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特許7070872土地適性評価装置、土地適性評価方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】土地適性評価装置、土地適性評価方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20220511BHJP
【FI】
G06Q50/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020141652
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2021039753
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019156939
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519314722
【氏名又は名称】株式会社天地人
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】特許業務法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】百束 泰俊
(72)【発明者】
【氏名】高山 泰一
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 康人
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0181893(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0057461(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111028255(CN,A)
【文献】特開2013-51887(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111369152(CN,A)
【文献】特開2019-82937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土地の位置と気候とを関連付けて記憶する気候データベースと、土地の位置と地形とを関連付けて記憶する地形データベースと、のそれぞれに通信可能に接続された土地適性評価装置であって、
ユーザ操作に応じて特定の土地の位置データを取得する第1取得部と、
前記地形データベースから前記特定の土地の気候データ及び地形データを取得する第2取得部と、
農作物の成績を示すスコアと前記農作物の栽培地の気候条件及び地形条件とを教師データとして機械学習させた評価モデルを用いて、前記特定の土地の位置データから、前記農作物に対する前記特定の土地の適性を示す評価値を算出する評価部と、
前記評価値に応じた評価結果を出力する出力部と、
を含むことを特徴とする土地適性評価装置。
【請求項2】
前記第1取得部は、前記特定の土地の位置データとして、特定の領域に属する複数の土地の位置データを取得し、
前記第2取得部は、前記複数の土地のそれぞれに対する気候データ及び地形データを取得し、
前記評価部は、前記複数の土地のそれぞれについて前記評価値を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の土地適性評価装置。
【請求項3】
地図データを記憶する地図データベースとも通信可能に接続され、
前記地図データベースから前記特定の領域の地図データを取得する第3取得部を更に含み、
前記出力部は、前記評価結果を前記特定の領域の地図上に重ねて表示させること、
を特徴とする請求項2に記載の土地適性評価装置。
【請求項4】
土地ごとに利用状況を記憶する農地データベースとも通信可能に接続され、
前記農地データベースから前記特定の土地の利用状況を示す情報を取得する第4取得部を更に含み、
前記出力部は、利用されていない状態にある前記特定の土地について前記評価結果を出力すること、
を特徴とする請求項2又は3に記載の土地適性評価装置。
【請求項5】
前記評価部は、複数の農産物のそれぞれについて、前記評価モデルを用いて前記評価値を算出し、
前記出力部は、前記複数の農産物のうち、良好な評価結果に対応する1つ又は複数の農産物を選出すること、
を特徴とする請求項1に記載の土地適性評価装置。
【請求項6】
土地の位置と気候とを関連付けて記憶する気候データベースと、土地の位置と地形とを関連付けて記憶する地形データベースと、農作物の成績を示すスコアと前記農作物の栽培地の気候データ及び地形データとを関連付けて記憶する実績データベースと、のそれぞれに通信可能に接続された土地適性評価装置であって、
ユーザ操作に応じて特定の土地の位置データを取得する第1取得部と、
前記地形データベースから前記特定の土地の気候データ及び地形データを取得する第2取得部と、
前記実績データベースから前記スコア並びに前記栽培地の気候データ及び地形データを取得する第3取得部と、
前記スコアと前記栽培地の気候データ及び地形データとを教師データとして用いて、前記農作物に対する前記土地の適性を評価する評価モデルを生成するモデル生成部と、
前記評価モデルを用いて、前記特定の土地の位置データから、前記農作物に対する前記特定の土地の適性を示す評価値を算出する評価部と、
前記評価値に応じた評価結果を出力する出力部と、
を含むことを特徴とする土地適性評価装置。
【請求項7】
土地の位置と気候とを関連付けて記憶する気候データベースと、土地の位置と地形とを関連付けて記憶する地形データベースと、のそれぞれに通信可能に接続された土地適性評価装置に対して、
ユーザ操作に応じて特定の土地の位置データを取得し、
前記地形データベースから前記特定の土地の気候データ及び地形データを取得し、
農作物の成績を示すスコアと前記農作物の栽培地の気候条件及び地形条件とを教師データとして機械学習させた評価モデルを用いて、前記特定の土地の位置データから、前記農作物に対する前記特定の土地の適性を示す評価値を算出し、
前記評価値に応じた評価結果を出力する
ステップを実行させることを特徴とする土地適性評価方法。
【請求項8】
土地の位置と気候とを関連付けて記憶する気候データベースと、土地の位置と地形とを関連付けて記憶する地形データベースと、のそれぞれに通信可能に接続された土地適性評価装置に対して、
ユーザ操作に応じて特定の土地の位置データを取得し、
前記地形データベースから前記特定の土地の気候データ及び地形データを取得し、
農作物の成績を示すスコアと前記農作物の栽培地の気候条件及び地形条件とを教師データとして機械学習させた評価モデルを用いて、前記特定の土地の位置データから、前記農作物に対する前記特定の土地の適性を示す評価値を算出し、
前記評価値に応じた評価結果を出力する
ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物に対する土地の適性を評価するための土地適性評価装置、土地適性評価方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽エネルギーなどの自然エネルギーの取得量を基準とした不動産の評価システムが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-107791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、自然エネルギーの取得量は住宅や発電施設用の土地の評価基準としては適切であるとしても、農耕用の土地の評価基準としては適切ではない。つまり、不動産の利用形態に応じて適切な評価基準が用いられるべきである。
【0005】
そこで、本発明は、農作物に対する土地の適性を適切に評価するための土地適性評価装置、土地適性評価方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく、本発明の第1の態様は、土地の位置と気候とを関連付けて記憶する気候データベースと、土地の位置と地形とを関連付けて記憶する地形データベースと、のそれぞれに通信可能に接続された土地適性評価装置であって、ユーザ操作に応じて特定の土地の位置データを取得する第1取得部と、前記地形データベースから前記特定の土地の気候データ及び地形データを取得する第2取得部と、農作物の成績を示すスコアと前記農作物の栽培地の気候条件及び地形条件とを教師データとして機械学習させた評価モデルを用いて、前記特定の土地の位置データから、前記農作物に対する前記特定の土地の適性を示す評価値を算出する評価部と、前記評価値に応じた評価結果を出力する出力部と、を含むことを特徴とする土地適性評価装置を提供する。
【0007】
上記のような構成を有する本発明の土地適性評価装置では、前記第1取得部が、前記特定の土地の位置データとして、特定の領域に属する複数の土地の位置データを取得し、前記第2取得部が、前記複数の土地のそれぞれに対する気候データ及び地形データを取得し、前記評価部が、前記複数の土地のそれぞれについて前記評価値を算出することが好ましい。
【0008】
また、上記のような構成を有する本発明の土地適性評価装置は、地図データを記憶する地図データベースとも通信可能に接続され、前記地図データベースから前記特定の領域の地図データを取得する第3取得部を更に含み、前記出力部が、前記評価結果を前記特定の領域の地図上に重ねて表示させることが好ましい。
【0009】
また、上記のような構成を有する本発明の土地適性評価装置は、土地ごとに利用状況を記憶する農地データベースとも通信可能に接続され、前記農地データベースから前記特定の土地の利用状況を示す情報を取得する第4取得部を更に含み、前記出力部が、利用されていない状態にある前記特定の土地について前記評価結果を出力することが好ましい。
【0010】
また、上記のような構成を有する本発明の土地適性評価装置では、前記評価部が、複数の農産物のそれぞれについて、前記評価モデルを用いて前記評価値を算出し、前記出力部が、前記複数の農産物のうち、良好な評価結果に対応する1つ又は複数の農産物を選出することが好ましい。
【0011】
また、本発明の第2の態様は、土地の位置と気候とを関連付けて記憶する気候データベースと、土地の位置と地形とを関連付けて記憶する地形データベースと、農作物の成績を示すスコアと前記農作物の栽培地の気候データ及び地形データとを関連付けて記憶する実績データベースと、ユーザ端末と、のそれぞれに通信可能に接続された土地適性評価装置であって、ユーザ操作に応じて特定の土地の位置データを取得する第1取得部と、前記地形データベースから前記特定の土地の気候データ及び地形データを取得する第2取得部と、前記実績データベースから前記スコア並びに前記栽培地の気候データ及び地形データを取得する第3取得部と、前記スコアと前記栽培地の気候データ及び地形データとを教師データとして用いて、前記農作物に対する前記土地の適性を評価する評価モデルを生成するモデル生成部と、前記評価モデルを用いて、前記特定の土地の位置データから、前記農作物に対する前記特定の土地の適性を示す評価値を算出する評価部と、前記評価値に応じた評価結果を出力する出力部と、を含むことを特徴とする土地適性評価装置を提供する。
【0012】
また、本発明の第3の態様は、土地の位置と気候とを関連付けて記憶する気候データベースと、土地の位置と地形とを関連付けて記憶する地形データベースと、のそれぞれに通信可能に接続された土地適性評価装置に対して、ユーザ操作に応じて特定の土地の位置データを取得し、前記地形データベースから前記特定の土地の気候データ及び地形データを取得し、農作物の成績を示すスコアと前記農作物の栽培地の気候条件及び地形条件とを教師データとして機械学習させた評価モデルを用いて、前記特定の土地の位置データから、前記農作物に対する前記特定の土地の適性を示す評価値を算出し、前記評価値に応じた評価結果を出力するステップを実行させることを特徴とする土地適性評価方法を提供する。
【0013】
また、本発明の第4の態様は、土地の位置と気候とを関連付けて記憶する気候データベースと、土地の位置と地形とを関連付けて記憶する地形データベースと、のそれぞれに通信可能に接続された土地適性評価装置に対して、ユーザ操作に応じて特定の土地の位置データを取得し、前記地形データベースから前記特定の土地の気候データ及び地形データを取得し、農作物の成績を示すスコアと前記農作物の栽培地の気候条件及び地形条件とを教師データとして機械学習させた評価モデルを用いて、前記特定の土地の位置データから、前記農作物に対する前記特定の土地の適性を示す評価値を算出し、前記評価値に応じた評価結果を出力するステップを実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、農作物に対する土地の適性を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る土地適性評価システム1の概略図である。
図2】土地適性評価装置10及びユーザ端末30として使用されるコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】土地適性評価装置10のソフトウェア構成を示すブロック図である。
図4】評価結果の出力例を示す図である。
図5】評価モデルの学習手順を示すフローチャートである。
図6】土地の評価手順の一例を示すフローチャートである。
図7】土地の評価手順の他の例を示すフローチャートである。
図8】土地の評価手順の別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る土地適性評価システムを、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明はこれら図面に限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0017】
1.土地適性評価システムの概略
図1を参照して、土地適性評価システム1の概略を説明する。
土地適性評価システム1は、土地適性評価装置10、気候データベース(DB)21、地形データベース(DB)23及びユーザ端末30を含み、更に地図データベース(DB)25及び農地データベース(DB)27を含んでもよい。土地適性評価装置10は、気候データベース21、地形データベース22、ユーザ端末30及び農地データベース27のそれぞれと通信可能に接続されている。本実施形態では、気候データベース21、地形データベース23及び農地データベース27は、土地適性評価装置10の外部に配置されているが、これらデータベースの全部又は一部分は土地適性評価装置10内に組み込まれてもよい。
【0018】
土地適性評価装置10は、ユーザに、ある農作物を栽培するための適地を見つけるべく検索サービスを提供する1台又は複数台のコンピュータである。例えば、土地適性評価装置10は、作りたい農作物に応じた適地マップを作成することができる。あるいは、土地適性評価装置10は、複数の農作物の中から、特定の土地(例えば自己の所有地)での栽培に適した農作物を提示することができる。ここで、農産物とは、穀物、野菜、果実及び花を含み、中でも果実が好ましく、特に丘陵地又は山地で栽培される果実が好ましいが、本発明はこれらに限られるものではなく、追って述べるように、施設園芸で栽培される農作物にも適用可能である。
土地適性評価装置10の詳細については追って述べる。
【0019】
気候データベース21は、所定の時間間隔(例えば1日、1時間、30分など)ごとの気象の観測データを土地の位置(例えば緯度及び経度)と関連付けて記憶する。気候データベース21は、例えば気象機関のデータベースなどのオープンデータベースでもよい。気候データベース21は、気象の観測データを例えば1年分以上保有していることが望ましい。
【0020】
本実施形態では、気象として温度を採用しており、例えば、人工衛星40により観測された地表面の温度データが気候データベース21に記憶されているが、他の気象要素を採用してもよい。他の気象要素としては、例えば風速、雨量、積雪量、湿度、気圧、日射量が挙げられ、台風経路などの災害データを含んでいてもよい。また、気象を示す観測データとして、例えば、所定期間における最高値、最低値、平均値、観測値が閾値を超える(又は下回る)頻度、単位時間ごとの差を採用することができる。観測データの空間分解能は、適宜設定されてよいが、例えば1kmほどでもよい。
【0021】
地形データベース23は、地形の観測データを土地の位置と関連付けて記憶する。地形データベース23は、例えば、宇宙機関のデータベースなどのオープンデータベースでもよい。ここで、地形としては、例えば標高、斜面の向き、斜面の傾斜度合、標高差を採用することができ、更に地質データを地形データに加えてもよい。
【0022】
本実施形態では、地形として標高を採用しており、例えば人工衛星40により観測した標高データが地形データベース23に記憶されている。観測データの空間分解能は、適宜設定されてよいが、例えば30mほどでもよい。
【0023】
地図データベース25は、ある地域の地図データを記憶する、例えばオープンデータベースである。ある地域とは、例えば、国、州、県、市などであり、探索範囲に応じて適宜選択される。
【0024】
農地データベース27は、土地ごとに利用状況を記憶する、例えば公的機関のオープンデータベースである。ここで、土地の利用状況とは、遊休農地かどうか、所有者が農地の貸付又は売却を希望しているか、といった土地の状態を指す。
【0025】
ユーザ端末30は、ユーザが利用するコンピュータである。ユーザ端末30は、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォンのような各種コンピュータを含む。ここで、ユーザは、例えば、農業の経営規模の拡大又は新規参入を考えている法人又は個人、農地を所有している法人又は個人、あるいは、土地の仲介事業者を含む。
【0026】
ここで、図2を参照して、土地適性評価装置10及びユーザ端末30に用いられるコンピュータ100のハードウェア構成例を説明する。コンピュータ100は、CPU101、RAM103、ROM105、インタフェース(I/F)107、入力装置109及び出力装置111を備える。ROM105は、各種のデータやプログラムを記憶する媒体であり、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。インタフェース107は、通信ネットワーク70に接続するための通信インタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置109は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置111は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。
【0027】
2.土地適性評価装置の詳細
図3を参照して、土地適性評価装置10を詳細に説明する。土地適性評価装置10は、取得部11、モデル生成部13、評価部15、出力部17及び記憶部19を含む。
【0028】
取得部11は、ユーザ操作に応じて、特定の土地50の位置データを取得する(第1取得部)。例えば、取得部11は、特定の土地50の位置データとして、特定の領域Sに属する複数の土地の位置データを取得してもよい(図4参照)。ここで、土地の位置は、緯度及び経度で与えられてもよいし、地番で与えられてもよい。なお、領域Sは、1つの閉じた範囲でもよいし、分離した複数の範囲を含んでいてもよい。
【0029】
取得部11は、地形データベース23から特定の土地50の気候データ及び地形データを取得する(第2取得部)。例えば、取得部11は、領域Sに属する複数の土地のそれぞれに対する気候データ及び地形データを取得することができる。
【0030】
また、取得部11は、地図データベース25から特定の土地50又は特定の領域Sをカバーする地図データを取得することができる(第3取得部)。
更に、取得部11は、農地データベース27から特定の土地50の利用状況を示す情報を取得することができる(第4取得部)。
【0031】
モデル生成部13は、農作物の成績を示すスコアと、その農作物の栽培地の気候条件及び地形条件と、を教師データとして用いて、農作物に対する土地の適性を評価するための評価モデルを生成する。つまり、モデル生成部13は、機械学習装置として機能し、農作物の成績を示すスコアとその農作物の栽培地の気候条件及び地形条件との関係を学習して学習済みモデルを生成する。
【0032】
ここで、教師データは、農作物の栽培実績エリアにおいて収集された、当該農作物の栽培実績を示すデータ(以下、実績データという。)である。実績データは、環境条件とスコアからなる。環境条件は、温度、降水量、日射量などの気象条件、及び、斜面の傾き・方向などの地形条件を含む。つまり、本実施形態では、少なくとも2種類の環境条件を使用するものであり、その他に、台風経路データ、災害データなどのリスク要因や、農作物に対する地質条件などを追加で使用してもよい(なお、台風経路データ、災害データは気象条件として扱ってもよいし、地質条件は地形条件として扱ってもよい)。また、スコアは、糖度などのおいしさ、収量、歩留まり率、手入れのしやすさといった農作物の成績を含む。また、スコアは、測定機器により機械的に付与されてもよいし、人手により付与されてもよい。
【0033】
そして、評価モデルは、複数の環境条件とスコアとの間の相関式であり、複数の環境条件のそれぞれに対する重み付けを調整することで(パラメータ最適化)、好適な評価モデルが得られる。
【0034】
モデル生成部13は、パラメータ最適化のために、例えば、回帰分析、ニューラルネットワークなどの種々の機械学習の手法を利用することができる。また、モデル生成部13は、複数の農作物のそれぞれについて、教師データから評価モデルを得ることができる。
【0035】
評価部15は、上述した評価モデルを用いて、特定の土地50の位置データから、農作物に対する特定の土地50の適性を示す評価値を算出する。例えば、評価部15は、特定の領域Sに属する複数の土地のそれぞれについて評価値を算出してもよい。あるいは、評価部15は、複数の農産物のそれぞれについて、対応する評価モデルを用いて特定の土地50の評価値を算出することができる。なお、評価部15は、特定の土地50の位置データを対応する気候データ及び地形データに変換し、変換された気候データ及び地形データを評価モデルに入力することとする。
【0036】
出力部17は、評価値に応じた評価結果を出力する。具体的には、出力部17は、評価値を対応する土地とともに表示させてもよいし、評価値に応じて土地をランク付けして表示させてもよいし(図4参照)、良好な評価値を持つ土地を選出して表示させてもよい。出力部17は、評価結果とともに、収量予測、環境を改善するための資材の選択、当該資材の使用方法などを提示してもよい。
【0037】
また、出力部17は、評価結果を、特定の領域Sをカバーする地図上に重ねて表示させることができ、その際、評価ランクに応じて地図を塗り分けてもよい。これにより、土地のポテンシャルを格付けすることができる。
【0038】
また、出力部17は、農地データベース27を参照し、利用されていない状態にある特定の土地50について評価結果を出力することとしてもよい。これにより、ユーザは、利用されていない適地を容易に見つけることができ、利用されていない土地の利用が促進される。
【0039】
あるいは、出力部は、複数の農産物のうち、良好な評価結果に対応する1つ又は複数の農産物を選出することとしてもよい。これにより、その土地の所有者は、自ら農作物の栽培を開始し、又は、他社にその土地を売却又は賃借することができるから、利用されていない土地の有効活用を期待できる。
【0040】
記憶部19は、実績データ、気候データ、地形データのような各種データを記憶するとともに、機械学習の実行ソフトウェア、評価モデルのような各種ソフトウェアを記憶している。
【0041】
3.土地適性評価装置の動作
図5図8を参照して土地適性評価装置10の動作、つまり土地適性評価方法を説明する。
【0042】
3-1.動作例1
図6を参照して、土地適性評価装置10の動作例1を説明する。動作例1は、典型的には、特定の農産物に適した土地を複数の候補地から選出するのに好適である。
【0043】
ステップS21において、取得部11は、ユーザ端末30からの指示などのユーザ操作に応じて、特定の土地50の位置データを取得する。ユーザが特定の領域Sを指定した場合には、取得部11は、領域Sに属する複数の土地のそれぞれについて位置データを取得する。
【0044】
ステップS22において、取得部11は、記憶部10又は気候データベース21及び地形データベース23から、取得した位置データに対応する気候データ及び地形データを取得する。領域Sに属する複数の土地のそれぞれについて位置データを取得した場合には、取得部11は、複数の土地のそれぞれに対応する気候データ及び地形データを取得する。このとき、取得部11は、地図データベース25から、土地50又は領域Sに対応する地図データを取得してもよい。
【0045】
ステップS23において、評価部15は、取得した気候データ及び地形データを評価モデル(学習済みモデル)に適用し、評価値を算出する。取得した気候データ及び地形データが複数の土地に対応する場合には、評価部15は、土地ごとに、対応する気候データ及び地形データを評価モデルに適用して評価値を算出する。ここで、評価モデルは、ステップS23において生成されてもよいし、このステップとは別に予め生成されてもよいが、生成手順については追って述べる。
【0046】
ステップS24において、出力部17は、例えばユーザ端末30に表示させるべく、評価結果を出力する。出力される評価結果は、算出された評価値でもよいし、例えば図4のような、評価値に応じて付与されたランク(例えば「適地」から「不適」までの5段階に対応するランクA~E)でもよい。
【0047】
あるいは、出力部17は、評価結果を特定の領域Sの地図上に重ねて表示させてもよい。例えば、出力部17は、土地のランクに応じて地図を塗り分けてもよい。
【0048】
以上により、一連の手順が終了する。
したがって、新規参入・事業拡大を目指すユーザは、農作物の栽培に適切な土地を探すことができる。例えば、ユーザは、栽培実績のない土地を定量的に評価できるとともに、土地のポテンシャルを格付けすることができる。また、ユーザは、評価結果を、提携農家探しやフランチャイズ募集のために役立てることができる。
【0049】
3-2.評価モデルの生成
ここで、図5を参照して評価モデルの生成手順について述べる。評価モデルの生成は、土地適性評価装置10において実行されてもよいし、外部コンピュータにより実行されてもよい。また、複数の農産物のそれぞれについて評価モデルを生成する場合には、農産物ごとに下記の手順が実行される。
【0050】
ステップS11において、取得部11は、記憶部19又は外部コンピュータから実績データを取得する。ここで、実績データは、農作物の成績を示すスコアと、その農作物の栽培地の気候条件及び地形条件と、を含む学習用データセットである。
【0051】
ステップS12において、モデル生成部13は、評価モデルを生成する。ここで、評価モデルは、農作物のスコアと気候条件及び地形条件との間の相関式である。
【0052】
ステップS13において、モデル生成部13は、実績データに基づいて評価モデルのパラメータを調整する。パラメータの調整は、例えば回帰分析、ニューラルネットワークなどの機械学習の手法により実行されてよい。
【0053】
ステップS14において、モデル生成部13は、学習済みの評価モデルを記憶部19に保存し、評価モデルの生成手順が終了する。
【0054】
3-3.動作例2
図7を参照して、土地適性評価装置10の動作例2を説明する。動作例2は、典型的には、特定の土地50に適した1種又は複数種類の農作物を、複数種類の候補から選出するのに好適である。
【0055】
具体的には、ステップS31において、取得部11は、ユーザ操作に応じて特定の土地50の位置データを取得する。次いで、ステップS32において、取得部11は、特定の土地50の気候データ及び地形データを取得する。これらステップは、先に述べたステップS21,S22に対応する。
【0056】
そして、ステップS33において、取得部11は、農地データベース27から、特定の土地50の利用状況を示す情報を取得する。なお、このステップは、ステップS35の前に行われればよい。
【0057】
そして、ステップS34において、評価部15は、気候データ及び地形データを評価モデルに適用し、土地50に対する評価値を算出する。このステップは、前述したステップS23に対応する。
【0058】
ステップS35において、出力部17は、農地データベース27から取得した土地の利用状況を参照して、利用されていない土地の中から、農作物の栽培に好適な土地を選出する。なお、このステップは評価部15において実行されてもよい。
【0059】
そして、ステップS36において、出力部17は、評価結果を出力し、一連の手順が終了する。したがって、ユーザは、遊休農地・休耕地などの見落とされていた価値に気付くこともできる。
【0060】
3-4.動作例3
図8を参照して、土地適性評価装置10の動作例3を説明する。動作例3は、典型的には、複数種類の栽培候補の中から、特定の土地50に適した1種又は複数種類の農作物を選出するのに好適である。
【0061】
具体的には、ステップS41において、取得部11は、ユーザ操作に応じて特定の土地50の位置データを取得する。次いで、取得部11は、ステップS42において、特定の土地50の気候データ及び地形データを取得する。
【0062】
そして、ステップS43において、評価部15は、複数の農産物のそれぞれについて、取得した気候データ及び地形データを評価モデルに適用し、評価値を算出する。
【0063】
ステップS44において、出力部17は、評価値に基づいて、特定の土地50に好適な農作物を選定する。例えば、出力部17は、複数の農産物をランク付けし、高順位の農作物を表示してもよいし、高ランク(例えばAランク)に属する農作物を表示してもよい。
【0064】
これにより、一連の手順が終了する。したがって、土地の所有者又は仲介業者であるユーザは、自己又は依頼者の土地の隠れた価値に気付くことができる。
【0065】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それらも本発明に含まれる。
【0066】
例えば、土地適性評価装置10とユーザ端末30は別個の装置である必要はなく、ユーザ端末30が土地適性評価装置10としての機能を備えてもよい。このとき、出力部17は、評価結果を自己の表示装置に表示させる。
【0067】
また、土地適性評価装置10において、評価モデル生成部13(及び付属する機能)と評価部15(及び付属する機能)とは別個のコンピュータとして構成されてもよい。
【0068】
本実施形態では屋外で栽培する農作物を想定したが、土地適性評価装置10は、施設園芸にて栽培(ハウス栽培)が行われる農作物(例えばアスパラガス、トマトなど)のために(又はハウス等の施設の設営のために)、適切な土地の選定及び候補作物を提示することができる。
【0069】
この場合、土地適性評価装置10は、気象の観測データとして、日射量データを、単独で又は降水量データ、温度データとともに、使用することができる。土地適性評価装置10は、日射量データを気象機関のデータベースから取得してもよいし、気象衛星において撮影された雲画像に基づいて算出してもよい。その他の入力データ及び土地適性評価装置10の動作は、本実施形態で述べた内容に準じればよい。
【0070】
そして、土地適性評価装置10は、評価結果として、適切な土地又は農作物の提示のほか、収量予測、ハウス内環境(保温、遮光、遮熱、保湿など)を改善する資材の選択、光合成促進剤などの適切な利用(時期、量など)を提案してもよい。これにより、土地適性評価装置10は、ハウス栽培やハウス設営に好適な土地又はある土地に適した作物の提示に加えて、栽培におけるアドバイスを提示することもできる。
【符号の説明】
【0071】
1・・・土地適性評価システム、
10・・・土地適性評価装置、
11・・・取得部、
13・・・モデル生成部、
15・・・評価部、
17・・・出力部、
21・・・気候データベース(DB)、
23・・・地形データベース(DB)、
25・・・地図データベース(DB)、
30・・・ユーザ端末、
40・・・人工衛星、
50・・・土地。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8