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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】設備用基礎構造及び施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/32 20060101AFI20220511BHJP
   E02D 27/44 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E02D27/32 Z
E02D27/44 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018235151
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097817
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】仙田 三治
(72)【発明者】
【氏名】大坪 正俊
(72)【発明者】
【氏名】和佐田 翔大
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-248525(JP,A)
【文献】特開2013-108280(JP,A)
【文献】特開2005-248602(JP,A)
【文献】特開平02-217519(JP,A)
【文献】特開2012-021702(JP,A)
【文献】特開2010-024727(JP,A)
【文献】特開2008-282676(JP,A)
【文献】特開昭53-113112(JP,A)
【文献】特開2004-332454(JP,A)
【文献】特開2011-179213(JP,A)
【文献】特開2007-170119(JP,A)
【文献】特開平10-266225(JP,A)
【文献】特開平09-021199(JP,A)
【文献】登録実用新案第3164677(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/32
E02D 27/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔の底部に沿って平面視で略矩形状に形成され、一辺側が建物の基礎部分を構成する建物基礎の地盤に埋設されたベース部の建物上方側に形成されたコンクリート製のプレート設置部と、
前記プレート設置部の上面に設置され、略矩形板状に形成されると共に設備を設置するための上面を備えたコンクリートプレート部と、
前記プレート設置部の対辺側かつ前記コンクリートプレート部の外周部の建物下方側に設けられ、内部に前記コンクリートプレート部の下面を押圧することで当該下面を上下動させる高さ調整機構を備えたコンクリート製の土台コンクリート部と、
を含んで構成された設備用基礎構造。
【請求項2】
前記コンクリートプレート部は、
前記プレート設置部の上面に設置され、略矩形板状に形成された下部コンクリートプレートと、
前記下部コンクリートプレートの上面に配置され、略矩形板状に形成された鋼板プレートと、
前記鋼板プレートの上面に配置され、略矩形板状に形成されると共に上面に設備が設置可能とされた上部コンクリートプレートと、
厚さ方向に貫通するように形成されたボルト挿通孔に挿通され、前記下部コンクリートプレートと前記鋼板プレートと前記上部コンクリートプレートとを一体に結合するボルトと、
を含んで構成された請求項1に記載の設備用基礎構造。
【請求項3】
前記下部コンクリートプレートは、平面視で4分割されたブロックを互いに当接させて一体的に形成され、
前記上部コンクリートプレートは、平面視で4分割されたブロックを互いに当接させて一体的に形成された請求項2に記載の設備用基礎構造。
【請求項4】
前記高さ調整機構は、前記土台コンクリート部に埋設されたナットと、前記ナットに螺合され、前記ナットの軸方向に沿って上昇されることにより前記コンクリートプレート部の下面を上下動させるボルトと、を含んで構成された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の設備用基礎構造。
【請求項5】
前記コンクリートプレート部の下面側の前記高さ調整機構が押圧する部分には、金属製の補強部が設けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の設備用基礎構造。
【請求項6】
一辺側が建物の基礎部分を構成する建物基礎の地盤に埋設されたベース部の建物上方側に位置し、平面視で略矩形状に形成された底部を備えた掘削孔を形成する第1工程と、
内部にコンクリートプレート部の下面を押圧することで当該下面を上下動させる高さ調整機構を備えたコンクリート製の土台コンクリート部を前記底部の対辺側の建物下方側へ配置する第2工程と、
前記掘削孔の前記底部に沿って平面視で略矩形状に形成され、一辺側が前記ベース部の建物上方側に位置するコンクリート製のプレート設置部を形成する第3工程と、
略矩形板状に形成されると共に設備を設置するための上面を備えた前記コンクリートプレート部を前記プレート設置部の上面に設置する第4工程と、
を含んで構成された設備用基礎構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備用基礎構造及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、2分割された部分が接合されて1つのブロックに形成された上部プレハブブロックと2分割された部分が接合されて1つのブロックに形成された下部プレハブブロックを備えた給湯機設置用簡易基礎が開示されている。上部プレハブブロックと下部プレハブブロックは、各々の接合面が直交する方向に上下に積み重ねられている。積み重ねられた上部プレハブブロックと下部プレハブブロックは、掘削孔の底部に水平状態に埋設された鋼製プレートの上に砂利と練りモルタルにより敷設された載置面の上に設置される。さらに、下端が鋼製プレートに螺合されたボルトが挿通されることにより、載置面の上に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-24727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された給湯機設置用簡易基礎によれば、給湯機が設置される上部プレハブブロックの水平状態は、鋼製プレートの水平状態に委ねられる。このため、例えば、給湯機や蓄電池等の設備が基礎構造に設置された後においても設備が設置された現場で簡単に基礎構造の高さ調節ができることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、設備が基礎構造に設置された後においても現場で簡単に基礎構造の高さ調節ができる設備用基礎構造及び施工方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る設備用基礎構造は、掘削孔の底部に沿って平面視で略矩形状に形成され、一辺側が建物の基礎部分を構成する建物基礎の地盤に埋設されたベース部の建物上方側に形成されたコンクリート製のプレート設置部と、前記プレート設置部の上面に設置され、略矩形板状に形成されると共に設備を設置するための上面を備えたコンクリートプレート部と、前記プレート設置部の対辺側かつ前記コンクリートプレート部の外周部の建物下方側に設けられ、内部に前記コンクリートプレート部の下面を押圧することで当該下面を上下動させる高さ調整機構を備えたコンクリート製の土台コンクリート部と、を含んで構成されている。
【0007】
第1の態様に係る設備用基礎構造によれば、プレート設置部の対辺側かつコンクリートプレート部の外周部の建物下方側に、土台コンクリート部が設けられている。土台コンクリート部は、高さ調整機構を備えているため、コンクリートプレート部の下面を押圧することにより下面を上下動させることができる。これにより、設備を設置した後にコンクリートプレート部が傾いた場合であっても、コンクリートプレート部の高さを現場で簡単に調整することができる。
【0008】
また、第1の態様に係る設備用基礎構造によれば、コンクリートプレート部は、一辺側が建物基礎のベース部の建物上方側に設置されたプレート設置部の上面に設置される。このため、設備がコンクリートプレート部の上面に設置された後であっても、プレート設置部とコンクリートプレート部のベース部の建物上方側に設置された部分が安定する。これにより、設備がコンクリートプレート部に配置された後のコンクリートプレート部の高さは、プレート設置部の他辺側に設置された部分の高さだけを調整すればよいため、簡単に調整することができる。
【0009】
第2の態様に係る設備用基礎構造は、第1の態様において、前記コンクリートプレート部は、前記プレート設置部の上面に設置され、略矩形板状に形成された下部コンクリートプレートと、前記下部コンクリートプレートの上面に配置され、略矩形板状に形成された鋼板プレートと、前記鋼板プレートの上面に配置され、略矩形板状に形成されると共に上面に設備が設置可能とされた上部コンクリートプレートと、厚さ方向に貫通するように形成されたボルト挿通孔に挿通され、前記下部コンクリートプレートと前記鋼板プレートと前記上部コンクリートプレートとを一体に結合するボルトと、を含んで構成されている。
【0010】
第2の態様に係る設備用基礎構造によれば、コンクリートプレート部は、下部コンクリートプレートと鋼板プレートと上部コンクリートプレートとがボルトにより一体に結合された状態で構成されている。このため、コンクリートプレート部をプレート設置部の上面に設置する際にコンクリートの打設が不要となり、コンクリートプレート部の設置の作業性を向上させることができる。
【0011】
第3の態様に係る設備用基礎構造は、第2の態様において、前記下部コンクリートプレートは、平面視で4分割されたブロックを互いに当接させて一体的に形成され、前記上部コンクリートプレートは、平面視で4分割されたブロックを互いに当接させて一体的に形成されている。
【0012】
第3の態様に係る設備用基礎構造によれば、上部コンクリートプレート及び下部コンクリートプレートは、平面視で4分割されたブロックを互いに当接させて一体的に形成されている。このため、分割することにより軽量化された各分割部分の運搬及び施工を容易に行うことができる。これにより、コンクリートプレート部の設置の作業性を更に向上させることができる。
【0013】
第4の態様に係る設備用基礎構造は、第1の態様から第3の態様のいずれか1の態様において、前記高さ調整機構は、前記土台コンクリート部に埋設されたナットと、前記ナットに螺合され、前記ナットの軸方向に沿って上昇されることにより前記コンクリートプレート部の下面を上下動させるボルトと、を含んで構成されている。
【0014】
第4の態様に係る設備用基礎構造によれば、ナットに螺合されたボルトを上昇させることにより、コンクリートプレート部の下面を上下動させることができる。これにより、設備がコンクリートプレート部に設置された後においてもコンクリートプレート部の高さ調節を現場で簡単にすることができる。
【0015】
第5の態様に係る設備用基礎構造は、第4の態様において、前記コンクリートプレート部の下面側の前記高さ調整機構が押圧する部分には、金属製の補強部が設けられている。
【0016】
第5の態様に係る設備用基礎構造によれば、コンクリートプレート部の下面側の高さ調整機構が押圧する部分には、金属製の補強部が設けられている。これにより、高さ調整機構に押圧されることによるコンクリートプレート部の下面の損傷を抑制又は防止した上で、コンクリートプレート部の高さ調節を現場で簡単にすることができる。
【0017】
第6の態様に係る設備用基礎構造の施工方法は、一辺側が建物の基礎部分を構成する建物基礎の地盤に埋設されたベース部の建物上方側に位置し、平面視で略矩形状に形成された底部を備えた掘削孔を形成する第1工程と、内部にコンクリートプレート部の下面を押圧することで当該下面を上下動させる高さ調整機構を備えたコンクリート製の土台コンクリート部を前記底部の対辺側の建物下方側へ配置する第2工程と、前記掘削孔の前記底部に沿って平面視で略矩形状に形成され、一辺側が前記ベース部の建物上方側に位置するコンクリート製のプレート設置部を形成する第3工程と、略矩形板状に形成されると共に設備を設置するための上面を備えた前記コンクリートプレート部を前記プレート設置部の上面に設置する第4工程と、を含んで構成されている。
【0018】
第6の態様に係る設備用基礎構造の施工方法によれば、設備を設置するための上面を備えたコンクリートプレート部を掘削孔の底部に形成されたプレート設置部の上面に設置することにより設備用基礎構造を構成することができる。このため、コンクリートプレート部を構成するためのコンクリートの打設が不要となり、コンクリートプレート部の設置の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、第1の態様に係る設備用基礎構造は、設備を設置した後にコンクリートプレート部が傾いた場合であっても、コンクリートプレート部の高さを現場で簡単に調整することができるという優れた効果を有する。
【0020】
第2の態様に係る設備用基礎構造は、コンクリートプレート部をプレート設置部の上面に設置する際にコンクリートの打設が不要となり、コンクリートプレート部の設置の作業性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0021】
第3の態様に係る設備用基礎構造は、分割することにより軽量化されたコンクリートプレート部の各分割部分の運搬及び施工を容易に行うことができるため、コンクリートプレート部の設置の作業性を更に向上させることができるという優れた効果を有する。
【0022】
第4の態様に係る設備用基礎構造は、設備がコンクリートプレート部に設置された後においてもコンクリートプレート部の高さ調節を現場で簡単にすることができるという優れた効果を有する。
【0023】
第5の態様に係る設備用基礎構造は、コンクリートプレート部の損傷を抑制又は防止した上で、コンクリートプレート部の高さ調節を現場で簡単にすることができるという優れた効果を有する。
【0024】
第6の態様に係る設備用基礎構造は、コンクリートプレート部を構成するためのコンクリートの打設が不要となり、コンクリートプレート部の設置の作業性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る設備用基礎構造の縦断面図である。
図2】本実施形態に係るコンクリートプレートが設置される前のプレート設置部と土台コンクリート部とを建物上方側から見た平面図である。
図3】本実施形態に係るコンクリートプレートと土台コンクリート部の斜視図である。
図4】本実施形態に係る設備用基礎構造の高さ調整方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1図4を用いて、本発明に係る設備用基礎構造の一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印UPは建物上方側を示している。
【0027】
(建物ユニットの構成)
図1には、設備用基礎構造10の縦断面図が示されている。設備用基礎構造10は、プレート設置部としての捨てコンクリート部12と、コンクリートプレート部30と、土台コンクリート部60と、を含んで構成されている。
【0028】
設備用基礎構造10は、地盤G上に設置されて建物(図示省略)の基礎部分を構成する建物基礎16に隣接して構成されている。建物基礎16は、掘削された地盤Gに敷き詰められた砕石24を下地として地盤Gの内部に埋設されたベース部(フーチング)16Aと、ベース部16Aから建物上方側へ向けて立ち上がる立上部16Bと、を含んで構成されている。建物基礎16は、筋金により補強された鉄筋コンクリート造のいわゆる布基礎とされている。
【0029】
設備としての給湯機14は、その背面が建物基礎16と隣接するようにコンクリートプレート部30の上面42Uに設置されている。給湯機14の脚部14Aがアンカーボルト18により上面42Uに固定される。給湯機14の建物基礎16から離れた側には、図示しない操作パネル等が配置された前面が形成されている。以下、給湯機14の背面側を「給湯機背面側」、給湯機14の前面側を「給湯機前面側」と称する。
【0030】
設備用基礎構造10は、地面SEを掘削することにより底部22Aが略矩形状に形成された掘削孔22に設置されている。ここで、掘削孔22は、地面SEから所定の深さまでの浅層の地盤Gの内部に形成されている。これにより、設備用基礎構造10は、建物内に連結される水道管やガス管との干渉を避けることができる。掘削孔22の底部22Aには設備用基礎構造10のプレート設置部としての捨てコンクリート部12が形成されている。捨てコンクリート部12は、砕石24が敷き詰められて略矩形状の水平面に整地されると共に水準器により水平レベルが確認された掘削孔22の底部22Aの建物上方側にコンクリートを打設することにより形成されている。
【0031】
捨てコンクリート部12は、一辺側となる給湯機背面側が建物基礎16のベース部16Aの建物上方側に形成されている。このため、給湯機14がコンクリートプレート部30の上面42Uに設置された後であっても、捨てコンクリート部12とコンクリートプレート部30のベース部16Aの建物上方側に設置された部分の高さを安定させることができる。
【0032】
捨てコンクリート部12の上面12Uには、コンクリートプレート部30が設置されている。コンクリートプレート部30は、下部コンクリートプレート32と角切鋼板52と上部コンクリートプレート42が一体的に構成されている。下部コンクリートプレート32と角切鋼板52と上部コンクリートプレート42は、コンクリートプレート部30の厚さ方向に貫通するように形成されたボルト挿通孔40に挿通されたボルトとしてのインサートボルト56により一体的に結合されている。
【0033】
捨てコンクリート部12の上面12Uには、コンクリートプレート部30の建物下方側を構成する下部コンクリートプレート32が設置されている。図2及び図3に示されるように、下部コンクリートプレート32は、予め工場で成型されたプレキャストコンクリートブロックにより建物上方側からの平面視で略矩形状に形成されている。また、下部コンクリートプレート32の中央部には、円形孔38が形成されている。円形孔38は、下部コンクリートプレート32の厚さ方向に沿って略円筒状に形成されており、その内径は下部コンクリートプレート32の曲げ強度及びせん断強度を適切に確保した上で、下部コンクリートプレート32を軽量化できる大きさに設定されている。
【0034】
図3に示されるように、下部コンクリートプレート32は、平面視で4分割された4つのブロック32A、32B、32C、32Dにより構成されている。4つのブロック32A、32B、32C、32Dの平面視で略十字状に形成された2つの境界部34、36は、互いに直交するように形成されている。4つのブロック32A、32B、32C、32Dは、下部コンクリートプレート32の境界部34、36を互いに当接させることにより一体的に形成されている。4分割された各ブロック32A、32B、32C、32Dは、人力による運搬や作業が可能な重量となるように設定されている。また、4分割された各ブロック32A、32B、32C、32Dには、円形孔38の中心からの距離がそれぞれ略同一となる位置に下部コンクリートプレート32の厚さ方向に沿ってインサートボルト56を挿通させるためのボルト挿通孔40が形成されている。
【0035】
図1に示されるように、下部コンクリートプレート32の上面には、角切鋼板52が配置されている。図3に示されるように、角切鋼板52は、建物上方側からの平面視で略矩形状に形成されている。角切鋼板52の中央部には、円形孔54が形成されている。円形孔54は、角切鋼板52の厚さ方向に沿って略円板状に形成されており、その内径は、角切鋼板52の曲げ強度及びせん断強度を適切に確保した上で、角切鋼板52を軽量化できる大きさに設定されている。また、円形孔54の中心から矩形を形成する四隅へ向けての距離がそれぞれ略同一となりかつ下部コンクリートプレート32のボルト挿通孔40と対応する位置にインサートボルト56を挿通させるためのボルト挿通孔40が形成されている。
【0036】
角切鋼板52は、軽量化した上でコンクリートプレート部30の曲げ強度及びせん断強度を適切に確保するために設けられている。このため、角切鋼板52の厚さは、下部コンクリートプレート32及び上部コンクリートプレート42の厚さに比べて薄く形成されている。
【0037】
角切鋼板52に形成されたボルト挿通孔40は、下部コンクリートプレート32及び上部コンクリートプレート42に形成されたボルト挿通孔40よりもインサートボルト56を挿通可能な範囲で内径が小さく形成されている。これにより、下部コンクリートプレート32及び上部コンクリートプレート42のボルト挿通孔40からのコンクリートの割裂を抑制及び防止することができる。
【0038】
図1に示されるように、角切鋼板52の上面には、コンクリートプレート部30の建物上方側を構成する上部コンクリートプレート42が設置されている。図2に示されるように、上部コンクリートプレート42は、予め工場で成型されたプレキャストコンクリートブロックにより建物上方側からの平面視で略矩形状に形成されている。また、上部コンクリートプレート42の中央部には、円形孔48が形成されている。円形孔48は、上部コンクリートプレート42の厚さ方向に沿って略円筒状に形成されており、その内径は上部コンクリートプレート42の曲げ強度及びせん断強度を適切に確保した上で、上部コンクリートプレート42を軽量化できる大きさに設定されている。
【0039】
図3に示されるように、上部コンクリートプレート42は、平面視で4分割された4つのブロック42A、42B、42C、42Dにより構成されている。4つのブロック42A、42B、42C、42Dの平面視で略十字状に形成された2つの境界部44、46は、互いに直交するように形成されている。4つのブロック42A、42B、42C、42Dは、上部コンクリートプレート42の境界部44、46を互いに当接させることにより一体的に形成されている。4分割された各ブロック42A、42B、42C、42Dは、人力による運搬や作業が可能な重量となるように設定されている。また、4分割された各ブロック42A、42B、42C、42Dには、円形孔48の中心からの距離がそれぞれ略同一となる位置に上部コンクリートプレート42の厚さ方向に沿ってインサートボルト56を挿通させるためのボルト挿通孔40が形成されている。
【0040】
図1に示されるように、下部コンクリートプレート32と角切鋼板52と上部コンクリートプレート42は、上部コンクリートプレート42の建物上方側からボルト挿通孔40に挿通されたインサートボルト56により一体に結合されている。ボルト挿通孔40に挿通されたインサートボルト56の上端は、上部コンクリートプレート42側に配置されたナット58に螺合されている。また、インサートボルト56の下端は、下部コンクリートプレート32側に配置されたナット58に螺合されている。なお、ここでは、コンクリートプレート部30は、インサートボルト56により一体に結合されているとして説明したが、頭部を備えていない棒状のボルトが挿通され、ボルトの両端にナットを螺合することにより一体に結合されてもよい。
【0041】
捨てコンクリート部12の対辺側としての給湯機前面側におけるコンクリートプレート部30の外周部30Aの建物下方側には、掘削孔22の底部22Aから建物下方側へ延在された略直方体状の土台コンクリート部60が埋設されている。土台コンクリート部60は、上面60Uが、捨てコンクリート部12の上面12Uと略面一となるように形成されている。また、土台コンクリート部60の上面60Uは、コンクリートプレート部30の下面となる下部コンクリートプレート32の下面32Lに当接するように形成されている。
【0042】
土台コンクリート部60の給湯機前面側かつ建物上方側の端部には、建物上方側へ向けて凹とされた凹部62が形成されている。凹部62の建物下方側には、下部コンクリートプレート32の下面32Lを押圧するための高さ調整機構70が構成されている。高さ調整機構70は、土台コンクリート部60の給湯機前面側の外周部の複数個所(本実施形態では、2箇所)に構成されている。
【0043】
高さ調整機構70は、土台コンクリート部60の凹部62の底部62Aに軸方向が建物上下方向となるように埋設されたナットとしての袋ナット72と、袋ナット72に螺合されたボルト74と、を含んで構成されている。ボルト74は、回転することにより袋ナット72の軸方向となる建物上下方向に沿って上昇可能に袋ナット72に螺合されている。ボルト74は、頭部74Aが下部コンクリートプレート32の下面32Lに当接する位置よりもさらに建物上方側まで上昇させることができる。このため、ボルト74により下部コンクリートプレート32の下面32Lを押圧することで上下動させることができる。なお、ここでは、高さ調整機構70は、袋ナット72を含んで構成されているとして説明したが、これに限らず、ナットと当該ナットの下端部に配置された鉄板等を含んで構成されてもよい。
【0044】
下部コンクリートプレート32の給湯機前面側の下面32L側には、高さ調整機構70のボルト74とその軸方向に対向する部分に金属製の補強部としての補強プレート80が設けられている。補強プレート80は、下部コンクリートプレート32の給湯機前面側の外周部30Aの建物下方側に沿って下部コンクリートプレート32と一体で構成されている。補強プレート80は、下部コンクリートプレート32の下面32Lの給湯機前面側端部に沿って形成された底辺部80Aと、下部コンクリートプレート32の給湯機前面側の外周部30Aに沿って形成され、底辺部80Aと略直交する対辺部80Bと、を含んで構成されている。さらに、補強プレート80には、底辺部80Aと対辺部80Bとの接合部に沿って一端部が形成され、一端部から建物上方側かつ給湯機背面側へ向けて延在された補強部80Cが形成されている。このため、補強プレート80は、底辺部80Aと対辺部80Bと補強部80Cにより、建物上下方向に切断した縦断面が、下部コンクリートプレート32の下面32Lの端部を先端とする矢印状に形成されている。
【0045】
次に、本実施形態に係る設備用基礎構造10の施工方法及び高さ調整方法の説明を通じて作用並びに効果について説明する。
【0046】
設備用基礎構造10は4つの工程により施工される。第1工程では、地面SEを掘削することにより、略矩形状の底部22Aを備えた掘削孔22が形成される。掘削孔22の底部22Aは、砕石24が敷き詰められて略矩形状の水平面に整地されると共に水準器により水平レベルが確認される。掘削孔22は、建物内に連結される水道管やガス管との干渉を避けることができるように、地面SEから所定の深さまでの浅層の地盤Gの内部に形成される。また、設備用基礎構造10の給湯機背面側の高さを安定させるために、底部22Aの一辺側が建物基礎16の地盤Gに埋設されたベース部16Aの建物上方側に位置するように形成される。
【0047】
第2工程では、底部22Aの給湯機前面側に高さ調整機構70を備えた土台コンクリート部60が底部22Aの建物下方側へ埋設される。ここで、土台コンクリート部60は、コンクリートプレート部30が設置された際に、上面60Uが下部コンクリートプレート32の下面32Lに当接する位置に埋設される。
【0048】
第3工程では、底部22Aに沿って捨てコンクリート部12が形成される。捨てコンクリート部12は、水平レベルが確認された掘削孔22の底部22Aの建物上方側にコンクリートを打設することにより形成される。また、捨てコンクリート部12は、一辺側となる給湯機背面側が建物基礎16のベース部16Aの建物上方側に形成される。これにより、給湯機14がコンクリートプレート部30の上面42Uに設置された後であっても、捨てコンクリート部12の一辺側の高さを安定させることができる。
【0049】
第4工程では、給湯機14を設置するための上面42Uを備えたコンクリートプレート部30が、捨てコンクリート部12の上面12Uに設置される。設備用基礎構造10は、下部コンクリートプレート32と角切鋼板52と上部コンクリートプレート42がインサートボルト56により一体に構成されたコンクリートプレート部30を捨てコンクリート部12の上面12Uに設置することにより構成される。このため、コンクリートプレート部30を構成するためのコンクリートの打設が不要となり、コンクリートプレート部30の設置の作業性を向上させることができる。
【0050】
次に、設備用基礎構造10の高さ調整方法について説明する。捨てコンクリート部12及び捨てコンクリート部12の上面12Uに設置されたコンクリートプレート部30は、給湯機背面側がベース部16Aの建物上方側に設置されている。このため、給湯機14がコンクリートプレート部30の上面42Uに設置された後であっても、捨てコンクリート部12とコンクリートプレート部30のベース部16Aの建物上方側に設置された部分が安定する。これにより、給湯機14がコンクリートプレート部30に配置された後のコンクリートプレート部30の高さは、捨てコンクリート部12の他辺側となる給湯機前面側に設置された部分の高さだけを調整すればよいため、簡単に調整することができる。
【0051】
図4に示されるように、コンクリートプレート部30の高さ調整をする作業者Pは、設備用基礎構造10の給湯機前面側の地盤Gを掘削する。具体的には、土台コンクリート部60の凹部62が露出しかつボルト74を回転させるために工具(例えば、スパナ86)を保持した作業者Pの手Hを差し込む事ができる程度に地盤Gを掘削する。作業者Pは、スパナ86の先端部を給湯機前面側から土台コンクリート部の凹部62に挿入し、スパナ86により保持したボルト74の頭部74Aを回転させることによりボルト74を建物上方側へ向けて上昇させる。
【0052】
建物上方側へ向けて上昇されたボルト74の頭部74Aは、下部コンクリートプレート32の給湯機前面側の下面32Lに一体成形された補強プレート80の底辺部80Aに当接する。ボルト74の頭部74Aが底辺部80Aに当接した状態から更にボルト74を上昇させると、コンクリートプレート部30の給湯機前面側が建物上方側へ向けて持ち上げられる。コンクリートプレート部30は、上部コンクリートプレート42の上面42Uが水平面となる位置まで、給湯機前面側が持ち上げられる。このため、土台コンクリート部60の上面60Uと下部コンクリートプレート32の下面32Lの間に隙間CLが形成される。隙間CLには、作業者Pにより給湯機前面側から隙間CLにあわせて厚さが調節された金属板又は木板のスペーサ(図示省略)が挿し込まれる。これにより、コンクリートプレート部30の給湯機前面側が建物上方側へ向けて持ち上げられた状態が保持される。高さ調整が完了すると、コンクリートプレート部30の給湯機前面側の掘削された地盤Gは埋め戻される。
【0053】
なお、ここでは、スペーサは金属板又は木板として説明したが、これに限らず、給湯機14等の設備の重量とコンクリートプレート部30の重量に対して十分な曲げ剛性及びせん断剛性を確保できる部材であれば金属又は木以外の部材が用いられてもよい。
【0054】
本実施形態に係る設備用基礎構造10によれば、捨てコンクリート部12の給湯機前面側かつコンクリートプレート部30の外周部30Aの建物下方側に、土台コンクリート部60が設けられている。土台コンクリート部60は、下部コンクリートプレート32の下面32Lを押圧することで下面32Lを上下動させることができる高さ調整機構70を備えている。このため、給湯機14を設置した後にコンクリートプレート部30が傾いた場合であっても、給湯機14が設置された現場で簡単に高さを調整することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る設備用基礎構造10によれば、コンクリートプレート部30は、給湯機背面側が建物の建物基礎16のベース部16Aの建物上方側に設置された捨てコンクリート部12の上面12Uに設置されている。コンクリートプレート部30の捨てコンクリート部12の一辺側に設置された部分はベース部16Aにより安定して設置される。このため、給湯機14がコンクリートプレート部30に配置された後のコンクリートプレート部30は、捨てコンクリート部12の他辺側となる給湯機前面側に設置された部分を調整することで高さ調整をすることができる。これにより、コンクリートプレート部30の高さを簡単に調整することができる。
【0056】
さらに本実施形態に係る設備用基礎構造10によれば、ボルト74を回転させることにより、ボルト74を下部コンクリートプレート32側へ上昇させることができる。このため、上昇させたボルト74により下部コンクリートプレート32側の下面32L側を簡単に押圧することで下面32Lを上下動させることができる。また、下部コンクリートプレート32の下面32L側のボルト74とボルト74の軸方向に対向する部分に補強プレート80が設けられている。このため、ボルト74を補強プレート80の底辺部80Aに当接させた状態で下部コンクリートプレート32を押圧することができる。これにより、給湯機14がコンクリートプレート部30に設置された後においても、下部コンクリートプレート32の損傷を抑制又は防止した上で、コンクリートプレート部30の高さ調節を給湯機14が設置された現場で簡単にすることができる。
【0057】
本実施形態に係る設備用基礎構造10によれば、土台コンクリート部60には、その給湯機前面側の複数個所に高さ調整機構70が構成されている。このため、給湯機14が設置されたコンクリートプレート部30が給湯機14の側面方向に傾いた場合であってもそれぞれの高さ調整機構70においてボルト74の高さを変えることにより給湯機14の側面方向の傾きを給湯機14が設置された現場で簡単にすることができる。
【0058】
以上を総括すると、本実施形態に係る設備用基礎構造10によれば、給湯機14が設備用基礎構造10に設置された後においても現場で簡単にコンクリートプレート部30の高さ調節をすることができる。
【0059】
さらに、本実施形態に係る設備用基礎構造10の施工方法によれば、コンクリートプレート部30は、下部コンクリートプレート32と角切鋼板52と上部コンクリートプレート42とがインサートボルト56により一体に結合された状態で構成されている。このため、コンクリートプレート部30を捨てコンクリート部12の上面12Uに設置する際にコンクリートの打設が不要となり、コンクリートプレート部30の設置の作業性を向上させることができる。また、コンクリートプレート部30のボルト挿通孔40に挿通されたインサートボルト56は、地盤G内に露出しない。このため、インサートボルト56の腐食の進行を遅らせることができ、コンクリートプレート部30の耐久性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る設備用基礎構造10によれば、下部コンクリートプレート32及び上部コンクリートプレート42は、平面視で4分割されている。このため、分割することにより軽量化された各分割部分の運搬及び施工を容易に行うことができるこれにより、コンクリートプレート部30の設置の作業性を更に向上させることができる。
【0061】
なお、ここでは、 高さ調整機構70は、袋ナット72とボルト74により構成されているとして説明したが、これに限らず、バール状の工具を用いて梃子の原理によりコンクリートプレート部を持ち上げる等の機構より高さ調整機構が構成されてもよい。
【0062】
また、ここでは、 コンクリートプレート部30は、下部コンクリートプレート32と角切鋼板52と上部コンクリートプレート42により構成されているとして説明したが、これに限らず、下部コンクリートプレートと上部コンクリートプレートだけで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 設備用基礎構造
12 捨てコンクリート部(プレート設置部)
12U 上面
14 給湯機(設備)
16 建物基礎
16A ベース部
22 掘削孔
22A 底部
30 コンクリートプレート部
30A 外周部
32 下部コンクリートプレート
32A ブロック
32B ブロック
32C ブロック
32D ブロック
32L 下面
40 ボルト挿通孔
42 上部コンクリートプレート
42A ブロック
42B ブロック
42C ブロック
42D ブロック
42U 上面
52 鋼板プレート(角切鋼板)
56 インサートボルト(ボルト)
60 土台コンクリート部
70 高さ調整機構
72 袋ナット(ナット)
74 ボルト
80 補強プレート(補強部)
G 地盤
図1
図2
図3
図4