(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の合成
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20220511BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220511BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220511BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20220511BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220511BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 A
H01M4/36 E
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/58
(21)【出願番号】P 2021504472
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 CN2019118250
(87)【国際公開番号】W WO2020125282
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】201811575295.X
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521032302
【氏名又は名称】浙江伏打科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG FOLTA TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 401, Building 3, No. 316 Jianghong South Road, Binjiang District Hangzhou, Zhejiang 310051 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】何婉芳
(72)【発明者】
【氏名】王衛涛
(72)【発明者】
【氏名】楊頡
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156867(JP,A)
【文献】特開2017-123351(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073562(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料、リチウムイオン導体、有機高分子材料、及び有機溶媒を混合して均一に撹拌し、混合スラリーAを得るステップS1と、
混合スラリーAを造粒して乾燥させ、固体粒子Mを得るステップS2と、
固体粒子Mを、不活性雰囲気において高温炭化処理し、炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料を得るステップS3とを含む、ことを特徴とする炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項2】
前記炭素材料は黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボンから選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項3】
前記リチウムイオン導体は金属イオン化合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項4】
前記金属イオン化合物は、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Au、Ag、Zn、Cd、Cr、Cd、Hg、Ge、Pb、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、
Ptの金属以外の金属に対応するイオン化合物である、ことを特徴とする請求項3に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項5】
前記リチウムイオン導体は、リチウムイオン伝導性の金属酸化物、金属複合酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属フッ化物、金属炭化物、金属リン酸塩、金属セレン化物、金属テルル(Te)化物、Li
2CO
3、Li
2TiO
3、Li
4Ti
5O
12、Li
2ZrO
3、LiVO
3、Li
3VO
4、LiNbO
3、Li
3NbO
4、Li
3Ln
3M
2O
12(M=Te、W;Ln=Y、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)から選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項6】
前記金属窒化物は、Li
3N、Li
3N-LiCl、Li
9N
2Cl、Li
3AlN
2、LiSi
2N
3、Li
0.85Ca
0.075Si
2Nから選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項5に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項7】
前記金属リン酸塩は、Li
3PO
4、LiMPO
4(MはMg
2+、Ca
2+、Sr
2+、Ba
2+のうちの少なくとも1種である)、LiM
2(PO
4)
3(M=Ge、Ti、Hf)、及びLi
1+xM
xTi
2-x(PO
4)
3(M=Al、Sc、Y、La)から選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項6に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS1では、リチウムイオン導体と前記炭素材料との重量比が1:2~1:100
である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項9】
前記ステップS1では、有機高分子材料は、炭化により炭素繊維に転化可能な有機高分子材料である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項10】
前記ステップS1では、有機高分子材料は、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、アスファルトから選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項11】
前記ステップS1では、溶媒を除く材料の全重量に対して、有機高分子材料の重量は1%~30%
である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項12】
前記ステップS1では、有機溶媒は
有機高分子材料を溶解可能な液体物質から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項13】
前記ステップS1では、有機溶媒は
、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)から選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項14】
前記ステップS1では、有機溶媒
は、メタノール、エタノール、プロパノールから選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項15】
前記ステップS1では、有機溶媒
は、ガソリン、ディーゼルオイルから選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項16】
前記ステップS3では、材料の炭化処理温度は400~1500℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【請求項17】
前記ステップS3では、材料の炭化処理時間は1~50hである、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の負極材料として使用される、炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池技術が電気自動車業界、航空業界、電子機器などの分野に広く使用されるに伴い、リチウムイオン電池の性能についてもさらなる高要求が求められ、電極材料はリチウムイオン電池の性能向上に対して重要な要素である。負極材料に関しては、現在、市販されているリチウムイオン電池の負極材料のほとんどは黒鉛であり、黒鉛は、リチウムの理論挿入容量が372mAh/gであり、結晶が完全であり高配向性を有するが、リチウムイオンの挿入・脱離過程において、10%程度の体積膨張・収縮が生じて、その層状構造がサイクル中に破壊されやすい。また、サイクル中に、黒鉛層間への電解質溶媒の同時インター カレーションにより、ガスや体積膨張が発生し、黒鉛シートが剥離して、活物質の不可逆的な損失及び固体電解質界面膜(SEI膜)の持続的な破壊と再生を引き起こし、リチウムイオンが消費されてしまい、その結果、電池のサイクル寿命の短縮を引き起こす。金属イオン化合物は、リチウムイオン伝導性に優れる反面、導電性が悪という欠点を抱えており、そして、リチウムイオンの挿入・脱離に伴う体積変化が大きく、このため、その電気化学的性能、サイクル安定性、レート性が好適であると言えない。
【0003】
したがって、炭素材料と金属イオン化合物であるリチウムイオン導体とを複合して、高容量、優れたレート特性、長い寿命を有する新規なリチウムイオン電池の負極材料を製造できると、リチウムイオン電池の性能向上に有利となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題を解決するために、本発明は、現場で合成する炭素繊維構造を有する高強度炭素網目構造を用いてリチウムイオン導体と炭素負極材料を結合して、高電力密度を持つリチウム電池負極材料を製造する、炭素繊維構造を有する炭素結合「リチウムイオン導体-炭素」複合負極材料及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
炭素材料、リチウムイオン導体、有機高分子材料、及び有機溶媒(有機高分子材料を溶解可能)を混合して均一に撹拌し、混合スラリーAを得るステップS1と、
混合スラリーAを造粒して乾燥させ、固体粒子Mを得るステップS2と、
固体粒子Mを、不活性雰囲気において高温炭化処理し、炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料を得るステップS3とを含む炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法を提供する。
【0006】
好ましくは、ステップS1では、前記炭素材料は黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボンから選ばれる少なくとも1種である。
【0007】
好ましくは、ステップS1では、前記リチウムイオン導体は金属イオン化合物である。
【0008】
好ましくは、ステップS1では、前記リチウムイオン導体に含まれる金属イオンは、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Au、Ag、Zn、Cd、Cr、Cd、Hg、Ge、Pb、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptなどの金属以外の金属に対応するイオンである。
【0009】
好ましくは、ステップS1では、前記リチウムイオン導体は、リチウムイオン伝導性の金属酸化物、金属複合酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属フッ化物、金属炭化物、金属セレン化物、金属テルル(Te)化物、金属リン酸塩、Li2CO3、Li2TiO3、Li4Ti5O12、Li2ZrO3、LiVO3、Li3VO4、LiNbO3、Li3NbO4、Li3Ln3M2O12(M=Te、W;Ln=Y、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)から選ばれる少なくとも1種である。
【0010】
好ましくは、ステップS1では、前記リチウムイオン導体のうち、金属窒化物は、Li3N、Li3N-LiCl、Li9N2Cl、Li3AlN2、LiSi2N3、Li0.85Ca0.075Si2Nから選ばれる少なくとも1種である。
【0011】
好ましくは、ステップS1では、前記リチウムイオン導体のうち、金属リン酸塩は、Li3PO4、LiMPO4(MはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+のうちの少なくとも1種である)、LiM2(PO4)3(M=Ge、Ti、Hf)、及びLi1+xMxTi2-x(PO4)3(M=Al、Sc、Y、La)から選ばれる少なくとも1種である。
【0012】
好ましくは、ステップS1では、前記リチウムイオン導体と前記炭素材料との重量比が1:2~1:100、好ましくは1:7~1:9である。
【0013】
好ましくは、ステップS1では、前記有機高分子材料は、高温炭化により炭素繊維に転化できるような有機高分子材料から選ばれる。
【0014】
好ましくは、ステップS1では、前記有機高分子材料は、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、アスファルトから選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
好ましくは、ステップS1では、溶媒を除く材料の全重量に対して、前記有機高分子材料の重量は1%~30%、好ましくは1.5%~10%である。
【0016】
好ましくは、ステップS1では、前記有機溶媒は、ターゲット高分子材料を溶解可能な液体有機物であり、具体的には、ポリアクリロニトリルを溶解可能な有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)から選ばれる少なくとも1種であるが、これらの溶媒に制限されず、フェノール樹脂を溶解可能な有機溶媒はメタノール、エタノール、プロパノールから選ばれる少なくとも1種であるが、これらの溶媒に制限されず、アスファルトを溶解可能な有機溶媒は、液体炭化水素類溶媒、たとえばガソリン、ディーゼルオイルから選ばれる少なくとも1種である。
【0017】
好ましくは、ステップS3では、前記炭化処理温度は400~1500℃である。
【0018】
好ましくは、ステップS3では、前記炭化処理時間は1~50hである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0020】
本発明の方法で製造された炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料は、高強度の三次元炭素繊維網目構造を有し、炭素負極活性材料とリチウムイオン導体材料の結晶が炭素繊維ウェブを介して同一粒子に結合されており、以下の利点を有する。
(1)本材料は、粒子サイズの同じ純粋な黒鉛炭素負極材料よりも、優れたリチウムイオン伝導性を有する。
(2)本発明の方法で製造された炭素繊維結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料は、粒子の内部がリチウムイオン導体小結晶と炭素負極活性材料の微粒子を炭素繊維で結合したものであり、粒子の内部の小結晶と炭素微粒子との間の隙間により電解質溶液が十分に入り込んで潤湿させることができ、それによって、炭素微粒子内のリチウムイオンの拡散距離を短縮させ、材料の高電力充放電電流の密度を向上させる。
(3)リチウムイオン導体小結晶と炭素微粒子とが導電性の炭素繊維を通じて結合されるので、この材料は優れた導電性も有する。
(4)電池の充放電時の材料の体積変化に追従することができ、つまり、粒子の内部のリチウムイオン導体小結晶と炭素微粒子との間の隙間により体積変化を緩衝できる。
(5)炭素繊維は極めて高い引張強さ及び繊維柔軟性の2つの特性を有し、リチウムイオン導体と炭素微粒子とが結合されると、充放電過程に生じる材料の体積変化、チャルキングや凝集をある程度緩衝又は遅延させ、また、結合された炭素微粒子が長期間の充放電サイクルの条件で剥離して多層黒鉛トなることを効果的に防止し、電極のサイクル安定性を向上させる。
(6)リチウムイオン導体-炭素微粒子を縛ったまま三次元炭素繊維ウェブ内に包むことで、リチウムイオン導体と電解質との界面でのリチウムイオンや電荷の輸送により有利であり、さらに材料のレート特性向上させる。
(7)一部のリチウムイオン導体は、炭素負極材料と炭素繊維ウェブが良好な導電性を提供する条件で、大きな容量を提供するため、容量が炭素負極材料単独での容量よりも大きい複合材料もある。
【0021】
本材料の生産プロセスは、手順が短く、コストが低く、製造された混合粒子を高温処理するときに、高分子材料が炭化されて炭素繊維構造を有する三次元炭素繊維ウェブとなり、リチウムイオン導体と炭素微粒子を同一粒子に縛り、このように、材料のワンステップ生産が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1の純粋なメソフェーズカーボンマイクロスフェア材料を負極材料とした場合のレートサイクル図である。電圧範囲0.01V~2.00Vでは、テキストはそれぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度で行われる。
【
図2】実施例2で製造された、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合ZrO
2/MgO-炭素複合負極材料のレートサイクル図である。電圧範囲0.01V~2.00Vでは、テストは、それぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度で行われる。
【
図3】実施例2で製造された、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合ZrO
2/MgO-炭素複合負極材料のSEM像である。電圧範囲0.01V~2.00Vでは、テストは、それぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度で行われる。
【
図4】実施例3で製造された、ポリアクリロニトリルを用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合ZrO
2/CaO-炭素複合負極材料のレートサイクル図である。電圧範囲0.01V~2.00Vでは、テストは、それぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度で行われる。
【
図5】実施例4で製造された、ポリアクリロニトリルを用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合TiO
2/MgO/CaO-炭素複合負極材料のレートサイクル図である。電圧範囲0.01V~2.00Vでは、テストは、それぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度で行われる。
【
図6】実施例5で製造された、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合TiO
2/Li
2O-炭素複合負極材料のレートサイクル図である。電圧範囲0.01V~2.00Vでは、テストは、それぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度で行われる。
【
図7】実施例6で製造された、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合ZrO
2/Y
2O
3-炭素複合負極材料のレートサイクル図である。電圧範囲0.01V~2.00Vでは、テストは、それぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度で行われる。
【
図8】実施例7で製造された、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合TiO
2/ La
2O
3-炭素複合負極材料のレートサイクル図である。電圧範囲0.01V~2.00Vでは、テストは、それぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度で行われる。
【
図9】実施例8で製造された、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合Li
3PO
4-炭素複合負極材料のレートサイクル図である。電圧範囲0.01V~2.00Vでは、テストは、それぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度で行われる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、特定実施例及び図面を参照しながら、本発明の技術案である炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料の製造方法をさらに詳しく説明する。
【0024】
実施例1
比較として、本実施例では、純粋なメソフェーズカーボンマイクロスフェア材料を用いて半電池を製造してテストした。
電池の作製
メソフェーズカーボンマイクロスフェア(N
7)0.8000gを秤量し、N
7:導電性カーボンブラック:PVDFの質量比が8:1:1となるように、導電性カーボンブラック0.1003g及び3.0%のPVDFを含有するNMP溶液3.3333gを加え、30minボールミリングしてスラリーを得て、スラリーを銅箔上に塗布して厚さ90μmの極板とし、120℃、窒素雰囲気のオーブンにて3hベークし、極板を用いてグローブボックスにおいて半電池を製造し、まずディスクを秤量して正極ケース内にセットし、セパレータ、電解液60μL、金属リチウムシート、ガスケット、弾性シート及び負極ケースを順次入れて、油圧プレスでプレスしてボタン型電池としてパッケージした。
電池のテスト
上記のボタン型電池について、電圧範囲0.01V~2.00Vでは、それぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度でテストを行い、各電流密度での目付のデータを測定し、明細書の
図1に記載の結果を得た。
明細書の
図1を分析した結果、この実施例1で製造された純粋なメソフェーズカーボンマイクロスフェア材料の測定結果から明らかなように、電流密度が上昇すると、材料の目付が大幅度に低下し、300mA/gでは容量が150mAh/g、400mA/gでは容量が90mAh/gであった。
【0025】
実施例2
本実施例は、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合ZrO
2/MgO-炭素複合負極材料の製造方法であり、この負極材料を用いてボタン型電池を作製して測定した。
材料の作製
(一)無水エタノール1324.00gを秤量し、金属酸化物/炭素の質量比が1:9となるように、ZrO
2 25.91g、MgO 16.94g及びメソフェーズカーボンマイクロスフェア(平均粒度20μm)385.65gを加え、次に、20wt%のフェノール樹脂を含有するエタノール溶液64.27gを加え、フェノール樹脂がZrO
2、MgO、炭素含有量の全量の3%を占めるようにし、ボールミリングして混合した後、取り出して混合スラリーを得た。
(二)100℃で噴霧乾燥させ、固体粉末を得た。
(三)上記の固体粉末5.0012gを管状炉に取り、N
2、800℃で5h焼成し、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合ZrO
2/MgO-炭素複合負極材料を得た。
電池の作製
上記の複合負極材料、導電性カーボンブラック、PVDFを94:3:3の質量比で秤量し、固形分が24%となるようにNMPを加え、真空撹拌機において20min撹拌した後、120μmの塗布厚度で銅箔の表面に塗布し、90℃の送風乾燥オーブンで30min乾燥させ、ベークした後、ロールプレスして切断し、次に、真空乾燥箱に入れて90℃で12hベークした。グローブボックスにて半電池を製造し、まずディスクを秤量して正極ケース内にセットし、セパレータ、電解液60μL、金属リチウムシート、ガスケット、弾性シート及び負極ケースを順次入れて、油圧プレスにてプレスしてボタン型電池としてパッケージした。
電池のテスト
上記のボタン型電池について、定電流充放電を33mA/gで1サイクル行い、次に、それぞれ100mA/g、200mA/g、300mA/g、400mA/g、500mA/g、600mA/g、700mA/g、800mA/g、900mA/g、1000mA/gの電流密度で10サイクル行い、最後に、100mA/gの電流密度で10サイクル行い、明細書の
図2の結果を得た。
明細書の
図2から分かるように、大きな電流密度でも、この電池材料は、純粋なメソフェーズカーボン材料よりも大きい容量(例1)を維持し、そして、優れた安定性を有した。明細書の
図3のこの負極材料のSEM画像から分かるように、リチウムイオン導体である金属酸化物小結晶(ZrO
2/MgO)及び炭素微粒子が均一に分散しており、粒度が小さく、縛り作用を果たす炭素繊維が均一に分布しており、粒子内部及び粒子間に存在する隙間により電解質溶液が十分に入り込んで潤湿させることができ、炭素結晶でのリチウムイオンの拡散距離を短縮させ、粒子全体の安定性を確保した。
【0026】
実施例3
本実施例は、ポリアクリロニトリルを用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合ZrO
2/CaO-炭素複合負極材料の製造方法であり、この負極材料を用いてボタン型電池を作製して測定した。
材料の作製
(一)水100.00gを秤量し、Zr:Caのモル比が1:2となるようにZrO
2 21.54g及びCaCO
3 20.01gを加え、PEGがZrO
2とCaCO
3の全量の30%を占めるようにポリビニルアルコール(PEG)12.52gを加え、ボールミルにて250r/minで10hボールミリングし、取り出して、水120.0mLを加えて洗浄し、120℃で噴霧乾燥させ、白色粉末を得た。白色粉末25.00gを空気雰囲気の管状炉に入れて1000℃で7h焼成し、焼成後のサンプルを粉砕して80メッシュの篩にかけた。
(二)上記の焼成後のサンプル6.96gを秤量し、無機物/炭素の質量比が2:8となるようにNMP 10.0mL及び炭素(N7)27.84gを加え、次に、ポリアクリロニトリルが無機物、炭素の前含有量の5%を占めるように5wt.%のポリアクリロニトリルNMP溶液34.8gを加え、最後に、NMP 20.0mLを加えて、ボールミリングして混合パルプを得た。
(三)混合パルプを噴霧乾燥器にて150℃で乾燥させ、固体粉末を得た。
(四)固体粉末を管状炉に入れて、N
2雰囲気、1000℃で5h焼成し、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合ZrO
2/CaO-炭素複合負極材料を得た。
本実施例では、電池の作製及び電池のテストは、実施例2と同じであり、
図4に示す結果のように、材料は、優れた高電流密度を有し、大電流密度では高容量を示した。
【0027】
実施例4
本実施例は、ポリアクリロニトリルを用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合TiO
2/MgO/CaO-炭素複合負極材料の製造方法であり、この負極材料を用いてボタン型電池を作製して測定した。
材料の作製
(一)水100.00gを秤量し、PEGがTiO
2、MgO、CaOの全量の30%を占めるように、TiO
2 15.92g、MgO 10.47g、CaO 5.642g、PEG 9.61gを加え、ボールミリングした後、120℃で噴霧乾燥させ、白色粉末を得た。白色粉末25.07gを空気雰囲気の管状炉に入れて1350℃で7h焼成し、焼成後のサンプルを粉砕して80メッシュの篩にかけた。
(二)焼成後の上記のサンプル6.78gを秤量し、NMP 10.0mLを加えて、ボールミリングした後、無機物/炭素の質量比が3.5:6.5となるように炭素(N7)12.59gを加え、次に、ポリアクリロニトリルが無機物、炭素の全含有量の5%を占めるように5wt.%のポリアクリロニトリルNMP溶液30.99gを加え、最後に、NMP 30.0mLを加えて、ボールミリングして混合スラリーを得た。
(三)混合スラリーを噴霧乾燥させ、固体粉末を得た。
(四)上記の固体粉末を管状炉に入れて、N
2雰囲気、900℃で5h焼成し、ポリアクリロニトリルを用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合TiO
2/MgO/CaO-炭素複合負極材料を得た。
本実施例では、電池の作製及び電池のテストは、実施例2と同じであり、
図5に示す結果のように、材料は、優れた高電流密度を有し、大電流密度では高容量を示した。
【0028】
実施例5
本実施例は、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合TiO
2/Li
2O-炭素複合負極材料の製造方法であり、この負極材料を用いてボタン型電池を作製して測定した。
材料の作製
(一)2:1のモル比でLiOH・H
2O 2.0498gとTiO
2 1.9509gをそれぞれ秤量し、次に、板状黒鉛(HC-7)6.0040g、5wt.%のフェノール樹脂のエタノール溶液30.99g、及びエタノール40.0mlをボールミリングタンクに秤量し、180r/minで6hボールミリングした後、取り出して、混合スラリーを得た。
(二)混合スラリーを噴霧乾燥させ、固体粉末を得た。
(三)上記の固体粉末を高温管状炉に入れて、アルゴンガス雰囲気、850℃で4h保温し、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合TiO
2/Li
2O-炭素複合負極材料を得た。
本実施例では、電池の作製及び電池のテストは、実施例2と同じであり、
図6に示す結果のように、材料は、優れた高電流密度を有し、大電流密度では高容量を示した。
【0029】
実施例6
本実施例は、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合ZrO
2/Y
2O
3-炭素複合負極材料の製造方法であり、負極材料を用いてボタン型電池を作製して測定した。
材料の作製
(一)無水エタノール1310.90g、ZrO
2 42.8559g、Y
2O
3 1.2856gを秤量して5min撹拌し、サンドミルにて2500r/minの回転数で15minサンドミーリングし、次に、炭素(FSN)397.22g、20wt.%のフェノール樹脂無水エタノール溶液66.25gを加え、2500r/minで10minサンドミーリングし、取り出して、混合スラリーを得た。
(二)混合スラリーを100℃で噴霧乾燥させ、固体粉末を得た。
(三)上記の固体粉末を高温管状炉に入れて、N
2雰囲気、800℃で5h焼成し、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合ZrO
2/Y
2O
3-炭素複合負極材料を得た。
本実施例では、電池の作製及び電池のテストは、実施例2と同じであり、
図7に示す結果のように、材料は、優れた高電流密度を有し、大電流密度では高容量を示した。
【0030】
実施例7
本実施例は、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合TiO
2/La
2O
3-炭素複合負極材料の製造方法であり、負極材料を用いてボタン型電池を作製して測定した。
材料の作製
(一)無水エタノール1335.06g、TiO
2 42.8556g、La
2O
3 2.1436gを秤量し、5min撹拌し、サンドミルにて2500r/minで15minサンドミーリングし、次に、炭素(FSN)404.96g及び20wt.%のフェノール樹脂無水エタノール溶液67.56gを加え、ボールミリングして混合スラリーを得た。
(二)混合スラリーを噴霧乾燥器にて100℃で乾燥させ、黒色粉末を得た。
(三)上記の黒色粉末6.8952gを高温管状炉に入れて、N
2雰囲気、800℃で5h焼成し、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合TiO
2/La
2O
3-炭素複合負極材料を得た。
本実施例では、電池の作製及び電池のテストは、実施例2と同じであり、
図8に示す結果のように、材料は、優れた高電流密度を有し、大電流密度では高容量を示した。
【0031】
実施例8
本実施例は、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合Li
3PO
4-炭素複合負極材料の製造方法であり、負極材料を用いてボタン型電池を作製して測定した。
材料の作製
(一)無水エタノール900.05gを秤量し、リン酸リチウム30.06gを加えて5min撹拌し、撹拌後、2500r/minで15minサンドミーリングし、リン酸リチウム/炭素の質量比が1:9となるように炭素(FSN)270.05gを加え、次に、フェノール樹脂がリン酸リチウム、炭素の全含有量の3%を占めるように20wt.%のフェノール樹脂45.06gを加え、2500r/minで10minサンドミーリングし、取り出して、混合スラリーを得た。
(二)混合スラリーを100℃で噴霧乾燥器にて乾燥させ、固体粉末を得た。
(三)上記の固体粉末8.6043gを高温管状炉に入れて、N
2雰囲気、800℃で5h焼成し、フェノール樹脂を用いて炭素繊維構造を製造する炭素結合Li
3PO
4-炭素複合負極材料を得た。
本実施例では、電池の作製及び電池のテストは、実施例2と同じであり、
図9に示す結果のように、材料は、優れた高電流密度を有し、大電流密度では高容量を示した。
実施例1~8で得た負極材料について、電圧範囲0.01V~2.00Vでは、それぞれ100、200、300、400、500、600mA/gの電流密度でテストしたレートサイクル図によれば、検出結果の比較を表1に示した。
【0032】
表1及び明細書の
図1~9に示すデータから分かるように、本発明の方法で製造された各種の炭素繊維構造を有する炭素結合リチウムイオン導体-炭素複合負極材料は、大電流密度でも、純粋な炭素材料よりもはるかに高い容量を維持し、高電流密度では、高い目付を維持し、そして優れた安定性を有した。従来技術に比べて、顕著な進歩があった。
【0033】
上記の実施例の説明は、当業者が本発明を容易に理解して応用するようにするためである。本出願の趣旨を逸脱することなく実際のニーズに応じて各実施例に対して適切に調整したり改めて組み合わせたりすることができることを、当業者は、本明細書の開示内容に基づいて容易に想到し得る。本出願の特許範囲は本出願の特許請求の範囲に準じる。