(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】シート巻取装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20220511BHJP
A61B 90/00 20160101ALI20220511BHJP
【FI】
A61B17/00
A61B90/00
(21)【出願番号】P 2018039303
(22)【出願日】2018-03-06
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2017051834
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中谷 誠一
(72)【発明者】
【氏名】白濱 憲昭
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-106938(JP,A)
【文献】特開2013-066671(JP,A)
【文献】米国特許第05503623(US,A)
【文献】米国特許第06478803(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の生体埋植材を巻き取るシート巻取装置であって、
軸部材と、
前記軸部材に外挿され、前記軸部材に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状部材と、を備え、
前記筒状部材は、前記軸部材の突起部が係止可能な抜止用スリットを有し、
前記軸部材に対して前記筒状部材が外挿された状態が解除されるのを規制するように構成され、
前記軸部材は、前記生体埋植材を差し込み可能な差込用スリットが形成された先端部を有し、
前記先端部は、前記生体埋植材が差し込まれる最先端側に前記差込用スリットの間隔が大きくなった平面状の傾斜面が形成され、
前記先端部が前記筒状部材により覆われて当該筒状部材の内側に前記生体埋植材が巻回された状態で保持可能に構成され
、
前記先端部は、当該先端部に巻回された状態の前記生体埋植材の前記差込用スリットからの離脱を抑制する離脱抑制部を備えているシート巻取装置。
【請求項2】
前記軸部材の前記先端部は、間隔を空けて配置された断面略半円形状の二つの部材により前記差込用スリットが形成されている請求項1に記載のシート巻取装置。
【請求項3】
前記筒状部材により前記先端部を覆う際に、前記先端部側に前記筒状部材が変位する前記軸部材及び前記筒状部材の相対的な移動を規制する移動規制部を更に備える請求項1
または2のいずれか一項に記載のシート巻取装置。
【請求項4】
前記軸部材は、小径部と、前記先端部の基端側に設けられ、前記小径部よりも大きい外径の大径部と、を有し、
前記筒状部材は、前記大径部よりも大きい内径の大径筒部と、前記大径筒部に連続して形成され、前記大径部よりも小さい内径となるように縮径された縮径筒部と、を有し、
前記移動規制部は、
前記筒状部材の前記縮径筒部と前記軸部材の前記大径部とが当接して、前記軸部材及び前記筒状部材の相対的な移動を規制する請求項
3に記載のシート巻取装置。
【請求項5】
前記筒状部材を前記軸部材に対して軸方向に相対的に変位させるために操作される操作部を更に備える請求項1~
4のいずれか一項に記載のシート巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外科手術や外傷等に起因して発生し得る、生体組織の癒着を低減するためのシート状の癒着防止材が知られている。
また、近年では、腹腔鏡等を用いた鏡視下手術が行われており、この手術においてシート状の癒着防止材を体内に挿入するために当該癒着防止材を巻き取ることが可能な医療器具も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1等の場合、事前に操作ロッドの先端の保持部にシート状の癒着防止材を挟持させなければならず、その作業が煩雑である。また、癒着防止材を挟持させる作業自体に時間がかかると、手術時間が長時間化してしまうといった問題も生じてしまう。
なお、このような問題は、シート状の癒着防止材に限ったものではなく、例えば、シート状の組織補填材など他のシート状の生体埋植材にも起こり得る。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シート状の生体埋植材をより簡単に巻き取って保持することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様は、
シート状の生体埋植材を巻き取るシート巻取装置であって、
軸部材と、
前記軸部材に外挿され、前記軸部材に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状部材と、を備え、
前記筒状部材は、前記軸部材の突起部が係止可能な抜止用スリットを有し、
前記軸部材に対して前記筒状部材が外挿された状態が解除されるのを規制するように構成され、
前記軸部材は、前記生体埋植材を差し込み可能な差込用スリットが形成された先端部を有し、
前記先端部は、前記生体埋植材が差し込まれる最先端側に前記差込用スリットの間隔が大きくなった平面状の傾斜面が形成され、
前記先端部が前記筒状部材により覆われて当該筒状部材の内側に前記生体埋植材が巻回された状態で保持可能に構成され、
前記先端部は、当該先端部に巻回された状態の前記生体埋植材の前記差込用スリットからの離脱を抑制する離脱抑制部を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シート状の生体埋植材をより簡単に巻き取って保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る一実施形態のシート巻取システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のシート巻取システムを示す分解斜視図である。
【
図3】(a)及び(b)は、
図1のシート巻取システムに備わるシート巻取装置を示す図である。
【
図4】
図1のシート巻取システムの使用方法を説明するために示す図である。
【
図5】
図1のシート巻取システムの使用方法を説明するために示す図である。
【
図6】(a)~(c)は、シート巻取装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態のシート巻取システム100の概略構成を示す斜視図であり、
図2は、シート巻取システム100を示す分解斜視図である。
【0010】
本実施形態のシート巻取システム100は、体内に挿入されるシート状の生体埋植材Fを巻き取るためのものであり、具体的には、
図1及び
図2に示すように、生体埋植材Fを巻き取るシート巻取装置1と、このシート巻取装置1により巻き取られる生体埋植材Fを収容するシートホルダ(シート収容装置)2とを備えている。
【0011】
なお、以下の説明では、シート巻取装置1の軸方向を前後方向とし、当該前後方向に直交する一の方向を左右方向とし、前後方向及び左右方向に直交する方向を上下方向とする。
また、シート巻取装置1を把持する使用者からみて遠い方(遠位側)を先端側とし、使用者からみて近い方(近位側)を基端側とする。
【0012】
<生体埋植材>
先ず、生体埋植材Fについて説明する。
生体埋植材Fは、例えば、生体組織の癒着を低減するために体内に挿入される癒着防止材を含む。また、生体埋植材Fは、例えば、所定の厚さを有するシート状(フィルム状)の形態をなし、左右方向に幅広の略矩形状に形成されている。
また、生体埋植材Fの寸法は、例えば、上下方向の厚さが20[μm]~1[mm]で、前後方向の長さが10~150[mm]で、左右方向の長さが10~150[mm]であるが、一例であってこれに限られるものではない。
【0013】
なお、生体埋植材Fの形状として、矩形状を例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、正方形状や円形状など適宜任意に変更可能である。また、生体埋植材Fとして、癒着防止材を例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、組織補填材など適宜任意に変更可能である。
【0014】
<シートホルダ>
次に、シートホルダ2について説明する。
シートホルダ2は、例えば、上側ホルダ構成部材21と、下側ホルダ構成部材22とを有して形成され、図示は省略するが、所定の一方向(例えば、前後方向や左右方向等)に沿って回動自在にヒンジ結合されてなる。
なお、
図1には、上側ホルダ構成部材21の下面と下側ホルダ構成部材22の上面とを対向させるように、上側及び下側ホルダ構成部材21、22が重ね合わされた状態を表している。
【0015】
また、シートホルダ2は、前後方向に貫通するように形成された貫通孔部23(
図1参照)を有している。
すなわち、
図2に示すように、上側ホルダ構成部材21の下面には、前面側から後面側にわたって座ぐられて断面略半円形状の上側溝部211が形成されている。この上側溝部211は、前面側の部分が後面側の部分よりも大径とされている。
下側ホルダ構成部材22の上面には、前面側から後面側にわたって座ぐられて断面略半円形状の下側溝部221が形成されている。具体的には、上側及び下側ホルダ構成部材21、22が重ね合わされた状態にて(
図1参照)、上側ホルダ構成部材21の上側溝部211に対向する位置に、下側ホルダ構成部材22の下側溝部221が形成されている。この下側溝部221は、上側溝部211と略同様に、前面側の部分が後面側の部分よりも大径とされている。
【0016】
上側溝部211及び下側溝部221は、前面側の大径部分どうしの径が略等しく、上側及び下側ホルダ構成部材21、22が重ね合わされた状態で(
図1参照)、断面略円形状をなす大孔部23aを構成している。同様に、上側溝部211及び下側溝部221は、後面側の小径部分どうしの径が略等しく、上側及び下側ホルダ構成部材21、22が重ね合わされた状態にて(
図1参照)、断面略円形状をなす小孔部(穴部)23bを構成している。
つまり、前面側の大孔部23aと後面側の小孔部23bとを連通させて貫通孔部23が構成されている。この貫通孔部23は、シートホルダ2の左右方向の略中央部に形成されているが、貫通孔部23の配置は一例であってこれに限られるものではない。
【0017】
大孔部23aの内径は、後述するシート巻取装置1の筒状部材12(詳細後述)の外径よりも大きくなっている。
小孔部23bの内径は、シート巻取装置1の筒状部材12(詳細後述)の外径よりも小さく、且つ、軸部材11の先端部112(詳細後述)の外径よりも大きくなっている。
すなわち、大孔部23aに対しては、軸部材11の先端部112も筒状部材12も挿脱可能となっているが、小孔部23bに対しては、先端部112を挿脱可能に、且つ、筒状部材12を挿入不可に構成されている。
また、小孔部23bの前後方向の長さは、生体埋植材Fの前後方向の長さと等しいか、或いは、この長さよりも長くなっている。
【0018】
なお、貫通孔部23(大孔部23a)の前面側の縁部は、例えば、軸部材11の先端部112を挿入し易くなるようにテーパ状に拡径されているのが好ましい。
【0019】
また、シートホルダ2は、貫通孔部23と連通され、生体埋植材Fを収容する収容部24を有している。
すなわち、下側ホルダ構成部材22の上面には、生体埋植材Fの厚さに応じて所定の深さ座ぐられることでシート配置部222が形成されている。このシート配置部222は、例えば、下側溝部221に連続して形成されており、上側及び下側ホルダ構成部材21、22が重ね合わされた状態で(
図1参照)、上側ホルダ構成部材21の上面により覆われることで、貫通孔部23と連通された収容部24が構成される。
【0020】
また、シート配置部222は、小孔部23b(下側溝部221の後面側の小径部分)に対応させて配置され、シート配置部222の前後方向の長さは、小孔部23bと同様に、生体埋植材Fの前後方向の長さと等しいか、或いは、この長さよりも長くなっている。
なお、
図2に示すように、シート配置部222が、例えば、シートホルダ2の前面側まで切り欠かれている場合、上側及び下側ホルダ構成部材21、22が重ね合わされた状態でも(
図1参照)、前面側から生体埋植材Fを収容部24に収容可能となる。
【0021】
また、シートホルダ2の上側及び下側ホルダ構成部材21、22は、例えば、ポリカーボネート等から形成されるが、一例であってこれに限られるものではなく、材料は適宜任意に変更可能である。
【0022】
<シート巻取装置>
次に、シート巻取装置1について、
図3(a)及び
図3(b)を参照して説明する。
図3(a)は、シート巻取装置1を左側から見て示す側面図であり、
図3(b)は、シート巻取装置1の平面図である。
【0023】
シート巻取装置1は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、軸部材11と、この軸部材11に外挿された筒状部材12とを備えている。
【0024】
軸部材11は、例えば、長尺な円柱形状の軸本体部111と、この軸本体部111に連続して形成された先端部112とを有している。
先端部112は、例えば、軸本体部111よりも小径の円柱部分が先端側から軸方向に沿って二股に切り開かれ、断面略半円形状の二つの部材によって生体埋植材Fを先端側から差し込み可能な差込用スリット(差込部)113が形成されている。
また、先端部112の最も先端側には、その他の部分よりも径方向外側に突出した二つの突出部114、114が形成されている。これら二つの突出部114、114は、後述するように、先端部112に巻回された状態の生体埋植材Fが差込用スリット113から離脱してしまうのを抑制する離脱抑制部を構成している(詳細後述)。
なお、二つの突出部114、114が離間している距離(間隔)は、差込用スリット113に生体埋植材Fを差し込み易くなるように先端側ほど大きくなっている。
【0025】
先端部112(突出部114を含む)の外径は、シートホルダ2の貫通孔部23の小孔部23bの内径よりも小さくなっており、当該先端部112を小孔部23b内に挿入可能に、且つ、軸周りに回動可能となっている。
すなわち、収容部24に生体埋植材Fが収容されているシートホルダ2の小孔部23b内に、生体埋植材Fと差込用スリット113とが同じ方向となるように先端部112を挿入することで、収容部24に収容されている生体埋植材Fが差込用スリット113に差し込まれた状態となる(
図4参照)。また、差込用スリット113に生体埋植材Fが差し込まれた状態で、先端部112を軸周りに回動させることにより、当該先端部112を中心として生体埋植材Fが巻回された状態となる。
なお、差込用スリット113の方向とは、先端部112を遠位側から基端側に視た場合の当該差込用スリット113を形成する二つの断面略半円形状の部材どうしの隙間の延在方向のことを言う。例えば、シートホルダ2に生体埋植材Fが水平に収容されている場合には、二つの断面略半円形状の部材どうしの隙間の延在方向が水平となるような向きに軸部材11を回動させた状態で、小孔部23b内に先端部112が挿入されることで、差込用スリット113に生体埋植材Fが差し込まれることとなる。
【0026】
軸本体部111の基端側には、使用者により把持される把持部115が連設されている。
把持部115は、例えば、軸本体部111よりも大径に形成されている。また、把持部115の基端部には、差込用スリット113の方向と対応付けられ、生体埋植材Fに対する差込用スリット113の差し込み方向を指し示す指示部116が設けられている。具体的には、指示部116は、例えば、差込用スリット113の方向と略等しい方向に延在する平板形状をなし、把持部115の周方向に沿って所定の角度(例えば、180°等)を空けて二つ形成されている。
なお、指示部116の配置は、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、図示は省略するが、把持部115の基端部以外の位置に設けられていてもよい。さらに、指示部116は、例えば、把持部115以外の軸部材11の構成要素(例えば、軸本体部111等)や、軸部材11以外のシート巻取装置1の構成要素(例えば、筒状部材12等)に設けられていてもよい。
【0027】
筒状部材12は、例えば、丸筒状をなす部材であり、軸部材11の軸本体部111の外径よりも大きい内径を有し、軸部材11に外挿された状態にて、軸部材11に対して軸方向に相対的に移動可能となっている。
【0028】
また、筒状部材12には、軸本体部111の突起部117が係合する抜止用スリット121が設けられている(外挿解除規制部)。すなわち、筒状部材12の前後方向(軸方向)の長さは、例えば、軸本体部111の前後方向の長さよりもわずかに短くなっており、中央部から基端側にかけて管壁を内外に貫通させて長孔状の抜止用スリット121が形成されている。
これにより、軸部材11に対して筒状部材12が外挿された状態で、軸部材11及び筒状部材12のうちの少なくとも一方が軸方向に移動しても、軸本体部111の突起部117が抜止用スリット121の先端側或いは基端側に係合した状態となって、当該外挿状態が解除されるのが規制される。
【0029】
また、筒状部材12は、生体埋植材Fが巻回された状態の先端部112を覆って、当該筒状部材12の内側に生体埋植材Fを保持可能となっている。具体的には、生体埋植材Fが巻回された先端部112が貫通孔部23内から引き抜かれる際に、先端部112側に筒状部材12が変位するように軸部材11及び筒状部材12のうち、少なくとも一方を軸方向に移動させて筒状部材12により先端部112を覆うように構成されている。
すなわち、筒状部材12の外径は、大孔部23aの内径よりも小さく、且つ、小孔部23bの内径よりも大きくなっているため、筒状部材12は大孔部23a内に挿入されても小孔部23b内に挿入されることはない。そして、軸部材11の先端部112に生体埋植材Fが巻回された後、例えば、当該先端部112が貫通孔部23内から引き抜かれる動作に合わせて筒状部材12を先端部112側に変位させることで、先端部112が筒状部材12により覆われて当該筒状部材12の内側に生体埋植材Fが保持された状態となる。
先端部112が貫通孔部23内から引き抜かれる動作としては、例えば、シート巻取装置1の位置を固定した状態で、シートホルダ2を軸方向に遠位側に移動させる動作や、シートホルダ2の位置を固定した状態で、シート巻取装置1を近位側に移動させる動作や、シートホルダ2を軸方向に遠位側に移動させつつシート巻取装置1を近位側に移動させる動作等が挙げられる。
【0030】
なお、図示は省略するが、例えば、筒状部材12の外面の所定位置(例えば、基端部側等)に、当該筒状部材12を軸部材11に対して軸方向に相対的に変位させるために操作される操作部を設けてもよい。この操作部としては、例えば、使用者の手や指が掛けられるような形状に形成されているのが好ましい。
【0031】
<シート巻取システムの使用方法>
次に、シート巻取システム100の使用方法について、
図1、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4及び
図5は、シート巻取システム100の使用方法を説明するために示す図である。
【0032】
先ず、生体埋植材Fが収容されたシートホルダ2を用意する。
具体的には、シートホルダ2の下側ホルダ構成部材22のシート配置部222に生体埋植材Fを配置した後、上側ホルダ構成部材21を回動させて、上側及び下側ホルダ構成部材21、22が重ね合わされた状態とする。これにより、収容部24内に生体埋植材Fが収容された状態となる(
図1参照)。
なお、生体埋植材Fは、左右方向及び前後方向に略平行となるように配設されているものとする。
【0033】
また、軸部材11の先端部112が露出されたシート巻取装置1を用意する。
具体的には、軸部材11の位置を固定した状態で筒状部材12を基端側に移動させることで、先端部112が筒状部材12により覆われていない状態(露出された状態)となる。
【0034】
そして、シート巻取装置1の使用者は、指示部116を目印にして先端部112の差込用スリット113の方向を生体埋植材Fに合わせて、シートホルダ2の貫通孔部23内に先端部112を挿入する。このとき、先端部112は、貫通孔部23の大孔部23aを経て小孔部23bに挿入されることで、収容部24に収容されている生体埋植材Fが差込用スリット113に差し込まれ、一方、筒状部材12は、大孔部23aに挿入されるものの、大孔部23aと小孔部23bとの段差部分に引っ掛かった状態となる(
図4参照)。
続けて、差込用スリット113に生体埋植材Fが差し込まれた状態で、先端部112が軸周りに回動するように軸部材11及び筒状部材12を一体的に回動させる。これにより、先端部112を中心として生体埋植材Fが巻回されていく。
【0035】
なお、軸部材11の先端部112が筒状部材12により覆われた状態のシート巻取装置1を用いてもよい。この場合、使用者により把持部115が把持された状態で筒状部材12により覆われた先端部112が貫通孔部23内に挿入される際に、筒状部材12は大孔部23aと小孔部23bとの段差部分に引っ掛かって軸方向の変位が規制された状態となり、この状態から軸部材11がさらに遠位側に移動するように押し込まれることで先端部112が露出されつつ小孔部23bに挿入されることとなる。
【0036】
その後、当該先端部112が貫通孔部23内から引き抜かれる動作に合わせて筒状部材12が先端部112側に変位するように、軸部材11及び筒状部材12のうち、少なくとも一方を軸方向に移動させる。このとき、筒状部材12の先端により生体埋植材Fが先端側に押し込まれても、先端部112の突出部114に引っ掛かった状態となるため、生体埋植材Fが差込用スリット113から離脱してしまうのを抑制しつつ、先端部112を筒状部材12により覆って当該筒状部材12の内側に生体埋植材Fを保持した状態とすることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態のシート巻取システム100によれば、シート状の生体埋植材Fを収容するシートホルダ(シート収容装置)2と、生体埋植材Fを巻き取るシート巻取装置1と、を備えるシート巻取システム100であって、シートホルダ2は、生体埋植材Fを収容する収容部24と、収容部24と連通された貫通孔部(穴部)23と、を備え、シート巻取装置1は、軸部材11と、軸部材11に外挿され、軸部材11に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状部材12と、を備え、軸部材11は、生体埋植材Fを差し込み可能な差込用スリット(差込部)113が形成され、シートホルダ2の貫通孔部23内に挿入可能な先端部112を有し、先端部112の貫通孔部23内への挿入により収容部24に収容されている生体埋植材Fが差込用スリット113に差し込まれ、且つ、軸周りの回動により当該先端部112を中心として生体埋植材Fが巻回された状態となり、生体埋植材Fが巻回された先端部112側に筒状部材12が変位するように軸部材11及び筒状部材12のうち、少なくとも一方を軸方向に移動させることにより、先端部112が筒状部材12により覆われて当該筒状部材12の内側に生体埋植材Fを保持可能に構成されている。
したがって、シート巻取装置1の軸部材11の先端部112をシートホルダ2の貫通孔部23に挿入することで差込用スリット113に生体埋植材Fを差し込むことができ、さらに、軸周りに回動させることで先端部112を中心として生体埋植材Fを巻回することができる。そして、先端部112側に筒状部材12が変位するように軸部材11や筒状部材12を軸方向に移動させるだけで、先端部112が筒状部材12により覆われて当該筒状部材12の内側に生体埋植材Fを保持することができる。このように、シート状の生体埋植材Fをより簡単に巻き取って保持することができる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
以下に、シート巻取装置1Aの変形例について、
図6(a)~
図6(c)を参照して説明する。
【0039】
図6(a)~
図6(c)は、シート巻取装置1Aの変形例を示す図である。このうち、
図6(a)は、シート巻取装置1Aの先端部分を示す斜視図であり、
図6(b)は、筒状部材12Aにより軸部材11Aの先端部112Aが覆われていない状態を模式的に示す側面図であり、
図6(c)は、筒状部材12Aにより軸部材11Aの先端部112Aが覆われた状態を模式的に示す側面図である。
なお、
図6(b)及び
図6(c)にあっては、筒状部材12Aを破線とし、当該筒状部材12Aを透過した状態で模式的に表している。
【0040】
図6(a)~
図6(c)に示すように、シート巻取装置1Aは、軸部材11Aと、この軸部材11Aに外挿された筒状部材12Aとを備えている。なお、以下に説明する以外の点は、上記実施形態と略同様であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0041】
軸部材11Aは、上記実施形態の軸部材11と略同様に、例えば、長尺な円柱形状の軸本体部111と、この軸本体部111に連続して形成された先端部112Aとを有し、先端部112Aの基端側(例えば、軸本体部111との境目部分)に、軸本体部(小径部)111よりも大きい外径の大径部118が設けられている。
大径部118は、例えば、円盤状に形成されているが、一例であってこれに限られるものではなく、大径部118の形状は適宜任意に変更可能である。
【0042】
筒状部材12Aは、軸部材11Aの大径部118よりも大きい内径の大径筒部122と、大径部118よりも小さい内径となるように縮径された縮径筒部123と、大径部118よりも小さい内径の小径筒部124と、を有している。
【0043】
大径筒部122は、例えば、その軸方向の長さが軸部材11Aの先端部112Aの長さとほぼ等しくなっており、先端部112Aを中心として巻回された状態となる生体埋植材F(
図5等参照)を覆うことができるようになっている。
小径筒部124は、例えば、軸部材11Aの軸本体部111の外径よりもわずかに大きい内径に形成され、軸本体部111に外挿されるようになっている。
縮径筒部123は、例えば、大径筒部122の基端部分及び小径筒部124の先端部分の各々に連続して形成され、基端側が軸部材11Aの大径部118よりも小さい内径となるようにテーパ状に縮径されている。これにより、軸部材11Aの先端部112A側に筒状部材12Aが変位するように軸部材11A及び筒状部材12Aが相対的に移動(例えば、
図6(c)中、白抜きの矢印で示す方向に筒状部材12Aが移動)しても、筒状部材12Aの縮径筒部123の内面と軸部材11Aの大径部118の外面とが当接して、当該移動が規制される。
【0044】
具体的には、生体埋植材Fが巻回された先端部112Aが貫通孔部23内から引き抜かれる際に、先端部112A側に筒状部材12Aが変位するように軸部材11A及び筒状部材12Aのうち、少なくとも一方を軸方向に移動させる。すると、軸部材11Aは、大径部118が大径筒部122内に引き込まれて先端側から基端側へと変位していき、縮径筒部123における大径部118の外径に対して内径が小さくなった部分の内面に接触することで、当該変位が規制される(
図6(b)及び
図6(c)参照)。
このように、筒状部材12Aの縮径筒部123と軸部材11Aの大径部118は、軸部材11A及び筒状部材12Aの相対的な移動を規制する移動規制部を構成している。
【0045】
なお、筒状部材12Aの縮径筒部123の内面と軸部材11Aの大径部118の外面とが当接した状態で、軸本体部111の突起部117が抜止用スリット121の基端側に係合した状態となるのが好ましい(
図5等参照)。これにより、軸部材11A及び筒状部材12Aの相対的な移動の規制を複数箇所で行うことができ、当該移動を規制する際に生じる衝撃を効果的に緩衝させることができる。
【0046】
したがって、軸部材11Aの生体埋植材Fが巻回された先端部112Aを筒状部材12Aにより覆う際に、先端部112A側に筒状部材12Aが変位するような軸部材11A及び筒状部材12Aの相対的な移動を適正に規制することができる。
さらに、筒状部材12Aは、小径筒部124よりも内径が大きい大径筒部122を有しているので、当該大径筒部122の内側の空間を相対的に大きくすることができ、先端部112Aに巻回された状態での巻き数が多くなる左右方向に幅広の生体埋植材Fであっても、大径筒部122の内側に適正に保持することができる。
【0047】
また、上記実施形態にあっては、先端部112が貫通孔部23内から引き抜かれる動作に合わせて筒状部材12を先端部112側に変位させるようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、適宜任意に変更可能である。具体的には、貫通孔部23の内径全体を筒状部材12の外径よりも大きくすることにより、軸部材11の先端部112が貫通孔部23内に挿入されて生体埋植材Fが巻回された状態でも、先端部112側に筒状部材12を変位させて当該筒状部材12の内側に生体埋植材Fを保持可能となる。この場合、筒状部材12の内側に生体埋植材Fを保持された状態でシートホルダ2から引き抜かれる。
さらに、筒状部材12の管壁に、差込用スリット113の方向に対応させて軸方向に延在するスリット(図示略)を設けるようにしてもよい。この場合、筒状部材23により先端部112が覆われた状態で貫通孔部23に挿入して、先端部112を軸周りに回動させることで当該先端部112に生体埋植材Fを巻回させるとともに、筒状部材12の内側に生体埋植材Fを保持することができる。
【0048】
また、上記実施形態にあっては、先端部112に生体埋植材Fを巻回する際に、軸部材11及び筒状部材12を一体的に軸周りに回動させるようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、外挿解除規制部を具備しない構成とすることで軸部材11のみを回動させるようにしてもよい。すなわち、外挿解除規制部として、突起部117及び抜止用スリット121を具備するか否かは適宜任意に変更可能である。
【0049】
さらに、上記実施形態にあっては、シートホルダ2に貫通孔部23を形成するようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、図示は省略するが、有底状の穴部としてもよい。
【0050】
また、上記実施形態にあっては、シートホルダ2として、生体埋植材Fを一枚収容可能なものを例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、収容部24を複数設け、生体埋植材Fを複数枚収容可能な構成としてもよい。
【0051】
さらに、本実施形態のシート巻取システム100は、生体内に挿入される生体埋植材F以外にも生体外の傷口を覆う創傷被覆材(図示略)に適用されてもよい。
【0052】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
100 シート巻取システム
1、1A シート巻取装置
11、11A 軸部材
111 軸本体部
112、112A 先端部
113 差込用スリット
114 突出部(離脱抑制部)
115 把持部
116 指示部
117 突起部(外挿解除規制部)
118 大径部
12、12A 筒状部材
121 抜止用スリット(外挿解除規制部)
122 大径筒部
123 縮径筒部
2 シートホルダ(シート収容装置)
23 貫通孔部
23a 大孔部
23b 小孔部(穴部)
24 収容部
F 生体埋植材