(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】クロマトグラフ用オートサンプラ
(51)【国際特許分類】
G01N 30/26 20060101AFI20220511BHJP
G01N 30/24 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G01N30/26 N
G01N30/24 E
(21)【出願番号】P 2020558803
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2018045236
(87)【国際公開番号】W WO2020121365
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100121120
【氏名又は名称】渡辺 尚
(72)【発明者】
【氏名】安藤 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆志
(72)【発明者】
【氏名】保永 研壱
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014468(JP,A)
【文献】特開平02-061557(JP,A)
【文献】特開2001-091522(JP,A)
【文献】特開2017-067176(JP,A)
【文献】特開昭59-193351(JP,A)
【文献】特開平11-271329(JP,A)
【文献】Shenzhen Mindray Bio-Medical Electronics Co., Ltd.,BS-200 Chemistry Analyzer Operation Manual,Operation Manual,Shenzhen Mindray Bio-Medical Electronics Co., Ltd.,2006年03月31日,Version 1.2,p.5-13,5-14,https://docslide.net/download/link/mindray-bs-200-user-manual
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/26
G01N 30/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端及び基端を有し、前記先端から試料を吸入するためのサンプリングニードルと、
前記サンプリングニードルの基端と流体的に接続されている配管と、を備え、
前記サンプリングニードルと前記配管とを流体的に接続するための接続機構は、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちのいずれか一方に固着された第1部品、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの他方に固着された第2部品、及びネジの螺合を利用して前記第1部品と前記第2部品とを互いに固定するための固定部品を備え、
前記第1部品は
第1シール面を有し、
前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記一方の端面が
第1シール面と同一平面内に配置
され、
前記第2部品は前記第1シール面と対向する第2シール面を有し
、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記他方の端面が
前記第2シール面と同一平面内に配置
され、
前記接続機構は、前記第1部品の前記第1シール面と前記第2部品の前記第2シール面との間にパッキンを介在させ、前記サンプリングニードルの前記端面及び前記配管の前記端面を前記パッキンに接触させ、
かつ前記第1シール面および前記第2シール面を前記パッキンに接触させた状態で、前記固定部品によって前記第1部品と前記第2部品とを互いに固定するものである、クロマトグラフ。
【請求項2】
先端及び基端を有し、前記先端から試料を吸入するためのサンプリングニードルと、
前記サンプリングニードルの基端と流体的に接続されている配管と、を備え、
前記サンプリングニードルと前記配管とを流体的に接続するための接続機構は、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちのいずれか一方に固着された第1部品、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの他方に固着された第2部品、及びネジの螺合を利用して前記第1部品と前記第2部品とを互いに固定するための固定部品を備え、
前記第1部品は前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記一方の端面が突出した又は同一平面内に配置されている第1シール面を有し、
前記第2部品は前記第1シール面と対向する第2シール面を有し、前記第2シール面に前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記他方の端面が突出した又は同一平面内に配置されている、
前記接続機構は、前記第1部品の前記第1シール面と前記第2部品の前記第2シール面との間にパッキンを介在させ、前記サンプリングニードルの前記端面及び前記配管の前記端面を前記パッキンに接触させた状態で、前記固定部品によって前記第1部品と前記第2部品とを互いに固定するものであり、
前記固定部品に設けられている第1ネジと螺合する第2ネジが前記第1部品に設けられており、
前記固定部品は、前記第2部品側において回転自在に設けられ、前記第1部品と締結されたときに前記第2部品を前記第1部品側へ押圧するように構成され、
前記第1部品は前記第2部品を嵌め込むための凹部を有し、前記凹部の底面に前記第1シール面が設けられ、
前記接続機構は、前記第2部品を内部に収容しつつ前記第2シール面に前記パッキンを接触させた状態で前記パッキンを保持するパッキン保持部を備え、前記パッキン保持部と前記第1部品の前記凹部とが互いに嵌合する
、クロマトグラフ。
【請求項3】
クロマトグラフィー用の分析流路に試料を注入するクロマトグラフ用オートサンプラであって、
先端及び基端を有し、前記先端から試料を吸入するためのサンプリングニードルと、
前記サンプリングニードルの基端と流体的に接続されている配管と、
を備え、
前記サンプリングニードルと前記配管とを流体的に接続するための接続機構は、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちのいずれか一方に固着された第1部品、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの他方に固着された第2部品、及びネジの螺合を利用して前記第1部品と前記第2部品とを互いに固定するための固定部品を備え、
前記第1部品は
第1シール面を有し、
前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記一方の端面が
第1シール面と同一平面内に配置
され、
前記第2部品は前記第1シール面と対向する第2シール面を有し
、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記他方の端面が
前記第2シール面と同一平面内に配置
され、
前記接続機構は、前記第1部品の前記第1シール面と前記第2部品の前記第2シール面との間にパッキンを介在させ、前記サンプリングニードルの前記端面及び前記配管の前記端面を前記パッキンに接触させ、かつ前記第1シール面および前記第2シール面を前記パッキンに接触させた状態で、前記固定部品によって前記第1部品と前記第2部品とを互いに固定するものである、クロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項4】
前記固定部品に設けられている第1ネジと螺合する第2ネジが前記第1部品に設けられており、
前記固定部品は、前記第2部品側において回転自在に設けられ、前記第1部品と締結されたときに前記第2部品を前記第1部品側へ押圧するように構成されている、請求項3に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項5】
前記第1部品は前記第2部品を嵌め込むための凹部を有し、前記凹部の底面に前記第1シール面が設けられている、請求項4に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項6】
前記第1部品は前記サンプリングニードルの前記基端に固着されており、
前記第2部品は前記配管の
前記サンプリングニードル側の端部に固着されている、請求項4に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項7】
クロマトグラフィー用の分析流路に試料を注入するクロマトグラフ用オートサンプラであって、
先端及び基端を有し、前記先端から試料を吸入するためのサンプリングニードルと、
前記サンプリングニードルの基端と流体的に接続されている配管と、
を備え、
前記サンプリングニードルと前記配管とを流体的に接続するための接続機構は、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちのいずれか一方に固着された第1部品、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの他方に固着された第2部品、及びネジの螺合を利用して前記第1部品と前記第2部品とを互いに固定するための固定部品を備え、
前記第1部品は前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記一方の端面が突出した又は同一平面内に配置されている第1シール面を有し、
前記第2部品は前記第1シール面と対向する第2シール面を有し、前記第2シール面に前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記他方の端面が突出した又は同一平面内に配置されている、
前記接続機構は、前記第1部品の前記第1シール面と前記第2部品の前記第2シール面との間にパッキンを介在させ、前記サンプリングニードルの前記端面及び前記配管の前記端面を前記パッキンに接触させた状態で、前記固定部品によって前記第1部品と前記第2部品とを互いに固定するものであり、
前記固定部品に設けられている第1ネジと螺合する第2ネジが前記第1部品に設けられており、
前記固定部品は、前記第2部品側において回転自在に設けられ、前記第1部品と締結されたときに前記第2部品を前記第1部品側へ押圧するように構成されている、
前記第1部品は前記第2部品を嵌め込むための凹部を有し、前記凹部の底面に前記第1シール面が設けられており、
前記接続機構は、前記第2部品を内部に収容しつつ前記第2シール面に前記パッキンを接触させた状態で前記パッキンを保持するパッキン保持部を備え、前記パッキン保持部と前記第1部品の前記凹部とが互いに嵌合する
、クロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項8】
前記固定部品の外周面に前記第1ネジが設けられており、前記第1部品の内周面に前記第2ネジが設けられている、請求項5に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項9】
前記サンプリングニードルは、前記先端が鉛直下方を向き、前記基端が鉛直方向に対して交差する方向を向くように屈曲している、請求項3に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項10】
前記配管は金属製であり、前記第1部品は前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記一方に対して溶接され、前記第2部品は前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記他方に対して溶接されている、請求項3に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項11】
前記パッキンは樹脂製である、請求項3に記載のクロマトグラフ用オートサンプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフや超臨界流体クロマトグラフなどのクロマトグラフに用いられるオートサンプラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフや超臨界流体クロマトグラフでは、移動相が流れる分析流路中に試料を自動的に注入するオートサンプラがよく用いられる。オートサンプラは、流路構成を切り替えるための切替バルブ、サンプリング用のニードル、ニードルを介して液体を吸入するためのシリンジポンプなどを備えている(特許文献1参照)。
【0003】
オートサンプラのニードルは、先端が鉛直下方を向いた状態で鉛直方向と水平面内方向へ移動するように構成されており、ニードルの基端には、ニードルの先端から吸入された液体を一時的に保持するための配管が流体的に接続されている。液体クロマトグラフでは、流路内の圧力が数十MPa~百数十MPaにも達するため、ニードルの基端と配管との接続部分には高圧に耐え得るシール性が求められる。そのため、従来では、ニードルの基端と配管との間を連結するジョイント部材に対してニードルの端部をメイルナットとフェルールを用いて接続する方法が一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにメイルナットとフェルールを用いた接続方法では、金属製のニードルの端面を金属製のジョイント部材内のシール面に押し当てた状態でニードルをジョイント部材に対して固定するため、ジョイント部材内のシール面とニードルの端面との間に金属面のわずかな凹凸による隙間が生じる可能性がある。また、メイルナットとフェルールを用いた接続方法では、作業者の技術レベルによって、ニードル端面がジョイント部材内のシール面に到達しないままニードルがジョイント部材に対して固定されてしまい、ニードルと配管との接続部分にデッドボリュームとなる隙間が生じる可能性がある。
【0006】
ニードルと配管との接続部分のデッドボリュームが大きいと、試料成分ピークの拡散や試料のキャリーオーバーが発生し、分析結果に悪影響を与える虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、ニードルと配管との接続部分のデッドボリュームを低減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、クロマトグラフィー用の分析流路に試料を注入するクロマトグラフ用オートサンプラに関するものである。本発明のクロマトグラフ用オートサンプラは、先端及び基端を有し、前記先端から試料を吸入するためのサンプリングニードルと、前記サンプリングニードルの基端と流体的に接続されている配管と、前記配管の前記第2端に流体的に接続され得るように設けられ、前記配管を介して前記サンプリングニードルと流体的に連通した状態で前記サンプリングニードルの先端から試料を吸入するためのポンプ部と、を備え、前記サンプリングニードルと前記配管とを流体的に接続するための接続機構は、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちのいずれか一方に固着された第1部品、前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの他方に固着された第2部品、及びネジの螺合を利用して前記第1部品と前記第2部品とを互いに固定するための固定部品を備え、前記第1部品は前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記一方の端面が表出した第1シール面を有し、前記第2部品は前記第1シール面と対向する第2シール面を有し、前記第2シール面に前記サンプリングニードル及び前記配管のうちの前記他方の端面が表出しており、前記接続機構は、前記第1部品の前記第1シール面と前記第2部品の前記第2シール面との間にパッキンを介在させ、前記サンプリングニードルの前記端面及び前記配管の前記端面を前記パッキンに接触させた状態で、前記固定部品によって前記第1部品と前記第2部品とを互いに固定するものである。
【0009】
ここで、前記第1シール面及び前記第2シール面に前記サンプリングニードル及び前記配管の「端面」が「表出する」とは、それらの端面がそれらのシール面と同一平面内にあるか、又はそれらの端面がそれらのシール面から突出していることを意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクロマトグラフ用オートサンプラでは、サンプリングニードルと配管との間を接続するための接続機構が、サンプリングニードルと配管のそれぞれに固着された第1部品、第2部品、及びそれらの部品を互いに固定するための固定部品からなり、第1部品と第2部品はそれぞれ互いに対向するシール面を有し、それらのシール面にサンプリングニードルの端面と配管の端面がそれぞれ表出しており、第1部品と第2部品の互いのシール面の間にパッキンを介在させ、サンプリングニードルの端面と配管の端面をパッキンに接触させた状態で固定部品によって第1部品と第2部品とを互いに固定するように構成されているので、サンプリングニードルと配管との接続部分において、サンプリングニードルの端面と配管の端面が確実にパッキンに接触した状態となる。したがって、ニードルと配管との接続部分のデッドボリュームが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】クロマトグラフ用オートサンプラの一実施例を概略的に示す構成図である。
【
図2】同実施例におけるサンプリングニードルと配管との接続機構を示す断面図である。
【
図3】同接続機構によってサンプリングニードルと配管が流体的に接続された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、クロマトグラフ用オートサンプラの一実施例について説明する。以下では、液体クロマトグラフに用いられるオートサンプラを例に挙げて説明するが、超臨界流体クロマトグラフに用いられるオートサンプラについても同様に本発明を適用することができる。
【0013】
オートサンプラ2は、主に、サンプリングニードル4、サンプルループ6、切替バルブ8、シリンジポンプ10(ポンプ部)及び注入ポート12を備えている。
【0014】
サンプリングニードル4は、先端と基端を有し、鉛直下方を向く先端から試料を吸入するためのものである。サンプリングニードル4の基端に接続機構16によってサンプルループ6の一端が流体的に接続されている。サンプルループ6は、サンプリングニードル4の先端から吸入された試料を保持しておくための流路であり、サンプリングニードル4とは反対側の他端が切替バルブ8の1つのポート(1)に流体的に接続されている。サンプリングニードル4は、図示されていない移動機構によって、鉛直方向と水平面内方向へ移動させられる。
【0015】
切替バルブ8は流路構成を切り替えるためのものであり、この実施例では6ポートバルブが用いられている。切替バルブ8の各ポートには、サンプルループ6のほか、シリンジポンプ10、注入ポート12、ドレイン流路14、移動相供給流路18及び分析流路22が接続されている。移動相供給流路18は送液ポンプ20によって移動相を供給するための流路である。分析流路22は、分離カラム24及び検出器26が設けられている流路である。切替バルブ8は、移動相供給流路18と分析流路22との間を直接的に接続した状態(ポート(5)-(6)間を連通させた状態)と、移動相供給流路18と分析流路22との間にサンプルループ6及びサンプリングニードル4を介在させるための状態(ポート(1)-(6)間、(2)-(3)間、(4)-(5)間を連通させた
図1の状態)のいずれかの状態に切り替えることができる。
【0016】
シリンジポンプ10は、切替バルブ8によってサンプルループ6を介してサンプリングニードル4と流体的に連通するように設けられており、サンプリングニードル4を介して試料の吸入を行なうためのものである。
【0017】
注入ポート12は切替バルブ8の1つのポートと流体的に連通しており、サンプリングニードル4の先端から吸入されてサンプルループ6に保持された試料を分析流路22に導くためのものである。
【0018】
サンプリングニードル4とサンプルループ6とを流体的に接続するための接続機構16は、サンプリングニードル4とサンプルループ6との間の接続部分におけるデッドボリュームを最小限にするように構成されたものである。
【0019】
図2を用いて、この実施例に用いられている接続機構16の構造について説明する。
【0020】
接続機構16は、ニードルホルダ28(第1部品)、スリーブ42(第2部品)、スリーブハウジング48(パッキン保持部)、パッキン52、及び固定部品54を備えている。
【0021】
ニードルホルダ28はサンプリングニードル4の基端部に固着されている。ニードルホルダ28は金属製であり、例えば溶接によりサンプリングニードル4に対して固着されている。ニードルホルダ28は、サンプリングニードル4の基端面38が向いている方向が開口した円筒状の凹部30及び34を有する。凹部30の内周面に雌ネジ32(第2ネジ)が設けられており、凹部30の底面中央に凹部30よりも内径の小さい凹部34が設けられている。凹部34の底面36は、サンプリングニードル4の端面38が表出した第1シール面となっている。以下、凹部34の底面36を「第1シール面36」を記す。
【0022】
ここで、第1シール面36にサンプリングニードル4の端面38が「表出している」とは、端面38が第1シール面36と同一平面内に配置されているか、又は端面38が第1シール面36よりも突出していることを意味する。この実施例では、サンプリングニードル4の端面38は第1シール面36よりも僅かに(例えば、0.3mm程度)突出しているが、必ずしも突出している必要はない。
【0023】
スリーブ42は、サンプルループ6のサンプリングニードル4側の一部の区間をなす金属製の配管40の端部に固着された円柱状の部材である。スリーブ42は金属製であり、例えば溶接により配管40に対して固着されている。スリーブ42は、ニードルホルダ28の凹部34の第1シール面36に対向する第2シール面44を有し、第2シール面44に配管40のサンプリングニードル4側の端面46が表出している。
【0024】
ここで、第2シール面44に端面46が「表出している」とは、端面46が第2シール面44と同一平面内に配置されているか、又は端面46が第2シール面44よりも突出していることを意味する。この実施例では、配管40の端面46は第2シール面44と同一平面内に配置されているが、端面46が第2シール面44よりも僅かに(例えば、0.3mm程度)突出していてもよい。
【0025】
スリーブハウジング48は、配管40の端部においてスリーブ42を収容するように設けられた円柱形上の金属部材である。スリーブハウジング48のサンプリングニードル4側の面には、パッキン52を嵌め込んで保持するための凹部50が設けられており、凹部50の底に設けられた窪みにスリーブ40が収容されている。すなわち、凹部50の底に第2シール面44が位置している。スリーブハウジング48は、ニードルホルダ28の凹部34と嵌合する外径を有する。すなわち、スリーブハウジング48がニードルホルダ28の凹部34に嵌め込まれたときに、サンプリングニードル4の基端面の中心と配管40の端面の中心とが一致するように構成されている。
【0026】
パッキン52は弾力性を有する樹脂材料で構成されており、スリーブハウジング48の凹部50と嵌合する外径を有する。パッキン52の材質は、クロマトグラフィーに用いられる有機溶剤等の薬剤への耐性が高く、弾力性を有するものであればよい。
【0027】
固定部品54は、スリーブハウジング48を挟んでサンプリングニードル4とは反対側において、配管40を回転の中心軸として回転自在に設けられた円柱状の金属部材である。固定部品54は、外周面に雄ネジ58(第1ネジ)が設けられているネジ部56を備え、ネジ部56の端面がスリーブハウジング48のサンプリングニードル4とは反対側の端面と接触する。ネジ部56の外周面に設けられている雄ネジ58は、ニードルホルダ28の凹部30の内周面に設けられている雌ネジ32と螺合するものである。
【0028】
上記の接続機構16によってサンプリングニードル4と配管40とを流体的に接続する際は、凹部50にパッキン52を保持させたスリーブハウジング48をニードルホルダ28の凹部30の開口から挿入し、ニードルホルダ28の第1シール面36とスリーブ44の第2シール面44とを互いに接近させるように、固定部品54を回転させて雌ネジ32に対して雄ネジ58を締め込んでいく。そうすると、
図3に示されているように、サンプリングニードル4の端面38と配管40の端面46との間にパッキン52が介在するとともに、端面38及び46がともにパッキン52に接触した状態となる。
【0029】
端面38及び46の間にパッキン52が挟み込まれた状態で固定部品54を回転させてネジ部56を締め込むと、固定部品54がサンプリングニードル4に接近する方向へ移動し、それによってスリーブ42を保持するスリーブハウジング48が端面38へ接近する方向へ押圧される。スリーブ42は配管40の端部に固着されているため、スリーブ42が端面38に接近することにより、端面38と46の間の距離が接近し、それによってパッキン52が弾性的に変形し、端面38とパッキン52との間、端面46とパッキン52との間の隙間がなくなる。
【0030】
また、この実施例では、サンプリングニードル4が、先端を鉛直下方へ向けながら基端を水平方向へ向けるように屈曲している。これにより、サンプリングニードル4の基端に対して配管40を水平方向へ接続することができる。サンプリングニードル4が直線形状である場合、サンプリングニードル4の基端が鉛直上方を向くため、配管40がサンプリングニードル4の基端からさらに上方へ伸びるようにサンプリングニードル4に対して連結されることになるが、そうすると、サンプリングニードル4の上方に余分なスペースを確保しておく必要があり、オートサンプラ2の高さ寸法が大きくなる。これに対し、サンプリングニードル4が、基端を鉛直方向に対して交差する方向を向くように屈曲していることで、サンプリングニードル4の上方に余分なスペースを確保しておく必要がなく、オートサンプラ2の高さ寸法の縮小化を図ることができる。
【0031】
以上において説明した実施例では、ニードルホルダ28に雌ねじ32を有する凹部30を設け、配管40側で回転自在に設けられた固定部品54のネジ部56を凹部30に挿入して締め込み、サンプリングニードル4に固着されたニードルホルダ28(第1部品)と配管40に固着されたスリーブ42(第2部品)とを互いに固定するように構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、サンプリングニードル4側に設けられている機構と配管40側に設けられている機構を逆にしても同様の効果を得ることができる。
【0032】
また、
図1を用いて説明したオートサンプラ2は、サンプリングニードル4の先端から試料を吸入した後、サンプリングニードル4及びサンプルループ6を移動相供給流路18と分析流路22との間に介在させて、吸入した試料の全量を分析流路22中へ注入する「全量注入方式」の構成を有するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。サンプリングニードルの先端から吸入した試料のうちの所定量を別のサンプルループに注入ポートを通じて注入し、そのサンプルループを分析流路に接続する「ループ注入方式」の構成(例えば、特許文献1の
図7参照)を有するものであっても、サンプリングニードルの基端と配管とを流体的に接続する機構として、上記実施例で説明した接続機構を採用することができる。
【0033】
本発明に係るクロマトグラフ用オートサンプラ(2)の一実施形態は、先端及び基端を有し、前記先端から試料を吸入するためのサンプリングニードル(4)と、前記サンプリングニードル(4)の基端と流体的に接続されている配管(40)と、前記配管(40)を介して前記サンプリングニードル(4)に流体的に接続され得るように設けられ、前記サンプリングニードル(4)の先端から試料を吸入するためのポンプ部(10)と、を備え、前記サンプリングニードル(4)と前記配管(40)とを流体的に接続するための接続機構(16)は、前記サンプリングニードル(4)及び前記配管(40)のうちのいずれか一方に固着された第1部品(28)、前記サンプリングニードル(4)及び前記配管(40)のうちの他方に固着された第2部品(42)、及びネジ(32、58)の螺合を利用して前記第1部品(28)と前記第2部品(42)とを互いに固定するための固定部品(54)を備え、前記第1部品(28)は前記サンプリングニードル(28)及び前記配管(40)のうちの前記一方の端面(38)が表出した第1シール面(36)を有し、前記第2部品(42)は前記第1シール面(36)と対向する第2シール面(44)を有し、前記第2シール面(44)に前記サンプリングニードル(4)及び前記配管(40)のうちの前記他方の端面(46)が表出しており、前記接続機構(16)は、前記第1部品(28)の前記第1シール面(36)と前記第2部品(42)の前記第2シール面(44)との間にパッキン(52)を介在させ、前記サンプリングニードル(4)の前記端面(38)及び前記配管(40)の前記端面(46)を前記パッキン(52)に接触させた状態で、前記固定部品(54)によって前記第1部品(28)と前記第2部品(42)とを互いに固定するものである。
【0034】
上記実施形態の態様例[1]では、前記固定部品(54)に設けられている第1ネジ(58)と螺合する第2ネジ(32)が前記第1部品(28)に設けられており、前記固定部品(54)は、前記第2部品(42)側において回転自在に設けられ、前記第1部品(28)と締結されたときに前記第2部品(42)を前記第1部品(28)側へ押圧するように構成されている。この態様例[1]によれば、前記固定部品(54)の前記第1ネジ(58)と前記第1部品(28)の前記第2ネジ(32)とを螺合させて前記固定部品(54)を回転させるだけで、前記サンプリングニードル(4)の端面(38)及び前記配管(40)の端面(46)が前記パッキン(52)に対して押し付けられるので、前記サンプリングニードル(4)と配管(40)との連結作業が容易である。
【0035】
上記態様例[1]の側面[1]として、前記第1部品(28)は前記第2部品(42)を嵌め込むための凹部(34)を有し、前記凹部(34)の底面に前記第1シール面(36)が設けられていてもよい。
【0036】
また、上記態様例[1]の側面[2]として、前記第1部品は前記サンプリングニードルの前記基端に固着され、前記第2部品は前記配管の前記第1端に固着されていてもよい。この側面[2]は上記側面[1]と自由に組み合わせることができる。
【0037】
上記側面[1]の具体例[1]として、前記接続機構(16)は、前記第2部品(42)を内部に収容しつつ前記第2シール面(46)に前記パッキン(52)を接触させた状態で前記パッキン(52)を保持するパッキン保持部(48)を備え、前記パッキン保持部(48)と前記第1部品(28)の前記凹部(34)とが互いに嵌合するようになっていてもよい。このような態様によれば、前記パッキン(52)を保持させた前記パッキン保持部(48)を前記第1部品(28)の前記凹部(34)に嵌め込んで前記固定部材(54)を前記第1部品(28)に対して締め込むだけで、前記第1シール面(36)と前記第2シール面(44)との間への前記パッキン(52)の配置と前記第1部品(28)に対する前記第2部品(42)の位置決めを容易に行なうことができる。
【0038】
また、上記側面[1]の具体例[2]として、前記固定部品の外周面に前記第1ネジが設けられており、前記第1部品の内周面に前記第2ネジが設けられていてもよい。この具体例[2]は上記具体例[1]と組み合わせることができる。
【0039】
上記実施形態の態様例[2]では、前記サンプリングニードル(4)は、前記先端が鉛直下方を向き、前記基端(38)が鉛直方向に対して交差する方向を向くように屈曲している。この態様例[2]によれば、前記サンプリングニードル(4)が直線形状で、かつ前記配管(40)を前記サンプリングニードル(4)の前記基端(38)からさらに上方へ伸びるように連結する場合に比べて、前記サンプリングニードル(4)の上方に余分なスペースを確保しておく必要がなくなり、前記オートサンプラ(2)の高さ寸法の縮小化を図ることができる。
【0040】
上記実施形態の態様例[3]では、前記配管(40)は金属製であり、前記第1部品(28)は前記サンプリングニードル(4)及び前記配管(40)のうちの前記一方に対して溶接され、前記第2部品(42)は前記サンプリングニードル(4)及び前記配管(40)のうちの前記他方に対して溶接されている。この態様例[3]によれば、前記第1部品(28)及び前記第2部品(42)がそれぞれ前記サンプリングニードル(4)及び前記配管(40)に対して強固に固着されるので、耐圧力性能が向上する。
【0041】
上記実施形態の態様例[4]では、前記パッキン(52)は樹脂製である。この態様例[4]によれば、前記サンプリングニードル(4)の前記端面(38)と前記配管40の前記端面(46)との間に挟み込まれた前記パッキン(52)が弾力性を有するので、前記サンプリングニードル(4)と前記パッキン(52)との間、及び前記配管(40)と前記パッキン(52)との間のシール性が向上する。
【0042】
上記態様例[1]~[4]は互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0043】
2 オートサンプラ
4 サンプリングニードル
6 サンプルループ
8 切替バルブ
10 シリンジポンプ(ポンプ部)
12 注入ポート
14 ドレイン流路
16 接続機構
18 移動相供給流路
20 送液ポンプ
22 分析流路
24 分離カラム
26 検出器
28 ニードルホルダ(第1部品)
30,34,50 凹部
32 雌ネジ(第2ネジ)
36 第1シール面
38 サンプリングニードル端面
40 配管
42 スリーブ(第2部品)
44 第2シール面
46 配管端面
48 スリーブハウジング(パッキン保持部)
52 パッキン
54 固定部品
56 ネジ部
58 雄ネジ(第1ネジ)