(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】農産物貯蔵システム、農産物貯蔵システムを備える輸送機関、および農産物貯蔵方法
(51)【国際特許分類】
A01F 25/00 20060101AFI20220511BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20220511BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20220511BHJP
A23B 9/20 20060101ALI20220511BHJP
A23B 9/16 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A01F25/00 C
F25D23/00 302E
F25D11/00 101B
F25D23/00 302Z
F25D23/00 302M
F25D11/00 101D
A23B9/20
A23B9/16
(21)【出願番号】P 2018036457
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391011700
【氏名又は名称】宮崎県
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野口 大介
(72)【発明者】
【氏名】長友 良行
(72)【発明者】
【氏名】陰山 翼
(72)【発明者】
【氏名】山本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 依里
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-035054(JP,A)
【文献】特開平04-063581(JP,A)
【文献】特開2003-307512(JP,A)
【文献】特開昭50-031054(JP,A)
【文献】特開2004-347240(JP,A)
【文献】特開平07-246060(JP,A)
【文献】特開2015-175553(JP,A)
【文献】特開平08-037921(JP,A)
【文献】特開2017-044444(JP,A)
【文献】特開平06-092408(JP,A)
【文献】特開昭63-112920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 25/00 - 25/22
A23B 7/00 - 9/34
F23D 23/00
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農産物が貯蔵される農産物貯蔵部と、
気体を調湿して前記農産物貯蔵部内に供給するバブリング部と、を有し、
前記バブリング部は、
前記農産物貯蔵部内に供給される前記気体の流れを生じさせる圧送部と、
当該圧送部に対し前記気体の流動方向下流側において
、濃度に応じて前記気体を調湿する調湿液を貯めた調湿液貯蔵部と、
前記調湿液中に配置され前記圧送部と連通した孔が形成された気泡発生部と、を有し、
前記気体は、前記気泡発生部の前記孔を通過して気泡となった状態で前記調湿液をくぐり、前記調湿液をくぐりつつ調湿されて前記農産物貯蔵部に供給される、農産物貯蔵システム。
【請求項2】
前記農産物貯蔵部内に設けられた温度センサと、
当該温度センサと電気的に接続した温度制御部と、を有し、
当該温度制御部は、前記温度センサによって測定される温度に基づき、前記農産物貯蔵部内の温度を一定の範囲内に収まるよう制御する、請求項1に記載の農産物貯蔵システム。
【請求項3】
前記農産物貯蔵部内に設けられたCO
2濃度センサと、
前記農産物貯蔵部内に設けられたO
2濃度センサと、
前記農産物貯蔵部に連通する前記気体の給気経路の接続元、および前記農産物貯蔵部内の気体の排気経路の接続先のそれぞれを切替え可能な経路切替え部と、
前記CO
2濃度センサおよび前記O
2濃度センサと電気的に接続し、前記経路切替え部の動作を制御するガス濃度制御部と、を有し、
当該ガス濃度制御部は、前記CO
2濃度センサによって測定されるCO
2濃度、および前記O
2濃度センサによって測定されるO
2濃度に基づき、前記給気経路の接続元および前記排気経路の接続先が前記農産物貯蔵部の外部と連通するよう前記経路切替え部を制御可能である、請求項1または請求項2に記載の農産物貯蔵システム。
【請求項4】
複数の前記農産物貯蔵部を有する、請求項1~請求項3のうちのいずれか1つに記載の農産物貯蔵システム。
【請求項5】
温調装置を備える部屋に設けられている、請求項1~請求項4のうちのいずれか1つに記載の農産物貯蔵システム。
【請求項6】
前記農産物貯蔵部が、温調装置を備える部屋である、請求項1~請求項4のうちのいずれか1つに記載の農産物貯蔵システム。
【請求項7】
前記農産物貯蔵部内の相対湿度が、85%以上100%未満である、請求項1~請求項6のうちのいずれか1つに記載の農産物貯蔵システム。
【請求項8】
請求項1~請求項7のうちのいずれか1つに記載の農産物貯蔵システムを備える、輸送機関。
【請求項9】
濃度に応じて気体を調湿する調湿液に気泡の状態で気体をくぐらせ、前記調湿液にくぐらせて調湿した前記気体を、農産物の貯蔵されている貯蔵空間に供給する、農産物貯蔵方法。
【請求項10】
前記貯蔵空間内のCO
2
濃度およびO
2
濃度を測定し、測定した前記CO
2
濃度および前記O
2
濃度に基づき、
前記貯蔵空間に連通する前記気体の給気経路の接続元、および前記貯蔵空間内の気体の排気経路の接続先を切替えて、前記貯蔵空間の外部と連通させ、前記CO
2
濃度および前記O
2
濃度を制御する、請求項9に記載の農産物貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物貯蔵システム、農産物貯蔵システムを備える輸送機関、および農産物貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農産物の長期貯蔵について、収穫期以外での販売のための出荷調整や、生産地外への流通を目指した国内外への輸送の必要性から、高い関心が寄せられている。
【0003】
農産物の長期貯蔵は、冷凍保存や冷蔵保存によって行われることが多く、それらの技術向上によって、鮮度良く長期貯蔵できるようになってきているものの、生の状態に比べれば鮮度が劣る。
【0004】
このため、農産物を生の状態、あるいはそれに近い状態で長期保存できる貯蔵技術が求められており、特に食品加工業のうち、焼酎製造業界においては、焼酎の原材料となる甘藷を生の状態で長期貯蔵できれば、風味の良い焼酎が生産可能になることから、生貯蔵に対する要望が非常に高い。
【0005】
生貯蔵に影響を及ぼす主たる要因の一つは湿度であり、従って、貯蔵空間内の湿度を精度良く制御することが好ましい。従来、湿度を制御する技術として、例えば特許文献1、2があり、特許文献1の発明は、微粒子状の水を噴霧する加湿器を制御することによって、湿度を管理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4800192号公報
【文献】特許第6047804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように微粒子状の水を噴霧する従来技術によっては、例えば甘藷の長期生貯蔵で要求されるような高精度の湿度管理は困難であった。
【0008】
一方、上記特許文献2のように、貯蔵空間内の空気を調湿液の液膜に通過させて調湿すれば、湿度をより高精度に管理できるが、この技術は、調湿された空気の流れを送風機によって貯蔵空間内で生じさせるため、湿度が高くても風の影響で農産物の局所的な乾燥が生じることがあり得る。従って、農産物の長期生貯蔵に応用するためには更なる改良の余地があった。
【0009】
また、特許文献2の発明において、調湿液の液膜を通過する空気が所定の湿度を得るのに足るだけの気液接触を確保するには、調湿液の液膜をある程度の広さで形成するとともに、そこを広範囲に空気が通過するよう、ある程度大きな送風機を設けなければならず、装置構成の大型化を招くことがある。
【0010】
本発明は、以上のことに鑑みてなされ、農産物の長期生貯蔵に適し、また装置構成をコンパクトにできる農産物貯蔵システム、農産物貯蔵システムを備える輸送機関、および農産物貯蔵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の農産物貯蔵システムは、農産物が貯蔵される農産物貯蔵部と、気体を調湿して前記農産物貯蔵部内に供給するバブリング部と、を有する。前記バブリング部は、前記農産物貯蔵部内に供給される前記気体の流れを生じさせる圧送部と、当該圧送部に対し前記気体の流動方向下流側において調湿液を貯めた調湿液貯蔵部と、前記調湿液中に配置され前記圧送部と連通した孔が形成された気泡発生部と、を有する。前記気体は、前記気泡発生部の前記孔を通過して気泡となった状態で前記調湿液をくぐり、前記調湿液をくぐりつつ調湿されて前記農産物貯蔵部に供給される。
【0012】
上記目的を達成するための本発明の輸送機関は、前記農産物貯蔵システムを備える。
【0013】
上記目的を達成するための本発明の農産物貯蔵方法は、調湿液に気泡の状態で気体をくぐらせ、前記調湿液にくぐらせて調湿した前記気体を、農産物の貯蔵されている貯蔵空間に供給する。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する発明では、農産物の貯蔵される空間に供給される気体が調湿液と気液接触し、湿度が変動し難く安定する結果、湿度を高精度に管理可能になる。また、気体は気泡の状態で液中をくぐらされるのにともなって、その勢いを大きく削がれて供給され、農産物の貯蔵空間内に至ったときには流れが抑制された状態となっている。このように、湿度が高精度に管理可能で、貯蔵空間内の気体の流れが抑制されることによって、湿度の変動や風の影響による農産物の鮮度低下が防止されるため、上記構成を有する発明は、農産物の長期生貯蔵に適する。
【0015】
また、上記構成を有する発明では、気体が気泡の状態で調湿液にくぐらされることによって、液膜のように面積を拡げて広範囲に気体を流さずとも、調湿液と気体とが効果的に接触する。このため、装置構成をコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の農産物貯蔵システムを示す図である。
【
図2】気体の流路が
図1から切替えられた第1実施形態の農産物貯蔵システムを示す図である。
【
図3】調湿液の濃度と相対湿度との関係を示すグラフである。
【
図4】調湿液の温度と相対湿度との関係を示すグラフである。
【
図5】第2実施形態の農産物貯蔵システムを示す図である。
【
図6】第3実施形態の農産物貯蔵システムを示す図である。
【
図7】第4実施形態の農産物貯蔵システムを示す図である。
【
図8】実験で用いた農産物貯蔵システムを示す図である。
【
図9】異なる調湿液による相対湿度の経時変化を示すグラフである。
【
図10】甘藷の重量保持率と貯蔵日数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0018】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態の農産物貯蔵システム100は、貯蔵庫110(農産物貯蔵部)、バブリング部120、調湿液温調部130、給気保温部131、および庫内保温部132を有する。
【0019】
また、農産物貯蔵システム100は、湿度センサ140、温度センサ141、CO2濃度センサ142、およびO2濃度センサ143、湿度制御部150、温度制御部151、およびガス濃度制御部152、ならびに、表示部160を有する。また、農産物貯蔵システム100は、給気経路170、排気経路171、およびバルブユニット180(経路切替え部)を有する。農産物貯蔵システム100は、甘藷1を貯蔵する。
【0020】
甘藷1は、例えば、コガネセンガン、シロユタカ、ベニアズマ、ベニハヤト、高系14号、サツマヒカリ、およびシロサツマからなる群から選択される1種であるが、これらに限定されない。また、それらの2種以上が貯蔵される形態も本発明の範囲に含まれる。
【0021】
貯蔵庫110は、開閉自在な扉を有し、甘藷1を収容可能である。貯蔵庫110の扉は、閉じた状態において気密性を有し、その状態では給気経路170および排気経路171だけを通じて気体が貯蔵庫110において流入・排出される。貯蔵庫110の大きさや形状は特に限定されず、例えば、貯蔵される甘藷1の大きさや個数等に対応して適宜設計できる。甘藷1は、収穫後、生の状態で貯蔵庫110に入れられる。
【0022】
バブリング部120は、ポンプ121(圧送部)、調湿液貯蔵部122、および気泡発生部123を有する。
【0023】
ポンプ121は、バブリング部120を通過し貯蔵庫110へ向かう気体の流れを生じさせる。ポンプ121に対し気体の流動方向下流側に、調湿液貯蔵部122が設けられている。
【0024】
調湿液貯蔵部122は、調湿液124を貯めた入れ物であり、ポンプ121および貯蔵庫110と連通している。調湿液貯蔵部122は、貯蔵庫110に連通する出口125と調湿液124の液面との間に、互い違いに配置された飛散防止板126を有する。また、調湿液124の飛散防止のために、飛散防止板126に加えて更に、または飛散防止板126の代わりに、例えば繊維状のフィルタが設けられてもよい。
【0025】
調湿液124は、例えば、プロピレングリコール水溶液、トリエチレングリコール水溶液、ブチレングリコール水溶液等であるが、これらに限定されない。調湿液124は、好ましくは、次の3つの特性を有する。1つ目は、異なる温度においても飽和水蒸気圧が濃度によって略一定であること、2つ目は、雑菌等の繁殖を抑える静菌作用を有すること、3つ目は、食品添加物として認定されていること、である。それら3つの好ましい特性を有する調湿液124として、食品添加物用プロピレングリコール水溶液が挙げられるが、これに限定されない。
【0026】
気泡発生部123は、調湿液124の中に配置されている。ポンプ121と連通する孔が気泡発生部123に形成されている。気泡発生部123は、例えば散気管であるが、気体を気泡の状態にすることができれば特に限定されず、例えば、スポンジのような多孔質構造を有してもよい。
【0027】
調湿液温調部130は、調湿液貯蔵部122との間で調湿液124を行き来させ、調湿液124と熱交換することによって、調湿液124を所定の温度にする。調湿液温調部130は、調湿液124を所定の温度にできれば特に限定されないが、例えば、チラー、熱交換器である。
【0028】
給気保温部131は、給気経路170およびバブリング部120内を通る気体を所定の温度に保つために設けられている。庫内保温部132は、貯蔵庫110内の雰囲気を所定の温度に保つために設けられている。給気保温部131および庫内保温部132は、例えば、二重構造の壁の間に温調媒体を循環させるジャケット型の温調装置であるが、気体を所定の温度に保つことができれば特に限定されない。
【0029】
湿度センサ140は、貯蔵庫110内に設けられており、その内部の湿度を測定する。湿度センサ140は、湿度制御部150と電気的に接続している。湿度制御部150は、例えばマイクロコンピュータであり、ポンプ121と電気的に接続している。
【0030】
温度センサ141は、貯蔵庫110内に設けられており、その内部の温度を測定する。温度センサ141は、温度制御部151と電気的に接続している。温度制御部151は、例えばマイクロコンピュータであり、調湿液温調部130、給気保温部131、および庫内保温部132と電気的に接続している。
【0031】
CO2濃度センサ142は、貯蔵庫110内に設けられており、その内部のCO2濃度を測定する。O2濃度センサ143は、貯蔵庫110内に設けられており、その内部のO2濃度を測定する。CO2濃度センサ142、およびO2濃度センサ143は、ガス濃度制御部152と電気的に接続している。ガス濃度制御部152は、例えばマイクロコンピュータであり、バルブユニット180を動作させる駆動源、およびポンプ121と電気的に接続している。
【0032】
表示部160は、湿度制御部150、温度制御部151、およびガス濃度制御部152のそれぞれと電気的に接続しており、貯蔵庫110内における、湿度、温度、CO2濃度、およびO2濃度のそれぞれを表示可能である。表示部160は、例えば液晶ディスプレイである。
【0033】
給気経路170、および排気経路171は、配管によって構成されている。給気経路170は、バルブユニット180とバブリング部120とを連通させるとともに、バブリング部120と貯蔵庫110とを連通させる。排気経路171は、貯蔵庫110とバルブユニット180とを連通させる。
【0034】
バルブユニット180は、給気経路170に対し、気体の流動方向上流側で接続しており、また、排気経路171に対し、気体の流動方向下流側で接続している。また、バルブユニット180は、大気に開放されている配管190、191と接続している。
【0035】
バルブユニット180には、互いに連通しないよう隔てられた2つの流路181、182が形成されている。バルブユニット180は、例えばモータ等の駆動源と接続しており、流路181、182とともに回転可能である。バルブユニット180が回転すると、バルブユニット180における流路181、182を通じた各配管の連通状態が切替わり、これによって、給気経路170の接続元が切替わるとともに、排気経路171の接続先が切替わる。
【0036】
次に、農産物貯蔵システム100の動作について触れつつ実施形態の農産物貯蔵方法を述べる。
【0037】
実施形態の農産物貯蔵方法は、概説すると、調湿液124に気泡の状態で気体をくぐらせ、こうして調湿した気体を、貯蔵庫110の内部(貯蔵空間)に供給する。
【0038】
本実施形態では、調湿液124にくぐらされる気体は、例えば空気であり、ポンプ121が稼働することによって、調湿液124に送り込まれる。気体は、気泡発生部123に形成されている孔を通過するのにともなって気泡となる。気泡の状態で調湿液124をくぐりつつ気体は調湿される。液中での気泡発生にともない、調湿液124の飛沫が飛ぶことがあるが、飛散防止板126がそのような飛沫が出口125の外へと飛散するのを防止する。
【0039】
調湿された気体は、出口125から出て給気経路170を通り、貯蔵庫110内に入る。調湿された気体が送り込まれることによって、貯蔵庫110内が所定の湿度で略一定に保たれる。貯蔵庫110内の湿度は、生貯蔵に適するよう甘藷1の種類に応じて適宜設定され、特に限定されないが、例えば100%に近い高湿度である。湿度が低下すると、甘藷1に萎びが生じ、品質低下を招く虞があるが、適切な湿度に安定して保たれることによって、萎びに起因した腐れやカビ等による腐敗が防止されるため、長期生貯蔵にとって好ましい。
【0040】
貯蔵庫110内の湿度は、湿度センサ140の測定結果に基づき、湿度制御部150によって一定の範囲内に収まるよう制御される。例えば、湿度センサ140によって測定された湿度が所定の範囲以上になると、湿度制御部150は、ポンプ121を停止させ、調湿された気体が貯蔵庫110内に送り込まれるのを止める。一方、湿度センサ140によって測定された湿度が所定の範囲以下になると、湿度制御部150は、ポンプ121を再び作動させ、調湿された気体が貯蔵庫110内に再度送り込まれるようにする。このようにポンプ121を断続的に作動させることによって、貯蔵庫110内の気体の流れを抑制できる。
【0041】
また、貯蔵庫110内では、甘藷1の生貯蔵に適するように、温度も一定の範囲内に保たれる。生貯蔵に適した温度は、甘藷1の種類に応じて適宜設定され、例えば、コガネセンガン、シロユタカ、ベニアズマ、ベニハヤト等の貯蔵性が比較的低い品種では、15℃程度であり、高系14号、サツマヒカリ、シロサツマ等の貯蔵性が比較的高い品種では、13℃程度であるが、これらに限定されない。10℃より低いと低温障害の発生する虞があるため、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは13~15℃である。庫内が適温に保たれることによって、低温障害に起因した腐れやカビ等による腐敗が防止されるため、長期生貯蔵にとって好ましい。
【0042】
貯蔵庫110内の温度は、温度センサ141の測定結果に基づき、温度制御部151によって一定の範囲内に収まるよう制御される。
【0043】
例えば、貯蔵庫110内で測定された温度が所定の範囲以上になると、温度制御部151は、調湿液温調部130を作動させて調湿液124の温度を下げ、その結果、液中をくぐる気体の温度も下がり、このように温度低下した気体が貯蔵庫110内に送り込まれることによって、温度上昇していた雰囲気が所定の温度に調整される。
【0044】
一方、貯蔵庫110内で測定された温度が所定の範囲以下になると、例えば、温度制御部151は、調湿液温調部130を作動させて調湿液124の温度を上げ、その結果、液中をくぐる気体の温度も上がり、このように温度上昇した気体が貯蔵庫110内に送り込まれることによって、温度低下していた雰囲気が所定の温度に調整される。
【0045】
また、貯蔵庫110内では、甘藷1の生貯蔵に適するように、CO2濃度およびO2濃度が調整される。甘藷1は収穫後も呼吸しているため、庫内のCO2濃度が大きくなり、O2濃度が低下すると、窒息状態となる虞がある。これを避け、鮮度良く長期生貯蔵するため、CO2濃度およびO2濃度を調整することが好ましい。
【0046】
貯蔵庫110内のCO2濃度およびO2濃度は、CO2濃度センサ142およびO2濃度センサ143の測定結果に基づき、ガス濃度制御部152によって、CO2濃度が所定値以下に抑えられるとともに、O2濃度が所定値以上になるよう制御される。これについて以下に具体的に述べる。
【0047】
バルブユニット180が流路181を通じて給気経路170と排気経路171とを連通させている経路の閉じた状態(
図1の状態)では、貯蔵庫110内の空気は、ポンプ121が作動していないときは庫内に留まり、またポンプ121が作動したとしても、排気経路171から給気経路170へと流れて再び庫内へと戻る。
【0048】
このため、甘藷1の呼吸とともに、庫内のCO2濃度は次第に増加していく一方で、O2濃度は低下してき、庫内におけるそれらの状況は悪化していく。しかし、本実施形態では、CO2濃度センサ142によって測定されるCO2濃度が所定値以上になり、O2濃度センサ143によって測定されるO2濃度が所定値以下になると、ガス濃度制御部152がバルブユニット180を回転するよう動作させ、気体の流れる経路を、外部と連通する開いた状態に変える。
【0049】
図2に示すように、経路の開いた状態では、給気経路170は、流路182を通じて配管190と連通し、排気経路171は、流路181を通じて配管191と連通する。このため、貯蔵庫110の庫内は大気に開放される。
【0050】
この状態で、ガス濃度制御部152がポンプ121を作動させると、配管190から貯蔵庫110内へと外部の新鮮な空気が送り込まれ、庫内の悪化した空気は配管191から外部へと排出される。その結果、庫内のCO2濃度が所定値以下に抑えられるとともに、O2濃度が所定値以上になり、新鮮な空気によって庫内が満たされる。甘藷1が窒息状態にならず良好に呼吸することによって、腐れやカビ等による腐敗が防止されるため、長期生貯蔵にとって好ましい。
【0051】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0052】
本実施形態では、貯蔵庫110内に供給される気体が調湿液124と気液接触し、これによって湿度が変動し難くなり安定する。以下に、プロピレングリコール水溶液(単にPG水溶液と称す)の特性を好適な例として示しつつ、調湿液124による湿度の安定について述べる。
【0053】
図3に示すように、調湿液124は、濃度に応じて相対湿度を変化させ、例えば、PG水溶液の濃度が60%のとき、空気の相対湿度は70%程度となり、濃度が40%では相対湿度は85%程度に保持される。すなわち、調湿液124の濃度を変更することによって、その濃度に対応した相対湿度が得られる。なお、
図3に示すグラフは、PG水溶液および空気がともに13℃のときのデータである。
【0054】
図4に示すように、調湿液124は、温度が変化しても相対湿度を略一定に保ち、例えば、PG水溶液および空気の温度が-5℃~50℃と大きく変化しても、相対湿度の変化量は±5%以内である。すなわち、調湿液124は、温度変化に対して恒湿性を有しており、空気の湿度が高いときには空気中から水蒸気を吸収し、空気が乾燥しているときには調湿液124から水蒸気が空気中に放出される。
【0055】
このように、湿度が調湿液124の濃度に応じて略一定に保たれ、変動し難く安定する結果、貯蔵庫110内に供給される気体について、その湿度を高精度に管理可能になる。
【0056】
また、気体は気泡の状態で調湿液124の液中をくぐらされるのにともなって、その勢いを大きく削がれて供給され、貯蔵庫110内に至ったときには流れが抑制された状態となっている。
【0057】
以上述べたように、湿度が高精度に管理可能で、貯蔵庫110内で気体の流れが抑制されることによって、湿度低下や風の影響による萎び、ひいては腐敗が防止されるため、本実施形態は、甘藷1の長期生貯蔵に適する。
【0058】
甘藷1は湿度および庫内の風による影響を受け易い農産物であるため、湿度が高精度に管理可能で庫内の風が抑制される本実施形態は、甘藷1の長期生貯蔵にとって特に有効である。
【0059】
また、気体が気泡の状態で調湿液124にくぐらされることによって、液膜のように面積を拡げて広範囲に気体を流さずとも調湿液124と気体とが効果的に接触する。このため、装置構成をコンパクトにできる。
【0060】
本実施形態では、温度制御部151が、温度センサ141の測定結果に基づき、貯蔵庫110内の温度を一定の範囲内に収まるよう制御し、これによって貯蔵庫110内の温度が好ましい条件で安定するため、甘藷1の長期生貯蔵にとってより好適となる。
【0061】
本実施形態では、ガス濃度制御部152が、CO2濃度センサ142およびO2濃度センサ143の測定結果に基づき、給気経路170の接続元および排気経路171の接続先が外部と連通するようバルブユニット180を制御し、これによって貯蔵庫110内のCO2濃度およびO2濃度の悪化が抑制されるため、甘藷1の長期生貯蔵にとってより好適となる。
【0062】
本実施形態では、調湿液124の濃度によって、貯蔵庫110内の相対湿度が決まり、温度変化等の影響を受け難いため、生貯蔵に適した好適な湿度を安定的に保持できる。
【0063】
また、調湿液124が、例えば、プロピレングリコール水溶液、トリエチレングリコール水溶液、ブチレングリコール水溶液等の脂肪族多価アルコールを含む水溶液であれば、食品添加物としても利用可能であることから、調湿液124にくぐらせた気体を貯蔵庫110内に供給しても、甘藷1が食品としての安全性を損ない難い。
【0064】
また、調湿液124が静菌作用を有すれば、そこにくぐらせた気体が供給されることによって貯蔵庫110内では菌類がより繁殖し難くなるため、腐れやカビ等による腐敗を特に効果的に防止できる。
【0065】
<第2実施形態>
図5に示すように、第2実施形態は、複数の貯蔵庫110(農産物貯蔵部)が設けられる点で第1実施形態と異なる。また、本実施形態は、第1実施形態の調湿液温調部130、給気保温部131、および庫内保温部132が省略される点で、第1実施形態と異なる。他の構成および貯蔵方法は、本実施形態と第1実施形態とで略同様であり、それらで共通する構成要素については、第1実施形態と同じ符号を用いて重複する説明を省略する。
【0066】
本実施形態の農産物貯蔵システム200は、例えば農産物の貯蔵施設内における、温調装置を備える部屋201に設けられている。部屋201に備えられる温調装置(不図示)は、室温を増減可能であれば特に限定されない。
【0067】
本実施形態の温度制御部251は、部屋201に備えられる温調装置と電気的に接続している。温度制御部251は、温度センサ141によって測定される温度に基づき、部屋201に備えられる温調装置を制御し室温を調整することによって、貯蔵庫110内の温度が一定の範囲内に収まるようにする。本実施形態では、部屋201に備えられる温調装置が、第1実施形態の調湿液温調部130、給気保温部131、および庫内保温部132と同様の機能を担っている。
【0068】
複数の貯蔵庫110は、互いに連通している。バブリング部120から供給される調湿された気体は、一の貯蔵庫110からそれに隣接する他の貯蔵庫110へと流れ込み、複数の貯蔵庫110の全てに行き渡る。複数の貯蔵庫110の全てに調湿された気体が行き渡れば、複数の貯蔵庫110同士がどのように連通しているかは特に限定されない。
【0069】
また、複数の貯蔵庫110が互いに連通している形態に限定されず、複数の貯蔵庫110が連通することなく互いに隔てられて独立している形態であってもよい。この場合、複数の貯蔵庫110のそれぞれに、バブリング部120から調湿された気体が個別に直接供給される。
【0070】
また、バブリング部120およびバルブユニット180の数も特に限定されず、バブリング部120が2つ以上設けられてもよいし、バルブユニット180が2つ以上設けられてもよい。
【0071】
本実施形態のように、複数の貯蔵庫110が設けられていれば、より大量の甘藷1(農産物)を貯蔵できる。
【0072】
また、本実施形態の農産物貯蔵システム200は、温調装置を備える部屋201に設けられることによって、第1実施形態の調湿液温調部130、給気保温部131、および庫内保温部132のような、貯蔵庫110内の温調のための装置を別途に設けなくて済むため、装置構成が複雑化するのを抑制できる。
【0073】
<第3実施形態>
図6に示すように、第3実施形態は、比較的大型の貯蔵庫310に大量の甘藷1(農産物)がまとめて貯蔵される点で、第2実施形態と異なる。貯蔵庫310以外の構成および貯蔵方法は、本実施形態と第2実施形態とで略同様であり、それらで共通する構成要素については、第2実施形態と同じ符号を用いて重複する説明を省略する。
【0074】
貯蔵庫310は、複数の甘藷1が入ったバゲット311を複数収容可能である。甘藷1は、収穫の際、バゲット311に入れつつ集められ、その後、バゲット311ごと貯蔵庫310に入れられる。
【0075】
貯蔵庫310は、バゲット311ごと甘藷1を入れることができる開閉自在な扉(不図示)を有し、その扉の閉じた状態では、給気経路170および排気経路171だけを通じて気体の流入・排出が行われ、それらに連通する箇所以外では気密性が確保されている。
【0076】
給気経路170および排気経路171の各々が、図示しているように分岐して複数個所で貯蔵庫310と連通していれば、給気経路170からの気体が広い庫内の全体に行き渡り易く、また、排気経路171を通じて広い庫内の全体から気体が排出され易いため、気体の流入・排出による庫内の温度調整や湿度調整を円滑に行うことができ、好ましい。ただ、この形態に限定されず、給気経路170および排気経路171の各々は、1箇所だけで貯蔵庫310と連通していてもよい。
【0077】
バゲット311は、例えば樹脂製のカゴであるが、これに限定されず他の入れ物であってもよい。バゲット311の大きさは、ある程度まとまった数の甘藷1が入ればよく、特に限定されない。
【0078】
本実施形態の貯蔵庫310のように、バゲット311ごと甘藷1を収容可能であれば、貯蔵の際にバゲット311から甘藷1を取り出す手間が省ける。このため、本実施形態によれば、第2実施形態の効果に加え、作業効率を向上できるという効果が得られる。
【0079】
<第4実施形態>
図7に示すように、第4実施形態では、農産物貯蔵部が、他の実施形態のような貯蔵庫110、310ではなく、第2、第3実施形態の温調装置を備える部屋201によって構成される点が、他の実施形態と大きく異なる。他の実施形態と同様の構成要素については、他の実施形態で用いたのと同じ符号を用いる。貯蔵方法は、他の実施形態と同様である。
【0080】
本実施形態では、バブリング部120が部屋201の外に設けられ、調湿された気体を室外から部屋201の室内へと供給する。調湿液124は、調湿液温調部130によって好ましい温度に調整されており、そこをくぐる気体も適温となるが、これは、供給する気体によって部屋201の室温を調整するためではなく、室温に気体の温度を合わせるためである。
【0081】
部屋201の室温自体は、温度センサ141によって測定される温度に基づき、温度制御部251によって、貯蔵に適した好ましい温度に調整される。また、湿度制御部150が貯蔵に適するように湿度を制御し、ガス濃度制御部152が貯蔵に適するようにCO2濃度およびO2濃度を制御するのは、他の実施形態と同様である。
【0082】
本実施形態でも、第2、第3実施形態と同様、部屋201に備えられている温調装置(不図示)が貯蔵空間内の温調に流用されるため、温調装置を別途に用意しなくて済み、装置構成の複雑化を抑制できる。
【0083】
また、部屋201自体を農産物貯蔵部とすれば、バゲット311ごと甘藷1が収容可能であり、第3実施形態と同様、貯蔵の際にバゲット311から甘藷1を取り出す手間が省けるため、作業効率を向上できる。
【0084】
次に、本発明者らが行った貯蔵実験について述べる。
【0085】
<貯蔵実験>
図8に示すように、本発明者らは、簡単な農産物貯蔵システム1000を作り、それを用いて甘藷1の貯蔵実験を行った。
【0086】
農産物貯蔵システム1000は、比較的大型の恒温庫1010内に、甘藷1を収容する密閉ケース1011を有する。恒温庫1010内の温度は、13℃程度で一定に保たれている。
【0087】
密閉ケース1011内には、液1012を貯めたトレイ1013、液1012の中に配置された散気管1014、および散気管1014に空気を送るポンプ1015が配置されている。
【0088】
ポンプ1015から送り込まれた空気は、散気管1014を通って気泡となり、その状態で液1012をくぐりつつ調湿されて密閉ケース1011内に供給される。ポンプ1015から送り込まれる空気の流量は、1L/minである。密閉ケース1011の容積は、約0.3m3である。密閉ケース1011内の温度は、恒温庫1010内の雰囲気によって略一定に保たれており、約13℃である。
【0089】
本発明者らは、液1012の種類を変え、それぞれについて、密閉ケース1011内の湿度変化を測定した。本発明者らが用いた液1012は、H2O、PG10%、PG25%、PG40%である。ここで、PG10%、PG25%、PG40%は、それぞれ、濃度が10%、25%、40%のプロピレングリコール水溶液を表す。
【0090】
また、本発明者らは、比較のため、上述のようなバブリングによる調湿をしない場合に、密閉ケース1011内の湿度がどのように変化するかも測定した。
【0091】
図9に示すように、実験開始から6時間後までを経過観察した結果、H
2Oでは相対湿度100%近くが維持され、PG10%では相対湿度95%程度、PG25%では相対湿度90%程度、PG40%では相対湿度87%程度で、湿度が安定的に推移した。一方、バブリングによる調湿のない場合(
図9の「恒温庫」)では、密閉ケース1011内の湿度は、70~95%程度の範囲で変動し、不安定であった。
【0092】
次に、本発明者らは、それらの各環境で貯蔵されたときの甘藷1の状態変化を観察した。
【0093】
実験に用いられた甘藷1は、コガネセンガンであり、本発明者らは、収穫されたままの生のコガネセンガンと、キュアリングと称される前処理が施されたコガネセンガンとを使用した。キュアリング処理とは、高温多湿条件下において傷口にコルク層を形成させる前処理である。
【0094】
図10に示すように、バブリングによる調湿のない場合(同図の「◇:恒温庫」)に比べ、バブリングによる調湿が行われた他の環境では、甘藷1の重量低下が抑制されていた。
【0095】
これは、バブリングによる調湿のない密閉ケース1011内では、
図9の「恒温庫」のデータのように、湿度が不安定であるのに対し、バブリングによって調湿すると、
図9のその他のデータのように湿度が安定し、このような湿度の安定によって、甘藷1の状態が悪化し難くなると考えられる。
【0096】
一方で、液1012がプロピレングリコールを含まず水(H
2O)のみからなるバブリングでは、
図9の「H
2O」に示すように、湿度がほぼ100%で安定したものの、このような環境下における貯蔵(
図10の「●:H
2O」)では、貯蔵開始から比較的早い段階で腐れが生じた。従って、H
2Oのみを使用したバブリングによって達せられる約100%もの高い湿度は、長期貯蔵に適さない場合があると考えられ、静菌作用のないH
2Oのみでは、そのような高湿度における菌の繁殖も抑制され難い。
【0097】
それらのことから、
図9の結果を参照して、相対湿度は、好ましくは85%以上100%未満であり、そのような湿度が安定的に維持されることが、鮮度低下を抑制しつつ長期貯蔵する上で好ましいと考えられる。
【0098】
また、そのような好ましい環境である、「PG10%」、「PG25%」、「PG40%」を比較すると、「PG10%」は、それらの中でも最も高い湿度を安定的に維持しており(
図9の「PG10%」)、また、重量低下の抑制効果が最も高かった(
図10の「PG10%」)。
【0099】
このことから、「PG10%」は長期貯蔵にとって特に好ましいと言える。実際、「PG10%」の環境では、
図10の点線の追加実験で示すように220日後においても、97%程度の重量保持率があり、外観上の腐敗もなかった。
【0100】
また、キュアリング処理の有無による効果を検証するため、
図10において、「H
2O」と「H
2O(キュアリング有り)」、「恒温庫」と「恒温庫(キュアリング有り)」をそれぞれ比較してみると、それらのいずれにおいても、「キュアリング有り」の方が、重量保持率の低下が抑制されており、キュアリング処理が長期貯蔵に寄与し得ることが分かった。
【0101】
ただ、キュアリング処理をした方が、処理をしない場合に比べ、必ずしも長期貯蔵に適する訳ではなく、実際、キュアリング処理をしなかった「PG10%」では、「PG10%(キュアリング有り)」に比べて重量保持率が高く、また、より長い貯蔵日数が経過した後でも、良好な状態が維持されており、実験の中で最も好適な結果が得られた。
【0102】
このように、調湿液を使用したバブリングによって、キュアリング処理することなく収穫後のまま鮮度良く農産物を貯蔵できれば、キュアリング処理の手間を省け、作業負担およびコストを抑えることができるため、特に好ましい。
【0103】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変できる。
【0104】
例えば、農産物は、甘藷に限定されず、甘藷以外の根菜、葉物野菜、青果物等の他の農産物であってもよい。また、農産物は、収穫後、前処理することなくそのまま貯蔵されてもよいし、貯蔵前の前処理として例えばキュアリング処理等が施されていてもよい。
【0105】
また、上述した実施形態の農産物貯蔵システムを備える輸送機関も本発明の範囲に含まれる。輸送機関は、例えば、自動車、鉄道、船、飛行機等である。この場合、上記実施形態の部屋201は、それら輸送機関の例えば荷室である。
【0106】
また、圧送部は上記実施形態のようにポンプに限定されず、例えば、ガスボンベであってもよい。また、圧送部によって流される気体も空気に限定されず、例えば窒素または酸素等の他の気体であってもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 甘藷(農産物)、
100、200、300、400、1000 農産物貯蔵システム、
110、310 貯蔵庫(農産物貯蔵部)、
120 バブリング部、
121 ポンプ(圧送部)、
122 調湿液貯蔵部、
123 気泡発生部、
124 調湿液、
130 調湿液温調部、
131 給気保温部、
132 庫内保温部、
140 湿度センサ、
141 温度センサ、
142 CO2濃度センサ、
143 O2濃度センサ、
150 湿度制御部、
151、251 温度制御部、
152 ガス濃度制御部、
160 表示部、
170 給気経路、
171 排気経路、
180 バルブユニット(経路切替え部)、
181、182 流路、
190、191 大気開放された配管、
201 温調装置を備える部屋、
311 バゲット、
1010 恒温庫、
1011 密閉ケース、
1012 バブリング用の液、
1013 トレイ、
1014 散気管、
1015 ポンプ。