IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エイクラ通信の特許一覧

<図1>
  • 特許-動揺測定システム 図1
  • 特許-動揺測定システム 図2
  • 特許-動揺測定システム 図3
  • 特許-動揺測定システム 図4
  • 特許-動揺測定システム 図5
  • 特許-動揺測定システム 図6
  • 特許-動揺測定システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】動揺測定システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/04 20060101AFI20220511BHJP
   B61K 9/08 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B61L25/04
B61K9/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018561347
(86)(22)【出願日】2018-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2018000100
(87)【国際公開番号】W WO2018131544
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2017001718
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591173224
【氏名又は名称】株式会社エイクラ通信
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】宗像 和則
(72)【発明者】
【氏名】赤井 正人
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-089150(JP,A)
【文献】特開2012-106554(JP,A)
【文献】特表2009-521681(JP,A)
【文献】特開2003-272080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/04
B61K 9/08
G08C 15/00
G08C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度信号送信装置と、中継式の第一の速度信号受信装置と、第二の速度信号受信装置と、第一の動揺測定装置と、第二の動揺測定装置を備える動揺測定システムであって、
前記速度信号送信装置は、
移動体の速度を測定する速度発電機と電気的に接続される送信装置側コネクタと、
前記移動体の速度に応じて変化する電気信号であって、前記速度発電機から出力される電気信号である速度信号を、パルス信号に変換する変換部と、
前記速度信号が有する速度についての情報を速度情報と定義するとき、
前記パルス信号について、電気的な絶縁をして、且つ、前記速度情報を含む信号である速度情報信号を出力する絶縁部と、
前記速度情報信号を含む無線信号を送信する無線送信処理部と、を備え
前記第一の速度信号受信装置は、
前記速度信号送信装置から送信される前記無線信号を受信する第一の無線受信処理部と、
前記無線信号から前記速度情報信号を復調する第一の復調回路と、
前記速度情報信号から前記速度信号と同等の波形である復元波形を復元する第一の波形復元部と、
前記波形復元部により復元された前記復元波形を、前記第一の動揺測定装置に送る第一の受信装置側コネクタと、
前記無線信号を増幅して、再び無線送信することで、前記第二の速度信号受信装置に転送する中継式速度信号送信部と、を備え、
前記第二の速度信号受信装置は、
前記中継式速度信号送信部から転送される前記無線信号を受信する第二の無線受信処理部と、
前記無線信号から前記速度情報信号を復調する第二の復調回路と、
前記速度情報信号から前記速度信号と同等の波形である復元波形を復元する第二の波形復元部と、
前記波形復元部により復元された前記復元波形を、前記第二の動揺測定装置に送る第二の受信装置側コネクタと、を備える
ことを特徴とする動揺測定システム
【請求項2】
速度信号送信装置と、中継式の第一の動揺測定装置と、第二の動揺測定装置と、を備える動揺測定システムであって、
前記速度信号送信装置は、
移動体の速度を測定する速度発電機と電気的に接続される送信装置側コネクタと、
前記移動体の速度に応じて変化する電気信号であって、前記速度発電機から出力される電気信号である速度信号を、パルス信号に変換する変換部と、
前記速度信号が有する速度についての情報を速度情報と定義するとき、
前記パルス信号について、電気的な絶縁をして、且つ、前記速度情報を含む信号である速度情報信号を出力する絶縁部と、
前記速度情報信号を含む無線信号を送信する無線送信処理部と、
を備え
前記第一の動揺測定装置は、
前記速度信号送信装置から送信される前記無線信号を受信する第一の無線受信処理部と、
前記無線信号に含まれる前記速度情報信号に基づいて、前記移動体の動揺測定を行う第一の動揺測定処理部と、
前記速度信号送信装置から送信される前記無線信号を増幅して、再び無線送信することで、前記第二の動揺測定装置に転送する中継式速度信号送信部と、
を備え、
前記第二の動揺測定装置は、
前記中継式速度信号送信部から転送される前記無線信号を受信する第二の無線受信処理部と、
前記無線信号に含まれる前記速度情報信号に基づいて、前記移動体の動揺測定を行う第二の動揺測定処理部と、を備える
ことを特徴とする動揺測定システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等の移動体に備えられる速度発電機からの速度信号を、無線で送受信する速度信号送受信装置及びそれらを含む動揺測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体、特に鉄道車両においては、輸送品質を表す指標として、振動によって生じる加速度、すなわち動揺値は大切な指標であり、動揺値が大きい位置を特定することは、事故を未然に防ぐためにも極めて重要である。このため鉄道事業者は、定期的に動揺値を計測して動揺値の大きな位置を特定し、それを元に線路の管理をおこなっている。
【0003】
従来、鉄道車両の位置を特定するためには、線路上に設けられたキロポストと呼ばれる標識を目視で確認する方法や、車軸の回転を測定して速度を算出しそれを元に位置を確認する方法が用いられている(例えば、特開2001-287647号公報参照)。
【0004】
図7は、従来の動揺測定の方法を説明する概念図である。動揺測定装置300の操作者は、図7(A)のように、車両70に動揺測定装置300を設置して、動揺値を測定する。このとき動揺値の大きな地点が線路上のどの場所であるかを特定するために、動揺測定装置の操作者が、目視でキロポスト295を確認し、動揺測定装置へ、随時、入力する方法が用いられている。またより細かく車両の位置を特定するために、速度発電機290による速度測定を同時に行う方法も用いられている。すなわち、車両70の設備として設けられている速度発電機290から速度信号を取得し、動揺測定装置300で動揺値と同時測定することで位置を特定する。
【0005】
図7(B)に、速度発電機290と、従来の動揺測定装置300の接続方法を示す。速度発電機290(図示省略)からの速度信号は、車両70の車室内に設けられた速度発電機接続箱320から、コネクタを介してケーブル310によって動揺測定装置300に送られる。操作者は、動揺測定装置300において取得した時刻、速度、位置(キロ程)、動揺値を、記録用紙330に出力し、さらにコンパクトフラッシュ(登録商標)等の記憶媒体に記録して、測定後にPC(パーソナルコンピュータ)等で解析を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-287647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし速度発電機290で生成する速度信号は、一般に100V以上となることも多く、また鉄道車両70には、高電圧を発生する装置類が多数設置されているため、電磁波ノイズも多い環境でもある。そこでケーブル310は、感電事故を防ぎ、ノイズにも強くするために、二重絶縁ケーブル等を用いることが多い。しかしその種のケーブルは、重く、また取り扱いも面倒である。また複数の動揺測定装置を、複数の車両にまたがって設置して同時に測定を行うことも困難である。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、既存の車両設備である速度発電機等の資産を利用しつつ、動揺測定装置を設置する場所の制約が無く、且つ、複数の動揺測定装置による同時測定も可能な動揺測定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、移動体の速度を測定する速度発電機と電気的に接続される送信装置側コネクタと、前記送信装置側コネクタ近傍に配置される筐体部を有し、前記筐体部には、前記移動体の速度に応じて変化する電気信号であって、前記速度発電機から出力される電気信号である速度信号を、パルス信号に変換する変換部と、前記速度信号が有する速度についての情報を速度情報と定義するとき、前記パルス信号について、電気的な絶縁をして、且つ、前記速度情報を含む信号である速度情報信号を出力する絶縁部と、前記速度情報を含む無線信号を送信する無線送信処理部とを備えることを特徴とする速度信号送信装置を提供する。
【0010】
上記(1)に記載する発明によれば、車両設備として備えられている速度発電機から速度信号を取得できる送信装置側コネクタを有するため、車両の速度を測定するために既存の設備を利用でき、安価であり、またこれまで蓄積してきたデータとの比較もし易い。また絶縁部を有しているので、高電圧ノイズが生じがちな鉄道車両設備という特殊な環境下において、適切に信号を取得できる。また逆に、本発明に係る速度信号送信装置から、速度発電機に接続するATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)等の他の車両設備へ、電気的なノイズや故障の影響を与えることも防ぐことができる。
【0011】
さらに絶縁部の下流には、速度情報を含んだ無線信号を送信する無線送信処理部を備えているので、速度信号の情報である速度情報を無線で送信することができ、速度情報を取得するためにこれまで必須であった重く長いケーブルを不要のものとする著しく優れた効果を奏する。
【0012】
(2)本発明は、前記無線送信処理部が、振幅変調をおこなう変調回路である振幅変調回路を含むことを特徴とする上記(1)に記載の速度信号送信装置を提供する。
【0013】
上記(2)に記載する発明によれば、速度情報を含む無線信号を、振幅変調方式で
変調した信号として送信できるので、複数の車両間にまたがるような距離でも速度情報を授受できるという極めて優れた効果を奏する。
【0014】
(3)本発明は、前記無線送信処理部が、周波数変調をおこなう変調回路である周波数変調回路を含むことを特徴とする上記(1)に記載の速度信号送信装置を提供する。
【0015】
上記(3)に記載する発明によれば、速度情報を含む無線信号を、周波数変調方式で変調した信号として送信できるので、複数の車両間にまたがるような距離でも、比較的ノイズの影響の少ない態様で、速度情報を授受できるという極めて優れた効果を奏する。
【0016】
(4)本発明は、前記無線処理部が、デジタル変調をおこなう変調回路であるデジタル変調回路を含むことを特徴とする上記(1)に記載の速度信号送信装置を提供する。
【0017】
上記(4)に記載する発明によれば、速度情報を含む無線信号を、デジタル変調方式で変調した信号として送信できるので、誤り訂正等の機能を利用して、正確に速度情報を授受できるという優れた効果を奏する。
【0018】
(5)本発明は、移動体の速度情報を無線信号として送信する速度信号送信装置から送信される前記無線信号を受信する無線受信処理部と、前記無線信号から前記速度情報信号を復調する復調回路と、前記速度情報信号から前記速度信号と同等の波形である復元波形を復元する波形復元部と、前記波形復元部により復元された前記復元波形を、外部装置に送る受信装置側コネクタを備えることを特徴とする速度信号受信装置を提供する。
【0019】
従来、速度発電機からの速度信号は、速度発電機と電気的に接続されたケーブルを引き回して利用されていた。そのため速度信号を利用する測定装置は、速度発電機の信号の出口である速度発電機接続箱の近傍において測定を行うか、長大なケーブルを使用しなければならないという制約があった。
【0020】
上記(5)に記載する発明に係る速度信号受信装置によれば、速度信号送信装置から移動体の速度情報を含む無線信号を受信する無線受信処理部と、無線信号を復調して得られた速度情報信号を、前記速度信号と同等の波形である復元波形に復元する波形復元部を有するので、速度発電機の近傍でなくても、速度発電機が生成する速度信号と同等の信号を利用することができるという極めて優れた効果を奏する。
【0021】
また波形復元部により復元された復元波形を送るための受信装置側コネクタを有するので、速度信号を利用することを前提とした既存の測定装置が、復元された速度信号を容易に利用できるという利点を有する。たとえば鉄道事業者がすでに有している、速度信号を直接速度発電機に接続して使用する従来の動揺測定装置を、そのまま利用することができるので、費用面でも大きな利点がある。
【0022】
(6)本発明は、前記速度信号送信装置から送信される前記無線信号を増幅して、再び無線送信する中継式速度信号送信部を、さらに備えることを特徴とする上記(5)に記載の速度信号受信装置を提供する。
【0023】
いずれの無線通信規格についても、信号の授受が可能な距離は有限である。金属部分の多い鉄道車両内においては、無線通信が可能な距離は限られており、特に複数の車両間での通信は簡単ではない。
【0024】
上記(6)に記載する発明によれば、一度受信した無線信号を、増幅して再び中継送信できる中継式速度信号送信部を、速度信号受信装置が備えることで、速度信号を速度発電機が設置された車両以外の車両や距離の離れた場所でも利用することができるようになるという優れた効果を奏する。
【0025】
(7)本発明は、上記(5)又は(6)に記載の速度信号受信装置と、前記速度信号受信装置に接続されて、前記移動体の動揺測定を行う動揺測定装置とを備えることを特徴とする動揺測定システムを提供する。
【0026】
上記(7)に記載する発明によれば、速度信号送信装置から送信される無線信号を取得できる速度信号受信装置と、該速度信号受信装置に接続されて、移動体の動揺測定を行う動揺測定装置を動揺測定システムが備えているので、車両内での速度発電機の設置場所に制約されずに、速度情報と動揺値を取得できる動揺測定システムを実現できるという優れた効果を奏する。
【0027】
(8)本発明は、上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載の速度信号送信装置を、さらに備えることを特徴とする上記(7)に記載の動揺測定システムを提供する。
【0028】
上記(8)に記載する発明によれば、移動体の速度情報を含む無線信号を送信する速度信号送信装置と、該無線信号を受信する速度信号受信装置と、該速度信号受信装置に接続されて移動体の動揺測定を行う動揺測定装置を、動揺測定システムが備えているので、車両内での速度発電機の設置場所に制約されずに、本動揺測定システムだけで、速度情報と動揺値を略同時に取得できるシステムを構築できるという極めて優れた効果を奏する。
【0029】
(9)本発明は、上記(5)に記載の前記第一の速度信号受信装置と、上記(6)に記載の前記第二の速度信号受信装置と、前記速度信号受信装置に各々接続される複数の前記動揺測定装置と、を備え、移動体の速度情報を無線信号として送信する速度信号送信装置から送信されて前記第二の速度信号受信装置で受信される前記無線信号を、前記中継式速度信号送信部により、前記第一の速度信号受信装置に転送することを特徴とする動揺測定システムを提供する。
【0030】
上記(9)に記載する発明によれば、一つの速度発電機の速度信号を中継接続することで、複数の動揺測定装置で同じ速度信号を使用して動揺測定をすることが可能になるという優れた効果を奏する。
【0031】
なお本(9)に記載する発明によれば、鉄道事業者がすでに有している、速度発電機に直接接続して使用する従来の動揺測定装置を、そのまま利用することができるので、費用面でも大きな利点がある。
【0032】
(10)本発明は、移動体の速度情報を含む無線信号を送信する速度信号送信装置から、前記無線信号を受信する無線受信処理部と、前記移動体の動揺測定を行う動揺測定処理部と、を備えることを特徴とする動揺測定装置を提供する。
【0033】
上記(10)に記載する発明によれば、動揺測定装置自体が、速度情報を含む無線信号を送信する速度信号送信装置から、該無線信号を受信する無線受信処理部等を有し、移動体の速度と動揺値を同時に測定することができる。従って、特別に速度信号受信装置を用意せずとも、車両内での速度発電機の設置場所に制約されずに、速度情報と動揺値を取得できるという優れた効果を奏する。
【0034】
(11)本発明は、前記速度情報に基づいてキロ程を算出するキロ程算出部をさらに備えることを特徴とする上記(10)に記載の動揺測定装置を提供する。
【0035】
上記(11)に記載する発明によれば、速度情報から所定の起点からの距離であるキロ程を算出するキロ程算出部を備えるので、どの地点で大きな動揺値が測定されたかという位置特定が極めて容易になるという大きな効果を奏する。
【0036】
(12)本発明は、前記速度情報を含む無線信号を送信する中継式速度信号送信部をさらに備えることを特徴とする上記(10)又は(11)に記載の動揺測定装置を提供する。
【0037】
上記(12)に記載する発明によれば、一度受信した無線信号を、増幅して再び中継送信できる中継式速度信号送信部を、動揺測定装置自体が備えるので、別に中継器等を用意しなくても、同一の速度信号を、速度発電機が設置された車両以外の車両や距離の離れた場所でも利用することができるようになるという優れた効果を奏する。
【0038】
(13)本発明は、上記(1)又は(2)に記載の前記速度信号送信装置と、上記(10)乃至(12)のうちのいずれかに記載の前記動揺測定装置とを備えることを特徴とする動揺測定システムを提供する。
【0039】
上記(13)に記載する発明によれば、移動体の速度情報を含む無線信号を送信する速度信号送信装置と、該無線信号を受信する無線受信処理部等を有する動揺測定装置を、動揺測定システムが備えているので、車両内での速度発電機の設置場所に制約されずに、本動揺測定システムだけで、速度情報と動揺値を略同時に取得できるシステムを構築できるという極めて優れた効果を奏する。
【0040】
(14)本発明は、上記(10)又は(11)に記載の前記第三の動揺測定装置と、上記(12)に記載の前記第四の動揺測定装置と、上記(1)乃至(4)のうちいずれかに記載の前記速度信号送信装置から無線で送信されて前記第四の動揺測定装置で受信される前記無線信号を、前記中継式速度信号送信部により、前記第三の動揺測定装置に転送することを特徴とする動揺測定システムを提供する。
【0041】
上記(14)に記載する発明によれば、一つの速度発電機の速度信号を中継接続することで、複数の動揺測定装置で同じ速度信号を使用して動揺測定をすることが可能になるという優れた効果を奏する。
【発明の効果】
【0042】
本発明の請求項1~14記載の速度信号送信装置、速度信号受信装置、動揺測定装置、動揺測定システムによれば、車両内における速度発電機の設置場所に制約されることなく、速度信号を利用した計測が可能になるという極めて優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の第一実施形態に係る動揺測定システムの説明図である。
図2】(A)速度信号送信装置の構成図である。(B)速度信号受信装置の構成図である。
図3】(A)速度発電機が生成する速度信号の時間変化である。(B)速度信号送信装置が備える絶縁部の出力である速度情報信号の時間変化である。(C)無線送信処理部が備える変調回路が、振幅変調回路である場合において、速度信号送信装置が送信する無線信号の時間変化である。(D)車両内で使用される動揺測定システムの動作説明図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る動揺測定システムの説明図と構成図である。(A)中継式速度信号送信部を備える速度信号受信装置の構成図である。(B)中継式速度信号送信部を備える速度信号受信装置の構成図と動作説明図である。
図5】本発明の第三実施形態に係る動揺測定装置の構成図である。
図6】本発明の第四実施形態に係る動揺測定システムの動作説明図である。
図7】(A)速度発電機と動揺測定装置の組み合わせによる従来の測定方法を説明する概念図である。(B)速度発電機と動揺測定装置の接続方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本考案の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0045】
図1図6は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。なお、各図において一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する。
【0046】
図1に本発明の第一実施形態に係る動揺測定システム1の説明図を示す。動揺測定システム1は、速度信号送信装置10と、速度信号受信装置20と、動揺測定装置30で構成される。
【0047】
速度信号送信装置10は、移動体である車両70の速度を測定する速度発電機50と電気的に接続される送信装置側コネクタ17と、送信装置側コネクタ17の近傍に配置される送信装置筐体部15を備える。速度信号送信装置10について、使用者は、速度発電機50からの信号の取り出し口である速度発電機接続箱40の接続箱側コネクタ45に送信装置側コネクタ17を接続し、移動体の速度に応じて変化する電気信号であって、速度発電機50から出力される電気信号である速度信号を取得する。
【0048】
速度信号受信装置20は、受信装置筐体部25と、受信装置側コネクタ27を備える。受信装置側コネクタ27は、動揺測定装置30の動揺測定装置側コネクタ35に接続されて、復元波形を動揺測定装置30に送る。
【0049】
速度信号送信装置10と、速度信号受信装置20は、無線接続80されているので、結果として速度発電機50が生成する速度信号が、速度信号送信装置10から速度信号受信装置20へ伝達される。
【0050】
図2(A)は、速度信号送信装置10の構成図である。速度信号送信装置10の送信装置筐体部15は、例えば抵抗分割回路やローパスフィルターを備える波形整形回路90と、速度発電機50から出力される電気信号である速度信号をパルス信号に変換する変換部110と、パルス信号について、電気的な絶縁をして、且つ、パルス信号が有する速度情報の伝達を、前記速度情報を含んだ信号である速度情報信号として出力する絶縁部100と、無線送信処理部120を備える。変換部110は、いわゆるコンパレータであり、絶縁部100は、光結合によって情報を伝達する、いわゆるフォトカプラである。絶縁部100については、場合によっては絶縁トランスを使用しても良い。無線送信処理部120は、速度情報を含む無線信号を送信する。また無線送信処理部120は、振幅変調をおこなう変調回路である振幅変調回路125を含む。
【0051】
なお送信装置筐体部15は、無線送信処理部120を備えるので、送信波を通す非金属部分を備えることが望ましい。
【0052】
図2(B)は、速度信号受信装置20の構成図である。速度信号受信装置20は、無線信号を受信する無線受信処理部130と、速度信号送信装置10から送信された無線信号から速度情報信号を復調する復調回路135と、復調されて得られた速度情報信号から、速度信号と同等の波形である復元波形を復元する波形復元部140と、移動体の動揺測定を行う動揺測定装置30へ、波形復元部140により復元された復元波形を送るための受信装置側コネクタ27とを備える。
【0053】
なお受信装置筐体部25は、無線受信処理部130を備えるので、受信波を通す非金属部分を備えることが望ましい。
【0054】
次に、上記した実施の形態の動作を説明する。
【0055】
図3(A)は、速度発電機50が生成する速度信号の電圧の時間変化である。速度信号は、車両が備える車軸の回転に対応したサイン波様の波形である。速度信号は、変換部110でパルス信号に変換されて、電気的絶縁のために絶縁部100に入力される。本第一実施形態においては、変換部110はコンパレータであり、その参照電圧Vrefより高い電圧になるときに、パルス信号はハイレベルとなる。図3(B)は、速度信号送信装置10が備える絶縁部100の出力である速度情報信号の時間変化である。
【0056】
図3(C)は、無線送信処理部120が備える変調回路が、振幅変調回路である場合において、速度信号送信装置10が送信する無線信号の時間変化である。該無線信号を受信する速度信号受信装置20は、無線受信処理部130で受信して、復調回路135で復調して図2(B)で示す速度情報信号を得る。そして波形復元部140で速度信号と同等の波形である復元波形を復元して、動揺測定装置30に送る。
【0057】
図3(D)は、車両内で使用される動揺測定システム1の動作説明図である。車両70内に設置された速度発電機50で生成される速度信号から取得した速度情報を、速度信号送信装置10は、速度信号受信装置20に無線送信する。速度信号受信装置20は、その無線信号を受信して、速度情報を動揺測定装置30に送る。速度信号受信装置20と動揺測定装置30の組み合わせは、複数あっても良い。
【0058】
本第一実施形態に係る速度信号送信装置10は、車両設備として備えられている速度発電機50から速度信号を取得できる送信装置側コネクタ17を有するため、車両70の速度を測定するために既存の設備を利用でき、安価であり、またこれまで蓄積してきたデータとの比較もし易い。また絶縁部100を有しているので、高電圧ノイズが生じがちな鉄道車両設備という特殊な環境下において、適切に信号を取得できる。また逆に、本発明に係る速度信号送信装置10から、速度発電機50に接続するATS等の他の車両設備へ、電気的なノイズや故障の影響を与えることも防ぐことができる。
【0059】
さらに絶縁部100の下流には、速度情報を含んだ無線信号を送信する無線送信処理部120を備えているので、速度信号の情報である速度情報を無線で送信することができ、速度情報を取得するためにこれまで必須であった重く長いケーブルを不要のものとする著しく優れた効果を奏する。
【0060】
速度信号送信装置10は、速度情報を含む無線信号を、振幅変調方式で変調した信号として送信できるので、複数の車両間にまたがるような距離でも速度情報信号を授受できるという極めて優れた効果を奏する。
【0061】
従来、速度発電機50からの速度信号は、速度発電機50と電気的に接続されたケーブルを引き回して利用されていた。そのため速度信号を利用する測定装置は、速度発電機50の信号の出口である速度発電機接続箱40の近傍において測定を行うか、長大なケーブルを使用しなければならないという制約があった。速度信号受信装置20によれば、速度信号送信装置10から移動体の速度情報を含む無線信号を受信する無線受信処理部130と、無線信号を復調して得られた速度情報信号を、前記速度信号と同等の波形である復元波形に復元する波形復元部140を有するので、速度発電機50の近傍でなくても、速度発電機50が生成する速度信号と同等の信号を利用することができるという極めて優れた効果を奏する。
【0062】
また波形復元部140により復元された復元波形を送るための受信装置側コネクタ27を有するので、速度信号を利用することを前提とした既存の測定装置が、復元された速度信号を容易に利用できるという利点を有する。たとえば鉄道事業者がすでに有している、速度信号を直接速度発電機50に接続して使用する従来の動揺測定装置を、そのまま利用することができるので、費用面でも大きな利点がある。
【0063】
なお本第一実施形態においては、動揺測定装置30が速度信号と同等の波形を利用する態様を説明したが、速度信号や速度情報信号の立ち上がりエッジを検出して、周波数を算出し、その数値を速度信号送信装置10から送信し、速度信号受信装置20で受信して利用しても良い。また速度信号受信装置20において波形復元部140を省略して、復調された速度情報信号の立ち上がりエッジを検出して周波数を算出しても良い。これらの変形実施例の詳細な構成等については、周知技術なので記載を省略する。
【0064】
以上のような構成を有する動揺測定システム1により、既存の車両設備である速度発電機等の資産を利用しつつ、動揺測定装置30を設置する場所の制約が無く、且つ、複数の動揺測定装置による同時測定も可能な動揺測定システムが実現される。
【0065】
図4は本発明の第二実施形態に係る動揺測定システム1の説明図である。図4(A)は、中継式速度信号送信部270を備える速度信号受信装置22の構成図である。速度信号受信装置22は、中継式速度信号送信部270を備え、無線受信処理部130が受信した速度情報を含む無線信号を増幅して、再び無線送信する。その他の構成は、第一実施形態における速度信号受信装置20と同じなので記載を省略する。
【0066】
図4(B)は、中継式速度信号送信部270を備える速度信号受信装置22を接続した第一の動揺測定装置250の動作説明図と構成図である。速度信号受信装置22は、中継式速度信号送信部270を備え、速度信号送信装置10から受信した無線信号を増幅して中継し、再び送信する。そして速度信号受信装置20を接続した第二の動揺測定装置260が、無線信号を受信することで、速度発電機50の生成する速度信号が有する速度情報を利用可能になる。
【0067】
すなわち、第二実施形態に係る動揺測定システム1は、中継式速度信号送信部270を有する速度信号受信装置22を接続している第一の速度信号受信装置と、速度信号受信装置20を接続している第二の速度信号受信装置と、速度信号受信装置に各々接続される複数の前記動揺測定装置と、を備え、速度信号送信装置から無線で送信されて速度信号受信装置22で受信される無線信号を、中継式速度信号送信部270により、速度信号受信装置20に転送することを特徴とする。
【0068】
中継式速度信号送信部を有する速度信号受信装置22が接続された第一の動揺測定装置250は、従来の動揺測定装置30でよく、第一の動揺測定装置250全体の制御を行う制御部150と、記録装置200と、中継式速度信号送信部を有する速度信号受信装置22からの信号をカウントするカウンタ部240と、付帯情報等を入力するための入力手段170と、動揺値(加速度)を測定する動揺測定手段180と、記録用紙に動揺波形等の印刷をおこなうプリンタやモニタ等の出力手段190と、バス160を備える。
【0069】
制御部150はCPU152、RAM154およびROM156などから構成され、各種制御を実行する。CPUはいわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて様々な機能を実現する。RAMはCPUの作業領域、記憶領域として使用され、ROMはCPUで実行されるオペレーティングシステムやプログラムを記憶する。
【0070】
記録装置200は、プログラム等を記録するプログラム等記録領域210と、動揺値を記録する動揺値記録領域220と、速度信号受信装置20から取得した速度情報を記録する速度情報記録領域230を備える。
【0071】
いずれの無線通信規格についても、信号の授受が可能な距離は有限である。金属部分の多い鉄道車両内においては、無線通信が可能な距離は限られており、特に複数の車両間での通信は簡単ではない。
【0072】
本第二実施形態に係る動揺測定システム1によれば、一度受信した無線信号を、増幅して再び中継送信できる中継式速度信号送信部270を、速度信号受信装置22が備えることで、速度信号を速度発電機50が設置された車両以外の車両や距離の離れた場所でも利
用することができるようになるという優れた効果を奏する。
【0073】
移動体の速度情報を含む無線信号を送信する速度信号送信装置10と、該無線信号を受信する速度信号受信装置20と、該速度信号受信装置20に接続されて移動体の動揺測定を行う動揺測定装置30を、動揺測定システム1が備えているので、車両70内での速度発電機50の設置場所に制約されずに、本動揺測定システム1だけで、速度情報と動揺値を略同時に取得できるシステムを構築できるという極めて優れた効果を奏する。
【0074】
また一つの速度発電機50の速度信号を中継接続することで、複数の動揺測定装置で同じ速度信号を使用して動揺測定をすることが可能になるという優れた効果を奏する。
【0075】
なお、鉄道事業者がすでに有している、速発電機に直接接続して使用する従来の動揺測定装置を、そのまま利用することができるので、費用面でも大きな利点がある。
【0076】
図5は、本発明の第三実施形態に係る無線受信処理部130を備えた動揺測定装置285の構成図である。前述の第一実施形態および第二実施形態において、動揺測定装置30は、速度情報を含む無線信号を受信する機能が備えられていない。これに対して本実施形態に係る無線受信処理部130を備えた動揺測定装置285は、無線受信処理部130、無線信号を速度情報信号へ復調する復調回路135等が備えられている。その他の構成は、図4(B)に記載した動揺測定装置30と同様なので記載を省略する。
【0077】
本第三実施形態に係る動揺測定装置285自体が、速度情報を含む無線信号を送信する速度信号送信装置10から、該無線信号を受信する無線受信処理部130等を有するので、移動体の速度と動揺値を同時に測定することができる。従って、特別に速度信号受信装置を用意せずとも、車両内での速度発電機50の設置場所に制約されずに、速度情報と動揺値を取得できるという優れた効果を奏する。
【0078】
なお制御部150が、取得された速度情報に基づいてキロ程を算出するキロ程算出をおこなっても良い。すなわち無線受信処理部130を備えた動揺測定装置285は、速度情報に基づいてキロ程を算出するキロ程算出部(図示省略)をさらに備えて良い。
【0079】
速度情報から所定の起点からの距離であるキロ程を算出するキロ程算出機能を備えることになるので、どの地点で大きな動揺値が測定されたかという位置特定が極めて容易になるという大きな効果を奏する。
【0080】
また速度情報を含む無線信号を送信する中継式速度信号送信部(図示省略)をさらに備えても良い。
【0081】
一度受信した無線信号を、増幅して再び中継送信できる中継式速度信号送信部270を、動揺測定装置285自体が備えるので、別に中継器等を用意しなくても、同一の速度信号を、速度発電機50が設置された車両以外の車両や距離の離れた場所でも利用することができるようになるという優れた効果を奏する。
【0082】
図6は、本発明の第四実施形態に係る動揺測定システム1の動作説明図である。動揺測定システム1は、中継可能な動揺測定装置280を複数備える。言い換えると、動揺測定システム1は、前述した第三実施形態に記載した速度情報を含む無線信号を中継して送信する中継式速度信号送信部を有する動揺測定装置を複数備える。
【0083】
本第四実施形態に係る動揺測定システム1によれば、一つの速度発電機50の速度信号を中継接続することで、同じ速度信号を使用して、複数の動揺測定装置280で動揺測定をすることが可能になるという優れた効果を奏する。
【0084】
なお中継可能な動揺測定装置280の代わりに、本発明の第二実施形態の記載中で述べた、中継式速度信号送信部270を備える速度信号受信装置22を接続した動揺測定装置30を混在して使用してもよく、場合によっては中継機能の無い速度信号受信装置20を混在させて使用しても良い。
【0085】
尚、本発明に係る速度信号送信装置、速度信号受信装置、動揺測定システムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0086】
例えば変形実施例として、速度信号送信装置における無線送信処理部が、周波数変調をおこなう変調回路である周波数変調回路を備えても良い。速度情報を含む無線信号を、周波数変調方式で変調した信号として送信できるので、複数の車両間にまたがるような距離でも、比較的ノイズの影響の少ない状態で、速度情報を授受できるという極めて優れた効果を奏する。もちろんこの場合には、速度信号受信装置側に備える復調回路として、周波数変調された無線信号を復調できるものを用意すべきことは言うまでもない。
【0087】
他の変形実施例としては、速度信号送信装置における無線送信処理部が、デジタル変調をおこなう変調回路であるデジタル変調回路を備えても良い。速度情報を含む無線信号を、デジタル変調方式で変調した信号として送信できるので、誤り訂正等の機能を利用して、正確に速度情報を授受できるという優れた効果を奏する。もちろんこの場合にも、速度信号受信装置側に備える復調回路として、デジタル変調された無線信号を復調できるものを用意すべきことは言うまでもない。使用する無線通信の規格としては、いわゆるBluetooth(登録商標)や、Wi-Fi(登録商標)といったものを使用しても良い。
【0088】
なお周波数変調、デジタル変調の詳細な技術については周知技術であるため記載を省略する。
【符号の説明】
【0089】
1 動揺測定システム
10 速度信号送信装置
15 送信装置筐体部
17 送信装置側コネクタ
20 速度信号受信装置
22 中継式速度信号送信部を有する速度信号受信装置
25 受信装置筐体部
27 受信装置側コネクタ
30 動揺測定装置
35 動揺測定装置側コネクタ
40 速度発電機接続箱
45 接続箱側コネクタ
50 速度発電機
60 ATS等の車両設備
70 車両
80 無線接続
90 波形整形回路
100 絶縁部
110 変換部
120 無線送信処理部
125 変調回路
130 無線受信処理部
135 復調回路
140 波形復元部
150 制御部
152 CPU
154 RAM
156 ROM
160 バス
170 入力手段
180 動揺測定手段
190 出力手段
200 記録装置
210 プログラム等記録領域
220 動揺値記録領域
230 速度情報記録領域
240 カウンタ部
250 第一の動揺測定装置
260 第二の動揺測定装置
270 中継式速度信号送信部
280 中継可能な動揺測定装置
285 無線受信処理部を備えた動揺測定装置
290 速度発電機
295 キロポスト
300 従来の動揺測定装置
310 ケーブル
320 速度発電機接続箱
330 記録用紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7