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7070863高温耐性、断熱性、耐火性を備えたエアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法、並びにその製品の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】高温耐性、断熱性、耐火性を備えたエアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法、並びにその製品の使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/16 20060101AFI20220511BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220511BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C01B33/16
C08L83/04
C08K7/04
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020078938
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172565
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】519395466
【氏名又は名称】台湾気凝膠科技材料開発股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Taiwan Aerogel Technology Material Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】陳 建宏
(72)【発明者】
【氏名】陳 秀秀
(72)【発明者】
【氏名】彭 勝宏
(72)【発明者】
【氏名】李 洋端
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0160446(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104556969(CN,A)
【文献】特表2019-503952(JP,A)
【文献】特開2019-089707(JP,A)
【文献】特表2010-521399(JP,A)
【文献】特表2012-525290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/16
C08L 83/04
C08K 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン系化合物及び溶剤を混合て混合溶液を調製する混合ステップと、
酸触媒を前記混合溶液に添加して加水分解反応を進行させる加水分解ステップと、
アルカリ触媒を前記混合溶液に添加して重縮合反応を進行させる重縮合ステップであって、前記重縮合反応中に疎水性分散溶媒を添加し、攪拌により前記混合溶液中にエアロゲルのウェットゲルを形成する、或いは前記重縮合反応中に疎水性分散溶媒を添加し、且つ攪拌により前記混合溶液中にエアロゲルのウェットゲルを形成し、疎水性分散溶媒中で前記エアロゲルのウェットゲルを破砕し、破砕した粒径が数百nm~数十mmのウェットゲルを前記疎水性分散溶媒中に分散する、重縮合ステップと、
特定の温度下で前記エアロゲルのウェットゲルの熟成を行い、前記エアロゲルのウェットゲルを安定化する熟成ステップと、
常圧高温の条件下で前記疎水性分散溶媒及び前記エアロゲルのウェットゲル中の溶剤を交換する高温溶剤交換ステップと、
前記疎水性分散溶媒を高温蒸留除去または濾過機により濾過した後、前記エアロゲルのウェットゲルを高温乾燥して親水性エアロゲル粒子を得る乾燥ステップと、
乾燥した前記親水性エアロゲル粒子及び無機繊維を攪拌機で混合して無機混合物を形成し、無機粘着剤水溶液を前記無機混合物に添加し、前記親水性エアロゲル粒子、前記無機繊維、及び前記無機粘着剤水溶液を含有する親水性エアロゲル及び無機繊維の複合ゲル材料を形成するブレンドステップと、を含むことを特徴とする親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法。
【請求項2】
前記シロキサン系化合物は、第一親水性アルコキシシラン化合物(alkoxysilane)と、少量の第二親水性アルコキシシラン化合物と、疎水性アルコキシシラン化合物と、を含み、前記第一親水性アルコキシシラン化合物は、テトラメトキシシラン(tetramethoxysilane、TMOS)またはテトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)から選択され、前記疎水性アルコキシシラン化合物は、メチルトリメトキシシラン(MTMS)またはメチルトリエトキシシラン(MTES)から選択され、前記第二親水性アルコキシシラン化合物はR-アルコキシシラン化合物であり、Rは親水性官能基であり、酸基-COOH、アミン基-NH、イミド基-NH-、ヒドロキシ基-OH、アミド基-CONH-、またはエポキシ基-COH-COHから選ばれ、且つ前記親水性官能基の炭素数はC1~C8の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法。
【請求項3】
前記溶剤は第一成分及び第二成分を含み、前記第一成分は水、アルコ-ル類、及びアルキル類よりなる群のうちの1種類または1種類以上の成分を含み、前記第二成分は乳化剤及び界面活性剤よりなる群のうちの1種類または1種類以上の成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法。
【請求項4】
前記疎水性分散溶媒は、エタノ-ル、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、ベンジルアルコ-ル、フェネチルアルコ-ルよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法。
【請求項5】
前記高温溶剤交換ステップは50℃~160℃の常圧下で行われることを特徴とする請求項1に記載の親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥ステップの高温蒸留は60℃~160℃の常圧条件下で行われ、高温乾燥は流動層乾燥機、恒温槽、ドラム式乾燥機、ブレンド乾燥機、スプレ-乾燥機、または真空乾燥機を用いて90℃~250℃で行われることを特徴とする請求項1に記載の親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法。
【請求項7】
前記エアロゲル粒子の密度、粒径、空孔率、及び孔の大きさは、第一親水性アルコキシシラン化合物の含量、第二親水性アルコキシシラン化合物の含量、疎水性アルコキシシラン化合物の含量、溶剤の含量、溶剤の粘度、酸触媒の含量、アルカリ触媒の含量、疎水性分散溶媒の種類または含量、疎水性分散溶媒の種類または含量、溶剤交換温度、及び攪拌速度の条件に基づいて調節されることを特徴とする請求項2に記載の親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法。
【請求項8】
前記ブレンドステップは、乾燥した前記親水性エアロゲル粒子を攪拌機により無機繊維と混合した無機混合物を形成するステップに代替され、前記無機混合物に無機粘着剤を添加し、前記エアロゲル粒子、前記無機繊維、及び前記無機粘着剤を含有する粘着性エアロゲルの複合ゲル状物を形成することを特徴とする請求項1に記載の親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法。
【請求項9】
前記無機粘着剤は、リン酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硼酸塩、または金属酸化物から選択され、前記リン酸塩はリン酸ジルコニウム、リン酸-酸化銅であり、前記ケイ酸塩はケイ酸アルミニウムまたは水ガラスであり、前記金属酸化物は銅、アルミニウム、ジルコニウム系元素を含む酸化物であることを特徴とする請求項8に記載の親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法。
【請求項10】
前記エアロゲルは前記複合ゲル材料の含量の15v/v%~40v/v%を占め、前記無機繊維は10v/v%~35v/v%を占め、前記無機粘着剤水溶液は25v/v%~75v/v%を占め、且つ前記複合ゲル材料の乾燥後に得られるエアロゲル断熱板中の前記エアロゲル及び前記無機繊維の総含量は25wt%~90wt%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温耐性、断熱性、耐火性を備えたエアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法、並びにその製品の使用に関し、特に、関連する生成物が800℃以上の高温に耐える特性を有する複合ゲル材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゲルは立体網状構造を有する多孔質材料で、低密度(0.003g/cm~0.2g/cm)、高比表面積(500m/g~2,000m/g)、低熱伝導率(0.02W/mK~0.036W/mK)等の特性を有するハイテク製品である。また、エアロゲルの孔隙率は95%以上にも達し、その内部には大量の空気が含まれている。ゆえに、全体が透明状を呈し、且つ低い熱伝導率、低い音伝導率、低い誘電率等の特性を有し、極めて優れた断熱性、防音性、電気絶縁性、吸着性、及び濾過性能を有する材料である。しかしながら、実際に使用する時に上述の機能を達成する場合、エアロゲルを岩綿、ガラス繊維、または炭素繊維等の基材に均一に分散させてエアロゲル断熱ブランケットを形成させる必要がある。よくあるエアロゲル断熱ブランケットは粉を吹きやすいという問題があった。また、エアロゲル断熱ブランケットの多くは使用可能な温度は200℃以下であり、高温に対する耐性がなかった。なお、市販品では300℃の高温下で使用すると、エアロゲル断熱ブランケットが毒性のあるガスや悪臭を放ち、一定期間使用した後には明らかな分解現象が発生した。そのため、交換中に大量のエアロゲル分解物や埃を発生させ、人々の健康を害し、環境を汚染した。
【0003】
従来のエアロゲルの製造方法としてゾルゲル法がある。主にまずアルコキシシラン化合物(alkoxysilane)、オルトケイ酸テトラメチル、或いは水ガラス等の前駆物質と有機溶剤とを混合し、加水分解反応(hydrolysis)が生じるように酸触媒を添加する。一定時間加水分解を行った後、凝集(重縮合)反応(condensation)が生じるようにアルカリ触媒を添加し、凝集(重縮合)中にゾルを徐々に形成させる。ゾル内の分子結合が継続的に進行し、半固体の高分子ゲルが徐々に形成される。次いで、一定時間熟成(aging)することにより、ゾルが半固体構造から安定した構造の立体網状構造に変換される。最後に、まずエタノ-ル、ブタノ-ル、または1-プロパノ-ルを利用して溶剤交換を行い、n-ヘキサンまたはシクロヘキサン等の溶剤を利用して更に溶剤交換を行った後、超臨界乾燥技術により立体網状構造内の溶剤の抽出乾燥を行い、多孔性の乾燥疎水性エアロゲル粉末を得る。
【0004】
現在用いられている疎水性エアロゲル断熱ブランケットもゾルゲル法を始めに使用する。主にまずアルコキシシラン化合物(例えば、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane、MTMS)またはメチルトリエトキシシラン(methyltriethoxysilane、MTES))と有機溶剤とを混合した後、加水分解反応が生じるようにアルカリ触媒を添加する。一定時間加水分解を行った後、重縮合反応を進行させると共に重縮合中にゲルを徐々に形成させる。その後、常温常圧または高温常圧で乾燥を行う。また、他のゾルゲル法では、まずアルコキシシラン化合物(例えば、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)或いはテトラメトキシシラン(tetramethoxysilane、TMOS))と有機溶剤とを混合した後、加水分解反応が生じるように酸触媒を添加する。一定時間加水分解を行った後、重縮合反応が生じるようにアルカリ触媒を添加し、重縮合中に安定した構造の立体網状構造を徐々に形成させる。その後、まずエタノ-ル、ブタノ-ル、または1-プロパノ-ルを利用して溶剤交換を行い、n-ヘキサンまたはシクロヘキサン等の溶剤を利用して更に溶剤交換を行う。その後、クロロトリメチルシランまたは疎水性シラン化合物により疎水修飾を行い、疎水性官能基群と立体網状構造とを化学結合させる。その後、常圧乾燥技術により立体網状構造内の溶剤を乾燥させ、多孔性乾燥エアロゲルバルク材を得る。最後に、派生したエアロゲル粉末を無機コットンブランケットに均一に噴霧し、シリコ-ンオイルを吹き付けると共にニ-ドルパンチにより定型し、多層エアロゲル断熱ブランケットを形成する。
【0005】
しかしながら、前述した疎水エアロゲル及び形成された多層エアロゲル断熱ブランケットは350℃で分解が始まり、大量の有毒な有機物質を放出するため、産業上利用できなかった。また、上述の疎水エアロゲルは製造プロセス中に何度も溶剤交換を行う必要があり、有機物質による修飾も必要なため、全体的にコスト及び時間がかかり、コストパフォ-マンスが乏しかった。
【0006】
また、高温耐性の断熱セラミック板に関する従来の特許文献として、例えば、下記特許文献1には、「発泡セラミック複合床暖房レンガ及びその製造方法」が記載されている。ここでは比重0.2~0.8の発泡セラミックを基板とし、セラミックレンガと発泡セラミックとの間の粘着層は超速硬セメントとする。但し、この技術には以下の問題が存在する。
1、エアロゲル材料や従来の有機発泡材と比べると発泡セラミックの導熱率が高く、エアロゲル材料の4倍から5倍にもなり、熱の損失が相対的に高くなる。
2、関連する有機発泡材は350℃以上の高温環境では明らかに分解し、大量の有毒ガスを発生し、発泡セラミックの耐用年数に影響を及ぼす。
【0007】
また、例えば、下記特許文献2には、「電熱複合セラミックレンガ及びその製造方法」が記載されている。ここでは発熱素子として電熱膜を採用し、成分中に55wt%~75wt%の有機粘結剤が含まれている。有機粘結剤としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン、またはシリコンゴム等の有機樹脂が用いられる。しかしながら、これらの有機粘結剤を含むセラミックレンガは350℃の高温環境で長時間使用することができず、且つ高温に加熱する過程において分解が発生しやすく、大量の有毒ガスを放出することであった。
【0008】
また、例えば、下記特許文献3には、「多孔材料及びその製造方法」が記載されている。主にゾルゲル法を用いてアルコキシシラン化合物(例えば、テトラエトキシシラン)またはケイ酸塩化合物(例えば、水ガラス)と有機溶剤とを混合して合成し、且つ修飾剤により修飾して多孔材料を製造する。これにより、多孔材料表面の親水性官能基が疎水性官能基に交換され、水分の表面張力の影響によりエアロゲルが破裂する事象が回避される。この技術の欠点は、得られる疎水性エアロゲル材料が高温環境では使用できず、約350℃で分解が始まり、大量の有毒ガスを放出することである。
【0009】
現在常用されている多孔性セラミック板は主に発泡セラミック、セラミックハニカム、または粒状セラミック結合体に属し、どれも高温で焼成されるケイ酸塩セラミック材料である。これら多孔性セラミック板は本質的に高密度セラミック構造を有し、発泡技術を利用して得られた多孔性セラミックレンガは薄くて軽く、高い難燃性を有する。しかしながら、高温での断熱性が優れず、高温環境で応用しても効果が低かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】中国特許出願公開第CN105135507A号明細書
【文献】中国特許出願公開第CN105025598A号明細書
【文献】日本特許出願公開第200835648号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明者は上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。
【0012】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、本発明の第一の目的は、従来の有機粘結剤が使用される多孔性セラミック板及び疎水性エアロゲル断熱ブランケットは高温環境で長時間使用できないという欠点を改善することである。
【0013】
また、本発明の第二の目的は、エアロゲルに無機繊維(例えば、セラミック繊維、岩綿、ガラス繊維、炭素繊維等)を添加し、エアロゲルの関連断熱製品の耐圧、アンチノック性等の力学的性質を直接高め、且つ混合して得られるエアロゲル複合ゲル材料を不規則形状の各種柱や設備の外観に直接吹き付け塗装するか被覆することにより、エアロゲル粉末を無機繊維ブランケットの間に噴霧してエアロゲル断熱ブランケットを製造することを要しなくすることである。
【0014】
また、本発明の別の目的は、親水性エアロゲル粒子及び無機繊維等の材料との粘着
剤として無機粘着剤水溶液を利用して、乾燥後の材料全体の孔隙率を更に高め、材料の密度を低めて材料の断熱性を高めることである。また、一般的な有機粘着剤における高温環境での分解による大量の発がん性物質の発生を回避する。なお、無機粘着剤水溶液を粘着剤とすることで高温環境下での親水性エアロゲル及び無機繊維の構造安定性及び断熱特性を高め、更には高温環境で長時間使用した後にも粉を吹く問題を発生しない。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、開発された親水性エアロゲル粒子の製造過程で高温溶剤交換技術を利用することにより、従来の親水性エアロゲルの製造における溶剤交換または水洗いにかかる時間を顕著に短縮し、製造時間も顕著に短縮し、製造コストを抑制しつつ歩留まりを向上させることである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料を吹き付け塗装または押し出し等の従来の加工技術によって無機繊維ブランケットに直接形成し、一般的なエアロゲル断熱ブランケットを形成することである。また、エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料は一般的な繊維ブランケットと相互に結合させて多層構造を形成し、エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料に撥水剤を添加することで、撥水性及び高温断熱性質を有するエアロゲル断熱ブランケットを連続生産或いは大ロット生産し、エアロゲルと繊維ブランケット等の生地との間の作用を高めて製品の応用価値を向上させる。
【0017】
本発明は親水性エアロゲル及び無機繊維の製造技術を結合したものであり、親水性エアロゲル粒子を改良型ゾルゲル技術により製造すると共に無機繊維を無機粘着剤水溶液と混合することで断熱性のエアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料として結合(複合化)する。この複合ゲル材料は柔軟性及び高い粘結性等の加工に適した特性を兼ね備え、且つ架橋及び乾燥後に高温耐性及び高い断熱性質を有するエアロゲル断熱板材またはエアロゲル断熱レンガが形成されている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の親水性エアロゲル及び無機繊維複合ゲル材料の製造方法は、混合溶剤にシロキサン系化合物を添加し、混合溶液を形成するためにシロキサン系化合物を混合溶剤に分散させる(1)混合ステップと、加水分解反応が発生するように混合溶液に酸触媒を添加する(2)加水分解ステップと、重縮合反応が発生するように混合溶液にアルカリ触媒を添加する(3)重縮合ステップであって、重縮合反応中に疎水性分散溶媒を添加し、且つ高速攪拌により混合溶液中に均一な構造のエアロゲルのウェットゲルが形成される、或いは重縮合反応中に疎水性分散溶媒を添加し、且つ高速攪拌により混合溶液中に均一な構造のエアロゲルのウェットゲルが形成され、大量の疎水性分散溶媒雰囲気でエアロゲルのウェットゲルを破砕し、破砕したエアロゲルのウェットゲルの粒径が数百nm~数十mmの大きさとなって疎水性分散溶媒中に分散し、特定の温度下でエアロゲルのウェットゲルの熟成を行い、エアロゲルのウェットゲルが更に安定化する(4)熟成ステップと、常圧高温の条件下で、エアロゲルのウェットゲルが透明な性状または完全な透明状になるまで、疎水性分散溶媒とエアロゲルのウェットゲル中の溶剤を交換する(5)高温溶剤交換ステップと、疎水性分散溶媒を高温蒸留除去または濾過機により濾過した後、エアロゲルのウェットゲルを高温乾燥すると共に親水性及び疎水性の混合溶剤によりエアロゲルのウェットゲル構造中の水分子を高速に脱離することで高い孔隙率且つ低い熱伝導特性のエアロゲル粒子を得、高い孔隙率及び高い比表面積を有する親水性エアロゲル粒子を得る(6)乾燥ステップと、乾燥した親水性エアロゲル粒子及び無機繊維を攪拌機で混合して均一に分散して無機混合物を形成し、無機混合物に無機粘着剤水溶液を添加することで、エアロゲル粒子、無機繊維、及び無機粘着剤水溶液が相互に作用した粘着性を有する親水性エアロゲル及び無機繊維の複合ゲル材料を形成した後、複合ゲル材料の粘度を調整するため、水、粘着剤水溶液、分散剤水溶液、またはエアロゲル粉末を添加する(7)ブレンドステップと、を含む。複合ゲル材料に対して、エアロゲルは15v/v%~40v/v%を占め、無機繊維は10v/v%~35v/v%を占め、無機粘着剤水溶液は25v/v%~75v/v%を占めている。また、複合ゲル材料の乾燥後に得られるエアロゲル断熱板中のエアロゲル及び無機繊維の総含量は約25wt%~90wt%の範囲である。
【0019】
さらに、シロキサン系化合物は、主に網目状構造の密度を向上させ、エアロゲルの柔軟性及び構造強度を高める。シロキサン系化合物としては、テトラメトキシシラン(tetramethoxysilane、TMOS)またはテトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)等の親水性アルコキシシラン化合物(alkoxysilane)、及び主にエアロゲルに微量の疎水性質を提供し、エアロゲル構造の構造安定性を高めるメチルトリメトキシシラン(MTMS)またはメチルトリエトキシシラン(MTES)等の少量の疎水性アルコキシシラン化合物を含む。
【0020】
さらに、前記混合溶剤は第一成分及び、第二成分を含む。第一成分は水、アルコ-ル類、及びアルキル類よりなる群のうちの1種類または1種類以上の成分を含み、第二成分は乳化剤及び界面活性剤よりなる群のうちの1種類または1種類以上の成分を含む。
【0021】
さらに、加水分解ステップにおいて添加される酸触媒は、硫酸、リン酸、硝酸、及び硼酸よりなる群のうちの1種類または1種類以上の成分を含む。
【0022】
さらに、重縮合ステップにおいて添加されるアルカリ触媒は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムよりなる群のうちの1種類または1種類以上の成分を含む。
【0023】
さらに、界面活性剤は陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤よりなる群のうちの1種類または1種類以上の成分を含む。
【0024】
さらに、重縮合ステップにおいて用いられる疎水性分散溶媒は、製造プロセスにおいて親水性溶剤及び疎水性溶剤を調和することで生成する分散溶媒を含む。重縮合破砕反応中に大量の分散溶媒(例えば、アルコ-ル類、芳香族類、アルキル類、及び有機ハロゲン化物類の1種類または1種類以上)が添加され、エアロゲルのウェットゲルが大量の疎水性分散溶媒の作用により大量の孔を有し、且つ親水性溶剤及び疎水性溶剤の調和比例を利用して分散溶媒及びエアロゲルのウェットゲルの分子間の相互作用を制御し、縮合結合中のエアロゲルのウェットゲル分子のミクロ相分離を更に制御する。これにより、形成されたエアロゲルのウェットゲルの分子の粒径及び孔の分布が制御される。
【0025】
さらに、本方法では一般的な常圧高温疎水溶剤交換方式を採用して溶剤の交換を行い、溶剤交換効率を高めると共にエアロゲルの製造にかかる時間を短縮する。本方法では親水性及び疎水性の異なる溶剤間の混和共沸効果を利用し、高温溶剤交換中のウェットゲル内部の水分子または他の親水性分子と大量の疎水性分散溶媒との間で混和共沸を進行させ、ウェットゲル中の溶剤が透明な性状または完全な透明状になるまで高速に交換を行い、低密度で高孔隙率の親水性エアロゲル粒子を製造する。
【0026】
さらに、本方法では一般的な常圧高温方式で溶剤の蒸発及び乾燥を行う。乾燥後に粒径が数百nm~数十mmの範囲となる親水性エアロゲル粒子が得られる。全体的には、製造プロセスが簡易になり、基材の性質に基づいて異なる親水性官能基で表面の修飾を行ったエアロゲル粒子となる。製造プロセスが8時間~12時間以内に完了し、且つ連続生産により一般的な親水性基群または特殊な親水基群を有するエアロゲル粒子を製造し、生産効率を高める。
【0027】
さらに、常圧高温下で溶剤の蒸発及び乾燥を行って得られた透明状エアロゲル粒子を攪拌機により無機繊維と直接混合して均一に分散したエアロゲル無機混合物を形成する。その後、無機粘着剤を添加すると、エアロゲル粒子、無機繊維、及び無機粘着剤が相互に作用して粘着性エアロゲルの複合ゲル状物が形成される。次に、エアロゲルの複合ゲル状物の粘度を調整するために、水、粘着剤水溶液、分散剤水溶液、或いはエアロゲル粉末を添加する。本発明に係るエアロゲル複合ゲル材料中のエアロゲルの含量は15v/v%~40v/v%の範囲であり、無機繊維の含量は10v/v%~35v/v%の範囲であり、無機粘着剤及び水の総含量は25v/v%~75v/v%の範囲である。本発明に係るエアロゲル複合ゲル材料は高い粘着性を有し、高温炉または内燃機等の高温設備に直接充填されるかそれらを被覆し、或いはダイカスト法によりエアロゲル断熱レンガ或いは板材等の応用製品として製造される。エアロゲル断熱レンガまたは板材中のエアロゲル及び無機繊維の総含量は約25wt%~90wt%の範囲である。
【0028】
さらに、エアロゲル複合ゲル材料を乾燥した後に形成されるエアロゲル断熱板中のエアロゲル及び無機繊維の総含量は約90wt%である。また、耐熱性は800℃以上に達し、室温及び500℃の環境における熱伝導率はそれぞれ0.04W/mK及び0.095W/mKとなる。
【0029】
さらに、無機繊維は、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、酸化物繊維、及び岩綿繊維等の無機材料よりなる群のうちの1種類または1種類以上の材料である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、次のような効果がある。
1、本発明に係る製造方法では、重縮合ステップ中に疎水性分散溶媒の作用により、エアロゲルのウェットゲル内部の親水性溶剤及び疎水性分散溶媒が相互に作用して混合され、ウェットゲルの表層が高速にゲル化されて緻密なエアロゲルシェル層が形成される。また、疎水性分散溶媒はエアロゲルのウェットゲル内部にも浸入してゲル化を促し、且つ疎水性分散溶剤の浸入により液相-固相分離(liquid-solid phase-separation)が生じ、ウェットゲルが大量のナノ細孔~メソ細孔を有する構造となる。また、疎水性分散溶剤がウェットゲル内部に浸入した後にエタノ-ル及び水とも混和する。これにより水分子の界面張力が変化し、後続の熟成及び乾燥過程中のエアロゲルのウェットゲル構造の収縮が顕著に低減し、高い孔隙率の親水性エアロゲル粒子が生産される。これにより、親水性エアロゲル粒子の断熱及び防火性能が明らかに向上し、ブレンド材料中のエアロゲル粒子の含量が明らかに増加し、エアロゲルの実用性が高まる。
2、本発明に係る製造方法によって得られる親水性エアロゲル粒子は、密度、粒径、空孔率、及び孔の大きさは、例えば、親水性アルコキシシラン化合物の含量、疎水性アルコキシシラン化合物の含量、溶剤の含量、酸触媒、或いはアルカリ触媒の含量、界面活性剤の含量、疎水性分散溶媒の成分及びその含量、疎水性分散溶媒の成分及びその含量、溶剤交換の温度及び攪拌速度等の製造条件に基づく。
3、本発明に係る製造方法は重縮合分散ステップにおいて、大量の疎水性分散溶媒によって破砕及び高速攪拌を行った後、疎水性分散溶媒の乾燥除去を行い、粒径が数百nm~数十mmの大きさとなる親水性エアロゲル粒子を生産する。生産された親水性エアロゲル粒子は優れた分散性を有すると共に基材に高含量で混和され、且つ基材中でのエアロゲル内部の高い空孔率が保持され、異なる各種の基材中での親水性エアロゲル粒子の断熱及び防火性能が向上する。
4、本発明は高温溶剤交換ステップにおいて、溶剤の含量及び温度等の条件を制御することで、エアロゲル全体の交換にかかる時間を短縮し、最速で12時間~24時間以内に大量(体積約500L~5000L)の親水性エアロゲル粒子の製造が完了する。これによってエアロゲルの生産効率が高まる。
5、本発明は親水性エアロゲル粒子を無機繊維に添加して混合すると共に、無機粘着剤水溶液により粘度を調節することで高温用エアロゲル及び無機繊維断熱複合ゲル材料を形成する。関連製品は600℃以上の温度で長時間使用可能であり、さらには1000℃の極高温環境でも短時間断熱効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る親水性エアロゲル及び複合ゲル材料の製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の親水性エアロゲル粒子の外観写真である。
図3】本発明の親水性エアロゲル粒子の外観写真である。
図4】本発明の親水性エアロゲル粒子の走査型電子顕微鏡観察写真である。
図5】10.5cm×10.5cm×9.5cmの高温断熱エアロゲルレンガの外観写真である。
図6】厚さ3cmの高温断熱エアロゲルレンガを1200℃で3時間加熱したときの裏面の温度変化を示すグラフである(比率は体積比)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の特許請求の範囲(技術的範囲)に属する限り種々の形態を採りうる。
【0033】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【0034】
図1は本発明の実施形態に係る親水性エアロゲル複合ゲル材料の製造方法を図示する。混合ステップ(S1)と、加水分解ステップ(S2)と、凝集(重縮合)分散ステップ(S3)または重縮合粉砕ステップ(S3’)と、熟成ステップ(S4)と、高温溶剤交換ステップ(S5)と、乾燥ステップ(S6)と、ブレンドステップ(S7)と、を含む。これにより、高温耐性を有するエアロゲル断熱レンガ材の製造への応用が可能となる。
【0035】
<混合ステップ(S1)>
シロキサン系化合物及び混合溶剤を混合する。シロキサン系化合物は、テトラメトキシシラン(tetramethoxysilane、TMOS)やテトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)等の親水性アルコキシシラン化合物(alkoxysilane)、及びメチルトリメトキシシラン(MTMS)またはメチルトリエトキシシラン(MTES)のようなアルキルシロキサン化合物よりなる群のうちの1種類または1種類以上である。上記疎水性分子は本文では主にエアロゲルに微量の疎水性特性を付与し、エアロゲル構造の構造安定性を向上させる。また、R-アルコキシシラン化合物のような他の親水性アルコキシシラン化合物を更に少量添加することにより、主にエアロゲル微細構造の修飾及び官能基の含有量の制御を行う。ここで、Rは親水性官能基であり、酸基-COOH、アミン基-NH、イミド基-NH-、ヒドロキシ基-OH、アミド基-CONH-、或いはエポキシ基-COH-COHを含む。また、親水性官能基の炭素数はC1~C8の範囲である。混合溶液の総含量から計算すると、シロキサン系化合物の総含量は3.0mol%~60.0mol%の範囲であり、アルキルシロキサン化合物の含量は0.05mol%~6.0mol%の範囲であり、溶剤の含量は97.0mol%~40.0mol%の範囲である。
【0036】
混合ステップ(S1)において用いられる溶剤は水、処理水、脱イオン水、二次水、C1~C8のアルコ-ル類、C1~C8のアルキル類、高分子乳化剤、または界面活性剤である。具体的な、混合用溶剤は水、処理水、脱イオン水、エタノ-ル、トルエン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ポリビニルアルコ-ル、またはヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドである。
【0037】
<加水分解ステップ(S2)>
加水分解反応が生じるように混合溶液に酸触媒を添加する。シロキサン系化合物の総含量と酸触媒との含量比(質量)は1:0.5~1:0.0001である。また、特定のR-アルコキシシラン化合物を含有させることで酸触媒を添加せずに直接加水分解を行うことも可能である。なお、シロキサン系化合物の総含有量と酸触媒との含量比が1:0.0001である場合、加水分解反応時間は360分である。シロキサン系化合物の総含量と酸触媒との含量比が1:0.5である場合、加水分解時間は5分である。このように、加水分解時間は酸触媒の含量の増加に伴って短縮する。
【0038】
<重縮合分散ステップ(S3)または重縮合粉砕ステップ(S3’)>
重縮合反応が生じるようにアルカリ触媒を混合溶液に添加する。酸触媒とアルカリ触媒とのモル比は1:1至1:4である。混合溶液中のアルカリ触媒の含量が増加すると重縮合反応時間(即ち、ゲル化時間)が明らかに短縮される。酸触媒とアルカリ触媒のモル比が1:1である場合、ゲル化時間は約1200分間である。酸触媒とアルカリ触媒とのモル比が1:3である場合、ゲル化時間は約3-5分間にまで短縮する。よって、アルカリ触媒の含量を調節することによりゲル化時間を調整可能である。
【0039】
重縮合反応が完了に近付く前に、混合溶液がゾル溶液状(solution-like sol)になる。重縮合分散ステップ(S3)では、混合溶液がゾル状に制御される条件下で大量の非相溶系の疎水性分散溶媒を添加し、且つ100rpm~500rpmの回転速度で高速攪拌する。混合溶液が疎水性分散溶媒の影響を受け、混合溶液中の水分子の水和作用が抑制され、その後のゲル化により親水性エアロゲルのウェットゲルが形成される。(混合)溶剤と疎水性分散溶媒との体積比は1:0.05~1:0.5であり、疎水性分散溶媒の含量が高くなるほど、その後に形成されるエアロゲル粒子の収縮率が低下する。マクロな観点からは相分離が顕著になるほど不透明な外観を呈する。但し、その構造の孔隙率が高くなるほど密度が低くなる。重縮合粉砕ステップ(S3’)では、更に大量の疎水性分散溶媒条件下で親水性エアロゲルのウェットゲルの破砕を行う。具体的には、ウェットゲルが粒径が数百nm~数十mmの大きさになるまで破砕して疎水性分散溶媒中に分散させる。
【0040】
重縮合分散ステップ(S3)または重縮合粉砕ステップ(S3’)で用いられる疎水性分散溶媒はC2~C4のアルコ-ル類、C6~C12の芳香族類、C5~C9のアルキル類、或いはC7~C12の芳香族アルコ-ル類である。具体的には、例えば、エタノ-ル、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、ベンジルアルコ-ル、或いはフェネチルアルコ-ルである。
【0041】
<熟成ステップ(S4)>
形成した親水性エアロゲルのウェットゲルを特定の温度(例えば、35℃~80℃、更には40℃~50℃)下で熟成することで、親水性エアロゲルのウェットゲル構造が安定化する。
【0042】
<高温溶剤交換ステップ(S5)>
常圧高温(例えば、50℃~160℃)でウェットゲルの溶剤交換を行う。高温溶剤交換ステップ(S6)では親水性及び疎水性の溶剤間の混和作用を利用し、ウェットゲル内部の水分子または他の親水性分子と大量の疎水性分散溶媒とを混和共沸する。透明な性状または完全な透明状になるまで、ウェットゲル中の溶剤を高速に交換する。これにより、その後低密度で高孔隙率の親水性エアロゲル粒子が製造可能となる。
【0043】
<乾燥ステップ(S6)>
高温蒸留により前述の余剰の疎水性分散溶媒を除去するか、濾過機により前述の余剰の疎水性分散溶媒を濾過した後、60℃~160℃の常圧条件下でウェットゲルを高速乾燥し、高密度の親水性エアロゲル粒子を得る。その後、更に流動層乾燥機、恒温槽、ドラム式乾燥機、ブレンド乾燥機、スプレ-乾燥機、或いは真空乾燥機により、90℃~250℃でエアロゲル粒子の乾燥を行い、乾親水性エアロゲル粒子を得る。
【0044】
このようにして、粒径が数百nm~数十mmの大きさになる多孔性親水性エアロゲル粒子を製造する。また、本技術は親水性官能基が修飾されたエアロゲル粒子も製造可能である。そして、セメント、セメント塗料、接着剤、或いは漆類等の材料と混合することで様々な防火断熱製品に応用可能であり、エアロゲル粒子の用途は多い。特に、得られるエアロゲル粒子は高温耐性エアロゲル断熱板材やレンガ材の製造及び応用に適用可能である。
【0045】
<ブレンドステップ(S7)>
透明状のエアロゲル粒子を攪拌機により無機繊維と直接混合し、均一に分散した無機混合物を形成する。その後、エアロゲル粒子のような無機粘着剤を添加して、無機繊維と無機粘着剤との作用により粘着性エアロゲルの複合ゲル状物を形成する。次いで、水、粘着剤水溶液、分散剤水溶液、またはエアロゲル粉末を添加してエアロゲルの複合ゲル状物の粘度を調整することでエアロゲル複合ゲル材料を取得する。
【0046】
ブレンドステップ(S7)において用いられる無機粘着剤は、リン酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硼酸塩、金属酸化物よりなる群のうちの1種類または1種類以上である。具体的には、リン酸塩はリン酸ジルコニウムまたはリン酸-酸化銅であり、ケイ酸塩はケイ酸アルミニウム或いは水ガラスであり、金属酸化物は、銅、アルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、及びランタン系元素の金属酸化物である。
【0047】
図2及び図3は一般的なカメラを用いて親水性エアロゲル粒子の外観を観察したものである。図2は、ナノスケ-ルの親水性エアロゲル粒子のサイズが約50nm~200nmである親水性エアロゲル粒子を示す。図3はミリメ-トルスケ-ルの親水性エアロゲル粒子のサイズが約3mm~20mmであるものを示す。
【0048】
図4は走査型電子顕微鏡を用いて親水性エアロゲル粒子の微細構造を観察した写真である。その表面及び内部には大量の孔を有する。
【0049】
図5は製造した10.5cm×10.5cm×9.5cmの高温断熱エアロゲルレンガの外観写真である。写真中の重量計の表示より、重量は277.1gであることがわかる。計算により、高温断熱エアロゲルレンガの密度は0.265g/cmであることがわかり、優れた軽量化効果が得られることが確認された。
【0050】
図6は厚さ3cmの高温断熱エアロゲルレンガを1200℃の火炎で3時間加熱したときの背面温度を比較したグラフを示す。比較結果から、室温が25℃の場合、高温断熱エアロゲルレンガを1200℃で3時間加熱した後の背面温度が約175℃となり、本実施形態の製品が極めて優れた高温耐性及び断熱性質を有することが示される。
【0051】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0052】
(S1) 混合ステップ
(S2) 加水分解ステップ
(S3) 重縮合分散ステップ
(S3’) 重縮合粉砕ステップ
(S4) 熟成ステップ
(S5) 高温溶剤交換ステップ
(S6) 乾燥ステップ
(S7) ブレンドステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6