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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】積層体の脱墨方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20220511BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220511BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220511BHJP
   D21C 5/02 20060101ALI20220511BHJP
   D21H 19/20 20060101ALI20220511BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20220511BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/30 A
B32B27/40
D21C5/02
D21H19/20 A
C09D11/101
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021128343
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2021122093
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久下 裕之
(72)【発明者】
【氏名】杉 裕紀
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-124298(JP,A)
【文献】特開2005-009121(JP,A)
【文献】特開平10-282890(JP,A)
【文献】特開2012-149235(JP,A)
【文献】特開2011-203672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D21C 1/00-11/14
D21H 11/00-27/42
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体の脱墨方法であって、
積層体が、紙基材に、水性樹脂を含む水性アンカー剤を塗布し、オーブンにて乾燥させ、紙基材上にアンカー層を有する積層体を得る工程1と、
前記紙基材上にアンカー層を有する積層体のアンカー層上に、活性エネルギー線硬化型インキで印刷し、活性エネルギー線で硬化させ、アンカー層上にインキ層を有する易脱墨性積層体を得る工程2と、
を含む製造方法にて製造された積層体であり、
前記水性樹脂が、水性アクリル樹脂及び水性ウレタン樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含み、
前記水性樹脂の酸価が、25~300mgKOH/gであり、
積層体をアルカリ水溶液中で撹拌し、アンカー層をアルカリ水溶液で溶解させ、インキ層が紙基材から脱墨される、積層体の脱墨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易脱墨性積層体、及び、該積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型インキは、酸化重合型や浸透乾燥型、熱風乾燥型の油性インキと比較して、瞬時に硬化するという利便性と、強い硬化皮膜を形成することが可能であるという特性、また石油系の揮発性化合物を含まないノンVOCという特性から、飲料や食品包装用途、医薬品包装用途、化粧品包装用途、また一般的な紙器に至るまで、パッケージ印刷産業の分野で広く使用されている。
【0003】
特に食品包装分野においては活性エネルギー線硬化型インキの理想形として、光重合開始剤を含まず、人体、環境への安全・安心を考慮した電子線(以下、「EB」ともいう)硬化型インキが挙げられるが、その初期設備投資の大きさから一般的であるとは言い難く、紫外線(以下、「UV」ともいう)硬化型インキが市場では一般的である。
【0004】
近年では、省電力でありオゾンと熱の発生を抑制するUV-LED光源を使用したLED硬化型システムや、熱の発生する赤外領域とオゾンの発生する紫外領域を排除したメタルハライドランプ1灯を使用した省エネUVシステム、また従来のUVランプの灯数を通常の3~4灯から1灯に削滅した省エネUVシステムなどへ徐々に移行しつつあることが知られている。
【0005】
これらの新しいシステムに対応するために設計された省エネUV硬化型インキは、商業印刷において、一般の油性インキからの切り替えが近年増加する傾向であり、印刷適性、印刷品質など、一般油性インキと同等の性能が求められる。また、これら省エネUV硬化型インキは「リサイクル対応型U
V硬化型インキ」として、リサイクル適性Aランクの認証を受けているものが増えている。
しかし、市場において全てのUVシステムが省エネUVシステムに置き換わるわけではなく、依然として従来から実績のある通常のUVシステム(リサイクル適性Bランクであるものが多い)を使用する場合も多い。UV硬化型インキは一般的に、リサイクル対応型の省エネUV硬化型インキや、一部のリサイクル対応型UV硬化型インキを除いては、一般油性インキよりもリサイクルが難しいとされている。印刷物を回収する際にリサイクルを簡便化するために、リサイクル対応型でないUV硬化型等の活性エネルギー線硬化型インキの印刷物を分別することは非常に困難で、かつ実現不可能に近いと考えられている。
【0006】
製紙会社では、使用済みの印刷用紙を脱墨工程でアルカリ水溶液下にて細かく粉砕した後、脱墨剤などを用いてフローテーションと呼ばれる泡に浮かせて除去する工程にて、インキ成分による汚れを取り除く作業を行っている。この際に、ダートと呼ばれる分解しきれなかった黒い成分が多く残っていると、再度紙を抄いた際に白紙化が困難になり、リサイクル適性が悪化してしまう傾向にある。一般的にこのダートの量が一般油性インキよりUV硬化型インキの方が多いとされており、脱墨工程に時間、温度、多量の脱墨剤を用いるほど脱墨は可能ではあるが、紙の繊維が細かく分解してしまい強度が出にくくなること、時間、電力、薬品などの負担が増えることなどから、結果としてUVシステムが普及すると共に用紙のリサイクルが困難になっているという課題がある。
【0007】
一方で、インクジェットインキ分野において、脱墨パルプの製造方法(例えば、特許文献1)や、脱インキパルプの製造方法(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしこれらは、脱墨し難いとされるUV硬化型インキを対象としたものではない。
【0008】
また、インキの製造方法(例えば特許文献3)によっては省エネUVインキで脱墨が容易であるとする報告もなされているが、リサイクル対応型でないUV硬化型インキの脱墨性向上に対する抜本的な解決には至っていない。
【0009】
また、インキの製造方法(例えば特許文献4)によっては従来のUVシステムを利用したUV硬化型インキで脱墨が容易であるとする報告もなされているが、一般的な配合ではなく、専用の樹脂などの特殊な原材料を使用する必要があることから、インキコストと、インキ物性と、脱墨性とを全て満たすものは存在していない。
【0010】
このため、更なる普及が見込まれる一般的な活性エネルギー線硬化型インキを使用した脱墨適性に優れる印刷物、及び該印刷物の製造方法の確立が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2013-221059
【文献】特開2011-080187
【文献】特開2019-098698
【文献】特開2003-119681
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、密着性や耐スクラッチ性などの積層体としての物性に優れ、かつ、活性エネルギー線硬化型インキの種類に関係なく、用紙のリサイクル処理における脱墨性に優れる易脱墨積層体及び該積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す積層体及び該積層体の製造方法により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、積層体の脱墨方法であって、
積層体が、紙基材に、水性樹脂を含む水性アンカー剤を塗布し、オーブンにて乾燥させ、紙基材上にアンカー層を有する積層体を得る工程1と、
前記紙基材上にアンカー層を有する積層体のアンカー層上に、活性エネルギー線硬化型インキで印刷し、活性エネルギー線で硬化させ、アンカー層上にインキ層を有する易脱墨性積層体を得る工程2と、
を含む製造方法から製造された積層体であり、
前記水性樹脂が、水性アクリル樹脂及び水性ウレタン樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含み、
前記水性樹脂の酸価が、25~300mgKOH/gであり、
積層体をアルカリ水溶液中で撹拌し、アンカー層をアルカリ水溶液で溶解させ、インキ層が紙基材から脱墨される、積層体の脱墨方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、密着性や耐スクラッチ性などの積層体としての物性に優れ、かつ、活性エネルギー線硬化型インキの種類に関係なく、用紙のリサイクル処理における脱墨性に優れる易脱墨積層体及び該積層体の製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、特にことわりのない限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」を表す。
【0021】
本発明は、紙基材上に、アンカー層と、インキ層とをこの順に有する、易脱墨性積層体であって、アンカー層が、水性樹脂を含み、インキ層が、活性エネルギー線硬化型インキを、活性エネルギー線で硬化した層である、易脱墨性積層体である。
【0022】
<インキ層>
<活性エネルギー線硬化型インキ>
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(以下、「インキ」とも称する)は、着色剤、及び、(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする。
【0023】
[着色剤]
本発明において、インキは着色剤を含有する。着色剤としては、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。耐光性の観点から、顔料が好ましい。
本発明に用いることができる顔料としては、特に制限はなく、公知の顔料を用いることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも用いることができる。
【0024】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック類、酸化鉄、酸化チタンなどが挙げられる
【0025】
有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料; β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料;銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(例えば、塩素化又は臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系など)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系等の多環式顔料及び複素環式顔料などが挙げられる。
【0026】
更に詳しくは、C.I.カラーインデックスで示すと、黒顔料としては、C.I.Pigment Black 1、6、7、9、10、11、28、26、31などが挙げられる。
【0027】
白顔料としては、C.I.Pigment White 5、6、7、12、28などが挙げられる。
【0028】
黄顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、18、24、73、74、75、83、93、95、97、98、100、108、109、110、114、120、128、129、138、139、174、150、151、154、155、167、174、176、180、185、213などが挙げられる。
【0029】
青又はシアン顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、2、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62などが挙げられる。
【0030】
赤又は紅顔料としては、C.I.Pigment RED 1、3、5、19、21、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、50、52、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、90、104、108、112、114、122、144、146、148、149、150、166、168、169、170、172、173、176、177、178、184、185、187、193、202、209、214、242、254、255、264、266、269、C.I.Pigment Violet 19などが挙げられる。
【0031】
緑顔料としては、C.I.Pigment Green 1、2、3、4、7、8、10、15、17、26、36、45、50などが挙げられる。
【0032】
紫顔料としては、C.I.Pigment Violet 1、2、3、4、5:1、12、13、15、16、17、19、23、25、29、31、32、36、37、39、42などが挙げられる。
オレンジ顔料としては、C.I.Pigment Orange 13、16、20、34、36、38、39、43、51、61、63、64、74などが挙げられる。
【0033】
本発明において、上記顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明において、上記顔料は、印刷紙面上に目的の濃度が再現可能であれば任意の含有量で使用することが可能であり、インキ全量に対して5~30質量%であることが好ましく、より好ましくは10~25質量%である。
【0035】
[(メタ)アクリレート化合物]
本明細書において、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」は、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、及び「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」を意味する。また、「PO」は「プロピレンオキサイド」を、「EO」は「エチレンオキサイド」を表す。また、EO変性(X)、PO変性(X)のXはEO、POの変性モル数を表し、ポリエチレングリコール(Y)ジ(メタ)アクリレートのYはポリエチレングリコール部分のおおよその分子量を示している。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、(メタ)アクリレート化合物を含む。
本発明に用いることができる(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイルを1つ以上有する化合物であれば、特に限定されず、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれの形態も包含する。
ここで、「モノマー」とは、オリゴマーやポリマーを構成するための最小構成単位の化合物を意味し、「オリゴマー」とは、2個~100個のモノマーに基づく構成単位を有する重合体を意味する。
【0037】
本発明において用いられる(メタ)アクリレート化合物として具体的には、下記に示す化合物を挙げることができる。
【0038】
[(メタ)アクリレート化合物]
(モノマー)
2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性(2)ノニルフェノールアクリレート、2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、
1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(300)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性(2)1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を3つ有する3官能(メタ)アクリレートモノマー、
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの分子内にアクリロイル基を4つ有する4官能(メタ)アクリレートモノマー、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を5つ有する5官能(メタ)アクリレートモノマー、
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を6つ有する6官能(メタ)アクリレートモノマー、などが挙げられる。
【0039】
(オリゴマー)
脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーなどのウレタンアクリレートオリゴマー、アクリルエステルオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマーなどのうち(メタ)アクリロイル基を1~6個有するものが挙げられる。
[その他成分]
本発明において、インキは、必要に応じて上記成分以外に、重合開始剤、アミン化合物、樹脂、重合禁止剤、表面張力調整剤、ワックス、体質顔料、顔料分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含有することができる。
【0040】
(重合開始剤)
本発明において、インキは、重合開始剤を含んでもよい。上記重合開始剤としては、ラジカル重合の重合性開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤を含有することがより好ましい。本発明における重合開始剤は、光の作用、または増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカルを生成する化合物であり、中でも、露光という手段で重合開始させることができるという観点から光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0041】
本発明において、上記光ラジカル重合開始剤は、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体例としては、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル系化合物、チオキサントン化合物などが挙げられる。また、光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノン、2-クロロ-4フェニル-ベンゾフェノン、1-{4-[(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルベンゼンスルフォニル)プロパン-1-オン、ポリブチレングリコールビス(4-ベンゾイルフェノキシ)アセテートなどが挙げられる。
【0043】
ジアルコキシアセトフェノン系化合物としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。
【0044】
α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシメトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,3-ジヒドロ-6-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェニル]-1H-インデンと2,3-ジヒドロ-5-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェニル]-1H-インデンの混合物、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピニル)ベンジル]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェノキシ]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、1-[4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0045】
α-アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン、1,2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、1-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-2-メチル-2-モルフォリン-4-イル-プロパン-1-オン、ポリエチレングリコールジ(β-4-[4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノニルフェニル]ピペラジン)プロピネイト、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-ピペリジニルフェニル)-1-ブタノン、1-(ビフェニル-4-イル)-2-メチル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(ビフェニル-4-イル)-2-メトキシ-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0046】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ジフェニルアシルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、トリス(フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸)ポリエチレングリコールエステル、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネイト、ビス(2,4,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0047】
オキシムエステル系化合物としては、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン,2-ベンゾイルオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)―9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、3-シクロペンチル-1-(4-(フェニルチオ)フェニル)プロパン-1,2-ジオン-2-(o-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-(o-アセチルオキシム)、メタノン,[8-[[(アセチルオキシ)イミノ][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル]-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-5-イル]-,(2,4,6-トリメチルフェニル)、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシムなどが挙げられる。
【0048】
チオキサントン系化合物としては、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、ポリ(オキシ-1,4-ブタンジイル),α-[2-[(9-オキソ-9H-チオキサンテニル)オキシ]アセチル]-ω-[[2-[(9-オキソ-9H-チオキサンテニル)オキシ]アセチル]オキシ]-、1,3-ジ({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル]オキシ}アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)])オキシ]-2,2-ビス({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサントテン-4-イル]オキシ}アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)])オキシメチル)プロパンなどが挙げられる。
【0049】
光重合開始剤の含有量は、インキ全量に対して、1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0050】
(アミン化合物)
本発明において、インキは、アミン化合物を含んでもよい。アミン化合物としては、特に制限はなく、公知のアミン化合物を用いることができる。アミン化合物を活性エネルギー線硬化型インキの成分として用いることにより、水素引き抜型光重合開始剤の効果を高める働きが期待される。
具体例としては、例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、N,N- ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N-ジメチルヘキシルアミン、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル,α-[4-(ジメチルアミノ)ベンゾイル]-ω-[[4-(ジメチルアミノ)ベンゾイル]オキシ]-、ビスN,N-[2-(4-ジメチルアミノベンゾイル)オキシエチレン-1-イル]メチルアミン、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),α-[4-(ジメチルアミノ)ベンゾイル]-ω-[[4-(ジメチルアミノ)ベンゾイル]オキシ]-、ポリ[オキシ(メチル-1,2-エタンジイル)、α-[4-(ジメチルアミノ)ベンゾイル-ω-ブトキシ-、2-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、などが挙げられる。アミン化合物としては、単独で使用しても良いし、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
(樹脂)
本発明において、インキは樹脂を含んでもよい。樹脂を含むことで、硬化時に生じる塗膜の硬化収縮を緩和し、基材のカールを抑制し、さらに、アンカー剤への密着性が向上する。
【0052】
樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、樹脂の含有量は、インキの全質量に対して、1~20質量%であることが好ましい。
【0053】
樹脂として、具体的に、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体のような合成ゴムなどが挙げられる。中でも、分散性の観点から、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0054】
(重合禁止剤)
本発明において、インキは重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤としては、具体的には、4-メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩などが挙げられる。
【0055】
重合禁止剤の含有量は、硬化性を維持しつつ、インキの安定性を高める観点から、インキの全質量に対して、0.01~2質量%であることが好ましい。
【0056】
(ワックス)
本発明において、インキは、ワックスを含んでもよい。ワックスを含むことで、耐摩擦性、耐スクラッチ性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性をより良好なものにすることができる。ワックスとしては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えば、天然ワックスおよび合成ワックスがある。
天然ワックスは、例えば、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。
合成ワックスは、例えば、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、などが挙げられる。
【0057】
前記ワックスの含有量は、インキの全質量に対して、0.1~5質量%であることが好ましい。
【0058】
(体質顔料)
本発明において、インキは、体質顔料を含んでもよい。体質顔料としては、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ベントナイト等が挙げられる。
【0059】
(顔料分散剤)
本発明において、インキは、顔料分散性をより良好なものにするために、顔料分散剤を含有することが好ましい。顔料分散剤としては、特に制限はなく、公知の顔料分散剤を用いることができる。中でも、塩基性官能基を有する樹脂型顔料分散剤が好ましく、前記塩基性官能基としては一級、二級、または三級アミノ基、ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素複素環などを挙げることができる。
また、前記樹脂型顔料分散剤を構成する骨格としては、脂肪酸アミン骨格、および/または、ウレタン骨格が、良好な顔料分散性が容易に得られることからさらに好ましい。
【0060】
前記顔料分散剤としては、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーシリーズ(アジスパーPB821、PB822、PB824など)、Lubrizol社製のソルスパーズシリーズ(Solsperse24000、Solsperse32000、Solsperse38500など)、ビックケミー社製のディスパービックシリーズ(BYK-162、BYK-168、BYK-183など)などが挙げられる。
【0061】
前記顔料分散剤の含有量は、インキの全質量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~5質量%であることがより好ましい。
【0062】
<アンカー層>
本発明の積層体のアンカー層は、水性樹脂を含んでいる。このようなアンカー層は、水性樹脂を含む水性アンカー剤をコートし、乾燥させることで得ることができる。
【0063】
[水性アンカー剤]
本発明における水性アンカー剤は、水と、水性樹脂とを含む。
【0064】
[水性樹脂]
本発明における水性樹脂としては、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂などを挙げることができる。中でも、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂を用いることが好ましく、水性アクリル樹脂を用いることが特に好ましい。
【0065】
[水性アクリル樹脂]
水性アクリル樹脂は、アクリルモノマー構成単位を有するものである。更にスチレン系モノマー、マレイン酸系モノマーなどを共重合して得られるアクリル樹脂であっても好ましい。なお、アクリル樹脂はカルボキシル基を有し、乳化剤および/または塩基性化合物の存在下で水性化されたものが好ましい。
【0066】
上記アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアルキルアミド、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等を好適に挙げることができる。なお、アルキルエステル等を構成するアルキル基は炭素数が1~18であることが好ましい。
【0067】
上記スチレン系モノマーとしては、たとえばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレンその他が好適であり、マレイン酸系モノマーとしては、無水マレイン酸やマレイン酸が好適であり、炭素数が1~18のアルキルエステル、炭素数が1~18のアルキルアミド、炭素数が2~4のヒドロキシアルキルエステルとなっていてもよい。さらに、本発明で使用する水性アクリル樹脂は、反応成分として上記以外の一般に水性アクリル系樹脂の反応成分として使用される既知のモノマーをさらに使用してもよい。
【0068】
これらの各反応成分を用いて、既知の製造方法でアクリル系樹脂を製造でき、また、既知の乳化剤ないし高分子の保護コロイドを用いる方法や、分子内にカルボキシル基を導入し、塩基性化合物で中和する方法により水性化することができる。塩基性化合物としては、アミン化合物が好ましく、アンモニアの使用が好ましい。また、水性アクリル樹脂は水性エマルジョンであることが好ましく、コアシェル型のアクリルエマルジョンがより好ましく、アクリルエマルジョンのコア/ シェル比が1 0 : 9 0 ~ 70 : 3 0 であることが好ましい。
【0069】
なお、当該水性アクリル樹脂の酸価としては、25~300mgKOH/gであることが好ましい。当該酸価によって良好な水溶性の樹脂が得られ、UVインキの脱墨特性が向上するためである。また、水性アクリル樹脂はガラス転移温度が-50~150℃であることが好ましく、-30~100℃であることがなお好ましい。当該ガラス転移温度範囲によって基材密着性が向上するためである。また、当該水性アクリル樹脂の重量平均分子量は5,000~700,000であることが好ましく、8,000~500,000であることがより好ましく、8,000~200,000であることが更に好ましい。
【0070】
(合成法)
水性アクリル樹脂は、公知の方法により適宜製造される。例えば特開2011-144332公報に記載の手法を適宜使用可能である。
【0071】
[水性ポリウレタン樹脂]
水性ポリウレタン樹脂は中和される酸価を有し、酸価が25~65mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度が-50~100℃であることが好ましい。ここでガラス転移温度とは動的粘弾性測定におけるTanδの極大値をいう。
【0072】
上記水性ポリウレタン樹脂としてはポリオール、ヒドロキシ酸およびポリイソシアネートにより合成されたポリウレタン樹脂である形態や、ポリオール、ヒドロキシ酸およびポリイソシアネートにより合成された末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとポリアミンにより鎖延長されたポリウレタンウレアを含むポリウレタン樹脂である形態が好ましい。
【0073】
水性のポリウレタン樹脂およびポリウレタンウレア樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートを反応させる際、樹脂内にカルボキシル基、スルホン基等のイオン性基を導入し、塩基性化合物を利用し中和することにより、水溶化させている。耐水性の観点からイオン性基としてはカルボキシル基が好ましい。
【0074】
(ポリオール)
上記ポリオールとしては、後述のヒドロキシ酸は含まれない。当該ポリオールとしては、以下に限定されないが、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ダイマージオール、水素添加ダイマージオールなどが好適に挙げられる。これらのポリオールは、単独で用いても、2種以上併用してもよい。水性ポリウレタン樹脂はポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールより選ばれる少なくとも一種のポリオールからなる構成単位を含有することが好ましい。ポリオールの数平均分子量は500~5000であることが好ましい。
【0075】
(ポリエーテルポリオール)
上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびこれらの共重合物を好適に挙げることができる。これらからなる構成単位は水性ポリウレタン樹脂であることが好ましい。水性ポリウレタン樹脂はポリエチレングリコール由来の構成単位を含有することが好ましく、水性ポリウレタン樹脂総質量中に0.1~25質量%含有することが好ましく、2~15質量%含有することがなお好ましく、2~10質量%含有することが更に好ましい。
【0076】
(ポリエステルポリオール)
上記ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸と分岐ジオールを含むジオールからなる構成単位を有する形態が好ましい。当該二塩基酸としては、セバシン酸、アジピン酸、コハク酸などが好適に使用でき、分岐ジオールとしてはアルキレングリコールの炭素上に有する水素の少なくとも一つが置換基を有する形態のものをいう。具体的には、プロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオールより選ばれる少なくとも一種を、ジオール総質量中に50質量%以上含有することが好ましい。なおポリエステルポリオールの実施形態はこれらに限定されない。
【0077】
(ポリカーボネートポリオール)
上記ポリカーボネートポリオールとしては、製造方法やポリカーボネートポリオールを構成するジオール種により限定されるものではないが、アルキレングリコールからなるジオールとカーボネート化合物とのエステル交換反応による重縮合物が好適に挙げられる。なお、ポリカーボネートポリオールは脂環族および/または脂肪族のポリカーボネートジオールであることが好ましい。
【0078】
上記ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブチンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどが好適であり、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。3-メチル-1,5-ペンタンジオールその他の分岐構造を有するジオール構造を有するポリカーボネートポリオールであることが好ましい。
当該カーボネート化合物は、特に限定されないが、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはアルキレンカーボネートが挙げられる。カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートが挙げられる。
【0079】
(ポリイソシアネート)
上記ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが好適に挙げられる。なおこれらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていても良い。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加された4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体から選ばれる少なくとも一種である。これらのポリイソシアネートは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0080】
(ヒドロキシ酸)
上記ヒドロキシ酸は、以下に限定されないが、カルボキシルを含有するポリオールを利用することができる。例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のジメチロールアルカン酸などが好適に挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。ヒドロキシ酸は水性ポリウレタン樹脂の製造工程の中で用いられ、得られたポリウレタン樹脂中にそのカルボキシル基が導入され、酸価を有する。未反応のカルボキシル基は中和されて水性化される。
【0081】
(ポリアミン)
上記ポリアミンとして利用可能な化合物としては、各種公知のアミン類であり、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’- ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等などが好適に挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0082】
(反応停止剤)
上記ポリアミンと併用して反応停止剤を使用することもできる。かかる反応停止剤としては、例えば、ジ-n-ジブチルアミンなどのジアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、N-ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N-ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するアミン類、さらにグリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アスパラギン酸、アミノ酪酸、バリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸などのモノアミン型アミノ酸類が挙げられる。
【0083】
(中和剤)
ポリウレタン樹脂の水性化のために、樹脂中のカルボキシル基を塩基性化合物で中和することが好ましい。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モルホリン等が挙げられ、これらは1 種、又は2 種以上の組み合わせで用いられる。印刷物の耐水性、残留臭気等の点からアンモニアが好ましい。
【0084】
(合成法)
ポリウレタン樹脂は、公知の方法により適宜製造される。例えば、イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤を用いるアセトン法、溶剤を全く使用しない無溶剤合成法等が挙げられる。例えば特開2013-234214公報に記載の手法を適宜使用可能である。
【0085】
[その他の成分]
本発明における水性アンカー剤は、必要に応じて上記成分以外に、シリカ、アルミナ、ポリエチレンワックス、消泡剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤等も配合することができる。
【0086】
<易脱墨性積層体>
本発明の易脱墨性積層体は、活性エネルギー線硬化型インキを、紙基材に塗工したアンカー剤の上に印刷し、活性エネルギー線で硬化することによって得られる。
【0087】
本発明の易脱墨性積層体の製造方法としては、
紙基材に、水性樹脂を含む水性アンカー剤を塗布し、オーブンにて乾燥させ、紙基材上にアンカー層を有する積層体を得る工程1と、
前記紙基材上にアンカー層を有する積層体のアンカー層上に、活性エネルギー線硬化型インキで印刷し、活性エネルギー線で硬化させ、アンカー層上にインキ層を有する易脱墨性積層体を得る工程2と、
を含む。
【0088】
本発明の易脱墨性積層体は、インキ層の上に、更にニス層を有しても良い。ニス層に用いるニスは特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、活性エネルギー線硬化型ニス、または、水性ニスを用いることが好ましく、活性エネルギー線硬化型ニスを用いることが特に好ましい。
【0089】
前記紙基材としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、アート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙や上質紙、中質紙、新聞用紙などの非塗工紙、ユポ紙などの合成紙などが挙げられる。
【0090】
本発明において、活性エネルギー線硬化型インキを印刷する方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷などが挙げられる。
【0091】
活性エネルギー線源としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ、エキシマーランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等のLED(発光ダイオード)、EB(電子線)照射装置、ガス・固体レーザーなどが挙げられる。
【0092】
本発明において、水性アンカー剤を印刷する方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、グラビア印刷、フレキソ印刷、など挙げられる。
【0093】
<脱墨>
本発明において、脱墨とは印刷物済みのいわゆる古紙からインキ成分を除去するための工程である。具体的にはアルカリ水溶液中で用紙を細かく粉砕した後に、脱墨剤を用いて繊維と分離したインキを、細かい気泡を発生させることにより、浮上、除去するフローテーション法が用いられる。脱墨剤としては、脂肪酸(石鹸)、脂肪酸誘導体、油脂誘導体、高級アルコール誘導体などが主に使用される。この際に分解しきれなかった黒色の成分(きょう雑物(ダートとも呼ばれる))が多く残っていると、再度紙を抄いた際の白紙化に影響が出るため、リサイクル適性確認の目安としてきょう雑物の面積や、大きなきょう雑物の個数が重要となってくる。
【0094】
脱墨剤としては、花王株式会社製脱墨剤DI-7020、DI-7027、DI-7250、DI-767、日新化学株式会社製DIA-Zシリーズ、DIA-Yシリーズ、ライオンスペシャリティケミカルズ社製リプトールシリーズなどが入手できる。
【0095】
印刷物の評価は、JIS P8208 パルプ-きょう雑物測定方法に従い白色度計などを用いて白色度を測定、またきょう雑物の原理はパソコンのスキャナーで取り込んだ画像を色相差で残インキを判断する測定法、ダートカウンターソフト搭載のマイクロスコープ3Dスキャナー専用測定装置(SCAN-MARK 800、Spec*Scan2000等)を使用するなどの方法がある。これらにより、脱墨の度合いを白色度とインキ残個数から判断した。
【実施例
【0096】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0097】
<アクリルエマルジョンの合成>
水性アンカー剤に使用するコア/シェル型のアクリルエマルジョンを合成した。
【0098】
(合成例1)
窒素ガス置換した四つ口フラスコに、イソプロピルアルコールを100部仕込み、温度を80~82℃に上げた後、滴下ロートに仕込んだスチレン38.0部、アクリル酸2.0部、メチルメタクリレート6.0部、過酸化ベンゾイル1.0部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過酸化ベンゾイル0.5部を追加し、更に2時間反応させた。温度を40℃に下げ、ジメチルエタノールアミン、イオン交換水を添加した。その後、反応フラスコの温度を80~82℃に上げ、ストリッピングを行ない、最終的に固形分30%の水溶性樹脂を得た。
上記で得た水溶性樹脂に、イオン交換水10部を反応フラスコに仕込み、温度を80℃~82℃に上げた後、過硫酸カリウムを2部添加し、スチレン24.6部、2-エチルヘキシルアクリレート21.0部、ブチルアクリレート8.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸カリウム0.2部を添加し、2時間反応させた。このようにして得られたアクリルエマルジョン(樹脂1)の固形分は40%であった。理論酸価は16mgKOH/gであった。
【0099】
(合成例2~7)
合成例2~7に付いては、モノマーの配合以外は合成例1と同様な方法で重合を行い、アクリルエマルジョンである樹脂2~樹脂7を得た。それらのモノマーの配合を表1に示す。
【0100】
【表1】


【0101】
<水性ウレタン樹脂の合成>
水性アンカー剤に使用する水性ウレタン樹脂を合成した。
【0102】
(合成例8)
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、数平均分子量400のポリ(3-メチル-1,5-ペンタンアジペート)ジオール103.3部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール24.2部、2,2-ジメチロールプロピオン酸15.1部およびイソホロンジイソシアネート138.2部をメチルエチルケトン200部中で6時間沸点反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、しかるのち40℃まで冷却してからアセトン100部を加えて、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液を得た。次に、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン14.4部、イソホロンジアミン4.8部およびアセトン400部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液580.9部を、室温で徐々に添加して50℃で3時間反応させ、溶剤型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水9.8部および脱イオン水700部を上記溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに共沸下でメチルエチルケトン、アセトンの全量を留去した後、水を加えて粘度調整を行ない、酸価21mgKOH/g、固形分30%、粘度780mPa・s、重量平均分子量20000の水性ウレタン樹脂(樹脂8)を得た。
【0103】
(合成例9)
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、数平均分子量400のポリ(3-メチル-1,5-ペンタンアジペート)ジオール82.5部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール24.2部、2,2-ジメチロールプロピオン酸35.9部およびイソホロンジイソシアネート138.2 部をメチルエチルケトン200部中で6時間沸点反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、しかるのち40℃まで冷却してからアセトン100部を加えて、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液を得た。次に、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン14.4部、イソホロンジアミン4.8部およびアセトン400部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液580.9部を、室温で徐々に添加して50℃で3時間反応させ、溶剤型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水9.8部および脱イオン水700部を上記溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに共沸下でメチルエチルケトン、アセトンの全量を留去した後、水を加えて粘度調整を行ない、酸価50mgKOH/g、固形分30%、粘度1000mPa・s、重量平均分子量25000の水性ウレタン樹脂(樹脂9)を得た。
【0104】
<油性ウレタン樹脂の合成>
(合成例10)
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに数平均分子量2000の3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の縮合物であるポリエステルポリオール130部、ネオペンチルグリコール18.2部、イソホロンジイソシアネート101.4部、2-エチルヘキシル酸第一錫0.03部及び酢酸エチル62.6部を仕込み、窒素気流下に90℃で3時間反応させ、酢酸エチル125.7部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液438.0部を得た。次いでイソホロンジアミン43.8部、ジ-n-ブチルアミン1.24部、酢酸エチル301.7部、イソプロピルアルコール210部の混合物に、得られた末端イソシアネートプレポリマー438.0部を室温で徐々に添加、次に50℃で1時間反応させた。その後、イソホロンジイソシアネート5.3部を加えて粘度調整した後、酢酸エチル/イソプロピルアルコールを質量比で7/3の割合で混合した溶剤で固形分を30%に調整し、酸価0mgKOH/g、粘度800mPa・s、質量平均分子量35000のポリウレタン樹脂(樹脂10)を得た。
【0105】
<アンカー剤の作製>
(アンカー剤1)
合成例1で得られたアクリルエマルジョン(樹脂1)99.0部(固形40%)、ポリエチレンワックス(三井化学社製 ケミパールW500)1.0部を添加し、ディスパーで10分間攪拌して、水性アンカー剤(AC1)を得た。
【0106】
(アンカー剤2~9)
上記樹脂2~9について、アンカー剤1と同様の配合により、水性アンカー剤(AC2)~水性アンカー剤(AC9)を得た。
【0107】
(アンカー剤10)
合成例10で得られた油性ウレタン樹脂(樹脂10)79.0部(固形30%)、酢酸エチル10.0部、イソプロピルアルコール10.0部、ポリエチレンワックス (三井化学社製 ケミパールW500)1.0部を添加し、ディスパーで10分間攪拌して、油性アンカー剤(AC10)を得た。
【0108】
(アンカー剤11)
TMPTA(EO)を20.0部、DiTMPTAを60.0部、DPHAを10.0部、4MBPを6.0部、TPOを3.0部、EDBを1.0部、を混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合することによりUVフレキソアクリルアンカー剤(AC11)を作製した。
【0109】
<活性エネルギー線硬化型樹脂ワニスの作製>
DPHA65.0部、TMPTA(EO)6.5部、DiTMPTA3.5部を混合し、100℃まで攪拌しながら昇温した。次いでジアリルフタレート樹脂25.0部を混合し、100℃に保温しながら溶解させ、ジアリルフタレート樹脂ワニスを作製した。
【0110】
(アンカー剤12)
TMPTA(EO)を10.0部、DiTMPTAを18.0部、DPHAを7.0部、4MBPを5.0部、TPOを2.0部、EDBを1.0部、及び、樹脂ワニスを57.0部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合することによりUVオフセットアクリルアンカー剤(AC12)を作
製した。
【0111】
<インキ製造例>
<油性樹脂ワニスの作製>
(ロジン変性フェノール樹脂製造例)
反応容器中でガムロジン54.3部に、予めキシレン溶媒中でターシャリーブチルフェノール30.8部と92重量%のパラホルムアルデヒド9.4部を水酸化ナトリウム触媒下で100℃にて4時間反応させ、水分除去したフェノール樹脂を150℃で滴下し2時間反応させた。更にグリセリン5.4部を添加し、触媒として酸化カルシウム0.1部を使用して250℃で15時間反応させた。その間、順次取り出す事により、ロジンフェノール樹脂を得る事が出来た。
【0112】
(ロジン変性フェノール樹脂ワニス製造例)
次に、撹拌機、水分離器付還流冷却器、温度計付き4つ口フラスコに、バインダー樹脂として前記ロジン変性フェノール樹脂45.0部、大豆油44.0部、大豆油脂肪酸ノルマルブチルエステル10.0部、ALCH1.0部を190℃で1時間加熱撹拌してロジン変性フェノール樹脂ワニスを得た。
【0113】
(インキ製造例1(油性インキ墨))
RAVEN 1080 Ultraを17.0部、BA-2550を3.0部、ロジン変性フェノール樹脂ワニス59.0部、大豆油20.0部、MKドライヤー0.5部、乾燥抑制剤CP0.5部を混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合した後、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散してインキを作製した。
【0114】
(インキ製造例2(UVインキ墨1))
RAVEN 1080 Ultraを17.0部、BA-2550を3.0部、TMPTA(EO)を6.0部、DiTMPTAを13.0部、DPHAを7.0部、379を3.0部、DEABPを1.5部、DETXを1.5部、EDBを1.0部、及び、ジアリルフタレート樹脂ワニスを47.0部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合した後、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散してインキを作製した。
【0115】
(インキ製造例3(UVインキ墨2))
RAVEN 1080 Ultraを17.0部、BA-2550を3.0部、TMPTA(EO)を6.0部、DiTMPTAを13.0部、DPHAを7.0部、379を3.0部、DEABPを1.5部、DETXを1.5部、EDBを1.0部、及び、MIRAMER PS-4500を47.0部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合した後、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散してインキを作製した。
【0116】
(インキ製造例4(高感度インキ墨))
RAVEN 1080 Ultraを17.0部、BA-2550を3.0部、TMPTA(EO)を6.0部、DiTMPTAを10.0部、DPHAを7.0部、379を3.0部、TPOを2.0部、DEABPを2.0部、4MBPを2.5部、DETXを2.5部、EDBを1.0部、及び、ジアリルフタレート樹脂ワニスを44.0部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合した後、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散してインキを作製した。
【0117】
(インキ製造例5(UVフレキソ墨))
RAVEN 1080 Ultraを15.0部、BA-2550を1.0部、TMPTA(EO)を16.0部、DiTMPTAを5.0部、DPHAを7.0部、379を3.0部、DEABPを2.0部、4MBPを2.5部、DETXを2.5部、EDBを1.0部、及びSolsperse24000を6.0部、バタフライミキサーを用いて攪拌混合した後、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散してインキを作製した。その後、TMPTA(EO)を39.0部加えてバタフライミキサーを用いて攪拌混合してインキを作製した。
【0118】
(インキ製造例6(UVインキ黄))
Permanent Yellow BHSを15.0部、TMPTA(EO)を6.0部、DiTMPTAを18.0部、DPHAを7.0部、379を3.0部、DEABPを1.5部、DETXを1.5部、EDBを1.0部、及び、ジアリルフタレート樹脂ワニスを47.0部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合した後、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散してインキを作製した。
【0119】
(インキ製造例7(UVインキ紅))
Permanent Rubine L5B-01を20.0部、TMPTA(EO)を6.0部、DiTMPTAを13.0部、DPHAを7.0部、379を3.0部、DEABPを1.5部、DETXを1.5部、EDBを1.0部、及び、ジアリルフタレート樹脂ワニスを47.0部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合した後、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散してインキを作製した。
【0120】
(インキ製造例8(UVインキ藍))
Heliogen Blue D7088を20.0部、TMPTA(EO)を6.0部、DiTMPTAを13.0部、DPHAを7.0部、379を3.0部、DEABPを1.5部、DETXを1.5部、EDBを1.0部、及び、ジアリルフタレート樹脂ワニスを47.0部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合した後、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散してインキを作製した。
【0121】
(インキ製造例9(EBインキ墨))
RAVEN 1080 Ultraを17.0部、BA-2550を3.0部、TMPTA(EO)を6.0部、DiTMPTAを13.0部、DPHAを7.0部、及び、ジアリルフタレート樹脂ワニスを54.0部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合した後、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散してインキを作製した。
【0122】
実施例で用いた材料の表記の説明は以下の通りである。
[着色剤]
・Permanent Yellow BHS:Clariant社製、Permanent Yellow BHS(C.I.Pigment Yellow 174)
・Permanent Rubine L5B-01:Clariant社製、Permanent Rubine L5B-01(C.I.Pigment Red 57:1)
・HELIOGEN BLUE D7088:BASF社製、HELIOGEN BLUE D7088(C..Pigment Blue 15:3)
・Raven 1080 Ultra:Bilra Carbon社製、Raven 1080 Ultra Powder(C.I.Pigment Black 7)
・BA-2550:森村商事社製、アルカリブルートーナーBA-2550(C.I.Pigmen
t Blue 61)
[(メタ)アクリレート化合物]
・TMPTA(EO):BASF社製、LAROMER LR8863、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート
・DiTMPTA:ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL1142、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
・DPHA:MIWON社製、MIRAMER M600、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・PS-4500:MIWON社製、MIRAMER PS-4500、ポリエステルアクリレートオリゴマー
[樹脂]
・ジアリルフタレート樹脂:株式会社大阪ソーダ製 ダイソーダップA(酸価2~3mgKOH/g)
[光重合開始剤]
・379:IGM RESINS社製、Omnirad379、1,2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン
・TPO:Chemark Chemical社製、CHEMARK TPO、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド
・DEABP:Chemark Chemical社製、CHEMARK DEABP、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン
・4MBP:双邦実業社製、SB-PI 712
・DETX:Chemark Chemical社製、CHEMARK DETX、2,4-ジエチルチオキサントン
[アミン化合物]
・EDB:Chemark Chemical社製、CHEMARK EDB、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート
[顔料分散剤]
Solsperse24000:Lubrizol社製、Solsperse24000、
[金属ドライヤー]
・MKドライヤー:東洋インキ(株)製、MKドライヤー
[乾燥抑制剤]
・乾燥抑制剤CP:東洋インキ(株)製、乾燥抑制剤CP
[アルミニウムゲル化剤]
・ALCH:川研ファインケミカル株式会社製、ALCH、アルミニウムエチルアセテートジイソプロピレート
[その他]
・大豆油脂肪酸ノルマルブチルエステル:東新油脂(株)製、SFB2
【0123】
実施例1~18、比較例1~7
<基材へのアンカー剤の印刷>
実施例1~18、比較例1、4は、バーコーター(No.4、安田精機社製)を用い、基材の上に表2に示すアンカー剤を塗布した。その後、160度のオーブンで10分間乾燥させ、基材上にアンカー層を有する積層体を作製した。
また比較例5は、バーコーター(No.4、安田精機社製)を用い、基材の上に表2に示すアンカー剤を塗布した。その後、アイグラフィックス社製紫外線硬化装置(160W/cm メタハライドランプ)で、コンベヤ速度30m/分の条件にて塗膜を硬化させ、基材上にアンカー層を有する積層体を作製した。
また比較例6は、RIテスター(明製作所(株)製簡易印刷機)を用い、基材の片面にインキゲージ0.25mLでアンカー剤を塗布した。その後、アイグラフィックス社製紫外線硬化装置(160W/cm メタハライドランプ)で、コンベヤ速度30m/分の条件にて塗膜を硬化させ、基材上にアンカー層を有する積層体を作製した。
【0124】
<インキの印刷>
実施例1~12、15~18、比較例4~6は、作製した基材上にアンカー層を有する積層体に、RIテスターを用い、インキゲージ0.25mLで表2に示す試料インキを印刷した後、印刷物をアイグラフィックス社製紫外線硬化装置(160W/cm メタハライドランプ)で、コンベヤ速度30m/分の条件にて塗膜を硬化させ、基材上にアンカー層とインキ層をこの順で有する積層体を得た。
また実施例13は、作製した基材上にアンカー層を有する積層体に、RIテスターを用い、インキゲージ0.25mLで表2に示す試料インキを印刷した後、印刷物をアイグラフィックス社製紫外線硬化装置(160W/cm メタハライドランプ)で、コンベヤ速度100m/分の条件にてインキを硬化させ、基材上にアンカー層とインキ層をこの順で有する積層体を得た。
また実施例14は、作製した基材上にアンカー層を有する積層体に、RIテスターを用い、インキゲージ0.25mLで表2に示す試料インキを印刷した後、印刷物をESI(株)製低エネルギー電子線照射装置(加圧電圧175KV、酸素濃度50ppmの窒素置換した雰囲気)を用い30KGy の電子線を照射してインキを硬化させ、基材上にアンカー層とインキ層をこの順で有する積層体を得た。
また比較例1は、作製した基材上にアンカー層を有する積層体に、RIテスターを用い、インキゲージ0.25mLで表2に示す試料インキを印刷した後、24時間室温で放置しインキを硬化させ、基材上にアンカー層とインキ層をこの順で有する積層体を得た。
比較例2、3は、RIテスターを用い、基材に直接インキゲージ0.25mLで表2に示す試料インキを印刷した後、展色物をアイグラフィックス社製紫外線硬化装置(160W/cm メタハライドランプ)で、コンベヤ速度30m/分の条件にてインキを硬化させ、基材上にインキ層を有する積層体を得た。
また比較例7は、RIテスターを用い、基材に直接インキゲージ0.25mLで表2に示す試料インキを印刷した後、24時間室温で放置しインキを硬化させ、基材上にインキ層を有する積層体を得た。
【0125】
得られた積層体を、以下の方法により性能評価を行った。結果を表2に示す。
【0126】
<積層体の評価>
(残留溶剤)
得られた積層体の残留溶剤を評価した。
実施例1~18、比較例1~7の積層体を密閉した三角フラスコ中で80℃30分加熱し溶剤を揮発させ、ガスクロマトグラフィー(GLサイエンス社製、GC-4000)にて、揮発溶剤量を確認した。
[評価基準]
〇 :残留溶剤合計量が、0.5mg/m2未満であった。
○△ :残留溶剤合計量が、0.5mg/m2以上1mg/m2未満であった。
△ :残留溶剤合計量が、1mg/m2以上2mg/m2未満であった。
△× :残留溶剤合計量が、2mg/m2以上3mg/m2未満であった。
× :残留溶剤合計量が、3mg/m2以上であった。
なお、〇、〇△、△が実用上好ましい。
【0127】
(耐スクラッチ性の評価)
作製した積層体を用いて綿布を用いインキ面を擦り評価した。擦れが少ない程、耐スクラッチ性が良好であると判断ができる。評価基準は下記に示した通りであり、〇、〇△、△が実用上好ましい。
〇 :インキを展色した印刷面への擦れがない
〇△ :インキを展色した印刷面表層まで擦れる
△ :インキを展色した印刷面の中間部まで擦れる
△× :インキを展色した印刷面底部まで擦れる
× :インキを展色した印刷面の塗膜が無くなる
【0128】
(密着性の評価)
作製した積層体のインキ面に粘着テープ(ニチバン社製セロテープ(登録商標)18mm幅)を貼り付け、90度の垂直方向に剥離をおこない、アンカー層からインキ被膜の剥がれた面積の割合から基材への密着性を評価した。〇、〇△、△が実用上好ましい。
〇 :アンカー層からインキ被膜の剥がれがない
〇△ :アンカー層からインキ被膜の剥がれが10%未満である
△ :アンカー層からインキ被膜の剥がれが10%以上30%未満である
△× :アンカー層からインキ被膜の剥がれが30%以上70%未満である
× :アンカー層からインキ被膜が70%以上剥がれる
【0129】
<脱墨性の評価>
作製した実施例1~18、比較例1~7の積層体を60℃にて1週間エージングさせた後、室温23±1℃、湿度50±2%の環境下で更に10日間保管した。その後、30×30mmに断裁してそれぞれ58gを試料として試験に用いた。
【0130】
2Lパルパーに、30℃の温水を1.5L、3.75%の水酸化ナトリウム水溶液を7mL(対紙0.5%) 、1.5%に希釈した脱墨剤(花王株式会社製DI-7027)を7mL(対紙0.2%)投入してから試料を加え、3000rpm、20分間撹拌を行った。攪拌開始から2分後に、蓋に付着した試料を少量の水で槽内に洗い流した。離解終了後に試料を150メッシュの金網を用いて625gまで濃縮した。
【0131】
2Lパルパーに常温の精製水1350mLを加え、濃縮した試料と共に1分間再離解し、2Lパルパーから10Lバケツに試料を移し、30℃±2℃の温水を加え、5.4kgに希釈した。その内4.3kgを分取し、J.TAPPI No.39準拠のフローテーターである極東振興(株)製SF-2
5で、スクリュー回転数1500rpm、空気供給量4L/分の条件で10分間攪拌を行った。
【0132】
フローテーター槽内の試料を回収し、試料に水を加えて総量を8kgに希釈した後、硫酸アルミニウム溶液を加え、pHを5.0~5.6に調整した。
【0133】
JIS P8222で定める、手すき機(φ160mm、熊谷理機工業(株)製)で150メッシュの
金網を用いて湿紙を作製し、濾紙で挟み、410kPa の圧力で5分間プレスして脱水した。その後回転式ドラム乾燥機を用い、表面温度を90℃で4分間乾燥させた。乾燥後の秤量が60gとなる様に調整し、再生紙5枚を作製した。
【0134】
得られた5枚の再生紙について、明らかにインキに由来しないと思われる金属片等のきょう雑物を除去した。
【0135】
得られた再生紙を、以下の方法により性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0136】
<ISO白色度の評価>
作製した再生紙について、Technidyne社製ColorTouch PCを用いISO白色度を評価した。測定値は得られた5枚の平均値とした。
ISO白色度が高い程、脱墨性が良好であると判断ができる。評価基準は下記に示した通りであり、〇、△が実用上好ましい。
〇 :白色度が非常に高い(80~100)
△ :白色度が高い(70~79)
× :白色度が低い(0~69)
【0137】
<きょう雑物総面積の評価>
作製した再生紙について、ダートカウンターApogee System Inc.製Spec*Scan 2000を用いて0.05mm2以上のきょう雑物総面積(mm2/m2)並びに0.3mm2以上のきょう雑物個数(個/167cm2)の測定をJIS P8208 パルプ-きょう雑物測定方法に従い行った。測定値は得られた5枚の平均値とした。
きょう雑物の面積が小さい程、脱墨性が良好であると判断ができる。評価基準は下記に示した通りであり、〇、〇△、△が実用上好ましい。
きょう雑物総面積(mm2/m2)の評価
〇 :脱墨性が非常に良い(15mm2/m2未満)
〇△ :脱墨性が良い(15mm2/m2以上20mm2/m2未満)
△ :脱墨性は普通(20mm2/m2以上40mm2/m2未満)
△× :脱墨性が悪い(40mm2/m2以上60mm2/m2未満)
× :脱墨性が非常に悪い(60mm2/m2以上)
【0138】
<きょう雑物(0.3mm2以上)個数の評価>
作製した再生紙について、ダートカウンターApogee System Inc.製Spec*Scan 2000を用いて0.3mm2以上のきょう雑物個数(個/167cm2)の測定をJIS P8208 パルプ-きょう雑物測定方法に従い行った。測定値は得られた5枚の平均値とした。
きょう雑物の個数が少ない程、脱墨性が良好であると判断ができる。評価基準は下記に示した通りであり、〇が実用上好ましい。
〇 :脱墨性が非常に良い(0個)
△× :脱墨性が悪い(1~2個)
× :脱墨性が非常に悪い(3個以上)
【0139】
上記の3つの脱墨性に関する評価を総合して、ISO白色度、きょう雑物面積、きょう雑物個数、3つの評価で全て実用上好ましいものを、脱墨性が良好であると判断し、全ての評価が〇、〇△、△のみで実用上好ましいものを、脱墨性があると判断し、それ以外を脱墨性が悪いと判断する。
〇 :脱墨性が良好である
△ :脱墨性がある
× :脱墨性が悪い
【0140】
【表2】
【0141】
【表2】
【0142】
【表2】
【0143】
以上より、本願発明の易脱墨性積層体が市場において要求されるスクラッチ、密着性などの印刷品質を具備しながら脱墨性を有することがわかった。
【要約】
【課題】本発明の課題は、活性エネルギー線硬化型インキの種類に関係なく、用紙のリサイクル処理における脱墨性に優れる易脱墨積層体及び該積層体の製造方法を提供することである。
易脱墨性積層体の製造方法であって、
紙基材に、水性樹脂を含む水性アンカー剤を塗布し、オーブンにて乾燥させ、紙基材上にアンカー層を有する積層体を得る工程1と、
前記紙基材上にアンカー層を有する積層体のアンカー層上に、活性エネルギー線硬化型インキで印刷し、活性エネルギー線で硬化させ、アンカー層上にインキ層を有する易脱墨性積層体を得る工程2と、
を含む、易脱墨性積層体の製造方法。
【解決手段】紙基材上に、アンカー層と、インキ層とをこの順に有する、易脱墨性積層体であって、アンカー層が水性樹脂を含み、インキ層が活性エネルギー線硬化型インキを、活性エネルギー線で硬化した層である易脱墨性積層体。
【選択図】なし