IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自走式防除機 図1
  • 特許-自走式防除機 図2
  • 特許-自走式防除機 図3
  • 特許-自走式防除機 図4
  • 特許-自走式防除機 図5
  • 特許-自走式防除機 図6
  • 特許-自走式防除機 図7
  • 特許-自走式防除機 図8
  • 特許-自走式防除機 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】自走式防除機
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20220511BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A01M7/00 D
A01M7/00 J
B05B17/00 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019156535
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021029215
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 康史
(72)【発明者】
【氏名】長谷 喜八郎
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-023160(JP,A)
【文献】特開2013-000102(JP,A)
【文献】実開平07-018578(JP,U)
【文献】特開平04-071440(JP,A)
【文献】特開2014-042484(JP,A)
【文献】国際公開第2015/140817(WO,A2)
【文献】特開2016-078616(JP,A)
【文献】特開2005-193092(JP,A)
【文献】特開2006-027576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
B05B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の前輪(6,6)と後輪(7,7)を装着したメインフレーム(3)の後側に薬剤タンク(30)を搭載し、前側に防除ブーム(40)を装着するブームフレーム(38)を搭載した自走式防除機において、該ブームフレーム(38)を昇降する昇降シリンダ(39)の圧力変動を緩和する昇降アキュムレータ(11)を機体の前部に設けたことを特徴とする自走式防除機。
【請求項2】
運転座席(4)の前に立設するステアリングハンドル(5)の近傍に前記昇降アキュムレータ(11)を作動するアキュムレータ作動スイッチ(12b)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の自走式防除機。
【請求項3】
前記昇降アキュムレータ(11)の作動を表示する緩衝表示灯(13)を前記アキュムレータ作動スイッチ(12b)の近傍に設けたことを特徴とする請求項2に記載の自走式防除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体側部の左右に散布ブームを展開して走行しながら防除作業を行う自走式防除機(ブームスプレーヤ)に関する。
【背景技術】
【0002】
自走式防除機は、特許文献1等に記載の如く、散布ブームの昇降・展開を油圧制御で行い、長い散布ブームが走行車体の振動で上下に揺れたり衝撃を受けたりするのを緩和するために油圧駆動回路にアキュムレータが用いられているが、このアキュムレータの機体への配置構成が特許文献1には記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-184695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アキュムレータは重量が重いので、保守点検のために搭載位置を考慮しなければならない。また、走行車体の重量バランスを考慮する必要がある。
【0005】
本発明は、機体の左右に配置した散布ブームを横に伸ばして使用する自走式防除機において、散布ブームを昇降する昇降シリンダを駆動する油圧駆動回路に設けるアキュムレータの点検作業を容易にできるようにすると共に、走行車体にバランス良く配置して、走行安定性を良くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
請求項1の発明は、左右の前輪6,6と後輪7,7を装着したメインフレーム3の後側に薬剤タンク30を搭載し、前側に防除ブーム40を装着するブームフレーム38を搭載した自走式防除機において、ブームフレーム38を昇降する昇降シリンダ39の圧力変動を緩和する昇降アキュムレータ11を機体の前部に設けたことを特徴とする自走式防除機とする。
【0008】
請求項2の発明は、運転座席4の前に立設するステアリングハンドル5の近傍に昇降アキュムレータ11を作動するアキュムレータ作動スイッチ12bを設けたことを特徴とする請求項1に記載の自走式防除機とする。
【0009】
請求項3の発明は、昇降アキュムレータ11の作動を表示する緩衝表示灯13をアキュムレータ作動スイッチ12bの近傍に設けたことを特徴とする請求項2に記載の自走式防除機とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明で、メインフレーム3の後側に搭載する薬剤タンク30とメインフレーム3の前側に防除ブーム40を装着するブームフレーム38を搭載して機体の前後バランスを良くしているが、機体の前部に昇降シリンダ39の圧力変動を緩和するアキュムレータ11を装着しているので、機体の前側から油圧機器やアキュムレータ11の保守点検作業が容易となる。また、薬液タンク30により機体後部の重量が重くなるが、機体前部にアキュムレータ11を設けているので、機体のバランスが良くなる。
【0011】
請求項2の発明で、請求項1の効果に加えて、運転座席4に座ってステアリングハンドル5を操作する作業者がそのままの姿勢でアキュムレータ作動スイッチ12bを操作して昇降シリンダ39の圧力変動を緩和してブームフレーム38の振動や衝撃を少なく出来る。
【0012】
請求項3の発明で、請求項2の効果に加えて、運転座席4に座った作業者が緩衝表示灯13の点灯を見てブームフレーム38の衝撃が緩和されていることを知り、安全に作業を続けられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】自走式防除機の右側面図である。
図2】自走式防除機の平面図である。
図3】自走式防除機の正面図である。
図4】運転席から前方を見た斜視図である。
図5】自走式防除機の正面図である。
図6】部分拡大正面図である。
図7】部分拡大側面図である。
図8】部分拡大正面図である。
図9】作業状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。なお、実施例の説明においては、機体の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後というが、本発明の構成を限定するものでは無い。
【0015】
本実施形態に係る自走式防除機1は、作業者等のオペレータが走行車体2に搭乗して運転操作をしながら薬剤を圃場に散布する作業車両である。自走式防除機1は、図1図3に示すように、走行車体2と、キャビン20と薬剤タンク30と該薬剤タンク30から供給される薬剤を圃場に散布するための防除ブーム40等から構成されている。
【0016】
なお、本実施形態において、自走式防除機1の進行方向は、走行車体2の前後方向に沿った方向であり、自走式防除機1の直進時にキャビン20内の運転座席4から前面ガラスGFに向かう方向である。また、走行車体2の車幅方向あるいは左右方向は、上記進行方向に対して水平に直交する方向である。また、走行車体2の上下方向は、上記進行方向に対して鉛直に直交する方向である。
【0017】
走行車体2は、メインフレーム3と運転座席4とステアリングハンドル5と、前輪6と後輪7とを含む構成である。メインフレーム3は、走行車体2の前後に延長して形成されている。運転座席4は、オペレータが自走式防除機1の運転操作をする際に着座するための座席である。運転座席4の周囲の適切な位置には、防除ブーム40の開閉や薬剤の散布等の動作を制御するための操作部90が配置されている。
【0018】
運転座席4の前に立設するステアリングハンドル5は、オペレータによる回動操作によって、少なくとも左右の前輪6,6を操舵することで、自走式防除機1の進行方向を変更する。すなわち、前輪6,6は、少なくともステアリングハンドル5の回動操作により操舵される操舵輪である。
【0019】
前輪6と後輪7は、ボンネットBN内のエンジンの動力がトランスミッションケース内(図示せず)で適宜変速され、変速された動力が伝達されて回転駆動する。
【0020】
キャビン20は、運転座席4およびその周辺の機器類、ステアリングハンドル等を囲むことで乗員室を形成するものである。キャビン20は、薬剤タンク30と防除ブーム40との間に配置されている。キャビン20は、キャビンフレーム21(第1前部フレーム21a、第4フレーム21b、上部フレーム21cなど)、キャビンルーフ22、左右の開閉扉25L、25Rなどから構成されている。
【0021】
図4は、キャビン20内の運転座席4の右側からステアリングハンドル5の方向を見た図面で、ステアリングハンドル5の前側の前操作ボックス27の上面に、ロール緩衝スイッチ12aと上下緩衝スイッチ12bと緩衝表示灯13を設け、作業者がステアリングハンドル5を操作しながら適宜にロール緩衝スイッチ12aと上下緩衝スイッチ12bをオン・オフ操作してロールアキュムレータ9と昇降アキュムレータ11の作動バルブを動作できるようにしている。ロール緩衝スイッチ12aと上下緩衝スイッチ12bをオンすると緩衝表示灯13が点灯する。
【0022】
図2に示すように、昇降アキュムレータ11は、機体の前部(本実施例では最前部)に設ける構成としており、さらにブームフレームとともに昇降する構成としている。これにより、昇降アキュムレータ11のメンテナンスが容易となる。また、機体後部には重量の重くなる薬剤タンク30を設けているので、重量の重い昇降アキュムレータ11を機体前部に配置することで、機体バランスが向上する。
【0023】
キャビンフレーム21は、キャビン20前部の車幅方向の左右両側に配置されてメインフレーム3上に立設する左右の第1前部フレーム21a、21aと、左右の第1前部フレーム21a、21aの後方に配置される左右の第2フレーム21d、21dと、左右の第2フレーム21d、21dの後方に配置される左右の第3フレーム21e、21eから構成されている。さらに、左右の第3フレーム21e、21eの後方には、メインフレーム3に立設しない左右の第4フレーム21b、21bが構成され、前記左右の第1前部フレーム21a、21aと、左右の第2フレーム21d、21dと、左右の第3フレーム21e、21eと、左右の第4フレーム21b、21bの上部を連結する上部フレーム21cから構成されている。
【0024】
左右の第4フレーム21b、21bの下端部と左右の第3フレーム21e、21eの中間部には、左右の第5フレーム21f、21fで連結されている。前記左右の第1前部フレーム21a、21aの中間部は、前部連結フレーム21gで連結されている。前記左右の第4フレーム21b、21bの下端部より少し上側は、後部連結フレーム21hで連結されている。
【0025】
前部連結フレーム21gと上部フレーム21cの間には、前面ガラスGFが取り付けられている。また、後部連結フレーム21hと上部フレーム21cとの間には、リヤガラス57が設けられており、リヤガラス57は、上側を支点にして外側に向かって開閉可能に構成している。
【0026】
なお、前面ガラスGFの下部左右或いは片側に水の噴射ノズルとワイパーを設け、適宜に前面を拭き払えるように構成している。左右に設ける噴射ノズルとワイパーは、同時に使用したり交互に使用したり必要な側のみを使用したり出来るようにすると良い。
【0027】
前記キャビン20の前部上部には、左右の作業灯WR1、WR2を設けている。また、前記ボンネットBNの前部には、左右の前照灯BFL、BFRを設けている。前記左右の作業灯WR1、WR2は、左右の前照灯BFL、BFRと連動させる構成とする。即ち、左右の作業灯WR1、WR2を点灯すると、左右の前照灯BFL、BFRは消灯する回路とする。これにより、同時点灯しないので、充放電性能を確保できバッテリー上がりを防止できる。
【0028】
前記左側の前方突出アーム27Lには、左支持プレート36Lを介して機体後方を監視できる左サイドバックミラー35Lが取り付けられている。
【0029】
薬剤タンク30は、ブーム40から散布される薬剤溶液を収容する容器である。薬剤タンク30は、図1に示すように、キャビン20の後側に配置されている。薬剤タンク30は、平面視で図2に示すように、運転座席4の左右両側および後側を囲むようにコの字状に形成されて、メインフレーム3上に着脱可能に搭載されている。薬剤溶液は、肥料、農薬等を溶媒(例えば、水)に溶解させた液体、および、肥料、農薬等の固形分を含む液体(例えば、水)等の液状物である。
【0030】
図9に示すように、防除ブーム40は、自走式防除機1の前側から左右に幅広く薬剤を散布するものである。
【0031】
図5から図8に示す如く、ブーム40を支持するブームフレーム38は、走行車体2の前側でメインフレーム3にリンクアームで連結されて左右の昇降シリンダ39(図2)で昇降可能に設けられている。ブーム40は、センターブーム40aと両側方のサイドブーム40b,40bから構成され、サイドブーム40b,40bがブームシリンダ42L、42Rで先端側を起伏させるようにしている。
【0032】
センターブーム40aは、ボンネットBNの前側でブームフレーム38に配置され、走行車体2の車幅方向に水平配置されている。また、センターブーム40aには、薬剤を霧状に噴射するノズル41aが間隔をおいて複数配設されている。
【0033】
サイドブーム40bは、走行車体2の車幅方向に延びる散布姿勢と、走行車体2の左右両側に沿う収納姿勢とに切り替え回動可能に、センターブーム40aの左右両側に取り付けられている。また、サイドブーム40bは、収納姿勢時に、側面視で後上方へ傾斜した姿勢で走行車体2の後側左右両側に配置されたブーム受け80(図1)で支持される。サイドブーム40bには、薬剤を霧状に散布するノズル41bが間隔をおいて複数配設されている。
【0034】
図5の構成は、昇降アキュムレータ11に加えて、ロールアキュムレータ29を設ける構成を示している。機体の左右傾斜に関係なくブームフレーム38を水平に維持する構成のため、ブームフレーム38は、ロールシリンダ23とロール戻りスプリング24でローリング可能に支持されている。そして、ロールアキュムレータ29とロールアキュムレータバルブ28で、ロールシリンダ23の衝撃圧を緩和している。ロールアキュムレータ29は、機体に前部であって昇降アキュムレータ11の右側に設けており、ブームフレーム38とともに昇降する構成としている。
【0035】
また、ブームフレーム38の前側左右中央に昇降アキュムレータバルブ15を介して昇降アキュムレータ11を取り付けて左右の昇降シリンダ39(図2)の衝撃圧を緩和する構成としているが、このための上下バルブ19等の油圧機器を覆うカバー17を設けている。
【符号の説明】
【0036】
3 メインフレーム
4 運転座席
5 ステアリングハンドル
6 前輪
7 後輪
11 昇降アキュムレータ
12 アキュムレータ作動スイッチ
13 緩衝表示灯
30 薬剤タンク
38 ブームフレーム
39 昇降シリンダ
40 防除ブーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9