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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 49/00 20060101AFI20220511BHJP
   G01N 27/62 20210101ALN20220511BHJP
【FI】
F16H49/00 A
G01N27/62 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020504789
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2018044579
(87)【国際公開番号】W WO2019171687
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2018041686
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】古田 匡智
(72)【発明者】
【氏名】小寺 慶
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 清
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-89717(JP,A)
【文献】特開平1-94884(JP,A)
【文献】特開2017-4787(JP,A)
【文献】特許第3100886(JP,B2)
【文献】特開平7-332433(JP,A)
【文献】特許第5760626(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空室内に設けられた可動部を駆動させるための駆動装置であって、
前記可動部に設けられた可動側磁石と、
前記真空室の外部に設けられ、前記可動側磁石に対して磁力を作用させることにより前記可動部を駆動させる駆動部とを備え、
前記駆動部は、
前記可動側磁石を引き付ける磁力を作用させる第1磁石と、
前記第1磁石に隣接して設けられ、前記可動側磁石に反発する磁力を作用させる第2磁石と、
前記第1磁石及び前記第2磁石を一体的に移動させる移動機構とを有し、
前記第2磁石は、前記第1磁石を中心として円環状に配置されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第2磁石は、前記第1磁石を中心として点対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記可動部は、第1方向に沿って移動可能であり、
前記移動機構は、前記第1方向に沿って前記第1磁石及び前記第2磁石を一体的に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記可動部は、第1方向及び当該第1方向に交差する第2方向に移動可能であり、
前記移動機構は、前記第1方向及び前記第2方向に沿って前記第1磁石及び前記第2磁石を一体的に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記可動部は、前記真空室内に設けられた試料ステージに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空室内に設けられた可動部を駆動させるための駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
質量分析装置の一例として、MALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化法)を用いた質量分析装置が知られている。この種の質量分析装置では、試料がマトリックスとともに真空室内で気化され、試料とマトリックスとの間のプロトンの授受によって試料がイオン化される。そして、試料をイオン化することにより得られるイオンをイオントラップに捕捉して質量分析を行うことができるようになっている。
【0003】
試料は、真空室内に設けられた試料ステージ上に載置される。この試料ステージは、真空室内で移動させる必要があるため、試料ステージに連結された可動部を駆動させるための駆動装置が設けられている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
小型サイズの試料が載置された試料ステージは軽量であり、小さな駆動力で移動させることが可能である。そこで、真空室内の可動部に磁石(可動側磁石)を設けるとともに、真空室の外部に磁石(駆動側磁石)を設けて、駆動側磁石を移動させることにより、磁力を用いて可動部を移動させるような構成が採用される場合がある。
【0005】
図6A及び図6Bは、磁力を用いて可動部を移動させる駆動装置の従来例を示した概略図である。この駆動装置には、真空室100を形成する壁面101を隔てて、真空室100内に可動側磁石102が設けられるとともに、真空室100の外部に駆動側磁石103が設けられている。可動側磁石102及び駆動側磁石103は、それぞれ永久磁石により構成されている。また、真空室100内には、可動側磁石102が取り付けられた可動部104が設けられている。
【0006】
この例では、可動側磁石102のN極側が可動部104に取り付けられ、可動側磁石102のS極側が壁面101を挟んで駆動側磁石103に対向している。駆動側磁石103は、そのN極側が壁面101を挟んで可動側磁石102に対向し、S極側が移動部材105に連結されている。これにより、可動側磁石102のS極が、駆動側磁石103のN極側に磁力によって引き付けられるため、駆動側磁石103を移動させれば、それに伴って可動側磁石102が取り付けられた可動部104を移動させることができる。
【0007】
このような駆動装置を用いた場合、モータや駆動部品を真空室の外部に配置できるという利点がある。これにより、高価な真空用モータが不要となり、安価なモータを用いて可動部104を移動させることができる。また、ボールねじ、リニアガイドなどの他の部品も、真空用ではなく一般用の部品を用いることができる。その結果、真空内の部品や配線が減るため、有害なガスの発生を抑制できるという利点も生じる。
【0008】
また、高価な真空導入器を採用する必要がなくなるという利点もある。駆動系を全て真空室内に設置する場合には、真空モータや位置センサなどに接続される配線用に真空導入器が必要となる。また、モータを真空室の外部に設置する場合には、モータ動力の真空導入器が必要となる。これらの真空導入器は、いずれも高価であるが、上記のような駆動装置を用いれば、そのような高価な真空導入器を採用する必要がなくなり、製造コストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5760626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図6Aのように駆動側磁石103を一方向(左方向)に移動させた場合には、可動側磁石102を同方向(左方向)に移動させることができる。しかしながら、可動側磁石102は磁力によって駆動側磁石103に追従するような構成であるため、駆動側磁石103の移動開始タイミングに対して、可動側磁石102の移動開始タイミングが若干遅れることとなる。その結果、駆動側磁石103を一方向(左方向)に移動させた直後には、図6Aに示すように、可動側磁石102の位置と駆動側磁石103の位置との間にずれ(オフセットA)が生じてしまう。
【0011】
一方、図6Bのように駆動側磁石103を他方向(右方向)に移動させた場合には、可動側磁石102を同方向(右方向)に移動させることができる。しかしながら、この場合にも、図6Aの場合と同様に、駆動側磁石103の移動開始タイミングに対して、可動側磁石102の移動開始タイミングが若干遅れることとなる。その結果、駆動側磁石103を他方向(右方向)に移動させた直後には、図6Bに示すように、可動側磁石102の位置と駆動側磁石103の位置との間にずれ(オフセットB)が生じてしまう。
【0012】
上記のようなオフセットA,Bが発生する理由としては、可動側磁石102及び駆動側磁石103の軸中心が互いに一致する付近では水平方向の駆動力が小さくなるということが挙げられる。すなわち、可動側磁石102及び駆動側磁石103の軸中心が大きくずれるまで、可動部104の移動に対する抵抗(摩擦抵抗など)を上回る駆動力が発生せず、その結果、可動側磁石102の移動の遅れに起因するオフセットA,Bが生じるものと考えられる。
【0013】
特に、図6Aのように駆動側磁石103を一方向(左方向)に移動させた直後に、図6Bのように駆動側磁石104を他方向(右方向)に移動させた場合は、オフセットA,Bの範囲内で駆動側磁石103が移動し、可動部104が全く動かない状態(いわゆるバックラッシ)が生じるおそれもある。このように、従来の駆動装置では、真空室内に設けられた可動部を磁力で駆動させる際に、可動部の位置ずれが生じやすいという問題があった。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、真空室内に設けられた可動部を磁力で駆動させる際に、可動部の位置ずれが生じにくい駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明に係る駆動装置は、真空室内に設けられた可動部を駆動させるための駆動装置であって、可動側磁石と、駆動部とを備える。前記可動側磁石は、前記可動部に設けられている。前記駆動部は、前記真空室の外部に設けられ、前記可動側磁石に対して磁力を作用させることにより前記可動部を駆動させる。前記駆動部は、第1磁石と、第2磁石と、移動機構とを有する。前記第1磁石は、前記可動側磁石を引き付ける磁力を作用させる。前記第2磁石は、前記第1磁石に隣接して設けられ、前記可動側磁石に反発する磁力を作用させる。前記移動機構は、前記第1磁石及び前記第2磁石を一体的に移動させる。
【0016】
このような構成によれば、第1磁石により可動側磁石を引き付ける磁力を作用させる一方で、第1磁石に隣接して設けられた第2磁石により可動側磁石に反発する磁力を作用させることができる。これにより、可動側磁石が駆動部側に引き付けられて安定する範囲が狭くなるため、可動側磁石が移動部材の移動に追従しやすくなる。その結果、移動部材の移動開始タイミングに対して、可動部の移動開始タイミングの遅れが小さくなる。したがって、真空室内に設けられた可動部を磁力で駆動させる際に、可動部の位置ずれが生じにくい。
【0017】
(2)前記第2磁石は、前記第1磁石を中心として点対称に配置されていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、第1磁石を中心として点対称に配置された第2磁石の磁力により、可動側磁石が駆動部側に引き付けられて安定する範囲を、第1磁石を中心とする狭い範囲に絞ることができる。これにより、移動部材の移動に対して可動側磁石がさらに追従しやすくなるため、可動部の位置ずれがより生じにくい。
【0019】
(3)前記第2磁石は、前記第1磁石を中心として円環状に配置されていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、第1磁石を中心として円環状に配置された第2磁石の磁力により、可動側磁石が駆動部側に引き付けられて安定する範囲を、第1磁石を中心とする狭い範囲に絞ることができる。これにより、移動部材の移動に対して可動側磁石がさらに追従しやすくなるため、可動部の位置ずれがより生じにくい。
【0021】
(4)前記可動部は、第1方向に沿って移動可能であってもよい。この場合、前記移動機構は、前記第1方向に沿って前記第1磁石及び前記第2磁石を一体的に移動可能であってもよい。
【0022】
このような構成によれば、第1方向に沿って第1磁石及び第2磁石を一体的に移動させることにより、第1方向に沿って直線的に可動部を移動させることができる。これにより、直線的に移動する可動部の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0023】
(5)前記可動部は、第1方向及び当該第1方向に交差する第2方向に移動可能であってもよい。この場合、前記移動機構は、前記第1方向及び前記第2方向に沿って前記第1磁石及び前記第2磁石を一体的に移動可能であってもよい。
【0024】
このような構成によれば、第1方向及び第2方向に沿って第1磁石及び第2磁石を一体的に移動させることにより、第1方向及び第2方向に沿った平面内で可動部を移動させることができる。これにより、平面内で移動する可動部の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0025】
(6)前記可動部は、前記真空室内に設けられた試料ステージに連結されていてもよい。
【0026】
このような構成によれば、可動部に連結された試料ステージを真空室内で駆動させる際に、試料ステージの位置ずれが生じにくい。したがって、試料ステージに載置される試料に対して精度よく分析を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、移動部材の移動開始タイミングに対して、可動部の移動開始タイミングの遅れが小さくなるため、真空室内に設けられた可動部を磁力で駆動させる際に、可動部の位置ずれが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る駆動装置及び周辺の部材の構成例を示した斜視図である。
図2図1に示した駆動装置の断面図である。
図3】駆動部の斜視図である。
図4A】駆動部の変形例を示した平面図である。
図4B】駆動部の変形例を示した平面図である。
図4C】駆動部の変形例を示した平面図である。
図5A】駆動部の別の変形例を示した平面図である。
図5B】駆動部の別の変形例を示した平面図である。
図5C】駆動部の別の変形例を示した平面図である。
図6A】磁力を用いて可動部を移動させる駆動装置の従来例を示した概略図である。
図6B】磁力を用いて可動部を移動させる駆動装置の従来例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.駆動装置の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動装置及び周辺の部材の構成例を示した斜視図である。この駆動装置は、真空室1内に設けられた可動部2を駆動させるためのものであり、壁面3により真空室1が区画されている。壁面3は、例えば水平方向に延びる薄板状の部材により構成されている。図1では、壁面3を隔てて上側が真空室1となっており、壁面3の一部を省略して示している。
【0030】
この駆動装置には、可動側磁石4及び駆動部5が備えられている。可動側磁石4は、可動部2に取り付けられており、可動部2とともに真空室1内で移動可能となっている。駆動部5は、真空室1の外部に設けられており、駆動側磁石6及び移動部材7などを備えている。駆動側磁石6は、第1磁石8及び第2磁石9により構成されている。
【0031】
図2は、図1に示した駆動装置の断面図である。また、図3は、駆動部5の斜視図である。可動側磁石4及び駆動側磁石6(第1磁石8及び第2磁石9)は、それぞれN極及びS極を有する永久磁石により構成されている。
【0032】
可動側磁石4は、例えば円柱状に形成され、そのN極側が可動部2の下面に取り付けられた状態で下方に延びている。可動側磁石4のS極は、壁面3に対して上方に近接しており、接触しない程度の小さい間隔を隔てて壁面3に対向している。これにより、可動側磁石4を水平面内で移動させたときには、可動側磁石4が、壁面3に対して一定の小さい間隔を保ったまま、壁面3と接触することなく移動できるようになっている。
【0033】
駆動側磁石6は、壁面3を挟んで可動側磁石4とは反対側に設けられている。第1磁石8は、例えば円柱状に形成され、そのS極側が移動部材7の上面に取り付けられた状態で上方に延びている。第2磁石9は、例えば円筒状に形成され、そのN極側が移動部材7の上面に取り付けられた状態で上方に延びている。
【0034】
第2磁石9は、第1磁石8の外周を取り囲むようにして、第1磁石8と同軸上に配置されている。これにより、第1磁石8の外周面と第2磁石9の内周面との間には、円筒状の一定の空間10が形成されている。すなわち、第2磁石9は、第1磁石8に対し、空間10を隔てて隣接するように設けられている。
【0035】
第1磁石8及び第2磁石9の各上面は、同一面内(この例では水平面内)に位置している。これらの第1磁石8及び第2磁石9の各上面は、壁面3に対して下方に近接しており、それぞれ接触しない程度の小さい間隔を隔てて壁面3に対向している。これにより、駆動側磁石6を水平面内で移動させたときには、第1磁石8及び第2磁石9の各上面が、壁面3に対して一定の小さい間隔を保ったまま、壁面3と接触することなく移動できるようになっている。
【0036】
2.磁力の作用
図2のように、N極である第1磁石8の上面が、可動側磁石4に対して壁面3を挟んで鉛直下方に対向した状態では、逆極性(S極)である可動側磁石4の下面に対して、可動側磁石4を第1磁石8側に引き付けるように磁力が作用する。この図2の状態では、S極である第2磁石9の上面が、可動側磁石4に対して壁面3を挟んで斜め下方に対向している。したがって、第2磁石9の上面と同極性(S極)である可動側磁石4の下面には、第2磁石9から反発する磁力が作用する。
【0037】
図2に示すような状態では、第1磁石8のみが設けられた状態(第2磁石9が省略された状態)と比べて、可動側磁石4が駆動部5側に引き付けられて安定する範囲が狭くなる。すなわち、図2のように可動側磁石4と第1磁石8とが同軸上に位置している状態から、移動部材7が水平方向に移動しようとしたときには、可動側磁石4が第2磁石9から受ける反発力が強くなるため、可動側磁石4は第1磁石8と同軸上になる位置へと引き付けられる。このように、第1磁石8による可動側磁石4を引き付ける磁力だけでなく、第2磁石9による可動側磁石4に反発する磁力も加わるため、可動側磁石4は、第1磁石8と同軸上になる位置(図2に示す位置)の近傍の狭い範囲で安定することとなる。
【0038】
移動部材7には、第1磁石8及び第2磁石9が取り付けられているため、移動部材7を移動させれば、第1磁石8及び第2磁石9を一体的に移動させることができる。移動部材7には、図示しない駆動軸やモータなどの駆動源が連結されており、移動部材7を含むこれらの部材が、第1磁石8及び第2磁石9を一体的に移動させるための移動機構を構成している。この移動機構により第1磁石8及び第2磁石9を水平面内で移動させれば、可動側磁石4に対して磁力を作用させ、可動側磁石4が連結された可動部2を水平面内で駆動させることができる。
【0039】
上記のように、本実施形態では、第1磁石8のみが設けられた状態(第2磁石9が省略された状態)と比べて、可動側磁石4が駆動部5側に引き付けられて安定する範囲が狭くなる。そのため、移動部材7を水平面内で移動させたときに、可動側磁石4が移動部材7の移動に追従しやすくなる。その結果、移動部材7の移動開始タイミングに対して、可動部2の移動開始タイミングの遅れが小さくなる。したがって、真空室1内に設けられた可動部2を磁力で駆動させる際に、可動部2の位置ずれが生じにくい。
【0040】
また、本実施形態では、第2磁石9が、第1磁石8を中心として点対称に配置されている。より具体的には、第2磁石9が、第1磁石8を中心として円環状に配置されている。そのため、可動側磁石4が第2磁石9から受ける反発力によって、可動側磁石4が第1磁石8と同軸上になる位置へと引き付けられやすい。したがって、可動側磁石4が駆動部5側に引き付けられて安定する範囲を、第1磁石8を中心とする狭い範囲に絞ることができる。これにより、移動部材7の移動に対して可動側磁石4がさらに追従しやすくなるため、可動部2の位置ずれがより生じにくい。
【0041】
3.可動部の構成
図1に示すように、可動部2は、互いに直交するX方向及びY方向に移動可能となっている。すなわち、水平方向に沿った第1方向(X方向)と、水平面内において第1方向に直交する第2方向(Y方向)との両方向に沿って、可動部2が移動可能となっている。ただし、第1方向及び第2方向は、互いに直交する方向に限らず、別の角度で交差する方向であってもよいし、いずれも水平方向に沿った方向に限られるものでもない。
【0042】
本実施形態では、可動部2が、X方向に沿って延びる第1レール11に対してスライド可能に保持されている。これにより、可動部2が、第1レール11に沿ってX方向に移動可能となっている。また、第1レール11は、Y方向に沿って延びる第2レール12に対してスライド可能に保持されている。これにより、第1レール11に保持された可動部2が、第2レール12に沿ってY方向に移動可能となっている。このように、可動部2は、X方向及びY方向の両方向に移動可能であるため、水平面内の任意の位置に移動させることができる。
【0043】
移動部材7についても、可動部2と同様にX方向及びY方向の両方向に移動可能となっている。図1では駆動部5の移動機構を具体的に図示していないが、可動部2と同様にレールを用いた構成を採用することにより、移動部材7がX方向及びY方向に移動可能となっていてもよい。
【0044】
この場合、移動機構は、互いに交差する第1方向(X方向)及び第2方向(Y方向)に沿って、第1磁石8及び第2磁石9を一体的に移動させることができる。これにより、第1方向及び第2方向に沿った平面内(水平面内)で可動部2を移動させることができるため、平面内(水平面内)で移動する可動部2の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0045】
本実施形態では、図2に二点鎖線で示すように、試料ステージ13が可動部2に連結されている。試料ステージ13は、真空室1内に設けられ、その上面に試料が載置されることにより、真空室1内で試料に対する分析を行うことができる。上述のような駆動装置により駆動される可動部2に試料ステージ13を連結させれば、試料ステージ13を真空室1内で駆動させる際に、試料ステージ13の位置ずれが生じにくい。したがって、試料ステージ13に載置される試料に対して精度よく分析を行うことができる。
【0046】
このような試料ステージ13を駆動させる駆動装置は、質量分析装置などの各種の分析装置に適用することができる。例えば、MALDIを用いた質量分析装置では、試料をイオン化させるための真空室1内に試料ステージ13を設けて、当該試料ステージ13に連結された可動部2を、真空室1の外部に設けられた駆動部5により駆動させることができる。
【0047】
ただし、可動部は、互いに交差する第1方向(X方向)及び第2方向(Y方向)に沿って移動可能な構成に限らず、任意の一方向に沿ってのみ移動可能な構成であってもよい。この場合、移動機構(移動部材7)は、上記一方向に沿ってのみ移動可能であればよい。これにより、上記一方向に沿って直線的に可動部2を移動させることができるため、直線的に移動する可動部2の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0048】
4.駆動部の変形例
図4A図4Cは、駆動部5の変形例を示した平面図である。図4A図4Cの例では、円柱状の第1磁石8を中心として、円柱状の第2磁石9が円環状に複数配置されている。より具体的には、第1磁石8を中心とする周方向に、複数の円柱状の第2磁石9が円環状に等間隔で配置されている。
【0049】
図4Aの例では、3つの円柱状の第2磁石9が、第1磁石8を中心とする周方向に、120°ごとに円環状に配置されている。図4Bの例では、4つの円柱状の第2磁石9が、第1磁石8を中心とする周方向に、90°ごとに円環状に配置されている。図4Cの例では、6つの円柱状の第2磁石9が、第1磁石8を中心とする周方向に、60°ごとに円環状に配置されている。
【0050】
このように、第2磁石9の数は特に限定されるものではなく、第1磁石8を中心として、複数の円柱状の第2磁石9が円環状に配置されていればよい。図4Bの例では、第1磁石8を中心として、2対の円柱状の第2磁石9が点対称に配置されている。図4Cの例では、第1磁石8を中心として、3対の円柱状の第2磁石9が点対称に配置されている。ただし、第2磁石9を2つだけ設け、第1磁石8を中心として、2つ(1対)の円柱状の第2磁石9が点対称に配置された構成などであってもよい。また、円柱状の第2磁石9が第1磁石8に対して点対称又は円環状に配置された構成に限らず、例えば、1つの円柱状の第2磁石9が第1磁石8に隣接して設けられた構成などであってもよい。
【0051】
図5A図5Cは、駆動部5の別の変形例を示した平面図である。図5A図5Cの例では、円柱状の第1磁石8を中心として、円弧状の第2磁石9が円環状に複数配置されている。より具体的には、第1磁石8を中心とする周方向に、複数の円弧状の第2磁石9が円環状に等間隔で配置されている。
【0052】
図5Aの例では、2つの円弧状の第2磁石9が、第1磁石8を中心とする周方向に、180°ごとに円環状に配置されている。図5Bの例では、3つの円弧状の第2磁石9が、第1磁石8を中心とする周方向に、120°ごとに円環状に配置されている。図5Cの例では、4つの円弧状の第2磁石9が、第1磁石8を中心とする周方向に、90°ごとに円環状に配置されている。
【0053】
このように、第2磁石9の数は特に限定されるものではなく、第1磁石8を中心として、複数の円弧状の第2磁石9が円環状に配置されていればよい。図5Aの例では、第1磁石8を中心として、1対の円弧状の第2磁石9が点対称に配置されている。図5Cの例では、第1磁石8を中心として、2対の円弧状の第2磁石9が点対称に配置されている。ただし、円弧状の第2磁石9は、第1磁石8に対して点対称又は円環状に配置された構成に限らず、例えば、1つの円弧状の第2磁石9が第1磁石8に隣接して設けられた構成などであってもよい。
【0054】
5.その他の変形例
可動側磁石102及び駆動側磁石103(第1磁石8及び第2磁石9)の形状は、上記のような円柱状や円弧状に限られるものではなく、任意の形状を採用することができる。
【0055】
また、可動側磁石102及び駆動側磁石103(第1磁石8及び第2磁石9)の極性は、上記実施形態とは逆でもよい。すなわち、可動側磁石102のN極と、第1磁石8のS極とが、互いに対向するように配置されてもよい。この場合、第2磁石9は、N極側が可動側磁石102と近くなるように配置されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 真空室
2 可動部
3 壁面
4 可動側磁石
5 駆動部
6 駆動側磁石
7 移動部材
8 第1磁石
9 第2磁石
10 空間
11 第1レール
12 第2レール
13 試料ステージ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B