(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】建物の天井構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/30 20060101AFI20220511BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E04B9/30 A
E04B9/00 R
(21)【出願番号】P 2018090154
(22)【出願日】2018-05-08
【審査請求日】2021-02-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年1月20日 サンフジ西新井住宅展示場にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝也
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-027497(JP,A)
【文献】特開平08-042052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺とされ自体の長手方向と交差する方向に所定間隔で複数配置されることで天井下地を形成する野縁と、
帯板状の一方の面が天井面とされると共に、幅方向両端部に前記天井面側とは反対側に向けて曲げられて幅方向外側に延出された羽部が形成され、
各々の長手方向が前記野縁の長手方向と交差する方向とされて複数が幅方向に配列された際に隣接する前記羽部が重ねられ、重ねられた前記羽部が前記野縁の下面に取り付けられることで、前記野縁に支持された天井材と、
前記天井下地の周縁部に配置され、上板が前記野縁の下面に取り付けられると共に、前記配列された前記天井材が前記上板と該上板に対向された下板との間に挿入配置されることで、前記下板が前記天井材の周縁部下側を覆う見切り材と、
前記見切り材の前記上板と前記下板との間に挿入された前記天井材の長手方向端部において、前記天井材の前記羽部又は該羽部に重なる前記上板に形成され、前記羽部と前記上板との相互干渉部分を受け入れる切欠き部と、
を含む建物の天井構造。
【請求項2】
前記切欠き部は、前記羽部が切欠かれて前記天井材に形成され、前記見切り材は、前記天井材の前記切欠き部において前記野縁に固定されている請求項1に記載の建物の天井構造。
【請求項3】
前記見切り材は、前記天井材とは反対側が前記天井下地を囲う壁面の直近に配置されている請求項1又は請求項2に記載の建物の天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパンドレルなどの目透かし張り用の天井材を用いた建物の天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軒裏野縁に対する取付施工を簡易にし、軒天井材の支持を補助できる軒裏見切の構造が記載されている。特許文献1の技術では、野縁受けプレートを介して外壁と平行に軒裏野縁を支持すると共に、軒裏野縁と直交するように配置した軒先野縁の下面に軒先天井板を配置している。また、特許文献1の技術では、軒裏見切の断面略コ字状の取付具を軒裏野縁の長手方向に略等間隔に配置して軒裏野縁の下側に固定し、取付具の各々に軒裏見切の横断面略L字状の見切本体を係止させており、軒先天井板は、外壁側端部が取付具に挿入されて、軒先野縁への支持が取付具によって補助されている。
【0003】
一方、天井材には、鋼板製帯状のスパンドレルがあり、スパンドレルは、防火性能を備えた天井材として、軒天などの建物において屋外に開放された天井に多用されている。また、スパンドレルは、目透かし張り用の天井材としても用いられており、スパンドレルには、幅方向の両端部に張り出すように羽部が形成されている。
【0004】
スパンドレルを用いた天井では、隣接するスパンドレルの間で羽部が重ねられると共に、重ねられた羽部が野縁の下面に取り付けられることで、スパンドレルの各々が野縁に支持されると共に、隣接するスパンドレルの間に透かし目地が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スパンドレルを用いた天井においても周縁部に見切り材が取り付けられる。ここで、見切り材を壁面ではなくスパンドレルと同様に野縁に取り付けようとした場合、スパンドレルの羽部と見切り材とが干渉してしまう。このため、スパンドレルの端部の見切り材への収まりが悪くなり、天井の見栄えが低下してしまう。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、見切り材への天井材の収まりを良好にできる建物の天井構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の第1の態様の建物の天井構造は、長手方向と交差する方向に所定間隔で複数配置されることで天井下地を形成する野縁と、帯板状の一方の面が天井面とされると共に、幅方向両端部に前記天井面側とは反対側に向けて曲げられて幅方向外側に延出された羽部が形成され、複数が幅方向に配列された際に隣接する前記羽部が重ねられ、重ねられた前記羽部が前記野縁の下面に取り付けられることで、前記野縁に支持された天井材と、前記天井下地の周縁部に配置され、上板が前記野縁の下面に取り付けられると共に、前記配列された前記天井材が前記上板と該上板に対向された下板との間に挿入配置されることで、前記下板が前記天井材の周縁部下側を覆う見切り材と、前記見切り材の前記上板と前記下板との間に挿入された前記天井材の長手方向端部において、前記天井材の前記羽部又は該羽部に重なる前記上板に形成され、前記羽部と前記上板との相互干渉部分を受け入れる切欠き部と、を含む。
【0009】
第1の態様の建物の天井構造では、複数の野縁が該野縁の長手方向と交差する方向に所定間隔で配置されて天井下地が形成されており、天井下地の周縁部には、見切り材が配置されて、見切り材の上板が野縁の下面に取り付けられる。
【0010】
天井材は、帯板状の一方の面が天井面とされると共に、幅方向両端部に天井面側とは反対側に向けて曲げられて幅方向外側に延出された羽部が形成された目透かし張り用とされている。天井材は、野縁の下側に配列されて、隣接する天井材の羽部が重ねられて野縁の下面に取り付けられる。また、野縁の下側に配列された天井材の周縁部は、見切り材の上板と下板との間に挿入されて、見切り材の下板によって覆われる。
【0011】
ここで、天井材の長手方向の端部と見切り材の上板との間において、天井材の羽部又は該羽部に重なる上板には、羽部と上板との相互干渉部分を受け入れる切欠き部が形成されている。このため、天井材の羽部と見切り材の上板とが野縁の下面に取り付けられていても、天井材の長手方向の端部を見切り材の上板と下板との間に挿入した際、天井材の羽部と見切り材の上板とが重なって干渉してしまうのが防止される。これにより、見切り材への天井材の収まりを良好にできる。
【0012】
第2の態様の建物の天井構造は、第1の態様の天井構造において、前記切欠き部は、前記羽部が切欠かれて前記天井材に形成され、前記見切り材は、前記天井材の前記切欠き部において前記野縁に固定されている。
【0013】
一般に、目透かし張り用の天井材を用いる場合、天井の目地割りが行われ、目地割りに合せて天井材の位置が決められる。このため、見切り材の上板と天井材の羽部との相互干渉部分の位置は、目地割りによって変化する。
【0014】
第2の態様の建物の天井構造では、天井材の長手方向端部において羽部が切り欠かれて切欠き部が形成されている。このため、目地割りによって見切り材の上板に対する天井材の羽部の相互干渉部分の位置が変化しても、見切り材への天井材の収まりを良好にできる。これにより、見切り材への天井材の収まりを良好にするための作業を容易にできる。
【0015】
第3の態様の建物の天井構造は、第1又は第2の態様の建物の天井構造において、前記見切り材は、前記天井材とは反対側が前記天井下地を囲う壁面の直近に配置されている。
【0016】
第3の態様の建物の天井構造では、見切り材を壁の直近に配置されており、見切り材は、天井下地の野縁に取り付けられている。このため、壁の材質が見切り材を取り付け難い材質であっても、見切り材を壁面に取り付けたのと同様の状態にできて、見切り材の取り付け作業を容易にできる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように第1の態様の建物の天井構造によれば、見切り材への天井材の収まりを良好にできる、という効果を有する。
【0018】
第2の態様の建物の天井構造によれば、天井の目地割りにかかわらず見切り材への天井材の収まりを良好にするための作業を容易にできる。
【0019】
第3の態様の建物の天井構造によれば、見切り材を壁面に取り付けることなく、見切り材を壁面に取り付けたのと同様の状態にできて、見切り材の取り付け作業を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る天井の主要部を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る建物の主要部を示す概略図である。
【
図4】(A)は、天井の主要部のスパンドレルの長手方向視の概略図、(B)は、天井の主要部のスパンドレルの幅方向視の概略図である。
【
図5】(A)は、スパンドレルを示す長手方向視の断面図、(B)は、見切り材を示す長手方向視の断面図である。
【
図6】(A)は、スパンドレルの幅方向に沿う天井の主要部の断面図、(B)は、スパンドレルの長手方向に沿う天井の主要部の断面図である。
【
図7】変形例に係る天井の主要部を示す斜視図である。
【
図8】変形例に係るスパンドレルの長手方向に沿う天井の主要部の断面図である。
【
図9】本実施形態及び変形例とは異なる天井の主要部のスパンドレル長手方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図2には、本実施形態に係る建物10の主要部が正面側から見た概略立面図(遠近法による立面図)にて示されている。
【0022】
建物10は、躯体が鉄骨軸組構造とされている。また、
図2に示すように、建物10は、2階建てとされている。なお、建物10は、鉄骨軸組構造に限らず、各々が鉄骨によって枠組みされた複数の建物用ユニットを縦横に配列されることで鉄骨ラーメン構造の躯体が形成されるユニット式の建物(ユニット住宅)であってもよく、建物10は、躯体が鉄骨軸組構造及び鉄骨ラーメン構造以外の構造であってもよい。また、建物10は、平屋であってもよく、3階建て以上であってもよい。
【0023】
建物10の外周部には、外壁部12が形成されており、建物10は、外壁部12によって囲われて屋内と屋外とが区画されている。外壁部12には、外壁材としてのALC(軽量気泡コンクリート)パネルが用いられており、外壁部12では、ALCパネルが縦横に並べられて躯体に取り付けられている。
【0024】
建物10の外壁部12には、玄関ドア(玄関)14、窓16、明り取り窓18等が設けられており、建物10では、玄関ドア14のドア枠、窓16の窓枠及び明り取り窓18の明り取り窓枠等が外壁部12に形成された開口に嵌め込まれて、外壁部12又は躯体に取り付けられている。また、建物10には、玄関ドア14の上側に玄関庇20が設けられており、玄関庇20は、躯体に取り付けられて外壁部12から屋外に張り出されている。建物10には、玄関庇20によって玄関ポーチ22が形成されており、玄関庇20の下側の面には、天井24が形成されている。
【0025】
また、建物10には、インナーガレージ26が形成されており、インナーガレージ26内は、外壁部12が開口されて形成された出入口28を介して屋外に開放されている。なお、建物10には、インナーガレージ26の出入口28を開閉するシャッター等が設けられていてもよい。
【0026】
図3には、インナーガレージ26が、出入口28とは反対側から見た概略図(遠近法による概略図)にて示されている。なお、図面では、インナーガレージ26の間口方向が矢印Wにて示され、インナーガレージ26の奥行方向が矢印Dにて示されている。
【0027】
図2及び
図3に示すように、インナーガレージ26内は、出入口28を除く周囲が壁30によって囲われている。壁30は、間口方向両側が側壁30Aとされ、奥行方向の奥側が奥壁30B(
図2参照)とされている。また、インナーガレージ26では、出入口28の上側(奥行方向手前側)が前壁30Cとされている(
図3参照)。
【0028】
側壁30A及び奥壁30Bには、外壁部12と同様の外壁材(ALCパネル)が用いられており、側壁30A及び奥壁30Bは、インナーガレージ26内と建物10の屋内とを区画している。また、前壁30Cは、ALCパネルが用いられた外壁部12(裏側)とされている。
【0029】
インナーガレージ26には、周囲が左右の側壁30A、奥壁30B及び前壁30Cによって囲われた上部空間内に天井36が形成されている。建物10では、玄関庇20の天井24及びインナーガレージ26の天井36等が屋外に開放された天井とされており、建物10では、屋外に開放された天井に本発明の態様に係る天井構造が適用されている。
【0030】
以下に、インナーガレージ26の天井36を例に、建物10において屋外に開放された天井の天井構造を説明する。
図4(A)には、天井36の主要部が奥行方向に沿う断面図(幅方向視断面図)にて示され、
図4(B)には、天井36の主要部が間口方向に沿う断面図(長手方向視断面図)にて示されている。
【0031】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、天井36には、天井下地38が形成されており、天井下地38には、各々が長尺かつ断面矩形状に形成された野縁40及び野縁受け42が用いられている。
【0032】
野縁40は、長手方向が奥行方向とされて、側壁30Aの各々の近傍(
図4(B)参照)に配置されていると共に、側壁30Aの間(側壁30A側の野縁40の間)に予め設定された間隔で配置されている。また、
図4(A)に示すように、野縁40の各々は、長手方向の両端が奥壁30B及び前壁30Cの各々の近傍に達するように配置されており、野縁40の各々は、下面が略同一の水平面上(面一)となるように配置されている。
【0033】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、野縁受け42は、野縁40の上側において長手方向が間口方向(野縁40の長手方向と交差する方向)とされて、複数が奥行方向に所定の間隔で配置されている。天井下地38では、野縁40と野縁受け42との交点の各々において野縁40が野縁受け42に連結されている(図示省略)。
【0034】
また、インナーガレージ26の上部には、吊りボルト44が設けられており、吊りボルト44は、野縁受け42の各々の長手方向に複数本ずつ配置されている。吊りボルト44は、長手方向の一端部が1階の天井梁や2階の床梁などに固定されて垂下されており、吊りボルト44の下端部には、ハンガー46が取り付けられている。ハンガー46の各々には、野縁受け42が係止されている。これにより、天井下地38は、格子状に組まれた野縁40及び野縁受け42が吊りボルト44を介して建物10の躯体に支持されている。
【0035】
一方、
図3、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、天井36には、目透かし張り用の天井材としての略帯状鋼板製のスパンドレル50が用いられている。また、天井36の周縁部には、見切り材52が設けられており、見切り材52は、各壁30(側壁30A、奥壁30B及び前壁30C)に沿って配置されている。
図5(A)には、スパンドレル50が幅方向(長手方向と交差する方向)に沿う断面図にて示され、
図5(B)には、見切り材52が長手方向と交差する方向に沿う断面図にて示されている。
【0036】
図5(A)に示すように、スパンドレル50では、厚さ方向の一方の面が意匠面(天井面)としての化粧面50Aとされており、スパンドレル50は、化粧面50Aが下側に向けられて天井下地38に取り付けられ、化粧面50Aが天井36の天井面を形成する。
【0037】
また、スパンドレル50には、幅方向の両側に羽部54、56が対で形成されており、羽部54、56の各々は、スパンドレル50の長手方向に延設されている。羽部54、56には、スパンドレル50の幅方向端部が化粧面50Aとは反対側に折曲されて立板部58が形成されている。
【0038】
羽部54には、立板部58の先端からスパンドレル50の幅方向外側に延設された外板部60A、及び立板部58の上端からスパンドレル50の幅方向内側に延設された内板部60Bが形成されている。外板部60A及び内板部60Bの各々の先端部は、化粧面50Aとは反対側に向けて折曲され、さらに内板部60Bの折曲先端がスパンドレル50の幅方向内側に向けられている。これにより、羽部54は、立板部58、外板部60A及び内板部60Bにより長手方向視が略T字状に形成されている。
【0039】
羽部56には、立板部58の先端部がスパンドレル50の幅方向内側に向けて折曲されてさらに折り返されることで断面略U字状とされた嵌合部62Aが形成されており、嵌合部62A内には、羽部54の外板部60Aが嵌入可能とされている。また、羽部56には、嵌合部62Aの立板部58とは反対側の先端部からスパンドレル50の幅方向外側に延設された横板部62Bが形成されており、横板部62Bの先端は、化粧面50A側に向けて折曲されている。これにより、羽部56には、羽部54の外板部60Aを収容可能な収容部64が形成されている。
【0040】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、スパンドレル50は、野縁40の下側において、長手方向が野縁40の各々と交差する方向である間口方向とされて、幅方向(奥行方向)に複数が配列されている。
【0041】
スパンドレル50の羽部56は、嵌合部62Aから横板部62Bの範囲において野縁40の下面に当接され、ビス40Aによって野縁40に締結固定される。また、スパンドレル50の羽部54は、幅方向に隣接するスパンドレル50の羽部56の嵌合部62Aに外板部60Aが嵌合されて羽部56の収容部64内に収容される。これにより、スパンドレル50は、羽部56が野縁40に固定されて支持されると共に、羽部54が隣接するスパンドレル50の羽部56に重ねられ、羽部54、56が野縁40に取り付けられる。また、天井36では、互いに隣接するスパンドレル50の間において立板部58が所定間隔で対向されて溝状の透かし目地66が形成される。
【0042】
図5(B)に示すように、見切り材52は、背板68、上板70及び下板72によって長手方向と交差する方向の断面が略コ字状に形成されており、背板68、上板70及び下板72は、長手方向に延設されている。見切り材52は、背板68からの上板70の突出長さ(突出量)が、背板68からの下板72の突出長さよりも長くされている。また、見切り材52は、下板72の突出先端は、上板70に向けて折曲されている。
【0043】
これにより、見切り材52には、上板70と下板72との間において背板68とは、反対側に向けて開口された収納部74が形成されており、収納部74には、化粧面50A側が下板72側とされると共に、羽部54、56側が上板70側とされてスパンドレル50が挿入(差し込み)可能とされている。
【0044】
天井下地38には、壁30(側壁30A、奥壁30B及び前壁30C)側の周縁部に見切り材52が配置されている。
図6(A)には、
図4(A)の天井36の主要部が拡大された断面図にて示され、
図6(B)には、
図4(B)の天井36の主要部が拡大された断面図にて示されている。
【0045】
図6(B)に示すように、側壁30A側において野縁40は、長手方向が奥行方向にされて側壁30Aに沿って配置されている。見切り材52は、長手方向が野縁40の長手方向とされて配置されており、見切り材52は、上板70がビス40Aによって野縁40の下面に締結固定されている。
【0046】
また、
図6(A)に示すように、各野縁40の長手方向端部は、奥壁30B及び前壁30C(
図6(A)では、奥壁30B側を図示)近傍に配置されている。見切り材52は、長手方向が奥壁30Bに沿って配置されることで複数の野縁40の下面側に跨って配置されており、見切り材52は、上板70が各々の野縁40の下面にビス40Aによって締結固定されている。これにより、見切り材52は、収納部74が壁30とは反対側に向けて開放された状態で天井下地38に取り付けられており、見切り材52は、天井36の周縁の全周に渡って配置されている。
【0047】
図3に示すように、天井36では、スパンドレル50の幅方向となるインナーガレージ26の奥行方向について、目地割りされてスパンドレル50が取り付けられる。この際、壁30(奥壁30B、前壁30C)側のスパンドレル50は、幅方向の所定位置において長手方向に切断されることで、羽部54又は羽部56が切除されて、目地割りに応じて幅寸法が調整される。これにより、
図6(A)に示すように、奥壁30B(前壁30C)側のスパンドレル50は、幅方向端部が見切り材52の収納部74に挿入されて、下板72によって覆われる。
【0048】
一方、
図1には、見切り材52及び見切り材52に対応されるスパンドレル50の長手方向端部が斜視図にて示されている。
【0049】
図1及び
図6(B)に示すように、側壁30A側の野縁40は、長手方向がインナーガレージ26の奥行方向とされて側壁30Aに沿って取り付けられている。見切り材52は、背板68が側壁30Aの直近とされて(
図6(B)参照)、上板70が野縁40の下面に固定されており、見切り材52の収納部74内には、スパンドレル50の長手方向の端部が挿入される(差し込まれる)。
【0050】
ここで、スパンドレル50には、見切り材52の収納部74に挿入される長手方向端部において見切り材52の上板70との相互干渉部分に切欠き部76が形成されている。切欠き部76は、スパンドレル50の長手方向端部を見切り材52の収納部74に挿入した際に、相互干渉部分となる見切り材52の上板70に重なる部分の羽部54、56の各々が立板部58の上端部から切り取られて形成されている(
図1の破線参照)。これにより、スパンドレル50は、長手方向端部が見切り材52の収納部74に挿入されて見切り材52の下板72によって覆われる際、羽部54、56が見切り材52の上板70に干渉するのが防止されている。
【0051】
次に本実施形態の作用として、スパンドレル50及び見切り材52の天井下地38への取り付けを説明する。
見切り材52は、長手方向が各壁30(側壁30A、奥壁30B及び前壁30C)に沿うと共に、背板68が各壁30の直近とされて配置され、上板70が野縁40の下面に固定されて天井下地38に取り付けられる。見切り材52が取り付けられた天井下地38には、野縁40の下面にスパンドレル50が取り付けられる。
【0052】
スパンドレル50は、各々の長手方向がインナーガレージ26の間口方向とされ、予め設定された目地割りに合せてインナーガレージ26の奥行方向に沿って配列されて、野縁40の下面に取り付けられる。この際、スパンドレル50は、ビス40A等によって羽部56が野縁40に固定されると共に、羽部56の嵌合部62Aに隣接するスパンドレル50の羽部54の外板部60Aが嵌め込まれて係止される。これにより、天井36には、野縁40によって取り付けられたスパンドレル50によって、目地割りに合わせた透かし目地66が形成される。
【0053】
天井36では、予め設定された目地割りに合せて奥壁30B側及び前壁30C側のスパンドレル50が長手方向に切断されて幅寸法が詰められている。このため、奥壁30B側及び前壁30C側のスパンドレル50は、見切り材52側の羽部54又は羽部56が切落とされて、見切り材52の収納部74に挿入される。これにより、見切り材52に挿入されるスパンドレル50は、羽部54、56が見切り材52の上板70に干渉するのが抑制されて、スパンドレル50の切断部分が見切り材52の下板72に覆われる。
【0054】
一方、スパンドレル50には、側壁30A側の見切り材52に対応される長手方向の端部に切欠き部76が形成される。切欠き部76は、スパンドレル50の長手方向端部を見切り材52の上板70と下板72との間の収納部74に挿入した際、上板70と重なる部分の羽部54、56が切り取られて形成される。
【0055】
天井下地38には、スパンドレル50の羽部54、56及び見切り材52の上板70の各々が野縁40の下面に取り付けられる。このため、長手方向の端部に羽部54、56を残した状態のスパンドレル50を見切り材52の収納部74に挿入した場合、羽部54、56と上板70とが干渉する。これにより、スパンドレル50の長手方向端部が見切り材52の収納部74に挿入できなかったり、見切り材52の近傍においてスパンドレル50の化粧面50Aに歪みが生じたりして、天井36の周縁部に見た目が悪化する(意匠性が損ねられる)。
【0056】
ここで、スパンドレル50の長手方向端部には、羽部54、56を切り欠いた切欠き部76が形成される。切欠き部76は、スパンドレル50の長手方向端部を見切り材52の収納部74に挿入した際、羽部54、56と見切り材52の上板70とが干渉するのを防止する。これにより、スパンドレル50の長手方向端部は、見切り材52の下板72によって覆われる。したがって、天井36は、スパンドレル50と共に見切り材52を野縁40の下側に取り付けた場合でも、良好な意匠性が得られる。
【0057】
また、壁30としてALCパネルが用いられている場合、ネジやボルト等によって見切り材52を壁30に取り付けるのが難しくなり、取り付け作業においても細心の注意が必要となると共に、取り付け作業も煩雑となる。
【0058】
これに対して、天井36では、見切り材52が壁30に取り付けたのと同様に、背板68が壁30の直近に配置されている。また、見切り材52は、野縁40の下面に固定されて天井下地38に支持されている。このため、天井36では、見切り材52を壁30の壁面に固定する必要が無く、壁30にALCパネルが用いられていても、見切り材52の取り付けのための作業が容易となり、見切り材52の取り付けの作業性を向上できる。
【0059】
さらに、天井36の目地割りによっては、スパンドレル50の羽部54、56が見切り材52の上板70に干渉する位置が、見切り材52の長手方向に変化する。この際、スパンドレル50の羽部54、56に切欠き部76を形成するので、天井36の目地割りの影響を受けることなく、スパンドレル50の羽部54、56と見切り材52とが干渉するのを防止できる。これにより、スパンドレル50を天井下地38に取り付ける作業の作業性を一層向上できる。
【0060】
〔変形例〕
以上説明した本実施形態では、スパンドレル50の羽部54、56に切欠き部76を形成したが、切欠き部は、見切り材52の上板70に形成されてもよい。
【0061】
図7には、変形例に係る天井36の主要部の一例が斜視図にて示され、
図8には、スパンドレル50と見切り材52とが野縁40に取り付けられた状態が、スパンドレル50の長手方向に沿う断面図にて示されている。
【0062】
図7及び
図8に示すように、変形例では、スパンドレル50の羽部54、56との相互干渉部分としての見切り材52の上板70に略矩形状の切欠き部80が形成されている。切欠き部80は、互いに隣接するスパンドレル50の間において羽部54と羽部56とが嵌合された状態で羽部54、56に重なる部分の上板70が略矩形状に切り欠かれて形成されている(
図7の破線参照)。見切り材52は、切欠き部80の間において、上板70が野縁40の下面にビス40A(図示省略)によって固定される。
【0063】
スパンドレル50の各々は、長手方向端部が見切り材52の収納部74に挿入される際に、羽部54、56が上板70の切欠き部80(
図8参照)内に差し込まれる。このため、スパンドレル50の長手方向端部の羽部54、56は、見切り材52の上板70に重なることなく、野縁40の下面に当接される。これにより、スパンドレル50の羽部54、56及び見切り材52の上板70を野縁40の下面に取り付ける際、スパンドレル50の長手方向端部を見切り材52の収納部74に挿入しても、羽部54、56と上板70とが干渉するのを防止できる。
【0064】
したがって、見切り材52の上板70に切欠き部80を形成した場合も、スパンドレル50の羽部54、56に切欠き部76を形成した場合と同様の効果を奏することができる。
【0065】
なお、以上説明した本実施形態及び変形例では、スパンドレル50及び見切り材52の一方に切欠き部を形成した。しかしながら、見切り材52を壁30に固定せずに、スパンドレル50と共に野縁40に取り付ける構成は、これに限るものではない。
【0066】
図9には、見切り材52を壁30に固定せずに、見切り材52をスパンドレル50と共に、野縁40に取り付ける構成の一例が、スパンドレル50の長手方向に沿った断面図にて示されている。
【0067】
図9に示すように、天井下地38に替えて天井36に用いられる天井下地38Aでは、スパンドレル50の長手方向端部に対向される側壁30A(壁30)側の野縁40が、天井下地38よりも側壁30Aから離されて設けられている。野縁40と側壁30Aとの間隔は、見切り材52の背板68を側壁30Aの直近に配置した状態で、側壁30Aと野縁40との間に上板70を挿入可能な間隔とされている。
【0068】
スパンドレル50は、天井下地38Aの野縁40に取り付けられる。見切り材52は、上板70と下板72との間(収納部74)にスパンドレル50の長手方向端部が差し込まれて(挿入されて)、背板68が側壁30Aの直近となるように配置される。また、見切り材52は、ビス40A等が用いられて、上板70と上板70に重なるスパンドレル50の羽部54、56(羽部56における嵌合部62Aと横板部62Bとの間)が締結固定される。
【0069】
これにより、見切り材52は、側壁30Aに固定されなくとも、スパンドレル50を介して天井下地38Aに支持される。また、スパンドレル50の長手方向端部(側壁30A側の端部)は、羽部54、56と見切り材52の上板70との干渉が防止されて、見切り材52の下板72によって覆われる。このため、天井下地38Aによって形成される天井36では、スパンドレル50の長手方向端部の見切り材52への納まりを良好にできて、高い意匠性が得られる。
【0070】
なお、以上説明した本実施形態及び変形例では、野縁40の長手方向を奥行方向とし、野縁受け42の長手方向を間口方向とした。しかしながら、野縁40の長手方向を間口方向とし、野縁受け42の長手方向を奥行方向としてもよく、この場合、スパンドレル50は、長手方向が奥行方向とされて野縁40の下側に配列されればよい。また、本実施形態及び変形例では、略水平とされた天井36を例に説明したが、天井は、傾斜されていてもよい。
【0071】
また、本実施形態及び変形例では、羽部54、56が形成されたスパンドレル50を例に説明した。しかしながら、天井材としてのスパンドレルは、隣接する羽部が重ねられて野縁の下面に固定される構成であればよく、スパンドレルの羽部は、隣接するスパンドレルの間で羽部が重なる形状であればよい。また、天井材は、スパンドレルに限らず、目透かし張り用の天井材であればよい。
【0072】
さらに、本実施形態及び変形例では、屋外に開放された天井としてインナーガレージ26の天井36を例に説明した。しかしながら、本発明は、スパンドレルなどの目透かし張り用の天井材が用いられた天井であればよく、屋内の天井であってもよい。
【0073】
また、屋外に開放された天井は、インナーガレージ26の天井36や玄関庇20の天井24に限らず、建物の屋外に開放された天井において、軒天や外壁と同等の防火性能が要求される部分や軒天や外壁と同等の防火性能が推奨される部分における天井構造に適用できる。
【0074】
例えば、本発明の天井構造は、建物の屋根において外壁から張り出した軒先部分の天井、建物の1階部分などにおいて壁に変えて支柱が用いられて(吹抜けにされて)屋外に開放されたピロティの天井、外壁の一部を屋内に入り込ませることで屋外に開放された小部屋(アルコープ)の天井などに適用できる。また、本発明の天井構造は、ベランダ(屋根付きバルコニーや屋根付きの縁側)の屋根や上階のバルコニーの床下部分などの建物から屋外に張り出したキャンチ構造における天井に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
10 建物
26 インナーガレージ
30A 側壁
36 天井
38 天井下地
40 野縁
50 スパンドレル
50A 化粧面
52 見切り材
54、56 羽部
66 透かし溝
68 背板
70 上板
72 下板
76、80 切欠き部