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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】シャフト材
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/32 20060101AFI20220511BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20220511BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20220511BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
B29C70/32
B29C70/16
B29K105:08
B29L23:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021075665
(22)【出願日】2021-04-28
(62)【分割の表示】P 2020544879の分割
【原出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021107160
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019084529
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】貫井 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】佐野 一教
(72)【発明者】
【氏名】平山 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】坂田 憲泰
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6885516(JP,B2)
【文献】特開2020-163838(JP,A)
【文献】特開2003-201800(JP,A)
【文献】特開2009-074009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/32
B29C 70/16
B29K 105/08
B29L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維糸と、該強化繊維糸に含浸された樹脂組成物とで構成される繊維強化樹脂中空円筒体からなるシャフト材であって、
前記強化繊維糸の繊維径Dが10.0~18.0μmの範囲にあり、前記強化繊維糸の重量Tが100~1500texの範囲にあり、前記繊維強化樹脂中空円筒体における前記強化繊維糸の体積含有率Vが40.0~80.0%の範囲にあり、
前記D、T及びVが下記式(1)を満たし、
前記強化繊維糸が、400~8000本のフィラメントが集束された強化繊維糸であり、
前記繊維強化樹脂中空円筒体の最大せん断応力が300MPa以上であり、かつ、前記繊維強化樹脂中空円筒体のせん断弾性率が11.0GPa以上であって、
前記繊維強化樹脂中空円筒体がフィラメントワインディング成形品であることを特徴とする、シャフト材。
0.090≦T1/4×V/D3≦0.155・・・(1)
【請求項2】
請求項1記載のシャフト材において、前記Dが10.5~16.0μmの範囲にあり、前記Tが150~1100texの範囲にあり、前記Vが55.0~75.0%の範囲にあり、前記D、T及びVが下記式(2)を満たすことを特徴とするシャフト材。
0.111≦T1/4×V/D3≦0.127・・・(2)
【請求項3】
請求項2記載のシャフト材において、前記D、T及びVが、下記式(3)を満たすことを特徴とするシャフト材。
0.115≦T1/4×V/D3≦0.125・・・(3)
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のシャフト材において、前記Dが、12.0~15.0μmの範囲にあり、前記Tが350~950texの範囲にあり、前記Vが57.5~70.0%の範囲にあることを特徴とするシャフト材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のシャフト材において、複数の前記強化繊維糸が、前記繊維強化樹脂中空円筒体中で螺旋状にかつ互いに交差する方向に配設されていることを特徴とするシャフト材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂中空円筒体からなるシャフト材に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量化及び、軽量化による燃費向上、排気ガス削減のために、自動車の部材を形成している金属材料を、軽量な繊維強化樹脂材料で代替することが広く検討されている。前記自動車の部材として、例えば、ドライブシャフト、プロペラシャフト、クラッシュボックス等の中空円筒体を挙げることができる。
【0003】
従来、前記中空円筒体を形成する繊維強化材料として、フィラメントワインディング成形品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-143273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のフィラメントワインディング成形品では、自動車のシャフトのような強いねじりを受ける部材に用いた場合には比較的容易に破壊が生じるという不都合がある。
【0006】
本発明は、かかる不都合を解消して、ねじりへの耐性が強く、しかもクラッシュボックスのようなエネルギー吸収部材への使用も可能な衝撃エネルギー吸収性を備える繊維強化樹脂中空円筒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明のシャフト材は、強化繊維糸と、該強化繊維糸に含浸された樹脂組成物とで構成される繊維強化樹脂中空円筒体からなるシャフト材であって、前記強化繊維糸の繊維径Dが10.0~18.0μmの範囲にあり、前記強化繊維糸の重量Tが100~1500texの範囲にあり、前記繊維強化樹脂中空円筒体における前記強化繊維糸の体積含有率Vが40.0~80.0%の範囲にあり、前記D、T及びVが下記式(1)を満たし、前記強化繊維糸が、400~8000本のフィラメントが集束された強化繊維糸であり、前記繊維強化樹脂中空円筒体の最大せん断応力が300MPa以上であり、かつ、前記繊維強化樹脂中空円筒体のせん断弾性率が11.0GPa以上であって、前記繊維強化樹脂中空円筒体がフィラメントワインディング成形品であることを特徴とする。
0.090≦T1/4×V/D3≦0.155・・・(1)
【0008】
本発明の繊維強化樹脂中空円筒体によれば、前記D、T及びVが前記式(1)を満たすことにより、最大せん断応力を300MPa以上かつ、せん断弾性率を11.0GPa以上にすることができるので、強いねじりへの耐性と、エネルギー吸収部材へ使用可能な衝撃エネルギー吸収性を得ることができる。
【0009】
本発明の繊維強化樹脂中空円筒体においては、前記Dが10.5~16.0μmの範囲にあり、前記Tが150~1100texの範囲にあり、前記Vが55.0~75.0%の範囲にあり、前記D、T及びVが下記式(2)を満たすことが好ましい。
0.111≦T1/4×V/D3≦0.127・・・(2)
【0010】
本発明の繊維強化樹脂中空円筒体によれば、前記D、T及びVが前記式(2)を満たすことにより、最大せん断応力を330MPa以上かつ、せん断弾性率を12.0GPa以上にすることができるので、より強いねじりへの耐性と、より大きな衝撃エネルギー吸収性を得ることができる。
【0011】
本発明の繊維強化樹脂中空円筒体においては、前記D、T及びVが、下記式(3)を満たすことがさらに好ましい。
0.115≦T1/4×V/D3≦0.125・・・(3)
【0012】
本発明の繊維強化樹脂中空円筒体によれば、前記D、T及びVが前記式(3)を満たすことにより、最大せん断応力を335MPa以上かつ、せん断弾性率を13.0GPa以上にすることができるので、さらに強いねじりへの耐性と、さらに大きな衝撃エネルギー吸収性を得ることができる。
【0013】
また、本発明の繊維強化樹脂中空円筒体は、前記Dが、12.0~15.0μmの範囲にあり、前記Tが350~950texの範囲にあり、前記Vが57.5~70.0%の範囲にあることが好ましい。本発明の繊維強化樹脂中空円筒体によれば、前記D、T及びVが前記範囲にあることにより、優れた衝撃エネルギー吸収性を得ることができる。
【0014】
また、本発明の繊維強化樹脂中空円筒体においては、複数の前記強化繊維糸が、前記繊維強化樹脂中空円筒体中で螺旋状にかつ互いに交差する方向に配設されていることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0016】
本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体からなるシャフト材は、強化繊維糸と、該強化繊維糸に含浸された樹脂組成物とで構成される繊維強化樹脂中空円筒体からなるシャフト材であって、前記強化繊維糸の繊維径Dが10.0~18.0μmの範囲にあり、前記強化繊維糸の重量Tが100~1500texの範囲にあり、前記繊維強化樹脂中空円筒体における前記強化繊維糸の体積含有率Vが40.0~80.0%の範囲にあり、前記D、T及びVが下記式(1)を満たし、前記強化繊維糸が、400~8000本のフィラメントが集束された強化繊維糸であり、前記繊維強化樹脂中空円筒体の最大せん断応力が300MPa以上であり、かつ、前記繊維強化樹脂中空円筒体のせん断弾性率が11.0GPa以上であって、前記繊維強化樹脂中空円筒体がフィラメントワインディング成形品であることを特徴とする。
0.090≦T1/4×V/D3≦0.155・・・(1)
【0017】
本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体は、強いねじりへの耐性と、エネルギー吸収部材へ使用可能な衝撃エネルギー吸収性を得るという観点から、前記Dが10.5~16.0μmの範囲にあり、前記Tが150~1100texの範囲にあり、前記Vが55.0~75.0%の範囲にあり、前記D、T及びVが下記式(2)を満たすことが好ましく、前記D、T及びVが、下記式(3)を満たすことがさらに好ましく、下記式(4)を満たすことが特に好ましい。前記D、T及びVが前記式(4)を満たすことにより、最大せん断応力を350MPa以上かつ、せん断弾性率を13.0GPa以上にすることができるので、特に強いねじりへの耐性と、特に大きな衝撃エネルギー吸収性を得ることができる。
0.111≦T1/4×V/D3≦0.127・・・(2)
0.115≦T1/4×V/D3≦0.125・・・(3)
0.118≦T1/4×V/D3≦0.124・・・(4)
【0018】
また、本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体は、優れた衝撃エネルギー吸収性を得るという観点から、前記Dが、12.0~15.0μmの範囲にあり、前記Tが350~950texの範囲にあり、前記Vが57.5~70.0%の範囲にあることが好ましく、前記Dが、13.5~14.5μmの範囲にあり、前記Tが580~950texの範囲にあることがさらに好ましく、前記Tが、700~900texの範囲にあることが特に好ましい。
【0019】
なお、本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体において、前記強化繊維糸が、複数のフィラメントが集束されて構成される場合には、前記強化繊維糸の繊維径Dは、通常円形の断面形状を備える、前記フィラメントの直径を意味する。前記フィラメントの直径は、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。なお、前記フィラメントが、円形以外の断面形状(例えば、楕円形、長円形、長方形、繭形)を備える場合には、繊維径Dは、当該断面形状の面積と同じ面積を有する円の直径を意味する。ここで、前記フィラメントが円形以外の扁平な断面形状をとる場合、その短径(短辺)に対する、長径(長辺)の比(長径/短径)は、例えば、1.2~10.0の範囲にあり、好ましくは、2.0~6.0の範囲にある。また、前記強化繊維糸が、複数種類の強化繊維糸からなる場合には、各強化繊維糸の繊維径の数平均値を、繊維径Dとする。
【0020】
本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体において、前記強化繊維糸の重量Tは、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。なお、前記強化繊維糸が、複数種類の強化繊維糸からなる場合には、各強化繊維糸の重量の数平均値を、重量Tとする。
【0021】
なお、強化繊維糸が無機繊維である場合、繊維強化樹脂中空円筒体を、例えば、300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱することで、繊維強化樹脂中空円筒体から、樹脂組成物を含む有機物が付着していない強化繊維糸を取り出すことができ、この強化繊維糸を用いて、前記繊維径D及び重量Tを測定することができる。
【0022】
本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体において、前記体積含有率Vは、JIS K 7053:1999に準拠して測定することができる。
【0023】
また、本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体において、前記強化繊維糸としては、例えば、ガラス繊維糸、炭素繊維糸、アラミド繊維糸、アルミナ繊維糸を挙げることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。汎用性、不燃性、絶縁性及び衝撃エネルギー吸収性に優れることからは、前記強化繊維糸としては、ガラス繊維糸を好ましく用いることができる。ここで、ガラス繊維糸は、円形断面を備えるガラスフィラメントが集束されて構成されるガラス繊維糸であっても、円形以外の断面(例えば、楕円形、長円形、長方形、繭形等の扁平断面、好ましくは、長円形断面)を備えるガラスフィラメントが集束されて構成されるガラス繊維糸であってもよい。汎用性の観点からは、ガラス繊維糸は、円形断面を備えるガラスフィラメントが集束されて構成されるガラス繊維糸であることが好ましい。また、複数種の強化繊維糸を組み合わせて用いる場合には、機械的強度、ねじり耐性及び衝撃エネルギー吸収性のバランスに優れることから、ガラス繊維糸と炭素繊維糸とを組み合わせて用いることが好ましい。ガラス繊維糸と炭素繊維糸とを組み合わせて用いる場合、本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体は、例えば、ガラス繊維糸で構成される層を内層として含み、炭素繊維糸で構成される層を外層として含むことができる。ここで、経済性と機械的強度との両立の観点からは、炭素繊維糸で構成される層の数を、全体の層数に対して、10~50%にすることが好ましい。
【0024】
また、本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体において、複数の前記強化繊維糸が、前記繊維強化樹脂中空円筒体中で螺旋状にかつ互いに交差する方向に配設されていることが好ましい。ここで、互いに交差する前記強化繊維糸の交差角度は、例えば、60~160°であり、好ましくは、80~130°である。
【0025】
前記ガラス繊維糸は、最も汎用的であるEガラス組成(ガラス繊維の全量に対し、酸化物換算で、52.0~56.0質量%の範囲のSiO2と、12.0~16.0質量%の範囲のAl23と、合計で20.0~25.0質量%の範囲のMgO及びCaOと、5.0~10.0質量%の範囲のB23とを含む組成)を備えるガラス繊維糸(Eガラス繊維糸)である。
【0026】
前記ガラス繊維糸において、前述した各成分の含有量の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
【0027】
測定方法としては、初めに、繊維強化樹脂中空円筒体、又は、繊維強化樹脂中空円筒体から分離させたガラス繊維糸を、例えば、300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱する等して、有機物を除去する。次いで、ガラス繊維糸を白金ルツボに入れ、電気炉中で1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化する。軽元素であるLiについてはガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素はガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有量(質量%)を求めることができる。
【0028】
前記ガラス繊維糸は、以下のように製造される。初めに、ガラス原料となる鉱石に含まれる成分と各成分の含有率、及び、溶融過程における各成分の揮発量に基づき、前述の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、例えば、1450~1550℃の範囲の温度で溶融する。次に、溶融されたガラスバッチ(溶融ガラス)を所定の温度に制御された、ブッシングの400~8000個のノズルチップから引き出して、急冷することで、ガラスフィラメントを形成する。次に、形成されたガラスフィラメントに、塗布装置であるアプリケーターを用いて集束剤又はバインダーを塗布し、集束シューを用いて、ガラスフィラメント400~8000本を集束させながら、巻取り機を用いて、チューブに高速で巻取ることで、ガラス繊維糸(ガラスダイレクトロービングともいう)が得られる。また、溶融ガラスをブッシングの200~4000個のノズルチップから引き出し、急冷して、ガラスフィラメントを形成し、ガラスフィラメントに集束剤又はバインダーを塗布し、ガラスフィラメント200~4000本を集束させて、チューブに巻き取ることでガラス繊維ストランドを得て、チューブから解舒しながら、このガラス繊維ストランド2~40本を引き揃えることでも、ガラス繊維糸(ガラス合糸ロービングともいう)が得られる。ここで、ガラス繊維糸としては、開繊性及び樹脂含浸性に優れるため、ガラスダイレクトロービングであることが好ましい。
【0029】
本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体において、前記樹脂組成物の含浸性を高めるために、前記強化繊維糸の表面は、有機物によって表面処理されていてもよい。
【0030】
前記強化繊維糸の表面処理に用いる有機物としては、シランカップリング剤、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルと他の単量体との共重合樹脂、ウレタン樹脂を挙げることができる。
【0031】
前記強化繊維糸の表面処理は、例えば、強化繊維糸がガラス繊維糸である場合には、前述のガラス繊維糸の製造時に、集束剤又はバインダーとして、有機物を含む処理液をガラス繊維糸に塗布することにより行うことができる。
【0032】
本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体において、前記樹脂組成物は、樹脂のみであってもよく、樹脂と添加剤とを含んでもよい。また、前記樹脂は、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもよい。
【0033】
ここで、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリイミド(PI)、ユリア(UF)樹脂、シリコン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【0034】
具体的に、不飽和ポリエステルとしては、脂肪族不飽和ジカルボン酸と脂肪族ジオールをエステル化反応させることで得られる樹脂が挙げられる。
【0035】
ビニルエステル樹脂としては、ビス系ビニルエステル樹脂、ノボラック系ビニルエステル樹脂が挙げられる。
【0036】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシリデンビスフェノール型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタンノボラック型エポキシ樹脂,縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂やフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0037】
メラミン樹脂としては、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体が挙げられる。
【0038】
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、又は、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられ、この中の一種、もしくは、二種以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0039】
ユリア樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂が挙げられる。
【0040】
また、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0041】
具体的に、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。
【0042】
ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0043】
ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等が挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等が挙げられる。
【0045】
ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、又は、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、又は、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等が挙げられる。
【0046】
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ナイロン4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の複数成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0047】
ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等が挙げられる。
【0048】
ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、エチレングリコールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0049】
ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,4-ブタンジオールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0050】
ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,3-プロパンジオールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0051】
ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応するホスゲン法により得られる重合体が挙げられる。
【0052】
ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等が挙げられる。
【0053】
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ等が挙げられる。
【0054】
ポリアリールケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等が挙げられる。
【0055】
液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等が挙げられる。
【0056】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等が挙げられる。
【0057】
アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィン又はスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等が挙げられる。
【0058】
オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等が挙げられる。
【0059】
環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等が挙げられる。
【0060】
ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、又はその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等が挙げられる。
【0061】
セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。
【0062】
前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
前記樹脂としては、成形作業性(とりわけ、フィラメントワインディング成形時の作業性)及び樹脂含浸性の観点から、熱硬化性樹脂であることが好ましい。その中でも、含浸性、硬化速度、脱型性及び成形品の機械的特性に優れることから、エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0064】
前記樹脂組成物が含みうる添加剤としては、強化繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等)、充填剤(例えば、ガラスパウダー、タルク、マイカ等)、難燃剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、核剤、抗菌剤、顔料、硬化剤、硬化促進剤等を挙げることができる。前記樹脂組成物中に、これらの添加剤の含有量は、樹脂組成物の全量に対して、0~70質量%の範囲であり、好ましくは、10~65質量%の範囲であり、より好ましくは、30~60質量%の範囲である。
【0065】
本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0066】
まず、所定の外径を備えるステンレス鋼製マンドレルをフィラメントワインディング装置に設置し、強化繊維糸の供給と張力制御とを行う給糸装置に、強化繊維糸として例えばガラス繊維糸を2本設置する一方、フィラメントワインディング装置のレジンバスに樹脂組成物として例えばエポキシ樹脂を投入する。前記エポキシ樹脂は、硬化剤及び硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0067】
次に、前記フィラメントワインディング装置を用い、前記強化繊維糸に前記レジンバスで前記樹脂組成物を含浸させ、所定の張力をかけながら、該強化繊維糸を前記マンドレルに所定の厚さとなるように巻き付ける。前記フィラメントワインディング装置を用いて、前記強化繊維糸を前記マンドレルに巻き付けるときには、該強化繊維糸の巻き角度が該マンドレルの回転軸(中心軸)に対して所定の角度となるように巻き付ける。
【0068】
次に、前記マンドレルに巻き付けられた強化繊維糸を、所定の温度で所定時間、例えば85℃で4時間加熱し、該強化繊維糸に含浸された前記樹脂組成物を硬化させる。次に、前記樹脂組成物を硬化したガラス繊維糸の硬化物を、脱芯機を用いて前記マンドレルから取り外すことにより、繊維強化樹脂中空円筒体を得ることができる。
【0069】
前記フィラメントワインディング装置及び前記脱芯機としては、公知の装置を用いることができる。
【0070】
前述のようにして製造されることにより、本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体は、フィラメントワインディング成形品として得ることができ、シャフト材、エネルギー吸収部材等とすることができる。本実施形態の繊維強化樹脂中空円筒体は、エネルギー吸収部材とするときには上端部又は下端部に、端面に向かって次第に縮径するテーパ―部を備えるようにすることもできる。
【0071】
前記シャフト材としては、プロペラシャフト、ドライブシャフト等の自動車部品、及び、テニスラケット、釣竿、ゴルフシャフト等のスポーツ用品を挙げることができる。
【0072】
前記エネルギー吸収部材としては、クラッシュボックス、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー等を挙げることができる。
【0073】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例
【0074】
〔実施例1〕
本実施例では、強化繊維糸としてガラス繊維糸を用い、樹脂組成物としてエポキシ樹脂組成物を用いて繊維強化樹脂中空円筒体を製造した。
【0075】
前記ガラス繊維糸は、Eガラス組成を備え、平均繊維径13.0μmのガラスフィラメントが800本収束されて形成されており、繊維径Dが13.0μm、重量Tが280texである。また、前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:エポキシ樹脂XNR6805)と、硬化剤(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:XNH6805)と、硬化促進剤(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:XNA6805)とを100:100:2の質量比で混合したものである。
【0076】
次に、外径20mmのステンレス鋼製マンドレルをフィラメントワインディング装置に設置した後、強化繊維糸の供給と張力制御を行う給糸装置に前記ガラス繊維糸を2本設置し、フィラメントワインディング装置のレジンバスに前記エポキシ樹脂組成物を投入した。前記マンドレルは、微鏡面仕上げと離型処理とが施されている。
【0077】
次に、前記フィラメントワインディング装置を用い、前記ガラス繊維糸に前記レジンバスで前記エポキシ樹脂組成物を含浸させ、0.9kgの張力をかけながら、該ガラス繊維糸を前記マンドレルに2mmの厚さとなるように巻き付けた。前記フィラメントワインディング装置によるガラス繊維糸を前記マンドレルに巻き付ける操作は、巻角度がマンドレルの回転軸(中心軸)方向を0°としたときに該回転軸方向に対して±45°(すなわち、交差角度90°)となるようにして行った。
【0078】
次に、前記マンドレルに巻き付けられた前記ガラス繊維糸を、85℃の温度で4時間加熱し、該ガラス繊維糸に含浸された前記エポキシ樹脂組成物を硬化させた。
【0079】
次に、前記エポキシ樹脂組成物が含浸したガラス繊維糸の硬化物を、脱芯機を用いてマンドレルから取り外し、外径24mm、内径20mmの繊維強化中空円筒体を得た。
【0080】
本実施例で得られた繊維強化中空円筒体は、ガラス繊維糸の体積含有率Vが66.5%であり、T1/4×V/D3=0.124であった。
【0081】
次に、本実施例で得られた繊維強化中空円筒体を、長さが700mmとなるように切断し、ねじり試験片を作成した。得られたねじり試験片の中心線に対して+45°の方向及び-45°の方向にひずみゲージを設置し、トルク試験機(三精工業株式会社製、商品名:200kg-m)を用いて、試験速度0.5rpmの条件でねじり試験片にトルク負荷を加え、動ひずみ測定装置(NEC三栄株式会社製、商品名:オムニエースII RA1300)を用いて、せん断ひずみを測定した。測定されたトルクとせん断ひずみより、最大せん断応力、及び、せん断弾性率を算出した。結果を表1に示す。なお、表1中の値は、3回測定を行った際の平均値である。
【0082】
〔実施例2〕
本実施例では、強化繊維糸として、平均繊維径14.0μmのガラスフィラメントが2000本集束されて構成されたガラス繊維糸(繊維径D=14.0μm、重量T=800tex)を用い、給糸装置に該ガラス繊維糸1本を設置し、巻きつけ時の張力を1.5kgとした以外は、実施例1と全く同一にして、外径24mm、内径20mm、ガラス繊維糸の体積含有率Vが59.6%の繊維強化中空円筒体を得た。本実施例で得られた繊維強化中空円筒体において、T1/4×V/D3=0.116であった。
【0083】
次に、本実施例で得られた繊維強化中空円筒体を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、最大せん断応力及びせん断弾性率を算出した。結果を表1に示す。
【0084】
〔実施例3〕
本実施例では、巻きつけ時の張力を0.3kgとした以外は、実施例1と全く同一にして、外径24mm、内径20mm、ガラス繊維糸の体積含有率Vが60.8%の繊維強化中空円筒体を得た。本実施例で得られた繊維強化中空円筒体において、T1/4×V/D3の値は、0.113であった。
【0085】
次に、本実施例で得られた繊維強化中空円筒体を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、最大せん断応力及びせん断弾性率を算出した。結果を表1に示す。
【0086】
〔実施例4〕
本実施例では、巻きつけ時の張力を1.5kgとした以外は、実施例1と全く同一にして、外径24mm、内径20mm、ガラス繊維糸の体積含有率Vが69.8%の繊維強化中空円筒体を得た。本実施例で得られた繊維強化中空円筒体において、T1/4×V/D3=0.130であった。
【0087】
次に、本実施例で得られた繊維強化中空円筒体を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、最大せん断応力及びせん断弾性率を算出した。結果を表1に示す。
【0088】
〔実施例5〕
本実施例では、巻きつけ時の張力を0kgとした以外は、実施例1と全く同一にして、外径24mm、内径20mm、ガラス繊維糸の体積含有率Vが58.5%の繊維強化中空円筒体を得た。本実施例で得られた繊維強化中空円筒体において、T1/4×V/D3=0.109であった。
【0089】
次に、本実施例で得られた繊維強化中空円筒体を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、最大せん断応力及びせん断弾性率を算出した。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例6]
本実施例では、強化繊維糸1としてガラス繊維糸を用い、強化繊維糸2として炭素繊維糸を用い、樹脂組成物としてエポキシ樹脂組成物を用いて繊維強化樹脂中空円筒体を製造した。
【0091】
前記ガラス繊維糸は、平均繊維径14.0μmのガラスフィラメントが2000本集束されて構成されたガラス繊維糸(繊維径D1=14.0μm、重量T2=800tex)である。前記炭素繊維糸は、繊維径D2=7.0μm、重量T2=1650texの炭素繊維糸である。前記エポキシ樹脂組成物は、実施例1で用いたエポキシ樹脂組成物と同一のものである。
【0092】
まず、外径20mmのステンレス鋼製マンドレルをフィラメントワインディング装置に設置した後、強化繊維糸の供給と張力制御を行う給糸装置に前記ガラス繊維糸を1本設置し、フィラメントワインディング装置のレジンバスに前記エポキシ樹脂組成物を投入した。前記マンドレルは、微鏡面仕上げと離型処理とが施されている。
【0093】
次に、前記フィラメントワインディング装置を用い、前記ガラス繊維糸に前記レジンバスで前記エポキシ樹脂組成物を含浸させ、1.5kgの張力をかけながら、該ガラス繊維糸を前記マンドレルに0.73mmの厚さとなるように巻き付けた。前記フィラメントワインディング装置によるガラス繊維糸を前記マンドレルに巻き付ける操作は、巻角度がマンドレルの回転軸(中心軸)方向を0°としたときに該回転軸方向に対して±45°(すなわち、交差角度90°)となるようにして行った。
【0094】
次に、前記フィラメントワインディング装置を用い、前記ガラス繊維糸に前記レジンバスで前記エポキシ樹脂組成物を含浸させ、1.5kgの張力をかけながら、該ガラス繊維糸を、第1層のガラス繊維糸が巻付けられたマンドレルに、第1層のガラス繊維糸とは巻位置を変更して、0.73mmの厚さとなるように巻き付けた。前記フィラメントワインディング装置によるガラス繊維糸を前記マンドレルに巻き付ける操作は、巻角度がマンドレルの回転軸(中心軸)方向を0°としたときに該回転軸方向に対して±45°(すなわち、交差角度90°)となるようにして行った。
【0095】
次に、前記フィラメントワインディング装置を用い、前記ガラス繊維糸に前記レジンバスで前記エポキシ樹脂組成物を含浸させ、1.5kgの張力をかけながら、該ガラス繊維糸を、第1層及び第2層のガラス繊維糸が巻付けられたマンドレルに、第1層及び第2層のガラス繊維糸とは巻位置を変更して、0.73mmの厚さとなるように巻き付けた。前記フィラメントワインディング装置によるガラス繊維糸を前記マンドレルに巻き付ける操作は、巻角度がマンドレルの回転軸(中心軸)方向を0°としたときに該回転軸方向に対して±45°(すなわち、交差角度90°)となるようにして行った。
【0096】
次に、前記フィラメントワインディング装置を用い、前記炭素繊維糸に前記レジンバスで前記エポキシ樹脂組成物を含浸させ、1.5kgの張力をかけながら、該炭素繊維糸を、合計3層のガラス繊維糸が巻付けられたマンドレルに、1.2mmの厚さとなるように巻き付けた。前記フィラメントワインディング装置によるガラス繊維糸を前記マンドレルに巻き付ける操作は、巻角度がマンドレルの回転軸(中心軸)方向を0°としたときに該回転軸方向に対して±45°(すなわち、交差角度90°)となるようにして行った。
【0097】
次に、前記フィラメントワインディング装置を用い、前記炭素繊維糸に前記レジンバスで前記エポキシ樹脂組成物を含浸させ、1.5kgの張力をかけながら、該炭素繊維糸を、合計3層のガラス繊維糸及び第1層の炭素繊維糸が巻付けられたマンドレルに、第1層の炭素繊維層とは巻位置を変更して、1.2mmの厚さとなるように巻き付けた。前記フィラメントワインディング装置によるガラス繊維糸を前記マンドレルに巻き付ける操作は、巻角度がマンドレルの回転軸(中心軸)方向を0°としたときに該回転軸方向に対して±45°(すなわち、交差角度90°)となるようにして行った。
【0098】
次に、前記マンドレルに巻き付けられた前記ガラス繊維糸及び炭素繊維糸を、85℃の温度で4時間加熱し、該ガラス繊維糸及び炭素繊維糸に含浸された前記エポキシ樹脂組成物を硬化させた。
【0099】
次に、前記エポキシ樹脂組成物が含浸したガラス繊維糸及び炭素繊維糸の硬化物を、脱芯機を用いてマンドレルから取り外し、外径29.2mm、内径20mmの繊維強化中空円筒体を得た。
【0100】
本実施例で得られた繊維強化中空円筒体をガラス繊維強化層(合計3層)及び炭素繊維強化層(合計2層)に分けた場合、ガラス繊維強化層におけるガラス繊維糸の体積含有率V1が59.6%であり、炭素繊維強化層における炭素繊維糸の体積含有率V2が51.0%であった。
【0101】
本実施例で得られた繊維強化中空円筒体において、D、T、Vをそれぞれ以下のように算出した。D=(D1×34+D2×24)/(34+24)。T=(T1×34+T2×24)/(34+24)。V=(V1×34+V2×24)/(34+24)。本実施例で得られた繊維強化中空円筒体において、T1/4×V/D3=0.154であった。
【0102】
次に、本実施例で得られた繊維強化中空円筒体を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、最大せん断応力及びせん断弾性率を算出した。結果を表1に示す。
【0103】
〔比較例1〕
本比較例では、強化繊維糸として、平均繊維径17.0μmのガラスフィラメントが2000本集束されて構成されたガラス繊維糸(繊維径D=17.0μm、重量T=1150tex)を用い、給糸装置に該ガラス繊維糸1本を設置し、巻きつけ時の張力を1.5kgとした以外は、実施例1と全く同一にして、外径24mm、内径20mm、ガラス繊維糸の体積含有率Vが58.6%の繊維強化中空円筒体を得た。本比較例で得られた繊維強化中空円筒体において、T1/4×V/D3=0.069であった。
【0104】
次に、本比較例で得られた繊維強化中空円筒体を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、最大せん断応力及びせん断弾性率を算出した。結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
表1から、ガラス繊維糸の繊維径Dが10.0~18.0μmの範囲にあり、重量Tが100~1500texの範囲にあり、繊維強化樹脂中空円筒体におけるガラス繊維糸の体積含有率Vが40.0~80.0%の範囲にあり、0.090≦T1/4×V/D3≦0.155である実施例1~5の繊維強化樹脂中空円筒体によれば、最大せん断応力が300MPa以上かつ、せん断弾性率が11.0GPa以上であり、強いねじりへの耐性と、エネルギー吸収部材へ使用可能な衝撃エネルギー吸収性を備えていることが明らかである。
【0107】
〔実施例7〕
本実施例では、強化繊維糸としてガラス繊維糸を用い、樹脂組成物としてエポキシ樹脂組成物を用いて繊維強化樹脂中空円筒体を製造した。
【0108】
前記ガラス繊維糸は、Eガラス組成を備え、平均繊維径14.0μmのガラスフィラメントが2000本収束されて形成されており、繊維径Dが14.0μm、重量Tが800texである。また、前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:エポキシ樹脂XNR6805)と、硬化剤(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:XNH6805)と、硬化促進剤(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:XNA6805)とを100:100:2の質量比で混合したものである。
【0109】
次に、外径100mmのステンレス鋼製マンドレルをフィラメントワインディング装置に設置した後、強化繊維糸の供給と張力制御を行う給糸装置に前記ガラス繊維糸を1本設置し、フィラメントワインディング装置のレジンバスに前記エポキシ樹脂組成物を投入した。前記マンドレルは、微鏡面仕上げと離型処理とが施されている。
【0110】
次に、前記フィラメントワインディング装置を用い、前記ガラス繊維糸に前記レジンバスで前記エポキシ樹脂組成物を含浸させ、1.5kgの張力をかけながら、該ガラス繊維糸を前記マンドレルに2.2mmの厚さとなるように巻き付けた。前記フィラメントワインディング装置によるガラス繊維糸を前記マンドレルに巻き付ける操作は、巻角度がマンドレルの回転軸(中心軸)方向を0°としたときに該回転軸方向に対して±60°(すなわち交差角度120°)となるようにして行った。
【0111】
次に、前記マンドレルに巻き付けられた前記ガラス繊維糸を、85℃の温度で4時間加熱し、該ガラス繊維糸に含浸された前記エポキシ樹脂組成物を硬化させた。
【0112】
次に、前記エポキシ樹脂組成物が含浸したガラス繊維糸の硬化物を、脱芯機を用いてマンドレルから取り外し、外径105mm、内径100mmの繊維強化中空円筒体を得た。
【0113】
本実施例で得られた繊維強化中空円筒体は、ガラス繊維糸の体積含有率Vが63.0%であり、T1/4×V/D3=0.122であった。
【0114】
次に、本実施例で得られた繊維強化中空円筒体を、長さが135mmとなるように切断し、上端部に上端面に向かって次第に縮径する45°の角度のテーパ―部を設け、エネルギー吸収部材を作成した。
【0115】
次に、本実施例で得られたエネルギー吸収部材を上側治具と下側治具とで挟み、大型落錘衝撃試験を行った。前記大型落錘衝撃試験は、上側治具の上に質量200kgの落錘子を、高さ2.46mから衝撃速度25km/hで自由落下させ、エネルギー吸収部材の軸方向に衝撃圧縮荷重を加えることにより行った。衝撃荷重は下側治具の下に取付けたロードセルから計測し、変位は高速度カメラで撮影した動画を画像解析することで計測した。計測された衝撃荷重と、変位より荷重変位曲線を描き、変位量が70mmに達するまでの総エネルギー吸収量を算出し、算出された総エネルギー吸収量を、大型落錘衝撃試験で破壊された部分の質量で割ることで、比エネルギー吸収量を算出した。結果を表2に示す。表2中の値は、3回測定を行った際の平均値である。
【0116】
〔実施例8〕
本実施例では、上端部に前記テーパ―部を全く設けない以外は、実施例7と全く同一にしてエネルギー吸収部材を作成した。
【0117】
次に、本実施例で得られたエネルギー吸収部材を用いた以外は、実施例7と全く同一にして、比エネルギー吸収量を算出した。結果を表2に示す。
【0118】
〔実施例9〕
本実施例では、強化繊維糸として、平均繊維径13.0μmのガラスフィラメントが800本集束されて構成されたガラス繊維糸(繊維径D=13.0μm、重量T=280tex)を用い、給糸装置に該ガラス繊維糸2本を設置した以外は、実施例7と全く同一にして、外径105mm、内径100mmの繊維強化中空円筒体を得た。実施例で得られた繊維強化中空円筒体は、ガラス繊維糸の体積含有率Vが66.7%であり、T1/4×V/D3=0.124であった。
【0119】
次に、本実施例で得られた繊維強化中空円筒体を、長さが135mmとなるように切断し、上端部に上端面に向かって次第に縮径する45°の角度のテーパ―部を設け、エネルギー吸収部材を作成した。
【0120】
次に、本実施例で得られたエネルギー吸収部材を用いた以外は、実施例7と全く同一にして、比エネルギー吸収量を算出した。結果を表2に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
表2から、ガラス繊維糸の繊維径Dが12.0~15.0μmの範囲にあり、重量Tが350~950texの範囲にあり、繊維強化樹脂中空円筒体におけるガラス繊維糸の体積含有率Vが57.5~70.0%の範囲にある繊維強化樹脂中空円筒体からなる実施例7~9のエネルギー吸収部材によれば、17.8kj/kg以上の比エネルギー吸収量を備えており、優れた衝撃エネルギー吸収性を得ることができることが明らかである。