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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】カルコゲナイドガラス材
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/32 20060101AFI20220511BHJP
   C03B 23/037 20060101ALI20220511BHJP
   C03C 4/00 20060101ALI20220511BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C03C3/32
C03B23/037
C03C4/00
G02B1/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017149788
(22)【出願日】2017-08-02
(65)【公開番号】P2019026530
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松下 佳雅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史雄
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-127639(JP,A)
【文献】特開2001-354441(JP,A)
【文献】国際公開第2016/184770(WO,A1)
【文献】特開2015-129072(JP,A)
【文献】特開平05-330832(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0064731(US,A1)
【文献】特開平07-291655(JP,A)
【文献】特開昭63-017231(JP,A)
【文献】特開2003-192362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/32
C03C 4/00
C03B 23/037
G02B 1/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モル%で、S+Se+Te 40~90%、Sb+As 20~35%を含有するガラス母材をリドロー法により線引きし、
線引き後のカルコゲナイドガラス材の直径が3mm以上15mm以下であることを特徴とするカルコゲナイドガラス材の製造方法。
【請求項2】
線引き温度が、(カルコゲナイドガラス材のガラス転移点+100℃)以下であることを特徴とする請求項に記載のカルコゲナイドガラス材の製造方法。
【請求項3】
真空雰囲気中または不活性雰囲気中で線引きすることを特徴とする請求項またはに記載のカルコゲナイドガラス材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサ、赤外線カメラ等に使用されるカルコゲナイドガラス材に関する。
【背景技術】
【0002】
車載ナイトビジョンやセキュリティシステム等は、夜間の生体検知に用いられる赤外線センサを備えている。赤外線センサは、生体から発せられる波長約8~14μmの赤外線を感知するため、センサ部の前には当該波長範囲の赤外線を透過するフィルターやレンズ等の光学素子が設けられる。
【0003】
上記のような光学素子用の材料として、GeやZnSeが挙げられる。これらは結晶体であるため加工性に劣り、非球面レンズ等の複雑な形状に加工することが困難である。そのため量産しにくく、また赤外線センサの小型化も困難であるという問題がある。
【0004】
そこで、波長約8~14μmの赤外線を透過し、加工が比較的容易なガラス質の材料として、カルコゲナイドガラスが提案されている。(例えば特許文献1参照)
【0005】
近年、赤外線センサのさらなる小型化のため、径の小さいカルコゲナイドガラスが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-161374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、径の小さなカルコゲナイドガラスは、耐候性、機械的強度に劣る、また赤外線センサの光学素子として、前記カルコゲナイドガラスを用いると画像の歪み、乱れが生じるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、耐候性、機械的強度に優れ、赤外線センサの光学素子として好適な小径のカルコゲナイドガラス材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、種々の検討を行った結果、以下の知見を得て、本発明を提案するに至った。小径のカルコゲナイドガラス材は通常切削、研磨により作製される。カルコゲナイドガラスの側面が研磨されていると、側面に微細な研磨傷が形成され側面の比表面積が大きくなる。その結果、外気との接触面積が大きくなるため耐候性が低下しやすくなる。また研磨工程によりグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥が生じるため機械的強度が低下しやすくなる。ところで、小径のカルコゲナイドガラス材を作製しようとすると脈理が発生しやすく、カルコゲナイドガラス材中にサイズが大きい脈理が存在すると、赤外線センサの画像の歪み、乱れが生じやすくなる。
【0010】
本発明のカルコゲナイドガラス材は、側面が未研磨で、直径15mm以下の柱状のカルコゲナイドガラス材であって、組成として、モル%で、S+Se+Te 40~90%を含有し、ガラス材中に長さ500μm以上の脈理が存在しないことを特徴とする。
【0011】
側面を未研磨とすることにより、比表面積が小さくなり耐候性が向上しやすく、また機械的強度を低下させるグリフィスフローが生じないため機械的強度を向上しやすい。さらに、長さ500μm以上の脈理が存在しないため、赤外線センサの画像の歪み、乱れが生じ難くなる。
【0012】
本発明のカルコゲナイドガラス材は、側面が火造り面であることが好ましい。側面を火造り面とすることにより、比表面積がより小さくなり耐候性、機械的強度を更に向上しやすい。
【0013】
本発明のカルコゲナイドガラス材は、モル%で、Ge+Ga+Sb+As 0超~50%を含有することが好ましい。
【0014】
本発明のカルコゲナイドガラス材は、モル%で、Ge+Ga 0~40%、Sb+As 0~45%を含有することが好ましい。
【0015】
本発明のカルコゲナイドガラス材の製造方法は、モル%で、S+Se+Te 40~90%を含有するガラス母材をリドロー法により線引きすることを特徴とする。ガラス母材をリドローすることにより、未研磨かつ小径のカルコゲナイドガラスを容易に得ることが可能になる。
【0016】
本発明のカルコゲナイドガラス材の製造方法は、線引き温度が、(カルコゲナイドガラスのガラス転移点+100℃)以下であることが好ましい。線引き温度を、(カルコゲナイドガラスのガラス転移点+100℃)以下にすることにより、ガラス成分の蒸発を抑制できるため、脈理が生じにくくなる。
【0017】
本発明のカルコゲナイドガラス材の製造方法は、真空中または不活性雰囲気中で線引きすることが好ましい。真空中または不活性雰囲気中で線引きすることにより、ガラス成分の蒸発をさらに抑制できるため、脈理が生じにくくなる。
【0018】
本発明の光学素子は、上記のカルコゲナイドガラス材を用いることを特徴とする。
【0019】
本発明の赤外線センサは、上記の光学素子を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐候性、機械的強度に優れ、赤外線センサの光学素子として好適な小径のカルコゲナイドガラス材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1で得られた試料の内部を示す写真である。
図2】比較例1で得られた試料の内部を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のカルコゲナイドガラス材は、側面が未研磨であり、特に火造り面であることが好ましい。側面が研磨されていると、側面の比表面積が大きくなるため大気中の酸素、水分との反応が促進され耐候性が低下しやすく、また研磨工程によりグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥が生じるため機械的強度が低下しやすくなる。ちなみに、製造工程中に研磨工程を含ませると、コストアップに繋がるという問題もある。
【0023】
本発明のカルコゲナイドガラス材は柱状であり、その直径は15mm以下であり、10mm以下、特に5mm以下であることが好ましい。直径が大きすぎると、赤外線センサを小型化しにくくなる。なお、直径の下限は特に限定されないが現実的には1mm以上である。
【0024】
本発明のカルコゲナイドガラス材は、長さ500μm以上の脈理が存在しない。カルコゲナイドガラス材中に脈理が存在するとしても、その長さは500μm未満であり、200μm以下、100μm以下、50μm以下、特に10μm以下であることが好ましい。このようにすれば、光学素子として用いる際、画像の歪みや乱れに起因する解像度の低下を抑制することができる。
【0025】
本発明のカルコゲナイドガラス材は、モル%で、S+Se+Te 40~90%を含有する。ガラス組成を上記のように限定した理由を以下に示す。なお、以下の各成分の含有量に関する説明において、特に断りのない限り、「%」は「モル%」を意味する。
【0026】
カルコゲン元素であるS、Se及びTeはガラス骨格を形成する成分である。S+Se+Teの含有量(S、Se及びTeの合量)は、40~90%であり、50~80%、50~65%、特に55~65%であることが好ましい。S+Se+Teの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。一方、S+Se+Teの含有量が多すぎると溶融時やリドロー時にガラス成分の蒸発が生じやすく、脈理の原因となりやすい。
【0027】
上記成分以外にも、以下に示す種々の成分を含有させることができる。
【0028】
Ge、Ga、Sb、及びAsはガラス化範囲を広げ、ガラスの熱安定性を高める成分である。Ge+Ga+Sb+As(Ge、Ga、Sb及びAsの合量)は、0超~50%、10~45%、15~43%、20~43%、25~43%、特に30~43%であることが好ましい。Ge+Ga+Sb+Asの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。
【0029】
また、Ge+Ga(Ge、Gaの合量)は、0~40%、2~35%、4~33%、4~30%、4~28%、特に4~25%であることが好ましい。Sb+As(Sb、Asの合量)は、0~45%、5~40%、10~35%、15~35%、特に20~35%であることが好ましい。
【0030】
以上の組成を有するカルコゲナイドガラス材は、ガラス転移点が100~400℃、120~380℃、特に140~360℃になりやすい。
【0031】
次に、本発明のカルコゲナイドガラス材の製造方法について説明する。なお、本発明のカルコゲナイドガラス材は、以下の製造方法1にて作製することができる。
【0032】
(製造方法1)
上記のガラス組成となるように、原料を混合し、原料バッチを得る。次に、石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、原料バッチを入れ、真空排気を行いながら酸素バーナーで石英ガラスアンプルを封管する。なお、石英ガラスアンプルの直径は、15mm以上、17mm以上、特に20mm以上であることが好ましい。石英ガラスアンプルの直径が小さすぎると、石英ガラスアンプル内で溶融物が動きづらいため、充分に攪拌効果が得られず、脈理が発生しやすくなる。
【0033】
次に、封管された石英ガラスアンプルを溶融炉内で10~20℃/時間の速度で650~1000℃まで昇温後、6~12時間保持する。保持時間中、必要に応じて、石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌する。
【0034】
続いて、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、室温まで急冷することによりガラス母材を得る。その後、石英ガラスアンプルを切断してガラス母材を取り出す。
【0035】
得られたガラス母材をリドロー法により線引きすることにより、さらに径の小さい柱状のカルコゲナイドガラス材を得ることができる。なお、リドロー法により作製したカルコゲナイドガラス材の側面は火造り面であり、耐候性、機械的強度に優れる。
【0036】
線引き温度は、(カルコゲナイドガラス材のガラス転移点+100℃)以下、(カルコゲナイドガラス材のガラス転移点+80℃)以下、(カルコゲナイドガラス材のガラス転移点+60℃)以下、特に(カルコゲナイドガラス材のガラス転移点+40℃)以下であることが好ましい。線引き温度が高すぎると、ガラス成分が蒸発しやすくなり、脈理が発生しやすく、またガラス材内部の屈折率が不均一になりやすい。線引きする雰囲気は、真空雰囲気中または不活性雰囲気中であることが好ましい。不活性雰囲気としては、窒素、アルゴンまたはヘリウム雰囲気が好ましい。安価である点から、特に窒素雰囲気が好ましい。雰囲気制御を行わずに線引きすると、カルコゲナイドガラス材中の成分が大気中の酸素と反応し、ガラス成分の蒸発が促進される。例えば、硫黄を多く含有する硫化物系のカルコゲナイドガラス材では、ガラス材中の硫黄が酸素と反応し、SOがガラス材表面から蒸発するため、脈理が発生しやすく、またガラス材内部の屈折率が不均一になりやすい。さらに、ガラス材が酸化され、赤外線透過特性が低下する傾向がある。
【0037】
また製造方法1に代えて、以下の製造方法2、3にて、カルコゲナイドガラス材を作製しても構わない。
【0038】
(製造方法2)
上記のガラス組成となるように、原料を混合し、原料バッチを得る。次に、石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、原料バッチを入れ、真空排気を行いながら酸素バーナーで石英ガラスアンプルを封管する。なお、石英ガラスアンプルの直径は、上記と同様である。
【0039】
次に、封管された石英ガラスアンプルを溶融炉内で10~20℃/時間の速度で650~1000℃まで昇温後、6~12時間保持する。保持時間中、必要に応じて、石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌する。
【0040】
次に、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、不活性雰囲気中にて融液を鋳型に流し込み、室温まで急冷することによりカルコゲナイドガラス材を得る。その後、得られたカルコゲナイドガラス材をリドロー法により線引きしても構わない。鋳型の材質は、カーボンまたは石英ガラスであることが好ましい。金属製の鋳型を用いた場合、溶融物と反応し、合金を形成する可能性がある。また、カルコゲナイドガラス材の直径は鋳型の内径で決まるため、鋳型の内径は、作製しようとするカルコゲナイドガラス材の直径に合わせて選択すればよい。
【0041】
(製造方法3)
上記のガラス組成となるように、原料を混合し、原料バッチを得る。次に、石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、原料バッチを入れ、真空排気を行いながら酸素バーナーで石英ガラスアンプルを封管する。石英ガラスアンプルの形状は、内径15mm以下のガラス成形部に、内径15mm以上の攪拌部が接続されていることが好ましい。これにより、攪拌時に溶融物が攪拌部に流れ込むことで、石英ガラスアンプル内で溶融物が動きやすくなる。なお、ガラス成形部の内径は作製しようとするカルコゲナイドガラス材の直径に合わせて選択すればよい。
【0042】
次に、封管された石英ガラスアンプルを溶融炉内で10~20℃/時間の速度で650~1000℃まで昇温後、6~12時間保持する。保持時間中、必要に応じて、石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌する。
【0043】
続いて、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、融液をガラス成形部に移動させ、室温まで急冷することによりカルコゲナイドガラス材を得る。
【0044】
本発明のカルコゲナイドガラス材は、耐候性、機械的強度に優れ、画像の歪み、乱れを引き起こす500μm以上の脈理を有しないため、赤外線カメラの赤外線センサ部に赤外光を集光させるためのレンズ等の光学素子として好適である。
【実施例
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
表1~16は、本発明の実施例1~180、比較例1、2を示している。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】
【表8】
【0055】
【表9】
【0056】
【表10】
【0057】
【表11】
【0058】
【表12】
【0059】
【表13】
【0060】
【表14】
【0061】
【表15】
【0062】
【表16】
【0063】
実施例1~60、比較例2の試料は次のようにして作製した。表に示す組成になるように原料を調合し、原料バッチを得た。次に、純水で洗浄した内径15~30mmの石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、原料バッチを入れ、真空排気を行いながら酸素バーナーで石英ガラスアンプルを封管した。封管された石英ガラスアンプルを溶融炉内で10~20℃/時間の速度で650~1000℃まで昇温後、6~12時間保持した。保持時間中、2時間ごとに石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌した。その後、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、室温まで急冷することにより表に示す直径を有する円柱状のガラス母材を得た。
【0064】
得られたガラス母材を窒素雰囲気下にて、ガラス転移点より30~50℃高い温度に加熱し、リドロー法により線引きすることで表に示す直径を有する円柱状のカルコゲナイドガラス材を得た。
【0065】
実施例61~120の試料は以下のようにして作製した。表に示す組成になるように原料を調合し、原料バッチを得た。次に、純水で洗浄した内径15~50mmの石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、原料バッチを入れ、真空排気を行いながら酸素バーナーで石英ガラスアンプルを封管した。封管された石英ガラスアンプルを溶融炉内で10~20℃/時間の速度で650~1000℃まで昇温後、6~12時間保持した。保持時間中、2時間ごとに石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌した。その後、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、窒素雰囲気下にて石英ガラスアンプルの一部を切断し、融液をカーボン製の鋳型に流し込み、室温まで急冷することにより表に示す直径を有する円柱状のカルコゲナイドガラス材を得た。
【0066】
実施例121~180の試料は以下のようにして作製した。表に示す組成になるように原料を調合し、原料バッチを得た。次に、純水で洗浄した石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、原料バッチを入れ、真空排気を行いながら酸素バーナーで石英ガラスアンプルを封管した。表に示す攪拌部の内径、及び、成形部の内径を有する封管された石英ガラスアンプルを溶融炉内で10~20℃/時間の速度で650~1000℃まで昇温後、6~12時間保持した。保持時間中、2時間ごとに石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌した。その後、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、融液を成形部に移動させ、室温まで急冷することにより表に示す直径を有する円柱状のカルコゲナイドガラス材を得た。
【0067】
比較例1は以下のようにして作製した。表に示す組成になるように原料を調合し、原料バッチを得た。次に、純水で洗浄した内径5mmの石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、原料バッチを入れ、真空排気を行いながら酸素バーナーで石英ガラスアンプルを封管した。封管された石英ガラスアンプルを溶融炉内で15℃/時間の速度で800℃まで昇温後、10時間保持した。保持時間中、2時間ごとに石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌した。その後、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、室温まで急冷することによりカルコゲナイドガラス材を得た。
【0068】
得られた試料について、ガラス転移点、脈理を測定または評価した。
【0069】
ガラス転移点は、TMA(熱機械分析装置)により測定した。
【0070】
脈理は次のようにして評価した。得られた試料を波長1μmの赤外光を用いたシャドウグラフ法にて内部観察を行った。長さ500μm以上の脈理が観察されたものを「○」、500μm以上の脈理が観察されなかったものを「×」とした。図1に、実施例1の試料の内部を撮影した写真を示す。図2に、比較例1の試料の内部を撮影した写真を示す。
【0071】
実施例1~180の試料は長さ500μm以上の脈理が観察されず、均質性に優れていた。また、未研磨であるため、耐候性、機械的強度に優れると考えられる。一方、比較例1、2は長さ500μm以上の脈理が観察され、均質性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のカルコゲナイドガラス材は、赤外線カメラの、赤外線センサ部に赤外光を集光させるためのレンズ等の光学素子として好適である。
図1
図2