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特許7070950透過型サイン演出システムおよび透過型サイン演出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】透過型サイン演出システムおよび透過型サイン演出方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/00 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G09F13/00 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021065666
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2021-09-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592193683
【氏名又は名称】株式会社ダイカン
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(74)【代理人】
【識別番号】100217227
【弁理士】
【氏名又は名称】野呂 亮仁
(72)【発明者】
【氏名】仁義 健
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 明男
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 和也
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-020916(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104055(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0347724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/00-13/46
G09F 19/00-27/00
G03B 21/00-21/10
G03B 21/12-21/30
G03B 21/56-21/64
G03B 33/00-33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過して向こう側を視認できる透過板と、
映像または画像の光を投影する投影機とを備えた透過型サイン演出システムであって、
前記透過板は、一部に前記光が投影される意匠部を備え、
前記投影機は、前記意匠部の平面に対する垂直線から適宜の角度を有する方向から前記意匠部へ投影するよう配置され、
前記意匠部は、
前記透過板における前記投影機による前記光の投影可能領域内の全部ではない一部または複数部に形成された適宜の意匠形状で、
前記投影機から投影された前記光を前記投影機の向こう側から視認できる程度に拡散透過させ、かつ、前記光が直接透過してその先の床面、地面、壁面、または天井面に前記映像または画像が映ることがない光拡散部である
透過型サイン演出システム。
【請求項2】
前記投影機は、
前記意匠部の裏面上方向から下方に向かってまたは裏面下方向から上方に向かって、前記意匠部に映像または画像を投射するよう配置されている
請求項1記載の透過型サイン演出システム。
【請求項3】
前記投影機は、単焦点レンズを備えたプロジェクターである
請求項1または2記載の透過型サイン演出システム。
【請求項4】
前記光拡散部は、グロス値が230である
請求項1,2,または3記載の透過型サイン演出システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の透過型サイン演出システムを用いるサイン演出方法であって、
光を透過して向こう側を視認できる透過板と、
映像または画像の光を投影する投影機とを用い、
前記透過板は、一部に前記光が投影される意匠部を備え、
前記投影機を、前記意匠部の平面に対する垂直線から適宜の角度を有する方向から前記意匠部へ投影するよう配置し、
前記意匠部は、
前記透過板における前記投影機による前記光の投影可能領域内の全部ではない一部または複数部に形成された適宜の意匠形状で、
前記投影機から投影された前記光を前記投影機の向こう側から視認できる程度に拡散透過させ、かつ、前記光が直接透過してその先の床面、地面、壁面、または天井面に前記映像または画像が映ることがない光拡散部である
透過型サイン演出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、映像または画像の投影により文字または図形を表示する透過型サイン演出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店頭用の広告サインとして、例えば光の点滅パターンや映像を流すことによって通行人の注意を惹くことが行われてきた。このような動的に視覚に訴える広告方法としては、例えば、床面やスクリーンに映像を投影する手法が知られている、しかし、このような手法を店頭から通行人に視認してもらう広告として使用する場合、投影機の設置場所を確保することが困難という問題があった。
【0003】
このような広告方法の背景技術の一例が特許文献1に開示される。背景技術の投影装置では、屋内に設けたプロジェクター2から、映像ガイド管4を通して建物Bの外面や外面に設置された看板15に広告映像を投影する構成となっている。
【0004】
しかし、特許文献1のようなガイド管を使用する方法は、ガイド管を屋外へ引き出すために壁面を加工する必要があり、ガラス製やアクリル製のウィンドウにおいては外見が大きく損なわれ、設置や取り外しに関する施工が困難かつ大掛かりになるという問題があった。また、いわゆるウインドウディスプレイに適用すると、透過面よりも手前側にガイド管等の部材が位置するようになり、意匠性が大きく損なわれるという問題があった。さらに、看板や広告等に適用すると、看板等よりも手前側にガイド管等の部材が位置するようになり、看板(広告)の一部が隠れるので、広告の視認性が低下し、広告としての価値が損なわれるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-136196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述の問題に鑑みて、外観に優れる透過型サイン演出システムおよび透過型サイン演出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、光を透過して向こう側を視認できる透過板と、映像または画像の光を投影する投影機とを備えた透過型サイン演出システムであって、前記透過板は、一部に前記光が投影される意匠部を備え、前記投影機は、前記意匠部の平面に対する垂直線から適宜の角度を有する方向から前記意匠部へ投影するよう配置され、前記意匠部は、前記透過板における前記投影機による前記光の投影可能領域内の全部ではない一部または複数部に形成された適宜の意匠形状で、前記投影機から投影された前記光を前記投影機の向こう側から視認できる程度に拡散透過させ、かつ、前記光が直接透過してその先の床面、地面、壁面、または天井面に前記映像または画像が映ることがない光拡散部である透過型サイン演出システムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明により、外観に優れる透過型サイン演出システムおよび透過型サイン演出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】透過型サイン演出システムの斜視図。
図2】透過型サイン演出システムの側面図。
図3】透過型サイン演出板における領域の説明図。
図4】透過型サイン演出板への投射光線の進路説明図。
図5】透過型サイン演出システムの一実施例の正面斜視写真。
図6図5における投射線の延長線上に位置する床面の写真。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
【0011】
図1は、透過型サイン演出システム1の斜視図であり、図2は透過型サイン演出システム1の側面図、図3は透過型サイン演出板2における領域の説明図である。
【0012】
図1に示すように、透過型サイン演出システム1は、透過型サイン演出板2と、映像または画像を透過型サイン演出板2に投影(投射)する投影機3とで構成される。本発明の透過型サイン演出システム1は、例えば、透過型サイン演出板2が店舗等のウィンドウであり、投影機3は店舗の屋内(店舗内)の天井に設置されている形態である。
【0013】
透過型サイン演出板2は、透明または半透明の透過部21と、透過部21よりも可視光線透過率が低い意匠部22とを有する。透過部21は、透明ガラス板、あるいは透明アクリル板など、透明の板状部材(透過板)により形成されることができ、本実施例では透明ガラス板により形成されている。意匠部22は、光を拡散透過する拡散透過シート、あるいは光を拡散透過させるように透過部21の表面にブラスト加工などの適宜の表面加工を施して表面に凹凸をつけた拡散透過加工部など、光を拡散透過する適宜の部位とすることができ、本実施例では拡散透過シートにより形成されている。
【0014】
本実施例では、意匠部22として「DA」の意匠を施している。本実施例における透過型サイン演出板2は、所定の厚みを有しており、図2に示すように、投影機3が配置される側に位置する平滑な一方の面(裏面)24と、一方の面24に対向する平滑な他方の面(表面)23とを有する板形状の透明板である。また、透明板の裏面24には、乳白色のガラスフィルムが「DA」の形状に貼り付けられて意匠部22を形成されている。すなわち、本実施例における透過部21の裏面24は、透明板上において形成された透明な平滑面である。透過型サイン演出板2は、平板状であり、裏面24だけでなく、表面23も平滑面であり、表面23と裏面24とは互いに平行な面(平行面)であることが好ましい。
【0015】
透過部21は、透過型サイン演出板2を挟んで表面23側から見る観者に対して裏面24側の背景を視認させ、また、裏面24側から見る観者に対して表面23側の背景を視認させる。透過部21は、透過型サイン演出板2の一部である。また、透過部21(透過部21の外郭)は、正面から見た場合(背面から見た場合)に、意匠部22以上の面積を占めることが好ましい。本実施例では、意匠部22を除く透過型サイン演出板2のほぼ全体が透過部21である。
【0016】
意匠部22は、透過型サイン演出板2において、裏面24上、表面23上、および裏面24と表面23の間の内一以上に設けられ、半透明で、かつ透過部21より低い光透過率を有する。なお、意匠部22は、裏面24上または表面23上に設ける場合は、表面加工あるいは拡散透過シートの貼り付けで良いが、裏面24と表面23の間に設ける場合は、透明ガラス等の透過型サイン演出板2の内側にレーザー照射等で光が拡散透過する部位(白く見える部位)を設けると良い。
【0017】
意匠部22は、透過型サイン演出板2の裏面24に、投影機3から投射された映像または画像を含む光を、意匠部22内で分散させて、表面23側に透過し、表面23側から視認させる。すなわち、意匠部22は、投射された光を内部で拡散させる光拡散部として機能する。意匠部22は、投影機3が配置され、入射面にあたる裏面24に着脱可能に配置されることが好ましい。着脱可能に配置されるとは、意匠部22のみを透過型サイン演出板2から取り外し可能に取り付けられる構成でもよいし、意匠部22を含む透過部21ごと取り外し可能とする構成であってもよい。意匠部22は、平滑面上にシール等の粘着物質によって、投影機3が配置される側にあたる裏面24上に貼り付けられて形成されることが好ましい。また、意匠部22の形状は、文字や模様といった意匠性を有することが好ましい。本実施例の意匠部22は、透過型サイン演出板2を構成する透明板の裏面24に、乳白色のガラスフィルムを「DA」の形状に貼り付けることによって形成されている。
【0018】
図3に示すように、意匠部22は、投影可能領域220内に配置され、光拡散透過領域221として機能する拡散透過シート等で構成される部位であるが、その内側に、図に仮想線で示した投影領域222を有する。
【0019】
投影可能領域220は、投影機3によって投射される映像または画像を、投影可能な範囲である。投影可能領域220は、透過部21上に設定され、少なくとも透過部21の一部と意匠部22の一部を含む。すなわち、意匠部22は、投影可能領域220内の全部ではない一部または複数部に形成される。投影可能領域220は、意匠部22を内包することが好ましい。投影可能領域220は、例えばショーウィンドウにおいて店舗内側に配置された商品と被らない範囲に設定される。
【0020】
投影領域222とは、投影機3から投射された映像または画像が投影される範囲である。本実施例において、投影領域222は、その外郭が意匠部22(光拡散透過領域221)の外郭内に収まる(内包する)ように構成される。すなわち、本実施例では、投影領域222が意匠部22(光拡散透過領域221)よりも一回り小さく構成されており、意匠部22(光拡散透過領域221)が投影領域222よりも一回り大きく構成されている。投影領域222の内郭(「DA」の内部の空白を形成する線)については、特に限定されないが、本実施例のように光拡散透過領域221の内郭内に収まる(内包する)ように構成されることが好ましい。すなわち、投影領域222は、光拡散透過領域221の領域内に設けられる。言い換えると、投影領域222は、光拡散透過領域221に重なるように設けられる。なお、ここで言う外殻内(内郭内)に収まるとは、重なっている状態(投影領域222の外郭または内郭の一部または全体が、光拡散透過領域221の外郭または内郭の一部または全体と重なる状態)も含まれる。また、投影領域222は、光拡散透過領域221と異なる形状を有していてもよい。本実施例における投影領域222は、意匠部22の一部である。また、投影領域222は、意匠部22よりも一回り大きい範囲であっても良い。ただし、投影領域222は、いずれの場合においても投影可能領域220内に収まるように設定される。
【0021】
また、意匠部22(光拡散透過領域221)の光透過性は、透過部21より透過率が低く、かつ透過型サイン演出板2の裏面24に投影機3から投影された映像または画像を、表面23に拡散透過して、表面23側から視認できる程度である。さらに、意匠部22(光拡散透過領域221)の光透過性は、透過型サイン演出板2の裏面24に投影機3から投影された映像または画像を、表面23に透過して、表面23側から視認でき、かつ、透過した映像または画像が投射先の延長線上にあたる床面、壁面、天井等に投影されない程度であることが好ましい。このような光透過性の評価としては、例えば、全光束透過率、可視光線透過率、グロス値、およびLogヘイズ値を使用することができる。なお、意匠部22(光拡散透過領域221)の厚みは、50~150μmとすることが好ましい。
【0022】
全光束透過率は、入射したすべての光について、どの程度入射方向に透過するかを示す割合である。意匠部22(光拡散透過領域221)の全光束透過率は、60~98%とすることが好ましく、70~95%とすることがより好ましい。
【0023】
可視光線透過率は、入射した光の内、紫外線や赤外線等を除く可視光がどの程度入射方向に透過するかを示す割合である。意匠部22(光拡散透過領域221)の可視光線透過率は、40~95%とすることが好ましく、50~90%とすることがより好ましい。
【0024】
グロス値は、対象の表面の光沢度がどの程度かを示す値であり、JIS Z 8741に規定されている鏡面光沢度(グロス値)に対応する。意匠部22(光拡散透過領域221)のグロス値は、2~30とすることが好ましく、3~15とすることがより好ましい。グロス値の測定方法としては、例えば、測定機器としてハンディ光沢計(HORIBA IG-320等)を使用して測定することができる。
【0025】
Logヘイズ値は、対象の曇り度を評価するヘイズ値を用いて表される(Logヘイズ=1285×lоg[(ヘイズ値/20)+1])。意匠部22(光拡散透過領域221)のLogヘイズ値は、120~350とすることができ、120~300とすることが好ましく、120~200とすることがより好ましい。これらのLogヘイズ値の単位はHULogである。ヘイズ値およびLogヘイズ値の測定方法としては、例えば、測定機器としてトリプルアングル光沢計(Elcometer408等)を使用して測定することができる。
【0026】
また、これらの評価値の内、特にLogヘイズ値を好ましいとされる範囲とし、かつ可視光線透過率を好ましいとされる範囲とすることがより好ましい。
【0027】
投影機3は、例えば天井に設置されるプロジェクターであって、意匠部22の投影領域222に映像または画像を投射する。投影機3は、例えば制御部、記憶部、および通信部を備えるコンピュータ(図示せず)に有線または無線で接続され、当該コンピュータによって投射の実行および投射する映像または画像の内容を制御されていてもよい。この場合、コンピュータの制御部は、記憶部に記憶されている映像または画像を意匠部22の投影領域222へ投影する、あるいは通信部により外部から受信した映像または画像を意匠部22の投影領域222へ投影する。投影機3は、意匠部22の意匠形状に一致した形状の映像または画像を投影する同一投影、意匠部22の意匠形状よりも一回り小さい形状の映像または画像を投影する縮小投影、意匠部22の意匠形状よりも一回り大きい形状の映像または画像を投影する拡大投影のうち、少なくとも1つの投影を行う。
【0028】
投射される光の軌跡の一例を、投射線31として図1および図2に示す。投影機3の位置は、意匠部22の裏面24上方向から下方に向かってまたは裏面24下方向から上方に向かって、意匠部22に映像または画像を投射する配置であることが好ましい。すなわち、投射線31において、意匠部22との交点から延長線上に地面、床面、また天井(天面)が位置するように配置されることが好ましい。投影機3は、正面視または背面視において、少なくとも意匠部22と重ならないように(意匠部22から離れた位置、すなわち意匠部22の外側に)配置される。言い換えると、投影機3は、意匠部22の平面に対する垂直線から適宜の角度を有する方向から意匠部22へ投影するよう配置される。適宜の角度は、80度以下の範囲で、10度以上とすることができ、20度以上とすることが好ましく、45度以上とすることがより好ましい。また、投影機3は、正面視または背面視において、透過型サイン演出板2に重ならないように(透過型サイン演出板2から離れた位置、すなわち透過型サイン演出板2の外側に)配置されることが好ましい。また、投影機3は、単焦点レンズを備えたプロジェクターであることが好ましい。これにより、投影機3を天井または床面(もしくは地面)に設置しても投影機3から意匠部22までの距離を短くすることができ、例えば店舗でマネキン等が飾られるディスプレイ空間内の短い距離でも十分に適切な映像または画像を投影することができる。
【0029】
図4は、透過型サイン演出板2への投射光線の進路説明図である。
投影機3から投射された映像または画像を表示させる投射光線32は、意匠部22の投影領域222に入射する。このとき、入射した投射光線32は、意匠部22の全光束透過率に応じて意匠部22内をそのまま透過する透過光線321と、意匠部22のLogヘイズ値に応じて意匠部22内で分散する分散光322と、意匠部22のグロス値に応じて意匠部22に入射したときに反射する反射光323とに分解される。ただし、全光束透過率は、目に見えない光線についても評価するため、実際に視認した際に影響するのは可視光線透過率にあたる。
【0030】
すなわち、透過光線321の光量は、投射光線32の光量と比較して少なくなり、意匠部22の全光束透過率、グロス値、およびLogヘイズ値によって制御(調整)され、変化する。また、実際視認した際の透過光線321の光量は、意匠部22の可視光線透過率、グロス値、およびLogヘイズ値によって制御(調整)され、変化する。
【0031】
続いて、投影機3から投射された映像および画像の挙動を説明する。投影機3から投射された映像または画像は、意匠部22の投影領域222に投影される。このとき、意匠部22内で分散する分散光322によって、意匠部22が映像または画像に応じて発光する。したがって、投影機3が配置された裏面24側でない表面23側から、意匠部22を透過した映像または画像を視認することができる。一方で、投射した光量に対して透過した光量が少ないため、投射線31の延長線上の面には映像または画像が投影されないか、映像または画像が認識できないほどに光度(明度)が低い状態で投影される。
【0032】
図5は、透過型サイン演出システム1の一実施例の写真であり、図6は、図5の実施例における投影先の床面の一部の写真である。
図5に示すように、本実施例の透過型サイン演出板2は、透過部21と、意匠部22と、透過部21の一部および意匠部22の全体を内包する投影可能領域220を有する。また、意匠部22として「WELCOME TO DAIKAN」と表示された光拡散透過領域221を有する。本実施例において、意匠部22は、透過型サイン演出板2の裏面24に貼り付けられたガラスフィルムである。また、投影機3は、投影領域222として、少なくとも意匠部22である「WELCOME TO DAIKAN」の意匠形状よりも一回り大きく映像または画像を投影する。
【0033】
それによって、図6に示すように、床面225には、意匠部22の「WELCOME TO DAIKAN」の縁に沿って投影された意匠縁光223と、意匠縁光223によって縁どられた「WELCOME TO DAIKAN」の意匠を有する何も投影されない意匠影224が投影される。このような構成とすれば、縁が光っている意匠部22を床面225に投影するような演出をすることができる。またこのとき、意匠部22は、「WELCOME TO DAIKAN」の文字に投影機3から投射された映像または画像が投影され、光って見える。
【0034】
【表1】
【0035】
表1は、実施例1~4および比較例1~4の各素材をそれぞれ同じ形状のシートとし、意匠部22として透過部21の裏面24に貼り付けて、同じ画像を同じ投影機3から投影した場合の透過性を評価した結果である。透過性の評価は、「表面23側から見えるように画像を透過し、かつ投射線31の延長線上の面には画像が投影されていない場合」を「○」、「表面23側から見えるように画像を透過し、かつ投射線31の延長線上の面に画像がほとんど投影されていない(光っているが目視で画像がはっきりと認識できない)場合」を「△」、「表面23側から画像が見えない場合」または「投射線31の延長線上の面に画像がはっきり投影されている場合」を「×」とした。また、各実施例および比較例について、厚み、Logヘイズ値、鏡面反射ピーク値、グロス値、遮蔽係数、可視光線透過率、および全光束透過率を測定した。Logヘイズ値および鏡面反射ピーク値の測定には、トリプルアングル光沢計(Elcometer408)を使用した。また、グロス値の測定には、ハンディ光沢計(HORIBA IG-320)を使用した。
【0036】
鏡面反射ピーク値は、鏡面反射角度に非常に近い角度で測定された光沢のピーク値である。鏡面反射ピーク値は、測定対象の表面の凹凸によって変動し、グロス値と等しい場合に、表面に細かい凹凸すらない平滑な状態を示す。また、測定対象の表面のきめが粗くなるほど値が低くなる。すなわち、鏡面反射ピーク値の値が低いほど、反射光323の光量が少なくなる。
【0037】
遮蔽係数は、太陽から投射される日射光線をどの程度遮るかについて、厚さ3ミリの透明フロートガラスの日射熱取得量を1として示す係数である。遮蔽係数の数値が小さいほど、太陽からの日射光線を遮蔽することを意味する。
【0038】
実施例1では、意匠部22において表面23側からはっきりと投影された画像を認識できた。また、投射線31の延長線上の面には画像が投影されず、面が透過した光を受けて発光することもなかった。
【0039】
実施例2では、意匠部22において表面23側からはっきりと投影された画像を認識できた。また、実施例1と比較すると投射線31の延長線上の面が微小に発光していたが、目視で気になるほどの発光ではなく、画像は投影されなかった。
【0040】
実施例3では、意匠部22において表面23側からはっきりと投影された画像を認識できた。また、実施例1と比較すると投射線31の延長線上の面が微小に発光していたが、目視で気になるほどの発光ではなく、画像は投影されなかった。
【0041】
実施例4では、意匠部22において表面23側からはっきりと投影された画像を認識できた。また、実施例1~3と比較すると投射線31の延長線上の面が発光していたが、画像がはっきりと確認できるほどの発光ではなかった。
【0042】
比較例1では、意匠部22において表面23側からはっきりと投影された画像を認識できた。比較例1は、Logヘイズ値が好ましい範囲内でない。比較例1では、投射線31の延長線上の面に透過された画像が目視で確認できる程度に投影された。
【0043】
比較例2では、意匠部22において表面23側から投影された画像を認識できなかった。すなわち、比較例2では、意匠部22に裏面24側から投射された映像または画像を、表面23側から認識できなかった。
【0044】
比較例3では、透過型のスクリーンフィルムを意匠部22として使用した。比較例3では、可視光線透過率、全光束透過率、およびグロス値が好ましい範囲内でない。比較例3では、投射線31の延長線上の面にはっきりと透過された画像が投影された。
【0045】
比較例4では、比較例3と異なる透過型のスクリーンフィルムを意匠部22として使用した。比較例4では、Logヘイズ値が好ましい範囲内でない。比較例4では、比較例3と同様に投射線31の延長線上の面にはっきりと透過された画像が投影された。
【0046】
以上の構成により、外観に優れる透過型サイン演出システムを提供することができる。
透過型サイン演出板2は、投影機3から一部に映像または画像を含む光が投影される意匠部22を備え、意匠部22は、投影機3から投影された映像または画像を含む光を投影機3の向こう側(表面23側)から視認できる程度に拡散透過させ、かつ、映像または画像を含む光が直接透過してその先の床面、地面、または天井面に映像または画像が映ることがない光拡散部である。この構成により、透過型サイン演出板2を店舗のウィンドウ等として使用した場合に、投影された映像または画像がはっきりと視認され、外観に優れたサイン演出とすることができる。すなわち、投影機3は店舗内に設置し、ウィンドウである透過型サイン演出板2へ向けて映像または画像を投影すると、透過型サイン演出板2に設けられた意匠部22にて前記映像または画像の光が拡散透過して店舗外の観者に視認させることができる。このとき、意匠部22に投影された光は拡散透過することによって、その先の床面または地面にまでは投影されない。したがって、床面や地面等に余計な投影がされず、意匠部22だけに映像または画像を投影して広告等の演出をすることができる。
【0047】
また、観者は、透過部21を通して店舗内部を確認することができる。このため、店舗内に配置した商品と、投影した映像または画像とを組み合わせて、より効果的な演出を行うことができる。さらに、投影機3の設置場所が限定されることがなく、投影機3を天井または床面に設置して、透過型サイン演出板2の斜め上方または斜め下方から投影することができる。すなわち、店外からウィンドウを見た際に、投影機3を視認させることなく、デザイン性のある映像または画像を投影した透過型サイン演出板2を視認させることができる。さらに、投影機3を店内に設置して店外から透過型サイン演出板2の意匠部22に投影された演出を視認することができるため、屋外に防水処理を施して投影機3を設置するような特別な施工を行うことなく設置することができる。
【0048】
また、前記光拡散透過領域221の外郭は、映像または画像が投影される投影領域222の外郭を内包(内部にあるまたは重なる状態)する。この構成により、投影領域222(意匠部22)に投影されている光がすべて光拡散透過領域221で拡散透過し、投影機3から透過部21を直接透過する光が床面や地面や天井面に映るといったことを防止でき、良好な外観を維持し、美麗な演出を行うことができる。
【0049】
また、意匠部22は、拡散透過シートであり、投影機3が配置される側の面である裏面24に着脱可能に配置される。この構成により、意匠部22の形状を簡単に変更でき、その変更後に合わせた形状の映像または画像による演出に切り替えることが簡単にできる。すなわち、意匠部22(光拡散透過領域221)の形と、投影する映像または画像の演出内容および投影範囲を変更することで、例えば季節やイベントに合わせて演出を変更するなど、様々な演出を行うことができる。
【0050】
また、透過部21は、平滑面で構成され、意匠部22は、透過部21の平滑面上にシール等の粘着物質によって、投影機3が配置される側、すなわち入射面にあたる裏面24上に貼り付けられて形成される。この構成により、意匠部22の取り付けおよび取り外しが簡単に行うことができる。また、映像または画像を歪むことなく投影できる。さらに、透過型サイン演出板2を高度の高い場所に設置する場合であっても、管理やメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0051】
また、意匠部22の形状は、文字や模様といった意匠性を有する。この構成により、映像または画像が投影されていない場合であっても、外観を良好に維持することができる。
【0052】
また、意匠部22は、透過部21より透過率が低く、かつ透過型サイン演出板2の裏面24に投影機3から投影された映像または画像を、表面23に拡散透過して、表面23側から視認させる。この構成により、通行人等の鑑賞者は、表面23側から演出を楽しむことができる。その上、意匠部22を透過した光は拡散していることによって、意匠部22を透過して映像や画像が床面や地面や天井面に映るといったことを防止できる。したがって、意匠部22での演出が床面や地面や天井面にも同じように映ってしまうことを防止でき、意匠部22の演出効果および存在感を高めることができる。
【0053】
また、意匠部22の全光束透過率は、60~98%である。この構成により、意匠部22(投影領域222)を透過する光量(意匠部22内で分散透過する光量)を適する量とすることができ、投影機3により投影された映像を反対側から明瞭に視認できる。さらに、全光束透過率を70~95%とすれば、透過する光量(意匠部22内で分散透過する光量)をより最適な量とすることができ、投影機3により投影された映像を反対側からより明瞭に視認できる。
【0054】
また、意匠部22の可視光線透過率は、40~95%である。この構成により、意匠部22(投影領域222)を透過する可視光の光量を適する量とすることができ、投影機3により投影された映像を反対側から明瞭に視認できる。すなわち、通行人等の鑑賞者が注意を惹きつけられ、かつ眩しくないと認識できる程度の光量となり、映像または画像を利用した演出を楽しむことができる。さらに、可視光線透過率を50~90%とすれば、透過する可視光の光量(投影領域222内で分散透過する光量)をより最適な量とすることができる。
【0055】
また、意匠部22のグロス値は、2~30である。この構成により、意匠部22(投影領域222)で反射もしくは分散される光量を適する量とすることができる。すなわち、透過される光量および意匠部22内で分散される光量を適する量とすることができ、よりはっきりと通行人等の鑑賞者に映像または画像を利用した演出を提供することができる。さらに、グロス値を3~15とすれば、反射もしくは分散される光量をより最適な量とすることができる。
【0056】
また、意匠部22のLogヘイズ値は、120~350である。この構成により、意匠部22(投影領域222)に入射した投射光を、程よく分散させることができる。すなわち、意匠部22を透過する透過光の光量を適量とでき、透過型サイン演出板2の外観を良好とすることができる。また、意匠部22内における投射光の分散を適度に行うことができ、通行人等の鑑賞者に、より美麗な演出を提供することができる。さらに、Logヘイズ値を120~300とすれば、意匠部22を透過する透過光の光量をより適量とすることができ、120~200とすれば、意匠部22を透過する透過光の光量を最適な量とすることができる。
【0057】
また、意匠部22は、Logヘイズ値が120~350であり、かつ可視光線透過率が40~95%である。この構成により、意匠部22(投影領域222)を透過する可視光の光量と、意匠部22内で分散される光のバランスを適量とすることができる。すなわち、通行人等の鑑賞者が注意を惹きつけられ、かつ眩しくないと認識できる程度の光量とすることができる。
【0058】
また、意匠部22の厚みは、1μm以上とすることができ、かつ、150μm以下とすることができる。この意匠部22の厚みとは、透明素材の表面にブラスト加工などの適宜の表面加工をして意匠部22とした場合であれば、加工がなされて光を拡散投光する部分の厚みを指し、適宜のシートを意匠部22とした場合であればシートの厚みを指す。意匠部22がシートの場合は、厚みを50μm~150μmとすることができる。この構成により、意匠部22を透過する光量を適する量とすることができる。さらに、投射光を分散させるための厚み方向の距離を十分に確保することができる。なお、例えば透明ガラスの表面に意匠部22と同じ形状の透明意匠体が接着され、その透明意匠体の表面に意匠部22が設けられている場合、透明ガラスと透明意匠体を合わせたものが透過部21となる。
【0059】
また、投影機3は、意匠部22の正面上方向または正面下方向から、意匠部22に向かって映像または画像を投射する配置である。すなわち、投射線31において、意匠部22との交点から延長線上に地面、床面、また天井(天面)が位置するように配置される。この構成により、通行人等の鑑賞者に対して、投影機3を視認させることなく映像または画像を利用した演出を提供することができる。
【0060】
また、投影機3は、意匠部22の意匠形状に一致した形状の映像または画像を投影する同一投影、意匠部22の意匠形状よりも一回り小さい形状の映像または画像を投影する縮小投影、意匠部22の意匠形状よりも一回り大きい掲揚の映像または画像を投影する拡大投影のうち、すくなくとも1つの投影を行う。この構成により、意匠部22に映像または画像を投影するとともに、投射線31の延長線上にあたる面に対して、光を投影するかを選択することができる。
【0061】
なお、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、本実施例において、意匠部22は裏面24側に設けられているが、表面23側またはこれらの面の厚み方向間に設けられていてもよい。意匠部22を裏面24と表面23の厚み方向間に配置する場合、例えば意匠部22を2枚の透過部21の間に挟むように作製できる。このような構成とすることで、意匠部22を汚れや傷等から守ることができる。
【0062】
また、例えば、意匠部22は、一部をくり抜かれた透過部21のくり抜かれた箇所にはめ込まれる形態であってもよい。このような形態であれば、意匠部22が透過部21から脱落しづらくなり、透過型サイン演出板2の寿命を延ばすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、ショーウィンドウで使用される透過型サイン演出板の産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…透過型サイン演出システム
2…透過型サイン演出板
21…透過部
22…意匠部
221…光拡散透過領域
222…投影領域
223…意匠縁光
224…意匠影
225…床面
23…表面
24…裏面
3…投影機
31…投射線
【要約】
【課題】ショーウィンドウや高度の高い場所に設置した場合であっても、外観に優れる透過型サイン演出板を提供する。
【解決手段】光を透過して向こう側を視認できる透過板と、映像または画像の光を投影する投影機3とを備えた透過型サイン演出システムであって、前記透過板は、一部に前記光が投影される意匠部22を備え、意匠部22は、前記透過板における投影機3による前記光の投影可能領域221内の全部ではない一部または複数部に形成された適宜の意匠形状で、投影機3から投影された前記光を投影機3の向こう側から視認できる程度に拡散透過させ、かつ、前記光が直接透過してその先の床面、地面、または天井面に前記映像または画像が映ることがない光拡散部である透過型サイン演出システム1とした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6