(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】屋根シート体及びその敷設方法
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20220511BHJP
E04H 15/54 20060101ALI20220511BHJP
A01G 9/14 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
A01G13/02 B
A01G13/02 H
E04H15/54
A01G9/14 S
(21)【出願番号】P 2018085920
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-03-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518149637
【氏名又は名称】中西 耕
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】中西 耕
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-011960(JP,U)
【文献】米国特許第02051643(US,A)
【文献】実公昭47-041324(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351330(US,A1)
【文献】米国特許第04044501(US,A)
【文献】特開平11-075570(JP,A)
【文献】特開平06-093762(JP,A)
【文献】特開2009-065957(JP,A)
【文献】特開2000-127249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0201565(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/28
A01G 13/00 - 13/10
E04H 15/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根状に被うためのシート本体を備え、前記シート本体の
両側部を折り返して長手方向に延びる一対の補強帯状部が設けられ、前記一対の補強帯状部に相互に対応して間隔をおいて複数の紐用貫通孔が設けられた屋根シート体において、
前記一対の補強帯状部の前記複数の紐用貫通孔に
対応して、前記シート本体の外側に幅方向に延びる帯状部材が配設され、
前記帯状部材の一端側は、前記シート本体の一方の補強帯状部を上側から下側に巻くように折り返され、その他端側は、前記シート本体の他方の補強帯状部を上側から下側に巻くように折り返され、前記シート本体の前記幅方向における前記帯状部材の一端部に、前記一方の補強帯状部の前記紐用貫通孔に連通する片側紐用連通孔が設けられ、その前記幅方向における前記帯状部材の他端部に、前記他方の補強帯状部の前記紐用貫通孔に連通する他側紐用連通孔が設けられていることを特徴とする屋根シート体。
【請求項2】
屋根状に被うためのシート本体を備え、前記シート本体の両側部を折り返して長手方向に延びる一対の補強帯状部が設けられ、前記一対の補強帯状部に相互に対応して間隔をおいて複数の紐用貫通孔が設けられた屋根シート体において、
前記一対の補強帯状部の前記複数の紐用貫通孔に対応して、前記シート本体を幅方向に巻くように延びる帯状部材が配設され、前記帯状部材の一端側は、前記シート本体の一方の補強帯状部を下側から上側に巻くように折り返され、その他端側は、前記一方の補強帯状部及び前記帯状部材の一端側を上側から下側に巻くように折り返され、前記シート本体の前記幅方向における前記帯状部材の一端部に、前記一方の補強帯状部の
前記紐用貫通孔に連通する片側紐用連通孔が設けられ、その前記幅方向における前記帯状部材の他端部に、前記他方の補強帯状部の
前記紐用貫通孔に連通する他側紐用連通孔が設けられていることを
特徴とする屋根シート体。
【請求項3】
複数の主支柱を所定方向に間隔をおいて設け、前記複数の主支柱間に支持ワイヤを張設する支柱設置・ワイヤ張設工程と、前記複数の主支柱の両側に前記所定方向に延びるように結付け部材を設ける結付け部材配設工程と、
両側部を折り返して形成された一対の補強帯状部を有するシート本体の外側に幅方向に帯状部材を取り付ける帯状部材取付工程と、
前記シート本体の前記幅方向における前記帯状部材の両端部を外側から内側に巻くように折り返した後に、前記帯状部材の両端部に前記一対の補強帯状部の対応する紐用貫通孔に対応して紐用連通孔を設ける連通孔穿設工程と、前記シート本体の前記補強帯状部の前記紐用貫通孔及び前記帯状部材の前記紐用連通孔を通して結付け用紐を取り付ける紐取付け工程と、
屋根状に覆うために前記複数の主支柱及び前記支持ワイヤに前記シート本体を被せるシート本体被せ工程と、前記シート本体被せ工程の後に、前記シート本体を張りながら前記結付け用紐を前記結付け部材に結び付ける紐結付け工程と、を含むことを特徴とする屋根シート体の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実の木などを覆うために用いる屋根シート体及びその敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウスなどに用いる屋根シート体として、屋根状に被うためのシート本体を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この屋根シート体では、シート本体の両側部に長手方向に延びる一対の補強帯状部が設けられ、これら補強帯状部に相互に対応して間隔をおいて複数の紐用貫通孔が設けられ、各紐用貫通孔の各々に結付け用紐が取り付けられる。
【0003】
このような屋根シート体は、例えば、次のようにしてビニールハウスの支持パイプに取り付けられる。例えば、略半円状の支持パイプを所定方向に間隔をおいて設置し、これら支持パイプを覆うように屋根シート体を被せる。また、複数の支持パイプの両端部に紐結び部材(例えば、紐結びパイプ)を例えば連結ワイヤ(又は連結紐)などで取り付け、屋根シート体の一側端側を引っ張りながらこの一側端側の結付け用紐を片側の紐結び部材に結び付け、またその他側端側を引っ張りながらこの他側端側の結付け用紐を他側の紐結び部材に結び付け、このように屋根シート体を取り付けてビニールハウスを組み立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような屋根シート体では、シート本体の補強帯状部は、シート本体の側端部を折り曲げ、この折り曲げた折曲部を溶着して形成される。そして、この補強帯状部の紐用貫通孔を通して結付け用紐が取り付けられ、支持パイプを被うように屋根シート体を取り付けるときに、かかる結付け用紐が紐結び部材(例えば、紐結びパイプ)に結び付けられる。
【0006】
この屋根シート体を張った状態においては、ビニールハウスの下側部分(即ち、屋根シート体と地面との間)が開放され、屋根シート体の内側に風が流れ込む構造であるので、例えば強い風が吹いたときには、屋根シート体内に流れ込んだ風によって、この屋根シート体が浮き上がって大きく揺れるようになる。このような屋根シート体の揺れは、結付け用紐を介して抑えられ、屋根シート体が吹き飛ぶのを防止しているが、この結付け用紐に作用する力は補強帯状部の紐用貫通孔の周縁部に集中し、かかる集中力が大きくなるとかかる紐用貫通孔の周縁部が破損するおそれがあり、この周縁部が大きく破損した場合に屋根シート体の全体を取り替えなければならなくなる。
【0007】
本発明の目的は、補強帯状部の紐用貫通孔の周縁部における破損を抑えることができる屋根シート体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、風に対して破損し難い屋根シート体の敷設方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の屋根シート体は、屋根状に被うためのシート本体を備え、前記シート本体の両側部を折り返して長手方向に延びる一対の補強帯状部が設けられ、前記一対の補強帯状部に相互に対応して間隔をおいて複数の紐用貫通孔が設けられた屋根シート体において、
前記一対の補強帯状部の前記複数の紐用貫通孔に対応して、前記シート本体の外側に幅方向に延びる帯状部材が配設され、前記帯状部材の一端側は、前記シート本体の一方の補強帯状部を上側から下側に巻くように折り返され、その他端側は、前記シート本体の他方の補強帯状部を上側から下側に巻くように折り返され、前記シート本体の前記幅方向における前記帯状部材の一端部に、前記一方の補強帯状部の前記紐用貫通孔に連通する片側紐用連通孔が設けられ、その前記幅方向における前記帯状部材の他端部に、前記他方の補強帯状部の前記紐用貫通孔に連通する他側紐用連通孔が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の屋根シート体は、屋根状に被うためのシート本体を備え、前記シート本体の両側部を折り返して長手方向に延びる一対の補強帯状部が設けられ、前記一対の補強帯状部に相互に対応して間隔をおいて複数の紐用貫通孔が設けられた屋根シート体において、
前記一対の補強帯状部の前記複数の紐用貫通孔に対応して、前記シート本体を幅方向に巻くように延びる帯状部材が配設され、前記帯状部材の一端側は、前記シート本体の一方の補強帯状部を下側から上側に巻くように折り返され、その他端側は、前記一方の補強帯状部及び前記帯状部材の一端側を上側から下側に巻くように折り返され、前記シート本体の前記幅方向における前記帯状部材の一端部に、前記一方の補強帯状部の前記紐用貫通孔に連通する片側紐用連通孔が設けられ、その前記幅方向における前記帯状部材の他端部に、前記他方の補強帯状部の前記紐用貫通孔に連通する他側紐用連通孔が設けられていることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明の屋根シート体の敷設方法は、複数の主支柱を所定方向に間隔をおいて設け、前記複数の主支柱間に支持ワイヤを張設する支柱設置・ワイヤ張設工程と、前記複数の主支柱の両側に前記所定方向に延びるように結付け部材を設ける結付け部材配設工程と、両側部を折り返して形成された一対の補強帯状部を有するシート本体の外側に幅方向に帯状部材を取り付ける帯状部材取付工程と、前記シート本体の前記幅方向における前記帯状部材の両端部を外側から内側に巻くように折り返した後に、前記帯状部材の両端部に前記一対の補強帯状部の対応する紐用貫通孔に対応して紐用連通孔を設ける連通孔穿設工程と、前記シート本体の前記補強帯状部の前記紐用貫通孔及び前記帯状部材の前記紐用連通孔を通して結付け用紐を取り付ける紐取付け工程と、屋根状に覆うために前記複数の主支柱及び前記支持ワイヤに前記シート本体を被せるシート本体被せ工程と、前記シート本体被せ工程の後に、前記シート本体を張りながら前記結付け用紐を前記結付け部材に結び付ける紐結付け工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の屋根シート体によれば、シート本体の両側部を折り返して長手方向に延びる一対の補強帯状部が設けられ、これら一対の補強帯状部に相互に対応して間隔をおいて複数の紐用貫通孔が設けられている。また、一対の補強帯状部の複数の紐用貫通孔に対応して幅方向に延びる帯状部材が配設され、シート本体の幅方向における帯状部材の両端部には、一対の補強帯状部の対応する紐用貫通孔に連通する紐用連通孔が設けられているので、この紐用貫通孔及び紐用連通孔を通して結付け用紐を取り付けることができる。
【0013】
また、この帯状部材がシート本体の外側に配設され、帯状部材の一端側がシート本体の一方の補強帯状部を上側から下側に巻くように折り返えされ、その他端側がシート本体の他方の補強帯状部を上側から下側に巻くように折り返えされ、このシート本体の幅方向における帯状部材の両端部に、紐用貫通孔に連通する紐用連通孔が設けられるので、この結付け用紐の取付部位においては帯状部材が補強帯状部を挟むように二重に配設され、これによって、補強帯状部の紐用貫通孔の周縁部における破損をより効果的に抑えることができる。シート本体の両側部が折り返した二重構造であるので、この二重構造に帯状部材を二重に重ねた四重構造となる。
【0014】
また、シート本体の外側を被うように帯状部材が配設されるので、シート本体内に風が流れ込んでも、この帯状部材がシート本体の浮き上がりを抑え、浮き上がりによるシート本体(特に、補強帯状部の周縁部)の破損をより少なくすることができる。
【0015】
また、本発明によれば、帯状部材がシート本体を幅方向に巻くように配設され、帯状部材の一端側がシート本体の一方の補強帯状部を下側から上側に巻くように折り返えされ、その他端側が一方の補強帯状部及び帯状部材の一端側を上側から下側に巻くように折り返えされ、シート本体の幅方向における帯状部材の両端部に、紐用貫通孔に連通する紐用連通孔が設けられるので、一方の補強帯状部においては、この結付け用紐の取付部位にて帯状部材の一端側が折り返された二重構造の補強帯状部を挟むように二重に配設されるとともに、その他端側がシート本体の補強帯状部及び帯状部材の一端側を挟むように二重に配設される。また、他方の折り返された二重構造の補強帯状部においては、この結付け用紐の取付部位にて帯状部材の中間部が他方の補強帯状部を包むように二重に配設され、従って、一対の補強帯状部の紐用貫通孔の周縁部における破損をより少なく抑えることができる。
【0016】
例えば、シート本体の一方の補強帯状部がシート本体を折り返した二重構造である場合、この二重構造に帯状部材の一端側を二重に重ね、更にその他端側を二重に重ねた六重構造となる。また、シート本体の他方の補強帯状部がシート本体を折り返した二重構造である場合、この二重構造に帯状部材の中間部を二重に重ねた四重構造となる。
【0017】
また、シート本体を幅方向に巻くように帯状部材が配設されるので、この帯状部材がシート本体を挟むようになり、従って、風が流れ込んだ際におけるシート本体の浮き上がりをより効果的に抑え、浮き上がりによるシート本体(特に、補強帯状部の周縁部)の破損をより一層少なくすることができる。
【0020】
また、本発明の屋根シート体の敷設方法によれば、両側部を折り返して形成された一対の補強帯状部を有するシート本体の外側に幅方向に帯状部材を取り付け(帯状部材取付工程)、シート本体の幅方向における帯状部材の両端部を外側から内側に巻くように折り返した後に、シート本体の紐用貫通孔に対応して紐用連通孔を設け(連通孔穿設工程)、これら紐用貫通孔及び紐用連通孔を通して結付け用紐を取り付け(紐取付け工程)、屋根状に覆うために複数の主支柱及び支持ワイヤにシート本体を被せた(シート本体被せ工程)後に、シート本体を張りながら結付け用紐を結付け部材に結び付ける(紐結付け工程)ので、補強帯状部の結付け用紐の取付部位においては、シート本体の折り返した二重構造の補強帯状部に折り返した帯状部材を重ねた構造となり、これによって、補強帯状部の紐用貫通孔の周縁部における破損を抑えることができる。
また、屋根シート体を敷設した状態においては、帯状部材がシート本体の外側を被うように設けられるので、シート本体内に風が流れ込んでも、この帯状部材がシート本体の浮き上がりを抑え、浮き上がりによるシート本体の破損をより少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に従う屋根シート体の第1の実施形態を取り付けるための支持構造を示す簡略斜視図。
【
図2】第1の実施形態の屋根シート体を取り付けた状態を示す簡略断面図。
【
図4】
図2の屋根シート体の折曲げ構造を説明するための部分断面図。
【
図5】第2の実施形態の屋根シート体の折曲げ構造を説明するための部分断面図。
【
図6】第3の実施形態の屋根シート体の折曲げ構造を説明するための部分断面図。
【
図7】第4の実施形態の屋根シート体の折曲げ構造を説明するための部分断面図。
【
図8】
図8(a)は、従来の屋根シート体の折曲げ構造を説明するための部分断面図、
図8(b)は、従来の屋根シート体の紐用貫通孔及びその近傍を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う屋根シート体の各種実施形態及び屋根シート体の敷設方法の一例について説明する。まず、
図1~
図4を参照して、第1の実施形態の屋根シート体及びその敷設方法について説明する。
【0023】
図1及び
図2において、図示の屋根シート体2を取り付けるための支持構造4は、所定方向(ビニールハウスの長手方向であって、
図1において左下から右上の方向、
図2において紙面に対して垂直な方向)に間隔をおいて配設された主支柱6が配設され、これら主支柱6の下端部が地面Eに埋設される。これら主支柱6の頂部には半球状のシート載置部8が設けられ、これらシート載置部8(即ち、主支柱6)間に支持ワイヤ10が張設され、屋根シート体2は、
図1に一点鎖線で示すとともに、
図2に示すように、複数の主支柱6及びこれらの間に張設された支持ワイヤ10に載置支持される。このような主支柱6は、
図1に示すように、地面Eに植えられた果実の木、例えばぶどうの木12の間に配設される。
【0024】
複数の主支柱6の両側には、例えば補助支柱14が上記所定方向に間隔をおいて設けられ、これら補助支柱14の間に結付け部材としての結付けワイヤ16が張設される。これら補助支柱14の高さは、主支柱6の1/3~1/2程度であり、これらの下端部も地面Eに埋設される。尚、補助支柱14に結付けワイヤ16を巻いて張設することに代えて、補助支柱14に例えば取付けワイヤ(図示せず)を用いて結付け部材としての結付けパイプ(図示せず)を取り付け、これら補助支柱14間に結付けパイプを設けるようにしてもよい。
【0025】
この実施形態では、主支柱6、支持ワイヤ10、補助支柱14及び結付けワイヤ16が屋根シート体2を支持するための支持構造4を構成しているが、このような構成に代えて、例えば、複数の円弧状支持フレーム及びこれら円弧状支持フレームの下端部間に取り付けられた結付け部材(例えば、結付けワイヤ、結付けパイプなど)により支持構造を構成するようにしてもよい。
【0026】
この屋根シート体2によって例えばぶどうの木12を被う場合、この屋根シート体2の下側に、
図2に示すように、棚状の格子状支持構造体18が配設される(
図1においては、格子状支持構造体18を省略して示している)。格子状支持構造体18は、例えば、上記所定方向(
図2において紙面に垂直な方向)に延びる複数の第1ワイヤ20と、上記所定方向に対して垂直な方向(
図2において左右方向)に延びる複数の第2ワイヤ22(
図2において一つのみ示す)から構成され、ぶどうの木12から延びる蔓(図示せず)がこの格子状支持構造体18(第1ワイヤ20又は第2ワイヤ22)に紐(図示せず)などを用いて括り付けられる。
【0027】
次に、
図2とともに
図3及び
図4を参照して、屋根シート体2について説明する。図示の屋根シート体2は、細長い矩形状のシート本体24を備え、このシート本体24の両側部に一対の補強帯状部26,28が設けられている。一対の補強帯状部26,28は、例えば、シート本体24の両側部を上側から下側に折り返して溶着することによって形成され、このように構成することによって、一対の補強帯状部26,28においては、シート本体24の二重構造となっている。この一対の補強帯状部26,28には、それらの長手方向(即ち、
図3において左右方向、
図4において紙面に対して垂直な方向であって、シート本体24の長手方向)に間隔をおいて複数の紐用貫通孔30,32が設けられている。
【0028】
このシート本体24の構成は、
図8(a)及び(b)で示す従来のシート本体124と同様の構成でよく、この従来のシート本体124においてもその両側端部を上側から下側に折り返して一対の補強帯状部126,128が設けられ、これら補強帯状部126,128に間隔をおいて紐用貫通孔130,132が設けられている。尚、従来においては、紐用貫通孔130(132)内に補強短スリーブ131を熱圧着により取り付けるようにしたものもある。このような従来のシート本体124においては、その補強帯状部126,128は、シート本体124の折返しによる二重構造となっているので、ある程度の強度アップは図られているが、その強度アップは充分なものではない。
【0029】
この第1の実施形態の屋根シート体2では、このシート本体24の外側に更に帯状部材42が配設されている。一対の補強帯状部126,128の紐用連通孔130,132は相互に対応して(換言すると、補強帯状部126,128の長手方向において実質上同じ位置に)設けられており、この帯状部材42は、
図3から理解されるように、一対の補強帯状部126,128の対応する紐用貫通孔130,132に対応して設けられている。
【0030】
この帯状部材42は、例えば、
図4に示すように取り付けられる。帯状部材42の一端側においては、シート本体24の一方の補強帯状部26を上側から下側に巻くように折り返して取り付けられ、その他端側においてはシート本体24の他方の補強帯状部28を上側から下側に巻くように折り返して取り付けられる。そして、シート本体24の幅方向(
図3において上下方向、
図4において左右方向)における帯状部材42の一端部に、補強帯状部26の紐用貫通孔30に対応して紐用連通孔44が設けられ、補強帯状部26の紐用貫通孔30及び帯状部材42の紐用連通孔44を通して結付け用紐46(結付け部材を構成する)が取り付けられる(
図1及び
図2参照)。また、この幅方向における帯状部材42の他端部に、補強帯状部28の紐用貫通孔32に対応して紐用連通孔48が設けられ、補強帯状部28の紐用貫通孔32及び帯状部材42の紐用連通孔48を通して結付け用紐50(結付け部材を構成する)が取り付けられる(
図1及び
図2参照)。
【0031】
このように構成されるので、シート本体24の幅方向の一側部(具体的には、紐用貫通孔30の周縁部)においては、シート本体24の一方の補強帯状部26におけるシート本体24の折り返しによる二重構造と帯状部材42の折り返しによる二重構造とが重なり合い、またその幅方向の他側部(具体的には、紐用貫通孔32の周縁部)においても、シート本体24の他方の補強帯状部28におけるシート本体24の折り返しによる二重構造と帯状部材42の折り返しによる二重構造とが重なり合い(全体として四重構造となる)、従って、シート本体24の紐用貫通孔30,32の周縁部の強度を高めることができる。加えて、帯状部材42がシート本体24の外側(上側)に配置されるので、風によるシート本体24の浮き上がりを抑えることができる。
【0032】
このような屋根シート体2においては、シート本体24の幅方向における帯状部材42の一端部をシート本体24の一方の補強帯状部26に溶着し、その幅方向における帯状部材42の他端部をシート本体24の他方の補強帯状部28に溶着するようにしてもよい。また、一対の補強帯状部26,28の紐用貫通孔30,32及び帯状部材42の紐用連通孔44,48を通して従来と同様の補強短スリーブ131(
図8参照)を熱圧着するようにしてもよい。
【0033】
このような屋根シート体2の一例として、シート本体24の長手方向の長さは、例えば20~30m程度であり、その幅は、例えば1.5~3m程度であり、またその補強帯状部26,28に設けられる紐用貫通孔30,32の間隔は、例えば60~80cm程度であり、更に帯状部材42の幅は、例えば10~20cm程度である。このようなシート体4及び帯状部材42は、ハウス用に用いるビニール製のものが用いられる。
【0034】
この屋根シート体2は、例えば、次のようにして支持構造取り付けられる。主として、
図1及び
図2を参照して、ビニールハウスを設置するには、まず、複数の主支柱6を所定方向に間隔をおいて設け、これら複数の主支柱6の頂部にシート載置部8を取り付け、かかるシート載置部8間に支持ワイヤ10を張設する(支柱設置・ワイヤ張設工程)。また、これら主支柱6の両側に上記所定方向に間隔をおいて補助支柱14を設け、これら補助支柱14間に結付けワイヤ16を張設し、この所定方向に延びる結付けワイヤ16を複数の主支柱6の両側に設ける(結付け部材配設工程)。
【0035】
また、シート本体24の幅方向に帯状部材42を取り付け(帯状部材取付工程)、シート本体24の幅方向における帯状部材42の両端部に、補強帯状部26,28の対応する紐用貫通孔30,32に対応して紐用連通孔44,48を設け(連通孔穿設工程)、これら補強帯状部26,28の紐用貫通孔30,32及び帯状部材42の紐用連通孔44,48を通して結付け用紐46,50を結んで取り付ける(紐取付け工程)。
【0036】
その後、複数の主支柱6及び支持ワイヤ10にシート本体24(帯状部材42及び結付け用紐46,50が取り付けられたもの)を被せ(シート本体被せ工程)、この被せたシート本体24を張りながら一方の補強帯状部26に取り付けられた結付け用紐46を一つずつ片側の結付けワイヤ16に結び付け、他方の補強帯状部28に取り付けられた結付け用紐50を一つずつ他側の結付けワイヤ16に結び付ける(紐結付け工程)、このようにして屋根シート体2を
図2に示すように支持構造4に取り付けてビニールハウスを組み立てることができる。
【0037】
支持構造4に取り付ける屋根シート体として
図5に示すものを用いることもできる。尚、以下の実施形態において、上述した第1の実施形態と実質上同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0038】
屋根シート体の第2の実施形態を示す
図5において、図示の屋根シート体2Aにおいては、帯状部材42Aは、
図5に示すように取り付けられる。帯状部材42Aはシート本体24を幅方向に巻くように配設され、その一端側においては、シート本体24の一方の補強帯状部26を下側から上側に巻くように折り返して取り付けられ、その中間部においては、シート本体24の他方の補強帯状部28を巻くように折り返され、またその他端側においては、シート本体24の一方の補強帯状部26及び帯状部材42Aの一端側(即ち、その折返し部)を上側から下側に巻くように折り返して取り付けられ、帯状部材42Aの両端側をこのように折り返すことにより、シート本体24と帯状部材42Aとの間に雨水が流入するのを防止することができる。
【0039】
そして、このシート本体24の幅方向(
図5において左右方向)における帯状部材42Aの一端部(即ち、一端側の折返し部及び他端側の折返し部)に、補強帯状部26の紐用貫通孔30に対応して紐用連通孔44A,45Aが設けられ、補強帯状部26の紐用貫通孔30及び帯状部材42Aの紐用連通孔44A,45Aを通して結付け用紐(図示せず)が上述したと同様にして取り付けられる。また、この幅方向における帯状部材42Aの他端部(即ち、中間の折返し部)に、補強帯状部28の紐用貫通孔32に対応して紐用連通孔48Aが設けられ、補強帯状部28の紐用貫通孔32及び帯状部材42Aの紐用連通孔48Aを通して結付け用紐(図示せず)が上述したようにして取り付けられる。
【0040】
このように構成されるので、シート本体24の幅方向の一側部(具体的には、紐用貫通孔30の周縁部)においては、シート本体24の一方の補強帯状部26におけるシート本体24の折り返しによる二重構造と帯状部材42Aの一端側の折り返しによる二重構造と帯状部材42Aの他端側の折り返しによる二重構造とが重なり合い(全体として六重構造となる)、またその幅方向の他側部(具体的には、紐用貫通孔32の周縁部)においては、シート本体24の他方の補強帯状部28におけるシート本体24の折り返しによる二重構造と、帯状部材42Aの中間部の折り返しによる二重構造とが重なり合い(全体として四重構造となる)、従って、シート本体24の紐用貫通孔30,32の周縁部の強度を高めることができる。加えて、帯状部材42Aがシート本体24を幅方向に巻くように配設されるので、風によるシート本体24の浮き上がりを効果的に抑えることができる。
【0041】
このような屋根シート体2Aにおいては、シート本体24の幅方向における帯状部材42Aの両端部をシート本体24の補強帯状部26,28に溶着するようにしてもよく、また、補強帯状部26の紐用貫通孔30及び帯状部材42Aの紐用連通孔44A,45Aを通して、また補強帯状部28の紐用貫通孔32及び帯状部材42Aの紐用連通孔48Aを通して従来と同様の補強短スリーブ(図示せず)を熱圧着するようにしてもよい。
【0042】
支持構造4に取り付ける屋根シート体として
図6に示すものを用いることもできる。屋根シート体の第3の実施形態を示す
図6において、図示の屋根シート体2Bにおいては、帯状部材42Bは、
図6に示すように取り付けられる。帯状部材42Bはシート本体24の幅方向に伸びるようにその内側に配設され、その一端側においては、シート本体24の一方の補強帯状部26を下側から上側に巻くように折り返して取り付けられ、またその他端側においては、シート本体24の他方の補強帯状部28を下側から上側に巻くように折り返して取り付けられる。
【0043】
そして、このシート本体24の幅方向(
図6において左右方向)における帯状部材42Bの一端部(即ち、一端側の折返し部)に、一方の補強帯状部26の紐用貫通孔30に対応して紐用連通孔44Bが設けられ、またその幅方向における帯状部材42Bの他端部(即ち、他端側の折返し部)に、他方の補強帯状部28の紐用貫通孔32に対応して紐用連通孔48Bが設けられ、これら補強帯状部26,28の紐用貫通孔30,32及び帯状部材42Bの紐用連通孔44B,48Bを通して結付け用紐(図示せず)(結付け部材)が上述したと同様にして取り付けられる。
【0044】
このように構成した場合においても、シート本体24の幅方向の一側部(具体的には、紐用貫通孔30の周縁部)においては、シート本体24の一方の補強帯状部26におけるシート本体24の折り返しによる二重構造と帯状部材42Bの一端側の折り返しによる二重構造とが重なり合い(全体として四重構造となる)、またその幅方向の他側部(具体的には、紐用貫通孔32の周縁部)においては、シート本体24の他方の補強帯状部28におけるシート本体24の折り返しによる二重構造と帯状部材42Bの他端側の折り返しによる二重構造とが重なり合い(全体として四重構造となる)、従って、シート本体24の紐用貫通孔30,32の周縁部の強度を高めることができる。
【0045】
支持構造4に取り付ける屋根シート体として
図7に示すものを用いるようにしてもよい。屋根シート体の第4の実施形態を示す
図7において、図示の屋根シート体2Cにおいては、帯状部材に代えて補強片62,64が、
図7に示すように取り付けられる。補強片62は、はシート本体24の一方の補強帯状部26に設けられた紐用貫通孔30に対応して設けられ、シート本体24の一方の補強帯状部26を挟むように折り返して取り付けられ、また補強片64は、その他方の補強帯状部28を挟むように折り返して取り付けられる。
【0046】
そして、一方の補強帯状部26側の補強片62では、この補強帯状部26の紐用貫通孔30に対応して紐用連通孔44Cが設けられ、また他方の補強帯状部28側の補強片64では、この補強帯状部28の紐用貫通孔32に対応して紐用連通孔48Cが設けられ、これら補強帯状部26,28の紐用貫通孔30,32及び補強片62,64の紐用連通孔44C,48Cを通して結付け用紐(図示せず)(結付け部材)が上述したと同様にして取り付けられる。
【0047】
このように構成した場合においては、シート本体24の幅方向の一側部(具体的には、紐用貫通孔30の周縁部)においては、シート本体24の一方の補強帯状部26におけるシート本体24の折り返しによる二重構造と補強片62の折り返しによる二重構造とが重なり合い(全体として四重構造となる)、またその幅方向の他側部(具体的には、紐用貫通孔32の周縁部)においては、シート本体24の他方の補強帯状部28におけるシート本体24の折り返しによる二重構造と補強片64の折り返しによる二重構造とが重なり合い(全体として四重構造となる)、従って、シート本体24の紐用貫通孔30,32の周縁部の強度を高めることができる。
【0048】
以上、本発明に従う屋根シート体2(2A~2C)の各種実施形態及びこの屋根シート体2の敷設方法の一例について説明したが、本発明はこれら実施形態などに限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、帯状部材42(42A,42B)をシート本体24に取り付ける際にその一端側及び他端側を折り返して二重構造となるように構成しているが、その一端側及び他端側を折り返すことなくそのままシート本体24に取り付けるようにしてもよく、この場合、帯状部材42(42A,42B)の一端側及び他端側は一重構造となり、紐用貫通孔30,32の周縁部の強度が二重構造よりも弱くなる。尚、補強片62,64についてもシート本体24に取り付ける際に折り返して二重構造としているが、その折り返すことなくそのままシート本体24に取り付けるようにしてもよい。
【0050】
また、例えば、上述した実施形態では、屋根シート体2(2A~2C)を農業用ビニールハウスに適用して説明したが、その用途については、一般的な農業用ビニールハウスに広く適用することができるとともに、農業用のみならず、倉庫用のテントハウス、運送用のテントハウスなどにも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
2 屋根シート体
4 支持構造
6 主支柱
10 支持ワイヤ
14 補助支柱
24,124 シート本体
26,28,126,128 補強帯状部
30,32,130,132 紐用貫通孔
42,42A,42B 帯状部材
44,44A,44B,44C,45A,48,48A,48B,48C 紐用連通孔
46,50 結付け用紐
62,64 補強片