(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
E04F 21/24 20060101AFI20220511BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20220511BHJP
B05C 17/12 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E04F21/24 A
B05C1/02 101
B05C1/02 104
B05C17/12
(21)【出願番号】P 2020535845
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031184
(87)【国際公開番号】W WO2020032126
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2018149079
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】古橋 和樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩一
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-022061(JP,U)
【文献】特開平03-098669(JP,A)
【文献】特開2013-013865(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117455(WO,A1)
【文献】特開平03-072157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/24
B05C 1/00- 3/20
B05C 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板と、前記支持板に突出状に設けた複数の塗布体とを備え、
前記複数の塗布体の先端部に、塗布液を保持可能な保持凹部をそれぞれ設け
、
前記支持板にガイド部材を、前記ガイド部材の下端部が、前記塗布体の下端部よりも上方位置と、前記塗布体の下端部よりも下方位置とにわたって移動するように上下方向に移動自在に設け、前記ガイド部材を下方位置側へ常時付勢する第2付勢部材を設けた、
ことを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記保持凹部として、前記塗布体の先端面に開口する先端凹部を設けた請求項1記載の塗布具。
【請求項3】
前記先端凹部の底部に、前記先端凹部の開口部よりも外方へ突出する突起部を設けた請求項2記載の塗布具。
【請求項4】
前記複数の塗布体が、前記支持板に突出状に設けた複数の支持棒と、前記複数の支持棒の先端部にそれぞれ外装した複数の塗布用チューブとを備え、前記複数の塗布用チューブの先端部内に前記先端凹部をそれぞれ設けた請求項2又は3記載の塗布具。
【請求項5】
前記複数の支持棒の先端部に、前記先端凹部の開口部よりも外方へ突出する先鋭部からなる突起部をそれぞれ設けた請求項4記載の塗布具。
【請求項6】
前記保持凹部として、前記塗布体の先端部の外周面に開口する環状又は螺旋状の外周溝部を設けた請求項1~5のいずれか1項記載の塗布具。
【請求項7】
前記支持板が平坦な板状に構成されている請求項1~6のいずれか1項記載の塗布具。
【請求項8】
前記複数の塗布体を前記支持板に上下方向に移動自在にそれぞれ設け、前記複数の塗布体を下限位置へ常時付勢する第1付勢部材を前記複数の塗布体に個別に設けた請求項1~7のいずれか1項記載の塗布具。
【請求項9】
前記複数の塗布体の途中部を長さ方向に移動自在に案内する案内板を、前記支持板と平行に、前記ガイド部材に設けた請求項
1記載の塗布具。
【請求項10】
前記塗布液が防滑処理用組成物からなる請求項1~
9のいずれか1項記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個所に対して塗布液を同時に塗布可能な塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種商業施設や小型店舗、医療施設、宿泊施設、公共施設、集合住宅や個人住宅などの建築物の床材として、光沢を有して高級感があり、メンテナンスフリーであることから、セラミックタイル、大理石、御影石などの石材が広く採用されている。しかし、これらの床材は、表面が平滑であることから滑り易く、特に雨天時や掃除後などで、床表面や靴底に水が付着しているときには一層滑り易くなって、歩行安全性が低下するという問題がある。歩行安全性を向上させるため、例えば、床表面に滑り止め用の溝を形成することが行なわれているが、これは床表面の美麗な外観や意匠性を損なう場合がある。
【0003】
そこで、直径10mm以下の透明な防滑凸部を床材表面に対して突出状に分散固定した防滑構造が提案され、また防滑凸部の施工方法として、複数の開口部を分散配置したマスキングシートを床表面に貼り付けるマスキング工程と、開口部内に接着剤を充填する接着剤塗布工程と、接着剤の乾燥後、マスキングシートを除去するマスキング除去工程とを備えたものが提案されている(特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-61040号公報
【文献】実開平3-008246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2記載の発明のように、マスキングシートを用いて防滑凸部を形成する場合には、防滑凸部の施工後におけるマスキングシートが廃棄物となること、マスキングシートの施工作業が煩雑で、簡便且つ短時間に防滑凸部を施工できないこと、などの問題があった。
【0006】
本発明の目的は、マスキングシートを使用しないので廃棄物の量を低減でき、しかも防滑凸部などの塗布部を、バラツキを少なくしつつ、簡便且つ短時間に施工できる塗布具を提供することである。
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 支持板と、前記支持板に突出状に設けた複数の塗布体とを備え、前記複数の塗布体の先端部に、塗布液を保持可能な保持凹部をそれぞれ設け、前記支持板にガイド部材を、前記ガイド部材の下端部が、前記塗布体の下端部よりも上方位置と、前記塗布体の下端部よりも下方位置とにわたって移動するように上下方向に移動自在に設け、前記ガイド部材を下方位置側へ常時付勢する第2付勢部材を設けた、ことを特徴とする塗布具。
【0008】
(2) 前記保持凹部として、前記塗布体の先端面に開口する先端凹部を設けた前記(1)記載の塗布具。
【0009】
(3) 前記先端凹部の底部に、前記先端凹部の開口部よりも外方へ突出する突起部を設けた前記(2)記載の塗布具。
【0010】
(4) 前記複数の塗布体が、前記支持板に突出状に設けた複数の支持棒と、前記複数の支持棒の先端部にそれぞれ外装した複数の塗布用チューブとを備え、前記複数の塗布用チューブの先端部内に前記先端凹部をそれぞれ設けた前記(2)又は(3)記載の塗布具。
【0011】
(5) 前記複数の支持棒の先端部に、前記先端凹部の開口部よりも外方へ突出する先鋭部からなる突起部をそれぞれ設けた前記(4)に記載の塗布具。
【0012】
(6) 前記保持凹部として、前記塗布体の先端部の外周面に開口する環状又は螺旋状の外周溝部を設けた前記(1)~(5)のいずれかに記載の塗布具。
【0013】
(7) 前記支持板が平坦な板状に構成されている前記(1)~(6)のいずれかに記載の塗布具。
【0014】
(8) 前記複数の塗布体を前記支持板に上下方向に移動自在にそれぞれ設け、前記複数の塗布体を下限位置へ常時付勢する第1付勢部材を前記複数の塗布体に個別に設けた前記(1)~(7)のいずれかに記載の塗布具。
【0015】
(9) 前記複数の塗布体の途中部を長さ方向に移動自在に案内する案内板を、前記支持板と平行に、前記ガイド部材に設けた前記(1)に記載の塗布具。
【0016】
(10) 前記塗布液が防滑処理用組成物からなるからなる前記(1)~(9)のいずれかに記載の塗布具。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る塗布具によれば、マスキングシートを使用しないので廃棄物の量を低減でき、しかも防滑凸部などの塗布部を、バラツキを少なくしつつ、簡便且つ短時間に施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、塗布具及び塗布液トレーの斜視図である。
【
図4】
図4は、被塗布面に対する塗布液の塗布直前の説明図である。
【
図5】
図5は、被塗布面に対する塗布液の塗布状態における説明図である。
【
図6】
図6は、突出部を有する被塗布面に対する塗布液の塗布状態における説明図である。
【
図7B】
図7Bは、塗布体の先端部を液体吸収材に当接させたときにおける塗布体先端部及び液体吸収材の説明図である。
【
図7C】
図7Cは、塗布体の先端部を液体吸収材から離脱させる直前における塗布体先端部及び液体吸収材の説明図である。
【
図7D】
図7Dは、被塗布面に対して塗布液を塗布する直前における塗布体先端部及び被塗布面の説明図である。
【
図7E】
図7Eは、塗布体の先端部を被塗布面に当接させたときにおける塗布体先端部及び被塗布面に塗布した塗布液の説明図である。
【
図7F】
図7Fは、塗布体の先端部を被塗布面から離脱させたときにおける塗布体先端部及び被塗布面に施工される塗布部の説明図である。
【
図7G】
図7Gは、被塗布面に施工される塗布部の説明図である。
【
図8A】
図8Aは、他の構成の塗布体の先端部の縦断面図である。
【
図8B】
図8Bは、更に他の構成の塗布体の先端部の縦断面図である。
【
図8C】
図8Cは、更に他の構成の塗布体の先端部の縦断面図である。
【
図8D】
図8Dは、更に他の構成の塗布体の先端部の縦断面図である。
【
図8E】
図8Eは、更に他の構成の塗布体の先端部の要部縦断面正面図である。
【
図8F】
図8Fは、更に他の構成の塗布体の先端部の要部縦断正面図である。
【
図8G】
図8Gは、更に他の構成の塗布体の先端部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1、
図7Gに示すように、塗布具1は、建築物の床表面などの被塗布面2に対して塗布液を網点状に塗布して塗布部5Aを施工するための塗布具本体10と、それを操作するための操作部30とを備えている。
【0021】
塗布液は、スポンジまたは不織布等の液体吸収材3に含浸させて塗布用トレー4に収容されている。そして、塗布具本体10に設けた後述する塗布体13の先端部を液体吸収材3に押し当てることで、
図4に示すように、1回の塗布に必要な分量の単位塗布液5が塗布体13の先端部に過不足なく付着されるように構成され、過剰な付着による液垂れを、未然に防止できるように構成されている。なお、1回の塗布により被塗布面2に対して必要量の塗布液を塗布することもできるし、同じ個所に対する複数回の塗布により、被塗布面2に対して必要量の塗布液を塗布することもできる。
【0022】
塗布液としては、防滑処理用組成物、油性や水性などの塗料など、任意の組成の液状物を被塗布面2に対して塗布できる。例えば、
図7Gに示すように、建築物の床表面からなる被塗布面2に対して、防滑処理用組成物からなる塗布液を行方向及び列方向に間隔をあけて網点状に塗布して、防滑凸部からなる塗布部5Aを形成することができる。なお、塗布部5Aの形状及び寸法、複数の塗布部5Aの配設位置などは、塗布部5Aの使用目的などに応じて任意に設定可能である。例えば、塗布部5Aの行方向の間隔と列方向の間隔とは、同じに設定することもできるし、異なる間隔に設定することもできる。また、建築物の床表面からなる被塗布面2に対して、塗布部5Aとして直径1mm以上50mm以下のドーム状の防滑凸部を施工する場合には、隣接する塗布部5Aの行方向及び列方向の間隔は、例えば1mm~10mmにそれぞれ設定することが好ましい。
【0023】
操作部30は、
図1に示すように、操作ロッド31と、ベース板32と、操作ロッド31をベース板32に対して矢印Aの方向と矢印Bの方向とに揺動自在に連結する連結部33とを備えた周知の構成のものである。
【0024】
ただし、連結部33としては、操作ロッド31の先端部にベース板32を揺動自在に連結可能なものであれば、
図1に図示した以外の周知の構成のものを採用できる。また、連結部33を省略して、操作ロッド31の先端部をベース板32の中央部に対して揺動不能に固定することも可能である。更に、比較的小型な塗布具においては、操作ロッド31及び連結部33に代えて、ベース板32にハンドル部を設け、手でハンドル部を保持した状態で塗布具本体10を操作できるように構成することもできる。更にまた、ベース板32を省略して、塗布具本体10のケーシング11の上壁部11aの中央部に、連結部33を介して或いは直接的に操作ロッド31を連結したり、連結部33及び操作ロッド31に代えて、手で操作可能なハンドル部を直接的に設けたりすることも可能である。
【0025】
塗布具本体10は、
図1~
図3に示すように、下面側を開放した直方体状のケーシング11と、ケーシング11の上壁部11aと略平行にケーシング11の上部内に固定した支持板12と、支持板12を上下方向に移動自在に挿通する複数の棒状の塗布体13と、複数の塗布体13を個別に
図3に実線で図示の下限位置へ常時付勢する第1付勢部材14と、支持板12を上下方向に移動自在に挿通する複数のガイドロッド15(これがガイド部材に相当する。)と、複数のガイドロッド15を下方へ個別に常時付勢する第2付勢部材16と、複数の塗布体13の途中部が挿通するように、複数のガイドロッド15の長さ方向の途中部に支持板12と略平行に支持された案内板17とを備えている。
【0026】
ケーシング11は、長方形板状の上壁部11aと、上壁部11aの外縁から下方へ延びる長方形枠状の側壁部11bとを有し、鉄やアルミニウム合金などの金属材料、または合成樹脂材料を用いて、下面側を開放した直方体状に構成されている。ケーシング11の上壁部11aの上面中央部にはベース板32が固定され、ケーシング11は操作ロッド31の下端部に連結部33を介して回動自在に連結されている。ケーシング11の左右方向の長さL及び前後方向の幅Wは、被塗布面2の大きさ及び人手による操作性などを考慮して任意に設定でき、例えば、長さLを50mm~1000mmに、幅Wを50mm~1000mmにそれぞれ設定したケーシング11を採用できる。また、ケーシング11の高さHは、任意に設定可能であるが、10mm~200mm程度が好ましい。更に、被塗布面2が、セラミックタイルや、大理石、御影石などの石材で構成されている場合には、1回或いは複数回の塗布作業で1つの石材の被塗布面2に対して必要個数の単位塗布液5を塗布できるように、支持板12の長さ及び幅は、石材表面に適合する寸法或いは石材表面の整数分の1の寸法に設定することができ、例えば石材表面の寸法が600mm×600mmの場合には、支持板12の長さは、600mm、300mm、200mm、100mmなどに設定でき、支持板12の幅は、600mm、300mm、200mm、100mm、50mmなどに設定できる。
【0027】
支持板12は、長方形板状の平板部12aと、平板部12aの外周縁から上方へ延びてケーシング11の側壁部11bの内面に固定される取付部12bとを備えた、長方形のトレー状に形成されている。案内板17は、ケーシング11に内装し得るように、支持板12の平板部12aよりもやや小さな平面寸法の長方形板状に形成され、支持板12及び案内板17は、ケーシング11と同様に、鉄やアルミニウム合金などの金属材料、または合成樹脂材料を用いて製作されている。ただし、支持板12は、取付部12bを省略した平板状に構成することも可能である。
【0028】
支持板12の平板部12aには、塗布体13が挿通する上部貫通孔12cが、被塗布面2に対する単位塗布液5の塗布位置に対応させて、行方向及び列方向に相互に間隔をあけてそれぞれ形成され、複数の上部貫通孔12cの配設領域の外側において支持板12の四隅には、ガイドロッド15が挿通する上部ガイド孔12dが形成されている。なお、ガイドロッド15は、単位塗布液5を塗布する位置以外であれば、支持板12の任意の位置に設けることができ、またガイドロッド15の本数は、塗布具本体10を被塗布面2に対して安定性よく載置できるように、3本以上の任意の本数設けることができる。
【0029】
案内板17には、支持板12に形成した複数の上部貫通孔12cに対応させて、塗布体13が挿通する下部貫通孔17aが形成されるとともに、支持板12に形成した複数の上部ガイド孔12dに対応させて、ガイドロッド15が挿通する下部ガイド孔17bが形成されている。
【0030】
塗布体13は、
図2、
図3、
図7Aに示すように、支持板12の上部貫通孔12c及び案内板17の下部貫通孔17aを上下移動自在に挿通する支持棒18と、支持棒18の下端部(先端部)に外装した塗布用チューブ19とを備えている。
【0031】
塗布用チューブ19は、エラストマなどの軟質素材からなる円筒状の部材で構成されている。ただし、塗布用チューブ19の外面形状は、円筒状以外に、横断面が、楕円形、三角形や四角形や六角形などの多角形、星形、ハート形などの任意の形状の筒状に形成可能である。また、少なくとも塗布用チューブ19の先端部の外形を所望の形状に形成することで、被塗布面2に対して塗布した単位塗布液5を、塗布用チューブ19の先端部の形状に応じた外形に塗布することができる。また、塗布用チューブ19の内面形状は、横断面が、円形、楕円形、または三角形や四角形や六角形などの多角形状の筒状或いは先端側へ行くにしたがって拡径する錐状に形成することができ、塗布用チューブの外面形状と相似形に形成することも可能であるし、外面形状とは異なる形状に形成することも可能である。
【0032】
支持棒18は、塗布時における押し付け操作力に耐え得る強度剛性を有する、金属材料や合成樹脂材料などからなる棒状部材で構成されている。
図7Aに示すように、支持棒18の下端部には塗布用チューブ19の下端の開口部側へ向けて突出する先鋭部からなる突起部18aが設けられている。突起部18aは、円柱状、円錐状、円錐台状、楕円柱状、楕円円錐状、楕円錐台状、多角柱状、多角錐状、多角錐台状などの任意の形状に形成することができる。また、突起部18aの先端は、先鋭に構成することもできるが、平坦面で構成したり、半球状などのドーム状に構成したりすることもできる。
【0033】
図7Aに示すように、突起部18aの下端部は塗布用チューブ19の下端部よりも上側に配置することも可能であるが、塗布体13に付着した単位塗布液5から下方へ突出しない範囲で、塗布用チューブ19の下端部よりもやや下側へ突出することが好ましい。突起部18aの塗布用チューブ19の先端部からの突出長さL1は、任意に設定可能であるが、例えば0.01mm~10mm、好ましくは0.1mm~5mmに設定できる。
【0034】
このように、突起部18aを塗布用チューブ19から下方へ突出させると、
図7Dに示すように、単位塗布液5に突起部18aが挿入されるので、塗布体13の先端部に保持される、1回の塗布に必要な単位塗布液5の分量を均一にできるとともに、塗布具本体10の移動時の振動などで液垂れしないように、単位塗布液5を塗布体13の下端部に保持できる。また、被塗布面2に対して単位塗布液5を塗布する際には、
図7Eに示すように、突起部18aが被塗布面2に当接することで、塗布用チューブ19と被塗布面2間に一定の隙間が形成されるので、被塗布面2に対して単位塗布液5を素早く塗布できるとともに、塗布した単位塗布液5におけるエア噛みを防止でき、またエア噛みした場合でも、塗布用チューブ19と被塗布面2間においてエア噛みしたエアを破泡できる。更に、塗布した単位塗布液5から突起部18aを抜き取るときに、
図7Fに仮想線で示すように、単位塗布液5の中央部が盛り上がった後、突起部18aが該中央部から離脱して、単位塗布液5の上面が平坦になるので、塗布した単位塗布液5を綺麗なドーム状に形成できる。
【0035】
突起部18aと塗布用チューブ19間には、塗布用チューブ19の内面形状と突起部18aの外面形状に応じた形状の筒状空間からなる保持凹部としての先端凹部20が形成されている。先端凹部20の半径方向の幅は、上端部から下端部にわたって同じ幅に構成することも可能であるが、上側へ行くにしたがって幅狭に構成し、先端凹部20の横断面積が、上側へ行くにしたがって小さくなるように構成することが好ましい。このような構成の先端凹部20を設けると、先端凹部20における毛細管現象によっても、先端凹部20に対して単位塗布液5を保持できるので、塗布具本体10の操作時などにおける振動などで液垂れしないように、塗布体13の下端部に単位塗布液5を保持できる。
【0036】
なお、突起部18aは必ずしも塗布用チューブ19の下端部から下方へ突出させる必要はなく、
図8Aに示す塗布体13Aのように、支持棒18に代えて、下端部を塗布用チューブ19の下端部よりやや上側に配置した突起部18Aaを有する支持棒18Aを用い、塗布用チューブ19の先端部と突起部18Aa間に先端凹部20Aを形成することもできる。また、
図8Bに示す塗布体13Bのように、支持棒18に代えて突起部18aを省略した支持棒18Bを設け、支持棒18Bの下端部に軸方向と直交方向の端面18Baを形成し、端面18Baを塗布用チューブ19の下端部よりもやや上側に配置して、塗布用チューブ19の内側に先端凹部20Bを形成することも可能である。更に、
図8Cに示す塗布体13Cのように、塗布用チューブ19を省略するとともに、支持棒18に代えて、下端部に筒部18Caを一体的に形成した支持棒18Cを用い、筒部18Caと突起部18Cb間に先端凹部20Cを形成することもできる。更にまた、
図8Dに示す塗布体13Dのように、塗布用チューブ19を省略するとともに、支持棒18に代えて、下端部に筒部18Daを形成するとともに、突起部18aを省略した支持棒18Dを用い、筒部18Daの内側に先端凹部20Dを形成することもできる。また、
図8Eに示す塗布体13Eのように、塗布用チューブ19を省略するとともに、支持棒18に代えて、下端面の略全体を部分球面状に凹ませてなる先端凹部20Eを設けた支持棒18Eを用いることもできる。このような構成の先端凹部20Eを設けると、先端凹部20Eの外周縁が被塗布面2に強く係合して、被塗布面2に対する支持棒18Eの滑りが防止されるので、綺麗な円形の塗布部5Aを形成できる。
【0037】
保持凹部として、塗布体の先端外周面に環状又は螺旋状の外周溝部を、先端凹部と併用して、或いは先端凹部と併用しないで設けることができる。
【0038】
例えば、塗布体13、13A~13Eの先端外周面に、環状又は螺旋状の外周溝部を、塗布体13、13A~13Eの先端面に設けた先端凹部20、20A~20Eと併用して設けることができる。具体的には、
図8Fに示す塗布体13Fのように、塗布用チューブ19を省略するとともに、支持棒18に代えて、外周面に螺旋状の外周溝部25を設けるとともに、下端面の略全体を部分球面状に凹ませてなる先端凹部20Eを設けた、支持棒18Fを用いることができる。なお、塗布用チューブ19を設ける場合には、塗布用チューブ19の外周部に螺旋溝又は環状溝からなる外周溝部を設けることになる。
【0039】
また、先端凹部と併用しないで、塗布体の先端部の外周面に螺旋溝又は環状溝からなる外周溝部を設ける場合には、例えば、
図8Gに示す塗布体13Gのように、塗布用チューブ19を省略するとともに、支持棒18に代えて、下端面に長さ方向と直交する平坦面26を設けるとともに、下端近傍部に保持凹部として環状溝からなる外周溝部27を設けた支持棒18Gを用いることもできる。
【0040】
螺旋溝からなる外周溝部25を設ける場合には、溝の断面形状、溝幅及び溝深さ、溝ピッチは適宜に設定でき、例えば既存の三角ねじ、角ねじ、台形ねじ、鋸歯ねじ、丸ねじなどの周知のねじ溝で外周溝部25を構成できる。
【0041】
また、環状溝からなる外周溝部27を設ける場合には、溝の断面形状、溝深さは任意に設定できる。塗布体13Gの先端から外周溝部27までの距離L2、溝の本数、溝幅W1、隣接する溝間の間隔L3などは、塗布体の先端部に塗布用トレー4内の塗布液を付着させるときに、外周溝部27の少なくとも一部が、塗布用トレー4内の塗布液に浸漬され得る任意の距離に設定できる。
【0042】
具体的には、塗布体13Gの先端から外周溝部27までの距離L2は、0.5mm以上7mm以下が好ましく、1mm以上5mm以下がより好ましい。
【0043】
外周溝部27の溝幅W1は、0.4mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましく、1.0mm以上が更に好ましい。溝幅W1の上限値は、特に限定されないが、塗布体13Gの先端部を塗布用トレー4内の液体吸収材3に押し付けたときに、外周溝部27の略全体が塗布液に浸漬され得る幅に設定できる。
【0044】
外周溝部27の本数は、1本だけでもよいが、複数本設けることが好ましい。外周溝部27の本数の上限値は、特に限定されないが、塗布体13Gの先端部を塗布用トレー4内の液体吸収材3に押し付けたときに、最も上側に配置される外周溝部27が塗布液に浸漬され得る本数に設定できる。
【0045】
なお、本実施の形態では、塗布体の先端外周面に設ける保持凹部として、螺旋溝又は環状溝の外周溝部を形成したが、螺旋溝及び環状溝に代えて、塗布体の下端近傍部に塗布体の下端側が大径となる環状の段部を設けることもできる。
【0046】
このように、塗布体の先端部に、先端凹部20、20A~20Eと外周溝部25、27の少なくとも一方を設けることで、塗布体の先端部に付着させた単位塗布液5が、塗布具本体10の操作時の振動などで液垂れするという不具合を効果的に防止できるとともに、被塗布面2に対する塗布体13の押し付け時間が、作業者によって異なることによる、被塗布面2に対する塗布液の付着量のバラツキ及び塗布部5Aの直径のバラツキを少なくできる。
【0047】
図2及び
図3に示すように、支持棒18の上半部にはネジ部18bが形成され、支持棒18の上端部には支持棒18の脱落を規制する規制ナット21が螺合され、支持棒18の途中部にはナット部材22が螺合され、支持板12とナット部材22間において支持棒18には圧縮コイルバネからなる第1付勢部材14が外装され、塗布体13は、第1付勢部材14により、それぞれ個別に
図3に実線で図示の下限位置側へ常時付勢されている。
【0048】
塗布具本体10を水平に支持した状態で、複数の塗布体13は、下限位置において、その下端部の高さ位置が略同じ高さ位置となるように、下端部の高さ位置を揃えて支持板12に組み付けられている。また、下限位置において塗布体13の下端部は、
図3に示すように、ケーシング11の側壁部11bの下端部よりも下方に配置され、
図5に示すように、塗布体13の下端部を被塗布面2に当接させた後、更に塗布具本体10を下降させたときには、第1付勢部材14の付勢力に抗して塗布体13が相対的に上昇することで、塗布体13に過剰な力が作用することが防止されるとともに、
図6に示すように、被塗布面2に凸部2aなどの段差や凹凸がある場合には、それに沿って塗布体13の高さが調整されることで、凹凸のある塗布面に対しても抜けなく綺麗に単位塗布液5を塗布することができるように構成されている。
【0049】
図2、
図3に示すように、ガイドロッド15の上端部には支持板12からのガイドロッド15の脱落を規制するボルト頭部15aが形成され、ガイドロッド15の下半部にはネジ部15bが形成され、ネジ部15bにはナット部材23が螺合され、ナット部材23により案内板17を高さ調整できるように構成されている。支持板12と案内板17間においてガイドロッド15には圧縮コイルバネからなる第2付勢部材16が外装され、案内板17及びガイドロッド15は第2付勢部材16により常時下方へ付勢されている。
【0050】
ガイドロッド15の下端部は、
図3に実線で示すように、外力が作用していない状態において、下限位置における塗布体13の下端部よりも下側の下方位置に配置され、
図4に示すように、被塗布面2に塗布具本体10を載置しただけでは、塗布体13の先端部が被塗布面2に接触しないように構成されている。このため、被塗布面2に塗布具1を載置した状態で、被塗布面2に対するガイドロッド15の位置を適正に調整することで、適正な位置に単位塗布液5を塗布できる。より具体的には、
図4に示すように、被塗布面2に対して塗布具本体10を位置合わせして載置し、この状態で塗布具本体10を下側へ押し操作することで、
図5に示すように、第2付勢部材16の付勢力に抗してガイドロッド15が相対的に上方へ移動して、支持板12とともに下降する塗布体13の先端部を被塗布面2に押し当てて、塗布体13の先端部に保持した単位塗布液5を被塗布面2に塗布できるように構成されている。
【0051】
なお、第1付勢部材14及び第2付勢部材16は、圧縮コイルバネ以外のバネ部材や、合成ゴムなどの弾性部材で構成することも可能である。また、案内板17を省略して、ナット部材23により第2付勢部材16の下端部を受け止めるように構成することも可能である。更に、ガイドロッド15をケーシング11の側壁部11bの下端部よりも下方へ突出させないで、案内板17に塗布体13の下端部よりも下方へ突出する板状部材や軸状部材などを設けることもできる。更にまた、第1付勢部材14を省略して、ナット部材22と規制ナット21間に支持板12を挟持して、塗布体13を支持板12に上下移動不能に固着することもできるし、第2付勢部材16とガイドロッド15と案内板17とを更に省略することもできる。更に、本実施の形態では、塗布体13の先端部を液体吸収材3に押し当てて、塗布体13の先端部に単位塗布液5を付着保持させたが、支持棒18を中空パイプ状に構成して、単位塗布液5を被塗布面2に対して塗布する毎に、例えば塗布体13がケーシング11に対して相対的に上方へ移動することを検出する位置センサを設け、該位置センサから検出信号が出力される毎に、支持棒18を通じて塗布体13の先端部に1回分の塗布液を供給するポンプを設けることもできる。
【0052】
次に、前述した塗布具1を用いて、建築物の床表面などの被塗布面2に対して硬化性樹脂を含む液状の防滑処理組成物からなる単位塗布液5を塗布して、防滑処理組成物からなる塗布部5Aを被塗布面2に行方向及び列方向に間隔をあけて施工する防滑処理方法について説明する。ただし、前述した塗布具1は、防滑処理組成物以外の塗布液を、建築物の床表面或いはそれ以外の被塗布面2に対して塗布する場合に対しても適用できる。
【0053】
先ず、被塗布面2のゴミや埃を掃除機で除去した後、アセトンを含ませた紙製ウエスなどにより被塗布面2を清掃するとともに、防滑処理の不要部分、例えば床材間の目地などを覆うように、マスキングテープと養生シートとを一体化させてなるマスカーを貼り付ける。一方、
図1~
図3に示すように、スポンジまたは不織布等の液体吸収材3を内装した塗布用トレー4に防滑処理組成物を充填して、液体吸収材3に防滑処理組成物を含浸させる。ただし、液体吸収材3を省略して、塗布用トレー4に防滑処理組成物を直接充填してもよい。
【0054】
次に、塗布具1により被塗布面2に対して網点状に塗布部5Aを施工するため、先ず、塗布具1の操作ロッド31を手で保持し、塗布具本体10を持ち上げて、
図2、
図3に示すように、塗布具本体10の全ての塗布体13が液体吸収材3に対面するように、塗布具本体10を塗布用トレー4の上方位置に配置させる。そして、
図3に仮想線で示すように、塗布具本体10を下降させて、ガイドロッド15の下端部を被塗布面2に載せるとともに、塗布体13の下端部を液体吸収材3に押し当てる。すると、
図7Bに示すように、液体吸収材3のうちの塗布体13に対応する部分が塗布具の自重により窪んで、液体吸収材3に含浸させた防滑処理組成物が染み出し、塗布体13の下端部が防滑処理組成物に浸漬される。このとき、液体吸収材3に含浸させた防滑処理組成物が十分に染み出さない場合には、操作ロッド31を下方へ押し操作し、第2付勢部材16の付勢力に抗して塗布具本体10を少し押し下げて、防滑処理組成物を十分に染み出させて、塗布体13の下端部を防滑処理組成物に浸漬させることになる。
【0055】
こうして、塗布体13の下端部を防滑処理組成物に浸漬させると、防滑処理組成物は、毛細管現象により先端凹部20内に保持され、また塗布具本体10を持ち上げると、
図7C、
図7Dに示すように、塗布体13の下端部に1回の塗布に必要な分量の単位塗布液5が略半球状になって保持され、単位塗布液5に塗布用チューブ19の先端部から下方へ突出する支持棒18の下端部が挿入されて、塗布具本体10の移動時の振動などで、単位塗布液5が塗布体13の下端部から容易に液垂れしないように保持される。
【0056】
次に、塗布具1の先端部に単位塗布液5を保持させた状態で、
図4に示すように、被塗布面2のうちの単位塗布液5を塗布する位置付近に、ガイドロッド15の下端部を被塗布面2に当接させて塗布具本体10を載置し、この状態でガイドロッド15又はケーシング11の外縁を目視しながら、塗布具本体10を被塗布面2の適正位置に位置合わせし、その後、
図5及び
図7Eに示すように、第2付勢部材16の付勢力に抗して塗布具本体10を押し下げて、被塗布面2に支持棒18の先端部を当接させて、塗布体13の下端部に付着させた単位塗布液5を被塗布面2に押し当て、単位塗布液5を被塗布面2に付着させ、
図7F、
図7Gに示すように、塗布具本体10を上昇させて、被塗布面2に付着させた単位塗布液5からなる複数の塗布部5Aを、被塗布面2に施工することになる。
【0057】
こうして、塗布具1を用いた単位塗布液5の塗布作業を、被塗布面2に対する塗布位置を順次移動させて、被塗布面2の必要部位に対して防滑処理組成物からなる複数の点状の塗布部5Aを行方向と列方向にそれぞれ間隔をあけて塗布し、防滑処理組成物の塗布後、防滑処理組成物の組成に応じて、一定時間放置したり、加熱したり、紫外線を照射したりするなどして、塗布した防滑処理組成物を硬化させて、被塗布面2に複数の塗布部5Aからなる防滑凸部を施工することになる。
【0058】
このように、この塗布具1では、支持板12と、支持板12に突出状に設けた複数の塗布体13とを備え、複数の塗布体13の先端部に、塗布液を保持可能な保持凹部
としての先端凹部20をそれぞれ設けている。このため、塗布体13の先端部を、塗布液に浸漬したり、塗布液を含ませたスポンジまたは不織布等の液体吸収材3に押し付けたりすることで、
図7C及び
図7Dに示すように、保持凹部
としての先端凹部20内に塗布液が収容されるとともに、塗布体13の先端部から半球状に突出するように塗布液が保持されて、塗布体13の先端部に1回の塗布に必要な分量の単位塗布液5が保持される。そして、この状態で塗布体13の先端部を被塗布面2に当てることで、塗布体13の先端部に保持された単位塗布液5を被塗布面2に塗布して、塗布部5Aを形成できる。また、塗布体13は先端の高さ位置を揃えて支持板12に設けているので、塗布体13の先端部に保持された単位塗布液5を被塗布面2に同時に塗布することができる。このように、この塗布具1では、1回の塗布作業により、例えば600mm×200mmの領域に対して、行方向及び列方向にそれぞれ間隔をあけて、防滑処理組成物からなる複数の塗布部5Aを塗布することができ、マスキングシートなどを用いることなく、被塗布面2に対して単位塗布液5を直接的に網点状に塗布できるので、廃棄物の量を低減でき、しかも防滑凸部などの塗布部5Aを簡便且つ短時間に施工できる。
【0059】
また、先端凹部20の底部に先端凹部20の開口部側へ向けて突出する突起部18aを設けているので、先端凹部20の内面と突起部18a間の隙間における毛細管現象により、塗布体13の先端に保持した単位塗布液5が、塗布具本体10の操作時などにおける振動で、容易に脱落しないように保持できる。
【0060】
更にまた、複数の塗布体13が、支持板12に突出状に設けた複数の支持棒18と、複数の支持棒18の先端部に、先端を揃えてそれぞれ外装した複数の塗布用チューブ19とを備え、複数の塗布用チューブ19の先端部内に先端凹部20をそれぞれ設けているので、塗布用チューブ19としてエラストマなどの軟質素材からなるものを採用することで、塗布用チューブ19を被塗布面2に対して押し当てて、塗布液を塗布する場合でも、塗布用チューブ19の接触により被塗布面2が損傷することを効果的に防止できる。
【0061】
また、支持板12を平坦な板状に構成しているので、支持板12に対する塗布体13の取付構造を簡略に構成できるので好ましい。ただし、
図9に示す塗布具本体40のように、柱状のベース部材41に対して、短尺な支持棒18Hを周方向及び長さ方向に対して間隔をあけて放射状に植設し、支持棒18Hの先端部に塗布用チューブ19を外側に嵌め合せて固定し、ベース部材41に支持棒18Hと塗布用チューブ19とからなる複数の塗布体13Hを設けることもできる。
【0062】
更に、複数の塗布体13を支持板12に上下方向に移動自在にそれぞれ設け、複数の塗布体13を下限位置へ常時付勢する第1付勢部材14を複数の塗布体13に個別に設けているので、凹凸を有する被塗布面2に対しても、塗布体13が被塗布面2の凹凸に沿って長さ方向に移動することで、全ての塗布体13の先端部を被塗布面2に隙間なく当接させて、塗布不良が発生しないように単位塗布液5を塗布できる。
【0063】
また、支持板12にガイドロッド15(ガイド部材)を、ガイドロッド15の下端部が、塗布体13の下端部よりも上方位置と、塗布体13の下端部よりも下方位置とにわたって移動するように上下方向に移動自在に設け、ガイドロッド15を下方位置側へ常時付勢する第2付勢部材16を設けているので、塗布具1を被塗布面2などに載置したときに、ガイドロッド15により塗布体13の先端部が被塗布面2に接触することを防止でき、塗布体13の先端部の破損を効果的に防止できる。また、被塗布面2にガイドロッド15を位置合わせして、被塗布面2の適正位置に塗布体13を配置した状態で、第2付勢部材16の付勢力に抗して塗布具1を被塗布面2側へ押し操作することで、塗布体13の先端部を被塗布面2に押し当てて、被塗布面2の適正位置に精度良く単位塗布液5を塗布できる。
【0064】
更に、複数の塗布体13の途中部を長さ方向に移動自在に案内する案内板17を、支持板12と平行に、ガイドロッド15(ガイド部材)に設けて、案内板17により塗布体13の途中部を上下方向に案内しているので、塗布体13の姿勢の安定性を向上でき、外力による塗布体13の変形を防止できるとともに、被塗布面2の適正な位置に単位塗布液5を塗布できる。
【0065】
次に、前記塗布具1の他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態と同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0066】
図10Aに示すように、この塗布具50は、塗布具本体51と、塗布具本体51を押し操作するためのハンドル部材52を備え、塗布具本体51は、ハンドル部材52を取付けた押圧板53と、押圧板53の上面側に設けた上面板54と、押圧板53の下面側に設けたクッション材55と、クッション材55の下面側に設けた支持板56と、支持板56に下方へ突出状に設けた複数の塗布体13Fと、押圧板53の側部に上下移動自在に設けたガイド部材57と、ガイド部材57を常時下方へ付勢する第2弾性部材58とを備えている。ただし、塗布体13Fに代えて、前記実施の形態の塗布体13、13A~13E、13Gを設けることもできる。
【0067】
ハンドル部材52は、上面板54を貫通して押圧板53に固定され、作業者はハンドル部材52を手で握って塗布具本体51を操作できるように構成されている。ハンドル部材52としては、塗布具本体51を操作可能なものであれば任意の構成のものを採用でき、例えば下向きU字状のハンドル部材52を左右に間隔をあけて平行或いは平面視において倒立V字状に角度を付けて設け、左右の手でハンドル部材52を握って、塗布具本体51を操作可能なものを採用できる。なお、ハンドル部材52に代えて、前記実施の形態の操作部30を押圧板53に取り付けることも可能である。
【0068】
押圧板53は、曲げ剛性に優れた、金属材料、合成樹脂材料、木材などからなる板状部材で構成され、ハンドル部材52の押し操作力をクッション材55の上面全体に対して略均一に作用できるように構成されている。
【0069】
クッション材55は、圧縮変形可能で且つ元の形状に復帰可能なものであれば任意の構成のものを採用でき、例えばポリウレタンなどからなるスポンジで構成されている。
【0070】
ガイド部材57は、金属製又は合成樹脂製の軸状部材で構成され、押圧板53の左右両側に前後に一定間隔おきに設けられ、リニアブッシュなどからなる案内部材59を介して押圧板53に上下方向に移動自在に貫通状に設けられている。ガイド部材57の上端部は上面板54に固定され、ガイド部材57の下端部は支持板56を取り囲むように設けられた枠状の下部フレーム60に固定されており、複数のガイド部材57は、上面板54及び下部フレーム60により同期して上下移動するように連結されている。押圧板53と下部フレーム60間においてガイド部材57には圧縮コイルバネなどからなる第2弾性部材58が外装され、ガイド部材57は、その下端部が塗布体13Fの下端部よりも下方へ移動した、
図10Aに図示の下限位置に、第2弾性部材58により常時付勢されている。ガイド部材57の下端部は、被塗布面2に対する位置合わせを容易にするため、先鋭に構成されている。ただし、ガイド部材57の下端部にフリーベアリングを設けて、塗布具本体51の位置合わせが容易になるように構成することも好ましい。
【0071】
支持板56は、曲げ剛性に優れた、金属材料、合成樹脂材料、木材などからなる板状部材で構成され、支持板56には下方へ突出する複数の塗布体13Fが先端の高さ位置を揃えて設けられている。支持板56と複数の塗布体13Fとで塗布ユニット61が構成され、この塗布ユニット61は、クッション材55の下面に接着剤などで固着されている。ただし、塗布ユニット61は、メンテナンス性を向上するため、面ファスナー又は磁石などの図示外の止着具でクッション材55の下面に着脱自在に取り付けることもできる。また、塗布体13Fは、支持板56に対して接着剤により固定することもできるし、ボルトナットなどの任意の固定構造により固定することもできる。
【0072】
この塗布具50を用いて被塗布面2に塗布液を塗布する際には、先ず、塗布具50のハンドル部材52を手で保持して、前記実施の形態と同様に、塗布用トレー4内の液体吸収材3に塗布体13Fの下端部を押し当てて、塗布体13Fの下端部に塗布液としての防滑処理組成物を付着させる。
【0073】
次に、塗布体13Fの先端部に単位塗布液5を保持させた状態で、被塗布面2に塗布具本体51を載置して、塗布具本体51を被塗布面2の適正位置に位置合わせし、その後、
図10Bに示すように、第2
弾性部材58の付勢力に抗して押圧板53を押し下げて、クッション材55が多少圧縮されるように、塗布体13Fの下端部を被塗布面2に押し当てて、塗布体13Fの下端部の単位塗布液5を被塗布面2に付着させ、単位塗布液5からなる複数の塗布部5Aを被塗布面2に施工することになる。
【0074】
こうして、塗布具50を用いた単位塗布液5の塗布作業を順次行ってから、防滑処理組成物の組成に応じて、一定時間放置したり、加熱したり、紫外線を照射したりするなどして、塗布した防滑処理組成物を硬化させて、被塗布面2に複数の塗布部5Aからなる防滑凸部を施工することになる。
【0075】
この塗布具50では、前記実施の形態の塗布具1とは異なり、塗布体13Fを個別に上下移動させないので、塗布具50の構成を大幅に簡単にして、その製作コストを安くできる。また、クッション材55により塗布具50に設けた複数の塗布体13Fに対して略一様に押圧操作力を作用させることができるので、押圧操作力のバラツキによる、塗布液の塗布量のバラツキ及び塗布部5Aの直径のバラツキを極力少なくすることができる。
【0076】
なお、
図11Aに示す塗布具50Jのように、塗布体13Fの途中部が挿通する複数の挿通孔を設けたガイド板65を下部フレーム60に一体的に設け、ガイド板65により塗布体13Fの途中部を上下移動自在に案内することもできる。また、支持板56に代えて、ゴム板からなる支持板56Jを設け、塗布体13Fが、クッション材55の変形により、独立して上下方向に微小移動できるように構成することもできる。更に、支持板56Jにおける塗布体13Fの取付け位置に、支持板56Jの変形を促進する貫通孔66を設けることも好ましい。なお、符号67は、支持板56と複数の塗布体13Fからなる塗布ユニット61Jを、クッション材55に対して着脱自在に取り付けるための面ファスナーまたは磁石板などからなる止着具である。
【0077】
この塗布具50Jでは、支持板56Jをゴム板で構成しているので、
図6に示すように、被塗布面2に突部2aが存在する場合でも、突部2aに対応する塗布体13Fが独立して上下移動することで、突部2aの上面に対して塗布液を綺麗に且つバラツキなく塗布することができる。なお、
図11Bに示す塗布具50Kのように、クッション材55の下部及び支持板56に、複数の塗布体13Fを個々の塗布体13Fに区画する格子状の切込部68を設け、切込部68により区画される単位クッション材55K及び単位支持板56Kにより個々の塗布体13Fが独立して容易に上下移動するように構成することも可能である。
【0078】
次に、防滑処理用組成物の具体的な組成について説明する。
防滑処理用組成物は、硬化性樹脂を含む硬化性組成物である。硬化性樹脂としては特に限定されないが、防滑凸部の接触角などを考慮すると、湿気硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、及び光硬化性樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0079】
湿気硬化性樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用できるが、例えば、湿気により硬化する変性シリコーン樹脂を好ましく使用できる。変性シリコーン樹脂としては、例えば、湿気により硬化する硬化性成分を含み、硬化性成分が架橋性シリル基含有ポリマー(以下「硬化性ポリマー成分」と呼ぶことがある)8~92重量%とアルコキシ基含有シリコーンオリゴマー(以下「硬化性オリゴマー成分」と呼ぶことがある)8~92重量%とを含み、さらに、架橋性シリル基含有ポリマー及びアルコキシ基含有シリコーンオリゴマーを除くシラン化合物、硬化触媒、並びに樹脂用添加剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分を含んでいてもよい防滑処理用組成物が挙げられる。以下、硬化性樹脂として上記変性シリコーン樹脂を含む防滑処理用組成物を硬化性組成物(X)と呼び、その必須成分及び任意成分についてさらに詳しく説明する。
【0080】
硬化性ポリマー成分は、架橋性シリル基を有するポリマーであれば特に限定されないが、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンエーテル、及び(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーよりなる群から選ばれる主鎖骨格と、主鎖骨格の末端及び/又は側鎖(より好ましくは主鎖骨格の末端)に結合する架橋性シリル基とを有する硬化性ポリマー成分(A)が好ましく、硬化性組成物(X)の硬化体の床材への密着性、硬度や、耐摩耗性などの耐久性を考慮すると、硬化性ポリマー成分(A)の中でも、1分子あたりの架橋性シリル基の平均個数が0.7個以上のものがより好ましく、0.7個~3.0個のものがさらに好ましく、1.2個~2.6個のものが特に好ましい。
【0081】
ここで、硬化性ポリマー成分が有する架橋性シリル基とは、加水分解などにより架橋結合を形成する架橋性基を有するシリル基であり、より具体的にはシリル基に1~3個の架橋性基が置換した基である。シリル基に置換する基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニル基、及びアルケニルオキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0082】
硬化性ポリマー成分の数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは1000~100000、特に好ましくは1000~60000である
【0083】
また、主鎖骨格が(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーである硬化性ポリマー成分(A3)は、(メタ)アクリル酸エステル系化合物およびビニル化合物から選ばれるモノマー化合物と、架橋性シリル基含有ジスルフィド化合物とを、必要に応じて有機溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、ジオクチルフタレートなど)中にて光重合(常温乃至50~60℃で、4~30時間の光照射)させることによっても製造できる。
【0084】
主鎖骨格がアクリル酸エステル系ポリマーである硬化性ポリマー成分(A3)としては市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、サイリルMA-480(商品名、(株)カネカ製)、アルフォン(商標名)US-6110(商品名、アルコキシシリル基を有するアクリル系ポリマー、アルコキシシリル基の1分子当りの平均個数0.9、数平均分子量3000、東亜合成(株)製)などが挙げられる。
【0085】
また、硬化性組成物(X)では、硬化性ポリマー成分(A)として、硬化性ポリマー成分(A1)、硬化性ポリマー成分(A2)、及び硬化性ポリマー成分(A3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を使用できる。
【0086】
硬化性組成物(X)において、硬化性オリゴマー成分としては、アルコキシ基を有するシラン化合物のオリゴマーであれば特に限定されないが、例えば、一般式(1)、
[-Si(OR1)(R2)-O-]m (1)
〔式中、R1はアルキル基を示す。R2はアルキル基、アリール基又は反応性官能基を示す。mはモノマー単位の繰返し数であり、2~100の整数を示す。但し、m個のR1、及びm個のR2は、それぞれ、同一でも良く又は異なっていてもよい。〕
で表わされる硬化性オリゴマー成分(B)が挙げられる。なお、一般式(1)において、通常、珪素原子側末端には基-OR1が結合し、酸素原子側末端には基R2が結合する。また、アルコキシ基が結合した珪素原子をも含めて、アルコキシシリル基と呼ばれることもある。
【0087】
硬化性オリゴマー成分(B)としては市販品を使用してもよい。該市販品には多くの会社から市販される多くのものがあるが、例えば、信越化学(株)製の市販品を例にとれば、商品名:KR-511、KR-513、KR-516、KR-517などの反応性官能基を有する硬化性オリゴマー成分、商品名:KR-213、KR-401N、KR-500、KR-510、KR-515、KR-9218、KC-89S、X-40-9225、X-40-9227、X-40-9246、X-40-9250などの反応性官能基を有しない硬化性オリゴマー成分などが挙げられる。
【0088】
反応性官能基を有しない市販の硬化性オリゴマー成分は、例えば、置換基としてメトキシ基と共に、メチル基又はメチル基及びフェニル基を有し、粘度(25℃)が5~160mm2/s(好ましくは20~100mm2/s)の範囲であり、屈折率(25℃)が1.35~1.55(好ましくは1.39~1.54)の範囲であり、メトキシ基含有量が10~50重量%(好ましくは15~35重量%)の範囲である。
硬化性オリゴマー成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。もちろん、市販品を2種以上混合して用いてもよい。
【0089】
硬化性成分において、硬化性ポリマー成分と硬化性オリゴマー成分との使用割合は特に限定されず、例えば、硬化性組成物(X)の硬化体を形成する床表面の材質、硬化体の形状や寸法、硬化体に設計された物性などの種々の条件に応じて適宜選択できるが、硬化性成分全量中、好ましくは硬化性ポリマー成分を8~92重量%、硬化性オリゴマー成分を8~92重量%、より好ましくは硬化性ポリマー成分を15~85重量%、硬化性オリゴマー成分を15~85重量%、さらに好ましくは硬化性ポリマー成分を35~65重量%、硬化性オリゴマー成分を35~65重量%である。
【0090】
硬化性ポリマー成分、及び硬化性オリゴマー成分の硬化性成分における各含有量が上記範囲にあることにより、硬化性組成物(X)の硬化体が次のような優れた特性を発現する。すなわち、床表面との密着性、硬度や、耐摩耗性、光沢保持などの耐久性を高い水準で併せ持ち、後述する複数の防滑凸部からなる防滑構造が得られる。また、該防滑構造は、晴天時などの乾燥した時だけでなく、雨天時や水を用いて清掃作業を行なったときにでも、優れた防滑性能を発揮することができ、床材、特にセラミックタイルや石材からなる床材の歩行安全性を高めることができる。
【0091】
硬化性組成物(X)において、上記した硬化性成分と共に用いられる硬化触媒はシラノール縮合触媒とも呼ばれるものであり、該硬化性触媒としては、この分野で常用される硬化触媒をいずれも使用でき、例えば、有機錫系化合物、有機チタン系化合物などの金属系触媒や、錫やチタン以外の金属系触媒などが挙げられる。有機錫系化合物としては特に限定されないが、例えば、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ステアリン酸錫、ジオクチル酸錫、ジステアリン酸錫、ジナフテン酸錫などの錫カルボン酸塩類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビス(アルキルマレエート)などのジブチル錫ジカルボキシレート類、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド、などのジアルキル錫のアルコキシド誘導体類、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノエート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ビスエトキシシリケート、ジオクチル錫オキシドなどのジアルキル錫の分子内配位性誘導体類、ジブチル錫オキシドとエステル化合物による反応混合物、ジブチル錫オキシドとシリケート化合物による反応混合物、およびこれらジアルキル錫オキシド誘導体のオキシ誘導体などの4価ジアルキル錫オキシドの誘導体などが挙げられる。有機チタン系化合物としては、例えば、テトラーn―ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネートなどが挙げられる。また、錫やチタン以外の金属系触媒としては、例えば、オクチル酸やオレイン酸、ナフテン酸、ステアリン酸などをカルボン酸成分とするカルボン酸カルシウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸バナジウム、カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉛、カルボン酸チタニウム、カルボン酸ニッケルなどのカルボン酸金属塩類などが挙げられる。これらの中でも、金属系触媒が好ましく、有機錫系化合物及び有機チタン系化合物がより好ましく、有機錫系化合物がさらに好ましい。硬化触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0092】
硬化性組成物(X)における硬化触媒の含有量は特に限定されないが、硬化性成分100重量部に対して好ましくは0.05重量部~20重量部、より好ましくは0.1重量部~10重量部、さらに好ましくは0.3~10重量部である。
【0093】
硬化性組成物(X)は、前述したように、その硬化体の物性を低下させない範囲で、架橋性シリル基含有ポリマー、及びアルコキシ基含有シリコーンオリゴマー以外のシラン化合物を含んでいてもよい。
【0094】
硬化性組成物(X)におけるシラン化合物の含有量は特に限定されないが、硬化性成分100重量部に対し、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは2~45重量部、さらに好ましくは5~35重量部である。
【0095】
硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物(以下「硬化性組成物(Y)」と呼ぶことがある)において、熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などを好ましく使用できる。熱硬化性樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、硬化性樹脂(Y)に含まれる熱硬化性樹脂は、併用される硬化剤を選択することによって、加熱することなく室温で硬化するものをも含む。
【0096】
また、硬化性樹脂として光硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物(以下「硬化性組成物(Z)」と呼ぶことがある)において、光硬化性樹脂としては紫外線などの光線を照射することにより硬化可能な各種の硬化性樹脂を特に限定なく使用できるが、例えば、光硬化性アクリル樹脂などを好ましく使用できる。
【0097】
湿気硬化性樹脂を用いるのと同様に、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いることによっても、防滑凸部の接触角を所定の範囲に調整することが容易になる。その結果、床表面の美麗性、意匠性、清掃性などを損なうことなく、優れた防滑性能及び防滑性能の長期的な保持、優れた防汚性を有する防滑凸部を形成することができる。これらの硬化性樹脂としては、常温で液状であり、床表面への施工後に硬化するものを選択して用いることが好ましい。
【0098】
硬化性樹脂(X)(Y)(Z)などの、硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物は、その硬化体の物性を損なわない範囲で、一般的な樹脂用添加剤を任意成分として含んでいてもよい。樹脂添加剤としては、例えば、充填材、可塑剤、着色剤、有機溶剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、揺変剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0099】
硬化性組成物(X)は、例えば、上記した各必須成分(硬化触媒を除く)および必要に応じて上記したシラン化合物や樹脂用添加剤(着色剤を除く)を混合し、得られた混合物を減圧脱気し、脱気後の混合物に硬化触媒および必要に応じて着色剤を添加してさらに混合することにより得ることができる。前記以外の熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物(Y)、(Z)も、樹脂用添加剤の1種又は2種以上を含むことができる。
【0100】
こうして得られる硬化前の防滑処理用組成物は、通常は透明である。また、防滑処理用組成物を防滑凸部の材料として用いる場合、それ自体が液状の硬化性樹脂を用いるか又は硬化性樹脂の有機溶剤溶液の形態で用いられる。これらの20℃における粘度は、BH型回転粘度計(20rpm)による測定値として、30mPa・s~200,000mPa・sの範囲に調整することが好ましい。
【0101】
なお、粘度は、防滑構造を形成する際の作業性や、後述する防滑構造の製造方法において完全に硬化する前の防滑処理用組成物が所定の立体形状をほぼ維持しつつかつその一部のみが変形(例えば、頂部周辺がほぼ曲面状及び/又は円弧状に変形)するように構成すること、などを考慮すると、粘度(20℃)を50mPa・s~5000mPa・sの範囲とすることが好ましい。防滑処理用組成物の粘度は、例えば、防滑処理用組成物そのものの選択、防滑処理用組成物に含まれる成分の種類や含有量の選択などにより調整できる。さらに、任意成分や樹脂用添加剤により粘度を調整してもよい。
【0102】
次に、塗布体の先端部構造の評価試験について説明する。
試験体として、次のような先端構造の塗布体を製作した。
【0103】
(実施例1)
図7Aに示すように、先端部を先鋭に構成した、直径が6.0mmのステンレス製の支持棒18の先端部に、長さ5.0mmで外径が8.0mmのゴム製の塗布用チューブ19を、支持棒18の先端部が塗布用チューブ19の先端部から0.5mmだけ突出するように設けた塗布体13を製作した。
【0104】
(実施例2)
図8Fに示すように、外周部に螺旋溝からなる外周溝部25を形成した呼びがM6のステンレス製のメートル並目ねじからなり、その先端面の全体に部分球面状の先端凹部20Eを形成した塗布体13Fを製作した。
【0105】
(実施例3)
実施例2の塗布体13Fにおける先端凹部20Eに代えて、先端面に長さ方向と直交する平坦面を形成した塗布体を製作した。
【0106】
(実施例4)
図8Eに示すように、直径6mmのアルミニウム合金製の金属棒からなり、先端面の全体に部分球面状の先端凹部20Eを形成した塗布体13Eを製作した。
【0107】
図8Gに示すように、直径6mmのアルミニウム合金製の金属棒からなり、先端面に長さ方向と直交する平坦面26を形成し、更に先端からの距離L2が1mmの位置に、溝幅W1が1mm、深さが0.5mmの環状の外周溝部27を設けた塗布体13Gを製作した。
【0108】
(実施例5.2)
塗布体13Gにおける外周溝部27の形成位置を、先端からの距離L2が3mmの位置に変更した以外は実施例5.1と同様に構成した塗布体を製作した。
【0109】
(実施例5.3)
塗布体13Gにおける外周溝部27の形成位置を、先端からの距離L2が5mmの位置に変更した以外は実施例5.1と同様に構成した塗布体を製作した。
【0110】
(実施例5.4)
塗布体13Gにおける外周溝部27の溝幅W1を1.5mmに変更した以外は実施例5.1と同様に構成した塗布体を製作した。
【0111】
(実施例5.5)
塗布体13Gにおける外周溝部27の溝幅W1を2mmに変更した以外は実施例5.1と同様に構成した塗布体を製作した。
【0112】
(実施例5.6)
実施例5.1の塗布体13Gに対して、
図8Gに仮想線で示すように、塗布体13Gの外周溝部27と同様の構成の外周溝部27を、相互に1mmの間隔L3をあけて2本追加し、計3本の外周溝部27を設けた以外は、実施例5.1と同様に構成した塗布体を製作した。
【0113】
(実施例5.7)
実施例5.1の塗布体13Gに対して、塗布体13Gの外周溝部27と同様の構成の環状の外周溝部を、相互に1mmの間隔L3をあけて4本追加し、計5本の外周溝部を設けた以外は、実施例5.1と同様に構成した塗布体を製作した。
【0114】
(比較例1)
図12Aに示すように、先端部が半球状のアルミニウム合金製の直径2.6mmの棒状部材70aの先端部に、ゴム製の外装部材70bを被覆した、直径6mmの塗布体70を製作した。
【0115】
(比較例2)
図12Bに示すように、直径6mmのアルミニウム合金製の金属棒からなり、先端面に長さ方向と直交する平坦面71aを形成した塗布体71を製作した。
【0116】
そして、塗布液として、粘度が80mPa・sのシリコーン系の防滑処理組成物を用い、これをトレーに内装したウレタンからなる液体吸収材に充填して、25℃の室内で、次のような評価試験を行った。
【0117】
(評価試験1)
比較例1、2の1本の塗布体と、実施例1、2の1本の塗布体13、13Fを用い、塗布体の先端部を液体吸収材に押し当てて、塗布体の先端から7mmの高さ位置まで防滑処理組成物を付着させた後、1秒間だけ塗布体の先端部を、被塗布面に押し当てて、被塗布面に塗布部5Aを形成した場合と、5秒間だけ塗布体の先端部を被塗布面に押し当てて、被塗布面に塗布部5Aを形成した場合における、塗布部5Aの直径を、それぞれ5回測定した。そして、塗布部5Aの直径の平均値を求めるとともに、押し付け時間が1秒の場合の直径の平均値と、押し当て時間が5秒の場合の直径の平均値の増加率を求めた。その結果を表1に示す。
【0118】
【0119】
表1から、先端凹部20を設けた実施例1の塗布体13と、外周部にネジ溝からなる外周溝部25を形成し、先端部に凹部20Eを設けた実施例2の塗布体13Fは、ゴム被覆した比較例1の塗布体70及び先端を平坦面で構成した比較例2の塗布体71と比較して、押し時間の差異による、塗布部5Aの直径のバラツキが少ないことが分かる。また、外周部にネジ溝からなる外周溝部25を形成した実施例2の塗布体13Fは、外周部にネジ溝を有さない実施例1の塗布体13よりも、塗布部5Aの直径のバラツキが少ないことが分かる。このため、実施例1、2の塗布体13、13Fは、作業者によって押し時間が多少ばらついた場合でも、塗布部5Aの直径のバラツキを少なくして、一様な大きさの塗布部5Aを形成できることが分かる。
【0120】
(評価試験2)
実施例2~4と実施例5.1~5.7と比較例2の塗布体を用い、塗布体の先端部を液体吸収材に押し当てて、塗布体の先端から7mmの高さ位置まで防滑処理組成物を付着させた後、1秒間だけ塗布体の先端部を、被塗布面に押し当てて、被塗布面に塗布部5Aを形成した場合と、5秒間だけ、塗布体の先端部を被塗布面に押し当てて、被塗布面に塗布部5Aを形成した場合における、被塗布面に対する単位塗布液の塗布前後の塗布体の重量と塗布部5Aの直径を、それぞれ5回測定した。そして、被塗布面に対する塗布液の付着量の平均値と、塗布部5Aの直径の平均値をそれぞれ求めるとともに、押し付け時間が1秒の場合と5秒の場合における、被塗布面に対する塗布液付着量の平均値の増加率と、塗布部5Aの直径の平均値の増加率をそれぞれ求めた。その結果を表2~5に示す。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
表2から、先端部の外周面にネジ溝からなる外周溝部25を形成するとともに、先端面に先端凹部20Eを形成した実施例2の塗布体13Fは、塗布液の付着量及び塗布部5Aの直径のバラツキが、実施例3,4及び比較例2よりも小さくなることが分かる。また、実施例3のように、先端面を平坦面で構成する場合であっても、先端部の外周面にネジ溝からなる外周溝部25を形成すると、塗布液の付着量及び塗布部5Aの直径のバラツキを少なくできることが分かる。更に、実施例4のように、先端部の外周面にネジ溝からなる外周溝部25を形成しない場合であっても、先端面に先端凹部20Eを形成すると、塗布液の付着量及び塗布部5Aの直径のバラツキを少なくできることが分かる。また、実施例3が実施例4よりも優れていることから、先端凹部20Eよりも外周溝部25の方が、バラツキの低減に寄与していることが分かる。
【0126】
表3~表5に示すように、ネジ溝からなる外周溝部25に代えて、環状溝からなる外周溝部27を形成した実施例5.1~5.7においても、外周溝部27を備えていない比較例2と比較して、塗布液の付着量及び塗布部5Aの直径のバラツキを少なくできることが分かる。
【0127】
また、環状溝からなる外周溝部27を形成する場合には、表3に示すように、塗布体の先端部から外周溝部27までの距離L2は、1mm以上5mm以下が好ましく、表4に示すように、外周溝部27の溝幅W1は、大きくなるにしたがってバラツキが改善されるので1mm以上が好ましく、表5に示すように、外周溝部27の本数は、1本でも良いが、できるだけ多数本設けることが好ましいことが分かる。
【0128】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0129】
1:塗布具
2:被塗布面
2a:凸部
3:液体吸収材
4:塗布用トレー
5:単位塗布液
5A:塗布部
10:塗布具本体
11:ケーシング
11a:上壁部
11b:側壁部
12:支持板
12a:平板部
12b:取付部
12c:上部貫通孔
12d:上部ガイド孔
13:塗布体
14:第1付勢部材
15:ガイドロッド
15a:ボルト頭部
15b:ネジ部
16:第2付勢部材
17:案内板
17a:下部貫通孔
17b:下部ガイド孔
18:支持棒
18a:突起部
18b:ネジ部
19:塗布用チューブ
20:先端凹部
21:規制ナット
22:ナット部材
23:ナット部材
30:操作部
31:操作ロッド
32:ベース板
33:連結部
13A:塗布体
18A:支持棒
18Aa:突起部
20A:先端凹部
13B:塗布体
18B:支持棒
18Ba:端面
20B:先端凹部
13C:塗布体
18C:支持棒
18Ca:筒部
18Cb:突起部
20C:先端凹部
13D:塗布体
18D:支持棒
18Da:筒部
20D:先端凹部
13E:塗布体
18E:支持棒
20E:先端凹部
13F:塗布体
18F:支持棒
25:外周溝部
13G:塗布体
18G:支持棒
26:平坦面
27:外周溝部
40:塗布具本体
41:ベース部材
13H:塗布体
18H:支持棒
50:塗布具
51:塗布具本体
52:ハンドル部材
53:押圧板
54:上面板
55:クッション材
56:支持板
57:ガイド部材
58:第2弾性部材
59:案内部材
60:下部フレーム
61:塗布ユニット
70:塗布体
70a:棒状部材
70b:外装部材
71:塗布体
71a:平坦面
50J:塗布具
56J:支持板
65:ガイド板
66:貫通孔
67:止着具
50K:塗布具
55K:単位クッション材
56K:単位支持板
68:切込部