(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03D 80/60 20160101AFI20220511BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20220511BHJP
F03D 3/06 20060101ALI20220511BHJP
F03D 9/34 20160101ALI20220511BHJP
【FI】
F03D80/60
F03D1/06 A
F03D3/06 G
F03D9/34
(21)【出願番号】P 2017178750
(22)【出願日】2017-09-19
【審査請求日】2020-09-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505372620
【氏名又は名称】トータルエアーサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 毅資
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特許第5480342(JP,B2)
【文献】特開2011-007147(JP,A)
【文献】特開2002-242818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/60
F03D 1/06
F03D 3/06
F03D 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直回転軸に水平翼が固定された水平軸風車と
垂直翼が上下一対の腕を介して前記垂直回転軸に連結された垂直軸風車を用いて発電機を駆動するハイブリッド風力発電装置において、
前記垂直軸風車の垂直翼を冷却塔の排気口の内周面により形成される垂直円筒の外周面上もしくはその外側またはその内側に設置し、
かつ、
前記垂直軸風車の垂直翼の
一部であって下側の腕よりも下方の部位に前記冷却塔の排気口からの排気が当たる風受け板を設け、
各風受け板の底面を前記冷却塔の排気口の内周面を通る垂直円筒の円周に沿って同一方向に傾斜させたことを特徴とするハイブリッド風力発電装置。
【請求項2】
垂直回転軸に水平翼が固定された水平軸風車と
垂直翼が上下一対の腕を介して前記垂直回転軸に連結された垂直軸風車を用いて発電機を駆動するハイブリッド風力発電装置において、
(A)前記水平軸風車を、その水平翼の先端部が、冷却塔の排気口から噴出する頭切逆円錐形の気流の外周縁又はその外側直近に存在するように設けるとともに、
(B)前記垂直軸風車の垂直翼を前記冷却塔の排気口の内周面により形成される垂直円筒の外周面上もしくはその外側またはその内側に設置し、
かつ、
前記垂直軸風車の垂直翼の
一部であって下側の腕よりも下方の部位に前記冷却塔の排気口からの排気が当たる風受け板を設け、各風受け板の底面を前記冷却塔の排気口の内周面を通る垂直円筒の円周に沿って同一方向に傾斜させてあることを特徴とするハイブリッド風力発電装置。
【請求項3】
複式風車を用いて発電する風力発電装置において、垂直軸風車の垂直翼と垂直回転軸とを
連結する
上下一対の腕のうちの下側の腕をプロペラ形に形成して水平軸風車の水平翼を構成し、
前記垂直翼の一部であって下側の腕よりも下方の部位に冷却塔の排気口からの排気が当たる風受け板を設け、前記水平軸風車を、前記水平翼の先端部が、冷却塔の排気口から噴出する頭切逆円錐形の気流の外周縁又はその外側直近に存在するように設けたことを特徴とする風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複式風車を用いて発電する風力発電装置、とくに冷却塔の冷却ファンの上方に設置されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却塔の冷却ファンの上方に設置された複式風車を用いて発電する風力発電装置は、特許文献1に開示された。
【0003】
この風力発電装置は、垂直回転軸に複数の水平翼と複数の垂直翼を備えた風車、すなわち、水平軸風車と垂直軸風車を合体してなる複式風車を冷却ファンの上方に位置するように取付け、垂直回転軸により発電機を駆動させるものである。また、垂直回転軸は複式風車の中心に設けられ、冷却ファンの回転軸と同心であり、かつ冷却ファンの排気風の風向と同じ向きに設置されている。そして、冷却塔の運転時には水平軸風車が冷却ファンからの排気風を受けて回転され、冷却塔の停止時には垂直軸風車が自然風を受けて回転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術においては、複式風車は、冷却塔の運転時には水平軸風車の水平翼のみが冷却ファンからの排気風を受けて回転され、冷却塔の停止時には垂直軸風車の垂直翼のみが自然風を受けて回転される。また、水平軸風車の水平翼の先端は、冷却塔の排気口の内周面を上方に延長した円筒面上またはその内側に存在し、垂直軸風車の垂直翼は前記円筒面上またはその外側に設置されていた。
【0006】
上記先行技術による風力発電装置の課題について、
図7に基づいて説明する。
図7において、1は水冷式の冷却塔であり、排気口11内に冷却ファン12が設けられている。2は冷却ファン12の上方に風力発電装置3を取り付けるための風車取付フレームである。風車取付フレーム2は、縦フレーム21、中間横フレーム22、頂上横フレーム23を含む。なお、風力発電装置3を冷却ファン12の上方に取り付ける手段は、風車取付フレーム2を用いることに限られない。
【0007】
風力発電装置3は、複式風車30を有する。複式風車30は、水平軸風車31と垂直軸風車32からなり、水平軸風車31と垂直軸風車32に共通の垂直回転軸33を有する。
図7の例においては、水平軸風車31はたとえばプロペラ型またはオランダ型の水平翼を有するものであり、垂直軸風車32はたとえばジャイロミル型の垂直翼を有するものである。垂直回転軸33は冷却ファン12の回転軸13と共通の垂直線上に存在する。また、風力発電装置3は、複式風車30の垂直回転軸33により駆動される発電機
34を備えている。冷却塔1の運転時には水平軸風車31の水平翼が冷却ファン12からの上方向きの排気風を受け、冷却塔1の停止時には垂直軸風車32が屋外の横向きの自然風を受けて、垂直回転軸33が発電機
34を回転駆動する。
【0008】
特許文献1に開示された発明においては、排気口11から水平軸風車31までの距離、水平軸風車31の直径と排気口11の直径との関係、および垂直軸風車32の垂直翼の回転位置と排気口11の内周との位置関係について最適条件が熟慮されていなかった。
【0009】
冷却ファン12には通常、プロペラファンを用いられる。冷却ファン12がプロペラファンを用いる場合は、ファンの周速度は中心(垂直回転軸33)側よりもファンの先端側の方が大きい。したがって、排気口11から上方に噴出される排気は上に行くほど径が大きくなる頭切逆円錐形になり、中心に近い領域ほど風速が小さく、頭切逆円錐形の外周P1に近い領域ほど風速が大きい。
【0010】
そのため、水平軸風車31の水平翼の直径が
図7に例示するように排気口11の直径と等しいか、それよりも小さい場合は、水平軸風車31の水平翼に当たる排気の風速が小さいので、水平軸風車31に十分な回転力が生じないことが判明した。
【0011】
また、垂直軸風車32の垂直翼は、横風を受けるためだけの形状とされているため、その回転位置と排気口11の内周の位置関係の如何に関わりなく、冷却塔1の運転時に垂直軸風車32が複式風車の回転力増加に寄与することはない。
【0012】
したがって、冷却塔の運転時に、十分な発電能力が発揮されない虞があった。また、垂直軸風車は、水平軸風車の回転を抑制する虞があり、発電効率の向上が課題となった。
【0013】
本発明は、上記の点に鑑み、複式風車を用いて発電する風力発電装置において、発電効率をさらに向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、水平軸風車と垂直軸風車を用いて発電機を駆動するハイブリッド風力発電装置において、前記垂直軸風車の垂直翼を冷却塔の排気口の内周面により形成される垂直円筒の外周面上もしくはその外側またはその内側に設置し、かつ、前記垂直軸風車の垂直翼の下端に前記冷却塔の排気口からの排気が当たる風受け板を設け、各風受け板の底面を前記冷却塔の排気口の内周面を通る垂直円筒の円周に沿って同一方向に傾斜させたことを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、複式風車を用いて発電する風力発電装置において、(A)水平軸風車の水平翼を、その先端部が冷却塔の排気口から噴出する頭切逆円錐形の排気風の外周縁又はその付近に存在するように設けるとともに、(B)垂直軸風車の垂直翼を冷却塔の排気口の内周面により形成される垂直円筒の外周面上もしくはその外側またはその内側に設置し、かつ、垂直軸風車の垂直翼の下端に冷却塔の排気口からの排気が当たる風受け板を設け、各風受け板の底面を冷却塔の排気口の内周面を通る垂直円筒の円周に沿って同一方向に傾斜させてある。
【0017】
さらに好ましい実施の形態においては、複式風車を用いて発電する風力発電装置において、垂直軸風車の垂直翼と垂直回転軸とを結合する腕をプロペラ形に形成して水平軸風車の水平翼を構成し、前記水平軸風車を、前記水平翼の先端部が、冷却塔の排気口から噴出する頭切逆円錐形の気流の外周縁又はその外側直近に存在するように設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷却塔の排気ファンにより排気口から排出される排気風の最も大きい風力が水平軸風車の水平翼に当たるので、水平軸風車に大きい回転力が生じる。したがって、冷却塔運転時の発電効率が向上する。
【0019】
また、本発明によれば、冷却塔の排気ファンにより排気口から排出される排気風の最も大きい風力が垂直軸風車の風受け板に当たるので、垂直軸風車に大きい回転力が生じる。したがって、冷却塔運転時の発電効率がさらに向上する。
【0020】
さらに、本発明によれば、冷却塔の排気ファンにより排気口から排出される排気風の最も大きい風力が、水平軸風車の水平翼に当たるとともに、垂直軸風車の風受け板に当たるので、水平軸風車に大きい回転力が生じ、さらに垂直軸風車に大きい回転力が生じる。したがって、冷却塔運転時の発電効率がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】垂直軸風車の他の例を示す
図2と同様の断面図である。
【
図5】本発明の他の実施の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
本発明では、第1に、
図1に例示するように、水平軸風車31Aを、その水平翼の先端部が、冷却塔の排気口11から噴出する頭切逆円錐形の排気風の外周縁P1又はその外側直近に存在するように設けた。
【0024】
このようにすることにより、冷却塔1の運転時に排気口11から上方に噴出される冷却ファン12の排気の最大の風速が水平軸風車31Aの水平翼の先端側に加わるので、水平軸風車31Aに十分な回転力を生じさせることが可能になった。したがって、風力発電装置3の発電効率が向上する。冷却塔1の排気口11と水平軸風車31Aの相対的上下位置を変えることにより、水平軸風車31Aの回転力を変え、できるだけ高い発電効率が得られるように調整することができる。
【0025】
また、本発明では、第2に、
図1に例示するように、垂直軸風車32の垂直翼を冷却塔1の排気口11の内周面により形成される垂直円筒の外周面P2またはその付近に設置し、かつ、垂直軸風車32の垂直翼の下端に冷却塔1の排気口11からの排気が当たる風受け板36を設け、
図3に示すように、各風受け板36の底面を冷却塔1の排気口11の内周面を通る垂直円筒の円周に沿って同一方向に傾斜させてある。
【0026】
垂直軸風車32の垂直翼の回転位置は、冷却塔1の排気口11の内周面を通る垂直円筒の外周面P2上に代えて、垂直円筒の外周面P2の外側またはその内側に設定してもよい。
【0027】
いずれの場合も、冷却ファン12の排気により水平軸風車31Aが回転される方向と、垂直軸風車32が回転される方向は一致するように、水平軸風車31Aの水平翼の傾斜方向と垂直軸風車32の風受け板36の傾斜方向を一致させてある。また、冷却塔1の非運転時に垂直軸風車32が自然風により回転されるとき、水平軸風車31Aがその回転力を増幅することがあっても、減衰することが無いように、水平軸風車31Aの水平翼の長手方向に対して直角な断面形状(円弧) と、円弧の凹面方向を考慮することが望ましい。
【0028】
図2は、上記複式風車30の水平軸風車31Aよりも低い位置における横断面図である。この例においては、垂直軸風車32は、4本の垂直翼32aを有するが、
図1には前後の垂直翼32aが示されていない。
図1,2において、34a,34bは垂直翼32aを垂直回転軸33に連結する腕である。水平軸風車31Aの水平翼で、腕34a,34bの一方を兼ねてもよい。
【0029】
図2に示すように、すべての垂直翼32a、たとえば4本の垂直翼32aのすべての下端に風受け板36を設ける場合は、冷却ファン12を駆動するモータ13に大きな負荷がかかることもあり得る。これを防止するため、モータ13に大きな負荷がかからないように、減らされた数、たとえば、
図4に示すように、2本の垂直翼32aの下端に風受け板36を設けることがよい。
【0030】
図1においては、複式風車30に水平軸風車31Aの水平翼と垂直軸風車32の風受け板36を備えることにより、冷却塔運転時の発電効率の向上を図ったが、
図5は、複式風車30の下側の腕(34b)をプロペラ形に形成して水平軸風車31Bを構成した例を示す。つまり、この実施の形態は、
図1の水平軸風車31Aと風受け板36を水平軸風車31Bに置換したものに相当する。水平軸風車31Bは、
図6に示すように、垂直回転軸33の互いに反対側に接続された一対の翼片34b1,34b2で構成されてもよいし、図示されていないが、複数対の翼片34b1,34b2で構成されてもよい。
【0031】
図7に示すように、従来の冷却塔1の排気口11を形成する周壁11aは、冷却ファン12を収容するに足るだけの高さしか有していない。したがって、排気口11から噴出する頭切逆円錐形の排気風の外周縁P1は、水平軸風車31および垂直軸風車32の外側に存在しがちである。これが従来のハイブリッド風力発電装置3の発電効率の向上を妨げる原因であった。この問題を解消するには、
図7の複式風車30の下端部をできる限り排気口11に近づけることが良いが、より好ましいのは、
図1の排気口11を形成する周壁11aに複式風車30の下端部に接近する延長部11bを設けることである。これにより、複式風車30の直径をできるだけ小さくすることができる。つまり、風力発電装置3のコンパクト化が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 冷却塔
11 排気口
12 冷却ファン
3 風力発電装置
30 複式風車
31 水平軸風車
31A,31B 水平軸風車
32 垂直軸風車
33 垂直回転軸
34a,34b 腕
35 発電機
36 風受け板
P1 排気の頭切逆円錐形の外周面
P2 排気口の内周面を通る垂直円筒の外周面