(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】人工関節
(51)【国際特許分類】
A61F 2/34 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
A61F2/34
(21)【出願番号】P 2018538500
(86)(22)【出願日】2017-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2017032719
(87)【国際公開番号】W WO2018047967
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2016177180
(32)【優先日】2016-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513093597
【氏名又は名称】ネクスメッドインターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【氏名又は名称】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】木村 雅弘
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-183304(JP,A)
【文献】特開2012-183303(JP,A)
【文献】特開2014-4360(JP,A)
【文献】特開2007-215989(JP,A)
【文献】特開2005-21696(JP,A)
【文献】特表2003-526455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/28 - 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向一方側に開口する第1収容部を有するカップと、
前記第1方向一方側に開口する第2収容部を有し、前記第1収容部内に収容されるインサートと、
前記第2収容部内に回転可能に収容される球状の骨頭部、および前記骨頭部から延びるネック部を有する可動部材と、
前記インサートを前記第1方向と直交する第2方向に延びる回動軸周りに回動可能に前記カップに連結し、前記カップに対する前記インサートの前記第1方向一方側への移動を規制する連結部と、
を備え、
前記ネック部は、前記回動軸周りに回動することで、前記インサートの縁部に接触して、前記インサートの一部を前記第1収容部内に押し込み、
前記インサートは、前記ネック部によって一部が押し込まれることで、前記回動軸周りに回動し、前記ネック部によって押し込まれた側と前記回動軸を挟んで反対側の部分が前記カップよりも前記第1方向一方側にせり出
し、
前記連結部は、
前記カップと前記インサートとのいずれか一方に設けられた凹部と、
前記カップと前記インサートとのいずれか他方に設けられ、前記凹部に嵌合される凸部と、
を有し、
前記凹部と前記凸部との間には、前記インサートが前記カップから完全に逸脱しない程度に移動可能な隙間が設けられていることを特徴とする人工関節。
【請求項2】
前記インサートは、
インサート本体部と、
前記インサート本体部から前記第1方向一方側に突出する突出部と、
を有する、
請求項1に記載の人工関節。
【請求項3】
前記突出部は、前記回動軸を挟んだ両側にそれぞれ設けられている、
請求項2に記載の人工関節。
【請求項4】
円柱状の軸本体部を有する回動支持軸をさらに有し、
前記凸部は前記軸本体部により形成され、
前記カップは、
前記回動支持軸を受け入れる回動支持軸挿入穴を備え、
前記回動支持軸は、前記
回動支持軸挿入穴に挿入され固定される、
請求項1に記載の人工関節。
【請求項5】
前記突出部の突出高さは周方向中心から周方向両側へ向かうに従って小さくなっている、
請求項2または3に記載の人工関節。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工関節に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱臼を抑制することを目的とした人工関節が提案されている。例えば、特許文献1には、人工関節として、カップ辺縁の一部に高壁を設け、大腿側インプラントの骨頭部が、高壁が設けられた側に逸脱しにくくした人工股関節が記載されている。以下、このような高壁を有するカップを「固定高壁型カップ」と呼ぶ。また、特許文献2には、人工関節として、カップを深くし、その開口部の内径を骨頭部の直径より狭くしてカップが骨頭部を包み込む形態にすることで、骨頭部のカップからの逸脱を抑制した人工股関節が記載されている。このカップは、いわゆる「拘束型カップ」と呼ばれる種類のカップである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2003-526455号公報
【文献】特開2005-021696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に示すような固定高壁型カップの高壁による脱臼抑制効果は、高壁の高さを大きくする程、大きく得られる。しかし、一方で、高壁を大きくする程、大腿側インプラントのネック部が高壁と接触しやすく、関節可動域が低下する問題がある。また、高壁が設けられた側と反対側に対しては、骨頭部がカップから逸脱しやすくなり、脱臼抑制効果を十分に得られない問題があった。また、例えば特許文献2に示すような拘束型カップを備える人工股関節においては、ネック部とカップ辺縁とが接触しやすく、関節可動域が低下する。関節可動域が低下すると、人工関節を装着した患者の動作の自由度が大きく損なわれる問題があった。
【0005】
このように、従来の人工関節においては、関節可動域の確保と脱臼抑制効果を十分に得ることとは相反しており、この2つを同時に得ることは困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて、関節可動域を確保しつつ、脱臼を十分に抑制できる人工関節を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の人工関節の一つの態様は、第1方向一方側に開口する第1収容部を有するカップと、前記第1方向一方側に開口する第2収容部を有し、前記第1収容部内に収容されるインサートと、前記第2収容部内に回転可能に収容される球状の骨頭部、および前記骨頭部から延びるネック部を有する可動部材と、前記インサートを前記第1方向と直交する第2方向に延びる回動軸周りに回動可能に前記カップに連結し、前記カップに対する前記インサートの前記第1方向一方側への移動を規制する連結部と、を備え、前記ネック部は、前記回動軸周りに回動することで、前記インサートの縁部に接触して、前記インサートの一部を前記第1収容部内に押し込み、前記インサートは、前記ネック部によって一部が押し込まれることで、前記回動軸周りに回動し、前記ネック部によって押し込まれた側と前記回動軸を挟んで反対側の部分が前記カップよりも前記第1方向一方側にせり出すことを特徴とする。
【0008】
前記連結部は、前記カップと前記インサートとのいずれか一方に設けられた凹部と、前記カップと前記インサートとのいずれか他方に設けられ、前記凹部に嵌合される凸部と、を有する構成としてもよい。
【0009】
前記インサートは、インサート本体部と、前記インサート本体部から前記第1方向一方側に突出する突出部と、を有し、前記突出部は、前記回動軸を挟んだ両側にそれぞれ設けられている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一つの態様によれば、関節可動域を確保しつつ、脱臼を十分に抑制できる人工関節が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態の人工股関節を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の人工股関節が骨盤臼蓋に装着された状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の人工股関節が骨盤臼蓋に装着された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の人工股関節の一部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の人工股関節の一部を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の人工股関節の一部を示す図であって、
図1におけるV-V断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態のインサートがカップに対して基準姿勢から回動した状態を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の人工股関節の動作について説明するための斜視図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の人工股関節の動作について説明するための図であって、第2方向に沿って視た図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の人工股関節の動作について説明するための図であって、
図1におけるX-X断面を模式的に示した図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態の人工股関節の組み立て手順の一部を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の人工股関節の組み立て手順の一部を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の人工股関節の組み立て手順の一部を示す断面図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態の変形例である人工股関節を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態の人工股関節を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態の人工股関節を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態のカップを示す斜視図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態のカップを第1方向一方側から視た図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態のカップを第3方向に沿って視た図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態のカップを第2方向に沿って視た図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態のインサートを示す斜視図である。
【
図22】
図22は、第2実施形態のインサートを第1方向一方側から視た図である。
【
図23】
図23は、第2実施形態のインサートを第3方向に沿って視た図である。
【
図24】
図24は、第2実施形態のインサートを第2方向に沿って視た図である。
【
図25】
図25は、第3実施形態の人工股関節を示す断面図である。
【
図26】
図26は、第3実施形態の人工股関節を示す断面図である。
【
図27】
図27は、第4実施形態の人工股関節を示す斜視図である。
【
図28】
図28は、第4実施形態のカップを示す斜視図である。
【
図29】
図29は、第4実施形態のインサートを示す斜視図である。
【
図30】
図30は、比較例1の人工股関節を模式的に示す断面図である。
【
図31】
図31は、比較例1の人工股関節を模式的に示す断面図である。
【
図32】
図32は、比較例2の人工股関節を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る人工関節として、人工股関節の例について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0013】
各図に適宜示すXYZ座標系において、Z軸方向を「第1方向Z」とし、X軸方向を第1方向Zと直交する「第2方向X」とし、Y軸方向を第1方向Zおよび第2方向Xの両方と直交する「第3方向Y」とする。また、Z軸方向の負の側(-Z側)を「第1方向一方側」と呼び、Z軸方向の正の側(+Z側)を「第1方向他方側」と呼ぶ。
【0014】
また、以下の各実施形態における各部の相対位置関係の説明については、特に断りのない限り、人工股関節が、インサートの第2収容部の開口断面が第1方向Zと直交する基準姿勢である場合について行う。
【0015】
また、以下の説明では、適宜、解剖学および整形外科学等で使われる用語の使用法に従って、身体の前後、頭尾、内外の方向の名称、また屈曲、伸展、外旋、内旋などの関節運動の名称を用いる。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態の人工股関節(人工関節)10を示す斜視図である。
図2および
図3は、本実施形態の人工股関節10が骨盤臼蓋PAに装着された状態を示す斜視図である。
図4は、本実施形態の人工股関節10の一部を示す斜視図である。
図5は、本実施形態の人工股関節10の一部を示す分解斜視図である。
図6は、本実施形態の人工股関節10の一部を示す図であって、
図1におけるVI-VI断面図である。
図1は、本実施形態の人工股関節10が基準姿勢にある場合を示している。
図2は、股関節屈曲かつ内旋した場合を示している。
図3は、股関節伸展かつ外旋した場合を示している。
図2および
図3においては、図の左方が前方であり、かつ、図の右方が後方である。
【0017】
本実施形態の人工股関節10は、
図1から
図3に示すように、カップ20と、回動支持軸40a,40bと、支持軸留め具50a,50bと、インサート30と、大腿側インプラント(可動部材)12と、を備える。
【0018】
カップ20は、
図2および
図3に示すように、骨盤臼蓋PAに固定される。カップ20は、
図4および
図5に示すように、第1方向他方側(+Z側)に凸となる半球殻状である。カップ20の内部は、第1方向一方側(-Z側)に開口する。中空半球状のカップ20の中心は、第1方向Zに延びる中心軸AX1と第2方向Xに延びる回動軸AX2との交点である中心点Cである。
【0019】
なお、以下の説明において、中心点Cを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸AX1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。また、ある対象に対して、第2方向Xにおける中心軸AX1に近い側を「第2方向内側」と呼び、第2方向Xにおける中心軸AX1から遠い側を「第2方向外側」と呼ぶ。また、ある対象に対して、第3方向Yにおける中心軸AX1に近い側を「第3方向内側」と呼ぶ。
【0020】
本実施形態においてカップ20は、カップ本体部21と、摺動面部品22と、を有する。
図5に示すように、カップ本体部21は、第1方向他方側(+Z側)に凸となる半球殻状である。カップ本体部21の内部は、第1方向一方側(-Z側)に開口する。カップ本体部21の第1方向一方側の開口周縁部には、径方向外側から径方向内側に向かって第1方向他方側に窪む段差部21cが設けられている。段差部21cは、周方向に沿ってほぼ一周に亘って設けられている。
【0021】
カップ本体部21の内側面21dには、カップ本体部21の内側面21dから外側面までカップ本体部21の壁部を径方向に貫通するネジ挿入孔21a,21bが形成されている。ネジ挿入孔21aは、カップ本体部21を第1方向Zに貫通する。ネジ挿入孔21bは、ネジ挿入孔21aの周りに、周方向に沿って複数設けられている。ネジ挿入孔21a,21bには、骨盤臼蓋PAにねじ込まれるネジが通される。ネジ挿入孔21a,21bに通されるネジによって、カップ本体部21が骨盤臼蓋PAに固定され、カップ20が骨盤臼蓋PAに固定される。
【0022】
カップ本体部21の第1方向一方側(-Z側)の端部には、第1方向他方側(+Z側)に窪む回動支持軸挿入穴23a,23bが形成されている。回動支持軸挿入穴23aと回動支持軸挿入穴23bとは、中心軸AX1(中心点C)を第2方向Xに挟んで設けられている。回動支持軸挿入穴23aと回動支持軸挿入穴23bとは、中心軸AX1を挟んで第2方向Xに対称に配置される点を除いて同様の構成であるため、以下の説明においては、代表して回動支持軸挿入穴23aについてのみ説明する場合がある。
【0023】
回動支持軸挿入穴23aは、
図6に示すように、第1方向Zに延びる延伸穴部23cと、延伸穴部23cの第1方向他方側(+Z側)の端部から第2方向内側に窪む係合部23dと、カップ本体部21の外側面から延伸穴部23cの第1方向他方側の端部まで貫通する貫通部23eと、を有する。延伸穴部23cの第1方向一方側(-Z側)の端部は、第1方向一方側および第2方向内側に開口している。
【0024】
摺動面部品22は、
図5に示すように、第1方向他方側(+Z側)に凸となる半球殻状である。摺動面部品22の径方向の厚さは、カップ本体部21の径方向の厚さよりも小さい。摺動面部品22は、
図4および
図6に示すように、カップ本体部21の内部に挿入されている。摺動面部品22は、摺動面部品22の外側面がカップ本体部21の内側面21dに沿ってカップ本体部21の内部に嵌合されて、カップ本体部21と固定されている。
図5に示すように、摺動面部品22の第1方向一方側(-Z側)の端部には、径方向外側に突出するフランジ部22cが設けられている。フランジ部22cは、カップ本体部21の段差部21cに嵌め合わされている。
【0025】
摺動面部品22の第1方向一方側(-Z側)の端部には、第1方向他方側(+Z側)に窪む切り欠き部位22a,22bが形成されている。切り欠き部位22aと切り欠き部位22bとは、中心軸AX1(中心点C)を第2方向Xに挟んで設けられている。切り欠き部位22a,22bは、摺動面部品22の外側面から内側面まで径方向に摺動面部品22の壁部を貫通している。切り欠き部位22aは、回動支持軸挿入穴23aの第2方向内側において、回動支持軸挿入穴23aの第1方向一方側の端部と第2方向Xに対向している。切り欠き部位22bは、回動支持軸挿入穴23bの第2方向内側において、回動支持軸挿入穴23bの第1方向一方側の端部と第2方向Xに対向している。
【0026】
カップ20は、第1方一方側(-Z側)に開口する第1収容部24を有する。本実施形態において第1収容部24は、摺動面部品22の内部である。第1収容部24の内側面、すなわち摺動面部品22の内側面22dは、第1方向他方側(+Z側)に凹となる半球面であり、インサート30が摺動する摺動面である。
【0027】
回動支持軸40a,40bは、回動支持軸挿入穴23a,23bにそれぞれ挿入されてカップ20に装着される。回動支持軸40aと回動支持軸40bとは、中心軸AX1を挟んで第2方向Xに対称に配置される点を除いて同様の構成であるため、以下の説明においては、代表して回動支持軸40aについてのみ説明する場合がある。
【0028】
回動支持軸40aは、第1方向Zに延びる挿入部41と、挿入部41の第1方向一方側(-Z側)の端部から第2方向内側に延びる軸本体部(凸部)42と、挿入部41の第1方向他方側(+Z側)の端部から第2方向内側に突出する係合突部43と、を有する。挿入部41は、
図6に示すように、回動支持軸挿入穴23aの延伸穴部23cに挿入されている。挿入部41の第1方向一方側の端部は、回動支持軸挿入穴23aよりも第1方向一方側に突出している。挿入部41の第2方向内側の面は、延伸穴部23cの第2方向内側の面に接触している。
【0029】
軸本体部42は、回動軸AX2を中心とする円柱状である。軸本体部42は、摺動面部品22の切り欠き部位22aを介して、摺動面部品22の内側面22dよりも径方向内側に突出している。軸本体部42の先端部は、第2方向内側(径方向内側)に凸となる半球状である。係合突部43は、回動支持軸挿入穴23aの係合部23dに挿入されて係合されている。
【0030】
支持軸留め具50a,50bは、回動支持軸40a,40bをそれぞれ固定する部材である。支持軸留め具50aと支持軸留め具50bとは、中心軸AX1を挟んで第2方向Xに対称に配置される点を除いて同様の構成であるため、以下の説明においては、代表して支持軸留め具50aについてのみ説明する場合がある。
【0031】
支持軸留め具50aは、
図5に示すように、第1方向Zに延び、板面が第2方向Xを向く板状である。支持軸留め具50aには、支持軸留め具50aを第2方向Xに貫通する貫通孔51が形成されている。貫通孔51には、回動軸AX2が通る。支持軸留め具50aは、
図6に示すように、回動支持軸挿入穴23aに挿入されている。支持軸留め具50aの第1方向一方側(-Z側)の端部は、回動支持軸挿入穴23aよりも第1方向一方側に突出している。支持軸留め具50aの第1方向一方側の端部は、例えば、第1方向Zにおいて、回動支持軸40aの第1方向一方側の端部と同じ位置にある。
【0032】
支持軸留め具50aは、回動支持軸40aの第2方向外側に配置されている。支持軸留め具50aの第2方向内側の面は、回動支持軸40aの第2方向外側の面と接触している。支持軸留め具50aの第2方向外側の面は、回動支持軸挿入穴23aにおける延伸穴部23cの第2方向外側の面と接触している。支持軸留め具50aの第1方向他方側(+Z側)の端部は、回動支持軸挿入穴23aにおける貫通部23eの第2方向内側の端部を閉塞している。
【0033】
インサート30は、
図5に示すように、第1方向他方側(+Z側)に凸となり第1方向一方側(-Z側)に開口する略半球殻状である。インサート30は、カップ20の第1収容部24内に収容されている。インサート30は、半球殻状のインサート本体部31と、インサート本体部31から第1方向一方側に突出する突出部32と、を有する。インサート本体部31における第2方向Xの両側の端部には、第2方向内側に窪む軸受け陥凹(凹部)33a,33bが形成されている。軸受け陥凹33a,33bは、第1方向一方側に開口している。
【0034】
図6に示すように、軸受け陥凹33a,33bには、回動支持軸40a,40bの軸本体部42が嵌合される。これにより、本実施形態では、凹部としての軸受け陥凹33a,33bと、凸部としての軸本体部42と、を有する連結部60が構成されている。連結部60は、インサート30を回動軸AX2周りに回動可能にカップ20に連結する。軸受け陥凹33a,33bに嵌合された軸本体部42は、軸受け陥凹33a,33bの内側面のうち第1方向他方側(+Z側)の面の第1方向一方側(-Z側)に対向して配置される。そのため、インサート30がカップ20に対して第1方向一方側に移動した場合、軸受け陥凹33a,33bの内側面が軸本体部42と接触する。このようにして、連結部60は、カップ20に対するインサート30の第1方向一方側への移動を規制し、インサート30がカップ20から抜けることを抑制する。
【0035】
本実施形態において連結部60の凹凸嵌合は、例えば、ある程度、緩い嵌合となっており、軸受け陥凹33a,33bと軸本体部42との間には、隙間61が設けられている。隙間61の寸法は、好ましくは1~3mmであり、より好ましくは1~1.5mmとされる。これにより、インサート30は、カップ20から完全には逸脱しない程度に回動軸AX2と直交する方向(例えば、第1方向-Z側)に移動可能となっている。
【0036】
突出部32は、
図5に示すように、インサート本体部31の第1方向一方側(-Z側)の端部のうち第3方向Yの一方側(-Y側)から第1方向一方側に突出する突出部32aと、インサート本体部31の第1方向一方側の端部のうち第3方向Yの他方側(+Y側)から第1方向一方側に突出する突出部32bと、を含む。突出部32aと突出部32bとは、回動軸AX2を第3方向Yに挟んだ両側に位置する。すなわち、本実施形態において突出部32は、中心軸AX1および回動軸AX2を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。なお、突出部32aと突出部32bとは、中心軸AX1を挟んで第2方向Xに対称に配置される点を除いて同様の構成であるため、以下の説明においては、代表して突出部32aについてのみ説明する場合がある。
【0037】
突出部32aは、周方向に沿って延びている。突出部32aの第1方向一方側(-Z側)の端面は、平坦面である。突出部32aにおける周方向両側の部分において、突出部32aの突出高さは、周方向端部に向かうに従って小さくなっている。突出部32aの径方向の寸法は、第1方向他方側から第1方向一方側(-Z側)に向かうに従って小さくなっている。突出部32aの径方向外側の面は、インサート本体部31の径方向外側の面と滑らかに繋がっている。
【0038】
図7は、インサート30がカップ20に対して基準姿勢から回動した状態を示す図である。
図7(A)に示すように、インサート30がカップ20に対して回動軸AX2周りの一方向き(+X側から視て時計回りの向き)に回動すると、突出部32aがカップ20の内部に入り込み、突出部32bが第1方向一方側(-Z側)にせり出す。一方、
図7(B)に示すように、インサート30がカップ20に対して回動軸AX2周りの他方向き(+X側から視て反時計回りの向き)に回動すると、突出部32bがカップ20の内部に入り込み、突出部32aが第1方向一方側にせり出す。
【0039】
インサート30は、
図6に示すように、第1方向一方側(-Z側)に開口する第2収容部34を有する。本実施形態において第2収容部34は、インサート本体部31の内部である。第2収容部34の開口部は、後述する骨頭部12aの最大断面以上の大きさを有している。第2収容部34の内側面、すなわちインサート本体部31の内側面30aは、第1方向他方側(+Z側)に凹となる半球面であり、骨頭部12aが摺動する摺動面である。
【0040】
大腿側インプラント12は、
図1に示すように、球状の骨頭部12aと、ネック部12bと、ステム部12cと、を有する。骨頭部12aは、インサート30の第2収容部34内に回転可能に収容されている。ネック部12bは、骨頭部12aから第1方向一方側(-Z側)に延びている。ステム部12cは、ネック部12bの骨頭部12aと逆側の端部に接続されている。ステム部12cは、例えば、大腿骨に埋め込まれる部分である。
【0041】
次に、本実施形態の人工股関節10の動作について説明する。
図8は、人工股関節10の動作について説明するための斜視図である。
図9は、人工股関節10の動作について説明するための図であって、第2方向Xに沿って視た図である。
図10は、人工股関節10の動作について説明するための図であって、
図1におけるX-X断面を模式的に示した図である。
【0042】
図8から
図10においては、大腿側インプラント12が、回動軸AX2周りの一方向き(+X側から視て時計回りの向き)に回動する場合について示している。大腿側インプラント12が、回動軸AX2周りの一方向きに回動する場合とは、例えば、人工股関節10を装着した患者が、
図3に示すように、股関節伸展かつ外旋した場合に相当する。
【0043】
図8(A)、
図9(A)および
図10(A)に示すように、大腿側インプラント12が回動すると、ネック部12bが、インサート30の縁部32cに接触する。
図10(A)に示すように、本実施形態においてインサート30の縁部32cは、突出部32aの第1方向一方側(-Z側)の端部における第3方向内側の縁である。ネック部12bが縁部32cに接触した状態で大腿側インプラント12がさらに回動すると、
図8(B)、
図9(B)および
図10(B)に示すように、ネック部12bに縁部32cが押されて、インサート30が回動軸AX2周りに回動する。これにより、突出部32aが第1収容部24内に押し込まれる。このようにして、ネック部12bは、回動軸AX2周りに回動することで、インサート30の縁部32cに接触して、インサート30の一部を第1収容部24内に押し込む。
【0044】
突出部32aが第1収容部24内に押し込まれてインサート30が回動すると、回動軸AX2を挟んで反対側の突出部32bがカップ20よりも第1方向一方側(-Z側)にせり出す。すなわち、インサート30は、ネック部12bによって一部が押し込まれることで、回動軸AX2周りに回動し、ネック部12bによって押し込まれた側と回動軸AX2を挟んで反対側の部分がカップ20よりも第1方向一方側にせり出す。
【0045】
図8(B)、
図9(B)および
図10(B)に示す状態では、ネック部12bは、カップ20の縁部25に接触している。本実施形態において縁部25は、摺動面部品22の縁部である。この状態から、大腿側インプラント12がさらに回動すると、
図8(C)、
図9(C)および
図10(C)に示すように、インサート30がカップ20に対して第1方向一方側(-Z側)に僅かに浮き上がる。このとき、インサート30は、連結部60に設けられた隙間61の分だけ、第1方向一方側への移動が許容される。
【0046】
大腿側インプラント12が回動軸AX2周りの他方向き(+X側から視て反時計回りの向き)に回動する場合、人工股関節10は、中心軸AX1を挟んで第3方向Yに対称に動作する点を除いて、上述した人工股関節10の動作と同様に動作する。大腿側インプラント12が回動軸AX2周りの他方向きに回動する場合とは、例えば、人工股関節10を装着した患者が、
図2に示すように、股関節屈曲かつ内旋した場合に相当する。以上のようにして、本実施形態の人工股関節10は、装着する患者の股関節の動きに伴って動作する。
【0047】
次に、人工股関節10を患者に装着する手術の進行に伴う人工股関節10の組み立て手順について説明する。
図11および
図12は、人工股関節10の組み立て手順の一部を示す斜視図である。
図13は、人工股関節10の組み立て手順の一部を示す断面図である。
【0048】
まず、施術者は、
図2および
図3に示すように、骨盤臼蓋PAにカップ本体部21を固定する。本実施形態において施術者は、例えば、カップ本体部21のネジ挿入孔21a,21bを介してネジを骨盤臼蓋PAにねじ込んで、カップ本体部21を固定する。このとき、適切な外方開角と前方開角を持たせるように注意することは通常の人工股関節と同様である。
【0049】
さらに本実施形態のカップ本体部21においては、回動支持軸挿入穴23a,23bがどの方向に並んで配置されるかにも注意が必要である。具体的には、2つの回動支持軸挿入穴23a,23bが、身体の前後方向とほぼ直交する方向に並び、かつ、カップ本体部21が埋め込まれる骨盤臼蓋PAの穴の円周上において、身体の上下方向における頭側やや後方と、身体の上下方向における尾側やや前方と、にそれぞれ配置されるようにカップ本体部21を骨盤臼蓋PAに固定する。
【0050】
その後、施術者は、カップ本体部21に対して、摺動面部品22を挿入する。このとき、施術者は、カップ本体部21の2つの回動支持軸挿入穴23a,23bと摺動面部品22の2つの切り欠き部位22a,22bとが対向して揃うように向きを合わせて、摺動面部品22をカップ本体部21に挿入する。
【0051】
次に、施術者は、
図11および
図12に示すように、インサート30をカップ20に第1方向一方側(-Z側)から近づけてカップ20の第1収容部24内に挿入する。実際の手術においては、すでに大腿骨に設置された大腿側インプラント12の骨頭部12aにインサート30を被せてから関節整復の操作を行うことによって、インサート30を骨頭部12aと共にカップ20内に整復する方法を採用できる。
【0052】
その後、施術者は、インサート30を中心軸AX1周りに適切に回転させて、インサート30の軸受け陥凹33a,33bとカップ20の回動支持軸挿入穴23a,23bとが対向して揃うように、インサート30の姿勢を調節する。このようにインサート30の姿勢を調節することで、本実施形態においては、突出部32a,32bが身体のほぼ前後方向に並んで配置される。
【0053】
突出部32a,32bは、手術症例においてネック部12bとカップ20とが衝突しやすい位置に合わせることが望ましい。臨床的観察から言えばネック部12bとカップ20との衝突位置は、後方脱臼でカップ20の前方頭側、前方脱臼でカップ20の後方尾側である。したがってインサート30の突出部32a,32bも、カップ20の前方頭側と後方尾側とに来るように配置するのが効果的である。
【0054】
次に、施術者は、
図13(A),(B)に示すように、回動支持軸40aを回動支持軸挿入穴23aに挿入する。そして、施術者は、
図13(C)に示すように、回動支持軸40aを第2方向内側に移動させて、係合突部43を係合部23dに挿入させて係合させる。施術者は、
図13(D)に示すように、回動支持軸40aを第2方向内側に移動させることで生じた回動支持軸40aと回動支持軸挿入穴23aとの隙間に、支持軸留め具50aを挿入して固定する。これにより、回動支持軸40aがカップ20に固定される。施術者は、回動支持軸40aと同様にして、回動支持軸40bを回動支持軸挿入穴23bに挿入して支持軸留め具50bでカップ20に固定する。なお、支持軸留め具50a,50bを固定する方法は、特に限定されない。
【0055】
以上により、本実施形態の人工股関節10の組み立てが完了し、人工股関節10を患者に装着する手術が完了する。本実施形態によれば、関節可動域を確保しつつ、脱臼を十分に抑制できる人工股関節10が得られる。以下、詳細に説明する。
【0056】
図30および
図31は、比較例1の人工股関節510を模式的に示す断面図である。
図30および
図31に示すように、人工股関節510においてカップ520には、カップ本体部521から第1方向一方側(-Z側)に突出する高壁522が設けられている。すなわち、カップ520は、固定高壁型カップである。
図30(A)から
図30(C)に示すように、人工股関節510において、大腿側インプラント12が回動軸AX2周りの一方向き(+X側から視て時計回りの向き)に回動する場合、ネック部12bがカップ520の縁部と接触した後に、骨頭部12aが浮き上がっても骨頭部12aが逸脱しようとする側(図では左側)に高壁522が位置する。そのため、高壁522が防波堤となり、脱臼を抑制できる。
【0057】
しかし、
図31(A)から
図31(C)に示すように、人工股関節510において、大腿側インプラント12が回動軸AX2周りの他方向き(+X側から視て反時計回りの向き)に回動する場合、比較的小さい回動角度でネック部12bが高壁522の縁部522aに接触し、大腿側インプラント12の回動が阻害される。この状態でさらに大腿側インプラント12を回動させようとすると、縁部522aを支点として骨頭部12aが浮き上がり、高壁522が設けられた側と逆側(図では右側)に容易に逸脱しやすい。したがって、比較例1の人工股関節510においては、高壁522が設けられた側への脱臼は抑制できる一方で、高壁522が設けられた側と逆側への脱臼が起こりやすい問題がある。
【0058】
また、脱臼が生じない場合であっても、比較的小さい回動角度でネック部12bが高壁522の縁部522aと接触するため、大腿側インプラント12における回動軸AX2周りの他方向きの関節可動域が狭くなる問題もある。これらの問題は、高壁522の突出高さが大きい程、大きくなる。したがって、高壁522の突出高さを大きくしにくく、結果として高壁522が設けられた側への脱臼抑制効果も十分に得にくい。また、例えば、高壁522を第3方向Yの両側に設けることも考えられるが、この場合、回動軸AX2周りのいずれの向きにおいても回動角度が小さくなり、人工股関節の関節可動域がより狭くなる問題がある。
【0059】
以上の問題に対して、本実施形態によれば、
図10に示すように、ネック部12bがインサート30の突出部32aにおける縁部32cに接触した後に、大腿側インプラント12をさらに回動させても、突出部32aがネック部12bによって第1収容部24内に押し込まれてインサート30全体が回動する。そのため、縁部32cを支点として骨頭部12aが浮き上がりにくい。また、インサート30が設けられることに起因する大腿側インプラント12の可動域の低下が生じにくく、大腿側インプラント12の回動角度を大きくできる。そのため、人工股関節10の関節可動域を広くできる。さらに、インサート30が回動することで、骨頭部12aの頂点側(図では左側)においては、インサート30における反対側の突出部32bがカップ20よりも第1方向一方側(-Z側)にせり上がってくる。そのため、突出部32bが防波堤として機能し、骨頭部12aが頂点側に逸脱することを抑制できる。
【0060】
図10では、大腿側インプラント12が回動軸AX2周りの一方向き(+X側から視て時計回りの向き)に回動する場合について示しているが、上述した効果は、大腿側インプラント12が回動軸AX2周りの他方向き(+X側から視て反時計回りの向き)に回動する場合においても同様に得られる。すなわち、ネック部12bによって突出部32bが第1収容部24内に押し込まれる場合、突出部32aがせり出して防波堤として機能する。
【0061】
また、本実施形態によれば、インサート30をカップ20に連結する連結部60が設けられているため、インサート30がカップ20から外れることを抑制できる。この点は、本実施形態における最重要点の一つである。仮に連結部60が設けられないとすれば、
図32に示す比較例2の人工股関節610のように、インサート630と大腿側インプラント12とが一体としてカップ20から脱臼することを抑制できないためである。
【0062】
比較例2の人工股関節610は、本実施形態の人工股関節10に対して連結部60が設けられていない点が異なる。人工股関節610では、大腿側インプラント12の回動によってインサート630の一部がせり出しても、インサート630自体がカップ20から抜け出ることを抑制できないため、せり出したインサート630の一部を防波堤として機能させることができない。したがって、人工股関節610におけるインサート630は、本実施形態のインサート30とは異なり、骨頭部12aにインサート630を被せることで、インサート630の直径の大径骨頭として機能させられる程度の脱臼抑制効果しか得られず、十分な脱臼抑制効果を得られない。言い換えれば、連結部60が設けられていない人工股関節610におけるインサート630は、本実施形態のインサート30とは脱臼抑制に寄与する機能が全く異なり、脱臼抑制効果も十分に得られない。この点において、比較例2の人工股関節610は、本実施形態の人工股関節10と全く異なる。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、大腿側インプラント12が回動軸AX2周りのいずれの向きに回動しても、インサート30がカップ20に対して回動して、関節可動域を確保でき、かつ、回動によってカップ20よりも第1方向一方側(-Z側)にせり出したインサート30の部分を防波堤として機能させることができる。さらに、連結部60によってインサート30がカップ20から逸脱することも抑制できる。したがって、関節可動域を確保しつつ、脱臼を十分に抑制できる人工股関節10を実現できる。
【0064】
なお、大腿側インプラント12が第3方向Yと平行な軸周りに回動した場合には、ネック部12bが移動する側に突出部32が設けられていないため、ネック部12bがインサート30の縁部あるいはカップ20の縁部と接触するまでの回動角度を十分に大きくできる。これにより、第3方向Yと平行な軸周りにおいても、人工股関節10の関節可動域を確保できる。
【0065】
上述した本実施形態の作用効果を言い換えれば、2つの突出部32を有するインサート30がカップ20から逸脱することなく回動運動できる構造を採用することにより、脱臼が切迫する肢位において大腿側の要素であるネック部12b等がインサート30の1つの突出部32を押し下げることで、インサート30の回動運動を生じさせ、骨頭部12aの頂点側のせり上がったもう1つの突出部32が骨頭部12aの脱臼の防波堤となって、脱臼を抑制できる。
【0066】
次に、上述した本実施形態の人工股関節10が人体内に配置された場合について、本実施形態の作用効果をより詳細に説明する。まず、人工股関節が脱臼を起こす大きな原因動作としては、動作A:股関節の屈曲内旋と、動作B:股関節の伸展外旋との2つの動作が挙げられる。動作Aにおいてネック部はカップの前方に接近し、接触する。その後、骨頭部が浮き上がり、骨頭部はカップの後方へと逸脱し、いわゆる後方脱臼を起こす。動作Bにおいてネック部はカップの後方に接近し、接触する。その後、骨頭部が浮き上がり、骨頭部はカップの前方へと逸脱し、いわゆる前方脱臼を起こす。
【0067】
本実施形態の人工股関節10は、上述したように突出部32a,32bが身体のほぼ前後方向に沿って並んで配置されるように、身体に装着される。そのため、
図2に示すように、股関節屈曲かつ内旋した場合(動作A)に、大腿側インプラント12のネック部12bはカップ20の前方頭側に接近し、インサート30の前方頭側の部分に位置する突出部32bをカップ20内に押し込む。これにより、インサート30が回動し、インサート30の後方尾側の部分に位置する突出部32aがせり出す。従来、股関節屈曲かつ内旋する肢位においては、骨頭部がカップの後方尾側に逸脱していく向きに脱臼しやすいが、本実施形態では、せり出した突出部32aが骨頭部12aの脱臼を抑制する。
【0068】
一方、
図3に示すように、股関節伸展かつ外旋した場合(動作B)に、大腿側インプラント12のネック部12bはカップ20の後方尾側に接近し、インサート30の後方尾側の部分に位置する突出部32aをカップ20内に押し込む。これにより、インサート30が回動し、インサート30の前方頭側の部分に位置する突出部32bがせり出す。従来、股関節伸展かつ外旋する肢位においては、骨頭部がカップの前方頭側に逸脱していく向きに脱臼しやすいが、本実施形態では、せり出した突出部32bが骨頭部12aの脱臼を抑制する。
【0069】
以上により、本実施形態の人工股関節10は人体内で前方脱臼および後方脱臼の両方に対して同時に十分な脱臼抑制効果を持つ。
【0070】
ここで、例えば、すべての方向について脱臼を抑制することを考える。この場合、インサートをカップに対していずれの方向においても回動可能として、大腿側インプラントが回動してインサートを押し込んだ部分と反対側の部分がせり出すようにすることが考えられる。しかし、このような構成を実現しつつ、インサートをカップに連結する連結部を設けることは非常に困難である。したがって、このような構成にする場合、例えば
図32において示した連結部を備えない比較例2の人工股関節610と同様の構成になり、インサートがカップから逸脱することを抑制できず、結果的にインサートに防波堤としての機能を持たせることができない。そのため、脱臼を十分に抑制することができない。
【0071】
ところで、臨床的に問題になっているのは、上述した前方脱臼および後方脱臼であり、このほぼ反対方向への2種類の脱臼を抑制することが特に重要である。一方で、それ以外の方向すなわち例えば左右方向への脱臼は前方脱臼および後方脱臼に比べて生じにくく、インサートの一部をせり出させて防波堤とする機能を付与する必要性が低い。そこで、本実施形態では、脱臼が生じにくい方向に沿った回動軸AX2周りにインサート30を回動可能にカップ20に連結する連結部60を設け、脱臼が生じやすい方向において上述したようにインサート30の部分がせり出して脱臼を抑制できる構成とした。
【0072】
このように、本実施形態においては、インサート30を1つの軸周りに回動可能にカップ20に連結すればよいため、例えば上述した凹凸嵌合構造等によって、連結部60を容易に設けることができる。したがって、本実施形態によれば、脱臼抑制の必要性が高い方向に沿って突出部32a,32bを配置しつつ、脱臼抑制の必要性が高い方向と直交する方向に回動軸AX2を設けることで、臨床的要求を満たしつつ、好適に脱臼を抑制することができる。
【0073】
上述した作用効果を言い換えれば、比較例2の人工股関節610の場合、連結部60が設けられていないため、例えばインサート630はいずれの方向にも回動可能である。しかし、一方で、インサート630ごとカップ20から逸脱しやすくインサート630を防波堤として利用できないため脱臼抑制効果を十分に得られない。これに対して、本実施形態では、脱臼が生じやすい方向と脱臼が生じにくい方向とに基づいてインサート30の回動する方向を限定して、インサート30がカップ20から逸脱することを抑制できる連結部60を設ける構成とした。これにより、本実施形態においては、比較例2の人工股関節610に比して、脱臼抑制効果を大きく向上することができ、関節可動域の確保と十分な脱臼抑制効果との両立を実現できる。
【0074】
また、本実施形態によれば、連結部60は、軸受け陥凹33a,33bと、回動支持軸40a,40bの軸本体部42と、の凹凸嵌合構造を有する。そのため、連結部60の構成を簡単化できる。
【0075】
また、本実施形態によれば、突出部32a,32bが設けられているため、ネック部12bによって一部が押し込まれることでせり出すインサート30の部分の突出高さを大きくすることができる。これにより、せり出すインサート30の部分による防波堤としての機能を向上させることができ、脱臼をより抑制できる。
【0076】
また、本実施形態によれば、連結部60の凹凸嵌合構造は、緩い嵌合である。そのため、インサート30は、カップ20に対してある程度遊びを持って連結され、第1方向Zの移動が許容される。これにより、
図8(C)、
図9(C)および
図10(C)に示すようなインサート30と骨頭部12aとが一体となってカップ20から浮き上がり脱臼しようとする向きの動きが、その遊びの分だけ許容される。具体的には軸受け陥凹33a、33bの内側面が回動支持軸40a、40bの軸本体部42と接触するまで、インサート30の移動が許容される。したがって、
図8(C)、
図9(C)および
図10(C)に示すように大腿側インプラント12の回動角度をより大きくすることができ、人工股関節10の関節可動域をより広くすることができる。
【0077】
また、例えば、拘束型カップを備える人工股関節では、ネック部とカップ辺縁との衝突が頻繁に起こりやすい。また、骨頭部の逸脱を許さない強すぎる関節結合であることから、大腿側インプラントに骨頭部が拘束型カップから引き抜かれる方向に力が加えられた場合、拘束型カップおよび大腿側インプラントにかかる負荷が大きい。そのため、拘束型カップを備える人工股関節においては、手術後早期に、拘束型カップおよび大腿側インプラントの破損、拘束型カップと骨盤臼蓋との境界の緩み、および大腿側インプラントと大腿骨との境界の緩みが生じやすい。このように、拘束型カップを備える人工股関節は、耐久性が低い問題があった。
【0078】
これに対して、本実施形態によれば、インサート30の第2収容部34の開口部は、骨頭部12aの最大断面以上の大きさを有している。そのため、骨頭部12aの第2収容部34への挿入逸脱を自由に行うことが可能である。これは、拘束型カップが狭い開口部により骨頭部の逸脱を不可能にすることで脱臼抑制機能を得ているのとは全く異なっている。このようなインサート30に対する骨頭部12aの挿入逸脱を可能とする構成により、大腿側インプラント12に骨頭部12aがインサート30から引き抜かれる方向に力が加えられても、カップ20および大腿側インプラント12に加えられる負荷を小さくすることができる。したがって、本実施形態の人工股関節10では、カップ20および大腿側インプラント12が破損することを抑制でき、カップ20と骨盤臼蓋PAとの境界の緩みが生じることを抑制できる。また、大腿側インプラント12と大腿骨との境界の緩みが生じることも抑制できる。その結果、拘束型カップを備える人工股関節に比べて、人工股関節10の耐久性を向上させることができる。
【0079】
また、一般的に、下肢を牽引する時のように骨頭部12aがインサート30から引き抜かれる方向の力で脱臼する可能性は小さく、引き抜き外力による骨頭部12aの小距離の逸脱と復帰は安全な動きと考えられる。したがって、インサート30に対する骨頭部12aの挿入逸脱を可能とする構成によって、カップ20および大腿側インプラント12に加えられる負荷を低減しつつも、必要な脱臼抑制効果を好適に得ることができる。
【0080】
また、本実施形態では上述したようにネック部12bがインサート30の縁部32cに接触した状態からさらに回動する場合、インサート30が回動する。これにより、ネック部12bがインサート30に接触しても、カップ20および大腿側インプラント12に負荷が加えられることをより抑制できる。これにより、カップ20および大腿側インプラント12が破損することをより抑制でき、カップ20と骨盤臼蓋PAとの境界の緩み、および大腿側インプラント12と大腿骨との境界の緩みが生じることをより抑制できる。したがって、人工股関節10の耐久性をより向上できる。
【0081】
また、本実施形態では上述したように、インサート30と骨頭部12aとが一体となってカップ20から浮き上がり脱臼しようとする動きがある程度許容される。そのため、ネック部12bがカップ20の縁部と接触した後に、さらに大腿側インプラント12が回動した場合であっても、カップ20と骨盤臼蓋PAとの境界にかかる負担、および大腿側インプラント12と大腿骨との境界にかかる負担を軽減することができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、摺動面部品22が設けられ、摺動面部品22の内部はインサート30が収容される第1収容部24である。そのため、本実施形態のようにカップ本体部21の内側面21dに骨盤臼蓋PAにカップ本体部21を固定する目的のネジ挿入孔21a,21bによる凹凸が設けられていても、摺動面である第1収容部24の内側面を滑らかな半球面にすることができる。これにより、インサート30が回動した場合に生じるインサート30とカップ20との間の摩擦を低減することができ、インサート30をカップ20に対して回動させやすくできる。
【0083】
<第1実施形態の変形例>
図14は、第1実施形態の変形例である人工股関節110を示す斜視図である。
図14に示すように、人工股関節110において、インサート130の突出部132a,132bの突出高さは、周方向の中心から周方向両側に向かうに従って、小さくなっている。突出部132a,132bにおける周方向中央の第1方向一方側(-Z側)の端部は、骨頭部12aよりも第1方向一方側に位置する。人工股関節110のその他の構成は、上述した人工股関節10の構成と同様である。
【0084】
本変形例によれば、突出部132a,132bの突出高さをより大きくできるため、脱臼抑制効果をより大きく得られる。
【0085】
<第2実施形態>
図15および
図16は、本実施形態の人工股関節210を示す斜視図である。
図17は、カップ220を示す斜視図である。
図18は、カップ220を第1方向一方側(-Z側)から視た図である。
図19は、カップ220を第3方向Yに沿って視た図である。
図20は、カップ220を第2方向Xに沿って視た図である。
図21は、インサート230を示す斜視図である。
図22は、インサート230を第1方向一方側(-Z側)から視た図である。
図23は、インサート230を第3方向Yに沿って視た図である。
図24は、インサート230を第2方向Xに沿って視た図である。
図15は、本実施形態の人工股関節210が基準姿勢にある場合を示している。なお、上記実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0086】
本実施形態においてカップ220は、
図17から
図20に示すように、第1方向一方側(-Z側)に開口する半球殻状のカップ本体部221と、カップ本体部221の第1方向一方側の端部に設けられた円柱状の軸部(凸部)224a,224bと、を備える。軸部224aと軸部224bとは、中心軸AX1を第2方向Xに挟んで配置されている。軸部224a,軸部224bは、カップ本体部221の内側面221dよりも第2方向内側(径方向内側)に突出する。本実施形態においてカップ220は、例えば、単一の部材である。
【0087】
本実施形態においてインサート230は、
図21から
図24に示すように、第1方向一方側(-Z側)に開口する半球殻状のインサート本体部231と、インサート本体部231から第1方向一方側に突出する突出部232a,232bと、を有する。突出部232a,232bの径方向の寸法は、第1方向Zの全体に亘ってインサート本体部231の壁部における径方向の寸法と同じである。突出部232a,232bの第1方向一方側の面は、周方向に延びる平坦面である。
【0088】
図21および
図22に示すように、突出部232aと突出部232bとの周方向の間には、インサート本体部231の第1方向一方側(-Z側)の面の一部である平坦部231a,231bが設けられている。平坦部231a,231bと、突出部232a,232bの第1方向一方側の面とは、平行である。平坦部231a,231bと、突出部232a,232bの第1方向一方側の面とは、傾斜面によって互いに接続されている。
【0089】
平坦部231aの周方向の中央における第2方向外側の部分には、平坦部231aから第1方向一方側(-Z側)に突出する四角柱状の軸受突起234aが設けられている。平坦部231bの周方向の中央における第2方向外側の部分には、平坦部231bから第1方向一方側に突出する四角柱状の軸受突起234bが設けられている。
図23および
図24に示すように、軸受突起234a,234bの第1方向一方側の端部は、突出部232a,232bの第1方向一方側の端部よりも第1方向他方側(+Z側)に位置する。
【0090】
本実施形態において軸受け陥凹(凹部)233a,233bは、
図21および
図24に示すように、軸受突起234a,234bの第1方向一方側(-Z側)から第1方向他方側(+Z側)に窪む。軸受け陥凹233a,233bは、インサート本体部231まで跨って設けられている。軸受け陥凹233a,233bは、第2方向外側に開口する。
【0091】
図15に示すように、軸受け陥凹233a,233bには、軸部224a,224bがそれぞれ嵌合されている。本実施形態においては、軸受け陥凹233a,233bと軸部224a,224bとによって連結部が構成されている。これにより、
図16に示すように、インサート230は、カップ220に対して、回動軸AX2周りに回動可能に連結されている。本実施形態において軸受け陥凹233a,233bと軸部224a,224bとの間の隙間は十分に小さい。この場合であっても、関節可動域を確保しつつ、脱臼を十分に抑制できる人工股関節210が得られる。
【0092】
<第3実施形態>
図25および
図26は、本実施形態の人工股関節310を示す断面図である。
図25は、本実施形態の人工股関節310が基準姿勢にある場合を示している。なお、上記実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0093】
本実施形態においてインサート330は、
図25に示すように、第1実施形態のインサート30と異なり、突出部32を有していない。本実施形態においてインサート330は、第1実施形態のインサート本体部31とほぼ同様の構成である。インサート330は、全体がカップ20の第1収容部24内に収容可能である。
図25に示す基準姿勢において、インサート330の第1方向一方側(-Z側)の面は、カップ20の第1方向一方側の面と同一平面上に配置されている。
【0094】
図26に示すように、本実施形態においてネック部12bが回動すると、インサート330の内縁部330bがネック部12bに接触し、インサート330における第3方向一方側(-Y側)の部分332dが第1収容部24内に押し込まれる。これにより、インサート330が回動して、インサート330における第3方向他方側(+Y側)の部分332bがカップ20よりも第1方向一方側(-Z側)にせり出す。したがって、部分332bが第1実施形態の突出部32と同様に防波堤として機能し、脱臼抑制効果が得られる。このように、突出部32が設けられていない状態であっても、関節可動域を確保しつつ、脱臼をある程度まで抑制できる人工股関節310が得られる。
【0095】
<第4実施形態>
図27は、本実施形態の人工股関節410を示す斜視図である。
図28は、本実施形態のカップ420を示す斜視図である。
図29は、本実施形態のインサート430を示す斜視図である。
図29は、基準姿勢の場合のインサート430を示している。なお、上記実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0096】
本実施形態においてカップ420は、
図27および
図28に示すように、第1方向他方側(+Z側)凸となる半球状のカップ本体部421と、カップ本体部421に設けられた第1収容部421aの内側面から第2方向内側に突出する軸部(凸部)424a,424bと、を有する。第1収容部421aは、カップ本体部421の第1方向一方側(-Z側)の面から第1方向他方側に窪み、内部が第2方向Xに延びる半円柱状の穴である。第1収容部421aの底面421bは、半円筒状の面であり、インサート430が摺動する摺動面である。
【0097】
本実施形態においてインサート430は、
図29に示すように、第2方向Xに延びる半円柱状のインサート本体部431と、インサート本体部431から第1方向一方側(-Z側)に突出する突出部432a,432bと、を有する。インサート本体部431には、第2収容部434が設けられている。第2収容部434は、インサート本体部431の第1方向一方側の面から第1方向他方側(+Z側)に窪み、中心点Cを中心とする半球状の穴である。
【0098】
インサート本体部431には、中心軸AX1を第2方向Xに挟んだ両側に軸受け陥凹(凹部)433a,433bが形成されている。
図27に示すように、軸受け陥凹433a,433bには、カップ420の軸部424a,424bが嵌合されている。すなわち、本実施形態においては、軸受け陥凹433a,433bと軸部424a,424bとによって連結部が構成されている。これにより、インサート430は、回動軸AX2周りに回動可能にカップ420に連結される。突出部432a,432bは、第2収容部434の開口縁部の第3方向Yの両側に設けられている。突出部432a,432bは、周方向に沿って延びている。突出部432a,432bの突出高さは、周方向の中心から周方向両側に向かうに従って、小さくなっている。
【0099】
本実施形態において軸受け陥凹433a,433bと軸部424a,424bとの間の隙間は十分に小さい。この場合であっても、関節可動域を確保しつつ、脱臼を十分に抑制できる人工股関節410が得られる。
【0100】
なお、上記各実施形態においては、インサートとカップとの摺動面は、半球面あるいは半円筒状の面である場合について説明したが、これに限られない。インサートとカップとが回動軸AX2周りに回動可能であれば、インサートとカップとの摺動面はどのような形状であってもよい。
【0101】
また、上記各実施形態において連結部は、インサートに設けられた凹部と、カップに設けられ、凹部に嵌合される凸部と、を有する構成としたが、これに限られない。連結部の構成は、インサートとカップとを回動軸AX2周りに回動可能に連結し、インサートの第1方向一方側(-Z側)への移動を規制するならば、特に限定されない。例えば、連結部は、カップに設けられた凹部と、インサートに設けられ、凹部に嵌合される凸部と、を有する構成であってもよい。また、連結部は、凹凸嵌合構造以外の連結構造であってもよい。例えば、連結部は、ネジ等を用いてインサートとカップとを連結する構造であってもよい。
【0102】
また、上記の第1実施形態、第2実施形態および第4実施形態においては、突出部のうちのいずれか一方が設けられなくてもよい。また、突出部の形状は、特に限定されない。
【0103】
また、上記各実施形態においては、人工関節として人工股関節の例を示したが、これに限られない。本発明は、人工股関節以外のどのような人工関節であっても適用可能である。他の人工関節に適用される場合、可動部材は、カップが固定される骨に対して可動する骨に埋め込まれるインプラントに相当する。上記の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0104】
10…人工股関節(人工関節)、12…大腿側インプラント(可動部材)、12a…骨頭部、12b…ネック部、20,220,420,520…カップ、24,421a…第1収容部、30,130,230,330,430…インサート、31,231,431…インサート本体部、32,32a,32b,132a,132b,232a,232b,432a,432b…突出部、33a,33b,233a,233b,433a,433b…軸受け陥凹(凹部)、34,434…第2収容部、42…軸本体部(凸部)、60…連結部、224a,224b,424a,424b…軸部(凸部)、AX2…回動軸、X…第2方向、Z…第1方向