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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ニオイ検出装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G01N33/497 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019556098
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2018029726
(87)【国際公開番号】W WO2019102660
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2017226951
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 博
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-249810(JP,A)
【文献】特開2010-213980(JP,A)
【文献】特開2006-017467(JP,A)
【文献】特開2014-007586(JP,A)
【文献】特開2017-161300(JP,A)
【文献】特開2005-221464(JP,A)
【文献】特開2017-020949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0377877(US,A1)
【文献】特許第6508440(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオイに反応する特性が互いに異なる複数のニオイセンサーと、
前記複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定する特定手段と、
前記特定されたニオイ成分とその濃度に基づいて、ニオイの種類として、加齢臭、ミドル脂臭、汗臭のうち少なくとも一つを判別する判別手段と、
前記判別されたニオイの種類を出力する出力手段と、
を備えるニオイ検出装置であって、
前記特定手段は、
(a)前記複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、前記測定対象気体に含まれる中で最も強いニオイ成分とその濃度を特定し、
(b)前記複数のニオイセンサーの出力値から、前記(a)で特定されニオイ成分とその濃度に相当する値を減算し、
(c)減算後の複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、前記測定対象気体に含まれる中で、当該(c)より前に特定されているニオイ成分を除いて最も強いニオイ成分とその濃度を特定し、
(d)減算後の複数のニオイセンサーの出力値から、前記(c)で特定されたニオイ成分とその濃度に相当する値を減算し、
前記(c)と前記(d)を繰り返すことで、前記測定対象気体に含まれる複数のニオイ成分とその濃度を、順位を付けて特定するニオイ検出装置。
【請求項2】
複数のニオイ成分のそれぞれについて濃度ごとに、当該濃度の当該ニオイ成分を対象とした時の前記複数のニオイセンサーの出力値の組み合わせを入力とし、当該ニオイ成分とその濃度を出力として、予め機械学習させることで生成された識別器を記憶する記憶手段を備え、
前記特定手段は、前記識別器を用いて、前記測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定する請求項1に記載のニオイ検出装置。
【請求項3】
前記識別器には、所定のニオイを対象とした時の前記複数のニオイセンサーの出力値の組み合わせを入力とし、当該所定のニオイを出力として、予め機械学習させた機械学習結果が含まれ、
前記特定手段は、前記識別器を用いて、前記測定対象気体に前記所定のニオイが含まれ
ることを特定した場合に、前記複数のニオイセンサーの出力値から前記所定のニオイに相当する値を減算し、当該減算した結果を前記識別器に入力して、前記測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定する請求項2に記載のニオイ検出装置。
【請求項4】
前記判別手段は、前記特定されたニオイ成分とその濃度に基づいて、前記ニオイの種類の強度を判別し、
前記出力手段は、前記判別されたニオイの種類の強度を出力する請求項1から3のいずれか一項に記載のニオイ検出装置。
【請求項5】
複数のニオイ成分のそれぞれについて濃度ごとに、前記ニオイの種類及びその強度を対応付けたテーブルを記憶する第2記憶手段を備え、
前記判別手段は、前記テーブルを用いて、前記特定されたニオイ成分とその濃度に対応する前記ニオイの種類とその強度を判別する請求項4に記載のニオイ検出装置。
【請求項6】
前記出力手段は、前記判別されたニオイの種類の強度を表示手段に表示させる請求項4又は5に記載のニオイ検出装置。
【請求項7】
前記出力手段は、前記判別されたニオイの種類を表示手段に表示させる請求項1から6のいずれか一項に記載のニオイ検出装置。
【請求項8】
前記出力手段は、前記判別されたニオイの種類に対応するニオイ成分とその濃度が特定された順位に基づいて、前記判別されたニオイの種類を当該ニオイの種類の順位がわかるように表示させる請求項7に記載のニオイ検出装置。
【請求項9】
前記表示手段は、スマートフォンが備える表示手段である請求項6から8のいずれか一項に記載のニオイ検出装置。
【請求項10】
コンピューターを、
ニオイに反応する特性が互いに異なる複数のニオイセンサーから出力値を取得する取得手段、
前記取得された複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定する特定手段、
前記特定されたニオイ成分とその濃度に基づいて、ニオイの種類として、加齢臭、ミドル脂臭、汗臭のうち少なくとも一つを判別する判別手段、
前記判別されたニオイの種類を出力する出力手段、
として機能させるためのプログラムであって、
前記特定手段は、
(a)前記複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、前記測定対象気体に含まれる中で最も強いニオイ成分とその濃度を特定し、
(b)前記複数のニオイセンサーの出力値から、前記(a)で特定されニオイ成分とその濃度に相当する値を減算し、
(c)減算後の複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、前記測定対象気体に含まれる中で、当該(c)より前に特定されているニオイ成分を除いて最も強いニオイ成分とその濃度を特定し、
(d)減算後の複数のニオイセンサーの出力値から、前記(c)で特定されたニオイ成分とその濃度に相当する値を減算し、
前記(c)と前記(d)を繰り返すことで、前記測定対象気体に含まれる複数のニオイ成分とその濃度を、順位を付けて特定するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオイ検出装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ニオイは感覚的なものであり、人間がニオイから受ける印象や程度を客観的に認識することは困難である。体臭や口臭等、一般的に悪臭と考えられるニオイを気にしている人は多いが、人間の嗅覚によって自分自身のニオイをチェックすることは難しい。
【0003】
口臭を定量的に測定するために、例えば、検知対象ガスのガス濃度に応じて出力値が変化するガスセンサーにより、人間の呼気に含まれるガス濃度を測定する呼気成分測定装置が利用されている(特許文献1参照)。この装置は、その内部に1個のガスセンサーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-232058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ガスセンサーは、特定の検知対象ガスのみに反応するわけではなく、ガスに応じて反応の強弱を含め、反応特性が異なるだけなので、上記従来技術のように、センサーを1個用いた測定装置では、良いニオイにも悪いニオイにも反応してしまい、ニオイの強度しか検出できないという状況が生じていた。例えば、口臭を測定しようとしても、餃子のニオイでも、歯磨き粉のニオイでも同様に反応するため、ニオイの種類を判別することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、ニオイの種類を判別することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ニオイに反応する特性が互いに異なる複数のニオイセンサーと、前記複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定する特定手段と、前記特定されたニオイ成分とその濃度に基づいて、ニオイの種類として、加齢臭、ミドル脂臭、汗臭のうち少なくとも一つを判別する判別手段と、前記判別されたニオイの種類を出力する出力手段と、を備えるニオイ検出装置であって、前記特定手段は、(a)前記複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、前記測定対象気体に含まれる中で最も強いニオイ成分とその濃度を特定し、(b)前記複数のニオイセンサーの出力値から、前記(a)で特定されニオイ成分とその濃度に相当する値を減算し、(c)減算後の複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、前記測定対象気体に含まれる中で、当該(c)より前に特定されているニオイ成分を除いて最も強いニオイ成分とその濃度を特定し、(d)減算後の複数のニオイセンサーの出力値から、前記(c)で特定されたニオイ成分とその濃度に相当する値を減算し、前記(c)と前記(d)を繰り返すことで、前記測定対象気体に含まれる複数のニオイ成分とその濃度を、順位を付けて特定する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のニオイ検出装置において、複数のニオイ成分のそれぞれについて濃度ごとに、当該濃度の当該ニオイ成分を対象とした時の前記複数のニオイセンサーの出力値の組み合わせを入力とし、当該ニオイ成分とその濃度を出力として、予め機械学習させることで生成された識別器を記憶する記憶手段を備え、前記特定手段は、前記識別器を用いて、前記測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のニオイ検出装置において、前記識別器には、所定のニオイを対象とした時の前記複数のニオイセンサーの出力値の組み合わせを入力とし、当該所定のニオイを出力として、予め機械学習させた機械学習結果が含まれ、前記特定手段は、前記識別器を用いて、前記測定対象気体に前記所定のニオイが含まれることを特定した場合に、前記複数のニオイセンサーの出力値から前記所定のニオイに相当する値を減算し、当該減算した結果を前記識別器に入力して、前記測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のニオイ検出装置において、前記判別手段は、前記特定されたニオイ成分とその濃度に基づいて、前記ニオイの種類の強度を判別し、前記出力手段は、前記判別されたニオイの種類の強度を出力する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のニオイ検出装置において、複数のニオイ成分のそれぞれについて濃度ごとに、前記ニオイの種類及びその強度を対応付けたテーブルを記憶する第2記憶手段を備え、前記判別手段は、前記テーブルを用いて、前記特定されたニオイ成分とその濃度に対応する前記ニオイの種類とその強度を判別する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のニオイ検出装置において、前記出力手段は、前記判別されたニオイの種類の強度を表示手段に表示させる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のニオイ検出装置において、前記出力手段は、前記判別されたニオイの種類を表示手段に表示させる。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のニオイ検出装置において、前記出力手段は、前記判別されたニオイの種類に対応するニオイ成分とその濃度が特定された順位に基づいて、前記判別されたニオイの種類を当該ニオイの種類の順位がわかるように表示させる。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項6から8のいずれか一項に記載のニオイ検出装置において、前記表示手段は、スマートフォンが備える表示手段である。
【0017】
請求項10に記載の発明は、コンピューターを、ニオイに反応する特性が互いに異なる複数のニオイセンサーから出力値を取得する取得手段、前記取得された複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定する特定手段、前記特定されたニオイ成分とその濃度に基づいて、ニオイの種類として、加齢臭、ミドル脂臭、汗臭のうち少なくとも一つを判別する判別手段、前記判別されたニオイの種類を出力する出力手段、として機能させるためのプログラムであって、前記特定手段は、(a)前記複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、前記測定対象気体に含まれる中で最も強いニオイ成分とその濃度を特定し、(b)前記複数のニオイセンサーの出力値から、前記(a)で特定されニオイ成分とその濃度に相当する値を減算し、(c)減算後の複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、前記測定対象気体に含まれる中で、当該(c
)より前に特定されているニオイ成分を除いて最も強いニオイ成分とその濃度を特定し、(d)減算後の複数のニオイセンサーの出力値から、前記(c)で特定されたニオイ成分とその濃度に相当する値を減算し、前記(c)と前記(d)を繰り返すことで、前記測定対象気体に含まれる複数のニオイ成分とその濃度を、順位を付けて特定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ニオイの種類を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ニオイ検出システムの構成図である。
図2】ニオイ種類判別テーブルの例である。
図3】ニオイ検出処理の概要を示す図である。
図4A】ニオイセンサーの出力値の時間変化の例である。
図4B】特定されたニオイ成分とその濃度に相当するニオイセンサーの出力値の時間変化の例である。
図4C図4Aに示す値から図4Bに示す値を減算した結果である。
図5】ニオイ検出装置において実行されるニオイ検出処理を示すフローチャートである。
図6】スマートフォンに表示される測定結果表示画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係るニオイ検出装置の実施の形態について説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0021】
図1に、ニオイ検出システム100の構成を示す。ニオイ検出システム100は、ニオイ検出装置10と、スマートフォン20と、により構成される。ニオイ検出装置10及びスマートフォン20は、近距離無線通信機能を備えており、Bluetooth(登録商標)による相互通信が可能となっている。
【0022】
ニオイ検出装置10は、制御部11、4個のニオイセンサー12A,12B,12C,12D、ADC(Analog to Digital Converter:アナログデジタル変換器)13、記憶部14、操作スイッチ15、バッテリー16、通信部17等を備える。
【0023】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等から構成され、ニオイ検出装置10の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、制御部11は、記憶部14に記憶されている各種処理プログラムを読み出し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0024】
ニオイセンサー12A,12B,12C,12Dは、どのようなニオイに強く反応するかといった、ニオイに反応する特性が互いに異なる半導体ガスセンサーである。ニオイセンサー12A,12B,12C,12Dは、検知対象ガス(主に反応する対象となるガス)の濃度を電気量に変換し、ガス濃度に対応する電気信号を出力する。ニオイセンサー12A,12B,12C,12Dとして、例えば、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)検出用ガスセンサー、CO検出用ガスセンサー、水素検出用ガスセンサー、炭化水素検出用ガスセンサー、アルコール検出用ガスセンサー、タバコ検出用ガスセンサー等が用いられる。なお、各ニオイセンサー12A,12B,12C,12Dは、複数のニオイ成分に対して反応するものであり、一つのニオイ成分のみに対して反応するわけではない。ニオイ成分とは、ニオイを構成する化学物質である。また、ニオイセンサー12A,12B,12C,12Dは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプのセンサーであってもよい。
ADC13は、ニオイセンサー12A,12B,12C,12Dから出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して、制御部11に出力する。
【0025】
記憶部14は、不揮発性の半導体メモリー等により構成され、各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等を記憶している。記憶部14(記憶手段、第2記憶手段)には、識別器141、ニオイ種類判別テーブル142が記憶されている。
【0026】
識別器141は、ニオイ検出装置10の開発段階において、外部装置により予め生成された機械学習結果である。機械学習時には、複数のニオイ成分(化学物質)のそれぞれが濃度ごとに用意されている。外部装置では、複数のニオイ成分のそれぞれについて濃度ごとに、ニオイセンサー12A,12B,12C,12Dとそれぞれ同種のニオイセンサー(以下、学習用ニオイセンサーという。)の出力値(波形)を取得し、当該濃度の当該ニオイ成分を対象とした時の各学習用ニオイセンサーの出力値の組み合わせを入力とし、当該ニオイ成分とその濃度を出力として、機械学習させることにより、識別器141を生成する。つまり、複数の学習用ニオイセンサーの出力値の組み合わせを入力、ニオイ成分とその濃度を出力としたデータのセットを教師データとして、機械学習させる。
【0027】
「同種のニオイセンサー」とは、対象とするニオイセンサー12A,12B,12C,12Dと同じ特性を有するセンサー(同じ出力を得られるもの)であり、例えば、同じ型番同士のセンサーである。
機械学習として、例えば、ニューラルネットワーク、特に、学習ベクトル量子化(LVQ)ニューラルネットワークが用いられる。例えば、学習用ニオイセンサーの出力値であるガス濃度を、測定開始時からの経過時間に沿ってプロットして得られた波形の立ち上がり方、ピーク値等を特徴量として、識別器141が構築されている。
【0028】
ニオイ成分としては、ノネナール、ジアセチル、イソ吉草酸、アンモニア等、悪臭の原因となる成分が挙げられる。ノネナールは、加齢臭(加齢に伴い発生する体臭)の原因となる成分である。ジアセチルは、ミドル脂臭(中年男性に多い脂っぽい体臭)の原因となる成分である。イソ吉草酸は、汗臭(汗による体臭)の原因となる成分である。
【0029】
また、識別器141には、所定のニオイを対象とした時の複数の学習用ニオイセンサーの出力値の組み合わせを入力とし、当該所定のニオイを出力として、予め機械学習させた機械学習結果が含まれる。所定のニオイとしては、香水、シャンプー、柔軟剤の香り等、一般的に良いニオイと感じられるものが挙げられる。
【0030】
なお、ここでは、予め識別器141を生成する際に、学習用ニオイセンサーを用いることとしたが、ニオイ検出装置10に実際に搭載されるニオイセンサー12A,12B,12C,12Dそのものを用いて機械学習させることとしてもよい。
【0031】
ニオイ種類判別テーブル142は、複数のニオイ成分のそれぞれについて濃度ごとに、ニオイの種類とその強度(レベル)を対応付けたテーブルである。ニオイ種類判別テーブル142は、各ニオイ成分の濃度をニオイの種類(とその強度)に変換するための判定基準となる情報である。
ニオイの種類とは、何らかの特徴を持ったニオイに対して、人間が分類し、名付けたものである。ニオイの種類としては、加齢臭、ミドル脂臭、汗臭の三大体臭等が挙げられる。
【0032】
例えば、ニオイ種類判別テーブル142は、ニオイ成分ごとに用意されている。
図2に、ジアセチルのニオイ種類判別テーブル142の例を示す。図2では、ニオイ成分「ジアセチル」の濃度ごとに、「ミドル脂臭」のレベル(1~10)が対応付けられている。なお、図2には、参考として、「ミドル脂臭」のレベルの定義方法を記載している。各レベルは、人間の嗅覚に基づく官能評価により定められたものであり、人間の感じ方に近いものとなっている。例えば、「ミドル脂臭」のレベル「1」は、1cmの距離で嗅いだ場合に、ニオイを感じる強度である。
ノネナールのニオイ種類判別テーブル142では、ニオイ成分「ノネナール」の濃度ごとに、「加齢臭」のレベルが対応付けられている。
イソ吉草酸のニオイ種類判別テーブル142では、ニオイ成分「イソ吉草酸」の濃度ごとに、「汗臭」のレベルが対応付けられている。
【0033】
また、記憶部14には、各ニオイ成分について濃度ごとに、当該濃度の当該ニオイ成分を対象とした時の複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値(波形)が予め記憶されている。
また、記憶部14には、所定のニオイを対象とした時の複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値(波形)が予め記憶されている。
記憶部14に記憶されている、各ニオイ成分の各濃度に相当する出力値のデータ、及び、所定のニオイに相当する出力値のデータは、学習用ニオイセンサーを用いて予め求められている。なお、ニオイ検出装置10に実際に搭載されるニオイセンサー12A,12B,12C,12Dそのものを用いて予め求められたものであってもよい。
【0034】
操作スイッチ15は、電源をオン/オフさせる電源スイッチ、測定開始を指示するための測定スイッチ等から構成され、ユーザーによる操作スイッチ15の押下に応じた操作信号を制御部11に出力する。
バッテリー16は、ニオイ検出装置10の各部に電力供給を行う。バッテリー16として、着脱可能な乾電池や充電池等が用いられる。
【0035】
通信部17は、スマートフォン20との間でBluetooth無線通信によりデータ通信を行うためのインターフェースを有し、BLE(Bluetooth Low Energy)の通信規格に従ってスマートフォン20とデータの送受信を行う。
【0036】
図3に、ニオイ検出処理の概要を示す。本発明では、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値からニオイ成分とその濃度を特定する第1段階と、ニオイ成分とその濃度からニオイの種類を判別する第2段階と、に分けて処理を行う。
【0037】
<第1段階>
制御部11(特定手段)は、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値(波形)に基づいて、測定対象気体に含まれるニオイ成分(ノネナール、ジアセチル、イソ吉草酸等)とその濃度を特定する。具体的には、制御部11は、測定対象気体に対して複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dから取得された出力値を識別器141に入力し、識別器141から出力されたニオイ成分とその濃度を、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度として特定する。
【0038】
<第1段階の例外>
制御部11は、識別器141の出力として所定のニオイ(香水、シャンプー、柔軟剤等の良いニオイ)が得られた場合に、測定対象気体に当該所定のニオイが含まれることを特定する。
【0039】
<第1段階の繰り返し>
識別器141によるニオイ成分とその濃度の特定、所定のニオイの特定は、測定対象気体に含まれる中で最も強いニオイ成分又は所定のニオイ(1位)を探し当てるものである。そのため、2位以降のニオイ成分又は所定のニオイについては、それより前に特定されたニオイ成分又は所定のニオイの影響を除いた状態で、特定する必要がある。
【0040】
制御部11は、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値から既に特定されているニオイ成分とその濃度に相当する値を減算し、当該減算した結果に基づいて、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定することを繰り返すことで、測定対象気体に含まれる複数のニオイ成分とその濃度を、順位を付けて特定する。
【0041】
まず、制御部11は、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値から、1番目に特定されたニオイ成分とその濃度に相当する値を減算する。具体的には、制御部11は、1番目に特定された濃度の特定されたニオイ成分のみを対象とした時に複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dからそれぞれ出力されるべき出力値(各ニオイセンサーの時間変化を含む)を記憶部14から読み出し、読み出したそれぞれの値を複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値から減算する。
【0042】
複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値から、或るニオイ成分とその濃度が特定された場合の、ニオイセンサー12Aの出力値の時間変化の例を図4Aに示し、特定されたニオイ成分とその濃度に相当するニオイセンサー12Aの出力値の時間変化の例を図4Bに示す。横軸に示す時間ごとに、図4Aに示す値から図4Bに示す値を減算した結果を図4Cに示す。
ニオイセンサー12B,12C,12Dの出力値についても同様に処理する。
【0043】
制御部11は、減算した結果(1番目に特定されたニオイ成分とその濃度の影響を除いた複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値)に基づいて、測定対象気体に含まれる2番目のニオイ成分とその濃度を特定する。具体的には、制御部11は、1番目に特定されたニオイ成分とその濃度の影響を除いた複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値を識別器141に入力し、識別器141から出力されたニオイ成分とその濃度を、2番目のニオイ成分とその濃度として特定する。そして、制御部11は、2番目のニオイ成分を特定する際に用いた複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値から、2番目に特定されたニオイ成分とその濃度に相当する値を減算する。
【0044】
制御部11は、減算した結果(1番目及び2番目に特定されたニオイ成分とその濃度の影響を除いた複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値)に基づいて、測定対象気体に含まれる3番目のニオイ成分とその濃度を特定する。具体的には、制御部11は、1番目及び2番目に特定されたニオイ成分とその濃度の影響を除いた複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値を識別器141に入力し、識別器141から出力されたニオイ成分とその濃度を、3番目のニオイ成分とその濃度として特定する。
【0045】
このように、制御部11は、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値から特定されたニオイ成分とその濃度に相当する値を減算しながら、ニオイ成分とその濃度の特定を繰り返すことで、測定対象気体に含まれる複数のニオイ成分とその濃度を、順位を付けて特定する。
【0046】
制御部11は、識別器141を用いて、測定対象気体に所定のニオイが含まれることを特定した場合に、所定のニオイを対象とした時に複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dからそれぞれ出力されるべき出力値を記憶部14から読み出し、読み出したそれぞれの値を複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値から減算する。そして、制御部11は、減算した結果を識別器141に入力して、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定する。
【0047】
<第2段階>
制御部11(判別手段)は、特定されたニオイ成分とその濃度に基づいて、ニオイの種類を判別する。制御部11は、ニオイの種類として、加齢臭、ミドル脂臭、汗臭のうち少なくとも一つを判別する。さらに、制御部11は、特定されたニオイ成分とその濃度に基づいて、ニオイの種類の強度(レベル)を判別する。具体的には、制御部11は、特定された複数のニオイ成分のそれぞれについて、ニオイ種類判別テーブル142を用いて、当該ニオイ成分とその濃度に対応するニオイの種類とその強度を判別する。
【0048】
制御部11(出力手段)は、判別されたニオイの種類を出力する。さらに、制御部11は、判別されたニオイの種類の強度を出力する。具体的には、制御部11は、判別されたニオイの種類とその強度を、スマートフォン20の表示部22に表示させるために、通信部17を介してスマートフォン20に送信する。制御部11は、判別されたニオイの種類に対応するニオイ成分とその濃度が特定された順位に基づいて、判別されたニオイの種類を当該ニオイの種類の順位がわかるようにスマートフォン20の表示部22に表示させる。制御部11は、判別されたニオイの種類の強度や順位がわかるような画面表示用データを生成し、スマートフォン20に送信してもよい。あるいは、スマートフォン20側で、ニオイ検出装置10から送信されたニオイの種類と、その強度又は順位と、に基づいて、ニオイの種類の順位がわかるように表示させてもよい。
【0049】
図1に示すように、スマートフォン20は、制御部21、表示部22、操作部23、第1通信部24、第2通信部25、記憶部26、スピーカー27、マイク28等を備える。
【0050】
制御部21は、CPU等から構成され、スマートフォン20の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、制御部21は、記憶部26に記憶されている各種処理プログラムを読み出し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0051】
表示部22は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
操作部23は、操作キー、表示部22に積層されたタッチパネルにより構成され、操作キーに対応する操作信号、ユーザーの指等によるタッチ操作の位置に応じた操作信号を制御部21に出力する。
【0052】
第1通信部24は、無線により基地局又はアクセスポイントを介して移動体通信網を含む通信ネットワークに接続し、通信ネットワークに接続された外部装置との通信を行う。
第2通信部25は、ニオイ検出装置10等の外部装置との間でBluetooth無線通信によりデータ通信を行うためのインターフェースを有する。第2通信部25は、BLEの通信規格に従って外部装置とデータの送受信を行う。
【0053】
記憶部26は、不揮発性の半導体メモリー等により構成され、各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等を記憶している。記憶部26には、ニオイ検出装置10を用いてニオイ検出を行うためのニオイ検出アプリケーションプログラム(以下、ニオイ検出アプリという。)がインストールされている。
【0054】
スピーカー27は、第1通信部24を介して外部装置から受信した電気信号を音声信号に変換し、音声を出力する。
マイク28は、音波を検知して電気信号に変換し、制御部21や第1通信部24に出力する。
【0055】
制御部21は、ニオイ検出アプリとの協働により、第2通信部25を介してニオイ検出装置10から受信したニオイの種類とその強度を、表示部22に表示させる。
【0056】
次に、ニオイ検出システム100における動作について説明する。
図5は、ニオイ検出装置10において実行されるニオイ検出処理を示すフローチャートである。この処理は、制御部11と記憶部14に記憶されているプログラムとの協働によるソフトウェア処理によって実現される。なお、処理の前提として、ユーザーは、スマートフォン20において、操作部23からの操作により、ニオイ検出アプリを起動させておくとともに、ニオイ検出装置10の電源を入れておく。
【0057】
まず、ユーザーが操作スイッチ15(具体的には、測定スイッチ)を押下すると(ステップS1)、制御部11は、操作スイッチ15が押下されたことを検出する。ユーザーは、ニオイ検出装置10を、ユーザー自身の体の体臭を測定したい部位(頭部、耳、脇、足等)にかざし、一定時間、ニオイ検出装置10の位置を固定する。
【0058】
制御部11(取得手段)は、操作スイッチ15が押下されてから一定時間、ユーザーがニオイ検出装置10をかざした位置付近に存在する測定対象気体に対する複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値を取得する(ステップS2)。
【0059】
次に、制御部11は、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dから取得された出力値に基づいて、測定対象気体が無臭であるか否かを判断する(ステップS3)。例えば、制御部11は、全てのニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値が予め定められた閾値未満である場合に、有意のニオイ入力はない、すなわち、無臭であると判断する。
【0060】
測定対象気体が無臭でないと判断された場合には(ステップS3;NO)、制御部11は、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dから取得された出力値の組み合わせを、記憶部14に記憶されている識別器141に入力する(ステップS4)。
【0061】
ここで、制御部11は、識別器141からの出力として、所定のニオイ(香水、シャンプー、柔軟剤等)という結果が得られたか、又は、ニオイ成分とその濃度が得られたかを判断する(ステップS5)。
【0062】
識別器141からの出力として、所定のニオイという結果が得られた場合には(ステップS5;所定のニオイ)、制御部11は、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値(直前のステップS4において、識別器141に入力された値の組み合わせ)から所定のニオイに相当する値を減算する(ステップS6)。そして、ステップS4に戻り、制御部11は、減算した結果を識別器141に入力し、処理を繰り返す。
【0063】
ステップS5において、識別器141からの出力として、ニオイ成分とその濃度が得られた場合には(ステップS5;ニオイ成分と濃度)、制御部11は、当該ニオイ成分とその濃度を、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度として特定し、特定されたニオイ成分とその濃度を、順位を付けて記憶部14に記憶させる(ステップS7)。
【0064】
次に、制御部11は、記憶部14に記憶されているニオイ種類判別テーブル142を参照して、特定されたニオイ成分とその濃度に対応するニオイの種類とその強度を判別する(ステップS8)。
【0065】
ここで、制御部11は、測定対象気体から、悪臭の原因とされるニオイ成分を3番目まで特定したか否かを判断する(ステップS9)。
【0066】
ニオイ成分を3番目まで特定していない場合には(ステップS9;NO)、制御部11は、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値(直前のステップS4において、識別器141に入力された値の組み合わせ)から、特定されたニオイ成分とその濃度に相当する値を減算する(ステップS10)。そして、ステップS4に戻り、制御部11は、減算した結果を識別器141に入力し、処理を繰り返す。
【0067】
ステップS9において、ニオイ成分を3番目まで特定した場合(ステップS9;YES)、又は、ステップS3において、測定対象気体が無臭であると判断された場合には(ステップS3;YES)、制御部11は、ニオイ検出結果を、通信部17を介してスマートフォン20に送信する(ステップS11)。具体的には、ニオイの種類とその強度が判別された場合には、制御部11は、ニオイの種類とその強度をスマートフォン20の表示部22に表示させるために、スマートフォン20に送信する。より詳細には、制御部11は、判別されたニオイの種類に対応するニオイ成分とその濃度が特定された順位を、当該ニオイの種類の順位として、判別されたニオイの種類の強度や順位がわかるような画面表示用データを生成し、スマートフォン20に送信してもよい。あるいは、制御部11は、判別されたニオイの種類の順位を当該ニオイの種類と対応付けてスマートフォン20に送信してもよい。無臭であると判断された場合には、制御部11は、体臭は検出されなかったという結果(各ニオイの種類についてレベル「0」)をスマートフォン20に送信する。
以上で、ニオイ検出処理が終了する。
【0068】
スマートフォン20では、ニオイ検出装置10から送信されたニオイ検出結果が表示部22に表示される。具体的には、検出されたニオイの種類とその強度が、各ニオイの種類の順位がわかるように表示部22に表示される。
【0069】
図6に、スマートフォン20の表示部22に表示される測定結果表示画面30の例を示す。測定結果表示画面30には、第1ニオイ種類表示領域31、第2ニオイ種類表示領域32、第3ニオイ種類表示領域33、メッセージ表示領域34、「測り直す」ボタン35、「完了」ボタン36が含まれる。
【0070】
第1ニオイ種類表示領域31には、ニオイ種類表示領域31A、ニオイレベル表示領域31B,31Cが含まれる。ニオイ種類表示領域31Aには、1番目に特定されたニオイ成分に対応するニオイの種類(1位のニオイの種類)が表示される。ニオイレベル表示領域31B,31Cには、ニオイ種類表示領域31Aに表示されるニオイの種類の強度が10段階で表示される。ニオイレベル表示領域31Bでは、強度がグラフ化されて表示されており、ニオイレベル表示領域31Cでは、強度が数値で表示されている。図6の例では、ニオイ種類表示領域31Aに、ニオイの種類として「汗臭」が表示され、ニオイレベル表示領域31B,31Cに、汗臭のレベルが10段階中「5」であることが表示されている。
【0071】
第2ニオイ種類表示領域32には、2番目に特定されたニオイ成分に対応するニオイの種類(2位のニオイの種類)と強度が表示される。
第3ニオイ種類表示領域33には、3番目に特定されたニオイ成分に対応するニオイの種類(3位のニオイの種類)と強度が表示される。
【0072】
メッセージ表示領域34には、測定結果に対する説明やアドバイス等が表示される。
「測り直す」ボタン35は、測り直しを指示するためのボタンである。
「完了」ボタン36は、測定完了を指示するためのボタンである。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態によれば、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値から既に特定されているニオイ成分とその濃度の影響を除きながら、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度の特定を繰り返すことで、複数のニオイ成分とその濃度を、順位を付けて特定することができる。このようにして、1番目に強い(多い)ニオイ成分だけでなく、2番目、3番目のニオイ成分についても特定可能となる。したがって、特定された複数のニオイ成分とその濃度に基づいて、複数のニオイの種類を判別することができる。例えば、ニオイの種類として、加齢臭、ミドル脂臭、汗臭等の気になる体臭を判別することができる。ユーザーは、ニオイ検出装置10を使用して、自分のニオイを客観的にチェックすることで、周囲の人に不快感を与えることを防ぐことができる。
【0074】
具体的には、予め機械学習させた機械学習結果(識別器141)を用いて、ニオイ成分とその濃度を特定することができる。
【0075】
また、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度に基づいて、ニオイの種類だけでなく、ニオイの種類の強度も判別するので、ユーザーは、数値化されたニオイの程度を認識することができる。
具体的には、ニオイ種類判別テーブル142を用いることで、特定されたニオイ成分とその濃度に対応するニオイの種類とその強度の判別を容易に行うことができる。
【0076】
以上まとめると、第1段階で、測定対象気体に、各ニオイ成分(ノネナール、ジアセチル、イソ吉草酸等)がどの程度含まれるか(濃度)を特定することで、第2段階で、各ニオイ成分が主な原因となる「ニオイの種類」を判別することができ、各ニオイ成分の濃度が「ニオイの種類」の強度を判別する上での指標となる。つまり、各ニオイ成分の濃度を特定することで、「ニオイの種類」の定量化が可能となる。
第1段階では、最終的に判別したい加齢臭、ミドル脂臭、汗臭等の「ニオイの種類」に直結するニオイ成分、すなわち、各「ニオイの種類」の主な原因となるニオイ成分と、その濃度を特定することが重要となる。
【0077】
また、一般的に良いニオイと感じられる所定のニオイについては、測定対象気体に所定のニオイが含まれることを特定するよう機械学習させておくことで、体臭等の悪臭検出から除外することができる。
【0078】
また、判別されたニオイの種類とその強度を、スマートフォン20の表示部22に表示させるので、ユーザーにニオイ検出結果を通知することができる。特に、複数のニオイの種類について、順位がわかるように表示させることで、ユーザーに注意すべきニオイを伝えることができる。
【0079】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係るニオイ検出装置の例であり、これに限定されるものではない。装置を構成する各部の細部構成及び細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0080】
例えば、上記実施の形態では、ニオイ検出装置10で判別されたニオイの種類とその強度を、スマートフォン20の表示部22に表示させることとしたが、ニオイ検出装置10自体が表示部を備え、ニオイ検出装置10の表示部にニオイの種類や強度を表示させることとしてもよい(出力手段)。この際、判別されたニオイの種類に対応するニオイ成分とその濃度が特定された順位に基づいて、判別されたニオイの種類を当該ニオイの種類の順位がわかるように表示させることとしてもよい。あるいは、ニオイ検出装置10が備えるLED(Light Emitting Diode)等の点灯により、判別されたニオイの種類や強度を示すようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施の形態では、ニオイ検出装置10において、特定されたニオイ成分とその濃度に基づいて、ニオイの種類だけでなく、ニオイの種類の強度も判別する場合について説明したが、或るニオイ成分の濃度が予め定められた閾値以上である場合に、当該ニオイ成分に対応する「ニオイの種類」を検出したと判別することとしてもよい。
【0082】
また、識別器141やニオイ種類判別テーブル142を、頭部、耳、脇、足等の測定部位ごとに予め用意しておくこととしてもよい。この場合、ユーザーが体臭を測定する際に、ニオイ検出装置10又はスマートフォン20から測定部位を指定することで、測定部位に対応する判定基準(識別器141及びニオイ種類判別テーブル142)に切り替えればよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、ニオイ成分を3番目まで特定した場合に、識別器141によるニオイ成分の特定を終了することとしたが、特定されるニオイ成分の数は、これに限定されない。また、複数のニオイセンサー12A,12B,12C,12Dの出力値から、特定されたニオイ成分とその濃度に相当する値や特定された所定のニオイに相当する値を減算していき、減算した結果が予め定められた閾値未満となった場合に、ニオイ成分の特定を終了することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係るニオイ検出装置及びプログラムは、人間の体臭等のニオイを測定する技術分野において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0085】
10 ニオイ検出装置
11 制御部
12A,12B,12C,12D ニオイセンサー
14 記憶部
15 操作スイッチ
17 通信部
20 スマートフォン
21 制御部
22 表示部
23 操作部
25 第2通信部
26 記憶部
100 ニオイ検出システム
141 識別器
142 ニオイ種類判別テーブル
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6