】
尚、バルブ25は、高圧水素タンク8の内部と外部との間で水素ガスの給排を制御するためのものであり、本来であれば、水素ガスの流れを制御する各種弁機構(電磁弁や圧抜弁、逆止弁など)や、水素ガス充填用の流路など種々の構成要素を備えているが、本願の各図面においては、簡素化のため、本発明に係る主要な構成要素のみを図示し、その他の構成要素については図示及び説明を省略する。
【0050】
図7(a),(b)に示すように、バルブ25は、タンク本体部20内に配置されるノズル部26と、口金23に取付けられる取付部27と、タンク本体部20外に配置される頭部28とが金属材料等により一体形成された本体部を有し、該本体部には軸線C1方向に貫通するガス流通経路29が形成されている。「ガス流通経路29」が本実施形態における「第2ガス流通経路」を構成する。
【0051】
取付部27の外周面には、口金23の内周面に形成された雌ネジ部23a〔図2(b)参照〕に螺合する雄ネジ部27aが形成されている。これにより、バルブ25は口金23に対し取付け固定される。
【0052】
バルブ25の頭部28は、軸線C1方向に沿って形成された円筒状の本体筒部28aと、該本体筒部28aの軸線C1方向両端部から径方向外側に向け延出形成された円環状のフランジ部28b,28cとを備えている。バルブ25の頭部28は、本実施形態における被接続部材を構成する部位である。
【0053】
このうち、後述する接続ユニット30が接合される先端側のフランジ部28b(本体筒部28a)の端面には、ガス流通経路29の開口部周縁に沿って被接合部28dが形成されている。被接合部28dは、ガス流通経路29が開口側に向け徐々に拡径したようなテーパ状の凹部となっている。
【0054】
バルブ25は、接続ユニット30を介して水素供給用配管LAに接続されている。これにより、ガス流通経路29と水素供給用配管LAとが連通した状態となる。水素供給用配管LAの他端側は、燃料電池システム7の水素ガス供給系に接続されている。これにより、水素供給用配管LAを介して、高圧水素タンク8から燃料電池システム7へ水素ガスを供給可能となる。
【0055】
ここで、接続ユニット30の構成について詳しく説明する。図4(a)~(c)に示すように、接続ユニット30は、水素供給用配管LA及びバルブ25がそれぞれ接続される接続部材31と、該接続部材31とバルブ25の接続状態を維持する維持手段としての連結機構部32とからなる。
【0056】
接続部材31は、燃料電池自動車1Aを構成する車両プラットフォームに対し、予めブラケット等を介して貯蔵体設置部10の側方位置に取付け固定されると共に、この接続部材31に対し連結機構部32が組み付けられている。
【0057】
図5(a)~(c)に示すように、接続部材31は、軸線C1方向に沿って延びるガス流通経路33を有した円筒状の本体筒部34と、該本体筒部34の軸線C1方向略中央部から径方向外側に向け延出形成された略円環状のフランジ部35とを備え、これらが導電性金属材料により一体形成されている。「ガス流通経路33」が本実施形態における「第1ガス流通経路」を構成する。
【0058】
本体筒部34には、その先端側(水素供給用配管LAが接続される基端側とは反対側)において、バルブ25側の被接合部28dに接合する接合部34aが形成されている。接合部34aは、本体筒部34が先端側に向け徐々に縮径したようなテーパ状となっている。つまり、被接合部28d及び接合部34aは、所謂コーンアンドスレッド接続構造を有している。また、フランジ部35は、先端側の大径部35aと、基端側の小径部35bとから構成されている。
【0059】
図6(a)~(c)に示すように、連結機構部32は、軸線C1方向に沿って延びる挿通孔36を有した円筒状のベース部37と、該ベース部37に対し回動変位可能に組付けられた一対のアーム部38とからなる。「アーム部38」が本実施形態における「係合部材」を構成する。
【0060】
挿通孔36の内径は、接続部材31の本体筒部34の外径と略同一径となっている。そして、接続部材31の本体筒部34の基端側を挿通孔36に挿通することで、連結機構部32が接続部材31に対し組付けられている。これにより、連結機構部32は、接続部材31に対し軸線C1方向に沿って摺動可能かつ軸線C1を中心に周方向に変位可能な状態となっている。
【0061】
ベース部37の外周面には、挿通孔36を挟んで一対の凹部39が形成されており、該各凹部39に対しそれぞれ1つのアーム部38が組付けられている。
【0062】
アーム部38は、直棒状の本体部38aと、その両端部において鉤状に屈曲形成された先端側屈曲部38b及び基端側屈曲部38cとを有し、これらが導電性金属材料により一体形成され、全体としてコ字状に形成されている。
【0063】
アーム部38は、その基端側屈曲部38cの先端部がベース部37の凹部39に挿し込まれた状態で、該凹部39内において基端側屈曲部38cの先端部近傍が軸ピン40により軸支されている。これにより、アーム部38は、軸線C1方向と直交する方向に挿し込まれた軸ピン40を軸心としてベース部37に対し回動変位可能となっている。
【0064】
尚、本実施形態において、ベース部37は、その本体部が高剛性の金属材料により形成されているが、挿通孔36や凹部39など、少なくともアーム部38や接続部材31と隣接する部位においては、例えば絶縁スペーサを介するなど絶縁処理が施されており、アーム部38と接続部材31との間における電気的導通が遮断された構成となっている。
【0065】
かかる構成の下、燃料電池自動車1Aの製造時において、車両プラットフォームの貯蔵体設置部10に対し高圧水素タンク8を設置する場合には、まず予め車両プラットフォームに取付けられている接続ユニット30の接続部材31に対し、別途用意した水素供給用配管LAを接続固定する。
【0066】
続いて、貯蔵体設置部10に設置した高圧水素タンク8のバルブ25を接続部材31に対し接続する。具体的は、バルブ25の被接合部28dに対し接続部材31の接合部34aを接合する〔図7(a),(b)等参照〕。
【0067】
次に、接続ユニット30の連結機構部32を、両アーム部38が開いた状態で接続部材31に押し付けつつ、バルブ25を接続部材31に対し押し付ける。
【0068】
かかる状態で、両アーム部38を閉じていき、両アーム部38の先端側屈曲部38bをバルブ25の両フランジ部28b,28c間に圧入する。より詳しくは、先端側屈曲部38bの内側面をバルブ25先端側のフランジ部28bの裏側に圧接させつつ、そこから受ける摩擦力に抗して、先端側屈曲部38bを両フランジ部28b,28c間に対し圧力をかけ押し込んでいく。
【0069】
これにより、先端側屈曲部38bがバルブ25先端側のフランジ部28bの裏側に圧接状態で係止される。かかる状態となると、バルブ25及び接続部材31がアーム部38により挟持されたような状態となり、バルブ25及び接続部材31に対し軸線C1方向に互いに押し付けるような圧力がかかった状態となる。
【0070】
そして、バルブ25のガス流通経路29と接続部材31のガス流通経路33とが連通した状態となり、高圧水素タンク8と水素供給用配管LAの接続作業が完了する。
【0071】
つまり、「アーム部38の先端側屈曲部38b」が「係合部材の係合部」を構成し、「バルブ25先端側のフランジ部28b」が「被接続部材の被係合部」を構成する。
【0072】
ここで、後述する第3実施形態〔図14(a)参照〕のように、アーム部38の先端側屈曲部38bの内側面に半球状の係止凸部68を形成すると共に、これに対応して、フランジ部28bの裏面に係止凸部68が嵌入可能な係止凹部69を形成することにより、先端側屈曲部38bがフランジ部28bの裏側に圧接状態で嵌合する構成としてもよい。
【0073】
接続作業が完了すると、図8図9(a),(b)に示すように、バルブ25及び接続部材31が軸線C1方向に対し相対変位不能となり、軸線C1方向に対する高圧水素タンク8の位置も固定される。同時に、バルブ25の被接合部28dと接続部材31の接合部34aとが圧接した状態となり、ガス流通経路29,33間の高気密性が維持される。
【0074】
その後、高圧水素タンク8を図示しないバンド等の固定手段により貯蔵体設置部10に対し固定し、高圧水素タンク8の設置作業を完了する。
【0075】
次に、図1(b)に示す電気自動車1Bについて詳しく説明する。電気自動車1Bは、主要な構成要素として、車体2と、左右一対の前輪3と、左右一対の後輪4と、前輪3を駆動させる電動モータ5と、該電動モータ5への電力供給を制御するPCU6と、電気エネルギーを貯蔵する蓄電池としてのバッテリーパック50と、バッテリーパック50から電動モータ5(PCU6)へ電力を供給する電力供給ラインとしての電気ケーブルLBとを備えている。
【0076】
続いて、貯蔵体設置部10に設置されるバッテリーパック50、並びに、これと電気ケーブルLBとを接続する接続構造について説明する。尚、かかる接続構造は、上述した高圧水素タンク8と水素供給用配管LAの接続構造で用いた接続ユニット30を同じく使用するといった点において、上記接続構造と共通する共通接続構造を有している。
【0077】
図10(a)~(c)に示すように、バッテリーパック50は、円筒形状のケース51を有し、その内部に電池要素52が収容されている。
【0078】
バッテリーパック50には、ケース51の軸線C1方向一端部において、電池要素52と電気的に導通可能に接続された端子部材53が設けられている。端子部材53は、接続ユニット30が接続される被接続部材としても機能するものであり、外見上、上記バルブ25の頭部28と略同一形状となっている。
【0079】
図11(a),(b)に示すように、端子部材53は、最も径方向外側の外殻部を構成する外層部54と、その径方向内側に配置される中層部55と、さらにその径方向内側に配置される内層部56とを有する3層構造となっている。
【0080】
外層部54は、軸線C1方向に沿って形成された円筒状の本体筒部54aと、該本体筒部54aの軸線C1方向両端部から径方向外側に向け延出形成された円環状のフランジ部54b,54cとを備え、これらが導電性金属材料により一体形成されている。
【0081】
本体筒部54aには、軸線C1方向に貫通する孔部57が形成されている。孔部57は、電池要素52と接続される基端側(フランジ部54c側)において軸線C1方向に沿って真っ直ぐに延びる直孔部57aと、接続ユニット30が接合される先端側(フランジ部54b側)において、開口側に向け徐々に拡径したテーパ孔部57bとから構成されている。
【0082】
中層部55は、外層部54の孔部57に対し嵌め込み可能なように、その外側形状が孔部57の内側形状と略同一形状となるよう構成され、絶縁材料により全体として漏斗状に形成されている。また、中層部55の内部には、軸線C1方向に貫通する孔部58が形成されている。孔部58は、基端側において軸線C1方向に沿って真っ直ぐに延びる直孔部58aと、先端側において、開口側に向け徐々に拡径したテーパ孔部58bとから構成されている。
【0083】
内層部56は、中層部55の孔部58に対し嵌め込み可能なように、その外側形状が孔部58の内側形状と略同一形状となるよう、導電性金属材料により一体形成されている。また、内層部56の先端側の端面には、上記接続ユニット30の接合部34aが接合される被接合部59が形成されている。被接合部59は、接合部34aのテーパ形状に対応して、開口側に向け徐々に拡径したテーパ状の凹部となっている。つまり、被接合部59及び接合部34aは、所謂コーンアンドスレッド接続構造を有している。
【0084】
そして、端子部材53のうち、外層部54の基端側が電池要素52の図示しない正極端子と電気的に導通可能に接続され、内層部56の基端側が電池要素52の図示しない負極端子と電気的に導通可能に接続されている。
【0085】
さらに、図12(a)~(c)に示すように、バッテリーパック50の端子部材53は、上記接続ユニット30を介して電気ケーブルLBと電気的に導通可能に接続されている。一方、電気ケーブルLBの他端側は、電動モータ5(PCU6)に電気的に導通可能に接続されている。これにより、電気ケーブルLBを介して、バッテリーパック50から電動モータ5へ電力供給可能となる。
【0086】
かかる構成の下、電気自動車1Bの製造時において、車両プラットフォームの貯蔵体設置部10に対しバッテリーパック50を設置する場合には、まず予め車両プラットフォームに取付けられている接続ユニット30に対し、別途用意した電気ケーブルLBを電気的に導通可能に接続する。
【0087】
具体的には、接続ユニット30のうち、接続部材31を電気ケーブルLB内の負極配線(図示略)と電気的に導通可能に接続し、アーム部38を電気ケーブルLB内の正極配線(図示略)と電気的に導通可能に接続する。従って、「接続ユニット30」のうち「接続部材31」が本実施形態における「第1電気導通経路」を構成し、「アーム部38」が本実施形態における「第3電気導通経路」を構成する。
【0088】
これにより、接続ユニット30と電気ケーブルLBが電気的に導通した状態となる。具体的には、接続部材31と負極配線が電気的に導通した状態となると共に、アーム部38と正極配線が電気的に導通した状態となる。
【0089】
続いて、貯蔵体設置部10に設置したバッテリーパック50の端子部材53を接続部材31に対し接続する。具体的は、端子部材53の被接合部59に対し接続部材31の接合部34aを接合する。
【0090】
次に、接続ユニット30の連結機構部32を、両アーム部38が開いた状態で接続部材31に押し付けつつ、端子部材53を接続部材31に対し押し付ける。
【0091】
かかる状態で、両アーム部38を閉じていき、両アーム部38の先端側屈曲部38bを端子部材53(外層部54)の両フランジ部54b,54c間に圧入する。より詳しくは、先端側屈曲部38bの内側面を端子部材53先端側のフランジ部54bの裏側に圧接させつつ、そこから受ける摩擦力に抗して、先端側屈曲部38bを両フランジ部54b,54c間に対し圧力をかけ押し込んでいく。
【0092】
これにより、先端側屈曲部38bが端子部材53先端側のフランジ部54bの裏側に圧接状態で係止される。かかる状態となると、端子部材53及び接続部材31がアーム部38により挟持されたような状態となり、端子部材53及び接続部材31に対し軸線C1方向に互いに押し付けるような圧力がかかった状態となる。
【0093】
そして、端子部材53のうち、外層部54がアーム部38と電気的に導通可能に接続されると共に、内層部56が接続部材31と電気的に導通可能に接続された状態となり、バッテリーパック50と電気ケーブルLBの接続作業が完了する。
【0094】
つまり、「アーム部38の先端側屈曲部38b」が「係合部材の係合部」を構成し、「端子部材53の先端側のフランジ部54b」が「被接続部材の被係合部」を構成する。また、「内層部56」が本実施形態における「第2電気導通経路」を構成し、「外層部54」が本実施形態における「第4電気導通経路」を構成する。
【0095】
ここで、後述する第3実施形態〔図14(b)参照〕のように、アーム部38の先端側屈曲部38bの内側面に半球状の係止凸部68を形成すると共に、これに対応して、フランジ部54bの裏面に係止凸部68が嵌入可能な係止凹部70を形成することにより、先端側屈曲部38bがフランジ部54bの裏側に圧接状態で嵌合する構成としてもよい。
【0096】
接続作業が完了すると、端子部材53及び接続部材31が軸線C1方向に対し相対変位不能となり、軸線C1方向に対するバッテリーパック50の位置も固定される。同時に、端子部材53の被接合部59と接続部材31の接合部34aが圧接した状態となると共に、アーム部38の先端側屈曲部38bと端子部材53のフランジ部54bとが圧接した状態となる。これにより、端子部材53と接続ユニット30の間の導電性が適切な状態に維持される。
【0097】
その後、バッテリーパック50を図示しないバンド等の固定手段により貯蔵体設置部10に対し固定し、バッテリーパック50の設置作業を完了する。
【0098】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ガス流通経路33及び電気導通経路を有し、水素供給用配管LA又は電気ケーブルLBのいずれにも接続可能な接続部材31を備えると共に、これと接続可能な共通構造(バルブ25の頭部28や端子部材53)を高圧水素タンク8及びバッテリーパック50のいずれにも共通して備えることにより、供給ラインの接続構造の共通化を図ることができる。
【0099】
このように供給ラインの接続構造を共通化することで、車両1A,1Bの製造時において、車両プラットフォームの貯蔵体設置部10に対し高圧水素タンク8又はバッテリーパック50のいずれか一方を選択して設置可能となると共に、設置された高圧水素タンク8又はバッテリーパック50に応じて、水素供給用配管LA又は電気ケーブルLBのいずれか一方を選択して接続可能となり、車両プラットフォームを共通化することができる。
【0100】
ひいては、車両プラットフォームに対し、予めガス供給系統と電力供給系統の2系統を設置しておく必要もなく、部品点数の増加抑制、構造の簡素化、省スペース化及びコストの削減等を図ることができる。
【0101】
また、車両プラットフォームに設置される高圧水素タンク8又はバッテリーパック50に応じて、接続部材31の交換を行う必要もなく、同一の接続部材31を用いることで、該接続部材31等を車両プラットフォームに固定する固定構造も共通化することができる。
【0102】
加えて、連結機構部32を備えることにより、接続部材31と高圧水素タンク8側のバルブ25とを接続する場合には、接合部34aと被接合部28dとの間におけるシール性を適切に維持することができ、接続部材31とバッテリーパック50側の端子部材53とを接続する場合には、接合部34aと被接合部59との間における電気導通性を適切に維持することができる。
【0103】
尚、本実施形態では、バルブ25(又は端子部材53)と接続部材31とを圧接状態で接続するにあたり、一対のアーム部38がベース部37に対し回動変位可能に組付けられた連結機構部32を用いる構成となっているが、これに代えて、ベース部37を省略し、アーム部38のみで、バルブ25(又は端子部材53)と接続部材31とを圧接状態で接続する構成を採用してもよい。
【0104】
例えば、バルブ25(又は端子部材53)と接続部材31とを押し付けた状態の組付体に対し、アーム部38を、その先端側屈曲部38bがバルブ25先端側のフランジ部28b(又は端子部材53先端側のフランジ部54b)の裏側に係止され、かつ、その基端側屈曲部38cが接続部材31のフランジ部35の裏側に係止されるように、軸線C1方向と直交する方向に圧入する。
【0105】
つまり、先端側屈曲部38bの内側面をバルブ25先端側のフランジ部28b(又は端子部材53先端側のフランジ部54b)の裏側に圧接させつつ、かつ、基端側屈曲部38cの内側面を接続部材31のフランジ部35の裏側に圧接させつつ、そこから受ける摩擦力に抗して、アーム部38を上記組付体に対し軸線C1方向と直交する方向に圧力をかけ押し込んでいく。
【0106】
そして、アーム部38の組付けが完了すると、先端側屈曲部38bがバルブ25先端側のフランジ部28b(又は端子部材53先端側のフランジ部54b)の裏側に圧接状態で係止されると共に、基端側屈曲部38cが接続部材31のフランジ部35の裏側に圧接状態で係止された状態となる。
【0107】
かかる状態となると、バルブ25(又は端子部材53)と接続部材31とがアーム部38により挟持されたような状態となり、バルブ25(又は端子部材53)と接続部材31に対し軸線C1方向に互いに押し付けるような圧力がかかった状態となる。
【0108】
勿論、ここで上記同様に、後述する第3実施形態〔図14(a),(b)参照〕のように、アーム部38の先端側屈曲部38b及び基端側屈曲部38cの内側面にそれぞれ半球状の係止凸部を形成すると共に、これに対応して、バルブ25先端側のフランジ部28b(又は端子部材53先端側のフランジ部54b)及び接続部材31のフランジ部35の裏側にそれぞれ前記係止凸部が嵌入可能な係止凹部を形成することにより、先端側屈曲部38b及び基端側屈曲部38cがそれぞれバルブ25先端側のフランジ部28b(又は端子部材53先端側のフランジ部54b)及び接続部材31のフランジ部35の裏側に圧接状態で嵌合する構成としてもよい。
【0109】
〔第2実施形態〕
次に第2実施形態について図面を参照して詳しく説明する。但し、上述した第1実施形態と重複する部分については、同一の部材名称、同一の符号を用いる等してその詳細な説明を省略するとともに、以下には第1実施形態と相違する部分を中心として説明することとする(以下の各実施形態について同様)。
【0110】
本実施形態の接続ユニット30においては、接続部材31を被接続部材(バルブ25や端子部材53)に対し付勢する構成を有している。
【0111】
具体的には、図13(a),(b)に示すように、接続部材31のフランジ部35(大径部35aと小径部35bの間の段差部65)において、付勢手段としてのコイルばね66が取付けられている。
【0112】
かかる構成により、被接続部材に対し接続ユニット30を接続していない状態においては、連結機構部32を基端側へ付勢した状態となる一方、被接続部材に対し接続ユニット30を接続した状態においては、被接合部(バルブ25の被接合部28dや、端子部材53の被接合部59)に対し、接続部材31の接合部34aがより強固に圧接した状態となる。
【0113】
これにより、本実施形態によれば、上記第1実施形態の作用効果に加え、接続ユニット30の接続状態の安定性を高めると共に、バルブ25と接続ユニット30との間の気密性能や、端子部材53と接続ユニット30との間の導電性能の低下抑制を図ることができる。
【0114】
〔第3実施形態〕
次に第3実施形態について図面を参照して詳しく説明する。本実施形態においては、上記第2実施形態の構成に加えて、アーム部38を係止する構成を有している。
【0115】
具体的には、図14(a),(b)に示すように、アーム部38の先端側屈曲部38bの内側面に半球状の係止凸部68が形成されている。これに対応して、先端側屈曲部38bが係合する被係合部(バルブ25のフランジ部28bの裏面や、端子部材53のフランジ部54bの裏面)には、それぞれ係止凸部68が嵌入可能な係止凹部69,70が形成されている。
【0116】
これにより、本実施形態によれば、上記第1,2実施形態の作用効果に加え、アーム部38の係合状態の安定性を高めることができる。結果として、バルブ25の脱落等を抑制することができる。
【0117】
〔第4実施形態〕
次に第4実施形態について図面を参照して詳しく説明する。本実施形態においては、上記第3実施形態に係る係止凸部68に代えて、アーム部38に回転可動部材を備えた構成を有している。
【0118】
具体的には、図15(a)に示すように、アーム部38の先端側屈曲部38bの内側面に凹部75が形成され、該凹部75内にローラー76が収容されている。ローラー76は、軸ピン77により回転可能に軸支されると共に、その一部が先端側屈曲部38bの内側面から突出している。
【0119】
これに対応して、先端側屈曲部38bが係合する被係合部(例えばバルブ25のフランジ部28bの裏面や、端子部材53のフランジ部54bの裏面)には、図17(a),(b)に示すように、それぞれローラー76が係合可能な断面円弧状の環状溝部79,80が形成されている。
【0120】
図16(a),(b)に示すように、環状溝部79は、フランジ部28bの周縁部に沿って、フランジ部28bの周方向全域に形成されている。これにより、ローラー76が、フランジ部28bの径方向に対し係合可能な構成となると共に、フランジ部28bの周方向に対しては摺動可能な構成となる。尚、図16(a),(b)では、簡素化のため、バルブ25の頭部28のみを図示している。
【0121】
また、図示は省略するが、端子部材53のフランジ部54bの裏面に形成される環状溝部80に関しても、環状溝部79と同様に、フランジ部54bの周縁部に沿って、フランジ部54bの周方向全域に形成されている。
【0122】
さらに、ローラー76に代えて、球状の回転可動部材を取付けた構成としてもよい。例えば図15(b)に示すように、アーム部38の先端側屈曲部38bに内部空間83を形成すると共に、該内部空間83内にボール84を脱落不能に収容する。ボール84は、内部空間83において回転可能に支持されると共に、その一部が先端側屈曲部38bの内側面に形成された開口部を介して外部に突出している。
【0123】
これにより、本実施形態によれば、上記第2実施形態の作用効果に加え、接続部材31及び被接続部材(バルブ25や端子部材53)の接続作業を行う際、アーム部38の誘導性を高めると共に、接続部材31及び被接続部材の相対位置関係が接続方向(軸線C1方向)を軸心に周方向へ変化してしまった場合でも適切に接続することができる。
【0124】
結果として、接続作業性の向上を図ることができると共に、接続後において接続部材31及び被接続部材の周方向における相対位置関係の位置調整を行うことも可能となる。
【0125】
〔第5実施形態〕
次に第5実施形態について図面を参照して詳しく説明する。本実施形態においては、連結機構部32(揺動タイプのアーム部38)とは異なる維持手段(係合部材)を備えた構成を有している。
【0126】
本実施形態に係る接続ユニット90の構成について説明する。図18(a),(b)及び図21(a),(b)に示すように、接続ユニット90は、基端側に供給ライン(水素供給用配管LA、電気ケーブルLB)が接続される接続部材91と、被接続部材(バルブ25、端子部材53)と接続部材91の接続状態を維持する維持手段(係合部材)としての外筒部92とからなる。
【0127】
接続部材91は、軸線C1方向に沿って延びるガス流通経路93を有した円筒状の本体筒部94と、該本体筒部94の軸線C1方向先端部近傍から径方向外側に向け延出形成された略円環状の先端側フランジ部95と、該本体筒部94の軸線C1方向基端部から径方向外側に向け延出形成された略円環状の基端側フランジ部96とを備え、これらが導電性金属材料により一体形成されている。
【0128】
本体筒部94には、その先端側において、バルブ25側の被接合部28dに接合するテーパ状の接合部94aが形成されている。
【0129】
図19(a)~(c)に示すように、外筒部92は、本体筒部94の周囲を囲む円筒状の本体部を構成する周壁部92aと、該周壁部92aの基端部から径方向内側に向け延出形成された円環状の天壁部92bと、該周壁部92aの先端部から径方向内側に向け突出された複数の係合突片92cとを備えている。
【0130】
本実施形態では、外筒部92の先端部内側において、周方向に120°間隔で3つの係合突片92cが形成されている。同時に、外筒部92の先端部内側においては、各係合突片92c間にそれぞれ切欠き部92dが形成されることにより、周方向に120°間隔で3つの切欠き部92dが形成されている。
【0131】
周壁部92aの周方向における各係合突片92c及び各切欠き部92dの形成範囲は、それぞれ周方向80°幅及び周方向40°幅に設定されている。
【0132】
天壁部92bの内径は、接続部材91の両フランジ部95,96間における本体筒部94の外径と略同一となっている。そして、この両フランジ部95,96間における本体筒部94の外周部に対し、天壁部92bが軸線C1方向に対し摺動可能に組付けられている。
【0133】
両フランジ部95,96の外径は、天壁部92bの内径よりも大きく設定されている。これにより、外筒部92が接続部材91から脱落不能な状態となっている。
【0134】
さらに、先端側フランジ部95と天壁部92bの間には、図示しない座金等を介して、付勢手段としての複数のコイルばね100が嵌め込まれている。これにより、被接続部材に対し接続ユニット90を接続していない状態においては、コイルばね100の付勢力により外筒部92の天壁部92bが基端側フランジ部96に付勢された状態となっている。
【0135】
接続ユニット90に対応して、本実施形態では、高圧水素タンク8のバルブ25の形状が上記第1実施形態等は異なっている。具体的には、頭部28の先端側のフランジ部28bの形状が異なる。図20(a)~(c)に示すように、フランジ部28bの周縁部には、周方向に120°間隔で3つの切欠き部101が形成されている。同時に、フランジ部28bの周縁部には、各切欠き部101間にそれぞれ係合突片102が形成されることにより、周方向に120°間隔で3つの係合突片102が形成されている。尚、図20(a)~(c)においては、簡素化のため、バルブ25の頭部28のみを図示している。
【0136】
フランジ部28bの切欠き部101及び係合突片102は、上記外筒部92の係合突片92c及び切欠き部92dに対応したものであり、フランジ部28bの周方向におけるその形成範囲は、それぞれ周方向80°幅及び周方向40°幅に設定されている。
【0137】
これにより、接続ユニット90をバルブ25に対し接続する際には、軸線C1方向に沿って、外筒部92の各係合突片92cをフランジ部28bの各切欠き部101に対しそれぞれ挿し込み可能、かつ、フランジ部28bの各係合突片102を外筒部92の切欠き部92dに対しそれぞれ挿し込み可能となる。
【0138】
かかる構成の下、燃料電池自動車1Aの製造時において、車両プラットフォームの貯蔵体設置部10に対し高圧水素タンク8を設置する場合には、まず予め車両プラットフォームに取付けられている接続ユニット90の接続部材91に対し、別途用意した水素供給用配管LAを接続固定する。
【0139】
続いて、貯蔵体設置部10に設置した高圧水素タンク8のバルブ25を接続部材91に対し接続する。具体的は、バルブ25の被接合部28dに対し接続部材91の接合部94aを接合する。
【0140】
次に、接続ユニット90の外筒部92を、コイルばね100の付勢力に抗して軸線C1方向に沿ってバルブ25側へ押し込んでいくと共に、外筒部92の各係合突片92c及び各切欠き部92dの周方向位置を、フランジ部28bの各切欠き部101及び各係合突片102の位置に位置合わせする。
【0141】
続いて、さらに外筒部92を押し込んでいき、外筒部92の各係合突片92cをフランジ部28bの各切欠き部101に対しそれぞれ挿し込み、かつ、フランジ部28bの各係合突片102を外筒部92の切欠き部92dに対しそれぞれ挿し込む。
【0142】
そして、軸線C1方向における、外筒部92の各係合突片92c及び各切欠き部92dの位置が、フランジ部28bの各切欠き部101及び各係合突片102を越えたとろで、外筒部92を軸線C1を中心に60°回動させる。
【0143】
これにより、外筒部92の各係合突片92cがそれぞれフランジ部28bの係合突片102の裏側に係止されると共に、バルブ25のガス流通経路29と接続部材91のガス流通経路93とが連通した状態となり、高圧水素タンク8と水素供給用配管LAの接続作業が完了する。
【0144】
接続作業が完了すると、バルブ25及び接続部材91が軸線C1方向に対し相対変位不能となり、軸線C1方向に対する高圧水素タンク8の位置も固定される。同時に、コイルばね100の付勢力により、バルブ25の被接合部28dと接続部材91の接合部94aとが圧接した状態となり、ガス流通経路29,93間の高気密性が維持される。
【0145】
さて、上記バルブ25と同様、本実施形態では、接続ユニット90に対応して、バッテリーパック50の端子部材53の形状が上記第1実施形態等は異なっている。具体的には、外層部54の先端側のフランジ部54bの形状が異なる。図22(a)~(c)に示すように、フランジ部54bの周縁部には、周方向に120°間隔で3つの切欠き部111が形成されている。同時に、フランジ部54bの周縁部には、各切欠き部111間にそれぞれ係合突片112が形成されることにより、周方向に120°間隔で3つの係合突片112が形成されている。
【0146】
フランジ部54bの切欠き部111及び係合突片112は、上記外筒部92の係合突片92c及び切欠き部92dに対応したものであり、フランジ部54bの周方向におけるその形成範囲は、それぞれ周方向80°幅及び周方向40°幅に設定されている。
【0147】
かかる構成により、接続ユニット90を端子部材53に対し接続する際には、軸線C1方向に沿って、外筒部92の各係合突片92cをフランジ部54bの各切欠き部111に対しそれぞれ挿し込み可能、かつ、フランジ部54bの各係合突片112を外筒部92の切欠き部92dに対しそれぞれ挿し込み可能となる。
【0148】
尚、本実施形態において、外筒部92は、その本体部が高剛性の導電性金属材料により形成されているが、少なくとも接続部材91と隣接する部位においては、例えば絶縁スペーサを介するなど絶縁処理が施されており、接続部材91との間における電気的導通が遮断された構成となっている。
【0149】
かかる構成の下、電気自動車1Bの製造時において、車両プラットフォームの貯蔵体設置部10に対しバッテリーパック50を設置する場合には、まず予め車両プラットフォームに取付けられている接続ユニット90の接続部材91に対し、別途用意した電気ケーブルLBを電気的に導通可能に接続する。
【0150】
具体的には、接続ユニット90のうち、接続部材91を電気ケーブルLB内の負極配線(図示略)と電気的に導通可能に接続し、外筒部92を電気ケーブルLB内の正極配線(図示略)と電気的に導通可能に接続する。従って、「接続ユニット90」のうち「接続部材91」が本実施形態における「第1電気導通経路」を構成し、「外筒部92」が本実施形態における「第3電気導通経路」を構成する。
【0151】
続いて、貯蔵体設置部10に設置したバッテリーパック50の端子部材53を接続部材91に対し接続する。具体的は、端子部材53の被接合部59に対し接続部材91の接合部94aを接合する。
【0152】
次に、接続ユニット90の外筒部92を、コイルばね100の付勢力に抗して軸線C1方向に沿って端子部材53側へ押し込んでいくと共に、外筒部92の各係合突片92c及び各切欠き部92dの周方向位置を、外層部54の先端側のフランジ部54bの各切欠き部111及び各係合突片112の位置に位置合わせする。
【0153】
続いて、さらに外筒部92を押し込んでいき、外筒部92の各係合突片92cをフランジ部54bの各切欠き部111に対しそれぞれ挿し込み、かつ、フランジ部54bの各係合突片112を外筒部92の切欠き部92dに対しそれぞれ挿し込む。
【0154】
そして、軸線C1方向における、外筒部92の各係合突片92c及び各切欠き部92dの位置が、フランジ部54bの各切欠き部111及び各係合突片112を越えたとろで、外筒部92を軸線C1を中心に60°回動させる。
【0155】
これにより、外筒部92の各係合突片92cがそれぞれフランジ部54bの係合突片112の裏側に係止される。ここで、「外筒部92の各係合突片92c」が「係合部材の係合部」を構成し、「フランジ部54bの係合突片112」が「被接続部材の被係合部」を構成する。
【0156】
係合突片92cが係合突片112に係止されると、端子部材53のうち、外層部54が外筒部92と電気的に導通可能に接続されると共に、内層部56が接続部材91と電気的に導通可能に接続された状態となり、バッテリーパック50と電気ケーブルLBの接続作業が完了する。
【0157】
接続作業が完了すると、端子部材53及び接続部材91が軸線C1方向に対し相対変位不能となり、軸線C1方向に対するバッテリーパック50の位置も固定される。
【0158】
同時に、コイルばね100の付勢力により、端子部材53の被接合部59と接続部材91の接合部94aが圧接した状態となると共に、外筒部92の各係合突片92cと端子部材53のフランジ部54bの係合突片112とが圧接した状態となる。これにより、端子部材53と接続ユニット90の間の導電性が適切な状態に維持される。
【0159】
以上詳述したように、本実施形態においては、接続ユニット90の外筒部92が接続部材91の接合部94a及びバルブ25側の被接合部28dの周囲を囲むように配置される。
【0160】
これにより、本実施形態によれば、上記第1実施形態等の作用効果に加え、該接合部94a及びバルブ25側の被接合部28dを保護することができる。
【0161】
〔第6実施形態〕
次に第6実施形態について図面を参照して詳しく説明する。本実施形態においては、接続ユニット30の接続部材31を被接続部材(バルブ25や端子部材53)に対し付勢する付勢手段(維持手段)として、上記第2実施形態等のコイルばね66に代わる機構を車両プラットフォームに備えた構成となっている。
【0162】
具体的には、図23(a),(b)に示すように、車両プラットフォームにおいて揺動操作可能に設けられた操作レバー200と、接続ユニット30の連結機構部32におけるベース部37の基端側の設けられたコ字状のハンドル部201と、該ハンドル部201と操作レバー200とを連結する連結部材203とを備えている。
【0163】
操作レバー200には、所定方向への動きのみを許容し反対方向への動きを規制する機構(例えばラチェット機構など)や、その規制を解除する機構などが設けられている。本実施形態では、高圧水素タンク8側〔図23左方向〕への動きを規制し、その反対側〔図23右方向〕へ動きを許容するように構成されている。
【0164】
かかる構成の下、燃料電池自動車1Aの製造時において、車両プラットフォームの貯蔵体設置部10に対し高圧水素タンク8を設置した後、バルブ25の被接合部28dに対し接続部材31の接合部34aを接合する。続いて、接続ユニット30の連結機構部32の両アーム部38の先端側屈曲部38bをバルブ25先端側のフランジ部28bの裏側に係止させる。
【0165】
その後、操作レバー200を操作して、連結機構部32を高圧水素タンク8とは反対方向となる外方(図23右方向)へ引き寄せる。これにより、車両プラットフォームに固定された接続部材31の位置は変化せず、連結機構部32のみが接続部材31に対し相対変位して外方へ引き寄せられる。
【0166】
そして、バルブ25及び高圧水素タンク8が外方へ所定量引き寄せられると、接続作業が完了する。接続作業が完了すると、バルブ25の被接合部28dと接続部材31の接合部34aとが圧接した状態となり、ガス流通経路29,33間の高気密性が維持される。
【0167】
その後、高圧水素タンク8を図示しないバンド等の固定手段により貯蔵体設置部10に対し固定し、高圧水素タンク8の設置作業を完了する。尚、バッテリーパック50の設置作業に関しても同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0168】
これにより、本実施形態によれば、上記第1実施形態の作用効果に加え、高圧水素タンク8の接続状態の安定性を高めると共に、バルブ25と接続ユニット30との間の気密性能や、端子部材53と接続ユニット30との間の導電性能の低下抑制を図ることができる。
【0169】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0170】
(a)本発明に係る供給ラインの共通接続構造を備えた車両プラットフォームが用いられる車両は上記各実施形態に限定されるものではない。
【0171】
例えば上記各実施形態では、燃料ガスタンクを搭載した車両として、高圧水素タンク8を搭載した燃料電池自動車1Aが例示されている。
【0172】
これに限らず、例えば燃料ガス(天然ガスや水素ガスなど)を貯蔵した燃料ガスタンクを搭載し、ここから供給される燃料ガスを使用して内燃機関を駆動させ走行する天然ガス自動車や水素自動車などに適用してもよい。また、内燃機関により駆動するエンジン発電機にて発生する電気を使用して電動モータを駆動させ走行する車両に適用してもよい。
【0173】
また、上記各実施形態では、蓄電池を搭載した車両として、バッテリーパック50を搭載した電気自動車1Bが例示されている。
【0174】
これに限らず、例えば天然ガス自動車などの内燃機関の補助動力源として電動モータを備え、該電動モータに対し電力供給を行う蓄電池を備えた車両に適用してもよい。
【0175】
(b)燃料ガスタンクや蓄電池などのエネルギー貯蔵体、及び、これを設置するための貯蔵体設置部の構成や数、配置レイアウトなどは、上記各実施形態に限定されるものではない。
【0176】
例えば上記各実施形態では、車両プラットフォームにおいて貯蔵体設置部10が1つだけ設けられた構成となっているが、これに限らず、複数の貯蔵体設置部を備えた構成としてもよい。
【0177】
上記各実施形態では、貯蔵体設置部10が車両プラットフォームの前後方向後端寄りに配置され、その長手方向が車幅方向に沿うように設けられている。これに限らず、例えば貯蔵体設置部10が車両プラットフォームの前後方向略中央部に配置され、その長手方向が前後方向に沿うように設けられた構成としてもよい。
【0178】
上記各実施形態では、円筒型貯蔵体を設置可能な断面半円凹状の貯蔵体設置部10が設けられた構成となっているが、エネルギー貯蔵体を設置する貯蔵体設置部の構成は、これに限定されるものではない。
【0179】
例えば車両プラットフォームの平坦面に載置したエネルギー貯蔵体を金具等により固定する構成としてもよい。例えば平坦面に載置した円筒型貯蔵体を半円弧状の金具等により固定する構成としてもよい。
【0180】
つまり、高圧水素タンク8やバッテリーパック50などのエネルギー貯蔵体の形状は、円筒形状に限定されるものではなく、例えば直方体形状のバッテリーパックを搭載する構成としてもよい。
【0181】
但し、高圧水素タンク8等の燃料ガスタンクの一般的な形状に合わせて、バッテリーパック50等の蓄電池の外形状が略同一径の円筒形状に統一されている方が、コスト面においても、車両プラットフォームの共通化を図る上でも好ましい。
【0182】
(c)燃料タンクの構成は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば上記各実施形態に係る高圧水素タンク8は、タンク本体部20が、プラスチックライナー、その外側の炭素繊維強化プラスチック層、さらにその外側のガラス繊維強化プラスチック層を有する3層構造となっているが、タンク本体部20に係る構成は、これに限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。例えば金属製であってもよい。
【0183】
上記各実施形態では、車両プラットフォームに対しブラケット等を介して固定された接続部材31に対しバルブ25が接続されることにより、軸線C1方向に対する高圧水素タンク8(口金23)の位置も固定される構成となっている。
【0184】
これに限らず、例えば接続部材31が予め車両プラットフォームに固定されていない構成としてもよい。かかる場合、接続部材31とバルブ25とが接続された後、接続部材31又は口金23の少なくとも一方がブラケット等を介して車両プラットフォームに固定される構成としてもよい。
【0185】
(d)蓄電池の構成は上記各実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態では電池要素52の具体的な構成について特に言及していないが、例えば複数の電池セルが収容された電池モジュールを複数個並べたものを電池要素52として円筒形状のケース51内に収容した構成としてもよい。ここで、電池セルには、繰り返し充放電が可能なニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池を用いることができる。
【0186】
勿論、これに限らず、円筒形状のケース51内に、電池モジュールが1つだけ収容された構成としてもよい。また、円筒形状ではない電池モジュール(例えば直方体形状の電池モジュール)を円筒形状のケース51内に収容した構成としてもよい。
【0187】
(e)接続部材及び被接続部材、並びに、これらの接続構造については、上記各実施形態に限定されるものではない。
【0188】
例えば上記各実施形態では、接続部材31側のテーパ突状の接合部34aと、バルブ25側のテーパ凹状の被接合部28d(又は端子部材53側のテーパ凹状の被接合部59)と接合する構成、所謂コーンアンドスレッド接続構造を有している。
【0189】
これに限らず、接合部34a及び被接合部28d(又は被接合部59)の接合面がそれぞれ、軸線C1と直交する平坦面となった構成としてもよい。
【0190】
また、燃料ガスの漏れを抑えるため、バルブ25側の被接合部28dにOリングなどのシール部材を備えた構成としてもよい。
【0191】
上記各実施形態では、バルブ25の頭部28が高圧水素タンク8側の被接続部材として機能する構成となっているが、これに代えて、バルブ25とは別体で被接続部材を備え、これをバルブ25に組み付ける構成としてもよい。
【0192】
(f)維持手段(係合部材等)の構成は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1実施形態等において、連結機構部32のアーム部38を開閉動作するモータ等の駆動手段を備え、連結機構部32による接続部材31と被接続部材(バルブ25や端子部材53)とを接続する動作を自動に行える構成としてもよい。
【0193】
また、上記第5実施形態の外筒部92において、係合突片92cに代えて、雌ネジ部を形成すると共に、バルブ25の頭部28のフランジ部28b(端子部材53のフランジ部54b)の周縁部において、前記雌ネジ部が螺合する雄ネジ部を形成することにより、バルブ25の頭部28(端子部材53)が外筒部92に取付け固定される構成としてもよい。
【0194】
また、上記第6実施形態において、連結機構部32のベース部37を省略し、ハンドル部201とアーム部38とを直接接続した構成の下、操作レバー200によって直接アーム部38を操作して高圧水素タンク8を接続部材31側へ引き寄せ、維持する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0195】
1A…燃料電池自動車、1B…電気自動車、5…電動モータ、7…燃料電池システム、8…高圧水素タンク、10…貯蔵体設置部、20…タンク本体部、23…口金、25…バルブ、28…頭部、28b…フランジ部、28d…被接合部、29…ガス流通経路、30…接続ユニット、31…接続部材、32…連結機構部、33…ガス流通経路、34…本体筒部、34a…接合部、38…アーム部、38b…先端側屈曲部、50…バッテリーパック、52…電池要素、53…端子部材、54…外層部、56…内層部、59…被接合部、LA…水素供給用配管、LB…電気ケーブル。
図1
図2
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