(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ及び溶出試験システム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/24 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G01N30/24 A
G01N30/24 E
(21)【出願番号】P 2021004603
(22)【出願日】2021-01-15
(62)【分割の表示】P 2019537543の分割
【原出願日】2017-08-25
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【氏名又は名称】岸本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】伴野 太一
(72)【発明者】
【氏名】入来 隆之
(72)【発明者】
【氏名】舎川 知広
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 覚
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-118985(JP,A)
【文献】特表2016-502101(JP,A)
【文献】特開2016-206162(JP,A)
【文献】米国特許第04442720(US,A)
【文献】特許第5976468(JP,B2)
【文献】特開2011-180131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 1/00 - 1/44
G01N 35/00 -37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相の流れる分析流路と、
供給される試料液を前記分析流路中に注入するオートサンプラと、
前記オートサンプラにより前記分析流路中に注入された試料液中の成分を分離するための分析カラムと、
前記分析カラムで分離された試料成分を検出するための検出器と、
少なくとも前記オートサンプラの動作を制御する制御部と、を備え、
前記オートサンプラは、供給される試料液を内部に収容するフローバイアル、前記フローバイアルから試料液を吸引して採取するためのサンプリングニードル、前記サンプリングニードルから前記分析流路へ試料液を注入するための注入ポート、及び前記サンプリングニードルにより前記フローバイアルから採取された試料液を分画して捕集するための捕集容器を有し、
前記制御部は、前記フローバイアルに試料液が供給されたときに、前記サンプリングニードルによって前記フローバイアル内の試料液を吸引し、前記サンプリングニードルから前記捕集容器へ試料液を吐出する捕集動作を前記オートサンプラに実行させるように構成された捕集動作実行部、及び前記捕集容器に捕集された試料液を前記サンプリングニードルによって吸引して前記注入ポートへ注入する捕集試料分析動作を前記オートサンプラに実行させるように構成された捕集試料分析動作実行部を有する、液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶出試験機の試験液をオンラインで分析するための液体クロマトグラフ及びその液体クロマトグラフを備えた溶出試験システム(以下、オンラインHPLC溶出試験システムと称する。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラクション機能やUVスペクトロメータによるオンライン測定機能を具備する自動溶出試験機は、今後も高い市場規模の成長が見込まれるものである。溶出試験機は一般的にUVスペクトロメータと接続されており、溶出試験機からの試料液中の特定成分の濃度を予め設定されたタイミングごとにUVスペクトロメータによって測定することで、内服固形製剤などの試料の液体への溶出速度が測定される。
【0003】
一方で、内服固形製剤の溶出試験において、複数の成分が存在するものや賦形剤の影響でUVスペクトロメータでは正確な溶出試験が困難な場合に液体クロマトグラフが用いられることもある(特許文献1参照。)。その場合、溶出試験機の試料液をオンラインで液体クロマトグラフに導入できるように、液体クロマトグラフのオートサンプラにフローバイアルが設置されることがある。このような溶出試験システムをオンライン高速液体クロマトグラフ溶出試験システムと称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の液体クロマトグラフは一分析に長時間を要していたため、溶出試験機からの試料液のサンプリング速度に対して液体クロマトグラフの分析速度が追い付かないという事情があった。そのため、従来のオンラインHPLC溶出試験システムでは、溶出試験機から供給される試料液を空の捕集容器に一時的に捕集しておき、液体クロマトグラフが分析可能な状態となったタイミングでその捕集容器から試料液を採取し、分析流路中へ注入して分析を開始するように構成されていた。このため、溶出試験の効率が悪いという問題があった。
【0006】
また、近年、液体クロマトグラフは分析の高速化が進んでおり、一分析に要する時間が従来に比べて急速に短くなっている。さらに、複数種類の内服固形製剤の連続溶出試験が可能な全自動溶出試験機が開発されている。このような背景から、分析が高速化された液体クロマトグラフに全自動溶出試験機を上手く組み合わせれば、より高効率に溶出試験を行なうことが可能であると考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、液体クロマトグラフを用いて従来よりも高効率に溶出試験を行なうことができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液体クロマトグラフは、移動相の流れる分析流路、溶出試験機から供給される試料液を前記分析流路中に注入するオートサンプラ、前記オートサンプラにより前記分析流路中に注入された試料液中の成分を分離するための分析カラム、前記分析カラムで分離された試料成分を検出するための検出器、及び少なくとも前記オートサンプラの動作を制御する制御部を有する。
【0009】
そして、前記オートサンプラが、前記溶出試験機と配管を介して接続され、前記溶出試験機から供給される試料液を内部に収容するフローバイアル、前記フローバイアルから試料液を吸引して採取するためのサンプリングニードル、及び前記サンプリングニードルから前記分析流路へ試料液を注入するための注入ポートを有する。さらに、前記制御部は、前記溶出試験機から前記フローバイアルに試料液が供給されたときに、前記サンプリングニードルによって前記フローバイアル内の試料液を吸引して直接的に前記注入ポートへ注入する即時分析動作を前記オートサンプラに実行させるように構成された即時分析動作実行部を有する。
【0010】
すなわち、本発明に係る液体クロマトグラフは、溶出試験機から供給される試料液を捕集容器に一時的に捕集しておき、液体クロマトグラフによる分析が可能なタイミングでその捕集容器から試料を吸引して分析流路へ注入するという従来の分析方式に加えて又は代えて、溶出試験機から供給される試料液をサンプリングニードルによって吸入し、捕集容器を介することなく注入ポートへ直接的に注入する即時分析方式を採用している。これは、液体クロマトグラフの分析速度の高速化によって実現されるものであり、溶出試験機のサンプリング速度よりも速い速度で液体クロマトグラフの分析がなされることを前提としている。捕集容器を介することなく溶出試験機から供給される試料液を注入ポートへ直接的に注入するので、サンプリングニードルが捕集容器へ試料液を吐出する動作や再びその捕集容器から試料液を吸引して注入ポートへ注入する動作が省略され、溶出試験を高効率に行なうことが可能となる。そして、溶出試験機からサンプリングされた試料液を即座に液体クロマトグラフで分析することができるので、溶出試験の結果を迅速に取得することが可能になる。
【0011】
本発明の液体クロマトグラフにおいて、溶出試験機から供給される試料液を捕集容器に一時的に捕集しておき、液体クロマトグラフによる分析が可能なタイミングでその捕集容器から試料を吸引して分析流路へ注入するという従来方式の溶出試験も実施可能であることが好ましい。試料液を一時的に捕集容器に捕集する従来方式の溶出試験には、捕集容器に試料液を保存しておくことができるという利点がある。この方式は、試料の溶出速度の経時変化を細かく(液体クロマトグラフの分析時間よりも短い周期で)観察したい場合や、分析時間の長い化合物、希釈が必要な化合物が試料である場合に有効な方式である。したがって、この従来方式の溶出試験も実施可能であれば、試料に応じた適切な条件で溶出試験を実施することができるようになる。
【0012】
上記形態の具体的な構成は、前記オートサンプラが、前記サンプリングニードルにより前記フローバイアルから採取された試料液を分画して捕集するための捕集容器を有し、前記制御部が、前記溶出試験機から前記フローバイアルに試料液が供給されたときに、前記サンプリングニードルによって前記フローバイアル内の試料液を吸引し、前記サンプリングニードルから前記捕集容器へ試料液を吐出する捕集動作を前記オートサンプラに実行させるように構成された捕集動作実行部、及び前記捕集容器に捕集された試料液を前記サンプリングニードルによって吸引して前記注入ポートへ注入する捕集試料分析動作を前記オートサンプラに実行させるように構成された捕集試料分析動作実行部をさらに有する。
【0013】
さらに、本発明の液体クロマトグラフは、オペレータからの入力指示に基づいて即時分析モード、又は捕集分析モードのいずれか一方のモードを選択するように構成されたモード選択部をさらに備えていることが好ましい。その場合、前記即時分析動作実行部は、前記モード選択部により前記即時分析モードが選択されたときに前記即時分析動作を前記オートサンプラに実行させるように構成され、前記捕集動作実行部及び前記捕集試料分析動作実行部は、前記モード選択部により前記捕集分析モードが選択されたときに、それぞれ前記捕集動作と前記捕集試料分析動作を前記オートサンプラに実行させるように構成されている。これにより、オペレータが即時分析モードと捕集分析モードを自由に選択することができ、溶出試験の条件設定の自由度が広がる。
【0014】
本発明に係る溶出試験システムは、溶出試験機と、前記溶出試験機と配管を介して接続された上述の液体クロマトグラフと、を備えたものである。
【0015】
また、既述のように、複数種類の内服固形製剤の溶出試験を自動で連続的に行なうことができる全自動溶出試験機が開発されているが、そのような全自動溶出試験機にはUVスペクトロメータが一般に組み合わされるものであり、液体クロマトグラフと組み合わせて全自動の連続的な溶出試験を実施することができるようにはなっていなかった。そのため、複数成分が存在するような固形製剤の固形製剤が複数存在する場合には、オペレータが液体クロマトグラフでの分析状態を監視し、液体クロマトグラフが分析可能な状態となったときに次の新たな試料の溶出試験を開始する必要があった。
【0016】
そこで、本発明に係る溶出試験システムでは、全自動溶出試験機と液体クロマトグラフとを連動させて、複数成分が存在するような固形製剤の固形製剤が複数存在する場合にも、それらの固形製剤の溶出試験を全自動で連続的に実行することができるように構成されていることが好ましい。
【0017】
すなわち、本発明に係る溶出試験システムにおいて、前記液体クロマトグラフが、当該液体クロマトグラフが分析動作中であるか否かを判定し、当該液体クロマトグラフが分析動作中か否かに関する分析状態信号を前記溶出試験機へ送信するように構成された分析状態通信部を有し、前記溶出試験機は、前記分析状態通信部により送信された前記分析状態信号を受信する通信部を有し、複数の試料についての溶出試験を連続的に実行するように設定されている場合において、前記通信部が受信した前記分析状態信号に基づき、前記液体クロマトグラフが分析動作中であるときは新たな試料についての溶出試験を開始せず、前記液体クロマトグラフの分析動作が終了したときに前記新たな試料についての溶出試験を開始するように構成されていることが好ましい。そうすれば、液体クロマトグラフが分析可能な状態となったときに溶出試験機が次の試料についての溶出試験を自動的に開始するので、オペレータが液体クロマトグラフの分析状態を監視する必要がなくなり、複数試料の溶出試験を全自動で連続的に実行することができる。
【0018】
また、上記の溶出試験システムに用いられる前記液体クロマトグラフは、移動相の流れる分析流路、前記溶出試験機から供給される試料液を前記分析流路中に注入するオートサンプラ、前記オートサンプラにより前記分析流路中に注入された試料液中の成分を分離するための分析カラム、前記分析カラムで分離された試料成分を検出するための検出器、少なくとも前記オートサンプラの動作を制御する制御部、及び当該液体クロマトグラフが分析動作中であるか否かを判定し、当該液体クロマトグラフが分析動作中か否かに関する分析状態信号を前記溶出試験機へ送信するように構成された分析状態通信部を備え、前記溶出試験機が前記新たな試料についての溶出試験を開始する際に、前記新な試料についての分析動作を行うものであることが好ましい。
【0019】
また、上記に溶出試験システムに用いられる前記溶出試験機は、前記分析状態通信部により送信された前記分析状態信号を受信する通信部を有し、複数の試料についての溶出試験を連続的に実行するように設定されている場合において、前記通信部が受信した前記分析状態信号に基づき、前記液体クロマトグラフが分析動作中であるときは新たな試料についての溶出試験を開始せず、前記液体クロマトグラフの分析動作が終了したときに前記新たな試料についての溶出試験を開始するように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る液体クロマトグラフ及び溶出試験システムでは、溶出試験機から供給される試料液を注入ポートへ直接的に注入するので、溶出試験を高効率に行なうことが可能となる。そして、溶出試験機からサンプリングされた試料液を即座に液体クロマトグラフで分析することができるので、溶出試験の結果を迅速に取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】オンラインHPLC溶出試験システムの一実施例を示す概略構成図である。
【
図2】同実施例のオートサンプラ内の構成の一例を示す概略部分断面構成図である。
【
図3】同実施例の即時分析動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】同実施例の捕集動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】同実施例の捕集試料分析動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】同実施例による全自動連続溶出試験の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る液体クロマトグラフ、溶出試験機及び溶出試験システムの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
この実施例のオンラインHPLC溶出試験システムは、溶出試験機2、液体クロマトグラフ4、及び演算処理装置6を備えている。図示は省略されているが、溶出試験機2は薬剤等の試料を液体とともに収容する少なくとも1つの試験容器を有し、その試験容器内の液を試料液として予め設定された時間ごとに入口配管16を介して液体クロマトグラフ4のオートサンプラ10へ供給するように構成されている。演算処理装置6は、溶出試験機2の制御部20と通信用インターフェース24(通信部)を介して、液体クロマトグラフ4の制御部22と通信用インターフェース26を介して、それぞれ電気的に接続されている。
【0024】
演算処理装置6は、例えば、専用のコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータによって実現されるものである。オペレータは演算処理装置6を介してこのオンラインHPLC溶出試験システム全体を一元的に管理することができる。溶出試験機2の制御部20は溶出試験機内に設けられている各要素の動作制御を行なうために設けられたマイクロコンピュータ等によって実現される。液体クロマトグラフ4の制御部22は、例えば、液体クロマトグラフ4の各モジュール8、10、12及び14の動作管理を行なうシステムコントローラによって実現されるものである。
【0025】
液体クロマトグラフ4は、送液装置8、オートサンプラ10、カラムオーブン12、検出器14及び制御部22を備えている。
【0026】
送液装置8は送液ポンプを用いて移動相を送液する装置である。送液装置8の出口は配管を介してオートサンプラ10に接続されている。
【0027】
オートサンプラ10は、溶出試験機2から供給される試料液を送液装置8からの移動相が流れる分析流路へ注入するように構成されているものである。オートサンプラ10の構成については後述する。
【0028】
カラムオーブン12内には試料を成分ごとに分離するための分析カラム(図示は省略。)が収容されている。カラムオーブン12内の分析カラムは、配管を介してオートサンプラ10の出口に接続されており、オートサンプラ10により注入された試料が送液装置8からの移動相とともに分析カラムへ導入されるように構成されている。カラムオーブン12内の分析カラムの下流端は配管を介して検出器14に接続されている。
【0029】
検出器14は、分析カラムで分離された試料成分を検出するためのものであり、例えば紫外線吸光度検出器である。検出器14で得られた検出器信号は演算処理装置6に取り込まれ、試料成分濃度の定量等に用いられる。
【0030】
ここで、オートサンプラ10の概略的な構成について
図2を用いて説明する。
【0031】
オートサンプラ10内には、サンプリングニードル38、注入ポート40、捕集容器42、及びフローバイアル44が設けられている。図では便宜上、捕集容器42とフローバイアル44が1つしか示されていないが、実際には複数の捕集容器42とフローバイアル44が設けられている。捕集容器42とフローバイアル44の個数に制限はない。フローバイアル44はフローバイアルラック46に保持されている。
【0032】
注入ポート40はサンプリングニードル38が試料液を移動相の流れる分析流路へ注入するためのものである。注入ポート40は、サンプリングニードル38の先端を挿入させてサンプリングニードル38を液密に接続するように構成されている。
【0033】
捕集容器42は、サンプリングニードル38がフローバイアル44から採取した試料液を分画して捕集するための容器である。
【0034】
フローバイアル44は、フローバイアル本体48とフローバイアル本体48の上部に装着されたキャップ50からなる。フローバイアル本体48の内部に、試料液を収容するための空間48a、その空間48aの底部に通じる流路である入口部54、及び空間48aの上部に通じる流路である出口部56が設けられている。入口部54には入口配管16が接続され、出口部56には出口配管18が接続されている。フローバイアル本体48の上方は開口しており、その開口が弾性材料からなるセプタム52によって封止され、そのセプタム52を押さえ込むようにキャップ50がフローバイアル本体48の上部に装着されている。キャップ50の上面にはセプタム52へ通じる開口が設けられている。キャップ52の開口は、上方から下降してきたサンプリングニードル38をフローバイアル本体48内の空間48aへ導くためのものである。キャップ50の開口を通って下降したサンプリングニードル38は、セプタム52を貫通し、先端をフローバイアル本体48内の空間48aに進入させて試料液を吸引する。
【0035】
サンプリングニードル38は、注入ポート40、捕集容器42及びフローバイアルラック46の上方に設けられている。サンプリングニードル38は、図示されていない移動機構によって、先端を鉛直下方に向けた状態で水平面内方向と鉛直方向へ移動させられる。
【0036】
液体クロマトグラフ4の動作モードには、即時分析モードと捕集分析モードの2種類のモードが存在する。即時分析モードでは、オートサンプラ10のサンプリングニードル38がフローバイアル44から試料を吸引して注入ポート40へ直接的に注入する即時分析動作を行なう。一方で、捕集分析モードでは、サンプリングニードル38がフローバイアル44から試料液を吸引して捕集容器42へ試料液を捕集する捕集動作と、捕集容器42から試料液を吸引して注入ポート40へ注入する捕集試料分析動作と、を行なう。
【0037】
注入ポート40を介して注入された試料液はその後、送液装置8からの移動相によってカラムオーブン12内の分析カラムを経て検出器14に導入される。なお、
図2では示されていないが、オートサンプラ10には、試料水中の特定成分濃度の定量のための標準試料が収容された標準試料容器も設けられ、サンプリングニードル38はその標準試料容器から標準試料を吸引して注入ポート40へ注入することができるようになっている。
【0038】
図1に戻って、オンラインHPLC溶出試験システムの一実施形態の説明を続ける。液体クロマトグラフ4の制御部22は、モード選択部28、即時分析動作実行部30、捕集動作実行部32、捕集試料分析動作実行部34、及び分析状態通信部36を備えている。これらの各部28、30、32、34及び36は、制御部22に設けられたマイクロコンピュータ等の演算素子が所定のプログラムを実行することによって得られる機能である。
【0039】
モード選択部28は、オペレータからの入力指示に基づいて、液体クロマトグラフ4の動作モードとして即時分析モードと捕集分析モードのいずれか一方のモードを選択するように構成されている。すなわち、オペレータは、即時分析モードと捕集分析モードのいずれか一方のモードをある試料についての溶出試験における液体クロマトグラフ4の動作モードとして指定することができる。
【0040】
上述のように、即時分析モードは、溶出試験機2からオートサンプラ10のフローバイアル44に試料液が供給されたときに、その試料液をサンプリングニードル38によって吸引し、注入ポート40へ直接的に注入する即時分析動作をオートサンプラに実行させるモードである。すなわち、即時分析モードは、溶出試験機2からオートサンプラ10のフローバイアル44に試料液が供給されたときに即時に液体クロマトグラフによる分析を開始するモードである。一方で、捕集分析モードは、溶出試験機2からオートサンプラ10のフローバイアル44に試料液が供給されたときに、その試料液をサンプリングニードル38によって吸引し、その試料液を空の捕集容器42に捕集する捕集動作と、所定のタイミングで捕集容器42から試料液を採取して注入ポート40へ注入する捕集試料分析動作をオートサンプラに実行させるモードである。
【0041】
液体クロマトグラフ4の動作モードは、一試料ごとに設定することができる。すなわち、溶出試験を行なうべき試料が複数存在する場合には、各試料についての溶出試験における液体クロマトグラフ4の動作モードを設定することができる。
【0042】
即時分析動作実行部30は、モード選択部28によって即時分析モードが選択されたときに、オートサンプラ10に上述の測定分析動作を実行させるように構成されている。
【0043】
捕集動作実行部32及び捕集試料分析動作実行部34は、モード選択部28によって捕集分析モードが選択されたときに、オートサンプラ10にそれぞれ上述の捕集動作と捕集試料分析動作を実行させるように構成されている。
【0044】
分析状態通信部36は、液体クロマトグラフ4が分析中であるか否かを判定し、その判定結果に関する分析状態信号を、溶出試験機2へ直接的に又は演算処理装置6を介して間接的に送信するように構成されている。液体クロマトグラフ4が分析中であるか否かは、予め設定された分析時間が経過したか否か、検出器14の検出信号によって得られるクロマトグラムの最後のピークが出現したか否か等によって判定することができる。
【0045】
次に、即時分析モード時の液体クロマトグラフ4の即時分析動作について、
図1、
図2とともに
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
まず、試料の溶出試験を開始する前に特定成分濃度が既知である標準試料の分析を行ない、その測定データを記録する(ステップS1)。標準試料の分析が終了した後、溶出試験機2での試料の溶出試験を開始する。溶出試験機2からは、予め設定されたタイミング(例えば、一定時間ごと)で試料液がオートサンプラ10のフローバイアル44に供給される(ステップS2)。フローバイアル44に試料液が供給される際に、溶出試験機2の制御部20から液体クロマトグラフ4の制御部22に対して試料液を供給する旨の信号が送信される。
【0047】
溶出試験機2からフローバイアル44に試料液が供給されると、即時分析動作実行部30は、サンプリングニードル38によってフローバイアル44の試料液を吸引し、その試料液を直接的に注入ポート40へ注入する動作を、オートサンプラ10に実行させる(ステップS3及びS4)。注入ポート40へ注入された試料は、送液装置8からの移動相が流れる分析流路中へ導入され、液体クロマトグラフによる分析が行われる(ステップS5)。以上のステップS1~S5の動作は、オペレータにより予め設定された回数だけ繰返し実行される(ステップS6)。
【0048】
次に、捕集分析モード時の液体クロマトグラフ4の捕集動作について、
図1、
図2とともに
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
溶出試験機2での試料の溶出試験を開始する。溶出試験機2からは、予め設定されたタイミングで試料液がオートサンプラ10のフローバイアル44に供給される(ステップS11)。
【0050】
溶出試験機2からフローバイアル44に試料液が供給されると、捕集動作実行部32は、サンプリングニードル38によってフローバイアル44の試料液を吸引し、その試料液を空の捕集容器42へ吐出して捕集する動作をオートサンプラ10に実行させる(ステップS12及びS13)。以上のステップS11~S13の動作は、オペレータにより予め設定された回数だけ繰返し実行される(ステップS14)。
【0051】
次に、捕集分析モード時の液体クロマトグラフ4の捕集試料分析動作について、
図1、
図2とともに
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0052】
この捕集試料分析動作は、少なくとも1つの捕集容器に未分析の試料液が捕集された後であれば、任意のタイミングで実行することができる。オペレータは、捕集試料分析動作を事項するタイミングを任意に設定することができる。
【0053】
即時分析モードと同様に、試料の溶出試験を開始する前に特定成分濃度が既知である標準試料の分析を行ない、その測定データを記録する(ステップS21)。その後、捕集容器42に未分析の試料液が捕集されているときに(ステップS22)、捕集試料分析動作実行部34は、液体クロマトグラフ4が分析可能な状態であるか、すなわち液体クロマトグラフ4が分析を行なっている最中でないかを判定する(ステップS23)。液体クロマトグラフ4が分析可能な状態である場合、捕集試料分析動作実行部34は、サンプリングニードル38によって捕集容器42から試料液を吸引し、その試料液を注入ポート40へ注入する動作を、オートサンプラ10に実行させる(ステップS24及びS25)。注入ポート40へ注入された試料は、送液装置8からの移動相が流れる分析流路中へ導入され、液体クロマトグラフによる分析が行われる(ステップS26)。以上のステップS22~S26の動作は、未分析の試料液が捕集されている捕集容器の数だけ繰返し実行される。
【0054】
また、この実施例のオンラインHPLC溶出試験システムでは、溶出試験機2と液体クロマトグラフ4との間で通信を行なって連動することにより、複数試料についての全自動連続溶出試験を実行することができるように構成されている。その前提として、溶出試験機2は、複数の試料を設置しておくことができる。溶出試験機2は、複数種類の試料がセッティングされた場合には、各試料が順次、試験容器に導入され、その試料についての溶出試験が自動的に実行されるように構成されている。
【0055】
上記の全自動連続溶出試験の動作の一例について、
図1とともに
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
まず、オペレータが全自動連続溶出試験の準備を行なう(ステップS31)。準備とは、溶出試験機2への試料の設置、各試料についての溶出試験の条件設定などである。準備が完了した後、演算処理装置6を介してオペレータが溶出試験開始の指示を入力すると、溶出試験機2の制御部20が、液体クロマトグラフ4の分析状態通信部36から送信される分析状態信号に基づいて液体クロマトグラフ4が分析可能な状態であるか否かを判定し(ステップS32)、液体クロマトグラフ4が分析可能な状態であれば試料の溶出試験を開始する(ステップS33)。
【0057】
溶出試験が開始された後、オペレータにより設定されたタイミングで溶出試験機2から液体クロマトグラフ4のオートサンプラ10への試料液の供給がなされ、オートサンプラ10において試料液のサンプリングが行われる(ステップS34)。液体クロマトグラフ4による分析動作は、
図3~
図5で上記した通りである。試料液のサンプリング回数が予め設定された回数に達すると、溶出試験機2は溶出試験を終了し(ステップS35)、試験容器の洗浄を行なう(ステップS36)。液体クロマトグラフ4は、分析状態信号を溶出試験機に送信しているので、分析が終了した場合には、分析中ではなく次の試料を分析可能な状態である旨の分析状態信号を溶出試験機に送信する。
【0058】
次に溶出試験を行なうべき試料が存在する場合(ステップS37)、液体クロマトグラフ4の分析状態通信部36から送信される分析状態信号に基づいて液体クロマトグラフ4が分析可能な状態であるかを確認し(ステップS32)、液体クロマトグラフ4が次の新たな試料を分析可能な状態であれば、次の新たな試料を試験容器に導入して溶出試験を開始する(ステップS33)。液体クロマトグラフ4は、次の新たな試料について上記と同様にして分析動作を実行する。このように、溶出試験機2に複数の試料が設置された場合に、すべての試料の溶出試験が完了するまで、上記ステップS32~S36の動作を自動的に実行する。
【符号の説明】
【0059】
2 試料処理装置
4 液体クロマトグラフ
6 演算処理装置
8 送液装置
10 オートサンプラ
12 カラムオーブン
14 検出器
16 入口配管
18 出口配管
20,22 制御部
24,26 通信用インターフェース
28 モード選択部
30 即時分析動作実行部
32 捕集動作実行部
34 捕集試料分析動作実行部
36 分析状態通信部
38 サンプリングニードル
40 注入ポート
42 捕集容器
44 フローバイアル
46 フローバイアルラック
48 フローバイアル本体
50 キャップ
52 セプタム
54 入口部
56 出口部