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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】塗布ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20220511BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B62D65/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019094917
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020189354
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大江 正浩
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-000905(JP,A)
【文献】特開2011-104720(JP,A)
【文献】特開平05-108125(JP,A)
【文献】特開2002-036574(JP,A)
【文献】特開2005-103507(JP,A)
【文献】特開昭64-019474(JP,A)
【文献】特開昭62-278610(JP,A)
【文献】特開2015-039666(JP,A)
【文献】特開平10-202161(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0171372(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B62D 65/00-65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置によって搬送される被搬送物に対して塗布剤を塗布する塗布ロボットであって、
前記被搬送物に対して前記塗布剤を塗布する塗布装置と、
前記被搬送物の特定部位の位置を検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置の検出結果に基づいて前記塗布剤を塗布すべき塗布位置を特定する制御装置と、
前記塗布装置に着脱可能に設けられ、前記塗布剤の非塗布時における前記塗布剤の液垂れを防止する液垂れ防止体と、
前記塗布装置から取り外される前記液垂れ防止体を回収する回収装置と、
前記塗布装置を前記塗布位置に移動可能に支持するアーム部と、
を備え、
前記位置検出装置は、前記塗布装置とともに前記アーム部に設けられ、前記アーム部の作動によって、前記液垂れ防止体を取り付けた状態の前記塗布装置とともに移動して前記被搬送物の特定部位の位置を検出し、
前記塗布装置は、前記制御装置によって前記塗布位置が特定され、前記液垂れ防止体が取り外された後、前記被搬送物に対して前記塗布剤を塗布し、
前記回収装置は、前記液垂れ防止体を回収する回収部と、前記回収部を支持して前記被搬送物に向けて伸長移動する伸長部と、を備え、前記伸長部の伸長移動によって前記回収部を前記被搬送物に向けて移動させ、前記液垂れ防止体を回収すること
を特徴とする塗布ロボット。
【請求項2】
前記塗布装置から液垂れする塗布剤を受ける受け装置を備え、
前記受け装置は、前記回収装置に設けられ、前記伸長部の伸長移動によって前記被搬送物まで移動すること
を特徴とする請求項1に記載の塗布ロボット。
【請求項3】
前記位置検出装置は、
前記被搬送物を撮像する撮像部を備え、
前記撮像部が撮像する被搬送物の画像に基づいて、前記被搬送物の特定部位の位置と、前記塗布装置によって前記搬送物に塗布された前記塗布剤の塗布状態と、が検出されること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗布ロボット。
【請求項4】
前記被搬送物は車体であり、
前記位置検出装置は、前記車体の上方から前記車体の特定部位の位置を検出し、
前記塗布装置は、前記車体の上方から前記塗布剤を塗布すること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の塗布ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置によって搬送される被搬送物に対して塗布剤を塗布する塗布ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置によって搬送される被搬送物に対して塗布剤を塗布する塗布ロボットとしては、特許文献1に示すような塗布ロボットがある。
特許文献1の塗布ロボットは、自動車の組立ラインにおいて、車体のフロントガラス取付部にプライマを塗布するロボットである。特許文献1の塗布ロボットは、車体前部のフロントガラス取付部にプライマを塗布するためのプライマ塗布ステーションに配設され、塗装ラインにて塗装が行われてプライマ塗布ステーションの所定位置に搬送された車体のフロントガラス取付部にプライマを塗布する。
従来の自動車の組立ラインにおいては、車体にインストルメントパネルユニット等の内装品を取り付けた後に、車体のフロントガラス取付部にプライマを塗布するため、プライマの塗布作業時に、プライマが内装品に垂れ落ちないように、人手によって、極めて慎重に塗布作業を行う必要があったが、特許文献1の自動車の組立方法のように、車体に内装品を取り付ける前に、プライマの塗布作業を行うことで、内装品にプライマを付着させて汚すことなく、プライマを迅速に車体のフロントガラス取付部に塗布することができ、自動で塗布作業を行えるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-97077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の自動車の組立方法においては、刷毛を車体の側方から車体のフロントガラス取付部(車体においてプライマ塗布を開始する位置)まで移動させる際に、刷毛からプライマが垂れ落ちて、フロントガラス取付部以外の部分に付着し、車体を汚す場合があった。そのため、特許文献1の自動車の組立方法のように、プライマの塗布作業を塗布ロボットによって自動で行う場合には、刷毛からのプライマの液垂れを避けつつ、刷毛を車体に向けて移動させる必要があり、車体に対するプライマの塗布作業を、塗布ロボットによって自動で迅速に行うことが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、搬送装置によって搬送される被搬送物に対して塗布剤を塗布すべき塗布位置以外の位置に塗布剤を付着させることなく、自動で迅速に塗布剤の塗布作業を行うことが可能な塗布ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上であり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、本発明の塗布ロボットは、搬送装置によって搬送される被搬送物に対して塗布剤を塗布する塗布ロボットであって、前記被搬送物に対して前記塗布剤を塗布する塗布装置と、前記被搬送物の特定部位の位置を検出する位置検出装置と、前記位置検出装置の検出結果に基づいて前記塗布剤を塗布すべき塗布位置を特定する制御装置と、前記塗布装置に着脱可能に設けられ、前記塗布剤の非塗布時における前記塗布剤の液垂れを防止する液垂れ防止体と、前記塗布装置から取り外される前記液垂れ防止体を回収する回収装置と、前記塗布装置を前記塗布位置に移動可能に支持するアーム部と、を備え、前記位置検出装置は、前記塗布装置とともに前記アーム部に設けられ、前記アーム部の作動によって、前記液垂れ防止体を取り付けた状態の前記塗布装置とともに移動して前記被搬送物の特定部位の位置を検出し、前記塗布装置は、前記制御装置によって前記塗布位置が特定され、前記液垂れ防止体が取り外された後、前記被搬送物に対して前記塗布剤を塗布し、前記回収装置は、前記液垂れ防止体を回収する回収部と、前記回収部を支持して前記被搬送物に向けて伸長移動する伸長部と、を備え、前記伸長部の伸長移動によって前記回収部を前記被搬送物に向けて移動させ、前記液垂れ防止体を回収するものである。
上記構成では、塗布装置は、位置検出装置によって被搬送物の特定部位の位置の検出が行われる際には、液垂れ防止体を取り付けた状態で位置検出装置とともに移動し、被搬送物に対して塗布剤を塗布する際には、被搬送物に向けて移動する回収装置によって液垂れ防止体が回収された状態で塗布剤の塗布を行う。
【0007】
本発明の塗布ロボットは、上記塗布ロボットにおいて、前記塗布装置から液垂れする塗布剤を受ける受け装置を備え、前記受け装置は、前記回収装置に設けられ、前記伸長部の伸長移動によって前記被搬送物まで移動するものである。
上記構成では、受け装置は、回収装置とともに被搬送物まで移動した状態で、塗布装置から液垂れする塗布剤を受ける。
【0008】
本発明の塗布ロボットは、上記塗布ロボットにおいて、前記位置検出装置は、前記被搬送物を撮像する撮像部を備え、前記撮像部が撮像する被搬送物の画像に基づいて、前記被搬送物の特定部位の位置と、前記塗布装置によって前記搬送物に塗布された前記塗布剤の塗布状態と、が検出されるものである。
上記構成では、位置検出装置は、撮像部が撮像する被搬送物の画像に基づいて、被搬送物の特定部位の位置と、搬送物に塗布された塗布剤の塗布状態と、を検出する。
【0009】
本発明の塗布ロボットは、上記塗布ロボットにおいて、前記被搬送物は車体であり、前記位置検出装置は、前記車体の上方から前記車体の特定部位の位置を検出し、前記塗布装置は、前記車体の上方から前記塗布剤を塗布するものである。
上記構成では、塗布ロボットは、車体の特定部位の位置の検出及び車体への塗布剤の塗布を車体の上方から行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗布ロボットによれば、塗布装置が、被搬送物に向けて移動する回収装置の回収部に液垂れ防止体が回収された状態から被搬送物に対する塗布剤の塗布を開始することができることから、被搬送物に対して塗布剤を塗布すべき塗布位置以外の位置に塗布剤を付着させることなく、自動で迅速に塗布剤の塗布作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る塗布ロボットの斜視図である。
図2】本発明に係る塗布ロボットの塗布装置近傍の斜視図である。
図3】本発明に係る塗布ロボットのキャップ着脱装置の斜視図である。
図4】本発明に係る塗布ロボットにおけるキャップの刷毛への取り付け方法を示す斜視図である。
図5】従来の塗布ロボットの制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の塗布ロボット10について説明する。なお、本発明は、以下に示す塗布ロボット10に限定されるものではない。
図1に示すように、塗布ロボット10は、自動車のボディ90(「被搬送物」の一例)前部のフロントガラス取付部91に、プライマ(「塗布剤」の一例)を塗布するロボットである。ここで、フロントガラス取付部91とは、自動車のボディ90の前部におけるフロントガラスと自動車のボディ90との接着面をいう。
塗布ロボット10は、自動車の製造ラインが設けられる工場内に配置される。具体的には、塗布ロボット10は、自動車の製造ラインにおいて自動車のボディ90にプライマを塗布するエリア(プライマ塗布エリア)であって、自動車のボディ90を搬送経路に沿って搬送する搬送装置95の近傍に配置される。塗布ロボット10は、自動車の製造ラインのプライマ塗布エリアにおける所定位置Sまで搬送装置95によって搬送された自動車のボディ90に対してプライマを塗布する。
【0013】
図1図2及び図5に示すように、塗布ロボット10は、ロボット本体11と、ロボット本体11に設けられるアーム部12と、自動車のボディ90に対してプライマを塗布する塗布装置20と、塗布装置20の刷毛21に着脱可能に設けられ、刷毛21からのプライマの液垂れを防止するキャップ30(「液垂れ防止体」の一例)と、自動車のボディ90を撮像するカメラ40(「位置検出装置」、「撮像部」の一例)と、刷毛21に対するキャップ30の着脱を行うキャップ着脱装置50(「回収装置の一例」)と、刷毛21から液垂れするプライマを受ける受け皿55(「受け装置」の一例)と、キャップ30が取り外された刷毛21を保持する刷毛保持装置56と、塗布ロボット10全体を制御するコントローラ60(「位置検出装置」、「制御装置」の一例)と、を主に備える。
【0014】
ロボット本体11は、アーム部12を旋回可能に支持するものである。ロボット本体11は、搬送装置95の近傍に配置される。ロボット本体11は、搬送装置95により所定位置Sまで搬送された自動車のボディ90に向けてアーム部12を旋回させる。
アーム部12は、ロボット本体11に支持されて、その先端部を搬送装置95により所定位置Sまで搬送された自動車のボディ90に向けて移動させる。アーム部12は、その先端側に、塗布装置20及びカメラ40を保持するための先端保持部13が設けられている。アーム部12は、先端保持部13を移動させることで、塗布装置20及びカメラ40を所定の位置に移動させる。
図2に示すように、先端保持部13は、その先端側において塗布装置20を保持し、塗布装置20より上方の位置でカメラ40を保持する。先端保持部13は、その先端側に、キャップ30の有無を検出するキャップ検出センサ14が設けられている。
アーム部12の先端部には、先端保持部13及びカメラ40を覆うカバー15が取り付けられている。
カバー15は、その内部に先端保持部13及びカメラ40を収容可能な箱状の部材により構成されている。カバー15は、その一方側がアーム部12に固定され、その他方側が開口している。カバー15は、その他方側の開口部分から塗布装置20の刷毛21が突出して設けられている。
【0015】
塗布装置20は、プライマを自動車のボディ90に塗布する刷毛21と、刷毛21を保持する刷毛保持部22と、刷毛21にプライマを供給するプライマ供給装置24(図5)と、から主に構成されている。
刷毛21は、刷毛保持部22の先端に取り付けられている。刷毛21には、プライマ供給装置24からパイプ等を介してプライマが供給される。刷毛21は、アーム部12の作動により自動車のボディ90上を移動することで、プライマ供給装置24から供給されるプライマを自動車のボディ90の上方から自動車のボディ90に塗布する。
刷毛保持部22は、先端保持部13に対して旋回可能に設けられる。刷毛保持部22は、その基端側(先端保持部13によって支持される側)に、キャップ30を引っ掛けるブラケット23が設けられ、その先端側(ブラケット23が設けられる側と反対側)において刷毛21を保持する。ブラケット23にはマグネット(図示せず)が設けられている。当該マグネットは、その磁力によって、キャップ30がブラケット23に引っ掛かった状態を保持する。
【0016】
図1及び図4に示すように、キャップ30は、その内部に刷毛21を収容可能な有底円筒状の筒体により形成されている。キャップ30は、刷毛保持部22に装着されることで、刷毛21から液垂れするプライマを受ける。キャップ30は、その筒体の一端部に引掛け溝31が形成されている。キャップ30は、刷毛保持部22のブラケット23に引掛け溝31を引っ掛けることで、ブラケット23に固定される。具体的には、図4(b)に示すように、キャップ30の引掛け溝31と刷毛保持部22のブラケット23とを嵌合させ、引掛け溝31とブラケット23とを嵌合させた状態で刷毛保持部22をキャップ30に対して旋回させる。これにより、図4(c)に示すように、ブラケット23に引掛け溝31が引っ掛かり、キャップ30がブラケット23に固定される。
【0017】
図2に示すように、カメラ40は、例えば、光学カメラ(CCDカメラ)であり、アーム部12の先端保持部13に固定されている。カメラ40は、カバー15の他方側(カバー15の開口部側)に向けて配置され、搬送装置95により所定位置Sまで搬送された自動車のボディ90の特定部位、及び、自動車のボディ90の前部におけるフロントガラスと自動車のボディ90との接着面(自動車のボディ90におけるプライマの塗布位置)を、自動車のボディ90の上方から撮像する。
【0018】
図1及び図3に示すように、キャップ着脱装置50は、ロボット本体11の近傍に、ロボット本体11と別体で設けられ、搬送装置95により所定位置Sまで搬送された自動車のボディ90に向けて伸長移動可能に構成される。キャップ着脱装置50は、キャップ30を保持するキャップ保持部51(「回収部」の一例)と、キャップ保持部51を支持して自動車のボディ90に向けて伸長移動する伸長部52と、を備える。
キャップ保持部51は、その内部にキャップ30を収容可能な有底円筒状の筒体により形成されている。キャップ保持部51は、筒体の内径がキャップ30の外径より大きく形成されている。キャップ保持部51は、その筒体の底面にマグネット(図示せず)が設けられ、キャップ30が差し込まれた際に、キャップ30が当該マグネットの磁力により浮き上がらないように構成されている。キャップ保持部51は、塗布装置20の刷毛保持部22から取り外されたキャップ30を筒体の内部に差し込んだ状態で回収し、又は塗布装置20の刷毛保持部22に取り付ける予定のキャップ30を筒体の内部に差し込んだ状態で保持する。キャップ保持部51の側部には、キャップ保持部51内のキャップ30の有無を検出するキャップ検出センサ57が設けられている。
【0019】
図3に示すように、伸長部52は、ロボット本体11の近傍に設けられるベース部材53と、キャップ保持部51を支持してベース部材53に対して摺動するスライド部材54と、から主に構成されている。
ベース部材53は、ロボット本体11の近傍から搬送装置95に向けて延設される長尺状の部材である。ベース部材53は、その上部においてスライド部材54を摺動可能に支持する。ベース部材53は、その上部にスライド部材54を摺動させるためのレール53aが形成されている。
スライド部材54は、ベース部材53に沿って延設される部材である。スライド部材54は、ベース部材53の上面に摺動可能に支持される連結部54aと、連結部54aに固定される長尺状の支持部材54bと、から構成されている。支持部材54bは、その先端部において、キャップ保持部51を支持する。スライド部材54の連結部54aがベース部材53の上面を摺動することで、スライド部材54の支持部材54bがキャップ保持部51を支持した状態で自動車のボディ90に向けて伸長移動し、又はロボット本体11側(自動車のボディ90から離れる側)に向けて収縮移動する。
【0020】
受け皿55は、水平に設けられる平板状の部材である。受け皿55は、キャップ着脱装置50の伸長部52に設けられる。具体的には、受け皿55は、伸長部52のスライド部材54における支持部材54bの下面に取り付けられている。受け皿55は、スライド部材54の支持部材54bに取り付けられていることから、スライド部材54の連結部54aがベース部材53のレール53aを摺動することで、スライド部材54の支持部材54bとともに自動車のボディ90に向けて移動し、又はロボット本体11側(自動車のボディ90から離れる側)に向けて移動する。
【0021】
図1に示すように、刷毛保持装置56は、ロボット本体11の近傍に設けられる。刷毛保持装置56は、その内部に刷毛21を挿入可能な有底円筒状の筒体により形成されている。刷毛保持装置56の内部にはプライマが入れられている。そのため、刷毛保持装置56の内部に刷毛21を挿入することで、刷毛21をプライマ揮発雰囲気内で保持することができ、プライマの非塗布時におけるプライマによる刷毛21の固着を防止することができる。
【0022】
コントローラ60は、例えば、中央処理装置と、ハードディスク等の記憶装置と、を備えたパーソナルコンピュータ或いはPCサーバ等の汎用コンピュータによって構成され、入力される情報に基づいて情報処理を実行可能に構成されている。図5に示すように、コントローラ60は、塗布ロボット10の各部と接続され、塗布ロボット10全体を制御する。
コントローラ60は、塗布ロボット10を制御するに際し、自動車のボディ90においてプライマを塗布すべき塗布位置の特定、及び自動車のボディ90に塗布されたプライマの塗布状態の検出を行う。
コントローラ60は、自動車のボディ90におけるプライマの塗布位置を特定することで、刷毛21がプライマの塗布を行う範囲(刷毛21の軌道)を決定し、決定した塗布範囲に従って刷毛21(アーム部12)の動きを制御する。そのため、コントローラ60は、プライマ塗布エリアの所定位置Sまで搬送されてくる自動車のボディ90毎に、自動車のボディ90の姿勢(自動車のボディ90の傾き具合)を判定して、自動車のボディ90に対してプライマを塗布する際の自動車のボディ90上での刷毛21の軌道を、プライマ塗布エリアの所定位置Sまで搬送されてくる自動車のボディ90の姿勢(自動車のボディ90の傾き具合)に合わせて補正する。
コントローラ60は、自動車のボディ90の姿勢(自動車のボディ90の傾き具合)の判定を、自動車のボディ90の特定部位の位置を検出することにより行う。ここで、自動車のボディ90の特定部位とは、自動車のボディ90の姿勢(自動車のボディ90の傾斜具合)を判定するための基準となる自動車のボディ90上の特定ポイントのことであり、具体的には、自動車のボディ90の姿勢を判断可能な自動車のボディ90上における3か所の特定ポイントのことである。また、自動車のボディ90の特定部位は、自動車のボディ90の前部におけるフロントガラスと自動車のボディ90との接着面(自動車のボディ90におけるプライマの塗布位置)とは異なる位置である。なお、検出する自動車のボディ90の特定部位の数は、自動車のボディ90上の3か所に限定されるものではなく、自動車のボディ90の姿勢を判断可能であれば、2か所以下、或いは4か所以上であっても構わない。また、自動車のボディ90の特定部位は、自動車のボディ90におけるプライマの塗布位置と同一の位置であっても構わない。
コントローラ60は、自動車のボディ90の特定部位の位置の検出を、カメラ40から送信される自動車のボディ90の画像データ(カメラ40が撮像する自動車のボディ90の画像)に基づいて行う。すなわち、塗布ロボット10においては、カメラ40と、コントローラ60と、により、自動車のボディ90の特定部位の位置を検出する位置検出装置が構成されている。
コントローラ60は、自動車のボディ90の特定部位の位置を検出するに際し、アーム部12を制御して、カメラ40を自動車のボディ90の特定部位に沿って移動させる。すなわち、コントローラ60は、自動車のボディ90の特定部位の位置を検出するに際し、自動車のボディ90におけるプライマの塗布位置とは異なる位置に沿ってカメラ40を移動させる。
【0023】
一方で、コントローラ60は、自動車のボディ90に塗布されたプライマの塗布状態の検出を、カメラ40から送信される自動車のボディ90の画像データ(カメラ40が撮像する自動車のボディ90の画像)に基づいて行う。すなわち、塗布ロボット10においては、カメラ40と、コントローラ60と、により構成される位置検出装置によって、自動車のボディ90の特定部位の位置と、塗布装置20によって自動車のボディ90に塗布されたプライマの塗布状態と、を検出する。カメラ40は、塗布装置20とともにアーム部12の先端保持部13に設けられてアーム部12の作動によって塗布装置20とともに移動することから、自動車のボディ90の前部におけるフロントガラスと自動車のボディ90との接着面(自動車のボディ90におけるプライマの塗布位置)に沿って移動する刷毛21に追随して、刷毛21がプライマを塗布した後の自動車のボディ90の状態(刷毛21の軌道)を撮像する。コントローラ60は、このカメラ40によって撮像された自動車のボディ90の状態(刷毛21の軌道)を示す画像データから自動車のボディ90に塗布されたプライマの塗布状態を検出する。
【0024】
次に、塗布ロボット10の動作について説明する。なお、塗布ロボット10の動作の制御はコントローラ60によって行われ、塗布ロボット10の各部は、コントローラ60の指示により動作するため、以下では、塗布ロボット10の各部へのコントローラ60の指示についての説明は省略する。
図1に示すように、塗布ロボット10は、自動車のボディ90へのプライマの塗布開始時(待機時)には、刷毛21が刷毛保持装置56に挿入されている。自動車のボディ90がプライマ塗布エリアの所定位置Sに向けて搬送を開始すると、アーム部12は、刷毛21を、刷毛保持装置56からキャップ着脱装置50のキャップ保持部51まで移動させる。ここで、キャップ着脱装置50のキャップ保持部51は、伸長部52のスライド部材54がロボット本体11側(自動車のボディ90から離れる側)に収縮移動しているため、ロボット本体11側(自動車のボディ90から離れる側)で待機している。また、キャップ保持部51には、キャップ30が挿入されている。
刷毛21がキャップ保持部51まで移動すると、アーム部12は、刷毛21を、キャップ保持部51に挿入されたキャップ30に差し込む。刷毛21がキャップ30に差し込まれると、塗布装置20の刷毛保持部22が、キャップ保持部51に差し込まれたキャップ30に対して旋回する。これにより、刷毛保持部22のブラケット23がキャップ30の引掛け溝31に引っ掛かり、キャップ30が刷毛保持部22に固定される。すなわち、刷毛21にキャップ30が取り付けられる。
【0025】
自動車のボディ90がプライマ塗布エリアの所定位置Sまで搬送され、搬送装置95によって所定位置Sにて位置決めされると、アーム部12は、カメラ40及び塗布装置20を、自動車のボディ90に向けて移動させる。ここで、刷毛21にはキャップ30が取り付けられているため、塗布装置20の移動中にプライマが刷毛21から自動車のボディ90に垂れ落ちることがない。
アーム部12は、カメラ40及び塗布装置20を、自動車のボディ90の3か所の特定部位の上方位置へ1か所ずつ順番に移動させる。この時、カメラ40は、自動車のボディ90の3か所の特定部位を1か所ずつ順番に撮像し、撮像した画像データをコントローラ60に送信する。
コントローラ60は、カメラ40から送信される画像データに基づいて、自動車のボディ90の特定部位の位置を検出して自動車のボディ90においてプライマを塗布すべき塗布位置を特定する。
一方で、カメラ40及び塗布装置20が自動車のボディ90の特定部位への移動を開始することで、キャップ着脱装置50は、伸長部52のスライド部材54をロボット本体11の近傍から自動車のボディ90に向けて摺動させ、キャップ保持部51及び受け皿55を自動車のボディ90まで移動させる。これにより、図1に示すように、キャップ保持部51及び受け皿55が、自動車のボディ90におけるプライマの塗布開始位置まで移動する。そして、受け皿55はプライマの塗布開始位置近傍の自動車のボディ90を覆うように配置される。
【0026】
カメラ40及び塗布装置20が自動車のボディ90の特定部位を移動してプライマの塗布開始位置まで戻ってくると、アーム部12は、キャップ30をキャップ保持部51に差し込む。キャップ30がキャップ保持部51に差し込まれると、塗布装置20の刷毛保持部22が、キャップ保持部51に差し込まれたキャップ30に対して旋回する。これにより、キャップ30の引掛け溝31に対する刷毛保持部22のブラケット23の引っ掛かりが解除され、キャップ30が刷毛保持部22から取り外される。すなわち、刷毛21からキャップ30が取り外される。
キャップ30が刷毛保持部22から取り外されると、アーム部12は、刷毛21を、プライマの塗布開始位置まで移動させる。この時、刷毛21は、受け皿55の上方を移動するため、刷毛21の移動中にプライマが刷毛21から垂れ落ちた場合であっても、垂れ落ちたプライマが自動車のボディ90に付着することがない。
刷毛21がプライマの塗布開始位置まで移動すると、自動車のボディ90に対するプライマの塗布作業が開始される。プライマの塗布作業が開始されると、キャップ着脱装置50は、伸長部52のスライド部材54をプライマの塗布開始位置からロボット本体11側に向けて摺動させ、キャップ保持部51及び受け皿55を、プライマ塗布時の刷毛21と干渉しない位置まで移動させる。また、アーム部12は、刷毛21を、自動車のボディ90の前部におけるフロントガラスと自動車のボディ90との接着面(自動車のボディ90におけるプライマの塗布位置)に沿って移動させる。この時、カメラ40は、刷毛21がプライマを塗布しながら通過した後のフロントガラスと自動車のボディ90との接着面を撮像し、撮像した画像データをコントローラ60に送信する。
コントローラ60は、カメラ40から送信される画像データに基づいて、自動車のボディ90に塗布されたプライマの塗布状態を検出して、プライマの塗布作業を行った自動車のボディ90についてのプライマの塗布状態の良否を判定する。
【0027】
刷毛21がフロントガラスと自動車のボディ90との接着面を一周してプライマの塗布開始位置まで戻ってくると、キャップ着脱装置50は、伸長部52のスライド部材54を自動車のボディ90に向けて摺動させ、キャップ保持部51及び受け皿55をプライマの塗布開始位置まで移動させる。
キャップ保持部51及び受け皿55がプライマの塗布開始位置まで移動すると、アーム部12は、刷毛21を、受け皿55の真上を通過するように受け皿55に沿って移動させ、さらに、自動車のボディ90を避けるように刷毛保持装置56まで移動させて刷毛保持装置56に挿入する。ここで、刷毛21は、自動車のボディ90を覆う受け皿55の真上を移動するため、刷毛21の移動中にプライマが刷毛21から垂れ落ちた場合であっても、垂れ落ちたプライマが自動車のボディ90に付着することがない。また、キャップ30を装着させることなく刷毛21を刷毛保持装置56まで移動させることができるため、塗布作業全体の作業時間を短縮させることができる。
刷毛21が刷毛保持装置56まで移動すると、キャップ着脱装置50は、伸長部52のスライド部材54をプライマの塗布開始位置からロボット本体11側に向けて摺動させ、キャップ保持部51及び受け皿55をロボット本体11近傍まで移動させる。
【0028】
以上のように、本実施の形態によると、塗布装置20が、自動車のボディ90に向けて移動するキャップ着脱装置50のキャップ保持部51にキャップ30が回収された状態から自動車のボディ90に対するプライマの塗布を開始することができることから、自動車のボディ90に対してプライマを塗布すべき塗布位置以外の位置にプライマを付着させることなく、自動で迅速にプライマの塗布作業を行うことができる。
本実施の形態によると、自動車のボディ90の特定部位の位置の検出時には、カメラ40と、キャップ30を取り付けた状態の刷毛21と、が同一のアーム部12によって移動し、自動車のボディ90へのプライマの塗布時には、カメラ40と、キャップ30を外した状態の刷毛21と、が同一のアーム部12によって移動することから、カメラ40及び刷毛21を移動させるための部材を同一のアーム部12により構成して塗布ロボット10全体の構成を簡略化しつつも、刷毛21の移動による刷毛21からのプライマの液垂れを防止してプライマの付着による自動車のボディ90の不具合を軽減させることができる。
本実施の形態によると、自動車のボディ90の特定部位の位置の検出と、塗布装置20によって自動車のボディ90に塗布されたプライマの塗布状態の検出と、を同一のカメラ40が撮像した画像に基づいて行うことから、当該検出毎に個別のカメラ40を設ける必要がなく、塗布ロボット10全体の構成を簡略化することができる。
本実施の形態によると、受け皿55が自動車のボディ90まで移動可能であることから、自動車のボディ90上方に位置する刷毛21から液垂れするプライマを、自動車のボディ90におけるプライマの塗布位置以外の位置に付着させることなく受けることができる。そのため、自動車のボディ90へのプライマの塗布開始時及び塗布終了時における刷毛21からの液垂れによる自動車のボディ90へのプライマの付着を防止することができ、当該プライマの付着による自動車のボディ90の不具合を軽減させることができる。
【0029】
なお、本実施の形態においては、塗布ロボット10がプライマを塗布するロボットであるが、これに限定されるものではなく、搬送装置95によって搬送される被搬送物に対して塗布剤を塗布するロボットであれば、例えば、自動車のボディ90に対して接着剤、塗料等を塗布するロボットであっても構わない。
本実施の形態においては、塗布ロボット10が自動車のボディ90に対してプライマを塗布するロボットであるが、これに限定されるものではなく、搬送装置95によって搬送される被搬送物に対して塗布剤を塗布するロボットであれば、自動車以外の車両或いは車両以外の装置等に対して塗布剤を塗布するロボットであっても構わない。
本実施の形態においては、自動車のボディ90の特定部位の位置を検出する位置検出装置を、カメラ40と、コントローラ60と、により構成しているが、これに限定されるものではなく、自動車のボディ90の特定部位の位置を検出可能な構成であれば、カメラ40の代わりにレーザー距離センサ、超音波センサ等を用いても構わない。また、本実施の形態においては、カメラ40から送信される画像データを、塗布ロボット10全体を制御するコントローラ60において処理してプライマの塗布位置を特定しているが、これに限定されるものではなく、コントローラ60とは独立した処理装置により当該画像データを処理してプライマの塗布位置を特定しても構わない。
本実施の形態においては、キャップ着脱装置50が、ロボット本体11の近傍に、ロボット本体11と別体で設けられているが、これに限定されるものではなく、刷毛21に対するキャップ30の着脱が可能な位置であれば、例えば、キャップ着脱装置50をロボット本体11の下方固定部にロボット本体11と一体に設けても構わない。また、ロボット本体11が載置される基礎部(床面に設置する土台部)と同一の基礎部(土台部)にキャップ着脱装置50を設けても構わない。
【符号の説明】
【0030】
10 塗布ロボット
20 塗布装置
30 キャップ(液垂れ防止体)
40 カメラ(位置検出装置、撮像部)
50 キャップ着脱装置(回収装置)
51 キャップ保持部(回収部)
52 伸長部
60 コントローラ(位置検出装置、制御装置)
90 自動車のボディ(被搬送物)

図1
図2
図3
図4
図5