(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】印刷物、印刷物の製造方法、およびレーザー印刷用印刷媒体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/26 20060101AFI20220511BHJP
D21H 17/63 20060101ALI20220511BHJP
D21H 19/38 20060101ALI20220511BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20220511BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20220511BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220511BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220511BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B41M5/26
D21H17/63
D21H19/38
B32B29/00
B32B27/10
B32B27/32 Z
B32B27/36
B32B27/20 Z
(21)【出願番号】P 2021576104
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2021019477
(87)【国際公開番号】W WO2021235556
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020089439
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020089444
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020089447
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020212464
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020212467
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020212470
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】川浪 悠生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悟志
(72)【発明者】
【氏名】盤指 豪
【審査官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-512535(JP,A)
【文献】特開平11-100796(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087694(WO,A1)
【文献】特開平07-092611(JP,A)
【文献】特表2009-530507(JP,A)
【文献】特開2006-076271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/26 - 5/52
B32B 7/023
B32B 27/00 - 27/44
C09D 11/00 - 11/54
D21H 17/00 - 17/70
D21H 19/00 - 19/84
D21H 27/00 - 27/42
G09F 3/00 - 3/02
B31B 50/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンを含有する
レーザー印刷可能領域を有する紙であるシート媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する
レーザー印刷領域を有し、
酸化チタンは、シート媒体中に内添され、
シート媒体中の
レーザー印刷可能領域における酸化チタンの含有量が1.0質量%以上であり、前記紙を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.5mm以上3.0mm以下であり、前記紙を構成するパルプの平均繊維幅が14.0μm以上35.0μm以下であり、前記紙の坪量が20g/m
2以上であり、
レーザー印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下である、
レーザー印刷物。
【請求項2】
前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の
レーザー印刷物。
【請求項3】
前記
レーザー印刷物が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、請求項1または2に記載の
レーザー印刷物。
【請求項4】
前記
レーザー印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の
レーザー印刷物。
【請求項5】
下記条件(A1)~(A3)の少なくとも1つを満たす、請求項4に記載のレーザー印刷物。
条件(A1):前記透明樹脂層を構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、およびデンプンから選択される少なくとも1つである。
条件(A2):前記透明樹脂層は、透明樹脂フィルムがシート媒体上に接着層を介して貼付されてなるか、または、透明樹脂フィルムをシート媒体上にラミネート加工してなる。
条件(A3):前記透明樹脂層の厚みが5μm以上100μm以下である。
【請求項6】
紙であるシート媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、
前記シート媒体に酸化チタンが内添され、
シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が1.0質量%以上であり、前記紙を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.5mm以上3.0mm以下であり、前記紙を構成するパルプの平均繊維幅が14.0μm以上35.0μm以下であり、前記紙の坪量が20g/m
2以上である、
印刷物の製造方法。
【請求項7】
下記条件(B1)~(B5)の少なくとも1つを満たす、請求項6に記載の印刷物の製造方法。
条件(B1):前記照射する紫外線レーザーの出力が0.8W以上である。
条件(B2):前記印刷する工程が、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように紫外線レーザーを照射する工程である。
条件(B3):前記印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する。
条件(B4):シート媒体が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される。
条件(B5):印刷する工程がインラインにて行われる。
【請求項8】
紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域を有する紙であるシート媒体からなるレーザー印刷用印刷媒体であり、
シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が1.0質量%以上であり、前記紙を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.5mm以上3.0mm以下であり、前記紙を構成するパルプの平均繊維幅が14.0μm以上35.0μm以下であり、前記紙の坪量が20g/m
2以上である、
レーザー印刷用印刷媒体。
【請求項9】
前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つである、請求項8に記載のレーザー印刷用印刷媒体。
【請求項10】
前記レーザー印刷用印刷媒体が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、請求項8または9に記載のレーザー印刷用印刷媒体。
【請求項11】
前記印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する、請求項8~10のいずれか1項に記載のレーザー印刷用印刷媒体。
【請求項12】
下記条件(C1)~(C3)の少なくとも1つを満たす、請求項11に記載のレーザー印刷用印刷媒体。
条件(C1):前記透明樹脂層を構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、およびデンプンから選択される少なくとも1つである。
条件(C2):前記透明樹脂層は、透明樹脂フィルムがシート媒体上に接着層を介して貼付されてなるか、または、透明樹脂フィルムをシート媒体上にラミネート加工してなる。
条件(C3):前記透明樹脂層の厚みが5μm以上100μm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物、印刷物の製造方法、およびレーザー印刷用印刷媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造日や出荷日などの日付や、バーコードなどの可変情報を、収容物が収容される容器等の包装体に表示するために、ラベル表示またはインクジェット印刷が行われている。
また、レーザー光照射により印字する方法も提案されており、たとえば、特許文献1には、レーザー光照射により、鮮明な印字が高速で行え、かつ、印字された部分が各種の耐性に優れたレーザー印字用積層体およびその印字体を提供することを目的として、アルミ蒸着紙のアルミ蒸着面上に、白インキ、黒インキおよびオーバープリントニス(OPニス)を塗布して製造したレーザー印刷用積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包装体、ラベル、粘着テープなどの表面への印刷手段として、サーマルプリンタやインクジェットプリンタを用いて包装体表面に直接インキを載せる方法があり、現在多用されている。しかし、サーマルプリンタのインクリボンやインクジェットプリンタのインキ等の消耗品は高価であり、多くの変動情報を印刷するにはランニングコストが高額になるという問題がある。また、これら消耗品の交換を怠ると印刷漏れが発生する場合もある。さらに、UV硬化型インキを用いたオフセット印刷による包装体への変動情報の直接印刷も行われているが、包装体表面の汚れや包装体の厚さむら等によって、印刷カスレや文字欠け等が発生する場合がある。
また、特許文献1に記載の方法では、高速化が可能であるものの、CO2レーザー光の照射によりレーザー光を吸収しやすい上層を除去して、下層を露出し、上層と下層の色の違いから視認可能な文字等を形成する技術であるため、上層はレーザー光を吸収しやすい材料に限定され、逆に下層はレーザー光を吸収しにくく、かつ、上層と色のコントラストの取れる材料に限定される。すなわち、レーザー光を吸収しやすいカーボンブラック系の材料(黒色)が上層となり、酸化チタン系の材料(白色)が下層となり、レーザー光の照射により形成される文字等は、黒字に白い文字となり、視認性に劣る。また、上層を除去する際に、上層のインクが粉塵化して、作業環境の汚染を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、視認性に優れた印刷物、紫外線レーザーを照射することにより印刷物を製造する方法、並びに前記印刷物および印刷物を製造する方法に使用されるレーザー印刷用印刷媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一に、本発明者等は、印刷可能領域における酸化チタンの含有量を特定の値以上とした、特定のシート媒体を使用し、また、印刷領域と非印刷領域の酸化チタンに由来するラマン強度の比を特定の値以下とすることにより、視認性に優れた印刷物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。第一の本発明は以下の<1>~<15>に関する。
第二に、本発明者等は、印刷可能領域として特定の範囲の酸化チタンを含有する塗工層を特定の紙基材上に有する記録媒体を使用し、また、印刷領域と非印刷領域の酸化チタンに由来するラマン強度の比を特定の値以下とすることにより、視認性に優れた印刷物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。第二の本発明は以下の<16>~<32>に関する。
第三に、本発明者等は印刷可能領域における酸化チタンの含有量を特定の値以上とし、ラミネート層中の酸化チタンの含有量を特定の範囲とし、さらに、ラミネート層の厚みを特定の範囲とし、また、印刷領域と非印刷領域の酸化チタンに由来するラマン強度の比を特定の値以下とすることにより、視認性に優れた印刷物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の<33>~<43>に関する。
<1> 酸化チタンを含有する印刷可能領域を有する紙またはフィルムから選択されるシート媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、
酸化チタンは、シート媒体中に内添され、
前記シート媒体が紙であるとき、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が1.0質量%以上であり、前記紙を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.5mm以上3.0mm以下であり、前記紙を構成するパルプの平均繊維幅が14.0μm以上35.0μm以下であり、前記紙の坪量が20g/m2以上であり、
前記シート媒体がフィルムであるとき、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が0.3質量%以上であり、フィルムの厚みが15μm以上であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含み、
印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下である、
印刷物。
<2> 前記シート媒体がフィルムであり、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が0.5質量%以上7.5質量%以下である、<1>に記載の印刷物。
<3> 前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つである、<1>または<2>に記載の印刷物。
<4> 前記印刷物が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、<1>~<3>のいずれか1つに記載の印刷物。
<5> 前記印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の印刷物。
<6> 前記透明樹脂層を構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、およびデンプンから選択される少なくとも1つである、<5>に記載の印刷物。
<7> 前記透明樹脂層は、透明樹脂フィルムがシート媒体上に接着層を介して貼付されてなるか、または、透明樹脂フィルムをシート媒体上にラミネート加工してなる、<5>または<6>に記載の印刷物。
<8> 前記透明樹脂層の厚みが5μm以上100μm以下である、<5>~<7>のいずれか1つに記載の印刷物。
<9> 紙またはフィルムから選択されるシート媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、
前記シート媒体に酸化チタンが内添され、
前記シート媒体が紙であるとき、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が1.0質量%以上であり、前記紙を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.5mm以上3.0mm以下であり、前記紙を構成するパルプの平均繊維幅が14.0μm以上35.0μm以下であり、前記紙の坪量が20g/m2以上であり、
前記シート媒体がフィルムであるとき、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が0.3質量%以上であり、フィルムの厚みが15μm以上であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む、
印刷物の製造方法。
<10> 前記照射する紫外線レーザーの出力が0.8W以上である、<9>に記載の印刷物の製造方法。
<11> 前記印刷する工程が、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように紫外線レーザーを照射する工程である、<9>または<10>に記載の印刷物の製造方法。
<12> 前記印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する、<9>~<11>のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法。
<13> シート媒体が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、<9>~<12>のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法。
<14> 印刷する工程がインラインにて行われる、<9>~<13>のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法。
<15> 紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域を有する紙またはフィルムから選択されるシート媒体からなるレーザー印刷用印刷媒体であり、
前記シート媒体が紙であるとき、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が1.0質量%以上であり、前記紙を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.5mm以上3.0mm以下であり、前記紙を構成するパルプの平均繊維幅が14.0μm以上35.0μm以下であり、前記紙の坪量が20g/m2以上であり、
前記シート媒体がフィルムであるとき、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が0.3質量%以上であり、フィルムの厚みが15μm以上であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む、
レーザー印刷用印刷媒体。
<16> 酸化チタンを含有する印刷可能領域を有する記録媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、
前記記録媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有する塗工層を有し、
前記紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.6mm以上3.5mm以下であり、
前記塗工層中の酸化チタンの含有量が0.6g/m2以上30g/m2以下であり、
前記塗工層中の酸化チタンの含有量をAg/m2、塗工層の厚みをBμmとしたとき、A/Bが0.01以上2.00以下であり、
印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下である、
印刷物。
<17> 前記塗工層の厚みが0.4μm以上30.0μm以下である、<16>に記載の印刷物。
<18> 前記塗工層が、酸化チタンに加え、熱可塑性樹脂を含有する、<16>または<17>に記載の印刷物。
<19> 前記熱可塑性樹脂が、澱粉誘導体、カゼイン、シェラック、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、およびマレイン酸系樹脂よりなる群から選択される、<18>に記載の印刷物。
<20> 前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つである、<16>~<19>のいずれか1つに記載の印刷物。
<21> 前記紙基材を構成するパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合が6%以上16%以下である、<16>~<20>のいずれか1つに記載の印刷物。
<22> 前記記録媒体が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、<16>~<21>のいずれか1つに記載の印刷物。
<23> 前記記録媒体が、塗工層上に、さらに透明樹脂層を有する、<16>~<22>のいずれか1つに記載の印刷物。
<24> 前記透明樹脂層を構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、およびデンプンから選択される少なくとも1つである、<23>に記載の印刷物。
<25> 前記透明樹脂層は、透明樹脂フィルムがシート媒体上に接着層を介して貼付されてなるか、または、透明樹脂フィルムをシート媒体上にラミネート加工してなる、<23>または<24>に記載の印刷物。
<26> 前記透明樹脂層の厚みが5μm以上100μm以下である、<23>~<25>のいずれか1つに記載の印刷物。
<27> 記録媒体に紫外線を照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、
前記記録媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有する塗工層を有し、
前記紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.6mm以上3.5mm以下であり、
前記塗工層中の酸化チタンの含有量が0.6g/m2以上30g/m2以下であり、
前記塗工層中の酸化チタンの含有量をAg/m2、塗工層の厚みをBμmとしたとき、A/Bが0.01以上2.00以下である、
印刷物の製造方法。
<28> 前記照射する紫外線レーザーの出力が0.8W以上である、<27>に記載の印刷物の製造方法。
<29> 前記印刷する工程が、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように紫外線レーザーを照射する工程である、<27>または<28>に記載の印刷物の製造方法。
<30> 前記記録媒体が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、<27>~<29>のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法。
<31> 前記印刷する工程がインラインにて行われる、<27>~<30>のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法。
<32> 紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域を有するレーザー印刷用印刷媒体であり、
前記印刷媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有する塗工層を有し、
前記紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.6mm以上3.5mm以下であり、
前記塗工層中の酸化チタンの含有量が0.6g/m2以上30g/m2以下であり、
前記塗工層中の酸化チタンの含有量をAg/m2、塗工層の厚みをBμmとしたとき、A/Bが0.01以上2.00以下である、
レーザー印刷用印刷媒体。
<33> 酸化チタンを含有する印刷可能領域を有するシート媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、
前記シート媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有するラミネート層を有し、
前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が0.1g/m2以上であり、
前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が1質量%以上45質量%以下であり、
前記ラミネート層の厚みが10μm以上200μm以下であり、
印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下である、
印刷物。
<34> 前記ラミネート層が、酸化チタンを含有する熱可塑性樹脂のフィルムからなる、<33>に記載の印刷物。
<35> 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される、<34>に記載の印刷物。
<36> 前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つである、<33>~<35>のいずれか1つに記載の印刷物。
<37> 前記印刷物が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、<33>~<36>のいずれか1つに記載の印刷物。
<38> シート媒体の印刷可能領域に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、
前記シート媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有するラミネート層を有し、
前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が0.1g/m2以上であり、
前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が1質量%以上45質量%以下であり、
前記ラミネート層の厚みが10μm以上200μm以下である、
印刷物の製造方法。
<39> 前記照射する紫外線レーザーの出力が0.8W以上である、<38>に記載の印刷物の製造方法。
<40> 前記印刷する工程が、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように紫外線レーザーを照射する工程である、<38>または<39>に記載の印刷物の製造方法。
<41> 印刷物が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、<38>~<40>のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法。
<42> 印刷する工程がインラインにて行われる、<38>~<41>のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法。
<43> 紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域を有するシート媒体からなるレーザー印刷用印刷媒体であって、
前記シート媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有するラミネート層を有し、
前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が0.1g/m2以上であり、
前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が1質量%以上45質量%以下であり、
前記ラミネート層の厚みが10μm以上200μm以下である、
レーザー印刷用印刷媒体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、視認性に優れた印刷物、紫外線レーザーを照射することにより印刷物を製造する方法、並びに前記印刷物および印刷物を製造する方法に使用されるレーザー印刷用印刷媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例で印字したバーコードである。
【
図2】
図2は、第一の印刷物におけるラマン強度測定の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、第二の印刷物におけるラマン強度測定の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、第三の印刷物におけるラマン強度測定の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、印刷領域を有する液体容器の一例の概念斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一の印刷物]
本発明の第一の印刷物(以下、単に「第一の印刷物」ともいう)は、酸化チタンを含有する印刷可能領域を有する紙またはフィルムから選択されるシート媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、酸化チタンは、シート媒体中に内添され、前記シート媒体が紙であるとき、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が1.0質量%以上であり、前記紙を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.5mm以上3.0mm以下であり、前記紙を構成するパルプの平均繊維幅が14.0μm以上35.0μm以下であり、前記紙の坪量が20g/m2以上であり、前記シート媒体がフィルムであるとき、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が0.3質量%以上であり、フィルムの厚みが15μm以上であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含み、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下である。
本発明によれば、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、視認性に優れた印刷物を提供することができる。また、本発明の印刷物は、印刷(印字)の鮮明さに優れ、また、耐溶剤性にも優れる。なお、印字鮮明性(印字の鮮明性)に優れることを、視認性に優れるともいう。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。本発明では、少なくとも、酸化チタンが内添され、酸化チタンの含有量が特定量以上である印刷可能領域を有する紙またはフィルムから選択されるシート媒体を有する印刷媒体を使用する。印刷領域が変色された酸化チタンを含有し、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比を0.70以下とすることにより、視認性に優れた印刷物が得られると考えられる。前記酸化チタンの変色は、シート媒体に含有された酸化チタンのイオン価数が4価から3価に変化し、酸素欠陥が生じることで、白色から黒色へと変化し、これにより、視認可能となっていると考えられる。さらに、前記イオン価数の変化は、ラマン強度の変化として検出可能であり、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比を特定の値以下にすることにより、視認性の高い印刷領域が得られる。酸化チタンのイオン価数は、酸化チタンのバンドギャップに相当する光エネルギーを照射する際に変化するものと考えられる。酸化チタンのバンドギャップは結晶系によって異なるが、一般に3.0~3.2eV程度であり、これに相当する光の波長は420nm以下である。そのため、420nmを超える波長のレーザー光(たとえば532nm、1064nm、10600nm)を用いても本発明のような酸化チタンのイオン価数変化に起因する印刷を施すことは困難である。
また、シート媒体が含有する酸化チタンにより発色しているため、耐溶剤性にも優れると考えられる。
なお、酸化チタンの変色は、紫外線レーザーの照射により行われることが好ましい。なお、紫外線レーザーの照射により、発煙が生じる場合がある。紫外線レーザーの照射により酸化チタンが加熱されると、周辺の水分が瞬間的に気化することで、変色した酸化チタンや、紙粉がシート媒体から脱離する現象が生じると考えられ、このような脱離に伴い、煙が発生すると考えられる。シート媒体が水分を含有する場合に発煙が問題となることから、シート媒体が紙シート媒体である場合に、発煙が生じる傾向にある。
本実施形態において、印刷可能領域とは、シート媒体が含有する酸化チタンの変色、好ましくは紫外線レーザーの照射により、紫外線レーザーにより照射された部分の酸化チタンが白色から黒色に変色することで印刷が可能である領域(部分)を意味し、印刷領域とは、印刷可能領域の中で、実際に酸化チタンが変色している箇所、好ましくは紫外線レーザーの照射により酸化チタンが変色し、視認可能となっている箇所、すなわち、紫外線レーザーの被照射部分を意味する。また、非印刷領域とは、印刷可能領域の中で、酸化チタンが変色していない領域(部分)、たとえば、紫外線レーザーが照射されていない領域(部分)を意味する。
以下、本発明の第一の印刷物についてさらに詳細に説明する。
【0010】
〔シート媒体〕
印刷対象となる印刷媒体は、少なくともシート媒体を有し、該シート媒体は、酸化チタンを含有する印刷可能領域を有する紙またはフィルムから選択され、該シート媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有する。本発明において、印刷媒体は、酸化チタンを含有するシート媒体自体であってもよく、該シート媒体上に透明樹脂層が設けられていてもよい。すなわち、「印刷媒体」とは、シート媒体そのもの、またはシート媒体上に透明樹脂層が設けられた態様の双方を意味する。
シート媒体が紙である場合、印刷可能領域における酸化チタンの含有量は、十分な印字濃度を得る観点から、1.0質量%以上、好ましくは8.0質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、よりさらに好ましくは35質量%以上であり、そして、印字濃度が頭打ちとなり、必要量以上の酸化チタンを含有させることによるコストアップを抑制する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
また、シート媒体がフィルムである場合、印刷可能領域における酸化チタンの含有量は、十分な印字濃度を得る観点から、0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上であり、そして、印字濃度が頭打ちとなり、必要量以上の酸化チタンを含有させることによるコストアップを抑制する観点、フィルムの強度低下を抑制する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、よりさらに好ましくは25質量%以下、よりさらに好ましくは15質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは7.5質量%以下である。
なお、シート媒体の少なくとも印刷可能領域が酸化チタンを含有していればよく、印刷を行わない領域において、酸化チタンの含有量が上記下限未満である領域が存在していてもよい。製造の簡易性の観点から、シート媒体の全領域が酸化チタンを上記の下限値以上含有することが好ましい。
【0011】
<酸化チタン>
酸化チタンは、シート媒体に内添(内包)されており、シート媒体原料に酸化チタンを添加して、抄紙またはシート化することにより得られたものであることがより好ましい。
【0012】
シート媒体が含有する酸化チタンは、組成式TiO2で表され、二酸化チタン、またはチタニアとも呼ばれる。
酸化チタンは、いずれも結晶構造でもよく、また、アモルファスであってもよく、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、およびアモルファス酸化チタンから選択される少なくとも1つであることが好ましく、入手容易性および安定性の観点から、ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ルチル型酸化チタンであることがさらに好ましい。
酸化チタンの結晶形は、公知の方法で決定することができ、具体的には、ラマンスペクトル、XRDパターンの解析などにより決定することができる。たとえば、ラマンスペクトルから同定する場合には、一般的には、ルチル型では、447±3cm-1、609cm-1にピークが確認され、アナターゼ型では、395±3cm-1、516±3cm-1、637±3cm-1にピークが確認される。
酸化チタンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
酸化チタンの形状は特に限定されず、不定形、球状、棒状、針状等の、いずれの形状であってもよい。
酸化チタンが不定形または球状である場合、酸化チタンの粒子径は特に限定されないが、抄紙工程で紙に留めることが容易である観点、表面平滑性に優れるシートを得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.10μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上であり、そして、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下である。
紙およびフィルムに内添された酸化チタンの粒子径は、マッフル炉でシート媒体または印刷物を燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク株式会社製、S5200など)から得られるSEM画像から算出する。
走査型電子顕微鏡に供試する灰分のサンプルは、出力50Wの超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150など)で5分間かけてエタノールに分散させ0.01質量%スラリーを得た後、アルミ皿へ0.1mLをキャストし、60℃で乾燥させて作製することができる。隣り合う粒子と明瞭に見分けられるものを目視で選択し、1つの粒子の長径を粒子径とする。この際、1次粒子と凝集状態の2次粒子が混在していても明瞭に見分けられる場合はそれぞれを1つの粒子としてカウントし、無作為に選択した100個の粒子の平均径を粒子径とする。SEM画像観察時の倍率は酸化チタンの粒子径によって適宜選択すればよいが、20000倍程度が好ましい。また、酸化チタン以外の粒子を含む場合、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製、EMAXなど)を用いてチタン元素の含まれる粒子を測定する。
なお、原料として使用する酸化チタン粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製、LA-300等)によって測定されるメディアン径として求めることができる。測定条件は、以下の条件が好ましい。なお、レーザー回折・散乱式粒度分布計から求められる平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から算出する粒子径と±50%程度乖離する場合がある。
分散媒:イオン交換水、
測定粒子屈折率:2.75-0.01i、
溶剤屈折率:1.333、
内蔵超音波照射(30W):3分、
循環速度:3
【0014】
また、酸化チタンが針状である場合、酸化チタンの長径は、特に限定されないが、抄紙工程で紙に留めることが容易である観点、表面平滑性に優れるシートを得る観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは15.0μm以下である。また、短径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、そして、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、酸化チタンが針状である場合、アスペクト比(長径/短径)は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは30以下である。
紙およびフィルムに内添された酸化チタンの長径、短径は、シート媒体または印刷物をマッフル炉で燃焼して得た灰分を上記と同様に処理して、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク株式会社製、S5200など)から得られるSEM画像から測定することができる。走査型電子顕微鏡に供試する粉体は、上記と同様の方法で得られる。
また、原料として使用する酸化チタンの長径および短径についても、走査型電子顕微鏡から得られるSEM画像から測定することができる。
【0015】
<紙>
シート媒体が紙である場合、該シート媒体を紙シート媒体ともいう。
紙シート媒体を構成する原料パルプとしては、たとえば、木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、竹、バガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。原料パルプは、上記の1種を単独でも2種以上混合して用いてもよい。なお、原料パルプに、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、ポリノジック繊維等の再生繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機繊維を混用してもよい。
原料パルプは、入手のしやすさという観点から、木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、原料パルプは、木材パルプの中でも、地合いの均一性の観点から、好ましくは化学パルプであり、より好ましくはクラフトパルプであり、さらに好ましくはユーカリ、アカシア等の広葉樹クラフトパルプ、およびマツ、スギ等の針葉樹クラフトパルプから選択される1種以上であり、よりさらに好ましくは広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から選択される1種以上である。これらの中でも、LBKPの比率が多い方がより好ましく、たとえば、LBKPとNBKPの混合比率LBKP/NBKPは、75/25~100/0(質量%)とすることがさらに好ましい。
【0016】
紙シート媒体を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、0.5mm以上、好ましくは0.6mm以上であり、そして、3.0mm以下、好ましくは2.8mm以下、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下、よりさらに好ましくは1.5mm以下、よりさらに好ましくは1.0mm以下である。
紙シート媒体を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が3.0mm以下であると、パルプ同士が密に絡まり合うことで、紙シート媒体の空隙が減少し、紫外線レーザー照射の際に、酸化チタンの飛散を抑制することができ、発煙が抑制され、視認性に優れた印刷物が得られるので好ましい。また、長さ加重平均繊維長が0.5mm以上であると、紙シート媒体としての強度が向上すると共に、紫外線レーザー照射時に、繊維が紙シート媒体から脱落しにくく、紙粉の発生が抑制され、発煙量が抑制され、印字鮮明性に優れるので好ましい。
紙シート媒体を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、実施例に記載の方法により測定される。
【0017】
紙シート媒体を構成するパルプの平均繊維幅は、14.0μm以上であり、好ましくは15.0μm以上、さらに好ましくは15.5μm以上、よりさらに好ましくは16.0μm以上であり、そして、35.0μm以下であり、好ましくは33.0μm以下、より好ましくは31.0μm以下、さらに好ましくは28.0μm以下、よりさらに好ましくは24.0μm以下、よりさらに好ましくは21.0μm以下である。
紙シート媒体を構成するパルプの平均繊維幅が35.0μm以下であると、パルプ同士が密に絡まり合うことで、紙シート媒体の空隙が減少し、紫外線レーザー照射の際に、酸化チタンの飛散を抑制することができ、発煙が抑制され、視認性に優れた印刷物が得られるので好ましい。また、平均繊維幅が14.0μm以上であると、紙シート媒体としての強度が向上すると共に、紫外線レーザー照射時に、繊維が紙シート媒体から脱落しにくく、紙粉の発生が抑制され、発煙量が抑制され、印字鮮明性に優れるので好ましい。
紙シート媒体を構成するパルプの平均繊維幅は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0018】
紙シート媒体を構成するパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合は、好ましくは6.2%以上、より好ましくは6.5%以上、さらに好ましくは6.8%以上であり、そして、好ましくは30%以下、より好ましくは24%以下、さらに好ましくは16%以下である。
微細繊維の本数割合が6.2%以上であると、微細繊維が繊維間の空隙を埋める形でシートに配置されるため、紫外線レーザー照射時の酸化チタンの飛散が抑制され、その結果、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制され、視認性が向上するので好ましい。また、微細繊維の本数割合が30%以下であると、微細繊維の増加により、紫外線レーザー照射時に微細繊維が飛散することによる発煙が抑制されるので好ましい。
紙シート媒体を構成する繊維のパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合は、紙シート媒体を実施例に記載の方法にて離解し、得られたパルプスラリーの繊維長を繊維長測定器(たとえば、バルメット社製、型式FS-5、UHDベースユニット付き)にて測定して、算出する。繊維長が0.2mm以下であり、かつ、繊維幅が75μm以下の繊維を微細繊維とし、測定したパルプの本数に対する、微細繊維の本数割合を算出する。
【0019】
紙シート媒体に用いられる木材パルプの叩解度は、カナダ標準ろ水度(Canadian standard freeness;CSF)が150~500mLであることが好ましい。木材パルプの叩解度がこの範囲にあると、酸化チタンを内添した際の均一性に優れる。ここで、CSFは、JIS P 8121-2:2012によるカナダ標準ろ水度のことである。
【0020】
紙シート媒体は、酸化チタン粒子と必要に応じて内添剤を添加したパルプスラリーを抄紙することにより得られる。
紙シート媒体には、必要に応じて、酸化チタン以外の填料を適宜添加してもよい。酸化チタン以外の填料としては、たとえば、カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等を例示することができる。
【0021】
紙シート媒体中にはパルプや酸化チタン、填料の他に、サイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤(たとえば、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン)、歩留向上剤(たとえば、硫酸バンド)、濾水性向上剤、pH調整剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、染料・顔料等の公知の抄紙用内添剤を必要に応じて添加することができる。
サイズ剤としては、たとえば、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤などが挙げられる。
【0022】
紙シート媒体の坪量は、視認性の観点から20g/m2以上であり、好ましくは40g/m2以上、より好ましくは50g/m2以上、さらに好ましくは60g/m2以上であり、そして、好ましくは600g/m2以下、より好ましくは400g/m2以下、さらに好ましくは200g/m2以下、よりさらに好ましくは100g/m2以下である。
紙シート媒体の坪量が20g/m2以上であると、紙シート媒体の不透明度が高く、視認性の高い印刷物が得られる。また、紙シート媒体の坪量の上限は、用途等により、要求される強度等に応じて適宜選択すればよい。
坪量はJIS P 8124:2011に規定される方法で測定する。
【0023】
紙シート媒体の厚みは特に限定されないが、シート媒体に腰を持たせ、ハンドリング性を良好とする観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは40μm以上であり、そして、経済性およびハンドリング性を良好とする観点から、好ましくは700μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは400μm以下である。紙シート媒体の厚みはJIS P 8118:2014記載の方法で測定することができる。
【0024】
紙シート媒体または紙シート媒体を有する印刷媒体の白色度は、用途により適宜選択すればよく、特に限定されないが、印刷領域と非印刷領域とのコントラストが付きやすく、視認性が向上する観点から、好ましくは9%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上であり、そして、製造容易性の観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは92%以下である。紙シート媒体の白色度は分光白色度測色計(スガ試験機株式会社製)を使用してJIS P 8148:2018に記載の方法で測定することができる。
【0025】
紙シート媒体の抄紙においては、公知の湿式抄紙機、たとえば長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機を適宜選択して使用することができる。次に、抄紙機によって形成された紙層をフェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させる。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
【0026】
また、上記のようにして得られた紙シート媒体に、カレンダーによる表面処理を施して厚みやプロファイルの均一化を図り、印刷適性の向上を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
【0027】
<フィルム>
シート媒体がフィルムである場合、該シート媒体をフィルム媒体ともいう。
フィルム媒体を構成する樹脂としては、特に限定されず、酸化チタンを内包させてフィルム状に加工可能であればよく、公知の熱可塑性樹脂の中から、適宜選すればよいが、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
これらの中でも、フィルム媒体を構成する樹脂は、汎用的に使用することができ、かつ、紫外線の透過率が高く、フィルム媒体の内部まで酸化チタンの変色を可能とする観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステルを含むことが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。フィルム媒体を構成する樹脂は、ポリオレフィンであることがよりさらに好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1つであることがよりさらに好ましい。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
フィルム媒体は、従来公知の製造方法から適宜選択して製造すればよく、たとえば、溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法等の中から、適宜選択すればよい。
フィルム媒体の印刷領域における酸化チタンの含有量が上記の範囲内となるように、上述した樹脂に酸化チタンを混合して、フィルムを作製すればよい。
フィルム媒体として、酸化チタンの含有量が本発明の範囲である合成紙を使用してもよい。
【0029】
フィルム媒体の厚みは、強度に優れた印刷物を得る観点から、15μm以上であり、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは50μm以上、よりさらに好ましくは55μm以上であり、そして、好ましくは700μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは350μm以下、よりさらに好ましくは250μm以下である。
なお、フィルム媒体の厚みが上記範囲であると、フィルム媒体に紫外線レーザーを照射した場合に、フィルムの表面付近での樹脂の劣化が観察されるが、フィルム媒体の厚みが十分であるため、印刷物の強度の低下が抑制されるので好ましい。
【0030】
〔ラマン強度〕
本発明の第一の印刷物において、印刷領域とは、印刷可能領域において、変色された酸化チタンを含有する領域(部分)を意味し、紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)であることが好ましい。非印刷領域とは、印刷可能領域において印刷されていない領域(部分)を意味する。
印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)が、0.70以下である。ラマン強度の比を上記範囲内とすることにより、視認性に優れる印刷物が得られる。
上記のラマン強度の比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)は、酸化チタンとしてルチル型の酸化チタンを使用した場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、447±3cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。また、酸化チタンとしてアナターゼ型の酸化チタンを使用する場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、516±3cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。
なお、ルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンが共存する場合には、ルチル型の酸化チタンに由来するラマン強度で対比することとする。
【0031】
本発明の印刷物は、非印刷領域が白色であり、印刷領域が黒色であることが好ましい。
非印刷領域は、マンセル表色系における明度が10番、すなわち、白色であることが好ましい。一方、印刷領域は、マンセル表色系における0番~8番のいずれかであることが好ましく、0~6番であることがより好ましく、0~4番であることがさらに好ましい。
上記のマンセル表色系における色を得るために、シート媒体における酸化チタンの含有量、シート媒体のその他の特性(紙シート媒体である場合の紙シート媒体を構成するパルプの長さ加重平均繊維長、平均繊維幅、紙シート媒体の米坪;フィルム媒体である場合の樹脂種、フィルム媒体の厚み等)、紫外線レーザーの照射条件(たとえば、平均出力、繰返し周波数、波長など)を適宜調整することが好ましい。
【0032】
本発明の第一の印刷物は、包装体、ラベル、または粘着テープなどに好適に使用される。
包装体としては、段ボールのライナー原紙(特に、最表面のライナー原紙)、外装箱、牛乳パック、紙カップ等の飲料用の液体容器(好ましくは飲料用の液体紙容器)、食品トレー、スキンパックが例示され、ラベルとしては、ラベル原紙、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
図5に示すように、包装体の一例としての液体容器10は、たとえば、表面に印刷領域20を有する。印刷領域20には紫外線レーザーを照射され、日付などの文字が印字されている。
【0033】
〔透明樹脂層〕
本発明の印刷物は、シート媒体の印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有することも好ましい。
すなわち、印刷可能領域が酸化チタンを所定量以上含有するシート媒体に、さらに予め透明樹脂層が設けられた印刷媒体を使用することが好ましい。
上述した構成とすることにより、印字濃度が高く、より鮮明な印刷画像が得られることを見出した。その詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように推定される。
紫外線レーザーの照射により酸化チタンが加熱されると、周辺の水分が瞬間的に気化することで、変色した酸化チタンがシート媒体から脱離する現象が生じると考えられる。シート媒体上に予め透明樹脂層を設けておくことにより、上述した変色した酸化チタンの脱離が抑制され、印字濃度が高くなると考えられる。
シート媒体が水分を含有する場合に透明樹脂層を設ける効果が高い観点から、シート媒体が紙シート媒体である場合に、透明樹脂層を有することが特に好ましい。
【0034】
透明樹脂層の全光線透過率は、80%以上であり、好ましく85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%以上であり、そして、100%以下である。上限は特に限定されない。
全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される。
【0035】
透明樹脂層を構成する樹脂は、全光透過率が80%以上であり、シート基材上に設けることができれば特に限定されないが、透明性および透明樹脂層を設けることが容易である観点から、透明樹脂層とシート媒体とを接着剤層とを介して貼付するか、またはラミネート加工により積層する場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、およびデンプンから選択される少なくとも1つであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンであることがさらに好ましく、ポリエチレンであることが特に好ましい。
また、透明樹脂層を塗工により設ける場合には、アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂などが例示される。
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸と、そのアルキルエステル、スチレン、(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸、エチレン、プロピレン等のその他のモノマーとを共重合した樹脂が例示され、具体的には、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂などが例示され、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。
【0036】
透明樹脂層とシート媒体とは、いずれの方法により積層されていてもよく、特に限定されないが、製造容易性の観点から、透明樹脂層とシート媒体とを接着剤層とを介して貼付するか、またはラミネート加工するか、透明塗料を液状塗料の形で塗工することが好ましい。
局所的に透明樹脂層を設ける場合には、製造容易性の観点から、接着剤を介して貼付することが好ましい。また、広範囲に透明樹脂層を設ける場合には、ラミネート加工することが好ましい。
なお、接着剤層としては特に限定されず、公知の接着剤層から適宜選択して用いればよい。具体的には、特開2012-57112号公報の粘着剤層が例示される。
【0037】
透明樹脂層の厚みは特に限定されないが、鮮明な印字を得る観点、および印刷物および印刷媒体のハンドリング性の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm、さらに好ましくは15μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0038】
[第一の印刷物の製造方法]
本発明の第一の印刷物の製造方法は、紙またはフィルムから選択されるシート媒体自身、またはシート媒体にさらに透明樹脂層を有する印刷媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、前記シート媒体に酸化チタンが内添され、前記シート媒体中の酸化チタンの含有量が所定量以上である。
本発明の第一の印刷物の製造方法に使用されるシート媒体および印刷媒体としては、前記第一の印刷物におけるシート媒体および印刷媒体と同様のシート媒体および印刷媒体が例示され、好ましい範囲も同様である。また、本発明の第一の印刷物の製造方法において、少なくとも紫外線レーザー照射領域の酸化チタン含有量が所定量以上であればよく、非照射領域の酸化チタン含有量は特に限定されないが、酸化チタンがシート媒体に内添されていることから、非照射領域においても、酸化チタン含有量が上述した所定量以上であることが好ましい。
【0039】
紫外線レーザーの照射は、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように、紫外線レーザーを照射することが好ましい。
印刷領域および非印刷領域のラマン強度については、印刷物において上述した通りである。
【0040】
〔紫外線レーザーの照射条件〕
紫外線レーザーの波長としては、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは370nm以下、より好ましくは365nm以下、さらに好ましくは360nm以下であり、そして、好ましくは260nm以上、より好ましくは340nm以上、さらに好ましくは350nm以上である。
【0041】
紫外線レーザーの平均出力は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは0.3W以上、より好ましくは0.8W以上、さらに好ましくは1.2W以上、よりさらに好ましくは1.8W以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは30W以下、より好ましくは25W以下、さらに好ましくは20W以下、よりさらに好ましくは15W以下、よりさらに好ましくは10W以下、よりさらに好ましくは6W以下である。
【0042】
紫外線レーザーの繰返周波数は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは10kHz以上、より好ましくは20kHz以上、さらに好ましくは30kHz以上であり、そして、好ましくは100kHz以下、より好ましくは80kHz以下、さらに好ましくは60kHz以下である。
【0043】
紫外線レーザーのスポット径は、鮮明な画像を得る観点および印刷容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは240μm以下、さらに好ましくは180μm以下、さらに好ましくは120μm以下である。
【0044】
紫外線レーザーのスキャンスピードは、高速印刷および印刷領域の視認性の観点から、好ましくは500mm/sec以上、より好ましくは1000mm/sec以上、さらに好ましくは2000mm/sec以上であり、そして、好ましくは7000mm/sec以下、より好ましくは6000mm/sec以下、さらに好ましくは5000mm/sec以下である。
【0045】
紫外線レーザーのラインピッチは、鮮明な画像を得る観点、および装置の入手容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
【0046】
〔第一の印刷物の製造方法の態様〕
本発明の第一の印刷物の製造方法は、種々の態様で行うことができる。
以下に、本発明の第一の印刷物の製造方法が適用可能な種々な態様について例示するが、本発明の第一の印刷物の製造方法は、下記の態様に限定されるものではない。印刷する情報は特に限定されないが、可変情報であることが好ましい。
本発明の第一の印刷物の製造方法は、インラインで行われることが好ましい。
(1)包装体への直接印刷
本発明の第一の印刷物の製造方法の第一の実施態様は、酸化チタンを含有する包装体に情報を印刷する方法であって、梱包ライン上を移動中、または間欠停止中の包装体に直接紫外線レーザーにて印刷する工程を有する。
第一の実施態様の印刷物の製造方法は、酸化チタンを所定量以上含有するシート媒体を有する印刷媒体にて包装体を作製し、紫外線レーザーにて直接印刷する。なお、少なくとも包装体の最外層が、酸化チタンを所定量以上含有するシート媒体を有する印刷媒体にて作製されていればよい。
また、包装体としては、段ボール、箱等が例示され、該包装体の側面または上面に紫外線レーザーにて直接印刷することが好ましい。
【0047】
(2)ラベルへの印刷
本発明の第一の印刷物の製造方法の第二の実施態様は、酸化チタンを含有するラベルに情報を印刷する方法である。該ラベルの印刷面を構成する印刷媒体が、酸化チタンを所定量以上含有するシート媒体を有する。
印刷されたラベルは、ラベル貼り付け装置を用いて包装体にラベルを貼付することが好ましい。ラベル貼り付け装置としては、各種のラベル貼り付け装置が提案されている。
第1のラベル貼り付け装置としては、ロール状に巻いたラベル原紙に接着剤を付与した後に物品に貼付する。より具体的には、ロール状に巻いたラベル原紙を1枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、この切断手段によって切断されたラベル原紙を、接着剤が塗布されたラベル原紙保持体によって受取り、このラベル原紙の裏面に接着剤を付着させる糊付け搬送手段と、この糊付け搬送手段から接着剤が付与されたラベル原紙(ラベル)を受け取って容器等の物品に貼付ける貼着手段とを備えたロールラベラにおいて、上記切断手段と糊付け搬送手段との間に、外面にラベル保持面を有する回転搬送手段を設けたロールラベラが例示され、特開平6-64637号公報が例示される。
また、ロール状に巻いたラベル原紙を一枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、貼付ロールに受け渡す受渡ロールと、貼付ロールに保持されたラベル原紙に糊を付与する糊付けロールとを有するロールラベラや、前記受渡ロールを不要とした態様が例示される。
紫外線レーザーの照射は、ロール状に巻いたラベル原紙を所定の長さに切断する前、または切断後であって次のロール等への受け渡し前であることが好ましい。ロールラベラの態様に合わせて、ロール状に巻いたラベル原紙の表面または裏面が、包装体に貼付した際の表面または裏面となるため、これに合わせて紫外線レーザーの照射を行う。
【0048】
第2のラベル貼り付け装置は、ラベルとして、粘着ラベルロールを使用する。
剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合には、たとえば、粘着ラベルと剥離紙を分離する剥離紙分離手段と、剥離紙が分離された粘着ラベルを受け取る受渡ロールと、受渡ロールから粘着ラベルを吸引して、物品(包装体)に貼付する貼付ロールとを有する貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、剥離紙を分離する前、または剥離紙分離後であって貼付ロールに担持される前に行うことが好ましい。
また、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルと剥離紙とを分離する機構を有し、分離直後にラベルを貼付する機構を有し、セットされた粘着ラベルロールから剥離紙を分離するまでの間に紫外線レーザーにより印刷する装置が例示される。上記の粘着ラベルの貼付方法は、流し貼りとも呼ばれる。
さらに、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルから剥離紙を分離する機構を有し、粘着ラベルを物品(包装体)に貼付する機構を有し、前記貼付する機構が、シリンジ方式、エアジェット方式、またはロボットアーム方式であるラベル貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、セットされた剥離紙付きの粘着ラベルロールから、剥離紙を分離するまでの間で行われることが好ましい。
【0049】
ラベルとして、ライナレス粘着ラベルを使用してもよい。ライナレス粘着ラベルは、剥離紙のないラベルであり、剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合に比して、1ロールのラベル枚数が多く、剥離紙が存在しないため、安価であるという特徴を有する。
ライナレス粘着ラベルを使用したラベル貼り付け装置としては、ライナレスラベルロールをセットする機構と、ライナレスラベルを1枚ずつに切断する切断機構と、切断されたライナレスラベルを物品(包装体)に貼付する貼付機構を有し、前記貼付機構が、シリンダ方式またはロボットアーム方式である装置が例示される。紫外線レーザーの照射による印刷は、ライナレスラベルロールをセットする機構から切断機構までの間、または、切断されたライナレスラベルが貼付機構に送られる間であることが好ましい。
【0050】
第3のラベル貼り付け装置は、酸化チタンを所定量以上含有するシート媒体を有する印刷媒体を物品(包装体)に貼付した後に、紫外線レーザーにて印刷する。
ラベルの貼付の方法としては、上述した第1の装置および第2の装置が参照される。
【0051】
(3)粘着テープへの印刷
本発明の第一の印刷物の製造方法の第三の実施態様は、酸化チタンを所定量以上含有するシート媒体を有する印刷媒体を粘着テープとする態様である。
すなわち、第三の実施態様の印刷物の製造方法は、前記シート媒体を有する印刷媒体から作製された粘着テープを物品(包装体)に貼付する工程を有し、前記貼付する工程の前、または貼付する工程の後に、紫外線レーザーにより印刷する工程を有する。
また、段ボール封緘機に紫外線レーザーによる印字装置を組み込んだ印刷装置を使用してもよい。具体的には、粘着テープ巻取りをセットする機構と、段ボールを搬送用のコンベアを有し、段ボールのフラップを折り込む機構と、粘着テープを貼付して段ボールを封緘する機構を有し、粘着テープを貼付する間、または貼付した後に、粘着テープに紫外線レーザーにて印刷する機構を有する。
【0052】
本発明の第一の印刷物および第一の印刷物の製造方法は、上記の態様に限定されるものではなく、印刷が求められる各種用途に応用可能である。
【0053】
[第一のレーザー印刷用印刷媒体]
本発明の第一のレーザー印刷用印刷媒体は、紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域を有する紙またはフィルムから選択されるシート媒体からなり、前記シート媒体が紙であるとき、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が1.0質量%以上であり、前記紙を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.5mm以上3.0mm以下であり、前記紙を構成するパルプの平均繊維幅が14.0μm以上35.0μm以下であり、前記紙の坪量が20g/m2以上であり、前記シート媒体がフィルムであるとき、シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が0.3質量%以上であり、フィルムの厚みが15μm以上であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む。本発明の第一のレーザー印刷用印刷媒体に紫外線レーザーを照射することにより、印刷が可能である。
前記第一のレーザー印刷用印刷媒体の好ましい態様は、上述した第一の印刷物におけるシート媒体の好ましい態様と同様であり、また、前記第一のレーザー印刷用印刷媒体への印刷方法の好ましい態様は、上述した第一の印刷物の製造方法と同様である。
【0054】
[第二の印刷物]
本発明の第二の印刷物(以下、単に「第二の印刷物」ともいう)は、酸化チタンを含有する印刷可能領域を有する記録媒体(以下、「印刷媒体」ともいう)上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、前記記録媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有する塗工層を有し、前記紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.6mm以上3.5mm以下であり、前記塗工層中の酸化チタンの含有量が0.6g/m2以上30g/m2以下であり、前記塗工層中の酸化チタンの含有量をAg/m2、塗工層の厚みをBμmとしたとき、A/Bが0.01以上2.00以下であり、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下である。
本発明によれば、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有する印刷物を提供することができる。また、本発明の印刷物は、印刷(印字)の鮮明さに優れ、また、耐溶剤性にも優れる。なお、印字鮮明性(印字の鮮明性)に優れることを、視認性に優れるともいう。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。本発明では、基材上に、印刷可能領域として酸化チタンの含有量が0.6g/m2以上30g/m2以下である塗工層を有する記録媒体を使用する。印刷領域が変色された酸化チタンを有し、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比を0.70以下とすることにより、視認性に優れた印刷物が得られると考えられる。前記酸化チタンの変色は、塗工層が含有する酸化チタンのイオン価数が4価から3価に変化し、酸素欠陥が生じることで白色から黒色へと変化したものであり、これにより、視認可能となっていると考えられる。さらに、前記イオン価数の変化は、ラマン強度の変化として検出可能であり、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比を特定の値以下とすることにより、視認性の高い印刷物が得られる。酸化チタンのイオン価数は、酸化チタンのバンドギャップに相当する光エネルギーを照射する際に変化するものと考えられる。酸化チタンのバンドギャップは結晶系によって異なるが、一般に3.0~3.2eV程度であり、これに相当する光の波長は420nm以下である。そのため、420nmを超える波長のレーザー光(たとえば532nm、1064nm、10600nm)を用いても本発明のような酸化チタンのイオン価数変化に起因する印刷を施すことは困難である。
また、塗工層が含有する酸化チタンにより発色しているため、耐溶剤性にも優れると考えられる。
なお、酸化チタンの変色は、紫外線レーザーの照射により行われることが好ましい。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長を特定の範囲とすることにより、塗工ムラが抑制され、印字鮮明性に優れた印刷物が得られると考えられる。
さらに、塗工層中の酸化チタンの含有量をAg/m2、塗工層の厚みをBμmとしたとき、A/Bが0.01以上2.00以下であることにより、塗工層中の酸化チタンの濃度が適度な範囲に制御され、その結果、紫外線レーザーの照射によって、照射部の酸化チタンの飛散が抑制され、より視認性に優れた印刷物が得られると考えられる。
本実施形態において、印刷可能領域とは、塗工層が含有する酸化チタンの変色により、好ましくは紫外線レーザーの照射により、紫外線レーザーにより照射された部分の酸化チタンが白色から黒色に変色することで印刷が可能である領域(部分)を意味し、印刷領域とは、印刷可能領域の中で、実際に酸化チタンが変色している箇所、好ましくは紫外線レーザーの照射により酸化チタンが変色し、視認可能となっている箇所、すなわち、紫外線レーザーの被照射部分を意味する。また、非印刷領域とは、印刷可能領域の中で、酸化チタンが変色していない領域(部分)、たとえば、紫外線レーザーが照射されていない領域(部分)を意味する。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0055】
〔記録媒体〕
印刷対象となる記録媒体は、酸化チタンを含有する印刷可能領域を有し、該印刷可能領域の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有する。
前記記録媒体は、紙基材上に、酸化チタンを含有する塗工層を有する。なお、塗工層は少なくとも紙基材の片面に形成されていればよく、両面に形成されていてもよいが、記録媒体が片面のみに塗工層を有することが好ましい。また、記録媒体の全面に塗工層を有していてもよいが、印刷を行いたい、一部の領域(部分)のみに塗工層を有していてもよい。
【0056】
<塗工層>
印刷可能領域を構成する塗工層は、酸化チタンの含有量が0.6g/m2以上30g/m2以下である。
塗工層中の酸化チタンの含有量は、十分な印刷濃度を得る観点から0.6g/m2以上であり、好ましくは0.8g/m2以上、より好ましくは1.0g/m2以上、さらに好ましくは1.2g/m2以上であり、そして、印刷濃度が頭打ちとなり、必要量以上の酸化チタンを含有させることによるコストアップを抑制する観点、印字ムラおよび発煙量を抑制する観点から、30g/m2以下、好ましくは25g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下、さらに好ましくは15g/m2以下、よりさらに好ましくは10g/m2以下である。
なお、記録媒体の少なくとも印刷可能領域が酸化チタンを上記の含有量で含有していればよく、印刷を行わない領域において、塗工層が設けられてない部分が存在してもよく、また、酸化チタンの含有量が0.6g/m2未満または30g/m2を超える塗工層が設けられている領域が存在していてもよい。製造の簡易性の観点から、シート媒体の全領域がシート基材上に酸化チタンの含有量が0.6g/m2以上30g/m2以下である塗工層が設けられていることが好ましい。
【0057】
塗工層(固形分)中の酸化チタンの含有量は、十分な印字濃度を得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、よりさらに好ましくは7質量%以上であり、そして、印刷濃度が頭打ちとなり、必要以上の酸化チタンを含有させることによるコストアップを抑制する観点、塗工層の形成容易性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、よりさらに好ましくは60質量%以下、よりさらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは40質量%以下、よりさらに好ましくは30質量%以下である。
【0058】
塗工層の厚みは、十分な印字濃度を得る観点および塗工の容易性の観点から、好ましくは0.4μm以上、より好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上であり、そして、印刷濃度が頭打ちとなる観点および塗工層形成容易性の観点から、好ましくは40.0μm以下、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは20.0μm以下、よりさらに好ましくは15.0μm以下、よりさらに好ましくは10.0μm以下である。
塗工層の厚みは、記録媒体の断面の電子顕微鏡(SEM)の観察像から測定される。
【0059】
塗工層中の酸化チタンの含有量をAg/m2、塗工層の厚みをBμmとしたとき、A/Bは、0.01以上であり、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上であり、そして、2.00以下であり、好ましくは1.95以下、より好ましくは1.80以下、さらに好ましくは1.50以下、よりさらに好ましくは1.20以下、よりさらに好ましくは1.00以下である。
塗工層中の上記A/Bを上記範囲内とすることにより、酸化チタンの塗工層中での含有量を適度な範囲とし、紫外線照射時に酸化チタンの塗工層からの飛散を防止し、これにより、発煙を抑制し、さらに、印字鮮明さに優れた印刷物が得られるので好ましい。
【0060】
記録媒体の基材は、後述するように紙基材であり、紙基材自体が酸化チタンを含有してもよい。紙基材が酸化チタンを含有することにより、より鮮明な画像となる傾向にある。
全体としての酸化チタンの含有量は、0.6g/m2以上、好ましくは0.8g/m2以上、より好ましくは1.0g/m2以上であり、そして、印刷濃度が頭打ちとなる観点から、好ましくは35g/m2以下、より好ましくは30g/m2以下、さらに好ましくは25g/m2以下である。記録媒体全体としての酸化チタンの含有量は、基材が酸化チタンを含有する場合には、基材中の酸化チタンの含有量と、塗工層中の酸化チタンの含有量の合計量となる。
また、基材が酸化チタンを含有する場合、基材中の酸化チタンの含有量は、好ましくは1g/m2以上、より好ましくは2.5g/m2以上、さらに好ましくは5g/m2以上、よりさらに好ましくは10g/m2以上である。
【0061】
塗工層は、酸化チタンに加え、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
(酸化チタン)
酸化チタンは、塗工層用の塗工液に含有されて、塗工されることが好ましく、該塗工液が水性塗工液であることがより好ましい。
塗工層が含有する酸化チタンとしては、上述した第一の印刷物で使用する酸化チタンと同様のものが例示され、好ましい結晶構造、形状についても同様である。
酸化チタンが不定形または球状である場合の酸化チタンの粒子径は、表面平滑性に優れるシート媒体を得る観点から、第一の印刷物で使用する酸化チタンと同様の範囲であることが好ましい。
また、塗工層中の酸化チタンの粒子径は、マッフル炉で記録媒体または印刷物を525℃の条件で燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク株式会社製、S5200など)から得られるSEM画像から算出する。
走査型電子顕微鏡に供試する灰分のサンプルは、出力50Wの超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150など)で5分間かけてエタノールに分散させ0.01質量%スラリーを得た後、アルミ皿へ0.1mLをキャストし、60℃で乾燥させた後、SEMに供試する適当サイズへアルミ皿を切り出して作製した。隣り合う粒子と明瞭に見分けられるものを目視で選択し、1つの粒子の長径を粒子径とする。この際、1次粒子と凝集状態の2次粒子が混在していても明瞭に見分けられる場合はそれぞれを1つの粒子としてカウントし、無作為に選択した100個の粒子の平均径を粒子径とする。SEM画像観察時の倍率は酸化チタンの粒子径によって適宜選択すればよいが、20000倍程度が好ましい。また、酸化チタン以外の粒子を含む場合、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製、EMAXなど)を用いてチタン元素の含まれる粒子を測定する。
基材が酸化チタンを含有する紙の場合には、酸化チタンや無機顔料を含まない透明粘着テープ(3M株式会社製、309SN)に塗工層を移して灰分サンプルを作製する。具体的には、ローラー質量2kgのテープ圧着ローラー(株式会社安田精機製作所製、No349など)を用いて塗工層の上層へ粘着テープを貼付する。その後、セルロース粘度測定用の銅エチレンジアミン溶液(メルク社製)に24時間浸漬させた後、塗工層を含む粘着テープをイオン交換水でよく洗浄する。得られた塗工層を含む粘着テープの水分を拭き取り、60℃の乾燥機で1時間乾燥させる。その後、525℃のマッフル炉で燃焼させて粒子径測定に用いる灰分を作製し、上記と同じ方法で粒子径を測定する。
なお、原料として使用する酸化チタン粒子の平均粒子径は、第一の印刷物における測定方法と同様の方法により測定される。
【0062】
また、酸化チタンが針状である場合、酸化チタンの長径は、短径、およびアスペクト比(長径/短径)の好ましい範囲は、第一の印刷物で使用する酸化チタンと同様の範囲であることが好ましい。
塗布層が含有する酸化チタンの長径、短径は、記録媒体または印刷物をマッフル炉で燃焼して得た灰分を上記と同様に処理して、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク株式会社製、S5200など)から得られるSEM画像から測定することができる。走査型電子顕微鏡に供試する粉体は、上記と同様の方法で得られる。
また、原料として使用する酸化チタンの長径および短径についても、走査型電子顕微鏡から得られるSEM画像から測定することができる。
基材が酸化チタンを含有する紙の場合には酸化チタンや無機顔料を含まない透明粘着テープ(3M株式会社製、309SN)に塗工層を移して灰分サンプルを作製する。具体的には、ローラー質量2kgのテープ圧着ローラー(株式会社安田精機製作所製、No349など)を用いて塗工層の上層へ粘着テープを貼付する。その後、セルロース粘度測定用の銅エチレンジアミン溶液(メルク社製)に24時間浸漬させた後、塗工層を含む粘着テープをイオン交換水でよく洗浄する。得られた塗工層を含む粘着テープの水分を拭き取り、60℃の乾燥機で1時間乾燥させる。その後、525℃のマッフル炉で燃焼させて粒子径測定に用いる灰分を作製し、上記と同じ方法で長径と短径を測定する。
【0063】
(熱可塑性樹脂)
塗工層に使用される熱可塑性樹脂は、バインダーとして機能する。塗工層の熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、水性塗工液として塗布することが好ましい観点から、水希釈性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
水希釈性の樹脂とは、水溶性、エマルション型、ディスパーション型の樹脂が例示される。
水希釈性の熱可塑性樹脂としては、天然樹脂、合成樹脂のいずれでもよく、たとえば、澱粉誘導体、カゼイン、シュラック、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
より具体的には、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸と、そのアルキルエステルまたはスチレン等とをモノマー成分として共重合したアクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂などが例示される。
これらの中でも、塗工液の安定性、塗工層の耐溶剤性の観点から、澱粉誘導体、カゼイン、シュラック、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、アクリル系樹脂、およびマレイン酸系樹脂から選択される少なくとも1つが好ましく、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、およびマレイン酸系樹脂から選択される少なくとも1つがより好ましく、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、およびアクリル系樹脂から選択される少なくとも1つがさらに好ましく、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、およびアクリル系樹脂から選択される少なくとも1つがよりさらに好ましい。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
熱可塑性樹脂の含有量は、塗工液の固形分中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上、よりさらに好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下、よりさらに好ましくは93質量%以下である。
【0065】
塗工層は、上述した酸化チタンおよび熱可塑性樹脂に加え、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、酸化チタン以外の体質顔料、造膜剤、顔料分散剤、顔料分散樹脂、ブロッキング防止剤、湿潤剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、一般の界面活性剤等が例示される。
酸化チタン以外の体質顔料としては、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、無定形シリカが例示される。
【0066】
塗工液は、水性塗工液であることが好ましく、使用する水性媒体としては、水、または水と水混和性溶剤との混合物が挙げられる。
水混和性溶剤としては、低級アルコール類、多価アルコール類、およびそれらのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類が挙げられる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プルピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0067】
塗工液の固形分濃度は特に限定されないが、所望の塗工層の厚みを得る観点、塗工液を塗工容易な粘度とする観点、および乾燥容易性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは20質量%以下である。
【0068】
塗工液の粘度は、塗工適性、所望の塗工層の厚みを得る観点、および乾燥容易性の観点から、ザーンカップNo.3による測定で、好ましくは10秒以上、より好ましくは15秒以上、さらに好ましくは17秒以上であり、そして、好ましくは40秒以下、より好ましくは30秒以下、さらに好ましくは25秒以下である。
【0069】
塗工液は、上記の各種材料を水性媒体と混合して得られる。なお、水性媒体との混合に先立ち、酸化チタン、熱可塑性樹脂、水、および必要に応じて水混和性溶剤、顔料分散剤、顔料分散性樹脂等を混合して混練し、これに、さらに水、必要に応じて水混和性溶剤、および所定の材料の残りを添加、混合してもよい。
塗工液は、上記各成分をホモミキサー、ラボミキサー等の高速撹拌機や、3本ロールミルやビーズミル等の分散機にて混合、分散することにより得られる。
【0070】
塗工液の塗布方法としては特に限定されず、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、スプレー塗布等により基材に塗布すればよい。
【0071】
<紙基材>
第二の印刷物において、基材として紙基材を使用する。
紙基材を構成する原料パルプとしては、上述した第一の印刷物における紙シート媒体における原料パルプと同様のものが例示される。
原料パルプは、入手のしやすさという観点から、木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、原料パルプは、木材パルプの中でも、地合いの均一性の観点から、好ましくは化学パルプであり、より好ましくはクラフトパルプであり、さらに好ましくはユーカリ、アカシア等の広葉樹クラフトパルプ、およびマツ、スギ等の針葉樹クラフトパルプから選択される1種以上であり、よりさらに好ましくは広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から選択される1種以上である。
【0072】
第二の印刷物において、紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、塗工ムラを抑制し、印字鮮明さを向上させる観点から、0.6mm以上であり、好ましくは0.65mm以上であり、そして、3.5mm以下であり、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは1.3mm以下である。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が3.5mm以下であると、パルプ同士が密に絡まり合うことで、紙基材の空隙が減少し、塗工層を設けた場合に塗工ムラが抑制され、視認性に優れた印刷物が得られるので好ましい。
また、紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.6mm以上であると、紙基材としての強度が向上し、さらに、紙粉が低減されるため、印字箇所の脱落も抑制できるので好ましい。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、実施例に記載の方法により測定される。
【0073】
第二の印刷物において、紙基材を構成するパルプの平均繊維幅は、好ましくは14.0μm以上であり、より好ましくは15.0μm以上、さらに好ましくは15.5μm以上、よりさらに好ましくは16.0μm以上であり、そして、好ましくは35.0μm以下、より好ましくは33.0μm以下、さらに好ましくは31.0μm以下である。
紙基材を構成するパルプの平均繊維幅が35.0μm以下であると、パルプ同士が密に絡まり合うことで、紙基材の空隙が減少し、塗工層を設けた場合に塗工ムラが抑制され、視認性に優れた印刷物が得られるので好ましい。また、平均繊維幅が14.0μm以上であると、紙基材としての強度が向上するし、さらに、紙粉が低減されるため、印字箇所の脱落も抑制できるので好ましい。
紙基材を構成するパルプの平均繊維幅は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0074】
第二の印刷物において、紙基材を構成するパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合は、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、よりさらに好ましくは16%以下である。
微細繊維の本数割合が40%以下であると、紙基材としての強度が確保できるため好ましい。また、微細繊維の本数割合が4%以上であると、繊維間の隙間を、埋める形で微細繊維が配置され、紙基材の空隙が減少し、塗工層を設けた場合に塗工ムラが抑制されるので好ましい。
紙基材を構成するパルプ中の繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合は、紙基材を実施例に記載の方法にて離解し、得られたパルプスラリーの繊維長を繊維長測定装置(たとえば、バルメット社製、型式FS-5、UHDベースユニット付き)にて測定して算出する。繊維長が0.2mm以下であり、かつ、繊維幅が75μm以下の繊維を微細繊維とし、測定したパルプの本数に対する、微細繊維の本数割合を算出する。
【0075】
紙基材には、上述したパルプに加え、填料、サイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤(たとえば、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン)、歩留向上剤(たとえば、硫酸バンド)、濾水性向上剤、pH調整剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、染料・顔料等の公知の抄紙用内添剤を必要に応じて添加することができる。
填料としては、たとえば、カオリン、タルク、酸化チタン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等を例示することができる。
サイズ剤としては、たとえば、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤などが挙げられる。
【0076】
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機、たとえば長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機を適宜選択して使用することができる。次に、抄紙機によって形成された紙層をフェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させる。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
また、上記のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚みやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
【0077】
紙基材としては、ライナー原紙、クラフト紙、上質紙、コート紙等の従来公知の紙基材の中から、適宜選択して使用してもよい。
【0078】
第二の印刷物において、紙基材の坪量は、印刷物としての強度、および印字ムラを抑制する観点から、好ましくは30g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上、さらに好ましくは50g/m2以上、よりさらに好ましくは60g/m2以上であり、そして、好ましくは、300g/m2以下、より好ましくは240g/m2以下、さらに好ましくは180g/m2以下である。
【0079】
第二の印刷物において、紙基材の厚みは、特に限定されないが、印刷物としての強度、および印字ムラを抑制する観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは70μm以上、よりさらに好ましくは80μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下、よりさらに好ましくは150μm以下である。
【0080】
〔ラマン強度〕
本発明の第二の印刷物において、印刷領域とは、印刷可能領域において、変色された酸化チタンを含有する領域(部分)を意味し、紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)であることが好ましい。非印刷領域とは、印刷可能領域において印刷されていない領域(部分)を意味する。
印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)は、0.70以下である。ラマン強度の比を上記範囲内とすることにより、視認性に優れる印刷物が得られる。
上記のラマン強度の比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)は、酸化チタンとしてルチル型の酸化チタンを使用した場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、447±3cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。また、酸化チタンとしてアナターゼ型の酸化チタンを使用する場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、516±3cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。
なお、ルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンが共存する場合には、ルチル型の酸化チタンに由来するラマン強度で対比することとする。
【0081】
本発明の印刷物は、非印刷領域が白色であり、印刷領域が黒色であることが好ましい。
非印刷領域および印刷領域のマンセル表色系における明度の好ましい範囲は、第一の印刷物と同様である。
上記のマンセル表色系における色を得るために、塗工層における酸化チタンの含有量、塗工層の厚み、およびその比、紙基材の特性(紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長)、紫外線レーザーの照射条件(たとえば、平均出力、繰返し周波数、波長など)を適宜調整することが好ましい。
【0082】
本発明の第二の印刷物は、包装体、ラベル、または粘着テープなどに好適に使用される。
包装体としては、段ボールのライナー原紙(特に、最表面のライナー原紙)、外装箱、牛乳パック、紙カップ等の飲料用の液体容器(好ましくは飲料用の液体紙容器)、食品トレー、スキンパックが例示され、ラベルとしては、ラベル原紙、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
図5に示すように、包装体の一例としての液体容器10は、たとえば、表面に印刷領域20を有する。印刷領域20には紫外線レーザーを照射され、日付などの文字が印字されている。
【0083】
〔透明樹脂層〕
本発明の第二の印刷物は、印刷媒体が、塗工層上に、さらに透明樹脂層を有することも好ましい。
すなわち、酸化チタンを所定量以上含有する塗工層の上に、さらに予め透明樹脂層が設けられた印刷媒体を使用することが好ましい。
上述した構成とすることにより、印字濃度が高く、より鮮明な印刷画像が得られることを見出した。その詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように推定される。
紫外線レーザーの照射により酸化チタンが加熱されると、周辺の水分が瞬間的に気化することで、変色した酸化チタンが塗工層から脱離する現象が生じると考えられる。塗工層上に予め透明樹脂層を設けておくことにより、上述した変色した酸化チタンの脱離が抑制され、印字濃度が高くなると考えられる。さらに、上記水分の気化や、それに伴う酸化チタンや紙粉の脱離により発煙が生じるが、このような発煙量も抑制されると考えられる。
塗工層およびその下層である基材が水分を含有する場合に透明樹脂層を設ける効果が高い観点から、本実施態様のように、基材が紙基材である場合に、透明樹脂層を有することが特に好ましい。
【0084】
透明樹脂層の全光線透過率の好ましい範囲は、第一の印刷物における透明樹脂層の好ましい範囲と同様であり、測定方法も同様である。
また、透明樹脂層を構成する樹脂、積層方法、および厚みは、第一の印刷物における透明樹脂層と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0085】
[第二の印刷物の製造方法]
本発明の第二の印刷物の製造方法は、記録媒体に紫外線を照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、前記記録媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有する塗工層を有し、前記紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.6mm以上3.5mm以下であり、前記塗工層中の酸化チタンの含有量が0.6g/m2以上30g/m2以下であり、前記塗工層中の酸化チタンの含有量をAg/m2、塗工層の厚みをBμmとしたとき、A/Bが0.01以上2.00以下である。
本発明の第二の印刷物の製造方法に使用される記録媒体としては、前記第二の印刷物における記録媒体と同様の記録媒体が例示され、好ましい範囲も同様である。また、本発明の第二の印刷物の製造方法において、少なくとも紫外線レーザー照射領域における塗工層の酸化チタン含有量が0.6g/m2以上30g/mm2以下であればよく、非照射領域の酸化チタン含有量は特に限定されないが、酸化チタンが塗工層全体に含有されていることが好ましい。
【0086】
紫外線レーザーの照射は、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように、紫外線レーザーを照射することが好ましい。
印刷領域および非印刷領域のラマン強度については、第二の印刷物において上述した通りである。
【0087】
〔紫外線レーザーの照射条件〕
紫外線レーザーの照射条件(紫外線レーザーの波長、平均出力、繰返周波数、スポット径、スキャンスピード、ラインピッチ)は、第一の印刷物の製造方法と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0088】
〔第二の印刷物の製造方法の態様〕
本発明の第二の印刷物の製造方法は、種々の態様で行うことができる。
以下に、本発明の第二の印刷物の製造方法が適用可能な種々な態様について例示するが、本発明の第二の印刷物の製造方法は、下記の態様に限定されるものではない。印刷する情報は特に限定されないが、可変情報であることが好ましい。
本発明の第二の印刷物の製造方法は、インラインで行われることが好ましい。
(1)包装体への直接印刷
本発明の第二の印刷物の製造方法の第一の実施態様は、酸化チタンを含有する塗工層を有する包装体に情報を印刷する方法であって、梱包ライン上を移動中、または間欠停止中の包装体に直接紫外線レーザーにて印刷する工程を有する。
第一の印刷物の製造方法は、紙基材上に酸化チタンを含有する塗工層を有し、塗工層が酸化チタンを0.6g/m2以上30g/m2以下含有し、酸化チタンの含有量と塗工層の厚みとの比が0.01以上2.00以下であり、紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.6mm以上3.5mm以下である記録媒体にて包装体を作製し、紫外線レーザーにて直接印刷する。なお、少なくとも包装体の印刷される領域の最外層が、前記の記録媒体にて作製されていればよい。
また、包装体としては、段ボール、箱等が例示され、該包装体の側面または上面に紫外線レーザーにて直接印刷することが好ましい。
【0089】
また、梱包ラインにコーティング(塗工)機構を有していてもよい。コーティング機構としては、接触印字機、パット印刷機、スプレーコーターが例示される。
本態様においては、包装体が梱包ライン上を移動中に、コーティング機構により塗工層を付与する工程と、より下流にて、梱包ラインを移動中、または間欠停止中に包装体に紫外線レーザーにて直接印刷する工程を有する。
【0090】
(2)ラベルへの印刷
本発明の第二の印刷物の製造方法の第二の実施態様は、酸化チタンを含有する塗工層を有するラベルに情報を印刷する方法である。該ラベルの印刷面を構成する記録媒体の塗工層が、酸化チタンを0.6g/m2以上30g/m2以下含有する。また、該ラベルは紙基材上に塗工層を有し、紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.6mm以上3.5mm以下であり、塗工層中の酸化チタンの含有量をAg/m2、塗工層の厚みをBμmとしたとき、A/Bが0.01以上2.00以下である。
印刷されたラベルは、ラベル貼り付け装置を用いて包装体に貼付することが好ましい。ラベル貼り付け装置としては、各種のラベル貼り付け装置が提案されている。なお、このとき、紫外線照射される面に塗工層を有する。
第1のラベル貼り付け装置としては、ロール状に巻いたラベル原紙に接着剤を付与した後に物品に貼付する。より具体的には、ロール状に巻いたラベル原紙を1枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、この切断手段によって切断されたラベル原紙を、接着剤が塗布されたラベル原紙保持体によって受取り、このラベル原紙の裏面に接着剤を付着させる糊付け搬送手段と、この糊付け搬送手段から接着剤が付与されたラベル原紙(ラベル)を受け取って容器等の物品に貼付ける貼着手段とを備えたロールラベラにおいて、上記切断手段と糊付け搬送手段との間に、外面にラベル保持面を有する回転搬送手段を設けたロールラベラが例示され、特開平6-64637号公報が例示される。
また、ロール状に巻いたラベル原紙を一枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、貼付ロールに受け渡す受渡ロールと、貼付ロールに保持されたラベル原紙に糊を付与する糊付けロールとを有するロールラベラや、前記受渡ロールを不要とした態様が例示される。
紫外線レーザーの照射は、ロール状に巻いたラベル原紙を所定の長さに切断する前、または切断後であって次のロール等への受け渡し前であることが好ましい。ロールラベラの態様に合わせて、ロール状に巻いたラベル原紙の表面または裏面が、包装体に貼付した際の表面または裏面となるため、これに合わせて紫外線レーザーの照射を行う。
【0091】
第2のラベル貼り付け装置は、ラベルとして、粘着ラベルロールを使用する。この場合、少なくとも粘着剤が付与されている面と反対面である、紫外線レーザーが照射される面に塗工層を有する。
剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合には、たとえば、粘着ラベルと剥離紙を分離する剥離紙分離手段と、剥離紙が分離された粘着ラベルを受け取る受渡ロールと、受渡ロールから粘着ラベルを吸引して、物品(包装体)に貼付する貼付ロールとを有する貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、剥離紙を分離する前、または剥離紙分離後であって貼付ロールに担持される前に行うことが好ましい。
また、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルと剥離紙とを分離する機構を有し、分離直後にラベルを貼付する機構を有し、セットされた粘着ラベルロールから剥離紙を分離するまでの間に紫外線レーザーにより印刷する装置が例示される。上記の粘着ラベルの貼付方法は、流し貼りとも呼ばれる。
さらに、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルから剥離紙を分離する機構を有し、粘着ラベルを物品(包装体)に貼付する機構を有し、前記貼付する機構が、シリンジ方式、エアジェット方式、またはロボットアーム方式であるラベル貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、セットされた剥離紙付きの粘着ラベルロールから、剥離紙を分離するまでの間で行われることが好ましい。
【0092】
ラベルとして、ライナレス粘着ラベルを使用してもよい。ライナレス粘着ラベルは、剥離紙のないラベルであり、剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合に比して、1ロールのラベル枚数が多く、剥離紙が存在しないため、安価であるという特徴を有する。ライナレス粘着ラベルを使用する場合、粘着剤が付与される面とは反対面である、紫外線レーザーが照射される面に、塗工層が形成されている。
ライナレス粘着ラベルを使用したラベル貼り付け装置としては、ライナレスラベルロールをセットする機構と、ライナレスラベルを1枚ずつに切断する切断機構と、切断されたライナレスラベルを物品(包装体)に貼付する貼付機構を有し、前記貼付機構が、シリンダ方式またはロボットアーム方式である装置が例示される。紫外線レーザーの照射による印刷は、ライナレスラベルロールをセットする機構から切断機構までの間、または、切断されたライナレスラベルが貼付機構に送られる間であることが好ましい。
【0093】
第3のラベル貼り付け装置は、酸化チタンを0.6g/m2以上30g/m2以下含有する塗工層を有する印刷媒体を物品(包装体)に貼付した後に、紫外線レーザーにて印刷する。
ラベルの貼付の方法としては、上述した第1の装置および第2の装置が参照される。
【0094】
(3)粘着テープへの印刷
本発明の第二の印刷物の製造方法の第三の実施態様は、記録媒体を粘着テープとする態様である。この場合、粘着剤が付与されている面とは反対面に、塗工層を有する。
すなわち、第三の実施態様の印刷物の製造方法は、前記記録媒体から作製された粘着テープを物品(包装体)に貼付する工程を有し、前記貼付する工程の前、または貼付する工程の後に、紫外線レーザーにより印刷する工程を有する。
また、段ボール封緘機に紫外線レーザーによる印字装置を組み込んだ印刷装置を使用してもよい。具体的には、粘着テープ巻取りをセットする機構と、段ボールを搬送用のコンベアを有し、段ボールのフラップを折り込む機構と、粘着テープを貼付して段ボールを封緘する機構を有し、粘着テープを貼付する間、または貼付した後に、粘着テープに紫外線レーザーにて印刷する機構を有する。
【0095】
本発明の第二の印刷物および第二の印刷物の製造方法は、上記の態様に限定されるものではなく、印刷が求められる各種用途に応用可能である。
【0096】
[第二のレーザー印刷用印刷媒体]
本発明の第二のレーザー印刷用印刷媒体は、紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域を有し、前記印刷媒体の印刷可能領域は、基材上に酸化チタンを含有する塗工層を有し、前記紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.6mm以上3.5mm以下であり、前記塗工層中の酸化チタンの含有量が0.6g/m2以上30g/m2以下であり、前記塗工層中の酸化チタンの含有量をAg/m2、塗工層の厚みをBμmとしたとき、A/Bが0.01以上2.00以下である。本発明の第二のレーザー印刷用印刷媒体に紫外線レーザーを照射することにより、印刷が可能である。
前記第二のレーザー印刷用印刷媒体の好ましい態様は、上述した第二の印刷物の記録媒体の好ましい態様と同様であり、また、前記第二のレーザー印刷用印刷媒体への印刷方法の好ましい態様は、上述した第二の印刷物の製造方法と同様である。
【0097】
[第三の印刷物]
本発明の第三の印刷物(以下、単に「第三の印刷物」ともいう)は、酸化チタンを含有する印刷可能領域を有するシート媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、前記シート媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有するラミネート層を有し、前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が0.1g/m2以上であり、前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が1質量%以上45質量%以下であり、前記ラミネート層の厚みが10μm以上200μm以下であり、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下である。
本発明によれば、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有する印刷物を提供することができる。また、本発明の印刷物は、印刷(印字)の鮮明さに優れ、また、耐溶剤性にも優れる。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。本発明では、紙基材上に、印刷可能領域として酸化チタンの含有量が0.1g/m2以上であるラミネート層を有するシート媒体を使用する。印刷領域が変色された酸化チタンを含有し、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比を0.70以下とすることにより、視認性に優れた印刷物が得られると考えられる。前記酸化チタンの変色は、ラミネート層が含有する酸化チタンのイオン価数が4価から3価に変化し、酸素欠陥が生じることで、白色から黒色へと変化し、これにより、視認可能となっていると考えられる。さらに、前記イオン価数の変化は、ラマン強度の変化として検出可能であり、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比を特定の値以下にすることにより、視認性の高い印刷領域が得られる。酸化チタンのイオン価数は、酸化チタンのバンドギャップに相当する光エネルギーを照射する際に変化するものと考えられる。酸化チタンのバンドギャップは結晶系によって異なるが、一般に3.0~3.2eV程度であり、これに相当する光の波長は420nm以下である。そのため、420nmを超える波長のレーザー光(たとえば532nm、1064nm、10600nm)を用いても本発明のような酸化チタンのイオン価数変化に起因する印刷を施すことは困難である。
また、ラミネート層が含有する酸化チタンにより発色しているため、耐溶剤性にも優れると考えられる。
なお、酸化チタンの変色は、紫外線レーザーの照射により行われることが好ましい。このとき、紫外線レーザーの照射により、発煙が生じる場合がある。紫外線レーザーの照射により酸化チタンが加熱されると、周辺の水分が瞬間的に気化することで、変色した酸化チタンや、ラミネート層が有する樹脂が、シート媒体から脱離する現象が生じると考えられ、このような脱離に伴い、煙が発生すると考えられる。本実施形態のおいては、ラミネート層中の酸化チタンの含有量を特定の範囲とすることによって、上記発煙が抑制されたものと考えられる。
さらに、紙基材上にラミネート層を設けて、紫外線レーザーの照射により印刷物を作製した場合、得られた印刷物において、引張強度や破断伸びが低下するという問題があった。これは、紫外線レーザーの照射によりラミネート層の樹脂や、紙基材の劣化が生じるためと考えられる。ラミネート層の厚みを特定の範囲内とすることにより、印刷物の引張強度や破断伸びの低下を抑制できたものと考えられる。
本実施態様において、印刷可能領域とは、ラミネート層が含有する酸化チタンの変色、好ましくは紫外線レーザーの照射により、紫外線レーザーにより照射された部分の酸化チタンが白色から黒色に変色することで印刷が可能である領域(部分)を意味し、印刷領域とは、印刷可能領域の中で、実際に酸化チタンが変色している箇所、好ましくは紫外線レーザーの照射により変色している箇所、すなわち、紫外線レーザーの被照射部分を意味する。また、非印刷領域とは、印刷可能領域の中で、酸化チタンが変色していない領域(部分)、たとえば、紫外線レーザーが照射されていない領域(部分)を意味する。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0098】
〔シート媒体〕
第三の印刷物において、印刷対象となるシート媒体は、酸化チタンを含有する印刷可能領域を有し、該印刷可能領域の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有する。
前記シート媒体は、紙基材上に、酸化チタンを含有するラミネート層を有する。なお、ラミネート層は少なくとも紙基材の片面に形成されていればよく、両面に形成されていてもよいが、シート媒体が片面のみにラミネート層を有することが好ましい。
<ラミネート層>
印刷可能領域であるラミネート層は、酸化チタンの含有量が0.1g/m2以上であり、該ラミネート層中の酸化チタンの含有量が1質量%以上45質量%以下であり、前記ラミネート層の厚みが10μm以上200μm以下である。
ラミネート層中の酸化チタンの含有量は、十分な印刷濃度を得る観点から0.1g/m2以上であり、好ましくは0.2g/m2以上、より好ましくは0.3g/m2以上、さらに好ましくは0.5g/m2以上、さらに好ましくは1.0g/m2以上、よりさらに好ましくは1.2g/m2以上であり、そして、印刷濃度が頭打ちとなり、必要量以上の酸化チタンを含有させることによるコストアップを抑制する観点から、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは120g/m2以下、さらに好ましくは50g/m2以下、よりさらに好ましくは30g/m2以下、よりさらに好ましくは20g/m2以下である。
なお、シート媒体の少なくとも印刷可能領域が酸化チタンを上記の含有量で含有していればよく、印刷を行わない領域において、ラミネート層が設けられてない部分が存在してもよく、また、酸化チタンの含有量が0.1g/m2未満であるラミネート層が設けられている領域が存在していてもよい。製造の簡易性の観点から、シート媒体の全領域に、紙基材上に酸化チタンの含有量が0.1g/m2以上であるラミネート層が設けられていることが好ましい。
【0099】
ラミネート層中の酸化チタンの含有量は、十分な印字濃度を得る観点、印字濃度が頭打ちとなり、必要以上の酸化チタンを含有させることによるコストアップを抑制する観点、ラミネート層中の酸化チタンの濃度を適切な範囲とすることで、紫外線レーザー照射時の酸化チタンの飛散を抑制すると共に、発煙量を抑制する観点から、1.0質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは4.0質量%以上であり、45質量%以下であり、好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0100】
ラミネート層の厚みは、十分な印字濃度を得る観点、ラミネートの容易性の観点、紫外線レーザー照射による引張強度および破断伸びの低下を抑制する観点から、10μm以上であり、好ましくは12μm以上、より好ましくは20μm以上であり、そして、印刷濃度が頭打ちとなる観点およびシート媒体の全体としての厚みを抑制し、柔軟性を有する印刷物を得る観点から、200μm以下であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
ラミネート層の厚みは、シート媒体の断面の電子顕微鏡(SEM)の観察像から測定される。
【0101】
ラミネート層は、酸化チタンを含有する熱可塑性樹脂のフィルムからなることが好ましい。
(酸化チタン)
酸化チタンは、熱可塑性樹脂のフィルムに内包されていることが好ましく、ラミネート層は、ラミネート層原料に酸化チタンを添加して、フィルム化することにより得られたものであることがより好ましい。
ラミネート層が含有する酸化チタンとしては、上述した第一の印刷物で使用する酸化チタンと同様のものが例示され、好ましい結晶構造、形状についても同様である。
酸化チタンが不定形または球状である場合の酸化チタンの粒子径は、表面平滑性に優れるシート媒体を得る観点から、第一の印刷物で使用する酸化チタンと同様の範囲であることが好ましい。
ラミネート層が含有する酸化チタンの粒子径は、マッフル炉でラミネート層を燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク株式会社製、SU3800など)から得られるSEM像から算出することもできる。
また、ラミネート層の酸化チタンの粒子径は、マッフル炉でシート媒体または印刷物を燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク株式会社製、S5200など)から得られるSEM画像から算出する。
走査型電子顕微鏡に供試する灰分のサンプルは、出力50Wの超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150など)で5分間かけてエタノールに分散させ0.01質量%スラリーを得た後、アルミ皿へ0.1mLをキャストし、60℃で乾燥させて作製することができる。隣り合う粒子と明瞭に見分けられるものを目視で選択し、1つの粒子の長径を粒子径とする。この際、1次粒子と凝集状態の2次粒子が混在していても明瞭に見分けられる場合はそれぞれを1つの粒子としてカウントし、無作為に選択した100個の粒子の平均径を粒子径とする。SEM画像観察時の倍率は酸化チタンの粒子径によって適宜選択すればよいが、20000倍程度が好ましい。
なお、原料として使用する酸化チタン粒子の平均粒子径は、第一の印刷物における測定方法と同様の方法により測定される。
【0102】
また、酸化チタンが針状である場合、酸化チタンの長径は、短径、およびアスペクト比(長径/短径)の好ましい範囲は、第一の印刷物で使用する酸化チタンと同様の範囲であることが好ましい。
ラミネート層が含有する酸化チタンの長径、短径は、ラミネート層をマッフル炉で燃焼して得た灰分を上記と同様に処理して、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク株式会社製、S5200など)から得られるSEM画像から測定することができる。走査型電子顕微鏡に供試する粉体は、上記と同様の方法で得られる。
また、原料として使用する酸化チタンの長径および短径についても、走査型電子顕微鏡から得られるSEM画像から測定することができる。
【0103】
(熱可塑性樹脂)
ラミネート層に使用される熱可塑性樹脂としては特に限定されず、酸化チタンを内包させることが可能であり、かつ、紙基材にラミネートできるものであれば特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂の中から、適宜選択すればよい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が例示され、これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステルが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがさらに好ましく、ポリエチレンがよりさらに好ましい。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
ラミネート層は、従来公知の製造方法から適宜選択して製造すればよく、たとえば、溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法等の中から、適宜選択すればよい。
ラミネート層の印刷領域における酸化チタンの含有量が上記の範囲内となるように、上述した樹脂に酸化チタンを混合して、フィルムを作製すればよい。
【0105】
<紙基材>
第三の印刷物において、シート媒体は、紙基材上に、上述したラミネート層を有する。
紙基材を構成する原料パルプとしては、上述した第一の印刷物における紙シート媒体における原料パルプと同様のものが例示される。
原料パルプは、入手のしやすさという観点から、木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、原料パルプは、木材パルプの中でも、地合いの均一性の観点から、好ましくは化学パルプであり、より好ましくはクラフトパルプであり、さらに好ましくはユーカリ、アカシア等の広葉樹クラフトパルプ、およびマツ、スギ等の針葉樹クラフトパルプから選択される1種以上であり、よりさらに好ましくは広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から選択される1種以上である。
【0106】
第三の印刷物において、紙基材には、上述したパルプに加え、填料、サイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤(たとえば、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン)、歩留向上剤(たとえば、硫酸バンド)、濾水性向上剤、pH調整剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、染料・顔料等の公知の抄紙用内添剤を必要に応じて添加することができる。
填料剤としては、たとえば、カオリン、タルク、酸化チタン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等を例示することができる。
サイズ剤としては、たとえば、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤などが挙げられる。
【0107】
第三の印刷物において、紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機、たとえば長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機を適宜選択して使用することができる。次に、抄紙機によって形成された紙層をフェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させる。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
【0108】
また、上記のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚みやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
【0109】
紙基材としては、ライナー原紙、クラフト紙、上質紙、コート紙等の従来公知の紙基材の中から、適宜選択して使用してもよい。
【0110】
<ラミネート>
ラミネート層の紙基材へのラミネートの方法は特に限定されず、公知の方法から適宜選択すればよい。具体的には、熱ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法等により、紙基材とラミネート層とを積層することが例示される。また、ラミネート層と紙基材とを接着剤層を介して貼付してもよい。これらの中でも、ラミネート層と紙基材とを貼付する工程が不要であり、製造工程の観点から、押出ラミネート法が好ましい。
【0111】
〔ラマン強度〕
本発明の第三の印刷物において、印刷領域とは、印刷可能領域において、変色された酸化チタンを含有する領域(部分)を意味し、紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)であることが好ましい。非印刷領域とは、印刷可能領域において印刷されていない領域(部分)を意味する。
印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)は、0.70以下である。ラマン強度の比を上記範囲内とすることにより、視認性に優れる印刷物が得られる。
上記のラマン強度の比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)は、酸化チタンとしてルチル型の酸化チタンを使用した場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、447±3cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。また、酸化チタンとしてアナターゼ型の酸化チタンを使用する場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、516±3cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。
なお、ルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンが共存する場合には、ルチル型の酸化チタンに由来するラマン強度で対比することとする。
【0112】
本発明の印刷物は、非印刷領域が白色であり、印刷領域が黒色であることが好ましい。
非印刷領域および印刷領域のマンセル表色系における明度の好ましい範囲は、第一の印刷物と同様である。
上記のマンセル表色系における色を得るために、ラミネート層における酸化チタンの含有量、ラミネート層の厚み、紫外線レーザーの照射条件(たとえば、平均出力、繰返し周波数、波長など)を適宜調整することが好ましい。
【0113】
本発明の第三の印刷物は、包装体、ラベル、または粘着テープなどに好適に使用される。
包装体としては、段ボールのライナー原紙(特に、最表面のライナー原紙)、外装箱、牛乳パック、紙カップ等の飲料用の液体容器(好ましくは飲料用の液体紙容器)、食品トレー、スキンパックが例示され、ラベルとしては、ラベル原紙、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
図5に示すように、包装体の一例としての液体容器10は、たとえば、表面に印刷領域20を有する。印刷領域20には紫外線レーザーを照射され、日付などの文字が印字されている。
【0114】
[第三の印刷物の製造方法]
本発明の第三の印刷物の製造方法は、シート媒体の印刷可能領域に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、前記シート媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有するラミネート層を有し、前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が0.1g/m2以上であり、前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が1質量%以上45質量%以下であり、前記ラミネート層の厚みが10μm以上200μm以下である。
本発明の第三の印刷物の製造方法に使用されるシート媒体としては、前記第三の印刷物におけるシート媒体と同様のシート媒体が例示され、好ましい範囲も同様である。また、本発明の第三の印刷物の製造方法において、少なくとも紫外線レーザー照射領域におけるラミネート層の酸化チタン含有量が0.1g/m2以上であればよく、非照射領域の酸化チタン含有量は特に限定されないが、酸化チタンがラミネート層全体に内包されていることが好ましく、また、ラミネート層がシート基材の少なくとも片面全体に形成されていることが好ましいことから、非照射領域においても、ラミネート層における酸化チタン含有量が0.1g/m2以上であることが好ましい。
【0115】
紫外線レーザーの照射は、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように、紫外線レーザーを照射することが好ましい。
印刷領域および非印刷領域のラマン強度については、第三の印刷物において上述した通りである。
【0116】
〔紫外線レーザーの照射条件〕
紫外線レーザーの照射条件(紫外線レーザーの波長、平均出力、繰返周波数、スポット径、スキャンスピード、ラインピッチ)は、第一の印刷物の製造方法と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0117】
〔第三の印刷物の製造方法の態様〕
本発明の第三の印刷物の製造方法は、種々の態様で行うことができる。
以下に、本発明の第三の印刷物の製造方法が適用可能な種々な態様について例示するが、本発明の印刷物の製造方法は、下記の態様に限定されるものではない。印刷する情報は特に限定されないが、可変情報であることが好ましい。
本発明の印刷物の製造方法は、インラインで行われることが好ましい。
(1)包装体への直接印刷
本発明の第三の印刷物の製造方法の第一の実施態様は、酸化チタンを含有するラミネート層を有する包装体に情報を印刷する方法であって、梱包ライン上を移動中、または間欠停止中の包装体に直接紫外線レーザーにて印刷する工程を有する。
第一の実施態様の印刷物の製造方法は、ラミネート層が酸化チタンを0.1g/m2以上含有し、ラミネート層の酸化チタンの含有量が1質量%以上45質量%以下であり、ラミネート層の厚みが10μm以上200μm以下であるシート媒体にて包装体を作製し、紫外線レーザーにて直接印刷する。なお、少なくとも包装体の最外層が前記シート媒体にて作製されていればよい。
また、包装体としては、段ボール、箱等が例示され、該包装体の側面または上面に紫外線レーザーにて直接印刷することが好ましい。
【0118】
(2)ラベルへの印刷
本発明の第三の印刷物の製造方法の第二の実施形態は、酸化チタンを含有するラミネート層を有するラベルに情報を印刷する方法である。該ラベルの印刷面を構成するシート媒体のラミネート層が、酸化チタンを0.1g/m2以上含有すし、ラミネート層の酸化チタンの含有量が1質量%以上45質量%以下であり、ラミネート層の厚みが10μm以上200μm以下である。
印刷されたラベルは、ラベル貼り付け装置を用いて包装体にラベルを貼付することが好ましい。ラベル貼り付け装置としては、各種のラベル貼り付け装置が提案されている。なお、このとき、紫外線照射される面にラミネート層を有する。
第1のラベル貼り付け装置としては、ロール状に巻いたラベル原紙に接着剤を付与した後に物品に貼付する。より具体的には、ロール状に巻いたラベル原紙を1枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、この切断手段によって切断されたラベル原紙を、接着剤が塗布されたラベル原紙保持体によって受取り、このラベル原紙の裏面に接着剤を付着させる糊付け搬送手段と、この糊付け搬送手段から接着剤が付与されたラベル原紙(ラベル)を受け取って容器等の物品に貼付ける貼着手段とを備えたロールラベラにおいて、上記切断手段と糊付け搬送手段との間に、外面にラベル保持面を有する回転搬送手段を設けたロールラベラが例示され、特開平6-64637号公報が例示される。
また、ロール状に巻いたラベル原紙を一枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、貼付ロールに受け渡す受渡ロールと、貼付ロールに保持されたラベル原紙に糊を付与する糊付けロールとを有するロールラベラや、前記受渡ロールを不要とした態様が例示される。
紫外線レーザーの照射は、ロール状に巻いたラベル原紙を所定の長さに切断する前、または切断後であって次のロール等への受け渡し前であることが好ましい。ロールラベラの態様に合わせて、ロール状に巻いたラベル原紙の表面または裏面が、包装体に貼付した際の表面または裏面となるため、これに合わせて紫外線レーザーの照射を行う。
【0119】
第2のラベル貼り付け装置は、ラベルとして、粘着ラベルロールを使用する。この場合、少なくとも粘着剤が付与されている面と反対面である、紫外線レーザーが照射される面にラミネート層を有する。
剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合には、たとえば、粘着ラベルと剥離紙を分離する剥離紙分離手段と、剥離紙が分離された粘着ラベルを受け取る受渡ロールと、受渡ロールから粘着ラベルを吸引して、物品(包装体)に貼付する貼付ロールとを有する貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、剥離紙を分離する前、または剥離紙分離後であって貼付ロールに担持される前に行うことが好ましい。
また、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルと剥離紙とを分離する機構を有し、分離直後にラベルを貼付する機構を有し、セットされた粘着ラベルロールから剥離紙を分離するまでの間に紫外線レーザーにより印刷する装置が例示される。上記の粘着ラベルの貼付方法は、流し貼りとも呼ばれる。
さらに、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルから剥離紙を分離する機構を有し、粘着ラベルを物品(包装体)に貼付する機構を有し、前記貼付する機構が、シリンジ方式、エアジェット方式、またはロボットアーム方式であるラベル貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、セットされた剥離紙付きの粘着ラベルロールから、剥離紙を分離するまでの間で行われることが好ましい。
【0120】
ラベルとして、ライナレス粘着ラベルを使用してもよい。ライナレス粘着ラベルは、剥離紙のないラベルであり、剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合に比して、1ロールのラベル枚数が多く、剥離紙が存在しないため、安価であるという特徴を有する。ライナレス粘着ラベルを使用する場合、粘着剤が付与される面とは反対面である、紫外線レーザーが照射される面に、ラミネート層が形成されている。
ライナレス粘着ラベルを使用したラベル貼り付け装置としては、ライナレスラベルロールをセットする機構と、ライナレスラベルを1枚ずつに切断する切断機構と、切断されたライナレスラベルを物品(包装体)に貼付する貼付機構を有し、前記貼付機構が、シリンダ方式またはロボットアーム方式である装置が例示される。紫外線レーザーの照射による印刷は、ライナレスラベルロールをセットする機構から切断機構までの間、または、切断されたライナレスラベルが貼付機構に送られる間であることが好ましい。
【0121】
第3のラベル貼り付け装置は、酸化チタンを0.1g/m2以上含有するラミネート層を有するシート媒体を物品(包装体)に貼付した後に、紫外線レーザーにて印刷する。
ラベルの貼付の方法としては、上述した第1の装置および第2の装置が参照される。
【0122】
(3)粘着テープへの印刷
本発明の第三の印刷物の製造方法の第三の実施態様は、シート媒体を粘着テープとする態様である。この場合、粘着剤が付与されている面とは反対面に、ラミネート層を有する。
すなわち、第三の実施態様の印刷物の製造方法は、前記シート媒体から作製された粘着テープを物品(包装体)に貼付する工程を有し、前記貼付する工程の前、または貼付する工程の後に、紫外線レーザーにより印刷する工程を有する。
また、段ボール封緘機に紫外線レーザーによる印字装置を組み込んだ印刷装置を使用してもよい。具体的には、粘着テープ巻取りをセットする機構と、段ボールを搬送用のコンベアを有し、段ボールのフラップを折り込む機構と、粘着テープを貼付して段ボールを封緘する機構を有し、粘着テープを貼付する間、または貼付した後に、粘着テープに紫外線レーザーにて印刷する機構を有する。
【0123】
本発明の印刷物および印刷物の製造方法は、上記の態様に限定されるものではなく、印刷が求められる各種用途に応用可能である。
【0124】
[第三のレーザー印刷用印刷媒体]
本発明の第三のレーザー印刷用印刷媒体は、紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域を有するシート媒体からなるレーザー印刷用印刷媒体であって、前記シート媒体の印刷可能領域は、紙基材上に酸化チタンを含有するラミネート層を有し、前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が0.1g/m2以上であり、前記ラミネート層中の酸化チタンの含有量が1質量%以上45質量%以下であり、前記ラミネート層の厚みが10μm以上200μm以下である。本発明の第三のレーザー印刷用印刷媒体に紫外線レーザーを照射することにより、印刷が可能である。
前記第三のレーザー印刷用印刷媒体の好ましい態様は、上述した第三の印刷物におけるシート媒体の好ましい態様と同様であり、また、前記レーザー印刷用印刷媒体への印刷方法の好ましい態様は、上述した第三の印刷物の製造方法と同様である。
【実施例】
【0125】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0126】
実施例1~実施例3
[紙シート媒体の作製]
〔実施例1-1~実施例1-13、比較例1-1~1-2〕
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度86%)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-1に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-1に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
作製した紙シート媒体を再度離解して測定した繊維長は0.67mm、繊維幅は16.5μm、微細繊維は6.9%であった。
なお、酸化チタンとして、ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンを使用し、使用した酸化チタンの種類を表1-1に示した。
【0127】
〔実施例1-14〕
実施例1-2と同様にして、紙シート媒体を作製した。
スチレン系ブロック共重合体(スチレン-水添イソプレン-スチレンのトリブロック共重合体)(株式会社クラレ製、セプトン2063)100質量部、スチレン系粘着付与剤(三井化学株式会社製、FTR8100)70質量部、パラフィン系オイル(出光興産株式会社製、ダイアナプロセスオイルPW-90)50質量部をトルエンに溶解し均一になるまで撹拌して、粘着剤のトルエン溶液を得た。その後、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FOA)へナイフコーターにて乾燥後の膜厚が20μmになるように上記粘着剤を塗布した後、100℃、3分の条件にて溶剤のトルエンを乾燥させて得た粘着フィルムを上記紙製シートに貼り付けて印刷媒体を得た。
紙シート媒体を除去して、JIS K 7361-1:1997に準拠して透明樹脂層の全光線透過率を測定したところ、80%以上であった。
【0128】
〔実施例1-15〕
実施例1-2と同様にして、紙シート媒体を作製した。
単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へポリエチレンペレット(日本ポリエチレン株式会社製、ノバテック(登録商標)LC522)を投入し、320℃で溶融させた。その後、コロナ処理した紙製シートの上へ樹脂の厚みが20μmになるよう溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、ラミネート層を有するシート媒体積層体を得た。
紙シート媒体を除去して、JIS K 7361-1:1997に準拠して透明樹脂層の全光線透過率を測定したところ、80%以上であった。
【0129】
〔実施例1-16〕
針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP、白色度21.4%)を、CSFが550mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部、黄色着色顔料(御国色素株式会社製、イエローRS-5)0.1質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-1に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-1に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
なお、酸化チタンとして、ルチル型酸化チタンを使用し、使用した酸化チタンの種類を表1-1に示した。
【0130】
〔比較例1-3および1-4〕
比較例1-3では、印刷用紙(コクヨ株式会社製、KB39-7)へ、ハンディータイプのインクジェットプリンタ(山崎産業株式会社製、MOBILEJET MINI)を用いて印刷領域を付与した。また、インクジェットインクはとしては、山崎産業株式会社製、吸水素材用を使用した。
比較例1-4では、サーマルラベル(株式会社サトー製、レスプリ汎用サーマルラベル)へ、サーマルプリンタ(株式会社サトー製、レスプリT8)にて印字領域を付与した。
【0131】
(実施例:2-1、2-5、2-8、2-11~2-13、比較例:2-3)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度86.0%、ユーカリ材100%)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-2に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-2に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
【0132】
(実施例:2-2)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度86.0%、ユーカリ材100%)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。
針葉樹クラフトパルプ(NBKP、白色度84.4%)を、CSFが700mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。
その後、LBKP:NBKP=65:35の比率でパルプを混合し(混合後のパルプの白色度85.0%)、パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-2に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-2に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
また、実施例2-12では、実施例1-15と同様にして、透明樹脂層を設けた。
【0133】
(実施例:2-3、2-4、2-6、2-7、2-9、2-10)
針葉樹クラフトパルプ(NBKP、白色度84.4%)を、CSFが700mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-2に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-2に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
また、実施例2-4、2-7、2-10では、実施例1-15と同様にして、透明樹脂層を設けた。
【0134】
(実施例2-14)
実施例2-1で使用した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度86.0%)を、一度パルプマシンで脱水し、シート状に抄き上げた後、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。なお、パルプマシンでの脱水は、パルプマシンのメッシュで行われるため、メッシュの目穴サイズを選定することで、微細繊維を減少させることができる。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-2に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-2に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
【0135】
(実施例2-15)
実施例2-1で使用した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度86.0%、ユーカリ材100%)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。
粉末パルプは、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)のドライシートを、カッターミル(株式会社ホーライ製、HA8 2542 30E、スクリーン0.24mm)で機械粉砕して作製した。
その後、LBKP:粉砕パルプ=70:30の比率でパルプを混合し、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-2に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-2に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
【0136】
(実施例2-16)
実施例2-1で使用したものとは異なる広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度85.0%、アカシア材100%)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-2に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-2に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
【0137】
(実施例2-17)
実施例2-2で使用したものとは異なる針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、白色度85.0%、松材100%)を、CSFが700mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-2に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-2に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
【0138】
(比較例:2-1)
麻パルプ(白色度85.0%)を未叩解で使用し(CSF700mL)、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-2に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-2に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
【0139】
(比較例2-2)
実施例2-1で使用したものとは異なる広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度86.0%、ギョウリュウ材)を、CSFが300mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、酸化チタンを紙シート媒体における含有量が表1-2に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、表1-2に示す坪量および厚みの紙シート媒体を作製した。
【0140】
(比較例2-4)
実施例2-1で使用した紙シート媒体を使用し、赤外線レーザー(株式会社キーエンス製、MD-F3200)を使用して、10mm角のマーキングを実施した。照射条件は以下の通りである。
・波長:1090nm
・繰返周波数:60kHz
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:2000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:200μm
・出力:3W
その結果、印字を行うことができなかった。
【0141】
(比較例2-5)
実施例2-1で使用した紙シート媒体を使用し、グリーンレーザー(株式会社社キーエンス製、MD-S9910A)を使用して、10mm角のマーキングを実施した。照射条件は以下の通りである。
・波長:532nm
・繰返周波数:60kHz
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:2000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:200μm
・出力:3W
その結果、印字を行うことができなかった。
【0142】
(比較例2-6)
実施例2-1で使用した紙シート媒体を使用し、CO2レーザー(株式会社キーエンス製、ML-Z9610)を使用して、10mm角のマーキングを実施した。照射条件は以下の通りである。
・波長:10600nm
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:2000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:200μm
・出力:3W
その結果、印字を行うことができなかった。
【0143】
(実施例3-1~3-25、および比較例3-1、3-3、3-4)
<マスターバッチの作製方法>
樹脂50部をニーダー混練機に入れ、120℃~140℃(PE、PP)、270℃(PET)で混連して溶融状態にした後、酸化チタン50部を入れて10分間混練した。その後、混合物を単軸押出機にて押出し、ホットカット装置にてペレット状のマスターバッチを作製した。
<フィルム成型方法>
得られたマスターバッチと樹脂とを、表2の酸化チタン含有量になるように押出機に仕込み、コートハンガータイプのTダイ(200mmφ)押出機を使用して、樹脂温度120℃~140℃(PE、PP)、280℃(PET)で溶融押出し、20℃に温調されたキャストロールにピニングワイヤーに7kVの印加電圧をかけて密着急冷し、未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをロール縦延伸機にて延伸し、厚さ30~70μmの一軸延伸フィルムを得た。
【0144】
(比較例3-2)
特開平11-020316号公報の実施例6を参照して、シート媒体を作製した。具体的には、アクリルゴム(ユニマテック株式会社製、PA312)100質量部に対して、表2の酸化チタン含有量になるように酸化チタンを添加し、ステアリン酸1質量部、ワックス(サンノック)0.5質量部を添加し、ニーダーで10分間混練した後、10インチの二本ロールで練り増しし、一度ロールから取り出して冷却した後、再度ロールで熱入れを行い、そこに、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛3質量部を投入して、組成物を調製した。この組成物を110トンプレスで195℃、3分間のプレス加硫した後、165℃、6時間のオーブン加硫(二次加硫)を行ない、厚さ2mmの加硫シートを得た。
【0145】
(比較例3-5~比較例3-6)
比較例3-5では、インクジェット用OHPフィルム(コクヨ株式会社製、IT-120PF 45-035)へ、ハンディータイプのインクジェットプリンタ(山崎産業株式会社製、MOBILEJET MINI)を用いて印刷領域を付与した。また、インクジェットインクとしては、山崎産業株式会社製、非吸水素材用を使用した。
比較例3-6では、ポリエステルフィルムサーマル(リンテック株式会社製、FD-5810-45)へ、サーマルプリンタ(サトー株式会社製、レスプリT8)にて印字領域を付与した。
【0146】
〔酸化チタン〕
実施例および比較例で使用した酸化チタンの詳細は、以下の通りである。
<ルチル型酸化チタン>
・不定形、平均粒子径=0.2μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)(石原産業株式会社製、R780)
・不定形、平均粒子径=4.3μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)(石原産業株式会社製、PER410)
・針状、長径=1.7μm、短径=0.1μm(石原産業株式会社製、FTL100)
・針状、長径=10μm、短径=0.5μm(石原産業株式会社製、FTL400)
<アナターゼ型酸化チタン>
・不定形、平均粒子径0.1μm(石原産業株式会社製、A100)
【0147】
〔樹脂〕
実施例および比較例で使用した樹脂の詳細は以下の通りである。
・ポリエチレン:ノバテック(登録商標)LC522(日本ポリエチレン株式会社製)
・ポリプロピレン:住友化学株式会社製、FS2011DG3
・ポリエチレンテレフタレート:ユニチカ株式会社製、SA-8339P
・アクリルゴム(ユニマテック株式会社社製、PA312)
【0148】
[紫外線レーザーの照射条件-1(実施例1-1~1-16(実施例1-1~1-16を総称して、実施例1ともいい、以下、同様である)、比較例1-1、1-2、実施例3-1~3-25、比較例3-1~3-4)]
得られた印刷媒体に、紫外線レーザー(COHERENT社製、AVIA266-3000)を用いて、
図1に示すバーコードの印刷、および10mmの正方形をマーキングを行った。照射条件は、以下の通りである。
・波長:355nm
・繰返周波数:50kHz
・パルス幅:25ns
・スポット径:104μm
・スキャンスピード:4000mm/sec
・焦点距離:250mm
・ラインピッチ:150μm
また、出力は、表1および表2に示す値とした。
【0149】
[紫外線レーザーの照射条件-2(実施例2-1~2-17、比較例2-1~2-3)]
得られた印刷媒体に、紫外線レーザー(株式会社キーエンス製、MD-U1020C)を用いて、
図1に示すバーコードの印刷、および10mmの正方形をマーキングした。
照射条件は、以下の通りである。
・波長:355nm
・繰返周波数:40kHz
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:3000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:40μm
また、出力は、表1に示す値とした。
【0150】
[測定・評価]
使用したパルプの特性は、以下のように測定した。
〔CSF〕
カナダ標準ろ水度(Canadian standard freeness;CSF)は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定した。
【0151】
〔白色度〕
使用したパルプの白色度は、JIS P 8212:1998に準拠して測定した。
【0152】
また、得られたシート媒体または印刷物に対して、以下の評価を行った。
〔長さ加重平均繊維長、平均繊維幅、および微細繊維量の測定〕
シート媒体が紙シート媒体である場合、実施例および比較例で得られた印刷媒体を40cm角に切り出し、それをイオン交換水に浸し、濃度2%に調整した上で、24時間浸した。24時間浸した後、標準型離解機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて、未離解繊維がなくなるまで処理して、パルプを繊維状に離解した。透明樹脂層を有する場合には、透明樹脂層を除いた離解後のスラリー(パルプ繊維の分散液)を分取し、繊維長測定機(型式FS-5 UHDベースユニット付、バルメット社製)を使用して、「長さ荷重平均繊維長(ISO)」、「微細繊維量」、「繊維幅」を測定した。
なお、「長さ荷重平均繊維長(ISO)」は0.2mm以上7.6mm以下の繊維を選択して計算した長さ加重平均繊維長である。
また、「微細繊維量」は、離解されたパルプ繊維中の、繊維幅75μm以下、かつ、長さ0.08mm以上0.20mm以下の微細繊維の本数割合である。
「繊維幅」は幅10μm以上75μm以下の繊維を選択して計算した、長さ荷重平均繊維幅である。
また、紙シート媒体が少量しか確保できない場合は、ピストン運動で紙シート媒体を処理する手動式離解機(ダッシャー、バルメット社製)を用いてパルプを繊維状に離解してもよい。未離解繊維がなくなるまでピストン運動を継続するが、完全に離解しきらない場合にはピストン運動10,000回を上限とし、その後得られたパルプスラリーを測定に供試した。
【0153】
〔坪量、紙厚〕
実施例および比較例で用いた紙シート媒体の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。また、実施例および比較例の紙シート媒体の厚みは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0154】
〔フィルム媒体の厚み〕
実施例および比較例のフィルム媒体の厚みは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0155】
〔ラマンスペクトル-1〕
実施例1、比較例1、実施例3、および比較例3に関し、ラマンスペクトルは以下の方法により測定した。
<測定条件>
ラマンスペクトルの測定条件は、以下の通りであるが、測定に使用するレーザーで印刷物にダメージが見られる場合や、蛍光が強い場合等は、適宜レーザー出力や照射時間等の以下の測定条件を変更することができる。ただし、印刷領域と非印刷領域のラマン強度は同じ条件下で測定した数値を採用する。
・装置:レニショウ製 inVia Raman microscope QUONTOR
・励起レーザー:532nm
・レーザーパワー:50mW(出力100%時)
・レーザー出力:5%
・測定モード:共焦点モード
・照射時間:2.0sec
・積算回数:10回
・レーザースポット径:2.5μm
・対物レンズ:20倍
【0156】
<測定方法>
以下の方法により測定を行った。
(1)標準試料(単結晶シリコン、レニショー製)を用いて、ラマンシフト位置のキャリブレーションを実施した(単結晶シリコンの520.5cm
-1)。
(2)シート状のサンプルを試料台に設置した。シートが平面を保てるよう、必要に応じて押さえを設置した。
(3)装置にて
図2に示すようにフォーカスを合わせて観察(模擬レーザーにてフォーカスが最も小さくなるよう設定)した。印刷領域を測定する際は、目視で確認できる最も黒い箇所が測定時に表示されるガイドの中心にくるよう測定した。非印刷部を測定する際は、印刷領域から300μm以上距離を空けて測定した。
(4)得られたラマンスペクトルは、装置付属の処理ソフト(レニショー製、Wire5.2)にてベースライン補正(インテリジェント補正)を実施した。前記処理ソフトの多項式11にてベースラインを補正した。
(5)ルチル型酸化チタンの場合447±3cm
-1、アナターゼ型酸化チタンの場合516±3cm
-1の波数範囲の最大値(最大強度)を読み取り、下記式によりラマン強度比を算出した。
ラマン強度比=印刷領域の最大強度÷非印刷領域の最大強度
(6)印刷領域(印字部)、非印刷領域(非印字部)について、それぞれ10箇所を測定し、平均値を測定結果とした。
【0157】
〔ラマンスペクトル-2〕
実施例2および比較例2に関し、ラマンスペクトルは以下の方法により測定した。
<測定条件、測定方法>
ラマンスペクトルの測定条件および測定方法は、上述の通りであるが、測定に使用するレーザーで印刷物にダメージが見られる場合や、蛍光が強い場合等は、適宜レーザー出力や照射時間等の以下の測定条件を変更することができる。ただし、印刷領域と非印刷領域のラマン強度は同じ条件下で測定した数値を採用する。
測定値のバラつきを抑制する観点から、印刷領域のラマン強度のカウントが10,000以下の範囲で測定することが好ましい。従って、印刷領域のラマン強度のカウントが10,000以下の範囲となるように、適宜測定条件を変更して測定を行った。また、以下の測定条件にて10回測定し、平均値±2SD(標準偏差)を超えて外れた数値を除外し、再度平均してラマン強度の平均値とした。
【0158】
〔印字鮮明さ〕
得られた印刷物(
図1のバーコード印刷の印刷物)の印字の鮮明さを以下の評価基準で評価した。
マンセル表(日本色研事業株式会社製 色彩の定規)から、印字に近い色彩を目視で選定し、以下の基準で鮮明さを評価した。
A:マンセル表(無彩色)中の明度が4以下
B:マンセル表(無彩色)中の明度が5~6
C:マンセル表(無彩色)中の明度が7~8
D:マンセル表(無彩色)中の明度が9以上
【0159】
〔溶剤耐性〕
得られた印刷物(
図1のバーコード印刷の印刷物)の耐溶剤性を以下の評価基準で評価した。
100%アセトン(関東化学製)に印刷物を浸漬させ、15分間静置。その後印字物を取り出し、ティッシュペーパーで溶剤を拭き取り、以下の評価基準にて耐溶剤性を目視評価した。
A:浸漬前後で印字のカスレ、脱落が見られない(変化がない)。
B:浸漬前後で印字のカスレ、脱落が見られる。
【0160】
〔発煙量〕
10mmの正方形角のマーキングにおいて、紫外線レーザーによる照射時に、発煙が認められるかを観察し、発煙量の評価を、以下の方法で行った。
<判定基準>
0:目視で発煙を確認できない
1:目視でうっすら発煙を確認できるが、発煙量は非常に少ない
2:目視で発煙を確認できるが、発煙量は少ない。
3:目視で発煙を楽に確認でき、発煙量が多い
【0161】
〔強度ダウンの評価〕
引張強度の劣化具合を以下の方法で評価した。
得られた印刷媒体に、紫外線レーザー(株式会社キーエンス製、MD-U1020C)を用いて15cmの正方形をマーキングした。
照射条件は、以下の通りである。
・波長:355nm
・繰返周波数:40kHz
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:3000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:40μm
出力は、表2に示す値とした。
その後、幅15mm、長さ150mmの短冊を切り出し、引張試験に供試し、JIS P 8113:2006に従って、引張強度を測定した。
延伸フィルムでシートに方向差がある場合は、同じ方向から試験片を取り出した。
レーザー印字前も同様に測定に供試し、強度のダウン率を以下のように算出した。
ダウン率=100-(印字後の引張強度 ÷ 印字前の引張強度×100)
<判定基準>
0:ダウン率が1%以下
1:ダウン率が1%を超え5%以下
2:ダウン率が5%を超え10%以下
3:ダウン率が10%を超え15%以下
4:ダウン率が15%を超え20%以下
【0162】
〔酸化チタンの含有量〕
<試験片の作製>
印刷媒体の印刷可能領域を適当なサイズに切り出し、サンプル(試験片)とし、切り出した面積と質量を記録した。
【0163】
<試験片の溶解>
オートクレーブ装置(CEMジャパン製、MARS5)のテフロン(登録商標)製容器へ硝酸:フッ酸=50:5(体積%)の混合溶剤と試験片とを投入し、210℃、120分間でオートクレーブ処理し、試験片を溶解させた。試験片の質量は適宜変更してもよく、また試験片が溶け残る場合は硝酸、フッ酸の比率や処理温度、処理時間等を適宜変更してもよい。
試験片を溶解後、超純水を用いて正確に定容した。
【0164】
<溶解液中の酸化チタン量測定>
(1)ICP装置および測定条件は以下の通りである。
ICP装置:ICP-OEC装置(株式会社リガク製、CIROS1-20)
測定条件:
・キャリアガス:アルゴンガス
・アルゴンガス流量0.9L/min
・プラズマガス流量14L/min
・プラズマ出力1400W
・ポンプ回転数:2
・測定波長Ti:334.941nm
(2)検量線の作成
汎用混合標準液(SPEX社製、XSTC-622B)を、以下の濃度になるように正確に測り取り、上記測定条件で測定に供試し、チタン原子の発光波長に相当する334.941nmの強度を測定した。
・検量線作成用濃度:0ppm、0.01ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.5ppm、1.0ppm、3.0ppm、5.0ppm
(3)溶解液中の酸化チタン含有量測定
試験片が溶解した溶液を上記検量線内に収まるよう、超純水で希釈し、ICP測定に供試した。
(4)酸化チタン含有量算出方法
以下の式で酸化チタン含有量を算出した。なお、酸化チタンの分子量÷チタンの分子量≒1.669である。
酸化チタン含有量(g/m2)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669×1000÷面積(m2)
酸化チタン含有量(質量%)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669÷試験片質量(mg)×100
【0165】
〔酸化チタンの粒子径〕
紙およびフィルムに内添された酸化チタンの粒子径は、マッフル炉でシート媒体または印刷物を燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク株式会社製、S5200など)から得られるSEM画像から算出した。
具体的には、上記〔酸化チタンの含有量〕の測定と同様の条件で、灰分を得た。
走査型電子顕微鏡に供試する灰分のサンプルは、出力50Wの超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150など)で5分間かけてエタノールに分散させ0.01質量%スラリーを得た後、アルミ皿へ0.1mLをキャストし、60℃で乾燥させた後、SEMに供試する適当サイズへアルミ皿を切り出して作製した。隣り合う粒子と明瞭に見分けられるものを目視で選択し、1つの粒子の長径を粒子径とする。この際、1次粒子と凝集状態の2次粒子が混在していても明瞭に見分けられる場合はそれぞれを1つの粒子としてカウントし、無作為に選択した100個の粒子の平均径を粒子径とした。SEM画像観察時の倍率は酸化チタンの粒子径によって適宜選択し、20000倍程度とした。
なお、針状の場合には、長径を測定した100個の粒子について、短径の平均径を短径とした。
また、酸化チタン以外の粒子を含む場合、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製、EMAXなど)を用いてチタン元素の含まれる粒子を測定した。
【0166】
〔白色度の測定〕
得られた紙シート媒体を有する印刷媒体について、白色度を測定した。
紙シート媒体の白色度は分光白色度測色計(スガ試験機株式会社製)を使用してJIS P 8148:2018に記載の方法で測定した。
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
表1および表2に示すように、酸化チタンを特定量以上含有するシート媒体を有する印刷媒体に対して、紫外線レーザーにて直接印刷することで、印字鮮明さに優れ、かつ、耐溶剤性に優れた印刷物が得られた。また、透明樹脂層を設けた実施例1-14、1-15では、透明樹脂層を有していない実施例1-2に比べて、印字鮮明さに優れる画像が得られた。
また、シート媒体が紙である場合には、紙を構成するパルプの長さ加重平均繊維長および平均繊維幅、前記紙の坪量を特定の範囲とすることにより、より印字鮮明さに優れる画像が得られ、かつ、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制された。
シート媒体がフィルムである場合には、フィルムの厚みを特定の範囲とし、かつ、フィルムを特定の樹脂フィルムとすることにより、より印字鮮明さに優れる画像が得られ、かつ、紫外線レーザーの照射による強度の低下が抑制された。
一方、酸化チタンの含有量が特定量未満であるシート媒体を有する印刷媒体を使用した場合には、十分な印字鮮明さを得ることができなかった。
また、比較例1-3、1-4、3-5、3-6に示すように、従来のインクジェット法や感熱ラベルでは、十分な耐溶剤性が得られなかった。さらに、比較例2-4~2-6に示すように、赤外線レーザー、グリーンレーザーおよびCO2レーザーの照射では、印刷ができなかった。
【0172】
実施例4および実施例5
以下の実施例で使用した材料等は、以下の通りである。
[基材]
<紙>
・紙A:ダンボール用ライナー原紙(王子マテリア株式会社製、OFK-EM170、坪量170g/m2、紙厚205μm、白色度15%)
・紙B:特開2019-099923号公報の実施例1の方法に従い、酸化チタンの含有量が3g/m2となるように酸化チタンの含有量を変更した。酸化チタンとして、不定形のルチル型酸化チタン(粒子径=0.2μm、石原産業株式会社製 R780)を使用した。得られた紙の特性は、坪量80g/m2、厚さ120μm、白色度84.9%であった。
・紙C:特開2019-099923号公報の実施例1の方法に従い、酸化チタンの含有量が30g/m2となるように酸化チタンの種類および含有量を変更した。酸化チタンとして、不定形のルチル型酸化チタン(粒子径=0.2μm、石原産業株式会社製 R780)を使用した。得られた紙の特性は、坪量100g/m2、厚さ120μm、白色度84.9%であった。
・紙D:ダンンボール用ライナー原紙(紙A)とダンボール用中芯原紙(王子マテリア株式会社製、OND-EM160、坪量160g/m2、紙厚210μm)を段高4.5mm、段山数34山/30cmの段繰りロールを有するコルゲーターにてAフルートの両面ダンボールシートを作製した。なおライナー原紙と中芯原紙とを貼合するダンボール用接着剤には、通常用いられるワンタンク方式の澱粉糊を使用した。
【0173】
・紙1:広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度86.0%)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を作製した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、紙基材を作製した。得られた紙1の特性は、坪量70g/m2、厚さ90μm、白色度86%であった。
・紙2:広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度86.0%)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、白色度84.0%)を、CSFが700mLとなるように叩解し、3質量%懸濁液を作製した。
その後、LBKP:NBKP=65:35の比率でパルプを混合し、紙1と同様にして、紙基材を作製した。得られた紙2の特性は、坪量70g/m2、厚さ93μm、白色度85.6%であった。
・紙3:針葉樹クラフトパルプ(NBKP、白色度84.4%)を、CSFが700mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、紙基材を作製した。得られた紙3の特性は、坪量70g/m2、厚さ95μm、白色度84.3%であった。
・紙4:紙1で使用した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度86.0%)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。粉末パルプは、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)のドライシートを、カッターミル(株式会社ホーライ製、HA8 2542 30E、スクリーン0.24mm)で機械粉砕して作製した。その後、LBKP:粉末パルプ=70:30(質量比)の比率でパルプを混合し、紙1と同様にして、紙基材を作製した。得られた紙4の特性は、坪量70g/m2、厚さ86μm、白色度86.1%であった。
・紙5:紙4と同様に調製したLBKPおよび粉末パルプを、LBKP:粉末パルプ=70:10(質量比)の比率でパルプを混合し、紙1と同様にして、紙基材を作製した。得られた紙5の特性は、坪量70g/m2、厚さ89μm、白色度85.3%であった。
・紙6:紙1で使用した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を使用し、一度パルプマシンで脱水し、シート状に抄き上げた後、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。紙1と同様にして、紙基材を作製した。なお、パルプマシンでの脱水は、パルプマシンのメッシュで行われるため、メッシュの目穴サイズを選定することで、微細繊維を減少させることができる。得られた紙6の特性は、坪量70g/m2、厚さ90μm、白色度85.5%であった。
・紙7:広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を調製した。紙1と同様にして、紙基材を作製した。得られた紙7の特性は、坪量70g/m2、厚さ90μm、白色度35%であった。
・紙8:麻パルプを未叩解で使用し(CSF700mL)、3質量%の懸濁液を準備した。紙1と同様にして、紙基材を作製した。得られた紙8の特性は、坪量70g/m2、厚さ95μm、白色度85.1%であった。
・紙9:紙1で使用した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度86.0%)を使用し、CSFが200mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。紙1と同様にして、紙基材を作製した。得られた紙9の特性は、坪量70g/m2、厚さ85μm、白色度85.5%であった。
【0174】
[実施例4-1~4-5、比較例4-4]
塗工液として、東洋インキ株式会社製のKW050 AQP67白DMを使用した。
前記塗工液は、酸化チタンとして不定形酸化チタン(ルチル型、平均粒子径=0.2μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値))を含有し、熱可塑性樹脂としてアクリル系樹脂を含有する。塗工液中の酸化チタンの含有量は45質量%であり、アクリル系樹脂の含有量は15質量%である。
塗工液を、印刷試験機(RK Print Coat Instruments Ltd.製、Kロックスプルーファー)を使用して、表3に示す基材上に対して、酸化チタンの含有量が表3に示した値となるように塗工した。
【0175】
[実施例4-6、比較例4-1]
〔塗工液の調製〕
<バインダー溶液>
ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、エクセバール(登録商標)RS-2817SB)10質量部をイオン交換水90質量部に投入し、90℃に加熱して溶解させて作製した10質量%ポリビニルアルコール水溶液をバインダー溶液1とした。
<酸化チタン>
酸化チタンとして、不定形のルチル型酸化チタン(粒子径=0.2μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)、石原産業株式会社製 R780)を使用した。
<塗工液の調製>
酸化チタン10部を上記バインダー溶液1 90部へ投入し、ホモミキサーを使い、1000rpm、5分の条件で撹拌して塗工液を作製した。
<塗工層の形成>
基材として紙Aを使用し、酸化チタンの塗工量が表3に記載の値となるように、塗工した以外は実施例4-1と同様にして印刷媒体を作製した。
【0176】
[実施例4-7、4-12~4-16]
<酸化チタン>
酸化チタンとして、不定形のルチル型酸化チタン(粒子径=0.2μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)、石原産業株式会社製 R780)を使用した。
<塗工液の調製>
上記酸化チタン20部を上記バインダー溶液1 80部へ投入し、ホモミキサーを使い、1000rpm、5分の条件で撹拌して、塗工液を作製した。
<塗工層の形成>
基材として表3に記載の紙基材を使用し、酸化チタンの塗工量が表3に記載の値となるように塗工した以外は、実施例4-1と同様にして印刷媒体を作製した。
【0177】
[実施例4-8]
<酸化チタン>
酸化チタンとして、不定形のアナターゼ型酸化チタン(平均粒子径=0.2μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)、石原産業株式会社製 A100)を使用した。
<塗工液の調製>
上記酸化チタン20部を上記バインダー溶液1 80部へ投入し、ホモミキサーを使い、1000rpm、5分の条件で撹拌して、塗工液を作製した。
<塗工層の形成>
基材として表3に記載の紙基材を使用し、酸化チタンの塗工量が表3に記載の値となるように塗工した以外は、実施例4-1と同様にして印刷媒体を作製した。
【0178】
[実施例4-9~4-11]
<酸化チタン>
酸化チタンとして、下記の酸化チタンを使用した。
・石原産業株式会社製、PER410:平均粒子径4.3μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)、不定形(実施例4-9)
・石原産業株式会社製、FTL100:平均長径=1.7μm、平均短径=0.1μm、針状(実施例4-10)
・石原産業株式会社製、FTL400:平均長径=10.0μm、平均短径=0.5μm、針状(実施例4-11)
<塗工液の調製>
酸化チタン20部を上記バインダー溶液1 80部へ投入し、ホモミキサーを使い、1000rpm、5分の条件で撹拌して塗工液を作製した。
<塗工層の形成>
基材として表3に記載の紙基材を使用し、酸化チタンの塗工量が表3に記載の値となるように塗工した以外は、実施例4-1と同様にして印刷媒体を作製した。
【0179】
[実施例4-17]
<酸化チタン>
酸化チタンとして、不定形のルチル型酸化チタン(粒子径=0.2μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)、石原産業株式会社製、R780)を使用した。
<塗工液の調製>
上記酸化チタン20部を上記バインダー溶液1 80部へ投入し、ホモミキサーを使い、1000rpm、5分の条件で撹拌して、塗工液を作製した。
<塗工層の形成>
基材として表3に記載の紙基材を使用し、酸化チタンの塗工量が表3に記載の値となるように塗工した以外は、実施例4-1と同様にして印刷媒体を作製した。
<透明樹脂層の作製>
スチレン系ブロック共重合体(スチレン-水添イソプレン-スチレンのトリブロック共重合体)(株式会社クラレ製、セプトン2063)100質量部、スチレン系粘着付与剤(三井化学株式会社製、FTR8100)70質量部、パラフィン系オイル(出光興産株式会社製、ダイアナプロセスオイルPW-90)50質量部をトルエンに溶解し均一になるまで撹拌して得た粘着剤のトルエン溶液得た。その後、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FOA)へナイフコーターにて乾燥後の膜厚が30μmになるよう塗布した後、100℃、3分の条件にて溶剤のトルエンを乾燥させて得た粘着フィルムを紙製シートに貼り付けて紙シート媒体を得た。
紙製シートを除去して、JIS K 7361-1:1997に準拠して透明樹脂層の全光線透過率を測定したところ、80%以上であった。
【0180】
[実施例4-18]
<酸化チタン>
酸化チタンとして、不定形のルチル型酸化チタン(粒子径=0.2μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)、石原産業株式会社製 R780)を使用した。
<塗工液の調製>
上記酸化チタン20部を上記バインダー溶液1 80部へ投入し、ホモミキサーを使い、1000rpm、5分の条件で撹拌して、塗工液を作製した。
<塗工層の形成>
基材として表3に記載のフィルムを使用し、酸化チタンの塗工量が表3に記載の値となるように塗工した以外は、実施例4-1と同様にして印刷媒体を作製した。
<塗工層の形成>
二軸押出機(日立造船株式会社製、HMT100)へポリエチレンペレット(日本ポリエチレン株式会社製、ノバテック(登録商標)LC522)を投入し、320℃で溶融させた。その後、コロナ処理した紙製シートの上へ樹脂の厚みが20μmになるよう溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、ラミネート層を有するシート媒体積層体を得た。
紙製シートを除去して、JIS K 7361-1:1997に準拠して透明樹脂層の全光線透過率を測定したところ、80%以上であった。
【0181】
[比較例4-2]
印刷用紙(コクヨ株式会社製、KB39-7)へ、ハンディータイプのインクジェットプリンタ(山崎産業株式会社製、MOBILEJET MINI)を用いて印刷領域を付与した。インクジェットインクとしては、山崎産業株式会社製、吸水素材用を使用した。
【0182】
[比較例4-3]
サーマルラベル(株式会社サトー製、レスプリ汎用サーマルラベル)へ、サーマルプリンタ(株式会社サトー製、レスプリT8)にて印字領域を付与した。
【0183】
[実施例5-1~5-15、比較例5-1~5-5]
(塗工液の製造)
酸化チタンとしては、石原産業株式会社製R780(粒子径0.2μm)を使用した。
また、熱可塑性樹脂としては、エチレン-アクリル系バインダー(マイケルマンジャパン合同会社製、MP498345N、固形分濃度50%)を使用した。
<塗工液1の製造>
上記酸化チタン100質量部および上記エチレン-アクリル系バインダー(固形分濃度50%)200質量部を混合し、塗工液の粘度がザーンカップNo.3による測定で20秒となるように水で希釈し、塗工液1を調製した。
<塗工液2の製造>
上記酸化チタン100質量部および上記エチレン-アクリル系バインダー(固形分濃度50%)2300質量部を混合し、塗工液の粘度がザーンカップNo.3による測定で20秒となるように水で希釈し、塗工液2を調製した。
<塗工液3の製造>
上記酸化チタン100質量部および上記エチレン-アクリル系バインダー(固形分濃度50%)467質量部を混合し、塗工液の粘度がザーンカップNo.3による測定で20秒となるように水で希釈し、塗工液3を調製した。
<塗工液4の製造>
上記酸化チタン100質量部および上記エチレン-アクリル系バインダー(固形分濃度50%)300質量部を混合し、塗工液の粘度がザーンカップNo.3による測定で20秒となるように水で希釈し、塗工液4を調製した。
<塗工液5の製造>
上記酸化チタン100質量部および上記エチレン-アクリル系バインダー(固形分濃度50%)133質量部を混合し、塗工液の粘度がザーンカップNo.3による測定で20秒となるように水で希釈し、塗工液5を調製した。
<塗工液6の製造>
上記酸化チタン100質量部および上記エチレン-アクリル系バインダー(固形分濃度50%)50質量部を混合し、塗工液の粘度がザーンカップNo.3による測定で20秒となるように水で希釈し、塗工液6を調製した。
【0184】
(記録媒体の作製)
紙基材として、表3に記載の紙基材を使用し、表3に記載の塗工量となるように、表3に記載の塗工液を使用して、塗工層を作製した。
【0185】
実施例5-10については、塗工層の形成後に、以下のようにして、透明樹脂層を設けた。
単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へポリエチレンペレット(日本ポリエチレン株式会社製、ノバテック(登録商標)LC522)を投入し、320℃で溶融させた。その後、コロナ処理した塗工層上へ樹脂の厚みが20μmになるよう溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、ラミネート層を有する記録媒体を得た。
紙基材を除去して、JIS K 7361-1:1997に準拠して透明樹脂層の全光線透過率を測定したところ、80%以上であった。
【0186】
実施例5-11については、塗工層の形成後に、以下のようにして透明樹脂層を設けた。
紙製シートの塗工層上へ、樹脂の厚みが10μmになるよう、エチレン-アクリル系バインダー(エチレン-アクリル酸共重合体アイオノマー、マイケルマン社製、MP498345N.S、固形分50質量%)を、グラビアコーターを用いて塗工した。
【0187】
[比較例5-6]
比較例5-6では、紙基材の上に、酸化チタンを含有するラミネート層を形成して、記録媒体を作製した。
以下の材料を使用した。
ポリエチレン(PE):ノバテック(登録商標)LC522(日本ポリエチレン株式会社製)
酸化チタン:粒子径=0.2μm、石原産業株式会社製、R780
紙基材とラミネート層との積層方法は、以下の通りである。
<マスターバッチの作製方法>
特開2015-96568号公報に習い、以下の手順で作製した。
樹脂60部と酸化チタン40部をタンブラーミキサー(株式会社エイシン製、TM-65S)にて45rpm、1時間の条件で混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX30XCT、L/D=42)にてスクリュー回転数250rpm、シリンダー温度280℃の条件で溶融混練し、ストランド状に押出し、これを水槽にて冷却後、ペレタイザーを用いて平均軸径2.0mm、平均軸長3.0mmの柱状にペレット化してマスターバッチを得た。
<積層方法>
上記マスターバッチと樹脂を、酸化チタンが0.3質量%になるよう単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へ投入し、コロナ処理した紙1の上に樹脂の厚みが表記載の通りになるように、320℃で溶融し、積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、ラミネート層を有する記録媒体を得た。
【0188】
[比較例5-7]
実施例5-2で使用した記録媒体を使用し、赤外線レーザー(株式会社キーエンス製、MD-F3200)を使用して、10mm角のマーキングを実施した。照射条件は以下の通りである。
・波長:1090nm
・繰返周波数:60kHz
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:2000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:200μm
・出力:3W
その結果、印字を行うことができなかった。
【0189】
(比較例5-8)
実施例5-2で使用した紙シート媒体を使用し、グリーンレーザー(株式会社社キーエンス製、MD-S9910A)を使用して、10mm角のマーキングを実施した。照射条件は以下の通りである。
・波長:532nm
・繰返周波数:60kHz
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:2000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:200μm
・出力:3W
その結果、印字を行うことができなかった。
【0190】
(比較例5-9)
実施例5-2で使用した紙シート媒体を使用し、CO2レーザー(株式会社キーエンス製、ML-Z9610)を使用して、10mm角のマーキングを実施した。照射条件は以下の通りである。
・波長:10600nm
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:2000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:200μm
・出力:3W
その結果、印字を行うことができなかった。
【0191】
[紫外線レーザーの照射条件-1]
実施例4および比較例4-1、4-2に関し、得られたシート媒体に、紫外線レーザー(COHERENT社製、AVIA266-3000)を用いて
図1に示すバーコードの印刷、および10mm正方形角のマーキングを行った。照射条件は、以下の通りである。
・波長:355nm
・繰返周波数:50kHz
・パルス幅:25ns
・スポット径:104μm
・スキャンスピード:4000mm/sec
・焦点距離:250mm
・ラインピッチ:150μm
また、出力は、表3に示す値とした。
【0192】
[紫外線レーザーの照射条件-2]
実施例5および比較例5については、得られた記録媒体に、紫外線レーザー(キーエンス製、MD-U1020C)を用いて、
図1に示すバーコードの印刷、および10mmの正方形をマーキングした。
照射条件は、以下の通りである。
・波長:355nm
・繰返周波数:40kHz
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:3000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:40μm
また、出力は表3に示す値とした。
【0193】
[測定・評価]
使用したパルプの特性は、以下のように測定した。
〔CSF〕
カナダ標準ろ水度(Canadian standard freeness;CSF)は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定した。
【0194】
〔白色度〕
使用したパルプの白色度は、JIS P 8212:1998に準拠して測定した。
【0195】
また、得られた記録媒体(印刷媒体)または印刷物に対して、以下の評価を行った。
〔長さ加重平均繊維長、平均繊維幅、および微細繊維の本数割合の測定〕
実施例および比較例で得られた印刷媒体を40cm角に切り出し、それをイオン交換水に浸し、濃度2%に調整した上で、24時間浸した。24時間浸した後、標準型離解機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて、未離解繊維がなくなるまで処理して、パルプを繊維状に離解した。透明樹脂層を有する場合には、透明樹脂層を除いた離解後のスラリー(パルプ繊維の分散液)を分取し、繊維長測定機(型式FS-5 UHDベースユニット付、バルメット社製)を使用して、「長さ荷重平均繊維長(ISO)」、「微細繊維の本数割合」、および「平均繊維幅」を測定した。
なお、「長さ荷重平均繊維長(ISO)」は0.2mm以上7.6mm以下の繊維を選択して計算した長さ加重平均繊維長である。
また、「微細繊維の本数割合」は、離解されたパルプ繊維中の、繊維幅75μm以下、かつ、長さ0.08mm以上0.20mm以下の微細繊維の本数割合である。
「平均繊維幅」は幅10μm以上75μm以下の繊維を選択して計算した、長さ荷重平均繊維幅である。
また、紙シート媒体が少量しか確保できない場合は、ピストン運動で紙シート媒体を処理する手動式離解機(ダッシャー、バルメット社製)を用いてパルプを繊維状に離解してもよい。未離解繊維がなくなるまでピストン運動を継続するが、完全に離解しきらない場合にはピストン運動10,000回を上限とし、その後得られたパルプスラリーを測定に供試した。
【0196】
〔坪量、紙厚〕
実施例および比較例で用いた紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。また、実施例および比較例の紙シート媒体の厚みは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0197】
得られた印刷物に対して、以下の評価を行った。結果を以下の表3に示す。
〔ラマンスペクトル-1〕
実施例4および比較例4-1、4-4に関し、ラマンスペクトルは以下の方法により測定した。バーコード印刷を行った印刷物について、ラマンスペクトルを測定した。
<測定条件>
ラマンスペクトルの測定条件は、以下の通りであるが、測定に使用するレーザーで印刷物にダメージが見られる場合や、蛍光が強い場合等は、適宜レーザー出力や照射時間等の以下の測定条件を変更することができる。ただし、印刷領域と非印刷領域のラマン強度は同じ条件下で測定した数値を採用する。
・装置:レニショウ製 inVia Raman microscope QUONTOR
・励起レーザー:532nm
・レーザーパワー:50mW(出力100%時)
・レーザー出力:5%
・測定モード:共焦点モード
・照射時間:2.0sec
・積算回数:10回
・レーザースポット径:2.5μm
・対物レンズ:20倍
【0198】
<測定方法>
以下の方法により測定を行った。
(1)標準試料(単結晶シリコン、レニショー製)を用いて、ラマンシフト位置のキャリブレーションを実施した(単結晶シリコンの520.5cm
-1)。
(2)シート状のサンプルを試料台に設置した。シートが平面を保てるよう、必要に応じて押さえを設置した。
(3)装置にて
図3に示すようにフォーカスを合わせて観察(模擬レーザーにてフォーカスが最も小さくなるよう設定)した。印刷領域を測定する際は、目視で確認できる最も黒い箇所が測定時に表示されるガイドの中心にくるよう測定した。非印刷領域を測定する際は、印刷領域から300μm以上距離を空けて測定した。
(4)得られたラマンスペクトルは、装置付属の処理ソフト(レニショー製、Wire5.2)にてベースライン補正(インテリジェント補正)を実施した。前記処理ソフトの多項式11にてベースラインを補正した。
(5)ルチル型酸化チタンの場合447±3cm
-1、アナターゼ型酸化チタンの場合516±3cm
-1の波数範囲の最大値(最大強度)を読み取り、下記式によりラマン強度比を算出した。
ラマン強度比=印刷領域の最大強度÷非印刷領域の最大強度
(6)印刷領域(印字部)、非印刷領域(非印字部)について、それぞれ10箇所を測定し、平均値を測定結果とした。
【0199】
〔ラマンスペクトル-2〕
実施例5および比較例5に関し、ラマンスペクトルは以下の方法により測定した。
<測定条件、測定方法>
ラマンスペクトルの測定条件および測定方法は、上述の通りであるが、測定に使用するレーザーで印刷物にダメージが見られる場合や、蛍光が強い場合等は、適宜レーザー出力や照射時間等の以下の測定条件を変更することができる。ただし、印刷領域と非印刷領域のラマン強度は同じ条件下で測定した数値を採用する。
測定値のバラつきを抑制する観点から、印刷領域のラマン強度のカウントが10,000以下の範囲で測定することが好ましい。従って、印刷領域のラマン強度のカウントが10,000以下の範囲となるように、適宜測定条件を変更して測定を行った。また、以下の測定条件にて10回測定し、平均値±2SD(標準偏差)を超えて外れた数値を除外し、再度平均してラマン強度の平均値とした。
【0200】
〔印字鮮明さ〕
得られた印刷物(バーコード印刷)の印字の鮮明さを以下の評価基準で評価した。
マンセル表(日本色研事業株式会社製 色彩の定規)から、印字に近い色彩を目視で選定し、以下の基準で鮮明さを評価した。
A:マンセル表(無彩色)中の明度が4以下
B:マンセル表(無彩色)中の明度が5~6
C:マンセル表(無彩色)中の明度が7~8
D:マンセル表(無彩色)中の明度が9以上
【0201】
〔溶剤耐性〕
得られた印刷物の耐溶剤性を以下の評価基準で評価した。
100%アセトン(関東化学株式会社製)に印字物を浸漬させ、15分間静置した。その後印字物を取り出し、ティッシュペーパーで溶剤を拭き取り、以下の評価基準にて耐溶剤性を目視評価した。
A:浸漬前後で印字のカスレ、脱落が見られない(変化がない)。
B:浸漬前後で印字のカスレ、脱落が見られる。
【0202】
〔印字ムラ〕
実施例および比較例で印刷した10mmの正方形角を使用し、印字ムラを、以下の評価基準で目視評価した。
A:印字ムラが0か所
B:印字ムラが1か所以上3か所以下
C:印字ムラが4か所以上5か所以下
D:印字ムラが6か所以上10か所以下
E:印字ムラが11か所以上
【0203】
〔発煙量〕
紫外線レーザー照射により10mm角の正方形をマーキングする際の発煙量の評価を、以下の方法で行った。
<判定基準>
0:目視で発煙を確認できない
1:目視でうっすら発煙を確認できるが、発煙量は非常に少ない
2:目視で発煙を確認できるが、発煙量は少ない。
3:目視で発煙を楽に確認でき、発煙量が多い
【0204】
〔塗工層中の酸化チタンの含有量〕
1.非印刷可能領域を印刷媒体中に含む場合
<試験片の作製>
印刷媒体の印刷可能領域、非印刷可能領域(塗工層が設けられていない領域)それぞれを適当なサイズに切り出し、サンプル(試験片)とし、切り出した面積を記録した。
【0205】
<試験片の溶解>
オートクレーブ装置(CEMジャパン製、MARS5)のテフロン(登録商標)製容器へ硝酸:フッ酸=50:5(体積%)の混合溶剤と試験片とを投入し、210℃、120分間でオートクレーブ処理し、試験片を溶解させた。試験片の面積は適宜変更してもよく、また試験片が溶け残る場合は硝酸、フッ酸の比率や処理温度、処理時間等を適宜変更してもよい。
試験片を溶解後、超純水を用いて正確に定容した。
【0206】
<溶解液中の酸化チタン量測定>
(1)ICP装置および測定条件は以下の通りである。
ICP装置:ICP-OEC装置(株式会社リガク製、CIROS1-20)
測定条件:
・キャリアガス:アルゴンガス
・アルゴンガス流量0.9L/min
・プラズマガス流量14L/min
・プラズマ出力1400W
・ポンプ回転数:2
・測定波長Ti:334.941nm
(2)検量線の作成
汎用混合標準液(SPEX社製、XSTC-622B)を、以下の濃度になるように正確に測り取り、上記測定条件で測定に供試し、チタン原子の発光波長に相当する334.941nmの強度を測定した。
・検量線作成用濃度:0ppm、0.01ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.5ppm、1.0ppm、3.0ppm、5.0ppm
(3)溶解液中の酸化チタン含有量測定
試験片が溶解した溶液を上記検量線内に収まるよう、超純水で希釈し、ICP測定に供試した。
(4)酸化チタン含有量算出方法
以下の式で酸化チタン含有量を算出した。なお、酸化チタンの分子量÷チタンの分子量≒1.669である。
酸化チタン含有量(g/m2)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669×1000÷面積(m2)
印刷可能領域の酸化チタン含有量から、非印刷可能領域の酸化チタン含有量を減じることにより、塗工層中の酸化チタンの含有量を求めた。
【0207】
2.非印刷可能領域を印刷媒体中に含まない場合
<試験片の作製>
記録媒体2枚を適当なサイズに切り出し、切り出した面積を記録した。
切り出した試験片のうち1枚を研削装置(有限会社佐川製作所製、砥石寸法φ50.8×12.7mm)を用いて、コーティング層(塗工層)のみを削り取り除き、リファレンスサンプルとした。
過剰に削り取り過ぎないよう、適宜電子顕微鏡を用いて断面を観察した。
【0208】
<その後の処理>
1.と同様に処理し、2枚の酸化チタン含有量の差を塗工層の酸化チタン含有量とした。
【0209】
〔酸化チタンの粒子径〕
塗工層が含有する酸化チタンの粒子径は、マッフル炉で記録媒体または印刷物を燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク株式会社製、S5200など)から得られるSEM画像から算出した。
具体的には、基材が酸化チタンを含有しない場合には、上記〔酸化チタンの含有量〕の測定と同様の条件で、灰分を得た。
走査型電子顕微鏡に供試する灰分のサンプルは、出力50Wの超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150など)で5分間かけてイオン交換水に分散させ0.01質量%スラリーを得た後、アルミ皿上へ0.1mLをキャストし、60℃で乾燥させて作製した。隣り合う粒子と明瞭に見分けられるものを目視で選択し、1つの粒子の長径を粒子径とする。この際、1次粒子と凝集状態の2次粒子が混在していても明瞭に見分けられる場合はそれぞれを1つの粒子としてカウントし、無作為に選択した100個の粒子の平均径を粒子径とした。SEM画像観察時の倍率は酸化チタンの粒子径によって適宜選択し、20000倍程度とした。また、酸化チタン以外の粒子を含む場合、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製、EMAXなど)を用いてチタン元素の含まれる粒子を測定した。
なお、針状の場合には、長径を測定した100個の粒子について、短径の平均径を短径とした。
また、基材が酸化チタンを含有する紙の場合には、酸化チタンや無機顔料を含まない透明粘着テープ(3M株式会社製、309SN)に塗工層を移して灰分サンプルを作製した。具体的には、ローラー質量2kgのテープ圧着ローラー(株式会社安田精機製作所製、No349など)を用いて塗工層の上層へ粘着テープを貼付した。その後、セルロース粘度測定用の銅エチレンジアミン溶液(メルク社製)に24時間浸漬させた後、塗工層を含む粘着テープをイオン交換水でよく洗浄した。得られた塗工層を含む粘着テープの水分を拭き取り、60℃の乾燥機で1時間乾燥させた。その後、525℃のマッフル炉で燃焼させて粒子径測定に用いる灰分を作製し、上記と同じ方法で長径と短径を測定した。
基材が酸化チタンを含有するフィルムの場合には、酸化チタンを含まない透明粘着テープ(3M株式会社製、309SN)に塗工層を移して灰分サンプルを作製した。具体的には、ローラー質量2kgのテープ圧着ローラー(株式会社安田精機製作所製、No349など)を用いて塗工層の上層へ粘着テープを貼付し、貼付した粘着テープをフィルムから剥がして塗工層を移動させた。その後、525℃のマッフル炉で燃焼させて粒子径測定に用いる灰分を作製し、上記と同じ方法で長径と短径を測定した。
【0210】
〔塗工層の厚み〕
走査型電子顕微鏡から得られる画像データから塗工層の厚みを測定した。
(1)測定サンプルの作製
サンプルを光硬化型樹脂(東亞合成株式会社、D-800)で包埋し、ウルトラミクロトームで印刷媒体の断面出しを実施した。切削にはダイアモンドナイフを使用し、常温で切削した。
切削した断面へ厚さ20nm程度の金蒸着を施し、走査型電子顕微鏡の測定へ供試した。
(2)測定装置・条件
測定装置:S-3600(日立ハイテクノロジーズ株式会社製)
測定条件:倍率2000倍、
走査型顕微鏡の種類は上記に限らないが、スケールバーが表示されるタイプの装置を使用する。
(3)測定方法
走査型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置を用いて、観察する塗工層からチタン元素が含有されることを確認した後、倍率2000倍で画像データを取得した。得られた画像データを印刷用紙に印刷した後、定規で対象の塗工層の厚み(他の層との境界から境界の長さ)を測定し、スケールバーと比較して実際の塗工層の厚みを測定した。1つの測定サンプルから無作為に選んだ5箇所の画像データを取得し、1箇所の画像データから、塗工層が最も厚い箇所、薄い箇所の厚みを測定し、計10箇所の平均を塗工層の厚みとした。
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
表3の結果によれば、特定の紙基材上に、酸化チタンの含有量が0.6g/m2以上30g/m2以下であり、A/Bが特定の範囲であるの塗工層を設けた記録媒体を用いて、印刷領域と非印刷領域のラマン強度の比が0.7以下となるように、紫外線レーザーにより印刷することにより、鮮明であり(視認性に優れ)、かつ、溶剤耐性に優れた印刷物が得られた。またこのとき、印字ムラが抑制され、また、紫外線レーザー照射時に発生する発煙量が抑制された。
一方、酸化チタンの含有量が0.6g/m2未満である比較例4-1および5-2では、鮮明な画像が得られなかった。酸化チタンの含有量が30g/m2を超える比較例5-1では、印字ムラが発生し、また、発煙量も多かった。また、従来のインクジェット印刷および感熱ラベルにより得られた印刷物は、溶剤耐性に劣るものであった。さらに、上記ラマン強度の比が0.7を超える比較例4-4では、十分な印字鮮明性が得られなかった。
紙基材の長さ加重平均繊維長が3.5mmを超える比較例5-3、および0.6mm未満である比較例5-4では、印字ムラが発生した。また、A/Bが2.00を超える比較例5-5では、印字ムラが発生し、また、発煙量が多かった。さらに、ラミネートを行った比較例5-6では、十分な印字鮮明さが得られなかった。
さらに、比較例5-7~5-9に示すように、赤外線レーザー、グリーンレーザーおよびCO2レーザーの照射では、印刷ができなかった。
【0216】
実施例6および実施例7
[材料]
実施例で使用した各種材料は以下の通りである。
〔紙基材〕
・紙基材A:晒クラフト、坪量=70g/m2、紙厚=110μm(王子マテリア株式会社製)
・紙基材B:ダンボール用ライナー、坪量=280g/m2、紙厚=326μm、LB級(王子マテリア株式会社製)
・紙基材C:以下の手順で作製した。
<紙基材Cの作製方法>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、白色度84%)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。
針葉樹クラフトパルプ(NBKP、白色度84%)を、CSFが700mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。
その後、LBKP:NBKP=65:35の比率でパルプを混合し、パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、米坪70g/m2および厚み86μmの紙基材を作製した。
・紙基材D:以下手順で作製した。
<紙基材D作製方法>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を、CSFが400mLとなるように叩解し、3質量%の懸濁液を準備した。パルプ100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成型し、坪量30g/m2および厚み42μmの紙基材を作製した。
【0217】
〔樹脂〕
・ポリエチレン(PE):ノバテック(登録商標)LC522(日本ポリエチレン株式会社製)
・ポリプロピレン(PP):PH943B(サンアロマー株式会社製)
・ポリ乳酸(PLA):REVODE190(Zhejiang Hisun Biomaterials Co.,Ltd.製)
・ポリエチレンテレフタレート(PET):ユニチカ株式会社製、SA-8339P
・ポリブチレンサクシネート(PBS):ZM9B02(三菱ケミカル株式会社製)
【0218】
〔酸化チタン〕
・不定形、平均粒子径=0.2μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)、ルチル型:R780(石原産業株式会社製)
・不定形、平均粒子径=4.3μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)、ルチル型:PER410(石原産業株式会社製)
・針状、長径=1.7μm、短径=0.1μm、ルチル型:FTL100(石原産業株式会社製)
・針状、長径=10μm、短径=0.5μm、ルチル型:FTL400(石原産業株式会社製)
・不定形、平均粒子径=0.2μm(レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定値)、アナターゼ型:A100(石原産業株式会社製)
【0219】
[実施例6-1~6-16、比較例6-3~6-4、実施例7-1~7-11、比較例7-1、7-2、7-4、7-5]
基材とラミネート層との積層方法は、以下の通りである。
<マスターバッチの作製方法>
特開2015-96568号公報に習い、以下の手順で作製した。
樹脂60部と酸化チタン40部をタンブラーミキサー(株式会社エイシン製、TM-65S)にて45rpm、1時間の条件で混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX30XCT、L/D=42)にてスクリュー回転数250rpm、シリンダー温度280℃の条件で溶融混練し、ストランド状に押出し、これを水槽にて冷却後、ペレタイザーを用いて平均軸径2.0mm、平均軸長3.0mmの柱状にペレット化してマスターバッチを得た。
<積層方法>
上記マスターバッチと樹脂を、酸化チタンが表4の比率になるよう単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へ投入し、コロナ処理した表4に記載の紙基材の上に樹脂の厚みが表4記載の通りになるよう溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、ラミネート層を有するシート媒体を得た。
なお、以下温度でそれぞれ樹脂を溶融させた。
ポリエチレン:320℃
ポリプロピレン:300℃
PET:300℃
ポリ乳酸:230℃
PBS:250℃
【0220】
比較例7-3
酸化チタン(石原産業製、R780、ルチル型酸化チタン、不定形、平均粒子径=0.27μm)4.3部と、エチレン-アクリル系バインダー(エチレン-アクリル酸共重合体アイオノマー、マイケルマン、MP498345N.S、固形分50質量%)100部とを混合し、ホモミキサー(プライミクス製、ホモディスパー2.5型)を用いて5分間撹拌して、固形分濃度8質量%の塗工液を調製した。
前記塗工液を、グラビアコーターを用いて、紙基材上に対して、酸化チタンの含有量が表に示した値となるように塗工し、乾燥させた。
【0221】
比較例7-6
実施例7-5で使用した紙シート媒体を使用し、赤外線レーザー(株式会社キーエンス製、MD-F3200)を使用して、10mm角のマーキングを実施した。照射条件は以下の通りである。
・波長:1090nm
・繰返周波数:60kHz
・スキャンスピード:2000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:200μm
・出力:3W
その結果、印字を行うことができなかった。
【0222】
(比較例7-7)
実施例7-5で使用した紙シート媒体を使用し、グリーンレーザー(株式会社社キーエンス製、MD-S9910A)を使用して、10mm角のマーキングを実施した。照射条件は以下の通りである。
・波長:532nm
・繰返周波数:60kHz
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:2000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:200μm
・出力:3W
その結果、印字を行うことができなかった。
【0223】
(比較例7-8)
実施例7-5で使用した紙シート媒体を使用し、CO2レーザー(株式会社キーエンス製、ML-Z9610)を使用して、10mm角のマーキングを実施した。照射条件は以下の通りである。
・波長:10600nm
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:2000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:200μm
・出力:3W
その結果、印字を行うことができなかった。
【0224】
[紫外線レーザーの照射条件-1]
実施例6および比較例6については、得られたシート媒体に、紫外線レーザー(COHERENT社製、AVIA266-3000)を用いて、
図1に示すバーコードの印刷、または10mmの正方形のマーキングを行った。照射条件は、以下の通りである。
・波長:355nm
・繰返周波数:50kHz
・パルス幅:25ns
・スポット径:104μm
・スキャンスピード:4000mm/sec
・焦点距離:250mm
・ラインピッチ:150μm
また、出力は、表4に示す値とした。
【0225】
[紫外線レーザーの照射条件-2]
実施例7および比較例7については、得られた記録媒体に、紫外線レーザー(キーエンス製、MD-U1020C)を用いて、
図1に示すバーコードの印刷、または10mmの正方形をマーキングした。
照射条件は、以下の通りである。
・波長:355nm
・繰返周波数:40kHz
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:2000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:40μm
また、出力は、表4に示す値とした。
【0226】
[比較例6-1]
印刷用紙(コクヨ株式会社製、KB39-7)へハンディータイプのインクジェットプリンタ(山崎産業株式会社製、MOBILEJET MINI)を用いて印刷領域を付与した。
インクジェットインクとしては、吸水素材用(山崎産業株式会社製)を使用した。
【0227】
[比較例6-2]
サーマルラベル(株式会社サトー製、レスプリ汎用サーマルラベル)へ、サーマルプリンタ(株式会社サトー製、レスプリT8)にて印字領域を付与した。
【0228】
[測定・評価]
使用したパルプの特性は、以下のように測定した。
〔CSF〕
カナダ標準ろ水度(Canadian standard freeness;CSF)は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定した。
【0229】
〔白色度〕
使用したパルプの白色度は、JIS P 8212:1998に準拠して測定した。
【0230】
得られた印刷物に対して、以下の評価を行った。
〔ラマンスペクトル-1〕
実施例6および比較例6に関し、ラマンスペクトルは以下の方法により測定した。
<測定条件>
ラマンスペクトルの測定条件は、以下の通りであるが、測定に使用するレーザーで印刷物にダメージが見られる場合や、蛍光が強い場合等は、適宜レーザー出力や照射時間等の以下の測定条件を変更することができる。ただし、印刷領域と非印刷領域のラマン強度は同じ条件下で測定した数値を採用する。
・装置:レニショウ製 inVia Raman microscope QUONTOR
・励起レーザー:532nm
・レーザーパワー:50mW(出力100%時)
・レーザー出力:5%
・測定モード:共焦点モード
・照射時間:2.0sec
・積算回数:10回
・レーザースポット径:2.5μm
・対物レンズ:20倍
【0231】
<測定方法>
以下の方法により測定を行った。
(1)標準試料(単結晶シリコン、レニショー製)を用いて、ラマンシフト位置のキャリブレーションを実施した(単結晶シリコンの520.5cm
-1)。
(2)シート状のサンプルを試料台に設置した。シートが平面を保てるよう、必要に応じて押さえを設置した。
(3)装置にて
図4に示すようにフォーカスを合わせて観察(模擬レーザーにてフォーカスが最も小さくなるよう設定)した。印刷領域を測定する際は、目視で確認できる最も黒い箇所が測定時に表示されるガイドの中心にくるよう測定した。非印刷領域を測定する際は、印刷領域から300μm以上距離を空けて測定した。
(4)得られたラマンスペクトルは、装置付属の処理ソフト(レニショー製、Wire5.2)にてベースライン補正(インテリジェント補正)を実施した。前記処理ソフトの多項式11にてベースラインを補正した。
(5)ルチル型酸化チタンの場合447±3cm
-1、アナターゼ型酸化チタンの場合516±3cm
-1の波数範囲の最大値(最大強度)を読み取り、下記式によりラマン強度比を算出した。
ラマン強度比=印刷領域の最大強度÷非印刷領域の最大強度
(6)印刷領域(印字部)、非印刷領域(非印字部)について、それぞれ10箇所を測定し、平均値を測定結果とした。
【0232】
〔ラマンスペクトル-2〕
実施例7および比較例7に関し、ラマンスペクトルは以下の方法により測定した。
<測定条件、測定方法>
ラマンスペクトルの測定条件および測定方法は、上述の通りであるが、測定に使用するレーザーで印刷物にダメージが見られる場合や、蛍光が強い場合等は、適宜レーザー出力や照射時間等の以下の測定条件を変更することができる。ただし、印刷領域と非印刷領域のラマン強度は同じ条件下で測定した数値を採用する。
測定値のバラつきを抑制する観点から、印刷領域のラマン強度のカウントが10,000以下の範囲で測定することが好ましい。従って、印刷領域のラマン強度のカウントが10,000以下の範囲となるように、適宜測定条件を変更して測定を行った。また、以下の測定条件にて10回測定し、平均値±2SD(標準偏差)を超えて外れた数値を除外し、再度平均してラマン強度の平均値とした。
【0233】
〔印字鮮明さ〕
得られた印刷物の印字の鮮明さを以下の評価基準で評価した。
マンセル表(日本色研事業株式会社製 色彩の定規)から、印字に近い色彩を目視で選定し、以下の基準で鮮明さを評価した。
A:マンセル表(無彩色)中の明度が4以下
B:マンセル表(無彩色)中の明度が5~6
C:マンセル表(無彩色)中の明度が7~8
D:マンセル表(無彩色)中の明度が9以上
【0234】
〔溶剤耐性〕
得られた印刷物の耐溶剤性を以下の評価基準で評価した。
100%アセトン(関東化学製)に印刷物を浸漬させ、15分間静置。その後印字物を取り出し、ティッシュペーパーで溶剤を拭き取り、以下の評価基準にて耐溶剤性を目視評価した。
A:浸漬前後で印字のカスレ、脱落が見られない(変化がない)。
B:浸漬前後で印字のカスレ、脱落が見られる。
【0235】
〔引張強度ダウン率、破断伸びダウン率〕
引張強度および破断伸びの劣化具合(ダウン率)を以下の方法で評価した。
得られた記録媒体に、紫外線レーザー(キーエンス製、MD-U1020C)を用いて15cmの正方形をマーキングした。
照射条件は、以下の通りである。
・波長:355nm
・繰返周波数:40kHz
・スポット径=40μm
・スキャンスピード:3000mm/sec
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・ラインピッチ:40μm
・出力:80%(2W)(出力100%時2.5W)
その後、紙のタテ方向が長手になるよう、幅15mm、長さ150mmの短冊を取り出し引張試験に供試した。JIS P 8113:2006に準じて、引張強度および破断伸びを測定した。
レーザー印字前も同様に測定に供試し、引張強度および破断伸びのダウン率を以下のように算出した。
引張強度ダウン率=100-(印字後の引張強度 ÷ 印字前の引張強度×100)
破断伸びダウン率=100-(印字後の破断伸び ÷ 印字前の破断伸び×100)
<判定基準>
0:ダウン率が0%以上1%以下
1:ダウン率が1%を超え5%以下
2:ダウン率が5%を超え10%以下
3:ダウン率が10%を超え15%以下
4:ダウン率が15%を超え20%以下
【0236】
〔発煙量〕
10mm正方形角をマーキング時の発煙量の評価を、以下の方法で行った。
<判定基準>
0:目視で発煙を確認できない
1:目視でうっすら発煙を確認できるが、発煙量は非常に少ない
2:目視で発煙を確認できるが、発煙量は少ない
3:目視で発煙を楽に確認でき、発煙量が多い
【0237】
〔酸化チタンの含有量〕
<前処理>
紙基材に対し、ラミネート層と紙基材とを分離する前処理を実施した。適当なサイズに切り出した印刷可能領域をセルロース粘度測定用の銅エチレンジアミン溶液(メルク社製)に3時間浸漬させた後、ラミネート層を紙基材から剥離してイオン交換水を用いてよく洗浄した。その後、ラミネート層の水分を拭き取り、60℃の乾燥機で1時間乾燥させて、測定に供試するラミネート層を得た。
また、切り出した試験片は面積が算出できるよう切り出し、算出した面積を後述の式に適用した。
【0238】
<試験片の作製>
前処理したラミネート層および印刷媒体の印刷可能領域を適当なサイズに切り出し、サンプル(試験片)とし、切り出した面積と質量を記録した。
【0239】
<試験片の溶解>
オートクレーブ装置(CEMジャパン製、MARS5)のテフロン(登録商標)製容器へ硝酸:フッ酸=50:5(体積%)の混合溶剤と試験片とを投入し、210℃、120分間でオートクレーブ処理し、試験片を溶解させた。試験片の質量は適宜変更してもよく、また試験片が溶け残る場合は硝酸、フッ酸の比率や処理温度、処理時間等を適宜変更してもよい。
試験片を溶解後、超純水を用いて正確に定容した。
【0240】
<溶解液中の酸化チタン量測定>
(1)ICP装置および測定条件は以下の通りである。
ICP装置:ICP-OEC装置(株式会社リガク製、CIROS1-20)
測定条件:
・キャリアガス:アルゴンガス
・アルゴンガス流量0.9L/min
・プラズマガス流量14L/min
・プラズマ出力1400W
・ポンプ回転数:2
・測定波長Ti:334.941nm
(2)検量線の作成
汎用混合標準液(SPEX社製、XSTC-622B)を、以下の濃度になるように正確に測り取り、上記測定条件で測定に供試し、チタン原紙の発光波長に相当する334.941nmの強度を測定した。
・検量線作成用濃度:0ppm、0.01ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.5ppm、1.0ppm、3.0ppm、5.0ppm
(3)溶解液中の酸化チタン含有量測定
試験片が溶解した溶液を上記検量線内に収まるよう、超純水で希釈し、ICP測定に供試した。
(4)酸化チタン含有量算出方法
以下の式で酸化チタン含有量を算出した。なお、酸化チタンの分子量÷チタンの分子量≒1.669である。
酸化チタン含有量(g/m2)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669×1000÷面積(m2)
酸化チタン含有量(質量%)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669÷試験片質量(mg)×100
【0241】
〔酸化チタンの粒子径〕
紙およびフィルムに内添された酸化チタンの粒子径は、マッフル炉でシート媒体または印刷物を燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク株式会社製、S5200など)から得られるSEM画像から算出した。
具体的には、上記〔酸化チタンの含有量〕の測定と同様の条件で、灰分を得た。
走査型電子顕微鏡に供試する灰分のサンプルは、出力50Wの超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150など)で5分間かけてエタノールに分散させ0.01質量%スラリーを得た後、アルミ皿へ0.1mLをキャストし、60℃で乾燥させた後、SEMに供試する適当サイズへアルミ皿を切り出して作製した。隣り合う粒子と明瞭に見分けられるものを目視で選択し、1つの粒子の長径を粒子径とする。この際、1次粒子と凝集状態の2次粒子が混在していても明瞭に見分けられる場合はそれぞれを1つの粒子としてカウントし、無作為に選択した100個の粒子の平均径を粒子径とした。SEM画像観察時の倍率は酸化チタンの粒子径によって適宜選択し、20000倍程度とした。
なお、針状の場合には、長径を測定した100個の粒子について、短径の平均径を短径とした。
また、酸化チタン以外の粒子を含む場合、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製、EMAXなど)を用いてチタン元素の含まれる粒子を測定した。
【0242】
〔ラミネート層の厚みの測定〕
走査型電子顕微鏡から得られる画像データからラミネート層の厚みを測定した。
(1)測定サンプルの作製
サンプルを光硬化型樹脂(東亞合成株式会社製、D-800)で包埋し、ウルトラミクロトームでシート基材の断面出しを実施した。切削にはダイアモンドナイフを使用し、常温で切削した。
切削した断面へ、厚さ20nm程度の金蒸着を施し、走査型電子顕微鏡の測定へ供試した。
(2)測定装置・条件
測定装置:S-3600(日立ハイテクノロジーズ株式会社製)
測定条件:倍率2000倍、
走査型顕微鏡の種類は上記に限らないが、スケールバーが表示されるタイプの装置を使用する。
(3)測定方法
走査型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置を用いて、観察するラミネート層からチタン元素が含有されることを確認した後、倍率2000倍で画像データを取得した。得られた画像データを印刷用紙に印刷した後、定規で対象のラミネート層の厚さ(他の層との境界から境界の長さ)を測定し、スケールバーと比較して実際のラミネート層の厚みを測定した。1つの測定サンプルから無作為に選んだ5箇所の画像データを取得し、1箇所の画像データから、無作為に選択した10箇所の厚みを測定した後、計50箇所の平均をラミネート層の層厚とした。
【0243】
〔シート媒体の坪量の測定〕
シート媒体の坪量はJIS P 8124:2011記載の方法で測定した。
【0244】
〔シート媒体の厚さの測定〕
シート媒体の坪量はJIS P 8118:2014記載の方法で測定した。
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
表4に示すように、酸化チタンを0.1g/m2以上含有し、酸化チタンの含有量が1質量%以上45質量%以下であり、前記ラミネート層の厚みが10μm以上200μm以下であるラミネート層を有する紙基材に対して、紫外線レーザーにて直接印刷することで、印字鮮明さに優れ、かつ、耐溶剤性に優れた印刷物が得られた。さらに、印刷物の引張強度や破断伸びの劣化が抑制され、紫外線レーザー照射時の発煙量も抑制された。
一方、酸化チタンの含有量が0.1g/m2未満であるラミネート層を有するシート媒体を使用した比較例6-3、比較例7-1では、十分な印字鮮明さを得ることができなかった。また、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70を超える比較例6-4では、十分な印字鮮明さを得ることができなかった。
ラミネート層中の酸化チタンの含有量が45質量%を超える比較例7-2では、発煙量が多かった。また、ラミネート層中の酸化チタンの含有量が1質量%未満である比較例7-4では、十分な印字鮮明性が得られなかった。ラミネート層の厚みが10μm未満である比較例7-4および7-5では、引張強度および破断伸びの劣化が大きかった。
また、比較例6-1および6-2に示すように、従来のインクジェット法や感熱ラベルでは、十分な耐溶剤性が得られなかった。さらに、ラミネート層に代えて、塗工により酸化チタンを含有する塗工層を設けた比較例7-3では、引張強度および破断伸びの劣化が大きかった。また、比較例7-6~7-8に示すように、赤外線レーザー、グリーンレーザーおよびCO2レーザーでは、印刷ができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明の第一~第三の印刷物は、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、視認性に優れる。本発明の第一~第三の印刷物は、日付、バーコード等の可変情報が印刷された包装体、ラベル、および粘着テープなどに好適に適用される。さらに、本発明の第一~第三の印刷物の製造方法は、包装体、ラベル、粘着テープなどへの可変情報の印刷に好適に適用される。さらに、本発明の第一~第三のレーザー印刷用印刷媒体は、紫外線レーザーによる上記の印刷物の製造方法に好適に使用される。