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特許7070935半導体素子中間体、金属含有膜形成用組成物、半導体素子中間体の製造方法、半導体素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】半導体素子中間体、金属含有膜形成用組成物、半導体素子中間体の製造方法、半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2019554237
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2018042035
(87)【国際公開番号】W WO2019098208
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2017221919
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018060575
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】和知 浩子
(72)【発明者】
【氏名】茅場 靖剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 博文
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙一
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-137835(JP,A)
【文献】特開平11-295544(JP,A)
【文献】特開平05-109779(JP,A)
【文献】特開平04-027121(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208300(WO,A1)
【文献】特開2012-199361(JP,A)
【文献】特表平01-501345(JP,A)
【文献】特開2009-164406(JP,A)
【文献】特開平08-130247(JP,A)
【文献】特開平03-104127(JP,A)
【文献】特開2005-159264(JP,A)
【文献】特開2013-076973(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129248(WO,A1)
【文献】特開2008-235332(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086361(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/30
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/46-21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、多層レジスト層と、を有し、
前記多層レジスト層が、スピンオンカーボン膜及びアモルファスシリコン膜の少なくとも一方を有し、
前記多層レジスト層中に金属含有膜を有し、
前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、
半導体素子中間体。
【請求項2】
前記金属含有膜における、前記ゲルマニウム元素の含有量が30atm%以上である、請求項1に記載の半導体素子中間体。
【請求項3】
前記金属含有膜が、ゲルマニウムの酸化物を含む、請求項1又は請求項2に記載の半導体素子中間体。
【請求項4】
基板と、多層レジスト層と、を有し、
前記多層レジスト層が、二酸化ケイ素膜及び窒化シリコン膜の少なくとも一方を有し、
前記多層レジスト層中に金属含有膜を有し、
前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、スズ元素の含有量が19.1atm%以上である、
半導体素子中間体。
【請求項5】
前記金属含有膜における、前記スズ元素の含有量が19.1atm%以上30atm%以下である、請求項4に記載の半導体素子中間体。
【請求項6】
前記金属含有膜が、スズの酸化物を含む、請求項4又は請求項5に記載の半導体素子中間体。
【請求項7】
前記金属含有膜が、400℃、1atmの雰囲気下にて固体である、請求項1~請求項6のうちいずれか1項に記載の半導体素子中間体。
【請求項8】
前記多層レジスト層の少なくとも1つの層に凹部が形成されており、
前記金属含有膜は、前記凹部の内部に形成され、凹部の底部に接している、請求項1~請求項7のうちいずれか1項に記載の半導体素子中間体。
【請求項9】
前記金属含有膜が、前記多層レジスト層に含まれる少なくとも1つの層である、請求項1~請求項8のうちいずれか1項に記載の半導体素子中間体。
【請求項10】
前記金属含有膜がレジスト膜である、請求項1~請求項9のうちいずれか1項に記載の半導体素子中間体。
【請求項11】
前記金属含有膜が埋め込み絶縁膜である、請求項1~請求項9のうちいずれか1項に記載の半導体素子中間体。
【請求項12】
前記多層レジスト層の少なくとも1つの層に凹部が形成されており、
前記金属含有膜は、前記凹部の内部に形成され、
前記凹部の幅が5nm以上300nm以下である、請求項11に記載の半導体素子中間体。
【請求項13】
請求項1~請求項3のうちいずれか1項、又は請求項1に直接又は間接的に従属する請求項7~請求項12のうちいずれか1項に記載の半導体素子中間体における前記金属含有膜の形成に用いられる組成物であって、
窒素雰囲気下で400℃10分間焼成後のX線光電分光法により測定されるゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、
金属含有膜形成用組成物。
【請求項14】
前記金属含有膜における、前記ゲルマニウム元素の含有量が30atm%以上である、請求項13に記載の金属含有膜形成用組成物。
【請求項15】
ゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウム炭化化合物、ゲルマニウムの水酸化物及びゲルマニウムのハロゲン化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項13又は請求項14に記載の金属含有膜形成用組成物。
【請求項16】
半導体素子中間体における金属含有膜の形成に用いられる組成物であって、
前記半導体素子中間体は、
基板と、多層レジスト層と、を有し、
前記多層レジスト層が二酸化ケイ素膜及び窒化シリコン膜の少なくとも一方を有し、
前記多層レジスト層中に金属含有膜を有し、
前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、スズ元素の含有量が1atm%以上であり、
前記組成物は、窒素雰囲気下で400℃10分間焼成後のX線光電分光法により測定されるスズ元素の含有量が1atm%以上である、
金属含有膜形成用組成物。
【請求項17】
前記金属含有膜における、前記スズ元素の含有量が2atm%以上30atm%以下である、請求項16に記載の金属含有膜形成用組成物。
【請求項18】
スズアルコキシド化合物、スズ炭化化合物、スズの水酸化物及びスズのハロゲン化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項16又は請求項17に記載の金属含有膜形成用組成物。
【請求項19】
窒素雰囲気下で400℃10分間焼成後の屈折率が1.3以上2.0以下である、請求項13~請求項18のうちのいずれか1項に記載の金属含有膜形成用組成物。
【請求項20】
硬化開始温度が300℃以下である、請求項13~請求項19のうちいずれか1項に記載の金属含有膜形成用組成物。
【請求項21】
溶剤を含む、請求項13~請求項20のうちいずれか1項に記載の金属含有膜形成用組成物。
【請求項22】
請求項1~請求項12のうちいずれか1項に記載の半導体素子中間体の製造方法であって、
金属含有膜形成用部材を準備する工程と、
前記金属含有膜形成用部材に対し、スパッタ法により前記金属含有膜を形成する工程と、
を含む、
半導体素子中間体の製造方法。
【請求項23】
請求項1~請求項12のうちいずれか1項に記載の半導体素子中間体の製造方法であって、
金属含有膜形成用部材を準備する工程と、
請求項13~請求項21のうちいずれか1項に記載の金属含有膜形成用組成物を前記金属含有膜形成用部材上に付与する工程と、
付与された前記金属含有膜形成用組成物を焼成する工程と、
を含む
半導体素子中間体の製造方法。
【請求項24】
請求項1~請求項12のうちいずれか1項に記載の半導体素子中間体を準備する工程と、
前記半導体素子中間体をエッチングする工程と、
を含む
半導体素子の製造方法。
【請求項25】
上層及び下層を有するレジスト層を含む部材を用い、上層を露光及びエッチングする工程と、
下層をエッチングする工程と、
下層に形成された凹部に金属含有膜を形成する工程と、
上層を再び露光及びエッチングする工程と、
下層を再びエッチングする工程と、
を含み、
前記レジスト層が、スピンオンカーボン膜及びアモルファスシリコン膜の少なくとも一方を有し、
前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、
半導体素子の製造方法。
【請求項26】
上層及び下層を有するレジスト層を含む部材を用い、上層を露光及びエッチングする工程と、
下層をエッチングする工程と、
下層に形成された凹部に金属含有膜を形成する工程と、
上層を再び露光及びエッチングする工程と、
下層を再びエッチングする工程と、
を含み、
前記レジスト層が、二酸化ケイ素膜及び窒化シリコン膜の少なくとも一方を有し、
前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、スズ元素の含有量が19.1atm%以上である、
半導体素子の製造方法。
【請求項27】
基板上にレジスト層Aを形成する工程と、
前記レジスト層A上に金属含有膜を形成する工程と、
前記金属含有膜上に更に前記レジスト層Aとは異なるレジスト層Bを形成する工程と、
前記レジスト層Bを露光及び現像する工程と、
前記金属含有膜をエッチングする工程と、
前記レジスト層Aをエッチングする工程と、
前記金属含有膜をエッチングガスにより除去する工程と、
を含み、
前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素の含有量が19.1atm%以上である、
半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子中間体、金属含有膜形成用組成物、半導体素子中間体の製造方法、及び半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードマスクを利用してリソグラフィーパターンを基板に転写する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この多層レジスト法には、フォトレジスト膜(即ち、上層レジスト膜)と、上層レジスト膜とはエッチング選択性が異なる下層レジスト膜(例えば、ケイ素含有下層レジスト膜)と、を用いる。多層レジスト法は、下層レジスト膜を上層レジスト膜と被加工基板との間に介在させ、上層レジスト膜にパターンを得た後、上層レジストパターンをエッチングマスクとして、下層レジスト膜にパターンを転写し、更に下層レジストパターンをエッチングマスクとして、被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0003】
このような多層レジスト法で使用される下層レジスト膜の形成等に用いられる組成物として、例えば、国際公開第2017/086361号には、1級窒素原子及び2級窒素原子の少なくとも1つを含むカチオン性官能基とSi-O結合とを有する化合物(A)と、分子内に-C(=O)OX基(Xは、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基である)を3つ以上有し、3つ以上の-C(=O)OX基のうち、1つ以上6つ以下が-C(=O)OH基であり、重量平均分子量が200以上600以下である架橋剤(B)と、極性溶媒(D)と、を含む、半導体用膜組成物が記載されている。
【0004】
また、特開2014-134581号公報には、(A)成分として、1種以上の下記一般式(A-1)で示される加水分解性金属化合物を加水分解若しくは縮合、又はその両方をすることで得られる金属酸化物含有化合物Aと、
L(OR0Aa0(OR1Aa1(O)a2 (A-1)
(式中、R0A、R1Aは炭素数1~30の有機基であり、a0、a1、a2は0以上の整数でa0+a1+2×a2はLの種類により決まる価数であり、Lはアルミニウム、ガリウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、バナジウム又はタンタルである。)
(B)成分として、熱若しくは酸、又はその両方により水酸基を発生する特定構造の芳香族化合物とを含有するものであることを特徴とする金属酸化物含有膜形成用組成物が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した多層レジスト法等による半導体素子の製造においては、レジスト膜等を有する半導体素子中間体が使用される。
本開示において、半導体素子中間体とは、半導体素子の製造に用いられる材料であって、レジスト膜、埋め込み絶縁膜等の半導体素子の製造において用いられる膜のうち、少なくとも1つの膜が基板上に形成された材料をいう。
【0006】
また、多層レジスト法等による半導体素子の製造においては、光源波長、レンズ、マスク、及びその装置、並びにそれらの補正ソフトを含めた露光の解像限界以下の微細加工を行うため、複数回の露光を繰り返す多重露光が行われている。この多重露光において、2回目以降の露光は、先の露光した部分と重ね合わせが必要であり、より厳密な位置合わせ精度が必要となる。
ここで、半導体素子中間体を用いた、露光の位置合わせ精度の限界を超えるような最先端微細加工において、多層レジスト層の一部を構成する膜(例えば、SOG(スピンオンガラス)膜、SOC(スピンオンカーボン)膜、a-Si(アモルファスシリコン)膜、SiO(シリコン酸化物)膜、SiN(シリコン窒化物)膜等)に形成された凹部(例えば、孔)に、これらの膜とは異なるエッチング耐性を有する金属含有膜を埋め込むことにより、自己整合的に加工の位置合わせ補正を行う手法などが提案されている。
【0007】
多層レジスト法では、例えば、上層レジストパターンを下層レジスト膜に転写する際、及び、下層レジストパターンを被加工基板に転写する際に、プラズマエッチング等のドライエッチングが広く使用されている。
プラズマエッチングにおいて、Al,Ti,TiN,Si等の金属又は金属化合物、有機物、上述したSOC膜、a-Si膜等のエッチングには、例えば、Clに代表されるCl系ガス等が用いられている。
また、プラズマエッチングにおいて、SiO膜、SiN膜等のエッチングには、例えば、CFに代表されるフルオロカーボン系ガス等が使用されている。
【0008】
上述のように、自己整合的に加工の位置合わせ補正を行うためには、凹部に埋め込まれた金属含有膜に対し、例えば、SOC膜又はa-Si膜に比べて、Clガスにより除去されにくく(エッチングレートが低い、即ち、エッチング耐性が高い)、CFガスに対しては除去され易い(エッチングレートが高い、即ち、エッチング耐性が低い)、という性能(スイッチング特性)が求められる。
また、スイッチング特性としては、例えば、SiO膜又はSiN膜に比べて、CFガスにより除去されにくく(エッチングレートが低い、即ち、エッチング耐性が高い)、Cl/Arガスに対しては除去され易い(エッチングレートが高い、即ち、エッチング耐性が低い)、という性能も挙げられる。
【0009】
更に、スイッチング特性に優れた金属含有膜を用いることにより、多層レジスト層の一部を構成する膜(例えば、SOC膜、a-Si膜、SiO膜、SiN膜等)の加工を効率よく行うことも可能である。
【0010】
具体的には、例えば、特開2014-134581号公報には、SiO膜等の被加工体に対し、化学気相成長(CVD)によりカーボンハードマスク膜を形成し、その上に金属含有膜、有機材料等を含むフォトレジスト膜を順に形成して被加工体の加工を行う加工方法が記載されている。
このような加工方法においては、例えば、下記(A1)~(A5)に記載の工程が行われる。
(A1)フォトレジスト膜を露光及び現像した後に、SOC膜を酸素を含むガスで除去した後、金属含有膜をCFガス等によりエッチングし、
(A2)O系ガス等によりフォトレジスト膜、SOC膜の除去とカーボンハードマスク膜のエッチングを行い、
(A3)SiO膜等の被加工体をCFガス等によりエッチングし、
(A4)アンモニア及び水等を用いたウェット洗浄により金属含有膜を除去し、
(A5)O系ガス等により、(A4)において除去された金属含有膜の下層として残存しているカーボンハードマスク膜の除去を行う
【0011】
しかし、スイッチング特性に優れた金属含有膜を用いた場合には、SiO膜等の被加工体に対し、金属含有膜、有機材料等を含むフォトレジスト膜を順に形成して被加工体の加工を行う加工方法を行うことが可能となる。
即ち、スイッチング特性に優れた金属含有膜を用いることにより、上述のカーボンハードマスク膜の形成が不要となるという利点がある。
スイッチング特性に優れた金属含有膜を用いた場合の加工方法としては、具体的には、例えば、下記(B1)~(B4)に記載の工程が行われる。
下記(B1)~(B4)に記載の工程において、用いられる金属含有膜に含まれる金属種及びエッチングに用いられるガスは、スイッチング特性を考慮して適宜変更可能である。金属含有膜に含まれる金属種と、用いられる被加工体との間のスイッチング特性については後述する。
(B1)フォトレジスト膜を露光及び現像した後に、金属含有膜をCl/Ar系ガス等によりエッチングし、
(B2)O系ガス等によりフォトレジスト膜の除去を行い、
(B3)SiO膜等の被加工体をCFガス等によりエッチングし、
(B4)残存している金属含有膜をCl/Ar系ガス等により除去する
【0012】
このように、スイッチング特性に優れた金属含有膜を用いた加工方法によれば、金属含有膜の除去を(B4)に示したようにガスエッチングにより行うことが可能となる。
即ち、スイッチング特性に優れた金属含有膜を用いた場合の加工方法においては、上述のカーボンハードマスク膜を用いた加工方法と比較して、ウェット洗浄が不要となるという利点も有している。
また、上記ウェット洗浄によるパターンの変形、パターン倒れ等が抑制できるという利点も有している。
【0013】
なお、上述のスイッチング特性の要求は、微細パターンの形成を実現する観点から、レジスト膜以外の膜(例えば、埋め込み絶縁膜(浅溝型素子分離膜(STI膜)、プリメタル絶縁膜(PMD膜)、配線層間絶縁膜(IMD膜、ILD膜など)等)にも求められている。
【0014】
本開示に係る発明の一態様が解決しようとする課題は、スイッチング特性に優れた金属含有膜を有する半導体素子中間体、半導体素子中間体の製造方法、及びスイッチング特性に優れた金属含有膜を用いる半導体素子の製造方法を提供することである。
また、本開示に係る発明の別の一態様が解決しようとする課題は、前記半導体素子中間体の製造に用いられる金属含有膜形成用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基板と、多層レジスト層と、を有し、
前記多層レジスト層中に金属含有膜を有し、
前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である、
半導体素子中間体。
<2> 前記金属含有膜が、400℃、1atmの雰囲気下にて固体である、<1>に記載の半導体素子中間体。
<3> 前記金属含有膜における、前記ゲルマニウム元素の含有量が30atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が2atm%以上30atm%以下である、<1>又は<2>に記載の半導体素子中間体。
<4> 前記金属含有膜が、ゲルマニウムの酸化物を含む、又は、スズの酸化物、インジウムの酸化物及びガリウムの酸化物から選ばれる1種以上を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体。
<5> 前記多層レジスト層の少なくとも1つの層に凹部が形成されており、
前記金属含有膜は、前記凹部の内部に形成され、凹部の底部に接している、<1>~<4>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体。
<6> 前記金属含有膜が、前記多層レジスト層に含まれる少なくとも1つの層である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体。
<7> 前記多層レジスト層が、スピンオンカーボン膜及びアモルファスシリコン膜の少なくとも一方を有し、
前記金属含有膜が、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体。
<8> 前記多層レジスト層が、二酸化ケイ素膜及び窒化シリコン膜の少なくとも一方を有し、
前記金属含有膜が、X線光電分光法により測定される、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体。
<9> 前記金属含有膜がレジスト膜である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体。
<10> 前記金属含有膜が埋め込み絶縁膜である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体。
<11> 前記多層レジスト層の少なくとも1つの層に凹部が形成されており、
前記金属含有膜は、前記凹部の内部に形成され、
前記凹部の幅が5nm以上300nm以下である、<10>に記載の半導体素子中間体。
<12> <1>~<11>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体における前記金属含有膜の形成に用いられる組成物であって、
窒素雰囲気下で400℃10分間焼成後のX線光電分光法により測定されるゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である、
金属含有膜形成用組成物。
<13> 窒素雰囲気下で400℃10分間焼成後の屈折率が1.3以上2.0以下である、<12>に記載の金属含有膜形成用組成物。
<14> 前記金属含有膜における、前記ゲルマニウム元素の含有量が30atm%以上であるか、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が2atm%以上30atm%以下である、<12>又は<13>に記載の金属含有膜形成用組成物。
<15> 硬化開始温度が300℃以下である、<12>~<14>のいずれか1つに記載の金属含有膜形成用組成物。
<16> ゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウム炭化化合物、ゲルマニウムの水酸化物及びゲルマニウムのハロゲン化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、又は、スズアルコキシド化合物、スズ炭化化合物、スズの水酸化物、スズのハロゲン化物、インジウムアルコキシド化合物、インジウム炭化化合物、インジウムの水酸化物、インジウムのハロゲン化物、ガリウムアルコキシド化合物、ガリウム炭化化合物、ガリウムの水酸化物及びガリウムのハロゲン化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、<12>~<15>のいずれか1つに記載の金属含有膜形成用組成物。
<17> 溶剤を含む、<12>~<16>のいずれか1つに記載の金属含有膜形成用組成物。
<18> <1>~<11>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体の製造方法であって、
金属含有膜形成用部材を準備する工程と、
前記金属含有膜形成用部材に対し、スパッタ法により前記金属含有膜を形成する工程と、
を含む、
半導体素子中間体の製造方法。
<19> <1>~<11>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体の製造方法であって、
金属含有膜形成用部材を準備する工程と、
<12>~<17>のいずれか1つに記載の金属含有膜形成用組成物を前記金属含有膜形成用部材上に付与する工程と、
付与された前記金属含有膜形成用組成物を焼成する工程と、
を含む
半導体素子中間体の製造方法。
<20> <1>~<11>のいずれか1つに記載の半導体素子中間体を準備する工程と、
前記半導体素子中間体をエッチングする工程と、
を含む
半導体素子の製造方法。
<21> 上層及び下層を有するレジスト層を含む部材を用い、上層を露光及びエッチングする工程と、
下層をエッチングする工程と、
下層に形成された凹部に金属含有膜を形成する工程と、
上層を再び露光及びエッチングする工程と、
下層を再びエッチングする工程と、
を含み、
前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である、
半導体素子の製造方法。
<22> 基板上にレジスト層Aを形成する工程と、
前記レジスト層A上に金属含有膜を形成する工程と、
前記金属含有膜上に更に前記レジスト層Aとは異なるレジスト層Bを形成する工程と、
前記レジスト層Bを露光及び現像する工程と、
前記金属含有膜をエッチングする工程と、
前記レジスト層Aをエッチングする工程と、
前記金属含有膜をエッチングガスにより除去する工程と、
を含み、
前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である、
半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る発明の一態様によれば、スイッチング特性に優れた金属含有膜を有する半導体素子中間体、半導体素子中間体の製造方法、及びスイッチング特性に優れた金属含有膜を用いる半導体素子の製造方法を提供することができる。
また、本開示に係る発明の別の一態様によれば、前記半導体素子中間体の製造に用いられる金属含有膜形成用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について説明する。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
更に、本開示において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本開示における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法によって測定された、ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量を指す。
具体的には、重量平均分子量は、展開溶媒として硝酸ナトリウム濃度0.1mol/Lの水溶液を用い、分析装置Shodex GPC-101、2種類の分析カラム(東ソー製 TSKgel G6000PWXL-CP及びTSKgel G3000PWXL-CP)、及びリファレンスカラム(東ソー製 TSKgel SCX)を用いて、流速1.0ml/minで屈折率を検出し、ポリエチレングリコールを標準品として解析ソフト(SIC製 480IIデーターステーション)にて算出される。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示において、「レジスト」とは、物理的又は化学的処理に対する保護膜をいう。一般的にレジストは、被処理物の保護が不要となった後に、被処理物から除去される。
【0018】
(半導体素子中間体)
本開示に係る半導体素子中間体は、基板と、多層レジスト層と、を有し、前記多層レジスト層中に金属含有膜を有し、前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である。
【0019】
本発明者等は、国際公開第2017/086361号又は特開2014-134581号公報に記載の半導体用膜組成物を用いてレジスト膜又は埋め込み絶縁膜を形成し、半導体素子中間体を作製した場合、形成されたレジスト膜又は埋め込み絶縁膜は、スイッチング特性を有していないことを見出した。
そこで、本発明者等は鋭意検討した結果、基板と、多層レジスト層と、を有し、多層レジスト層中に金属含有膜を有する半導体素子中間体では、例えば、金属含有膜において、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上であれば、SOC膜又はa-Si膜と比較して、Clガスにより除去されにくく、CFガスにより除去されやすい、即ち、スイッチング特性に優れることを見出した。
また、上記構成の半導体素子中間体では、例えば、金属含有膜において、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上であれば、SiO膜又はSiN膜と比較して、CFガスにより除去されにくく、Cl/Arガスにより除去されやすい、即ち、スイッチング特性に優れることを見出した。
【0020】
<金属含有膜>
本開示に係る金属含有膜は、多層レジスト層中に含まれる膜である。そして、金属含有膜は、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である。ここで、ゲルマニウム元素の含有量、スズ元素の含有量、インジウム元素の含有量、及びガリウム元素の含有量は、いずれも、X線光電分光法により測定される。
金属含有膜の例としては、多層レジスト層の少なくとも1つの層、多層レジスト層の少なくとも1つの層に形成された凹部に埋め込まれた膜、埋め込み絶縁膜(浅溝型素子分離膜(STI膜)、プリメタル絶縁膜(PMD膜)、配線層間絶縁膜(IMD膜、ILD膜等)等が挙げられる。
即ち、金属含有膜は、レジスト膜であることが好ましい。
【0021】
金属含有膜が多層レジスト層の少なくとも1つの層である場合、金属含有膜は、上層又は中層であることが好ましい。
本開示において、上層とは、多層レジスト層に含まれるレジスト膜のうち、最も基板から離れた位置のレジスト膜を、下層とは、多層レジスト層に含まれるレジスト膜のうち、最も基板に近い位置のレジスト膜を、中層とは、多層レジスト層に含まれるレジスト膜のうち、上層と下層の間に位置するレジスト膜を、それぞれ指すものとする。
なお、下層がSiO膜又はSiN膜などの絶縁性を有する膜である場合には、下層の一部を絶縁膜として残してもよい。
多層レジスト層の具体的な態様としては、例えば、下層としてSOC膜又はa-Si膜、中層又は上層としてゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である金属含有膜を用いる態様、上層、中層又は下層としてSiO膜又はSiN膜、上層、中層又は下層としてスズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である金属含有膜を用いる態様等が挙げられる。
【0022】
また、金属含有膜は、以下の態様であることも好ましい。
即ち、多層レジスト層の少なくとも1つの層に凹部が形成されており、金属含有膜が、形成された凹部の内部に形成され、凹部の底部に接している態様も好ましい。
このような態様により、上述の、多層レジスト層の少なくとも1つの層に形成された凹部に埋め込まれた膜、埋め込み絶縁膜、配線層間絶縁膜等が形成可能である。
金属含有膜は、埋め込み絶縁膜であることが好ましい。
【0023】
ここで、金属含有膜が適用される多層レジスト層及び埋め込み絶縁膜の詳細については後述する。
なお、上記の、金属含有膜が凹部の底部に接するとは、金属含有膜が凹部の底部の少なくとも一部に接していればよく、凹部の底部の全面に接していなくてもよいことを意味する。
また、上記以外の金属含有膜の例としては、基板に形成された凹部にギャップフィル材料が充填された金属含有膜(例えば、埋め込み平坦化膜)が挙げられる。
【0024】
金属含有膜を、多層レジスト層の少なくとも1つの層として用いる場合、半導体素子中間体から半導体素子を製造する際に、金属含有膜は除去される。
また、埋め込み絶縁膜は、半導体素子中間体から半導体素子を製造する際に、半導体素子に残る膜である。そのため、金属含有膜を、埋め込み絶縁膜として用いる場合には、半導体素子中間体により最終的に得られる半導体素子は、金属含有膜を有する半導体素子である。
【0025】
〔組成〕
金属含有膜は、特に限定されないが、スイッチング特性を良好にする観点から、X線光電分光法により測定されるゲルマニウム元素の含有量は、24atm%以上であることが好ましく、30atm%以上であることがより好ましい。
また、上記含有量の上限は、特に限定されず、100%以下であってもよい。
また、金属含有膜は、特に限定されないが、スイッチング特性を良好にする観点から、X線光電分光法により測定される、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量は、2atm%以上30atm%以下であることが好ましく、5atm%以上22atm%以下であることがより好ましい。
また、本開示における金属含有膜は、ゲルマニウムの酸化物を含む、又は、スズの酸化物、インジウムの酸化物及びガリウムの酸化物から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0026】
-X線電子分光法による測定方法-
ゲルマニウム元素、スズ元素、インジウム元素、及び、ガリウム元素の各元素の含有量は、水素原子を除く検出された元素の存在割合として測定される。
上記の各元素の含有量は、具体的には、装置としてAXIS-NOVA(KRATOS社製)、X線源として単色化AlKα(1486.6eV)を用い、分析領域として700μm×300μmの条件で測定される。
【0027】
-その他元素の組成-
本開示における金属含有膜の、X線電子分光法による測定における他の元素としては、特に限定されないが、炭素原子、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム元素、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素以外の金属元素(例えば、アルミニウム元素、チタン元素、ジルコニウム元素)等が挙げられ、これらの含有割合も特に限定されない。スイッチング特性をより良好にする観点から、金属含有膜がゲルマニウム元素を20atm%以上含む場合、ゲルマニウム元素以外の金属元素の含有割合は、20atm%以下が好ましく、10atm%以下がより好ましく、5atm%以下が更に好ましく、1atm%以下が特に好ましい。
また、金属含有膜における、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である場合、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素以外の金属元素の含有割合は、20atm%以下が好ましく、10atm%以下がより好ましく、5atm%以下が更に好ましく、1atm%以下が特に好ましい。
【0028】
〔エッチングレート〕
本開示における金属含有膜は、あるエッチングに用いられるガスに対する他の被エッチング膜との相対エッチングレート(即ち、本開示における金属含有膜のエッチングレート/他の被エッチング膜のエッチングレート)と、別のエッチングに用いられるガスに対する他の被エッチング膜との相対エッチングレートのうち、一方が1を超え、別の一方が1以下である場合に、スイッチング特性があるとする。
例えば、本開示における金属含有膜は、Clガスに対するSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレート、及び、CFガスに対するSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレートのうち、一方が1を超え、別の一方が1以下である場合に、スイッチング特性があるとする。
【0029】
本開示における金属含有膜が、ゲルマニウム元素を20atm%以上含む場合、Clガスに対するSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレート(本開示における金属含有膜のエッチングレート/SOC膜(又はa-Si膜)のエッチングレート)は、0.8以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.2以下が更に好ましい。また、同様に、ゲルマニウム元素を20atm%以上含む金属含有膜の場合、CFガスに対するSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレートは、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.8以上が更に好ましい。
金属含有膜がゲルマニウム元素を20atm%以上含む場合、Clガスに対するSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレートが0.8以下かつCFガスに対するSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレートが1.2以上であることが好ましく、Clガスに対するSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレートが0.5以下かつCFガスに対するSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレートが1.5以上であることがより好ましく、Clガスに対するSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレートが0.2以下かつCFガスに対するSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレートが1.8以上であることが更に好ましい。
本開示において金属含有膜が、ゲルマニウム元素を20atm%以上含む場合にスイッチング特性に優れるとは、金属含有膜のSOC膜(又はa-Si膜)との相対エッチングレートが上記の範囲内であることをいう。
【0030】
本開示における金属含有膜が、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素を合計含有量にて1atm%以上含む場合、CFガスに対するSiO膜(又はSiN膜)との相対エッチングレート(即ち、本開示における金属含有膜のエッチングレート/SiO膜(又はSiN膜)のエッチングレート)は、0.8以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.2以下が更に好ましい。また、同様に、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である金属含有膜の場合、Cl/Arガスに対するSiO膜(又はSiN膜)との相対エッチングレートは、2.0以上が好ましく、5.0以上がより好ましく10.0以上が更に好ましい。
金属含有膜が、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素を合計含有量にて1atm%以上含む場合、CF ガスに対するSiO膜(又はSiN膜)との相対エッチングレートが0.8以下かつCl/Arガスに対するSiO膜(又はSiN膜)との相対エッチングレートが、2.0以上であることが好ましく、CFガスに対するSiO膜(又はSiN膜)との相対エッチングレートが0.5以下かつCl/Arガスに対するSiO膜(又はSiN膜)との相対エッチングレートが5.0以上であることがより好ましく、CFガスに対するSiO膜(又はSiN膜)との相対エッチングレートが0.2以下かつCl/Arガスに対するSiO膜(又はSiN膜)との相対エッチングレートが10.0以上であることが更に好ましい。
本開示において金属含有膜が、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素を合計含有量にて1atm%以上含む場合にスイッチング特性に優れるとは、金属含有膜のSiO膜(又はSiN膜)との相対エッチングレートが上記の範囲内であることをいう。
相対エッチングレートは後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0031】
〔膜の大きさ〕
金属含有膜が、多層レジスト層に含まれる少なくとも1つの層である場合、金属含有膜(即ち、1つの層)の厚さは、例えば、5nm以上900nm以下であり、好ましくは10nm以上200nm以下である。多層レジスト層全体の厚さは、例えば、20nm以上1000nm以下であることが好ましい。
金属含有膜が、多層レジスト層の少なくとも1つの層に形成された凹部に埋め込まれた膜である場合、金属含有膜(即ち、1つの層)の厚さは、例えば、5nm以上900nm以下であり、好ましくは10nm以上200nm以下である。多層レジスト層全体の厚さは、例えば、20nm以上1000nm以下であることが好ましい。
【0032】
金属含有膜が、埋め込み絶縁膜である場合には、埋め込み絶縁膜(即ち、金属含有膜)の厚さは、例えば、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、20nm以上300nm以下であることがより好ましい。凹部に埋め込み絶縁膜を充填した表面に更に絶縁膜を、500nm以下、好ましくは200nm以下の厚さで形成してもよい。
【0033】
〔膜の物性〕
金属含有膜は、耐熱性の観点から、400℃、1atmの雰囲気下にて固体であることが好ましい。即ち、金属含有膜の融点は、400℃、1atmにおいて400℃を超えることが好ましい。
金属含有膜が400℃、1atmの雰囲気下にて固体であることは、融点測定装置を用いることにより確認される。
また、金属含有膜は、500℃、1atmの雰囲気下にて固体であることがより好ましく、600℃、1atmの雰囲気下にて固体であることが更に好ましい。
金属含有膜の融点は、例えば、金属含有膜に含まれる有機化合物の量を減少させることにより高くすることが可能である。
【0034】
<基板>
基板としては、シリコン基板等の半導体基板(又は半導体装置)、回路基板(例えばプリント配線基板)、ガラス基板、石英基板、ステンレス基板、プラスチック基板等が挙げられる。基板の形状も特に制限されず、板状、皿状等のいずれであってもよい。例えば、シリコン基板としては、層間絶縁層(Low-k膜)が形成されたシリコン基板であってもよく、また、シリコン基板には、微細な溝(凹部)、微細な貫通孔などが形成されていてもよい。
【0035】
<多層レジスト層>
多層レジスト層としては、上層及び下層を有するレジスト層が挙げられ、上層、中層及び下層を有するレジスト層であってもよい。
【0036】
上層としては、公知のフォトレジスト膜が挙げられ、例えば、有機化合物により形成されるフォトレジスト膜が好ましい。
また、上層が上述の金属含有膜であってもよい。
【0037】
下層としては、CVD(chemical vapor deposition)又はALD(atomic layer deposition)による、ケイ素含有無機膜、a-Si膜、SiO膜、SiN膜、SiON膜;回転塗布により膜を得られるものとして、SOG膜、SOC膜、架橋性シルセスキオキサン膜;ケイ素化合物を加水分解又は縮合することで得られるケイ素含有化合物を含む膜;等が挙げられる。
また、特に下層がSiO膜又はSiN膜である場合、上層が上述の金属含有膜であってもよい。
【0038】
スイッチング特性の観点から、本開示におけるレジスト層と金属含有膜との組み合わせは、下記態様1又は態様2のいずれかの組み合わせであることが好ましい。
(態様1)
前記多層レジスト層が、スピンオンカーボン(SOC)膜及びアモルファスシリコン(a-Si)膜の少なくとも一方を有し、
前記金属含有膜が、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である態様
上記態様1においては、前記金属含有膜は、SOC膜又はa-Si膜よりも基板に近い位置に存在することが好ましい。
(態様2)
前記多層レジスト層が、二酸化ケイ素(SiO)膜及び窒化シリコン(SiN)膜の少なくとも一方を有し、
前記金属含有膜が、X線光電分光法により測定される、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である態様
上記態様2においては、前記金属含有膜は、SiO膜又はSiN膜よりも基板に近い位置に存在してもよいし、基板から遠い位置に存在してもよい。
【0039】
本開示において用いられるSOC膜としては、耐熱性の観点からは、芳香族化合物、環状炭化水素等を含む膜であることが好ましい。
【0040】
中層としては、上述の金属含有膜が挙げられる。
その他、多層レジスト層としては、公知の中間レジスト膜による中層等の1又は複数の層を更に含んでもよい。
上層又は中層として本開示における金属含有膜を含むことにより、上述のように、下層の加工において、カーボンハードマスク膜等の更なる中層の形成が不要となる、更なる中層の除去のためのウェット洗浄が不要となる、ウェット洗浄によるパターンの変形、パターン倒れ等が抑制できる等の点で好ましいと考えられる。
中層又は上層が本開示における金属含有膜である場合には、上記効果を得る観点から、中層又は上層と下層との組み合わせとして、特定のガスに対するエッチングレートが異なる組合せを用いることが好ましい。また、中層又は上層が本開示に係る金属含有膜である場合には、上記効果を得る観点から、金属含有膜と下層とは接していることが好ましい。
【0041】
-凹部-
金属含有膜が、多層レジスト層の少なくとも1つの層に形成された凹部に埋め込まれた膜である場合、多層レジスト層の少なくとも1つの層であって、凹部を有する層を有する基板が用いられることが好ましい。凹部は、上層、中層及び下層のいずれに形成されていてもよいが、下層に形成されていることが好ましい。また、凹部は基板にまで達していてもよい。基板にまで達している凹部は、下層に形成された凹部の一つの態様である。
下層に金属含有膜が形成されることにより、上述の自己整合的な加工の位置合わせ補正を効率的に行うことができる。
また、現像又はエッチング等によるパターン形成後の上層又は下層における、レジスト層が除去され凹部とされた箇所を、金属含有膜を用いて置き換えることにより、反転レジストを形成することが可能となる。
例えば、SOC膜に形成された凹部に金属含有膜を埋め込みした後に、Clガスを用いてエッチングを行った場合、金属含有膜が埋め込みされた箇所がエッチングされず、凹部と凸部を逆転する(逆転パターニング)が可能となる。
【0042】
凹部としては、例えば、溝(例えばトレンチ)、孔(例えばビア)挙げられる。
凹部としては、例えば、下層等の部材に対しエッチングによって形成された凹部(例えば素子分離溝、ビア等)であることが好ましい。
【0043】
凹部の深さは、10nm以上500nm以下であることが好ましく、20nm以上200nm以下であることがより好ましい。
凹部の幅は、特に限定されないが、例えば、5nm以上300nm以下の範囲で設定することができる。
凹部が孔である場合、凹部の幅は、10nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい
本開示において、凹部の幅とは、凹部が溝である場合には溝の幅を、凹部が孔である場合にはその表面開口部の直径を、それぞれいうものとする。
埋め込み性の観点から、凹部のアスペクト比(深さ/幅)の値は、0.5~20であることが好ましく、0.5~10であることがより好ましい。
本開示において、凹部の幅が5nm以上300nm以下の場合、金属含有膜におけるゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上30atm%以下であると、よりいっそう凹部内部における空隙の発生が抑制できる。なお、金属含有膜がスズ元素を含む場合、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が2atm%以上であることがより好ましく、5atm%以上であることが更に好ましい。
【0044】
金属含有膜は、凹部の内部にのみ形成(即ち、充填)されていてもよいし、凹部の内部に形成(即ち、充填)された上で、更に、凹部の外部(凹部の上方、及び、凹部の周囲の平坦部)にまではみ出して形成されていてもよい。
また、金属含有膜は、凹部の底部に接している。金属含有膜が凹部の底部に接していることは、金属含有膜の膜面方向に垂直な断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより確認することができる。
【0045】
〔埋め込み絶縁膜が形成される部材〕
金属含有膜が、埋め込み絶縁膜である場合、本開示に係る半導体素子中間体には、凹部を有する部材が用いられることが好ましい。凹部を有する部材としては、凹部を有する基板が挙げられる。
本開示において、埋め込み絶縁膜とは、少なくとも一部が凹部に埋め込まれる(即ち、充填される)ことによって、凹部を有する部材の凹部を含む領域に形成される絶縁膜である。
基板としては、上述の金属含有膜が、多層レジスト層の少なくとも1つの層に形成された凹部に埋め込まれた膜である場合における基板と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0046】
-凹部-
凹部としては、例えば、溝(例えばトレンチ)、孔(例えばビア)挙げられる。
凹部として、より具体的には、部材(基板)に対しエッチング等によって形成された凹部(例えば、素子分離溝、ビア等)、部材(基板)上に設けられた複数の導通部(例えば、Cu等の金属製の電極又は配線)の側面と、部材表面と、によって確定される凹部、などが挙げられる。
埋め込み絶縁膜は、凹部の内部にのみ形成(即ち、充填)されていてもよいし、凹部の内部に形成(即ち、充填)された上で、更に、凹部の外部(凹部の上方、及び、凹部の周囲の平坦部)にまではみ出して形成されていてもよい。
埋め込み絶縁膜には、浅溝型素子分離膜、プリメタル絶縁膜、配線層間絶縁膜等がある。
浅溝型素子分離膜(STI膜:Shallow Trench Isolation膜)とは、シリコン基板上のトランジスタの分離のために形成された、シリコン基板に形成された溝に形成される絶縁膜である。
プリメタル絶縁膜(PMD膜:Pre Metal Dielectric膜)とは、半導体基板上に形成されたトランジスタ、抵抗、及びキャパシタ等の素子電極とその上方に形成される金属配線との間に形成される絶縁膜である。
配線層間絶縁膜(IMD膜:Inter Metal Dielectric膜、又はILD膜:Inter layer dielectric膜)とは、金属配線間に形成される絶縁膜である。
【0047】
凹部の深さは、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、20nm以上500nm以下であることがより好ましい。
凹部が孔である場合、凹部の幅は、10nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。
埋め込み性の観点から、凹部のアスペクト比(深さ/幅)の値は、0.5~20であることが好ましく、0.5~10であることがより好ましい。
【0048】
より詳細には、埋め込み絶縁膜が浅溝型素子分離膜(STI膜)である場合、凹部の深さは10nm以上1000nm以下であり、好ましくは30nm以上300nm以下である。凹部に埋め込み絶縁膜を充填した表面には、更に絶縁膜を、500nm以下、好ましくは200nm以下で形成してもよい。
埋め込み絶縁膜がプリメタル絶縁膜(PMD膜)である場合、凹部の深さは10nm以上500nm以下であり、好ましくは20nm以上300nm以下である。凹部に埋め込み絶縁膜を充填した表面には、更に絶縁膜を、500nm以下、好ましくは200nm以下で形成してもよい。
埋め込み絶縁膜が配線層間絶縁膜(IMD膜、ILD膜等)である場合、凹部の深さは30nm以上400nm以下であり、好ましくは50nm以上300nm以下である。凹部に埋め込み絶縁膜を充填した表面には、更に絶縁膜を、500nm以下、好ましくは300nm以下で形成してもよい。
【0049】
なお、埋め込み絶縁膜は、当該埋め込み絶縁膜をシリコン基板の溝に設けて素子分離領域を形成する手法(シャロートレンチアイソレーション)等を用いて形成することが好ましい。
また、凹部の幅が狭く、アスペクト比(深さ/幅)の大きな溝に埋め込み絶縁膜を形成する場合には、溝への充填性を高める点から、後述する、本開示に係る金属含有膜形成用組成物を凹部に付与(好ましくは、スピンコート法により付与)して埋め込み絶縁膜を形成することが好ましい。
【0050】
(半導体素子中間体の製造方法)
本開示に係る半導体素子中間体の製造方法の第1の態様は、金属含有膜形成用部材を準備する工程(以降、準備工程ともいう)と、前記金属含有膜形成用部材に対し、スパッタ法により前記金属含有膜を形成する工程(以降、スパッタ工程ともいう)と、を含む。
本開示に係る半導体素子中間体の製造方法の第2の態様は、金属含有膜形成用部材を準備する工程(以降、準備工程ともいう)と、後述する金属含有膜形成用組成物を前記金属含有膜形成用部材上に付与する工程(以降、組成物付与工程ともいう)と、付与された前記金属含有膜形成用組成物を焼成する工程(以降、焼成工程ともいう)と、を含む。
以下、それぞれの態様における各工程の好ましい態様について詳述する。
【0051】
<準備工程>
本開示に係る半導体素子中間体の製造方法は、第1の態様におけるスパッタ工程又は第2の態様における組成物付与工程の前に、金属含有膜形成用部材を準備する工程(即ち、準備工程)を有する。
金属含有膜形成用部材を準備する工程においては、金属含有膜形成用部材を事前に作製して保管しておいたものを使用してもよいし、金属含有膜形成用部材を購入等により入手して使用してもよいし、エッチング、配線の製造等により金属含有膜形成用部材を製造して使用してもよい。
【0052】
〔金属含有膜形成用部材〕
金属含有膜形成用部材としては、多層レジスト層の少なくとも1つの層を有する基板である部材、又は、凹部を有する部材が挙げられる。
凹部を有する部材としては、多層レジスト層の少なくとも1つの層であって、凹部を有する層を有する基板、又は、凹部を有する基板が挙げられる。
金属含有膜が、多層レジスト層の上層又は中層である場合、多層レジスト層の少なくとも1つの層を有する基板である部材が用いられることが好ましい。
金属含有膜が、多層レジスト層の少なくとも1つの層に形成された凹部に埋め込まれた膜である場合、凹部を有する部材が用いられることが好ましい。凹部は、上記基板上に形成されたレジスト層の最外層に少なくとも形成されていればよい。
多層レジスト層及び基板の好ましい態様については、上述の通りである。
【0053】
<スパッタ工程>
本開示に係る半導体素子中間体の製造方法の第1の態様では、スパッタ工程にて、上述の準備工程にて準備された金属含有膜形成用部材に対し、スパッタ法により金属含有膜を形成する。
スパッタ工程におけるスパッタ方法としては、特に限定されず公知のスパッタ法が用いられ、例えば、二極スパッタ、三極スパッタ、四極スパッタ、マグネトロンスパッタ、高周波スパッタ、リアクティブスパッタ、バイアススパッタ、非対称スパッタ、ゲッタスパッタ等が挙げられる。
用いられるスパッタリングターゲットとしては、ゲルマニウム元素を含む金属含有膜を形成したい場合には、得られる金属含有膜におけるゲルマニウム元素の含有量を20atm%以上とする観点から、Ge、GeO、GeS等のゲルマニウム元素を含むターゲットが好ましく挙げられる。
スズ元素を含む金属含有膜を形成したい場合には、得られる金属含有膜におけるスズ元素の含有量を1atm%以上とする観点から、SnO(酸化スズ)等のスズ元素を含むターゲットが好ましく挙げられる。
インジウム元素を含む金属含有膜を形成したい場合には、得られる金属含有膜におけるインジウム元素の含有量を1atm%以上とする観点から、In(酸化インジウム)等のインジウム元素を含むターゲットが好ましく挙げられる。
ガリウム元素を含む金属含有膜を形成したい場合には、得られる金属含有膜におけるガリウム元素の含有量を1atm%以上とする観点から、GaO(酸化ガリウム)等のガリウム元素を含むターゲットが好ましく挙げられる。
その他スパッタ条件としては、ターゲットの種類に応じて公知の条件を採用することができる。
スパッタ工程によれば、凹部を有する部材を用いた場合には、凹部の内部に、凹部の底部に接するように金属含有膜が形成される。
【0054】
<組成物付与工程>
本開示に係る半導体素子中間体の製造方法の第2の態様は、組成物付与工程にて、後述する金属含有膜形成用組成物を上述の準備工程にて準備された金属含有膜形成用部材上に付与する。
金属含有膜形成用組成物を金属含有膜形成用部材上に付与する方法としては特に制限はなく、通常用いられる方法を用いることができる。
通常用いられる方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法などが挙げられる。例えば、ナノサイズ(即ち、数nm~数百nm)の膜厚を有する膜を形成する場合、スピンコート法を用いることが好ましい。
【0055】
スピンコート法による金属含有膜形成用組成物の付与方法としては特に限定はなく、例えば、金属含有膜形成用部材をスピンコーターで回転させながら、金属含有膜形成用部材の表面に金属含有膜形成用組成物を滴下し、次いで、金属含有膜形成用部材の回転数を上げて乾燥させる方法を用いることができる。
スピンコート法による金属含有膜形成用組成物の付与方法において、金属含有膜形成用部材の回転数、金属含有膜形成用組成物の滴下量及び滴下時間、乾燥時の金属含有膜形成用部材の回転数などの諸条件については特に制限はなく、形成する膜の厚さなどを考慮しながら適宜調整できる。
スピンコート法に用いられるスピンコーターのチャンバー内の湿度は、30%RH以下に保つことが好ましい。湿度が30%RH以下であると、均一な金属含有膜が得られスイッチング特性と埋め込み性がより向上する傾向にあるため好ましい。また、湿度が30%RH以下であり、かつ、金属含有膜形成用組成物がゲルマニウムアルコキシド化合物を含むと、均一な金属含有膜が得られスイッチング特性と埋め込み性がより向上する傾向にあるためより好ましい。
組成物付与工程において、金属含有膜形成用部材として凹部を有する部材を用いた場合には、金属含有膜形成用組成物は、凹部の底部に接するように凹部の内部に付与されることが好ましいが、後述する焼成工程の後に形成される金属含有膜が凹部の底部に接すれば、付与工程においては、金属含有膜形成用組成物は凹部の底部に接していなくともよい。
組成物付与工程における「金属含有膜形成用組成物が凹部の底部に接する」とは、凹部の底部の少なくとも一部に接していればよく、凹部の底部の全面に接していなくてもよいことを意味する。
また、「焼成工程の後に形成される金属含有膜が凹部の底部に接する」とは、形成される金属含有膜が凹部の底部の少なくとも一部に接していればよく、凹部の底部の全面に接していなくてもよいことを意味する。
【0056】
<乾燥工程>
本開示に係る半導体素子中間体の製造方法の第2の態様は、後述する焼成工程の前に、金属含有膜形成用組成物が付与された部材を乾燥する工程(以降、乾燥工程ともいう)を有していてもよい。
本開示において、乾燥とは、金属含有膜形成用組成物に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去することをいう。
乾燥温度は、80℃以上300℃以下が好ましく、90℃以上280℃以下がより好ましく、100℃以上260℃以下が更に好ましい。
なお、乾燥温度は、金属含有膜形成用部材の金属含有膜形成用組成物が付与された面の温度を指す。
【0057】
本工程における乾燥は通常の方法によって行うことができるが、例えば、ホットプレートを用いて行うことができる。
本工程における乾燥を行う雰囲気には特に制限はなく、例えば、大気雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気下で行なってもよい。
更には、微細溝への充填性(埋め込み性)の観点から、膜中の気泡を除去するために減圧下で行ってもよい。
【0058】
乾燥時間については特に制限はないが、300秒以下が好ましく、200秒以下がより好ましく、120秒以下が更に好ましく、80秒以下が特に好ましい。
乾燥時間の下限は、特に限定されないが、例えば、10秒(好ましくは20秒、より好ましくは30秒)とすることができる。
【0059】
<洗浄工程>
本開示に係る半導体素子中間体の製造方法は、第1の態様における上述のスパッタ工程の後に、又は、第2の態様における上述の組成物付与工程の後に、後述する焼成工程の前に、部材に付与された余分な金属含有膜形成用組成物を除去するために、金属含有膜形成用組成物が付与された部材を水等で洗浄する工程(以降、洗浄工程ともいう)を有していてもよい。また、本開示に係る半導体素子中間体の製造方法の第2の態様が、上述の乾燥工程を有する場合、乾燥工程の後に、洗浄工程を行うことが好ましい。
【0060】
<焼成工程>
本開示に係る半導体素子中間体の製造方法の第2の態様は、付与された金属含有膜形成用組成物を焼成する工程を含む。
焼成における温度(所謂、焼成温度)は、200℃以上800℃以下であることが好ましく、250℃以上600℃以下がより好ましく、300℃以上500℃以下が更に好ましい。
なお、焼成温度は、金属含有膜形成用部材の金属含有膜形成用組成物が付与された面の温度を指す。
【0061】
また、焼成工程における加熱が行なわれる際の圧力には特に制限はないが、絶対圧にて17Pa超大気圧以下が好ましい。
前記絶対圧は、1000Pa以上大気圧以下がより好ましく、5000Pa以上大気圧以下が更に好ましく、10000Pa以上大気圧以下が特に好ましい。
【0062】
焼成工程における加熱は、炉、ホットプレート等を用いた通常の方法により行うことができる。炉としては、例えば、アペックス社製のSPX-1120、光洋サーモシステム社製のVF-1000LP等を用いることができる。
また、本工程における加熱は、大気雰囲気下で行なってもよく、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気下で行なってもよい。
【0063】
焼成工程における加熱時間(焼成時間ともいう)については特に制限はないが、例えば、1時間以下であり、50分間以下が好ましく、30分間以下がより好ましく、15分間以下が特に好ましい。加熱時間の下限には特に制限はないが、例えば、0.1分間とすることができる。
【0064】
焼成工程での時間を短縮させる目的で、金属含有膜形成用部材の金属含有膜形成用組成物が付与された面に紫外線照射を行ってもよい。紫外線としては、波長170nm~230nmの紫外光、波長222nmエキシマ光、波長172nmエキシマ光などが好ましい。また、紫外線照射は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0065】
(半導体素子の製造方法)
本開示に係る半導体素子の製造方法は、本開示に係る半導体素子中間体を用いた製造方法であることが好ましい。
また、本開示に係る半導体素子の製造方法は、本開示に係る半導体素子中間体の製造方法を含むことが好ましい。
即ち、本開示に係る半導体素子の製造方法においては、本開示に係る半導体素子中間体を製造し、それを用いて半導体素子を製造してもよいし、本開示に係る半導体素子中間体を購入等の手段により入手し、それを用いて半導体素子を製造してもよい。
【0066】
<第1の好ましい態様>
本開示に係る半導体素子の製造方法の第1の好ましい態様は、本開示に係る半導体素子中間体の金属含有膜をレジスト膜として用いる態様である。
第1の好ましい態様の一例としては、特に限定されないが、少なくとも、本開示に係る半導体素子中間体を準備する工程と、半導体素子中間体をエッチングする工程と、を含む。
より具体的には、上層及び下層を有するレジスト層を含む部材を用い、上層を露光及びエッチングする工程と、下層をエッチングする工程と、下層に形成された凹部に金属含有膜を形成する工程と、上層を再び露光及びエッチングする工程と、下層を再びエッチングする工程と、を含み、前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である、半導体素子の製造方法が挙げられる。
上層及び下層を有するレジスト層を含む前記部材は、必要に応じて、更に中層を有していてもよい。例えば、金属含有膜を上記中層として有する態様が挙げられる。
本開示に係る半導体素子中間体を購入等の手段により入手して用いる場合には、上層を露光及びエッチングする工程及び下層をエッチングする工程を省略してもよい。
以下、上述の第1の好ましい態様の一例として、凹部を有する部材を用い、金属含有膜を前記凹部の内部に形成する態様について説明する。
【0067】
〔上層及び下層を有するレジスト層を含む部材〕
上層及び下層を有するレジスト層を含む部材としては、特に制限なく半導体素子の製造において公知の多層レジスト層を含む部材を用いることができる。多層レジスト層としては、上述の多層レジスト層が好ましく用いられる。
【0068】
〔上層を露光及びエッチングする工程〕
上層を露光及びエッチングする工程においては、例えば、フォトレジストの分野において公知の露光方法及びエッチング方法を特に制限なく使用することが可能である。
また、露光後加熱、エッチング後の加熱など、フォトレジストの分野において公知の工程を更に行ってもよい。
この工程により、上層に凹部が形成される。
【0069】
〔下層をエッチングする工程〕
下層をエッチングする工程においては、下層に上層のパターンが転写される。下層に上層のパターンを転写する方法としては、特に限定されず、半導体素子の製造において公知の方法を用いることができる。
例えば、下層がSOC膜又はa-Si膜である場合には、Clガス等の塩素系ガス等を用いてSOC膜又はa-Si膜をエッチングする方法が挙げられる。
例えば、下層がSiO膜又はSiN膜である場合には、CFガス等を用いてSiO膜又はSiN膜をエッチングする方法が挙げられる。
下層に上層のパターンを転写した後に、例えば、部材に形成されたSiO等の絶縁層を更にエッチングする、SiC等の膜にドーパントを注入する等の、半導体素子の製造において公知の工程を行ってもよい。これらの操作は、最終的に製造される半導体素子の設計に応じて行えばよい。
この工程により、上層に形成された凹部が下層に達する。即ち、下層に凹部が形成される。なお、凹部は、基板にまで達していてもよい。基板にまで達している凹部は、下層に形成された凹部の一つの態様である。
【0070】
〔下層に形成された凹部に金属含有膜を形成する工程〕
凹部に金属含有膜を形成する方法としては、上述の半導体素子中間体の製造方法において記載した方法を用いることができる。
また、金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素、スズ元素、インジウム元素、及びガリウム元素の各元素の含有量の測定方法も上述の通りである。
このようにして凹部に金属含有膜が形成された部材が、本開示に係る半導体素子中間体の一例である。
【0071】
〔上層を再び露光及びエッチングする工程〕
上層を再び露光及びエッチングする方法としては、上述の上層を露光及びエッチングする工程における方法と同様の方法が挙げられる。
上層を再び露光及びエッチングする工程を行う前に、下層及び金属含有膜上に、再度上層を形成してもよい。
上層を再び露光及びエッチングする方法における露光時には、上述の上層を露光及びエッチングする工程における露光領域と重複する領域を露光することが好ましい。
【0072】
〔下層を再びエッチングする工程〕
下層を再びエッチングする工程においては、上述の下層をエッチングする工程における方法と同様の方法を用いることができる
例えば、下層がSOC膜又はa-Si膜である場合には、Clガス等の塩素系ガス等を用いてエッチングされる。
例えば、下層がSiO膜又はSiN膜である場合には、CFガス等を用いてエッチングされる。
ここで、例えば、下層の凹部に形成された金属含有膜のClガスに対するエッチングレートが、SOC膜のClガスに対するエッチングレートに比べて低い場合には、下層を再びエッチングする工程においては、SOC膜が除去され、金属含有膜が除去されずに残る。
このような、1回目の下層のエッチングされた領域に金属含有膜が残り、その周囲の下層がエッチングされた状態とすることにより、金属含有膜をマスクとして、例えば、部材に形成されたSiO等の絶縁膜を更にエッチングする、SiC等の膜にドーパントを注入する等の、半導体素子の製造において公知の工程を行うことが可能となる。なお、下層がSiO膜又はSiN膜などの絶縁性を有する膜である場合には、下層の一部を絶縁膜として残してもよい。
即ち、金属含有膜をマスクとして用いることにより、自己整合的な位置合わせが可能となる。
これらの操作は、最終的に製造される半導体素子の設計に応じて行えばよい。
【0073】
上記第1の好ましい態様の一例においては、露光を2回行う態様を記載したが、上層を再び露光及びエッチングする工程及び下層を再びエッチングする工程を更に複数回含んでもよい。また、上記の下層を再びエッチングする工程の後に、金属含有膜をエッチングする工程を含んでいてもよい。金属含有膜をエッチングする工程は、金属含有膜がゲルマニウム元素を20atm%以上含む場合には、例えば、CFガスを用いて金属含有膜をエッチングすればよい。金属含有膜のCFガスに対するエッチングレートが、SOC膜又はa-Si膜等のCFガスに対するエッチングレートに比べて低いことで、金属含有膜が選択的にエッチングされ除去される。
また、金属含有膜をエッチングする工程は、金属含有膜が、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である場合には、例えば、Cl/Arガスを用いて金属含有膜をエッチングすればよい。金属含有膜のCl/Arガスに対するエッチングレートが、SiO膜又はSiN膜等のCl/Arガスに対するエッチングレートに比べて低いことで、金属含有膜が選択的にエッチングされ除去される。
また、レジスト層をアッシングする工程、電極を形成する工程など、得たい半導体素子の設計に応じて、半導体素子の製造の分野で公知の工程を更に含んでいてもよい。
【0074】
その他、第1の好ましい態様の例としては、上層及び下層を有するレジスト層を含む部材を用い、上層を露光及びエッチングする工程と、下層をエッチングする工程と、下層に形成された凹部に金属含有膜を形成する工程と、更に下層をエッチングする工程と、を含む半導体素子の製造方法が挙げられる。
上記例においては、下層により形成されたパターンに対し、凸部と凹部が逆転した金属含有膜により形成されたパターンを得ることができる。
【0075】
また、第1の好ましい態様の別の一例として、多層レジスト層における中層として上述の金属含有膜を含む半導体素子中間体を用いる場合について説明する。
【0076】
上記別の一例(以降、別の一例Aともいう)として、具体的には、基板上にレジスト層Aを形成する工程と、前記レジスト層A上に金属含有膜を形成する工程と、前記金属含有膜上に更に前記レジスト層Aとは異なるレジスト層Bを形成する工程と、前記レジスト層Bを露光及び現像する工程と、前記金属含有膜をエッチングする工程と、前記レジスト層Aをエッチングする工程と、前記金属含有膜をエッチングガスにより除去する工程と、を含み、前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である、半導体素子の製造方法が挙げられる。
本開示に係る半導体素子中間体を購入等の手段により入手して用いる場合には、基板上にレジスト層Aを形成する工程、前記レジスト層A上に金属含有膜を形成する工程、及び、前記金属含有膜上に更に前記レジスト層Aとは異なるレジスト層Bを形成する工程の少なくともいずれかは省略してもよい。
【0077】
〔基板上にレジスト層Aを形成する工程〕
形成されるレジスト層Aは、上述の多層レジスト層における下層に該当する層である。
基板上にレジスト層Aを形成する工程としては、特に限定されず、公知の方法を用いればよい
【0078】
〔レジスト層A上に金属含有膜を形成する工程〕
レジスト層A上に形成される金属含有膜は、上述の金属含有膜であり、上述の多層レジスト層における中層に該当する層である。
レジスト層A上に金属含有膜を形成する工程としては、上述の本開示に係る半導体素子中間体の製造方法における、スパッタ工程、又は、組成物付与工程と同様の工程が挙げられる。
別の一例Aでは、金属含有膜におけるスイッチング特性を利用する観点から、下層(即ち、レジスト層A)としてSOC膜又はa-Si膜を形成し、且つ、金属含有膜としてゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である金属含有膜を形成することが好ましい。
また、別の一例Aでは、金属含有膜におけるスイッチング特性を利用する観点から、下層(即ち、レジスト層A)としてSiO膜、又は、SiN膜を形成し、かつ、金属含有膜とスズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である金属含有膜を形成することが好ましい。
【0079】
〔金属含有膜上に更に前記レジスト層Aとは異なるレジスト層Bを形成する工程〕
形成されるレジスト層Bは、上述の多層レジスト層における上層に該当する層であり、フォトレジスト層であることが好ましい。
基板上にレジスト層Bを形成する工程としては、特に限定されず、公知の方法を用いればよい
【0080】
〔前記レジスト層Bを露光及び現像する工程〕
レジスト層Bを露光及びエッチングする工程においては、例えば、フォトレジストの分野において公知の露光方法及びエッチング方法を特に制限なく使用することが可能である。
また、露光後加熱、エッチング後の加熱など、フォトレジストの分野において公知の工程を更に行ってもよい。
【0081】
〔金属含有膜をエッチングする工程〕
金属含有膜をエッチングする工程においては、上述の現像されたレジスト層Bをマスクパターンとして、レジスト層Bに形成されたレジストパターンが金属含有膜による層に転写される。
金属含有膜のエッチング方法としては、特に限定されないが、金属含有膜のエッチングレートが高く、かつ、レジスト層Aのエッチングレートが低いエッチングガスを用いることが好ましい。
【0082】
〔レジスト層Aをエッチングする工程〕
レジスト層Aをエッチングする工程においては、下層に中層のパターンが転写される。下層に中層のパターンを転写する方法としては、特に限定されず、半導体素子の製造において公知の方法を用いることができる。
レジスト層Aをエッチングする工程は、上述の下層をエッチングする工程に記載した工程と同様の工程であることが好ましい
レジスト層Aのエッチング方法としては、特に限定されないが、金属含有膜のエッチングレートが低く、かつ、レジスト層Aのエッチングレートが高いエッチングガスを用いることが好ましい。
【0083】
〔金属含有膜をエッチングガスにより除去する工程〕
金属含有膜をエッチングガスにより除去する工程においては、特に限定されないが、金属含有膜のエッチングレートが高く、かつ、レジスト層Aのエッチングレートが低いエッチングガスを用いることが好ましい。
上記エッチングガスとしては、金属含有膜をエッチングする工程において用いたエッチングガスを使用してもよい。
本開示における金属含有膜は、スイッチング特性を有しているため、金属含有膜及びエッチングガスを適宜選択することにより、レジスト層Aのエッチングを抑制しながら、金属含有膜を除去することが可能である。
金属含有膜をエッチングガスにより除去することにより、洗浄液等を用いた洗浄が不要となる。そのため、半導体素子の製造工程が簡略化される、洗浄液等を用いた洗浄によるパターンの変形、パターン倒れ等が抑制できるという利点がある。
なお、レジスト層AがSiO膜又はSiN膜などの絶縁性を有する膜である場合には、下層の一部を絶縁膜として残してもよい。
【0084】
第1の好ましい態様の更に別の一例(以降、別の一例Bともいう)として、具体的には、基板上に金属含有膜を形成する工程と、前記金属含有膜上にレジスト層Aを形成する工程と、前記レジスト層A上に更に前記レジスト層Aとは異なるレジスト層Bを形成する工程と、前記レジスト層Bを露光及び現像する工程と、前記レジスト層Aをエッチングする工程と、前記金属含有膜をエッチングする工程と、前記金属含有膜をエッチングガスにより除去する工程と、を含み、前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定される、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である、半導体素子の製造方法が挙げられる。
上記別の一例Bにおいては、レジスト層Aとして、SiO膜又はSiN膜を用いることが好ましい。
また、上記別の一例Bにおいては、レジスト層AであるSiO膜又はSiN膜等を、絶縁膜として残してもよい。
本開示に係る半導体素子中間体を購入等の手段により入手して用いる場合には、基板上に金属含有膜を形成する工程、前記金属含有膜上にレジスト層Aを形成する工程、及び、前記レジスト層A上に更に前記レジスト層Aとは異なるレジスト層Bを形成する工程の少なくともいずれかは省略してもよい。
上記別の一例Bにおける金属含有膜、レジスト層A及びレジスト層Bの形成方法、各層のエッチング方法及び金属含有膜の除去方法は、上述の別の一例Aにおける金属含有膜、レジスト層A及びレジスト層Bの形成方法、各層のエッチング方法及び金属含有膜の除去方法と同様の方法により行うことができる。
【0085】
<第2の好ましい態様>
本開示に係る半導体素子の製造方法の第2の好ましい態様は、本開示に係る半導体素子中間体の金属含有膜を埋め込み絶縁膜として用いる態様である。
第2の好ましい態様の一例としては、特に限定されないが、埋め込み絶縁膜を形成する工程を含む半導体素子の製造方法が挙げられる。
本開示に係る半導体素子中間体を購入等の手段により入手して用いる場合には、埋め込み絶縁膜を形成する工程を省略し、後述するその他の工程を含む半導体素子の製造方法としてもよい。
本開示に係る半導体素子の製造方法によれば、エッチング選択性に優れ、かつ耐熱性に優れた埋め込み絶縁膜(STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)を備える半導体素子が製造される。また、凹部への充填性にも優れた埋め込み絶縁膜が得られやすい。
【0086】
〔埋め込み絶縁膜を形成する工程〕
埋め込み絶縁膜を形成する工程の一例としては、例えば、前記凹部を有する部材に対し、スパッタ法により前記金属含有膜を前記凹部の内部に形成する工程(スパッタ工程ともいう)を含む工程が挙げられる。
埋め込み絶縁膜を形成する工程の別の一例としては、例えば、後述する金属含有膜形成用組成物を、前記凹部を有する部材上に付与する工程(組成物付与工程ともいう)と、付与された前記金属含有膜形成用組成物を焼成する工程(焼成工程ともいう)と、を含む工程が挙げられる。更に、焼成工程の前には、乾燥工程を行ってもよいし、スパッタ工程又は組成物付与工程の後であって、焼成工程の前には、洗浄工程を行ってもよい。
なお、埋め込み絶縁膜を形成する工程における各工程(例えば、スパッタ工程、組成物付与工程、乾燥工程、洗浄工程、焼成工程等)は、前述の半導体素子中間体の製造方法における各工程(例えば、スパッタ工程、組成物付与工程、乾燥工程、洗浄工程、焼成工程等)と同様であるため、その説明を省略する。
【0087】
<その他の工程>
本開示に係る半導体素子の製造方法は、その他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、半導体プロセスにおける公知の工程が挙げられる。
例えば、本開示に係る半導体素子の製造方法は、その他の工程として、プラズマ工程を有していてもよい。
プラズマ工程におけるプラズマとしては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、アンモニアガス、酸素ガス、水素ガス、及びフルオロカーボン系ガスからなる群より選択される少なくとも1種のガスから発生したプラズマが挙げられる。
本開示に係る半導体素子の製造方法が、プラズマ工程を有する場合、埋め込み絶縁膜(例えば、STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)は、プラズマに曝されてもプラズマ耐性に優れる傾向がある。
また、本開示に係る半導体素子の製造方法が、焼成工程を有する場合、埋め込み絶縁膜は、耐熱性に優れたものとなる。
【0088】
また、本開示に係る半導体素子の製造方法は、その他の工程として、埋め込み絶縁膜(例えば、STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)を除去する除去工程を有していてもよい。この態様は、埋め込み絶縁膜の少なくとも1つが犠牲膜である場合に特に好適である。
除去工程における埋め込み絶縁膜の除去方法としては、UVオゾン処理を用いた除去方法、又は、除去処理としてのプラズマ処理等のガスを用いた除去方法が挙げられる。
なお、埋め込み絶縁膜は、残して絶縁膜として用いてもよい。
【0089】
(半導体素子)
本開示に係る半導体素子は、本開示に係る半導体素子の製造方法により得られる半導体素子であることが好ましい。
また、本開示に係る半導体素子は、埋め込み絶縁膜である金属含有膜を備え、前記金属含有膜における、X線光電分光法により測定されるゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上であることが好ましい。
更に、本開示に係る半導体素子は、埋め込み絶縁膜である金属含有膜を備え、前記金属含有膜が、後述する金属含有膜形成用組成物の硬化物であることが好ましい。
【0090】
(金属含有膜形成用組成物)
本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、本開示に係る半導体素子中間体における前記金属含有膜の形成に用いられる組成物であって、窒素雰囲気下で400℃10分間焼成後の、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である。
つまり、本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、窒素雰囲気下で400℃10分間焼成して焼成物を得たとき、この焼成物における、X線光電分光法により測定される、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上となる、又は、スズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上となる、金属含有膜形成用組成物である。
本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、前述の本開示に係る半導体素子中間体において、多層レジスト層の少なくとも1つの層に凹部が形成されており、この凹部の幅が5nm以上300nm以下であり、この凹部に金属含有層が形成されている場合、この凹部の埋め込みに用いられることが好ましい。また、このとき、金属含有層が埋め込み絶縁膜であることが好ましい態様である。この場合、本開示に係る金属含有膜形成用組成物を用いることで、上記のような幅の狭い凹部であっても埋め込みが容易になるといった優位性を有する。
【0091】
<ゲルマニウム元素、スズ元素、インジウム元素、及び、ガリウム元素の含有量>
ゲルマニウム元素、スズ元素、インジウム元素、及び、ガリウム元素の含有量は、シリコン基板上に金属含有膜形成用組成物を滴下し、窒素雰囲気下(30kPa)で400℃10分間焼成後の焼成物を用いて、上述の金属含有膜における、ゲルマニウム元素、スズ元素、インジウム元素、及び、ガリウム元素の各元素の含有量の測定条件と同様の条件により測定される。
得られる焼成物(即ち、金属含有膜)におけるゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である場合、金属含有膜形成用組成物における上記ゲルマニウム元素の含有量は、スイッチング特性を良好にする観点から、20atm%以上であり、24atm%以上であることが好ましく、30atm%以上であることがより好ましい。金属含有膜形成用組成物におけるゲルマニウム元素の含有量の上限は、特に限定されず、100atm%以下であればよい。
得られる焼成物(即ち、金属含有膜)におけるスズ元素、インジウム元素及びガリウム元素の合計含有量が1atm%以上である場合、金属含有膜形成用組成物における上記合計含有量は、スイッチング特性を良好にする観点から、1atm%以上であり、2atm%以上30atm%以下であることが好ましく、5atm%以上22atm%以下であることがより好ましい。
【0092】
<金属含有膜形成用組成物の組成>
本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、ゲルマニウム化合物を含む、又は、スズ化合物、インジウム化合物及びガリウム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
これらの化合物の詳細については後述するが、金属含有膜形成用組成物は、ゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウム炭化化合物、ゲルマニウムの水酸化物及びゲルマニウムのハロゲン化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、又は、スズアルコキシド化合物、スズ炭化化合物、スズの水酸化物、スズのハロゲン化物、インジウムアルコキシド化合物、インジウム炭化化合物、インジウムの水酸化物、インジウムのハロゲン化物、ガリウムアルコキシド化合物、ガリウム炭化化合物、ガリウムの水酸化物及びガリウムのハロゲン化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、金属含有膜形成用組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
金属含有膜形成用組成物は、ゲルマニウム化合物と溶剤とを含む、又は、スズ化合物、インジウム化合物及びガリウム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種と溶剤とを含むことが好ましいが、その他の成分を更に含んでもよい。
以下、本開示において用いられる各成分の詳細について説明する。
【0093】
〔ゲルマニウム化合物〕
ゲルマニウム化合物としては、ゲルマニウムを含有する化合物であれば特に限定されないが、ゲルマニウム原子とカルボキシ基とを有する化合物(a1)、及び、前記化合物(a1)のエステルからなる群より選択される少なくとも1種である化合物(A)、ゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウム炭化化合物(即ち、酸素原子を含まない有機ゲルマニウム化合物)、ゲルマニウムの水酸化物、並びに、ゲルマニウムのハロゲン化物(より好ましくはフッ化物又は塩化物)よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、上述のゲルマニウム元素の含有量を増加させる観点からは、ゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウム炭化化合物、ゲルマニウムの水酸化物、及び、ゲルマニウムのハロゲン化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0094】
本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、ゲルマニウム化合物を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属含有膜形成用組成物中におけるゲルマニウム化合物の含有量は、スイッチング特性をより向上させる観点から、金属含有膜形成用組成物の固形分の全質量に対して80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましく、99.9質量%以上が特に好ましい。
なお、固形分とは、金属含有膜形成用組成物から溶剤などの揮発成分を除去した残渣である。
【0095】
-ゲルマニウムアルコキシド化合物-
本開示において用いられるゲルマニウムアルコキシド化合物としては、下記式GAにより表される化合物が好ましく挙げられる。
Ge(ORm-n 式GA
式GA中、Rは非加水分解性基であり、Rは炭素数1~6のアルキル基であり、mはゲルマニウム原子Mの価数=4であり、nはmが4の場合は0~2の整数であり、Rが複数ある場合、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rが複数ある場合、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。
はアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。
はスイッチング特性をより向上させる観点から、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、エチル基であることが更に好ましい。
nは、均一な金属含有膜を形成してスイッチング特性をより向上する観点から、0~2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0096】
-化合物(A)-
化合物(A)は、ゲルマニウム原子とカルボキシ基とを有する化合物(a1)、及び、前記化合物(a1)のエステルからなる群より選択される少なくとも1種である化合物である。
化合物(A)は、ゲルマニウム原子を2以上含んでもよいし、ゲルマニウム原子以外の金属原子として、スズ原子、セレン原子、インジウム原子、及びガリウム原子からなる群より選択される同種の金属原子を1つ以上含んでいてもよい。
前記化合物(a1)のエステルとは、ゲルマニウム原子とカルボキシ基を有する化合物(a1)と、アルコールとの脱水縮合反応で得られるエステル化合物をいう。アルコールとしては、特に制限はないが、例えば、炭素数1~10のアルコール(直鎖状、分枝状、環状のいずれも可)が挙げられる。なお、前記アルコールのアルキル基は置換基を有していてもよい。
なお、化合物(a1)及び前記化合物(a1)のエステルはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
化合物(A)の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は、スイッチング特性をより良好にする観点から、120以上50000以下であることが好ましく、150以上10000以下であることがより好ましく、150以上1000以下であることが更に好ましく、150以上600以下であることが特に好ましい。
より詳細には、化合物(A)が重合体以外の化合物である場合、化合物(A)の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は、120以上10000以下であることが好ましく、150以上1000以下であることがより好ましく、150以上600以下であることが更に好ましい。
化合物(A)が重合体である場合、化合物(A)の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は、200以上50000以下であることが好ましく、300以上10000以下であることがより好ましく、500以上2000以下であることが更に好ましい。
【0098】
化合物(a1)は、下記式(1)若しくは下記式(2)で表される化合物、又は、下記式(3)で表される構成単位及び下記式(4)で表される構成単位の少なくとも一方を有する重合体であることが好ましい。
【0099】
<<式(1)で表される化合物>>
化合物(a1)としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0100】
【化1】
【0101】
式(1)において、Mはゲルマニウム原子を表し、Xは、-S-、-S-S-、-O-、-NH-、又は-NR13-を表し、R13は、炭素数1~10のアルキル基を表し、R11は、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、R12は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表し、式(1)において、p1は0又は1を表し、q1は0又は1を表し、n1は1以上の整数を表し、r1は0以上の整数を表し、sは0以上の整数を表す。ただし、n1+r1+2sは4である。
【0102】
式(1)において、R13で表される「炭素数1~10のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が具体例として挙げられ、これらは直鎖状、分枝状、及び環状のいずれでもよい。
式(1)において、R11で表される「炭素数1~10のアルキレン基」としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカレン基等が具体例として挙げられ、これらは直鎖状、分枝状、及び環状のいずれでもよい。
式(1)において、R12で表される「炭素数1~5のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が具体例として挙げられ、これらは直鎖状、分枝状、及び環状のいずれでもよい。また、R12で表される「炭素数1~5のアルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が具体例として挙げられ、これらは直鎖状、分枝状、及び環状のいずれでもよい。
式(1)において、R11で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基」における置換基としては、例えば、アミノ基、カルボキシアミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、及びカルバモイル基からなる群より選択される1以上の置換基が挙げられる。なお、上記アルキレン基に置換される置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0103】
式(1)において、Xとしては、-O-、-NH-、又は-NR13-が好ましい。R13としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
式(1)において、R11としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましい。R11で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基」における置換基としては、アミノ基、カルボキシアミノ基が好ましい。
式(1)において、R12としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
式(1)において、化合物(A)の溶液中での安定性(加水分解等による重合のし難さ)の観点から、p1としては0が好ましい。q1としては1が好ましい。
【0104】
上記式(1)で表される化合物(化合物(a1))の具体的な態様としては、下記1)~4)の態様が挙げられる。
1)式(1)において、p1が0、q1が1である態様。
2)式(1)において、n1が2以上である態様(ただし、p1が0、q1が1)。
3)式(1)において、n1が2以上であり(ただし、p1が0、q1が1)、分子内に硫黄原子を含まない態様。
4)上記1)~3)の態様において、Mにヒドロキシ基が直接結合していない態様。
【0105】
化合物(a1)として、式(1)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これに限定されない。
【0106】
【化2】
【0107】
<<式(2)で表される化合物>>
化合物(a1)としては、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0108】
【化3】
【0109】
式(2)において、Mは、ゲルマニウム原子を表し、Xは、-S-、-S-S-、-O-、-NH-、又は-NR24-を表し、R24は、炭素数1~10のアルキル基を表し、R21は、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、R22は、単結合、-O-、又は-NR25-を表し、R25は置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表し、R23は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表し、p2は0又は1を表し、q2は0又は1を表し、r2は0以上の整数を表し、tは0以上の整数を表す。ただし、r2+2t+2は、4である。
【0110】
式(2)において、R24で表される「炭素数1~10のアルキル基」及びR25で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基」における「炭素数1~10のアルキル基」は、式(1)において、R13で表される「炭素数1~10のアルキル基」と同義である。
式(2)において、R21で表される「炭素数1~10のアルキレン基」は、式(1)において、R11で表される「炭素数1~10のアルキレン基」と同義である。
式(2)において、R23で表される「炭素数1~5のアルキル基」は、式(1)において、R12で表される「炭素数1~5のアルキル基」と同義である。
式(2)において、R23で表される「炭素数1~5のアルコキシ基」は、式(1)において、R12で表される「炭素数1~5のアルコキシ基」と同義である。
式(2)において、R21で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基」における置換基としては、例えば、アミノ基、カルボキシアミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、及びカルバモイル基からなる群より選択される1以上の置換基が挙げられる。なお、上記アルキレン基に置換される置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
式(2)において、Xは、-S-、-S-S-、-O-、-NH-、又は-NR24-を表し、R24は、炭素数1~10のアルキル基を表す。Xとしては、-O-、-NH-、又は-NR24-が好ましい。R24としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
式(2)において、R21は、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基を表す。R21としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましい。R21で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基」における置換基としては、アミノ基、カルボキシアミノ基が好ましい。
式(2)において、R22は、単結合、-O-、又は-NR25-を表し、R25は置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。R22としては、-O-が好ましい。
式(2)において、R23は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。R23としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
式(2)において、p2は0又は1を表し、q2は0又は1を表す。p2としては0が好ましい。q2としては1が好ましい。
【0111】
上記式(2)で表される化合物(化合物(a1))の具体的な態様としては、下記1)~3)の態様が挙げられる。
1)式(2)において、p2が0、q2が1である態様。
2)式(2)において、p2が0、q2が1であり、分子内に硫黄原子を含まない態様。3)上記1)又は2)の態様において、Mにヒドロキシ基が直接結合していない態様。
【0112】
化合物(a1)として、式(2)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これに限定されない。エッチング選択性及び耐熱性がより向上した金属含有膜を得る観点から、(A-21)で表される化合物が好ましい。
【0113】
【化4】
【0114】
<<式(3)で表される構成単位を有する重合体>>
化合物(a1)としては、下記式(3)で表される構成単位を有する重合体が好ましい。
下記式(3)で表される構成単位を有する重合体は、例えば、式(1)で表される化合物から得ることができる。具体的には、式(1)で表される化合物から、例えば、M-O-M結合(M:ゲルマニウム原子、スズ原子、インジウム原子、及びガリウム原子からなる群より選択される1種)を介した、線形重合体、かご状構造体、樹状構造体等の重合体を得ることができる。得られる重合体の形状は特に制限されず、線形重合体であっても、かご状構造体であっても、樹状構造体であってもよい。
また、式(3)で表される構成単位を有する重合体は、複数の金属化合物同士の重合体であってもよい。即ち、式(3)で表される構成単位を有する重合体は、ゲルマニウム原子、スズ原子、インジウム原子、及びガリウム原子からなる群より選択される1種の金属原子を有する重合体であってもよい。
【0115】
【化5】
【0116】
式(3)において、Mは、ゲルマニウム原子、スズ原子、インジウム原子、又はガリウム原子を表し、Xは、-S-、-S-S-、-O-、-NH-、又は-NR33-を表し、R33は、炭素数1~10のアルキル基を表し、R31は、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、R32は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表し、p3は0又は1を表し、q3は0又は1を表し、r3は0又は1を表し、r3が0の場合は結合手を表し、n3は2以上の整数を表し、n3個のMのうち、少なくとも1個はゲルマニウム原子を表す。
【0117】
式(3)において、R33で表される「炭素数1~10のアルキル基」は、式(1)において、R13で表される「炭素数1~10のアルキル基」と同義である。
式(3)において、R31で表される「炭素数1~10のアルキレン基」は、式(1)において、R11で表される「炭素数1~10のアルキレン基」と同義である。
式(3)において、R32で表される「炭素数1~5のアルキル基」は、式(1)において、R12で表される「炭素数1~5のアルキル基」と同義である。
式(3)において、R32で表される「炭素数1~5のアルコキシ基」は、式(1)において、R12で表される「炭素数1~5のアルコキシ基」と同義である。
式(3)において、R31で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基」における置換基としては、例えば、アミノ基、カルボキシアミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、及びカルバモイル基からなる群より選択される1以上の置換基が挙げられる。なお、上記アルキレン基に置換される置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0118】
式(3)において、Xとしては、-O-、-NH-、又は-NR33-が好ましい。
式(3)において、R33としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
式(3)において、R31としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、R31で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基」における置換基としては、アミノ基、カルボキシアミノ基が好ましい。
式(3)において、R32としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
式(3)において、p3としては0が好ましい。q3としては1が好ましい。
式(3)において、r3は1が好ましい。
式(3)において、n3としては2以上250以下が好ましい。
【0119】
化合物(a1)として、式(3)で表される構成単位を有する重合体の好ましい具体例としては、例えば、下記式(3A)で表される構成単位を有する重合体が挙げられるが、これに限定されない。
式(3A)中、nは2以上130以下であることが好ましい。
【0120】
【化6】
【0121】
<<式(4)で表される構成単位を有する重合体>>
化合物(a1)としては、下記式(4)で表される構成単位を有する重合体が好ましい。
下記式(4)で表される構成単位を有する重合体は、例えば、式(2)で表される化合物から得ることができる。具体的に式(2)で表される化合物から、例えば、M-O-M結合(M:ゲルマニウム原子、スズ原子、インジウム原子、及びガリウム原子からなる群より選択される1種)を介した、線形重合体等の重合体を得ることができる。得られる重合体の形状は特に制限されない。
また、式(4)で表される構成単位を有する重合体は、複数の金属化合物同士の重合体であってもよい。即ち、式(4)で表される構成単位を有する重合体は、ゲルマニウム原子、スズ原子、インジウム原子、及びガリウム原子からなる群より選択される1種の金属原子を有する重合体であってもよい。
【0122】
【化7】
【0123】
式(4)において、Mは、ゲルマニウム原子、スズ原子、インジウム原子、又はガリウム原子を表し、Xは、-S-、-S-S-、-O-、-NH-、又は-NR43-を表し、R43は、炭素数1~10のアルキル基を表し、R41は、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、R42は、単結合、-O-、又は-NR44-を表し、R44は置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表し、p4は0又は1を表し、q4は0又は1を表し、n4は2以上の整数を表し、2×n4個のMのうち、少なくとも一個はゲルマニウム原子を表す。
式(4)において、R43で表される「炭素数1~10のアルキル基」及びR44で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基」における「炭素数1~10のアルキル基」は、式(1)において、R13で表される「炭素数1~10のアルキル基」と同義である。
式(4)において、R41で表される「炭素数1~10のアルキレン基」は、式(1)において、R11で表される「炭素数1~10のアルキレン基」と同義である。
式(4)において、R41で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基」における置換基としては、例えば、アミノ基、カルボキシアミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、及びカルバモイル基からなる群より選択される1以上の置換基が挙げられる。なお、上記アルキレン基に置換される置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
式(4)において、R44で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基」における置換基としては、例えば、アミノ基、カルボキシアミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、及びカルバモイル基からなる群より選択される1以上の置換基が挙げられる。なお、上記アルキル基に置換される置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0124】
式(4)において、Mとしては、ゲルマニウム原子又はスズ原子が好ましく、ゲルマニウム原子がより好ましい。
式(4)において、Xとしては、-O-、-NH-、又は-NR43-が好ましい。
式(4)において、R43としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
式(4)において、R41としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、R41で表される「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基」における置換基としては、アミノ基、カルボキシアミノ基が好ましい。
式(4)において、R42としては、-O-が好ましい。
式(4)において、p4としては0が好ましい。q4としては1が好ましい。
式(4)において、n4としては2以上130以下が好ましい。
【0125】
化合物(a1)として、式(4)で表される構成単位を有する重合体の好ましい具体例は、例えば、下記式(4A)で表される構成単位を有する重合体が挙げられるが、これに限定されない。
下記式(4A)で表される構成単位を有する重合体は、式(A-21)で表される化合物の重合体の一例である。式(4A)中、nは2以上130以下であることが好ましい。
【0126】
【化8】
【0127】
〔スズ化合物〕
スズ化合物としては、スズを含有する化合物であれば特に限定されないが、スズアルコキシド化合物、スズ炭化化合物(即ち、酸素原子を含まない有機スズ化合物)、スズの水酸化物、及び、スズのハロゲン化物(より好ましくはフッ化物又は塩化物)よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、上述のスズ元素の含有量を増加させる観点からは、スズアルコキシド化合物、スズ炭化化合物、スズの水酸化物、及び、スズのハロゲン化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0128】
本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、スズ化合物を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属含有膜形成用組成物中におけるスズ化合物の含有量は、スイッチング特性をより向上させる観点から、金属含有膜形成用組成物の固形分の全質量に対して80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましく、99.9質量%以上が特に好ましい。
【0129】
〔インジウム化合物〕
インジウム化合物としては、インジウムを含有する化合物であれば特に限定されないが、インジウムアルコキシド化合物、インジウム炭化化合物(即ち、酸素原子を含まない有機インジウム化合物)、インジウムの水酸化物、及び、インジウムのハロゲン化物(より好ましくはフッ化物又は塩化物)よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、上述のインジウム元素の含有量を増加させる観点からは、インジウムアルコキシド化合物、インジウム炭化化合物、インジウムの水酸化物、及び、インジウムのハロゲン化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0130】
本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、インジウム化合物を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属含有膜形成用組成物中におけるインジウム化合物の含有量は、スイッチング特性をより向上させる観点から、金属含有膜形成用組成物の固形分の全質量に対して80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましく、99.9質量%以上が特に好ましい。
【0131】
〔ガリウム化合物〕
ガリウム化合物としては、ガリウムを含有する化合物であれば特に限定されないが、ガリウムアルコキシド化合物、ガリウム炭化化合物(即ち、酸素原子を含まない有機ガリウム化合物)、ガリウムの水酸化物、及び、ガリウムのハロゲン化物(より好ましくはフッ化物又は塩化物)よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、上述のガリウム元素の含有量を増加させる観点からは、ガリウムアルコキシド化合物、ガリウム炭化化合物、ガリウムの水酸化物、及び、ガリウムのハロゲン化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0132】
本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、ガリウム化合物を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属含有膜形成用組成物中におけるガリウム化合物の含有量は、スイッチング特性をより向上させる観点から、金属含有膜形成用組成物の固形分の全質量に対して80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましく、99.9質量%以上が特に好ましい。
【0133】
〔溶剤〕
本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤としては、水、水以外の水溶性溶剤、及びこれらの混合物が好ましく挙げられる。
水溶性溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶剤の他、エチレングリコール、ジメトキシエタン、ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、ノルマルヘキサン等が挙げられ、中でも、アルコール系溶剤が好ましい。
溶剤として、水とアルコール系溶剤との混合物を用いる場合、混合比は、水:アルコール系溶剤(質量比)=90:10~60:40がより好ましい。
【0134】
本開示に係る金属含有膜形成用組成物の全質量に対する溶剤の含有量は、10質量%~98質量%であることが好ましく、50質量%~95質量%であることがより好ましい。
また、本開示に係る金属含有膜形成用組成物の全質量に対する、ゲルマニウム化合物と溶剤との合計量、又は、スズ化合物、インジウム化合物及びガリウム化合物の総量と溶剤との合計量は、80質量%~100質量%であることが好ましく、90質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0135】
〔その他の成分〕
本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、窒素原子を有する化合物、ゲルマニウム元素、スズ元素、インジウム元素、及びガリウム元素以外の金属元素を含む金属アルコキシド、酸、架橋剤等のその他の化合物を含んでいてもよい。
【0136】
・窒素原子を有する化合物
窒素原子を有する化合物としては、例えば、脂肪族アミン、シロキサン結合(Si-O結合)とアミノ基とを有する化合物、環構造を有するアミン、及びその他の窒素原子を有する化合物等が挙げられる。
【0137】
本開示における脂肪族アミンは、重量平均分子量1万以上20万以下の脂肪族アミンである。
脂肪族アミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、ブチレンイミン、ペンチレンイミン、ヘキシレンイミン、ヘプチレンイミン、オクチレンイミン、トリメチレンイミン、テトラメチレンイミン、ペンタメチレンイミン、ヘキサメチレンイミン、オクタメチレンイミンなどのアルキレンイミンの重合体であるポリアルキレンイミン;ポリアリルアミン;ポリアクリルアミドが挙げられる。
【0138】
シロキサン結合(Si-O結合)とアミノ基とを有する化合物としては、例えば、シロキサンジアミン、アミノ基を有するシランカップリング剤、シロキサン重合体などが挙げられる。
【0139】
その他の窒素原子を有する化合物としては、例えば、アンモニア、アンモニウム塩、エチルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N-アセチルエチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、N-(2-アミノエチル)グリシンなどが挙げられる。
【0140】
本開示における環構造を有するアミンは、分子量90以上600以下の環構造を有するアミンである。
環構造を有するアミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミン及びN-メチルシクロヘキシルアミンに代表される脂環式アミン;ジアミノジフェニルエーテル、キシレンジアミン(好ましくはパラキシレンジアミン)、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、メチレンジアニリン、ジメチルジアミノビフェニル、ビス(トリフルオロメチル)ジアミノビフェニル、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノベンズアニリド、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、ジカルボキシジアミノジフェニルメタン、ジアミノレゾルシン、ジヒドロキシベンジジン、ジアミノベンジジン、1,3,5-トリアミノフェノキシベンゼン、2,2’-ジメチルベンジジン、トリス(4-アミノフェニル)アミン、2,7-ジアミノフルオレン、1,9-ジアミノフルオレン及びジベンジルアミンに代表される芳香族アミン;及び、メラミン、アンメリン、メラム、メレムに代表される複素環アミン;等が挙げられる。
【0141】
・ゲルマニウム元素、スズ元素、インジウム元素、及びガリウム元素以外の金属元素を含む金属アルコキシド
ゲルマニウム元素、スズ元素、インジウム元素、及びガリウム元素以外の金属元素を含む金属アルコキシドとしては、例えば、一般式(I)で表される金属アルコキシドが挙げられる。
M(ORm-n・・・(I)
(式中、Rは非加水分解性基であり、Rは炭素数1~6のアルキル基であり、Mは、Ti、Al、Zr、Sr、Ba、Zn、B、Y、Pb、P、Sb、V、Ta、W、La、Nd、及びHfの金属原子群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を示し、mは金属原子Mの価数で、3又は4であり、nは、mが4の場合は0~2の整数、mが3の場合は0又は1であり、Rが複数ある場合、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、ORが複数ある場合、各ORは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(I)中、好ましくはnが1以上である。
【0142】
・酸
酸としては、例えば、分子量46以上195以下の酸が挙げられる。
本開示に係る金属含有膜形成用組成物が、例えば、窒素原子を有する化合物と酸とを含む場合、酸におけるカルボキシ基と窒素原子を有する化合物中のアミノ基がイオン結合を形成することで、窒素原子を有する化合物と酸との会合による凝集が抑制されると推測される。
酸として好ましくは、カルボキシ基を有し、かつ、重量平均分子量46以上195以下のカルボン酸化合物が挙げられる。カルボン酸化合物としては、特に限定されず、モノカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物、オキシジカルボン酸化合物などが挙げられる。より具体的には、酸としては、ギ酸、酢酸、マロン酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、酪酸、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、フタル酸、テレフタル酸、ピコリン酸、サリチル酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。
【0143】
・架橋剤
架橋剤としては、分子内に-C(=O)OX基(Xは、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基である)を3つ以上有し、3つ以上の-C(=O)OX基(以下、「COOX」とも称する。)のうち、1つ以上6つ以下が-C(=O)OH基(以下、「COOH」とも称する。)であり、重量平均分子量が200以上600以下である化合物が好ましい。
架橋剤の具体例としては、特に限定されないが、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサカルボン酸等の脂環カルボン酸;1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリト酸等のベンゼンカルボン酸;1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸等のナフタレンカルボン酸;3,3’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルメタン、ビフェニル-3,3’,5,5’-テトラカルボン酸、ビフェニル-3,4’,5-トリカルボン酸、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸、4,4’-オキシジフタル酸、1,3-ビス(フタル酸)テトラメチルジシロキサン等のジフタル酸;4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、9,9-ビス(トリフルオロメチル)-9H-キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、1,4-ジトリフルオロメチルピロメリット酸等のフッ化芳香環カルボン酸;及びこれらのエステル体が挙げられる。
【0144】
本開示に係る金属含有膜形成用組成物中のその他の化合物の含有量は、スイッチング特性をより向上させる観点から、金属含有膜形成用組成物の固形分の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
【0145】
また、本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、その他の化合物として、例えば、電気特性改善のために、フタル酸、安息香酸、又はこれらの誘導体を含有してもよい。
また、本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、その他の化合物として、例えば、銅の腐食を抑制するため、ベンゾトリアゾール又はその誘導体を含有していてもよい。
【0146】
<金属含有膜形成用組成物の物性>
本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、硬化開始温度が300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
本開示において、硬化開始温度とは、貯蔵弾性率の立ち上がり温度である。各温度の貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置により連続的に測定できる。
【0147】
〔屈折率〕
本開示における金属含有膜形成用組成物は、窒素雰囲気下で400℃10分間焼成後の屈折率が、スイッチング特性を良好にする観点から、1.30以上2.00以下であることが好ましく、1.40以上1.90以下がより好ましく、1.50以上1.80以下が更に好ましい。
つまり、本開示に係る金属含有膜形成用組成物は、窒素雰囲気下で400℃10分間焼成して焼成物を得たとき、この焼成物における屈折率が上記の範囲となる金属含有膜形成用組成物であることが好ましい。
【0148】
-屈折率の測定方法-
屈折率測定は、下記の方法により行われる。
金属含有膜形成用組成物をシリコン基板(平板)上に塗布し、窒素雰囲気下で400℃10分間焼成する。
金属含有膜が形成されたシリコン基板を2cm角に切断してサンプルを作製した後、SEMILAB社製光学式ポロシメータ(型番:PS-1200)の試料室にセットして測定を行う。
解析モデルとしては、各金属元素を含む層を1層として、吸収がないとしてコーシーモデルを用いて屈折率を求める。また、各膜厚を推測するときは、1層解析により求める。このとき膜のフィッティング精度を向上するため、コーシーの式に+ローレンツ項を付加して解析を行う。
【0149】
〔pH〕
本開示に係る金属含有膜形成用組成物の25℃におけるpHとしては、特に限定されないが、2.0以上12.0以下であることが好ましい。
【0150】
(金属含有膜形成用組成物の製造方法)
本開示における金属含有膜形成用組成物の製造方法は、ゲルマニウム化合物、又は、スズ化合物、インジウム化合物及びガリウム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種と、溶剤とを混合する混合工程を含むことが好ましい。
なお、金属含有膜形成用組成物が、ゲルマニウム化合物、又は、スズ化合物、インジウム化合物及びガリウム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種、及び、溶剤以外の成分を含む場合、全ての成分を同時に混合してもよいし、いくつかの成分を先に混合しておいた後に、他の成分を更に添加して混合してもよい。即ち、金属含有膜形成用組成物の各成分を添加するタイミングは特に限定されない。
【実施例
【0151】
以下、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下において、「水」としては、超純水(Millipore社製Milli-Q水、抵抗18MΩ・cm(25℃)以下)を使用した。
【0152】
(実施例1)
<金属含有膜形成用組成物A1の調製>
ゲルマニウムエトキシド(Gelest社製)0.34質量部を、1-プロパノール(富士フイルム和光純薬社製)3.7質量部に溶解し、1時間、攪拌し、金属含有膜形成用組成物A1とした。
【0153】
<金属含有膜の作製>
金属含有膜形成用組成物A1を塗布する基板としてシリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)を準備した。シリコン基板を、チャンバー内の湿度を30%RH以下に保ったスピンコーターの上にのせ、湿度30%にて、金属含有膜形成用組成物A1を滴下後、30秒保持した後、600rpm(rpmは1分間あたりの回転数)で30秒間回転させた後、2000rpmで10秒間回転させて乾燥させた。次いで、240℃で1分乾燥した。次いで、乾燥後の金属含有膜形成用組成物A1を、窒素雰囲気(30kPa)、400℃で10分間、加熱(焼成)し、厚さ200nmの金属含有膜を作製した。
【0154】
(実施例2)
<金属含有膜の作製>
GeOターゲットを使用したスパッタ法により、シリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)上に、ゲルマニウム元素を含む金属含有膜を200nmの厚さで成膜した。
【0155】
(実施例3)
<金属含有膜形成用組成物A2の調製>
水75.3質量部に、28%アンモニア水(富士フイルム和光純薬社製)6.5質量部を加え、更に、カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド(BCGe)(東京化成工業社製:B1367(品番))18.2質量部を添加し、均一に混合し、金属含有膜形成用組成物A2を作製した
【0156】
<金属含有膜の作製>
金属含有膜形成用組成物A2を塗布する基板としてシリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)を準備した。シリコン基板をスピンコーターの上にのせ、金属含有膜形成用組成物A2 1.0mLを10秒間一定速度で滴下し、13秒間保持した後、2,000rpmで1秒間、600rpmで30秒間回転させた後、2,000rpmで10秒間回転させて乾燥させた。
次いで、100℃で1分乾燥後、窒素雰囲気(30kPa)、300℃で10分間、金属含有膜を加熱した。その後、更に400℃で10分間、金属含有膜を加熱した(同一のサンプルを連続処理した)。
得られた金属含有膜の厚さは200nmであった。
【0157】
(比較例1)
<比較用金属含有膜形成用組成物1の調製>
カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド(BCGe)(東京化成工業社製、B1367(品番))18.23質量部に、エチルアミン(EA)3.83質量部と水77.94質量部を添加して、BCGe溶液を得た。
パラキシレンジアミン(pXDA)(アルドリッチ社製)10.0質量部と水50.0質量部と1-プロパノール(関東化学社製)40.0質量部とを混合し、pXDA溶液を得た。
BCGe溶液30質量部とpXDA溶液40質量部と水30質量部とを混合し、BCGe5.47質量%、pXDA4.00質量%、EA1.15質量%の溶液を得た。この溶液を比較例1の比較用金属含有膜形成用組成物1とした。
【0158】
<金属含有膜の作製>
実施例3と同様の方法により、金属含有膜を作製した。
【0159】
(比較例2)
<比較用金属含有膜形成用組成物2の調製>
ガラス製丸フラスコ内にアセトン35.55質量部及びアセチルアセトン35.55質量部を加えた。上記フラスコ中に、テトライソブトキシチタン18.6質量部(金属アルコキシド)、トリエトキシビニルシラン3.24質量部(金属アルコキシド)、トリエトキシメチルシラン0.74質量部(金属アルコキシド)を加え、撹拌混合した。その後、0.01NのHClを5.21質量部準備し、10分かけて滴下し、混合した。その後、オイルバスを使用し、85℃にて、3時間、撹拌混合した。その後、オイルバスからフラスコを取り出し、室温まで冷却し、アセチルアセトン48.0質量部を加え、N2雰囲気下にて150℃加熱後の残留物をポリマーとし、ポリマーが60%になるまで、減圧留去し、溶媒、水、副生成物を除去した。
これを、上記の3種の金属アルコキシドから生成したポリマー濃縮液とした。
このポリマー濃縮液12.18質量部に、アセチルアセトン/1-メトキシ2-プロパノール(質量比)=10/90の混合液を加え、ポリマー15%溶液とした。
そして、アセチルアセトン1.31質量部、1-エトキシ2-プロパノール24.8質量部、1-メトキシ2-プロパノール4.8質量部、水6.2質量部の混合液に、このポリマー溶液12.81質量部を加えた後、マレイン酸0.0192質量部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.0115質量部を加えて、ポリマー4質量%溶液を調製し、比較用金属含有膜形成用組成物2とした。
【0160】
<金属含有膜の作製>
金属含有膜形成用組成物A2の替わりに、比較用金属含有膜形成用組成物2を用いた以外は、実施例3と同様の方法により、金属含有膜を作製した。
【0161】
(比較例3)
<金属含有膜の作製>
Alターゲットを使用したスパッタ法により、シリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)上に、金属含有膜を200nmの厚さで成膜した。
【0162】
(比較例4)
<金属含有膜の作製>
ZrOターゲットを使用したスパッタ法により、シリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)上に、金属含有膜を200nmの厚さで成膜した。
【0163】
(ゲルマニウム元素の含有量の測定)
各実施例及び比較例において得られた金属含有膜を用いて、上述の条件によりX線電子分光法によるゲルマニウム元素及びその他の元素の含有量(atm%)の測定を行った。
測定結果は下記表1に記載した。
【0164】
(屈折率の測定)
各実施例及び比較例において得られた金属含有膜について、上述の条件によりポロシメータ(PS-1200)にて金属含有膜の屈折率の測定を行った。
測定結果は下記表1に記載した。
【0165】
【表1】
【0166】
(スイッチング特性の評価)
各実施例及び比較例において形成した金属含有膜に対し、アルバック社製RIE1515Z 並行平板型プラズマ処理装置を用いてプラズマエッチング処理を行った。
各例で得た金属含有膜をチャンバーに入れ、チャンバー内を1Pa以下に減圧後、エッチングガスとしてClガスを30ml/minで導入し、チャンバー内圧力を7Paにした。
次に、13.56MHz高周波電力を印加しプラズマ放電を行い、30秒間プラズマ処理を行った。
次に、エッチングガスとして、Clガスに代えて、CFガスをそれぞれ用いて上記と同様の方法でプラズマ処理を行った。
なお、プラズマ処理時間は、いずれのガスを用いた場合にも60秒とした。
また、対照例としてシリコン基板上に、厚さ200nmスピンオンカーボン膜(SOC膜、炭素含有量:81.9atm%)が形成されたサンプルを用意し、Clガス又はCFガスを用いてプラズマ処理を行った。
各実施例又は比較例により作製された金属含有膜のエッチングレート(nm/s)を、SOC膜のエッチングレート(nm/s)で除した値(金属含有膜のエッチングレート/SOC膜のエッチングレート)をSOC相対エッチングレート(単位なし)として、表2に記載した。
更に、シリコン基板上に、厚さ200nmアモルファスシリコン膜(a-Si膜)が形成されたサンプルを用意し、Clガス又はCFガスを用いてプラズマ処理を行った。
実施例2より作製された金属含有膜のエッチングレート(nm/s)を、a-Si膜のエッチングレート(nm/s)で除した値(金属含有膜のエッチングレート/a-Si膜のエッチングレート)をa-Si相対エッチングレート(単位なし)として、表2に記載した。
【0167】
【表2】
【0168】
また、実施例1~実施例3において形成した金属含有膜は、400℃、1atmの雰囲気下にて固体であった
更に、実施例1又は実施例3において使用した金属含有膜形成用組成物A1及びA2は、硬化開始温度が200℃以下であった。
上記固体であること、及び、硬化開始温度は、上述の方法により測定した。
【0169】
表2中、SOC相対エッチングレートの欄における「<0.1」の記載は、SOC相対エッチングレートが0.1未満であったことを示している。また、SOC相対エッチングレートが負の値である例は、プラズマ処理において逆に物質が付着して厚さが増したことを意味する。即ち、エッチングされなかったことを意味する。
表2に記載の結果から、結果として、ゲルマニウム元素の含有量が20atm%以上である実施例1~実施例3においては、ClガスのSOC相対エッチングレートは1以下だが、CFガスの相対エッチングレートは1を超えており、スイッチング特性を有しているといえる。
また、実施例2においては、Clガスのa-Si相対エッチングレートは1以下だが、CFガスの相対エッチングレートは1を超えており、スイッチング特性を有しているといえる。
比較例1(Ge含量16.5atm%)は、Clガス及びCFガスのいずれを用いた場合であっても、SOCエッチングレートが1を超えており、スイッチング特性を有していないといえる。
また、比較例2~比較例4は、Clガス及びCFガスのいずれを用いた場合であっても、SOCエッチングレートが0.5未満であり、スイッチング特性を有していないといえる。
【0170】
(実施例4)
<金属含有膜の作製>
SnOターゲットを使用したスパッタ法により、シリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)上に、スズ元素を含む金属含有膜を200nmの厚さで成膜した。
【0171】
(実施例5)
<金属含有膜形成用組成物B1の調製>
ポリビニルアルコール(Mw=22000)(富士フイルム和光純薬社製)0.08質量部に47.2質量部の水を加え、70℃に加熱して1時間撹拌し溶解した。更に、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)52.7質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、金属含有膜形成用組成物B1とした。
【0172】
<金属含有膜の作製>
金属含有膜形成用組成物B1を塗布する基板としてシリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)を準備した。シリコン基板を、チャンバー内の湿度を30%RH以下に保ったスピンコーターの上にのせ、湿度30%にて、金属含有膜形成用組成物B1 0.5mLを滴下後、30秒保持した後、600rpm(rpmは1分間あたりの回転数)で30秒間回転させた後、2000rpmで10秒間回転させて乾燥させた。次いで、100℃で1分乾燥した。次いで、乾燥後の金属含有膜形成用組成物B1を、窒素雰囲気(100kPa)、230℃で10分間、加熱(焼成)し、厚さ200nmの金属含有膜を作製した。
【0173】
(実施例6)
ポリビニルアルコール(Mw=22000)(富士フイルム和光純薬社製)0.25質量部に49.75質量部の水を加え、70℃に加熱して1時間撹拌し溶解した。更に、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)50.0質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、澄明な金属含有膜形成用組成物B2を得た。
この金属含有膜形成用組成物B2を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0174】
(実施例7)
実施例5において金属含有膜形成用組成物B1に替えて、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)(「金属含有膜形成用組成物B3)ともいう)を用いたこと、及び、加熱(焼成)温度を400℃とした以外は実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0175】
(実施例8)
加熱(焼成)温度を400℃とした以外は実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0176】
(実施例9)
加熱(焼成)温度を400℃とした以外は実施例6と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0177】
(実施例10)
<金属含有膜形成用組成物B4の調製>
ポリビニルアルコール(Mw=22000)(富士フイルム和光純薬社製)1.2質量部に46.3質量部の水を加え、70℃に加熱して1時間撹拌し溶解した。更に、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)46.7質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、澄明な金属含有膜形成用組成物B4を得た。
この金属含有膜形成用組成物B4を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0178】
(実施例11)
ポリビニルアルコール(Mw=22000)(富士フイルム和光純薬社製)1.3質量部に24.0質量部の水を加え、70℃に加熱して1時間撹拌し溶解した。更に、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)76.0質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、澄明な金属含有膜形成用組成物B5を得た。
この金属含有膜形成用組成物B5を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0179】
(実施例12)
<金属含有膜形成用組成物B6の調製>
ポリビニルアルコール(Mw=22000)(富士フイルム和光純薬社製)0.7質量部に66.0質量部の水を加え、70℃に加熱して1時間撹拌し溶解した。更に、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)34.0質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、澄明な金属含有膜形成用組成物B6を得た。
この金属含有膜形成用組成物B6を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0180】
(実施例13)
ポリビニルアルコール(Mw=22000)(富士フイルム和光純薬社製)2.2質量部に25.3質量部の水を加え、70℃に加熱して1時間撹拌し溶解した。更に、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)74.7質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、澄明な金属含有膜形成用組成物B7を得た。
この金属含有膜形成用組成物B7を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0181】
(実施例14)
ポリビニルアルコール(Mw=22000)(富士フイルム和光純薬社製)3.2質量部に24.7質量部の水を加え、70℃に加熱して1時間撹拌し溶解した。更に、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)75.3質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、澄明な金属含有膜形成用組成物B8を得た。
この金属含有膜形成用組成物B8を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0182】
(実施例15)
ポリビニルアルコール(Mw=22000)(富士フイルム和光純薬社製)3.7質量部に30.0質量部の水を加え、70℃に加熱して1時間撹拌し溶解した。更に、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)70.0質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、澄明な金属含有膜形成用組成物B9を得た。
この金属含有膜形成用組成物B9を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0183】
(実施例16)
ポリビニルアルコール(Mw=22000)(富士フイルム和光純薬社製)6.2質量部に57.3質量部の水を加え、70℃に加熱して1時間撹拌し溶解した。更に、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)42.7質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、澄明な金属含有膜形成用組成物B10を得た。
この金属含有膜形成用組成物B10を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0184】
(実施例17)
ポリビニルアルコール(Mw=22000)(富士フイルム和光純薬社製)10.0質量部に56.7質量部の水を加え、70℃に加熱して1時間撹拌し溶解した。更に、15質量%SnOコロイド分散液(ALFA社製)43.3質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、澄明な金属含有膜形成用組成物B11を得た。
この金属含有膜形成用組成物B11を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0185】
(比較例5)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(エパン410)(Mw=1200、親水基10%)(第1工業製薬社製)4.0質量部に96.0質量部のエタノールを加え、1時間撹拌し溶解した。その後23時間放置し、比較用組成物3を得た。
この比較用組成物3を用いて、実施例5と同様にして、金属を含有しない膜を作製した。
【0186】
(比較例6)
塩化第1スズ・二水和物(富士フイルム和光純薬社製)0.6質量部に95.4質量部のエタノールを加え、24時間撹拌し溶解した。更に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(エパン410)(Mw=1200、親水基10%)(第1工業製薬社製)4.0質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、比較用金属含有膜形成用組成物4を得た。
この比較用金属含有膜形成用組成物4を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0187】
(比較例7)
塩化第1スズ・二水和物(富士フイルム和光純薬社製)0.54質量部に95.33質量部のエタノールを加え、24時間撹拌し溶解した。更に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(エパン420)(Mw=1200、親水基20%)(第1工業製薬社製)4.13質量部添加し、1時間、攪拌し、その後23時間放置し、比較用金属含有膜形成用組成物5を得た。
この比較用金属含有膜形成用組成物5を用いて、実施例5と同様にして、金属含有膜を作製した。
【0188】
(比較例8)
<金属含有膜の作製>
Alターゲットを使用したスパッタ法により、シリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)上に、金属含有膜を200nmの厚さで成膜した。
なお、比較例8は、上述の比較例3と同一の例である。
【0189】
(比較例9)
<金属含有膜の作製>
TiOターゲットを使用したスパッタ法により、シリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)上に、金属含有膜を200nmの厚さで成膜した。
【0190】
(比較例10)
<金属含有膜の作製>
ZrOターゲットを使用したスパッタ法により、シリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)上に、金属含有膜を200nmの厚さで成膜した。
なお、比較例10は、上述の比較例4と同一の例である。
【0191】
(参考例1)
<金属含有膜の作製>
GeOターゲットを使用したスパッタ法により、シリコン基板(信越化学工業社製のダミー基板)上に、金属含有膜を200nmの厚さで成膜した。
なお、参考例1は、上述の実施例2と同一の例である。
【0192】
(金属元素の含有量の測定)
各実施例及び比較例において得られた金属含有膜を用いて、上述の条件によりX線電子分光法による金属元素及びその他の元素の含有量(atm%)の測定を行った。
測定結果は下記表3に記載した。
【0193】
(屈折率の測定)
各実施例及び比較例において得られた金属含有膜を用いて、上述の条件によりポロシメータ(PS-1200)にて金属含有膜の屈折率の測定を行った。
測定結果は下記表3に記載した
【0194】
【表3】
【0195】
(スイッチング特性の評価)
各実施例及び比較例において形成した金属含有膜に対し、アルバック社製RIE1515Z 並行平板型プラズマ処理装置を用いてプラズマエッチング処理を行った。
各例で得た金属含有膜をチャンバーに入れ、チャンバー内を1Pa以下に減圧後、エッチングガスとしてCFガスを30ml/minで導入し、チャンバー内圧力を7Paにした。
次に、13.56MHz、1.8W/cmの電力密度の高周波電力を印加しプラズマ放電を行い、30秒間プラズマ処理を行った。
次に、エッチングガスとして、CFガスに代えて、Cl/Arガスをそれぞれ用い、それぞれのガスを10ml/minで導入したこと以外は上記と同様の方法でプラズマ処理を行った。
なお、プラズマ処理時間は、CFガスを用いた場合には30秒、Cl/Arガスを用いた場合には180秒とした。
また、対照例としてシリコン基板上に、テトラエトキシシランを用いてプラズマCVD製膜法にて、厚さ200nmのSiO膜を成膜した。そして、実施例及び比較例と同じ条件でCFガス又はCl/Arガスを用いてプラズマ処理を行った。
各実施例又は比較例により作製された金属含有膜のエッチングレート(nm/s)を、対照例であるSiO膜のエッチングレート(nm/s)で除した値(金属含有膜のエッチングレート/SiO膜のエッチングレート)をSiO相対エッチングレート(単位なし)として、表4に記載した。
更に、対照例として、モノシランとアンモニアガスを真空チャンバーに導入、混合し、プラズマCVD法を用いて、加熱したシリコン基板上に厚み500nmのシリコン窒化物膜(即ち、SiN膜)を成膜した。そして、実施例及び比較例と同じ条件でCFガス又はCl/Arガスを用いてプラズマ処理を行った。
実施例5、実施例11~14により作製された金属含有膜のエッチングレート(nm/s)を、対照例であるSiN膜のエッチングレート(nm/s)で除した値(金属含有膜のエッチングレート/SiN膜のエッチングレート)をSiN相対エッチングレート(単位なし)として、表4に記載した。
【0196】
【表4】
【0197】
また、実施例4~実施例17において形成した金属含有膜は、400℃、1atmの雰囲気下にて固体であった。
更に、実施例5及び実施例8において使用した金属含有膜形成用組成物B1、実施例6及び実施例9において使用した金属含有膜形成用組成物B2、並びに、実施例7において使用した金属含有膜形成用組成物B3は、硬化開始温度が200℃以下であった。
実施例10~実施例17において使用した金属含有膜形成用組成物B4~B11は、いずれも、硬化開始温度が200℃以下であった。
上記固体であること、及び、硬化開始温度は、上述の方法により測定した。
【0198】
表4中、SiO相対エッチングレートが負の値である例は、プラズマ処理において逆に物質が付着して厚さが増したことを意味する。即ち、エッチングされなかったことを意味する。
表4に記載の結果から、結果として、スズ元素の含有量が1atm%以上である実施例4~実施例17においては、CFガスのSiO相対エッチングレートは1以下だが、Cl/ArガスのSiO相対エッチングレートは1を超えており、スイッチング特性を有しているといえる。
また、実施例5、実施例11~実施例14においては、CFガスのSiN相対エッチングレートは1以下だが、Cl/ArガスのSiN相対エッチングレートは1を超えており、スイッチング特性を有しているといえる。
比較例5~比較例7(Sn含量<1atm%)は、Cl/Arガス及びCFガスのいずれを用いた場合であっても、SiO相対エッチングレートが1を超えており、スイッチング特性を有していないといえる。
また、比較例8~比較例10は、Cl/Arガス及びCFガスのいずれを用いた場合であっても、SiO相対エッチングレートが1以下であり、スイッチング特性を有していないといえる。
【0199】
(トレンチにおける充填性評価(埋め込み性評価))
基板として、シリコン基板に変えて、100nm幅及び200nm深さのトレンチパターンを設けた酸化ケイ素基板を用いたこと以外は、実施例1~実施例3、実施例7、実施例11~実施例14、又は比較例1と同様にして、金属含有膜を作製した。
そして、断面SEMでトレンチに金属含有膜が充填されているか観察した。充填された面積がトレンチ内面積の50%以上である場合をA(充填性が良好)、50%未満である場合をB(充填性が不良)とした。
評価結果は表5に記載した。
【0200】
【表5】
【0201】
表5に示すように、実施例1~実施例3、実施例7、及び実施例11~実施例14のいずれの場合も、トレンチへの充填性(埋め込み性)は良好であった。
【0202】
2017年11月17日に出願された日本出願2017-221919、及び、2018年3月27日に出願された日本出願2018-60575の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。