IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイタ工業の特許一覧

特許7070884木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物
<>
  • 特許-木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物 図1
  • 特許-木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物 図2
  • 特許-木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物 図3
  • 特許-木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物 図4
  • 特許-木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物 図5
  • 特許-木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物 図6
  • 特許-木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物 図7
  • 特許-木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20220511BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20220511BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20220511BHJP
   E04C 3/18 20060101ALI20220511BHJP
   E04C 3/292 20060101ALI20220511BHJP
   E04C 3/36 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E04B1/26 F
E04B1/30 D
E04B1/58 503L
E04B1/58 504L
E04C3/18
E04C3/292
E04C3/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017060244
(22)【出願日】2017-03-25
(65)【公開番号】P2018162590
(43)【公開日】2018-10-18
【審査請求日】2020-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】397016389
【氏名又は名称】株式会社アイタ工業
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】相田 吉則
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-080758(JP,A)
【文献】特開平01-256650(JP,A)
【文献】実開昭63-054715(JP,U)
【文献】特開昭52-138306(JP,A)
【文献】特開平08-053901(JP,A)
【文献】特開2000-160681(JP,A)
【文献】米国特許第03247635(US,A)
【文献】実開昭63-177516(JP,U)
【文献】特開2006-009439(JP,A)
【文献】特開平10-018436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26,1/30
E04B 1/38-1/61
E04C 3/00-3/46
B27M 1/00-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも長尺の木材を用いて形成された木製筒状部材であって、
当該長尺な木材は、その中心部分に、長さ方向に貫通する貫通孔を備えると共に、
その長さ方向の少なくとも何れかの端部には、継手構造又は仕口構造又はその他の構造を含む連結構造部が形成されており、
前記中心部分に設けられた貫通孔には、前記長尺な木材よりも曲げ強度が大きい補強部材を、当該貫通孔の長さ方向全体にわたって内挿しており、
前記貫通孔は、当該連結構造部も貫通して形成されており、
前記補強部材は、連結構造部で連結する長尺な木材同士の連結部を貫通するように設けられていることを特徴とする、木製筒状部材。
【請求項2】
前記補強部材は鉄パイプからなり、前記連結構造部を貫通して存在していることを特徴とする、請求項1に記載の木製筒状部材。
【請求項3】
前記貫通孔の内面と当該貫通孔内に内挿された補強部材の外面との間には、接着剤又は樹脂を存在させて両者を一体化している、請求項1又は2に記載の木製筒状部材
【請求項4】
長尺に形成された部材を組み合わせて形成された構造物であって、
当該部材として、請求項1~3の何れか一項に記載の木製筒状部材が1又は2つ以上使用されていることを特徴とする構造物。
【請求項5】
前記部材として、前記木製筒状部材が2つ以上使用されており、
当該木製筒状部材は、その貫通孔の長さ方向全体にわたって、前記補強部材が内挿されており、
当該2つ以上の木製筒状部材において、何れかの木製筒状部材同士は、木製筒状部材同士が連結構造部で連結されており、
当該木製筒状部材同士が連結されている連結部を貫通して、前記補強部材が存在する、請求項4に記載の構造物。
【請求項6】
長尺に形成された部材を用いて形成された構造物であって、
当該部材の少なくとも何れかは、前記木製筒状部材であって、その貫通孔の長さ方向全体にわたって、前記補強部材が内挿されている木製筒状部材が使用されており、
当該木製筒状部材における補強部材は、当該構造物を構成する他の部材、又は他の木製筒状部材の補強部材と連結していることを特徴とする、請求項4に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物に関する。特に長尺な木材の長さ方向に貫通する貫通孔を設けた木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、木材は加工が容易であることから、建築材料等として広く利用されている。特に十分に乾燥させた木材は、寸法変化の少ない優れた建築材料として長期的に使用することができる。しかしながら、木材は芯があることから、その乾燥収縮により、狂い、曲がり、割れなども少なからず発生してしまう。
【0003】
そこで従前においては、当該木材の芯を刳り貫く技術もいくつか提案されている。例えば特許文献1(実開昭63-177516号公報)では、在来建築木材の外観の美を損なうことなく、ひびわれや狂いを防ぐために、柱の芯とその周囲をくりぬき貫通させ、その部分に木や鉄パイプを埋め込んだ柱を提案している。
【0004】
また、建築などに使用される木材、特に杉、檜等は、本来的に軟質材であることから堅牢度が低く、これよりその使用可能な範囲については自ずと制限が存在していた。更に、杉、檜等の成育過程において除去される間伐材は小径木であり、また、極めて柔らかく湾曲していることが多いことから、当該間伐材を建築材料(特に柱等)として使用できるものではなかった。
【0005】
そこで従前においては、当該木材を補強する為に金属などの骨材を使用する技術も提案されている。例えば特許文献2(実開昭63-54715号公報)では、梁、桁、柱等の長い木製構造部材に関し、特に内部に金属製の骨材を入れ補強し、強度を飛躍的に高め、木材の節約や軽量化と共に配線、配管などにも使用できるようにするべく、木材本体を縦に少なくとも2分割し、それらの分割面に溝を形成させ、該溝に金属製形鋼又はパイプ等の骨材を嵌合し、分割した木材本体を骨材と共に分割面で接合した木製構造部材が提案されている。
【0006】
そして従前においては、木造建築に関し、柱状体の連結構造についても検討されている。例えば特許文献3(特開平6-117021号公報)では、従来の柱状体の連結はかすがいや羽子板ボルトで固定するため、連結すると連結が緩んだ場合や立てり等の調整が不可能で融通性に欠けるところがあったことに鑑みて、連結される柱状体の鋼性を増し、全体が一体化した構造体とすると共に、筋交いとして使用もでき、又ワイヤー固定L型レベル金物の取り付けで建物の立てりを見ることができ、かつ、運搬も容易にした木造建築に於ける柱状体の連結構造を提案している。即ちこの文献では、連結する柱状体に連結方向に貫通孔を穿設し、該貫通孔にパイプが嵌入されると共に、パイプ内にワイヤーが挿通され、該ワイヤーを緊締することにより柱状体の連結を強固にする木造建築に於ける柱状体の連結構造を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭63-177516号公報
【文献】実開昭63-54715号公報
【文献】特開平6-117021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の通り、従前においても木材の長さ方向に貫通する孔部を形成した木製筒状部材はいくつか提案されていた。しかしながら、従前において提供されている木製筒状部材は、その端部が切り落とされた構造となっていたことから、これを使用する場合には、別途結合部材が必要であった。
【0009】
そこで本発明は、木製筒状部材だけでも連結することができるようにした木製筒状部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく、本発明では、少なくとも長尺の木材を用いて形成された木製筒状部材であって、当該長尺な木材は、その長さ方向に貫通する貫通孔を備えると共に、その長さ方向の少なくとも何れかの端部には、継手構造及び仕口構造を含む連結構造部が形成されている木製筒状部材を提供する。
【0011】
上記木材は丸太から製材した無垢の木材である他、集積材で形成した木材であってあっても良い。また長さ方向の何れか一方の端部に連結構造部が形成されている他、長さ方向の両側に連結構造部が形成されていても良い。そして前記前記貫通孔は、長尺な木材の中心を貫通する他、偏心した位置を貫通するように形成しても良い。さらに当該貫通孔は1つに限ることなく、2つ以上が長さ方向に貫通するものであっても良い。更に、当該貫通孔は、縦断面形状が円形である他、三角形、四角形、その他の形状であっても良い。またこの貫通孔の内径や断面形状は、長尺な木材の長さ方向に同じである他、任意の場所の内径の大きさを変えたり、任意の場所の断面形状を変えることもできる。
【0012】
かかる木製筒状部材を使用することにより、少なくとも何れかの端面に形成された連結構造部により、他の部材との連結を行うことができる。これにより、木製筒状部材だけでも連結することができるようにした木製筒状部材を提供することができる。ただし、この連結構造部による連結部分には、補強などの要請がある場合には、他の連結具(連結金具など)を使用することもできる。
【0013】
また、上記木製筒状部材において、前記貫通孔は、他の部材と連結するための連結構造部の凹凸形状部分を避けた位置に開口するように形成する他、当該連結構造部(凹凸形成部分)も貫通するように形成することができる。
【0014】
また、前記木製筒状部材は、前記貫通孔が空洞のままで使用する他、当該貫通孔には、任意に選択した他の部材を内挿することもできる、特に当該貫通孔に木材以外の部材を内挿した場合には、当該木製筒状部材を複合材料として形成することもできる。
【0015】
前記貫通孔に内挿する部材は、木材である他、金属、樹脂、セラミックなど木材以外の材料であってよい。また当該貫通孔に挿入する部材としては、前記長尺な木材よりも、圧縮強度、引張強度、曲げ強度およびせん断強度の少なくとも何れかが大きい補強部材、及び/又は吸湿性、保温性および防錆性の少なくとも何れかが優れた充填部材とすることができる。前記補強部材を内挿することにより、当該木製筒状部材の強度を高めることができる。また前記充填部材を内挿することにより、当該充填部材の特性に応じて、木製筒状部材の特性を高めることができる。更に当該貫通孔に内挿する部材は、鉄パイプ、H鋼、アングル鋼、チャンネル鋼、ジョイスト鋼、リップ溝形鋼等の金属製形鋼や、他の木材、樹脂など、目的に応じて選択した任意の部材であって良い。
【0016】
また、本発明では、前記課題を解決する為に上記本発明にかかる木製筒状部材を使用して構築した建造物を提供する。即ち、長尺に形成された部材を組み合わせて形成された構造物であって、当該部材として、上記本発明にかかる木製筒状部材を1又は2つ以上使用して構築された構造物である。
【0017】
かかる構造物によれば、これを構築するために使用される部材として、上記本発明にかかる木製筒状部材を使用していることから、当該木製筒状部材の貫通孔又は当該貫通孔に内挿した部材に基づく作用効果を得ることができる。
【0018】
当該構造物は家屋等の建築物である他、屋根や柱或いは壁などを備えていない工作物であっても良く、更に家具や、手すりなどの様々な構造物であって良い。例えば、土木工事などにおける擁壁等の工作物であっても良い。また当該構造物は、前記本発明にかかる木製筒状部材を1又は2つ以上用いて構築されており、各木製筒状部材は、他の材料又は他の木製筒状部材と連結して形成されることが望ましい。例えば、当該構造物が2つ以上の木製筒状部材を使用して形成される場合には、何れか2つの木製筒状部材は、それぞれの連結構造部によって相互に連結されることが望ましい。
【0019】
よって本発明にかかる構造物では、前記部材として、前記木製筒状部材が2つ以上使用されており、当該木製筒状部材は、その貫通孔に、前記補強部材及び/又は充填部材が内挿されており、当該2つ以上の木製筒状部材において、何れかの木製筒状部材同士は木製筒状部材同士が連結されており、当該木製筒状部材同士が連結されている連結部を貫通して、前記補強部材及び/又は充填部材が存在する構造物とするのが望ましい。
【0020】
かかる構造物において、貫通孔に補強部材及び/又は充填部材が内挿されている木製筒状部材は、他の木製筒状部材と連結する他、他の構成部材、例えば土台や基礎等に連結することができる。この場合でも前記補強部材及び/又は充填部材は、木製筒状部材における連結構造部を貫通して他の部材に連結されることが望ましい。
【0021】
特に上記構造物は、長尺に形成された部材を用いて形成された構造物であって、当該部材の少なくとも何れかは、前記木製筒状部材であって、その貫通孔に、前記補強部材が内挿されている木製筒状部材が使用されており、当該木製筒状部材における補強部材は、当該構造物を構成する他の部材、又は他の木製筒状部材の補強部材と連結している構造物とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物によれば、木製筒状部材だけでも連結することができるようにした木製筒状部材を提供することができる。特に、当該木製筒状部材の貫通孔に補強部材及び/又は充填部材を内挿した場合には、当該補強部材及び/又は充填部材に基づいた効果が得られる木製筒状部材、及びこれを用いて形成された構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施の形態にかかる木製筒状部材10を示す六面図であり、(A)正面図、(B)右側面図、(C)左側面図、(D)背面図、(E)平面図、(F)底面図である。
図2】貫通孔13に補強部材14を内挿する状態を示す工程図であり、(A)分解図、(B)連結状態図である。
図3】第二の実施の形態にかかる木製筒状部材10を示す(A)要部分解斜視図、(B)組み立て状態を示す斜視図である。
図4】木製筒状部材の連結状態を示す要部斜視分解図である。
図5】他の部材20に対して2つの木製筒状部材10を連結した状態を示す縦断面図である。
図6】木製筒状部材10を用いて構築した構造物30を示す部分側面図である。
図7】ジョイント金具を用いた連結構造部12を示す斜視図である。
図8】ジョイント金具を用いた連結工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる木製筒状部材10と、これを用いて構築した構造物30を具体的に説明する。
【0025】
図1は第1の実施の形態にかかる木製筒状部材10を示す六面図であり、(A)正面図、(B)右側面図、(C)左側面図、(D)背面図、(E)平面図、(F)底面図である。この実施の形態にかかる木製筒状部材10は、角材11を用いて形成されており、その長さ方向の端部には、段状に切り欠いた連結構造部12を形成している。そして長さ方向に貫通する貫通孔13が穿孔されており、当該貫通孔13は、前記連結構造部12を通って形成されている。ただし、貫通孔13は、前記連結構造部12を外れた位置に形成することもでき、当該貫通孔13が、連結構造部12を形成した面(端面など)に1又は2以上開口するように形成しても良い。
【0026】
特に本実施の形態において、当該連結構造部12は、段状に切り欠いた構造(アイジャクリ構造)として形成しているが、その他にもホゾ構造、寄席ホゾ構造、短ホゾ構造、鎌継手構造、アリ継手構造、仕口アリ構造、胴差ホゾ構造、横差しホゾ構造、茶臼構造などのように、凹凸構造部からなり、木材同士を連結する結合構造によって形成することができる。また、本実施の形態において、当該貫通孔13は断面形状を円形に形成しているが、矩形など任意の形状であって良い。またこの貫通孔13の開口径は任意であって良く、当該木製筒状部材10に要求される強度や、当該貫通孔13に内挿する部材の大きさ等によって適宜調整することができる。
【0027】
以上のように形成した木製筒状部材10では、中心部分を刳り貫いていることから、軽量化を図ることができ、更に当該木材の中心部に穿った貫通孔13により、当該木材の割れや変形などを解消することができる。また当該貫通孔13は配線等を通すための通路として利用することもでき、これにより配線を露出させることなく、構造部内に設置することができる。
【0028】
そして上記木製筒状部材10は貫通孔13を備えることから、当該貫通孔13には、当該角材11(即ち、長尺な木材)よりも、圧縮強度、引張強度、曲げ強度およびせん断強度の少なくとも何れかが大きい補強部材14、及び/又は吸湿性、保温性および防錆性の少なくとも何れかが優れた充填部材を内挿することができる。そして、これらを内挿することにより、簡易に複合材料を形成することができ、これを建築用途で建築材料(例えば柱や梁などの柱状部材)として使用することもできる。
【0029】
図2は、上記貫通孔13に補強部材14を内挿する状態を示す工程図であり、(A)分解図、(B)連結状態図である。この図2に示すように、前記貫通孔13を有する木製筒状部材10を連結する際には、当該木製筒状部材10の連結部分をアイジャクリ組み(相欠き組)によって連結し、この連結部分を貫通して補強部材14が存在するように構成することができる。これにより当該連結部の結合強度を高めることができ、建築物に使用した場合には、構造強度を高めることができる。これは、本実施の形態にかかる木製筒状部材10が、長さ方向の端部に結合構造が形成され、且つ前記貫通孔13が当該結合構造を貫通して形成されていることによるものである。即ち、このように形成した木製筒状部材10では、木材同士の連結部分における強度を補強部材14によって補強し、補強部材14同士では連結が困難な点を木材の連結構造部12によって補強することができる。
【0030】
本実施の形態にかかる木製筒状部材10では、貫通孔13に補強部材14を内挿していることから、当該貫通孔13に内挿された補強部材14によって、当該木製筒状部材10自体の強度を高めることができる。よって、例えば間伐材などのように、木材の強度を特定できない場合であっても、当該貫通孔13に内挿した補強部材14に基づく強度を得ることができる。よって、本実施の形態にかかる木製筒状部材10により、間伐材の有効活用を実現できる。
【0031】
上記貫通孔13に内挿する補強部材14は、鉄パイプを使用する他、H鋼、アングル鋼、他の木材、樹脂、セラミックなど、木材よりも、圧縮強度、引張強度、曲げ強度およびせん断強度の少なくとも何れかが大きい部材であれば使用できる。特に、鉄パイプであれば、貫通した中空部を有することから、この内部空間に配線などを通すこともできる。前記貫通孔13の断面形状と、当該貫通孔13に通される補強部材14の断面形状とは、必ずしも同一又は相似形である必要はなく、例えば貫通孔13を丸孔として、これにH鋼などを挿入することもできる。
【0032】
また、前記木製筒状部材10の連結に際しては、その貫通孔13内に予め補強部材14を内挿しておき、これを連結する他、木製筒状部材10を連結した後に、補強部材14を装填することもできる。何れの工法を採用するかは、部材の長さや現場状況に応じて適宜選択することができる。
【0033】
前記木材は、必ずしも無垢の木材である必要はなく、その他にも、集積材やコルク材等のように木材を加工して形成されたものや、或いは樹脂材料であっても良い。また必ずしも柱状に形成される必要はなく、その他にも、板状又はブロック状であっても良い。ただし長さ方向の少なくとも何れかの端部には、前記した連結構造部12を設ける必要がある。当該連結構造部12により、構造物30の構築を円滑に行うためである。
【0034】
また、前記貫通孔13には、補強部材14とともに、又は補強部材14に代えて、吸湿性、保温性および防錆性の少なくとも何れかが優れた充填部材を充填することもできる。例えば、防腐剤を充填して木材の腐食を予防することができ、更にゼオライトや木炭を充填して、吸湿を図ることもできる。
【0035】
以上のように形成した木製筒状部材10(又は複合材料)は、他の部材と連結して使用することができる。図3は第二の実施の形態にかかる木製筒状部材10を示す(A)要部分解斜視図、(B)組み立て状態を示す斜視図である。
【0036】
この図3に示す木製筒状部材10は、長尺な角材11(柱状部材)であって、その長さ方向端部に他の部材との連結を実現するための連結構造部12が形成されており、且つ当該角材11の中心部分に、長さ方向に貫通する貫通孔13を形成している。 特に本実施の形態において、当該木製筒状部材10は、その端部に形成される結合構造がホゾの例を示しているが、ホゾ以外であっても、前述したような様々な結合構造とすることもできる。
【0037】
特にこの第二の実施の形態にかかる木製筒状部材10は、連結構造として形成されているホゾ部分にも貫通孔13が存在している。かかる貫通孔13の形成により、ホゾ部分自体は強度が弱まることも危惧されるが、本実施の形態では、当該ホゾ部分にも補強部材14が存在することから、むしろホゾ部分における連結構造自体が補強されたものとなっている。この実施の形態における木製筒状部材10は、連結構造を形成した後に、当該角材11の中心を長さ方向に貫通するように刳り貫くことにより形成することができる。そしてこの図3に示したような連結構造は、他の部材との連結に使用される。
【0038】
図4は、木材の一端側に、連結構造部12として短ホゾ構造を形成し、且つ当該連結構造部12を貫通するようにして、長さ方向に貫通する貫通孔13を形成し、当該貫通孔13には単管パイプ(連結構造部12)を内挿して形成した木製筒状部材10と、当該木製筒状部材10と連結する他の部材20との連結状態を示している。この実施の形態にかかる他の部材20は、その側面に当該木製筒状部材10を連結するように構成しており、当該連結部分には、ホゾ穴21を形成している。特に本実施の形態において、前記単管パイプからなる補強部材14の外径は、連結構造部12である短ホゾの短辺よりも大きく、はみ出していることから、前記ホゾ穴21には当該連結構造部12が挿入可能なように、中心部分を広げた形状に形成されている。
【0039】
このような構成により、前記木製筒状部材10と、他の部材20との連結部には補強部材14が存在することができ、これにより当該連結部分の強度を高めることができる。
【0040】
図5図4に示した連結部に関連し、他の部材20に対して2つの木製筒状部材10を連結した状態を示す縦断面図である。この図に示すように、他の部材20に連結する木製筒状部材同士の少なくとも連結構造部12には、1つの補強部材14が貫通して存在することが望ましい。本実施の形態では1つの木製筒状部材10の中心を貫通し、他の部材20における連結部(ホゾ穴21)を貫通し、そして更に他の木製筒状部材10の中心を貫通するようにパイプ部材からなる補強部材14を存在させていることから、2つの木製筒状部材10と1つの他の部材21との連結を確実に行うことができる。
【0041】
以上の実施の形態に示した木製筒状部材10において、貫通孔13に補強部材14や充填部材を内挿する場合には、当該補強部材14や充填部材は貫通孔内に嵌入もしくは遊嵌する他、貫通孔13の内面と補強部材14や充填部材の外面との間に接着剤や樹脂などを存在させて、両者を一体化することもできる。特に補強部材14を木製筒状部材10の貫通孔内に一体化した場合には、連結部における強度や、当該木製筒状部材10自体(即ち複合材料)の強度を高めることができる。
【0042】
図6は上記の実施の形態にかかる木製筒状部材10を用いて構築した構造物30を示す部分側面図である。特に本実施の形態では当該構造物30として、家屋などの建築物を例に説明する。この実施の形態にかかる構造物30において、前記木製筒状部材10は、通し柱38と、桁又は梁39に使用されている。
【0043】
即ち、通し柱38は下端側に連結構造部12が形成されており、当該連結構造部12を含めて、長さ方向に貫通する貫通孔13が形成されている。そしてこの貫通孔13には、単管パイプなどの補強部材14が内挿されており、当該補強部材14は、前記通し柱38が連結される土台31を貫通して、当該土台31が設けられる基礎部分32まで延伸している。このように、補強部材14が基礎部分32に固定されることにより、当該建築物(構造物30)は基礎部分32との一体化が図られ、地震などにおける倒壊の問題を大幅に改善することができる。
【0044】
そして当該建築物(構造物30)においては、上記通し柱38に、桁又は梁39が連結されることになる。当該桁又は梁39には、前記実施の形態にかかる木製筒状部材10が使用されており、長さ方向に延伸する貫通孔13には、補強部材14が内挿されている。そこで当該桁又は梁39から延出している補強部材14を、前記通し柱38の補強部材14と連結することで、当該連結部分における強度を高めることができる。本実施の形態では、桁又は梁39を上下引きボルト33で通し柱38に固定すると共に、補強部材同士を「T」字状に形成されているジョイント金具15によって連結し、当該連結部における強度を高めている。
【0045】
このように、建築物(構造物30)と基礎32、及び通し柱38と桁又は梁39との連結部分には、補強部材14を存在させることにより、地震や台風などにより、建築物に外力が作用して倒壊するような場合であっても、当該倒壊の恐れを極力減じると共に、当該補強部材14の曲げ耐力により、座屈の時間を確保することができる。
【0046】
なお、図6において、符号33は、土台と桁又は梁39を連結する菅柱であり、符号34は、土台を支持する大引きである。
【0047】
そして図7は、前記ジョイント金具を用いた連結構造部12を示す斜視図であり、図8は当該ジョイント金具を用いた連結工程を示す縦断面図である。これらの図に示すように、本実施の形態にかかる木製筒状部材10において、貫通孔13を通る補強部材同士は、T字状のジョイント金具15などを使用することにより、3方向に連結することができる。更に当該ジョイント金具15の構造によっては、4方向に連結することも可能である。
【0048】
特に、当該ジョイント金具15を用いて補強部材同士を連結する場合には、当該連結構造部12による連結部分から外れた位置に、ジョイント金具15と補強部材14との連結部分が存在することが望ましい。このように形成すれば、ジョイント金具自体が補強部材14として機能し、当該連結部分の強度を高めることができる。即ち、木材と補強金具とにより相乗的な強度が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の木製筒状部材は長尺な木材を用いる分野において利用することができ、建築のみならず、土木や家具製造など、様々な分野で利用できる。また当該木製筒状部材これを用いた構造物も、長尺な木材を用いる分野であれば、制限なく利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 木製筒状部材
11 角材(長尺な木材)
12 連結構造部
13 貫通孔
14 補強部材
15 ジョイント金具
21 ホゾ穴
30 構造物(建築物)
31 土台
32 基礎部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8