(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】薄状食材用串刺装置および薄状食材串の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23P 10/10 20160101AFI20220511BHJP
A47J 37/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A23P10/10
A47J37/04 103A
(21)【出願番号】P 2018034616
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 鋼
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-174692(JP,U)
【文献】特開昭63-071163(JP,A)
【文献】米国特許第03729774(US,A)
【文献】実開昭48-064491(JP,U)
【文献】実開昭61-017996(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23P 10/10
A47J 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯状体が並設された第1歯状群と、該第1歯状群の歯状体間に遊嵌状態で配置される複数の歯状体を有する第2歯状群と、を有し、前記第1歯状群の歯状体および前記第2歯状群の歯状体の少なくとも何れか一方の前記歯状体には刺串配置用の凹溝が形成されて
おり、前記第2歯状群における複数の歯状体間に、前記第1歯状群における複数の歯状体先端部に向けて延びる押圧手段を有することを特徴とする薄状食材用串刺装置。
【請求項2】
前記第1歯状群の歯状体および前記第2歯状群の歯状体には、刺串配置用の凹溝が対向する向きに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄状食材用串刺装置。
【請求項3】
前記第1歯状群における複数の歯状体端部には一直線状に並ぶ凹溝が形成されるとともに、前記第2歯状群における複数の歯状体端部には一直線状に並ぶ凹溝が形成され、前記第1歯状群の歯状体間に前記第2歯状群の歯状体が遊嵌状態に配置される状態において各前記凹溝が一直線状の刺串通路を形成できることを特徴とする請求項1または2に記載の薄状食材用串刺装置。
【請求項4】
前記第1歯状群における複数の歯状体先端部には、すべり防止部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の薄状食材用串刺装置。
【請求項5】
前記第1歯状群とパレットとが一体に形成された第1ユニットとして形成され、前記第2歯状群とパレットとが一体に形成された第2ユニットとして形成されていることを特徴とする請求項1ないし
4のいずれかに記載の薄状食材用串刺装置。
【請求項6】
複数の前記歯状体間に複数の歯状体が遊嵌状態に配置され、かつ各前記凹溝が一直線状の刺串通路を形成できるようになる位置において働く位置決め部が少なくとも一方の前記ユニットに設けられていることを特徴とする請求項
5に記載の薄状食材用串刺装置。
【請求項7】
刺串配置用の凹溝が形成され並設された複数の歯状体に載置された薄状食材を歯状体間に各該歯状体に沿わせて該凹溝を覆うようにU字形に成形する成形ステップと、
前記複数の歯状体の先端部に向けて延びる押圧手段により前記薄状食材を前記複数の歯状体の先端部に押圧するステップと、
前記歯状体の並設方向に刺串を移動させ前記凹溝内を通過させることで前記U字形に成形された各薄状食材を順に刺通する刺通ステップと、
を含むことを特徴とする薄状食材串の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、串打ちに用いられる薄状食材用串刺装置および薄状食材串の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏皮(薄状食材)を串打ちした焼き鳥である鶏皮串は消費者に人気がある。この鶏皮串は、焼き鳥職人や食品工場の加工員が、複数の小片に切断された鶏皮を二つ折り状に成形しつつ順に串に刺す作業を繰り返して作成している。このように、鶏皮は二つ折にした状態で串に挿されていることで薄状の鶏皮は串から抜け落ちにくく、たれの絡みがよくなるとともに、立体形状を呈するため、食感や味を促すものとなっている。
【0003】
また、食材用串刺装置を用いて複数の食材を串打ちすることも行われており、例えば、特許文献1には、台部材の直線状の溝部にブロック状に加工された複数の材料を直線状に載置した後、押込み部材の直線状の溝部によってこれら複数の材料を台部材側に押込んだ状態で、側方から串を打ち込む装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5789830号公報(第5~7頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置は、対向する溝部によってブロック状の食材を挟みこむものであるため、薄状の鶏皮を二つ折りにして串刺すことはできなかった。一方、人手による串打ちは、二つ折り成形と串刺しという異なる加工を連続して繰り返す作業であるため、熟練が必要であるとともに作業負荷が高いものであった。特に、鶏皮の形状や脂身の付着状況は多様であり、固定しにくく、すべりやすいことからこれらの問題は顕著であった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、容易に薄状食材に串打ちを行うことができる薄状食材用串刺装置および薄状食材串の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の薄状食材用串刺装置は、
複数の歯状体が並設された第1歯状群と、該第1歯状群の歯状体間に遊嵌状態で配置される複数の歯状体を有する第2歯状群と、を有し、前記第1歯状群の歯状体および前記第2歯状群の歯状体の少なくとも何れか一方の前記歯状体には刺串配置用の凹溝が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1歯状群の歯状体間に第2歯状群の歯状体が遊嵌状態に配置される状態において、両歯状群間には波状の空間が形成される。この波状の空間に薄状食材を配置して凹溝を利用して刺串を通すだけで容易に薄状食材に串刺しを行うことができる。
【0008】
前記第1歯状群の歯状体および前記第2歯状群の歯状体には、刺串配置用の凹溝が対向する向きに形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1歯状群の歯状体間に第2歯状群の歯状体が遊嵌状態に配置される状態において、両歯状群間には波状の空間が形成される。この波状の空間に薄状食材を配置して刺串配置用の凹溝を利用して刺串を通すだけで容易に薄状食材に串刺を行うことができる。
【0009】
前記第1歯状群における複数の歯状体端部には一直線状に並ぶ凹溝が形成されるとともに、前記第2歯状群における複数の歯状体端部には一直線状に並ぶ凹溝が形成され、前記第1歯状群の歯状体間に前記第2歯状群の歯状体が遊嵌状態に配置される状態において各前記凹溝が一直線状の刺串通路を形成できることを特徴としている。
この特徴によれば、一方側からの挿入で刺串が各溝に直線的に誘導され串刺作業が容易となる。
【0010】
前記第1歯状群における複数の歯状体先端部には、すべり防止部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、歯状体先端部に載置された薄状食材の位置がすべり防止部により安定するため、串刺の作業性はもとより、串刺の位置精度を向上できる。
【0011】
前記第2歯状群における複数の歯状体間に、前記第1歯状群における複数の歯状体先端部に向けて延びる押圧手段を有することを特徴としている。
この特徴によれば、歯状体先端部に載置された薄状食材の位置が押圧手段により安定するため、串刺の作業性はもとより、串刺精度を向上できる。
【0012】
前記第1歯状群とパレットとが一体に形成された第1ユニットとして形成され、前記第2歯状群とパレットとが一体に形成された第2ユニットとして形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、各歯状体の間隔を予め適正に配置できるとともに、操作性が良い。
【0013】
複数の前記歯状体間に複数の歯状体が遊嵌状態に配置され、かつ各前記凹溝が一直線状の刺串通路を形成できるようになる位置において働く位置決め部が少なくとも一方の前記ユニットに設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、両ユニットの相対位置を意識することなく適正な位置に刺串通路が形成されるため串刺の作業性が向上する。
【0014】
本発明の薄状食材串の製造方法は、
刺串配置用の凹溝が形成され並設された複数の歯状体に載置された薄状食材を各該歯状体に沿わせて該凹溝を覆うようにU字形に成形する成形ステップと、
前記歯状体の並設方向に刺串を移動させ前記凹溝内を通過させることで前記U字形に成形された各薄状食材を順に刺通する刺通ステップと、
を含むことを特徴としている。
この特徴によれば、凹溝を利用して刺串を通すだけで容易に薄状食材に串刺を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1における薄状食材用串刺装置を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、使用前の本発明の実施例1における薄状食材用串刺装置を示す断面正面図および側面図であり、(b)は、使用時の本発明の実施例1における薄状食材用串挿装置を示す断面正面図および側面図である。
【
図3】(a)~(d)は、本発明の実施例1における薄状食材用串挿装置を用いた串打ち態様を示す図である。
【
図4】本発明の実施例2における使用前の薄状食材用串刺装置を示す断面正面図、A-A矢視図および側面図である。
【
図5】本発明の実施例2における使用時の薄状食材用串挿装置を示す断面正面図、B-B矢視図および側面図である。
【
図6】(a)~(c)は、本発明の実施例2における薄状食材用串挿装置を用いた串打ち態様を示す図である。
【
図7】(a)~(b)は、
図5に引き続き本発明の実施例2における薄状食材用串挿装置を用いた串打ち態様を示す図である。
【
図8】本発明の実施例3における薄状食材用串刺装置を示す斜視図である。
【
図9】(a)~(d)は、使用前の本発明の実施例3における薄状食材用串刺装置の動作を示す正面図である。
【
図10】(a)~(d)は、使用前の本発明の実施例3における薄状食材用串刺装置の動作を示す側面図である。
【
図11】(a)~(d)は、使用前の本発明の実施例4における薄状食材用串刺装置の動作を示す正面図である。
【
図12】本発明の実施例5における薄状食材用串刺装置のベースユニットを示す上面図および側面図である。
【
図13】(a)~(d)は、使用前の本発明の実施例5における薄状食材用串刺装置の動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る薄状食材用串刺装置および薄状食材串の製造方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係る薄状食材用串刺装置につき、
図1から
図3を参照して説明する。以下、
図1の紙面右左側および
図3の紙面手前側を薄状食材用串刺装置の正面側(前方側)とし、その前方側から見たときの上下左右前後方向を基準として説明する。
【0018】
薄状食材用串刺装置1は、例えば、焼き鳥用の食肉加工に用いられるものであり、
図3に示されるように、鶏皮C(薄状食材)の串打ちを行うことができる。
【0019】
図1,
図3に示されるように、薄状食材用串刺装置1は、ベースユニット2(第1ユニット)において複数並設された山型プレート20,20,…(第1歯状群)の先端部20a,20a,…上に複数の鶏皮C,C,…を載置した後、押込みユニット3(第2ユニット)の押込みプレート30,30,…(第2歯状群)を上方から、山型プレート20,20,…間に押込んで、各鶏皮C,C,…を正面視下向きU字状に二つ折りに成形した後、ベースユニット2および押込みユニット3を長手方向に貫通する刺串通路H1に刺串Sを突き刺すことにより、鶏皮串Tの串打ちを行うことができるものである。尚、本実施例でいう「鶏皮串T」とは、生やボイル処理した鶏皮C,C,…を串打ちしたものを意味し、炭火や電磁調理器等で炙る前のものとする。
【0020】
図1,
図2に示されるように、ベースユニット2は、樹脂成形品であり、上面視長方形の板状の第1パレット21の上面21aには、第1パレット21の短手方向かつ上方に延びる板状の山型プレート20(歯状体)が略等間隔に7枚並設されているとともに、両端の山型プレート20の外方には位置決めピン23,23(位置決め部)が形成されている。尚、ベースユニット2は樹脂成型品に限らず、ステンレス鋼等の金属による押出成形品であってもよく、限定するものではない。さらに尚、山型プレート20の並設数については、具体的な数値を限定するものではなく、以降の数値についても同様である。
【0021】
山型プレート20は、押込みユニット3側の先端部20aが正面視弧状に形成されており、先端部20aの長手方向中央部から第1パレット21側へ凹む正面視U字状のガイド溝20b(凹溝)が形成されている。各ガイド溝20b,20b,…は、ベースユニット2の長手方向に沿って略直線状に配置されている。また、ガイド溝20bの両側の先端部20aそれぞれの略中央部には、上方に向けて突出するステンレス鋼からなる針状のスパイク22,22(すべり防止部)が固定されている。
【0022】
位置決めピン23,23は、押込みユニット3の両端部側に位置する押込みプレート30,30の後述するガイド溝30b,30bに挿嵌可能となっている。また、位置決めピン23の先端部23aは、半球状に形成されており、ガイド溝20bの底部よりも下方に位置している。
【0023】
図1,
図2に示されるように、押込みユニット3は、樹脂成形品であり、上面視長方形の板状の第2パレット31の下面31aには、第2パレット31の短手方向かつ下方に延びる板状の押込みプレート30(歯状体)が略等間隔に8枚並設されている。尚、押込みユニット3は樹脂成型品に限らず、ステンレス鋼等の金属による押出成形品であってもよく、限定するものではない。
【0024】
押込みプレート30は、ベースユニット2側の先端部30aが正面視弧状に形成されており、先端部30aの長手方向中央部から第2パレット31側へ凹む正面視U字状のガイド溝30b(凹溝)が形成されている。各ガイド溝30b,30b,…は、押込みユニット3の長手方向に沿って略直線状に配置されている。
【0025】
次に、ベースユニット2と押込みユニット3とを組み合わせる態様について説明する。
図2に示されるように、ベースユニット2の各山型プレート20,20,…は、板厚(ベースユニット2の長手方向の寸法)が、押込みユニット3の隣り合う押込みプレート30,30間の寸法よりも短尺であるため、隣り合う押込みプレート30,30間に遊嵌可能となっている。同様に、押込みユニット3の各押込みプレート30,30,…は、ベースユニット2の隣り合う山型プレート20,20間に遊嵌可能となっている。
【0026】
図2(a)に示されるように、ベースユニット2と押込みユニット3とを対向配置させ、ベースユニット2の位置決めピン23,23と押込みユニット3の両端部に位置する押込みプレート30,30のガイド溝30b,30bとの位置を合わせ、ベースユニット2と押込みユニット3とを接近させることで、
図2(b)に示されるように、山型プレート20を対向する隣り合う押込みプレート30,30間に、押込みプレート30を対向する隣り合う山型プレート20,20間に、それぞれ遊嵌させることができる(以降、単に「第1ユニットと第2ユニットとを凹凸遊嵌させる」と記載する)。このように、山型プレート20,20,…の間に押込みプレート30,30,…が遊嵌状態に配置される状態において、ベースユニット2と押込みユニット3との間には波状の空間が形成される。尚、波状の空間とは、正面視L字の空間と倒立L字の空間とが繰り返し連結された蛇行状の空間である。
【0027】
このとき、ベースユニット2のガイド溝20b,20b,…と押込みユニット3のガイド溝30b,30b,…とは略直線状に配置され、一直線状の刺串通路H1が形成される。
【0028】
次に、作業者の手作業による薄状食材用串刺装置1を用いた鶏皮串Tの串打ちについて説明する。先ず、各山型プレート20,20,…の先端部20a,20a,…に複数の小片に切断された鶏皮C,C,…をスパイク22,22,…に食い込ませて載置する(
図3(a)参照)。
【0029】
次いで、押込みプレート30,30,…を上方から押込むことで、ベースユニット2と押込みユニット3とを凹凸遊嵌させる(
図3(b)参照)。このとき、鶏皮Cの両側は、押込みユニット3の押込みプレート30の先端部30aにより下方に押され、山型プレート20と押込みプレート30とに挟まれ、シート状に延ばされた状態となり、鶏皮Cは山型プレート20,20,…の先端部20a,20a,…を基点として正面視下向きU字状に二つ折りに成形される(成形ステップ)。
【0030】
この成形時に、鶏皮Cにはスパイク22,22が食い込んでいるため、先端部20a,20aは位置ずれすることがなく、該鶏皮Cの脱落が防止されている。また、押込みプレート30の先端部30aは弧状に形成されていることから、鶏皮Cを押込む成形の際に鶏皮Cを傷つけることが防止されている。
【0031】
また、位置決めピン23の先端部23aが押込みプレート30のガイド溝30bに遊嵌されることで、ベースユニット2および押込みユニット3の相対位置を意識することなく適正な位置に刺串通路H1が形成されるため串刺の作業性が向上する。
【0032】
次いで、
図2(b)の側面図に示されるガイド溝20b,20b,…とガイド溝30b,30b,…とによって形成される刺串通路H1に、手前から奥行き方向に向かって刺串Sを刺串通路H1に通すことで、二つ折りに成形された状態の複数の鶏皮C,C,…を手前から順に串刺すことができる(
図3(c)参照)(刺通ステップ)。すなわち、一度の動作で、所定数の鶏皮C,C,…をまとめて串刺すことができる。このとき、鶏皮C,C,…はスパイク22,22,…により固定されているため、串刺の作業性はもとより、串刺の位置精度を向上できる。
【0033】
次いで、薄状食材用串刺装置1から鶏皮串Tを取出し、刺串Sの後端側の鶏皮C,C,…を刺串Sの先端側に押詰めながら、形を整えることで、鶏皮串Tの串打ちが完成する(
図3(d)参照)。このようにして、見栄えのよい鶏皮串Tを容易に製造することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施例1における薄状食材用串刺装置1は、ベースユニット2および押込みユニット3の間に形成される波状の空間に複数の鶏皮C,C,…を配置して刺串S配置用のガイド溝20b,30b,…を利用して刺串Sを通すだけで容易に複数の鶏皮C,C,…に串刺を行うことができる。
【0035】
また、ベースユニット2は、第1パレット21と7枚の山型プレート20,20,…とが一体に形成されていることから、各山型プレート20,20,…の間隔を予め適正に配置できるとともに、操作性が良い。押込みユニット3についても同様である。
【実施例2】
【0036】
前記実施例1においては、ベースユニットがすべり防止部を備えている態様について説明したが、実施例2では押込みユニットが押圧手段を有している態様について、
図4~
図7を用いて説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
図4に示されるように、ベースユニット102は、スパイク22,22,…および位置決めピン23,23が設けられていない以外は前記実施例1のベースユニット2と略同一態様である。
【0038】
押込みユニット103の押込みプレート130は、ベースユニット102の山型プレート120の板厚よりも厚くなっている。
【0039】
押込みユニット103の第2パレット131には、隣り合う押込みプレート130,130間の略中央部にて上下方向に貫通する前後一対の貫通孔131b,131bが形成されており、該貫通孔131b,131bに固定された鍔付き筒状のブッシュ133,133に、押圧手段140が挿通・固定されている。
【0040】
各押圧手段140は、2本のコイルバネ136,136、2本のシャフト134,134、該シャフト134,134の一端に固定された1枚の押圧板135により構成されている。コイルバネ136,136は押圧板135と第2パレット131の下面131aとの間に配置され押圧板135を下方に付勢するようになっている。シャフト134,134の頭部には、軸部よりも大径の鍔状の頭部134a,134aが形成されており、シャフト134,134の下方への位置規制がなされている。
【0041】
また、押圧板135は、第2パレット131の短手方向の寸法と略同一寸法であり、下面には、押圧板135の長手方向に沿って6つのスパイク132,132,…が略直線状に配置されている。また、スパイク132,132,…は、刺串通路H2を形成した際に、該刺串通路H2内に位置しないように配置されている。
【0042】
次に、作業者の手作業による薄状食材用串刺装置101を用いた鶏皮串Tの串打ちについて説明する。先ず、各山型プレート120,120,…の先端部120a,120a,…に複数の小片に切断された鶏皮C,C,…を載置する(
図6(a)参照)。
【0043】
次いで、ベースユニット102の上方から、押込みユニット103を下方に移動させて、の各押圧板135,135,…を各鶏皮C,C,…に当接させてスパイク132,132,…を食い込ませる(
図6(b)参照)。
【0044】
次いで、押込みプレート130を更に第1パレット121側に押込むことで、ベースユニット102と押込みユニット103とを凹凸遊嵌させて鶏皮Cを成形する(
図6(c)参照)。このとき、ベースユニット102と押込みユニット103とが接近するほどコイルバネ136,136,…が圧縮され、押圧板135,135,…と山型プレート120,120とによって鶏皮C,C,…を挟持する力が高まり、成形時に当該鶏皮Cがずれたり脱落したりすることが防止されている。
【0045】
次いで、前記実施例1と同様に、ガイド溝120b,120b,…とガイド溝130b,130b,…とによって形成される刺串通路H2を利用して複数の鶏皮C,C,…に刺串Sを串刺し、形を整えることで、見栄えのよい鶏皮串Tを容易に製造することができる(
図7参照)。
【0046】
以上説明したように、本実施例2における薄状食材用串刺装置101は、鶏皮C,C,…を山型プレート120,120,…の先端部120a,120a,…に載置する際に、前記実施例1と異なり、スパイク22,22,…を設けていないことから、手袋のような防護手段をとらずとも、作業者の手が傷つくことを防止することができる。
【0047】
また、複数の鶏皮C,C,…に刺串Sを串刺す際に、鶏皮C,C,…は、押圧手段140により保持されているため、串刺の作業性はもとより、串刺の位置精度を向上できる。
【0048】
また、薄状食材用串刺装置101から鶏皮串Tを取出す際に、コイルバネ136,136,…の復帰力により押込みユニット103をベースユニット102から離間するようにしてもよい。
【0049】
尚、ベースユニット102にスパイク22,22,…が設けられている態様であってもよく、この態様であれば、前記実施例1と同様に、鶏皮Cをスパイク22,22に食い込ませることで、山型プレート220の先端部220aに載置された状態で保持される。仮に、スパイク22,22による保持が十分でなかったとしても、押圧手段140のスパイク132,132,…が食い込むことで、鶏皮Cを保持することができる。このことから、確実に鶏皮Cを成形することができる。
【実施例3】
【0050】
前記実施例1,2においては、押込プレートと山型プレートの前後方向寸法が略同じ構成について説明したが、押込プレートの前後方向寸法が小さく2分割となっている態様について説明する。また、薄状食材用串刺装置がそれぞれ別体である第1ユニットと第2ユニットとから構成されている態様について説明したが、全体が一つのユニットに構成されている態様について、
図8~
図10を用いて説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0051】
図8に示されるように、薄状食材用串刺装置201は、ベース体202の第1パレット221の前後端部それぞれに長方形の板状のアーム板204,204(位置決め部)が回動可能に軸支されており、該アーム板204には、短手方向に摺動移動可能に押込み体203が取付けられている。尚、ベース体202は、前記実施例1のベースユニット2と略同一構成であり、対向配置された押込み体203,203は、前記実施例1におけるガイド溝30b,30b,…を境に前後に二等分された押込みユニット3と略同一構成である。
【0052】
押込み体203には、長手方向両端部側の押込みプレート230に沿って上面視台形状の摺動片237,237が形成されている。また、アーム板204の長手方向両端部には、短手方向に延びる上面視台形状の摺動溝240,240いわゆる蟻溝が形成されている。押込み体203とアーム板204とは、摺動片237,237が摺動溝240,240に摺動可能に挿嵌されることで連結されている。
【0053】
次に、作業者の手作業による薄状食材用串刺装置201を用いた鶏皮串Tの串打ちについて説明する。先ず、アーム板204,204を前後に開き(ベース体202の第1パレット221と水平に配置し)(
図9(a),
図10(a)参照)、各山型プレート220,220,…の先端部220a,220a,…に複数の小片に切断された鶏皮C,C,…をスパイク22,22に食い込ませて載置する(
図9(b)参照)。
【0054】
次いで、アーム板204,204をそれぞれ上方側へと90度回動させ、第1パレット221の短手方向に対して略直交させる。このとき、
図9(c),
図10(c)に示されるように、アーム板204,204は、第1パレット221の前方または後方の側端部および山型プレート220,220,…の前方または後方の側端部と当接し、位置決めがなされる。
【0055】
次いで、押込みプレート230,230,…を上方から下方に押込むことで、ベース体202と押込み体203,203とを凹凸遊嵌させる(
図9(d),
図10(d)参照)。これにより、各鶏皮C,C,…を成形することができる。
【0056】
また、
図10(d)に示されるように、ベース体202と押込み体203,203とを凹凸遊嵌させることで、ガイド溝220b,220b,…から対向する押込みプレート230,230の側端部230b,230b,…に沿って上方に開放される、側面視U字状の刺串通路H3が形成される。このように、ベース体202および押込み体203,203の相対位置を意識することなく適正な位置に刺串通路H3が形成されるため串刺の作業性が向上する。
【0057】
次いで、前記実施例1と同様に、刺串通路H3を利用して複数の鶏皮C,C,…に刺串Sを串刺し、形を整えることで、見栄えのよい鶏皮串Tを容易に製造することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施例3における薄状食材用串刺装置201は、刺串通路H3の上端部が上方に開放されていることから、複数の鶏皮C,C,…に刺串Sを串刺す際に、二つ折りに成形された鶏皮C,C,…を確認しながら串刺を行うことができる。
【実施例4】
【0059】
前記実施例1~3においては、作業者の手作業による薄状食材用串刺装置を用いた複数の小片に切断された鶏皮の串打ちについて説明したが、実施例4では、帯状の大片に切断された鶏皮の串打ちについて、
図11を用いて説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0060】
押込みユニット303は、中央部(長手方向両端部以外)の6枚の押込みプレート330,330,…の先端部330a,330a,…にカッター305,305,…が固定されている。また、カッター305には、押込みプレート330の溝部330bと対応する位置に略同形状の溝部が形成されている。尚、それ以外の押込みユニット303の構成については、前記実施例1における押込みユニット3と略同一構成である。
【0061】
次に串打ちについて説明する。先ず、ベースユニット2の山型プレート20,20,…の先端部20a,20a,…に帯状に切断された鶏皮C1を載置する(
図11(a)参照)。次いで、押込みユニット303を、上方からベースユニット2へと押込む(
図11(b)参照)。これにより、帯状の鶏皮C1を複数の小片の鶏皮C,C,…に切断する。
【0062】
その後、実施例1,2と同様に、複数の鶏皮C,C,…に刺串Sを挿入し、形を整えることで、見栄えのよい鶏皮串Tを容易に製造することができる(
図11(c),(d)参照)。
【実施例5】
【0063】
前記実施例1~4においては、小片の鶏皮からなる鶏皮串Tの串打ちをするための薄状食材用串刺装置について説明したが、実施例5では、帯状の大片に切断された鶏皮からなる鶏皮串の串打ちについて、
図12,
図13を用いて説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0064】
図12に示されるように、ベースユニット402は、四方枠状に形成された第1枠体421に、7組の山型プレート体425,425,…が第1枠体421の長手方向に沿って摺動可能に取付けられたものである。第1枠体421は、前後の直杆それぞれの対向部に形成された直方体状の摺動溝421b,421bに山型プレート体425の支持プレート426の前後端部が摺動可能に挿嵌されており、この支持プレート426の左右方向中央部には山型プレート420が固定されている。尚、押込みユニット403は、ベースユニット402と略同一構成であり、第2枠体431に8組の押込みプレート体435,435,…が第2枠体431の長手方向に沿って摺動可能に取付けられている。
【0065】
次に串打ちについて説明する。先ず、ベースユニット402の山型プレート420,420,…の先端部420a,420a,…に帯状に切断された鶏皮C1をスパイク22,22,…に食い込ませて載置する(
図11(a)参照)。次いで、押込みユニット403を、上方からベースユニット402へと押込んだ後(
図11(b)参照)、同一方向へ押込み続けながら、右端部に位置する押込みプレート体435を左側へと移動させる。これにより、押込みプレート体435が隣り合う左側の押込みプレート体435および山型プレート体425を、山型プレート体425が隣り合う左側の山型プレート体425および押込みプレート体435を移動させるため、帯状に切断された鶏皮C1を波状に成形しながら、左側に押詰めることができる(
図11(c)参照)。
【0066】
このとき、支持プレート426,436は、隣り合う支持プレート426または支持プレート436と当接することで、一方の支持プレート426,436が他方の支持プレート426または支持プレート436を押動させることができるとともに、隣り合う山型プレート420,420または隣り合う押込みプレート430,430が所定寸法離間された状態を保持することができる。
【0067】
次いで、ガイド溝420b,420b,…とガイド溝430b,430b,…とによって形成される刺串通路H5を利用して、波状に成形された鶏皮C1に刺串Sを串刺すことで、見栄えのよい帯状の大片に切断された鶏皮C1からなる鶏皮串T1を容易に製造することができる(
図7参照)。
【0068】
以上説明したように、本実施例4における薄状食材用串刺装置301は、小片の鶏皮C,C,…に切断する工程を省略することができることから、作業性が良い。
【0069】
また、押込みユニット303を山型プレート20,20,…に対して、前方側から後方側に向けて斜め下方へとスライド移動させるようにすれば、帯状の鶏皮C1の短手方向に亘ってカッター305,305,…が横切るため、より確実に帯状の鶏皮C1を切断することができる。
【0070】
以上、本発明の実施例1~4を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例1~4に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0071】
例えば、前記実施例1~4では、作業者の手作業により鶏皮串Tの串打ちが行われるとして説明したが、これに限らず、オートメーション化されていてもよい。例えば、ベルトコンベアを用いて複数の小片に切断された鶏皮Cを山型プレートの先端部に載置し、電動シリンダを用いて上方から押込みプレートを第1パレットに向けて押込み鶏皮Cを成形し、空気シリンダ等を用いて刺串Sを串刺通路に沿って撃ち出し、ロボットアームを用いて鶏皮串Tの形状を整えることで、オートメーションで鶏皮串Tの串打ちをすることができる。尚、オートメーション化については、上記の態様は一例であり、限定されるものではない。
【0072】
薄状食材は、鶏皮である態様として説明したが、これに限らず、スライスされた豚バラ肉や烏賊等が用いられてもよく、限定されるものではない。
【0073】
薄状食材用串刺装置は、一組のベースユニットおよび押込みユニットが対向配置されている態様として説明したが、これに限らず、例えば、ベースユニットおよび押込みユニットの短手方向や長手方向に連接されていてもよい。この態様であれば、一度の押込みユニットの押込みで複数の鶏皮串T,T,…分の鶏皮C,C,…を成形することができる。
【0074】
前記実施例1~4では、山型プレートまたは押込みプレートは略等間隔に配置される態様として説明したが、これに限らず、各山型プレートや各押込みプレートを第1パレットまたは第2パレットの長手方向に移動可能に形成されていてもよい。この態様であれば、鶏皮の厚みに応じて隣り合う山型プレート間の離間寸法や隣り合う押込みプレート間の離間寸法を調節することができる。
【0075】
また、山型プレートまたは押込みプレートは、第1パレットまたは第2パレットと一体に形成されている態様として説明したが、これに限らず、山型プレートまたは押込みプレートの並設方向に延びる軸部材等で連結されていてもよく、限定されるものではない。
【0076】
ガイド溝は、山型プレートまたは押込みプレートの先端部から第1パレットまたは第2パレット側に向けて凹む態様であるとして説明したが、これに限らず、例えば、前側端部から後側端部に向けて凹む態様であってもよく、刺串Sの串刺方向に対して略垂直方向に凹む態様であればよい。
【0077】
刺串配置用の凹溝は、有底であるガイド溝を例に説明したが、これに限らず、底のないスリット形状に形成されていてもよい。
【0078】
すべり防止部は、スパイクである態様として説明したが、これに限らず、リブ状に形成されたゴムであってもよく、限定されるものではない。また、スパイクは、一つの山型プレートに前後一つずつ配置される個数は、限定するものではない。また、該スパイクが当接する対向面に、ゴム等の緩衝材が配置されていてもよい。
【0079】
位置決め部は、位置決めピン23やアーム板204である態様として説明したが、これに限らず、第1パレットを前後に挟んで上方に延びる板状の部材であってもよく、第1パレットから上方に向けて延びるパイプに第2パレットから下方に向けて延びる軸が挿入される態様であってもよく、限定されるものではない。
【符号の説明】
【0080】
1 薄状食材用串刺装置
2 ベースユニット(第1ユニット)
3 押込みユニット(第2ユニット)
20 山型プレート(歯状体)
20b ガイド溝(凹溝)
21 第1パレット
22 スパイク(すべり防止部)
23 位置決めピン(位置決め部)
30 押込みプレート(歯状体)
30b ガイド溝(凹溝)
31 第2パレット
101 薄状食材用串刺装置
102 ベースユニット(第1ユニット)
103 押込みユニット(第2ユニット)
120 山型プレート(歯状体)
120b ガイド溝(凹溝)
121 第1パレット
130 押込みプレート(歯状体)
130b ガイド溝(凹溝)
131 第2パレット
132 スパイク(すべり防止部)
140 押圧手段
201 薄状食材用串刺装置
202 ベース体(第1ユニット)
203 押込み体(第2ユニット)
204 アーム板(位置決め部)
220 山型プレート(歯状体)
220b 溝部
221 第1パレット
230 押込みプレート
301 薄状食材用串刺装置
303 押込みユニット
305 カッター
330 押込みプレート
C 鶏皮
C1 帯状に切断された鶏皮
H1,H2,H3,H5 刺串通路
S 刺串
T 鶏皮串