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特許7070961高温高圧環境下で用いるための電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造
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  • 特許-高温高圧環境下で用いるための電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】高温高圧環境下で用いるための電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
F16B35/00 Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021194657
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2021-12-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508221626
【氏名又は名称】株式会社 大井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】大井 嘉清
(72)【発明者】
【氏名】難波 圭吾
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-015099(JP,U)
【文献】登録実用新案第3155761(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0348817(US,A1)
【文献】米国特許第01592175(US,A)
【文献】特開2016-089982(JP,A)
【文献】特開2011-190822(JP,A)
【文献】特開2005-262742(JP,A)
【文献】日本雲林株式会社,PFA 260℃ PFA熱収縮チューブ 精密機器に最適,日本,2018年12月19日,https://premium.ipros.jp/g-apex/catalog/detail/325922/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00-43/02
F16L 23/00-25/14
H01B 17/56-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧環境下で用いるための電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造であって、
前記電気絶縁用頭付ボルトの頭部と反対側の端部に雄ねじ部が形成され、
前記雄ねじ部と前記頭部との間に電気絶縁部を有し、
前記電気絶縁部は、頭付ボルトの軸部に筒状のテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を収縮被覆して形成され、前記雄ねじ部よりも外径寸法が小さいことを特徴とする、電気絶縁用頭付ボルトと、
前記雄ねじ部に螺合するナットと、
前記ナットよりもフランジ側に配され、前記電気絶縁用頭付ボルトによって締結されるフランジと当接する絶縁ワッシャを備え、
配管端部のフランジ同士の締結時に、外径がボルト穴にかかるような大きさである絶縁ガスケットと、前記雄ねじ部よりも外径寸法が小さい前記電気絶縁部を有する前記電気絶縁用頭付ボルトを使用することにより、締結状態で前記電気絶縁用頭付ボルトの前記電気絶縁部と前記絶縁ガスケットとの干渉接触が起こらずにボルト取り付けをスムーズにおこなうことができ、前記絶縁ガスケットのセンタリングが容易におこなえる絶縁継手構造であって、
前記フランジ同士の締結時に、前記電気絶縁用頭付ボルトの頭部で位置決めされるため、前記電気絶縁用頭付ボルトにおける前記電気絶縁部の位置が、フランジ面間と自ずと合致することを特徴とする、電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造。
【請求項2】
管流体温度200℃迄の高温環境下において電気絶縁性を確保できる、請求項に記載の電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁部の外径寸法が雄ねじ部よりも小さいことから施工性、作業性、機能性に優れ、高温高圧環境下においてもフランジ締結や締め付けトルクの管理が容易な電気絶縁用頭付ボルト及びこの電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般用配管締結用ボルトには、従来から主としてスタッドタイプのものが使用されている。これに準じて、高温用配管ボルトにもスタッドタイプのものが使用されている。
【0003】
近年、大型ビルの空調設備等における配管締結用に積極的電気防食の為にスタッドタイプの高温用絶縁用ボルトが使用されている。空調設備における配管の場合、該締結用ボルトは、水平方向での使用だけでなく、垂直方向で使用されることが多い。
スタッドタイプの絶縁ボルトを使用する場合、特に高所やピット内(マンホール内)での垂直配管の作業において、絶縁部の調節、締め付けトルクの管理面で作業性が悪く、ナットの緩みによりガスケットの面圧の低下を生じ、高温高圧のガスや蒸気の漏れの原因となっており、配管が断熱材で保護されている場合は、発見が遅れ大きな被害を生じる虞があった。
【0004】
また、従来の絶縁用ボルトは、雄ねじの外径寸法と同等の外径を有する軸部(雄ねじ部とボルト頭部との間)に、筒状の絶縁素材を嵌め込む等の加工をして絶縁機能を得ていた。このため、軸部の寸法は雄ねじ部の外径と比較し大きくなり、施工時に様々な干渉が発生するという問題があった。
【0005】
特許文献1には、耐久性に優れた絶縁用ボルト及び被連結部材間の異種金属による腐食電流を絶縁し、又は導電性を有する配管の漏電を防止する絶縁用ボルト締結構造に関する発明が開示されている。
特許文献1の発明に係る絶縁用ボルト締結構造は、スタッドタイプの絶縁用ボルトについて、主に水平配管の締結に使用するものとなっている。
しかしながら、引用文献1の絶縁用ボルト締結構造では、地面と垂直方向の配管のフランジを締結する場合、絶縁用ボルトを垂直にして使用することから、上下ナットがボルトねじ部に対して片側が絶縁部まで入り、もう片方がねじ部端面付近で施工されると締付不良が発生する。電気絶縁部の位置がフランジ面間と同じ位置に施工しなければ絶縁不良を起こす。
高温高圧環境下においては、締付不足や絶縁不良による電蝕によって、流体の漏洩事故につながるため、施工性、作業性、及び機能性を兼ね備えた絶縁用ボルトの実現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-089982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高温用絶縁ボルトは、圧力のかかった蒸気配管で使用される。
配管のフランジ間に固定用シール材である絶縁ガスケットを装着し、ボルトを使用して配管同士の締結をおこなう。この時、圧力のかかった蒸気配管では相当の締め付けトルクが必要となる。
【0008】
高温用配管においては、配管同士を締結した後に蒸気が管内を流れることで管及びフランジには圧力がかかる上、蒸気に近い温度となる。管及びフランジが高温になると膨張や伸びが発生する。
管及びフランジは周期的なメンテナンスが必要であり、メンテナンス時に配管内の蒸気の流れが止まると、管及びフランジは冷却されて収縮する。メンテナンスが終了し蒸気が流れることで再び膨張する。このように、絶縁用ボルトは、膨張と収縮を繰り返す厳しい使用環境のために、両側にナットが付いているスタッドタイプのボルトでは、ねじのガタツキにより両側のナットに大きな緩みが発生する。
また、配管の締結時、スタッドタイプの絶縁用ボルトはボルト及びナットが供回りするため、締め付けトルクがかかりにくく、供回りしない絶縁用ボルトが必要であった。
【0009】
本発明の発明者らは、これらの問題を解決するため、絶縁用ボルトを用いて特に垂直方向の配管を締結する場合に、従来のスタッドタイプではなく頭付ボルトタイプを使用することで、大幅に作業性を改善できることを見出した。
さらに、本発明の電気絶縁用頭付ボルトは、電気絶縁部の外径寸法が雄ねじ部よりも小さくなっているため、従来の軸部が太い絶縁用ボルトを使用した場合に発生する、施工時の様々な干渉を回避でき、スムーズな施工を可能とし、且つ確実な電気絶縁性を得ることができる。
このことから、本発明は、優れた施工性、作業性、及び機能性を兼ね備えた、高温高圧環境下で用いる電気絶縁用頭付ボルト及びこの電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、高温高圧環境下で用いるための電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造であって、前記電気絶縁用頭付ボルトの頭部と反対側の端部に雄ねじ部が形成され、前記雄ねじ部と前記頭部との間に電気絶縁部を有し、前記電気絶縁部は、頭付ボルトの軸部に筒状のテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を収縮被覆して形成され、前記雄ねじ部よりも外径寸法が小さいことを特徴とする、電気絶縁用頭付ボルトと、前記雄ねじ部に螺合するナットと、前記ナットよりもフランジ側に配され、前記電気絶縁用頭付ボルトによって締結されるフランジと当接する絶縁ワッシャを備え、配管端部のフランジ同士の締結時に、外径がボルト穴にかかるような大きさである絶縁ガスケットと、前記雄ねじ部よりも外径寸法が小さい前記電気絶縁部を有する前記電気絶縁用頭付ボルトを使用することにより、締結状態で前記電気絶縁用頭付ボルトの前記電気絶縁部と前記絶縁ガスケットとの干渉接触が起こらずにボルト取り付けをスムーズにおこなうことができ、前記絶縁ガスケットのセンタリングが容易におこなえる絶縁継手構造であって、前記フランジ同士の締結時に、前記電気絶縁用頭付ボルトの頭部で位置決めされるため、前記電気絶縁用頭付ボルトにおける前記電気絶縁部の位置が、フランジ面間と自ずと合致することを特徴とする、電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造に関する。
【0011】
請求項に係る発明は、管流体温度200℃迄の高温環境下において電気絶縁性を確保できる、請求項に記載の電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、頭付ボルトタイプの絶縁用ボルトを使用することで、従来のスタッドタイプの絶縁用ボルトと比較して締付時にトルクがかけやすく、強い軸力を発生させることができる。このことから、安定したトルク管理が可能となり、絶縁ガスケットの面圧が確保されるため、適切にフランジ締結をおこなうことができる。
さらに、電気絶縁用頭付ボルトの電気絶縁部の外径寸法が雄ねじ部よりも小さいことから、フランジ締結時に外径がボルト穴にかかるような大きさである(RFタイプの)絶縁ガスケットとの干渉接触が起こらず、ボルト取り付けをスムーズにおこなうことができるという効果を奏する。
【0013】
気絶縁部は、筒状の合成樹脂を頭付ボルトの軸部に収縮被覆させて形成しているため、ボルトと合成樹脂が高度に密着し、破損や剥離が起こりにくい強固な絶縁部を形成することができるという効果を奏する。
【0014】
成樹脂は、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)であるため、高度な絶縁機能を発揮することができるという効果を奏する。
【0015】
管端部のフランジ同士が、外径がボルト穴にかかるような大きさである(RFタイプの)絶縁ガスケットを介して締結された絶縁継手構造であり、絶縁ガスケットの外径がフランジのボルト穴にかかるようになっているため、電気絶縁用頭付ボルトをボルト穴に通すことで絶縁ガスケットのセンタリングを容易におこなうことができる。
また、前記電気絶縁用頭付ボルトの電気絶縁部の位置が、前記フランジ同士の締結時にフランジ面間(フランジ同士を合わせた厚み寸法)と合致する位置に設けられたことを特徴とする、電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造であり、片側は頭部としてボルトと一体になっているため、ナットや絶縁部の位置ずれは無くなる。これにより締付が安定し、従来のスタッドタイプの絶縁用ボルトと比較し、確実かつ高度な絶縁性を得ることができる。
【0016】
請求項に係る発明によれば、管流体温度200℃迄の高温環境下において電気絶縁性を確保できる電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造であるため、高温高圧環境下においても高度な絶縁機能を維持することができ、安心して長期間使用できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態である絶縁用六角ボルトの胴部断面を示す図である。
図2】本発明の電気絶縁用頭付ボルトを取り付けて締結作業をおこなう、配管のフランジ部分を示す図である。
図3】本発明の一実施形態である絶縁用六角ボルトを用いて締結した配管におけるフランジの絶縁継手構造の断面を示す図である。
図4】従来のスタッドタイプの絶縁用ボルトを用いて締結した配管におけるフランジの絶縁継手構造の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の高温高圧環境下で用いる電気絶縁用頭付ボルトの好適な実施形態について図面を参照しながら詳述する。
【0019】
ここでは、電気絶縁用頭付ボルト(1)として六角ボルトを例示しているが、これに限定されず、例えば、ボタンキャップボルトや皿キャップボルト等を含む六角穴付ボルト、四角ボルト等も適用可能である。また電気絶縁用頭付ボルト(1)の材料は、例えば高温用合金鋼ボルト材のSNB7が好適に使用されるが、使用ニーズ、設計仕様によって、他鋼種(例えばSUS304やSUS316等)であっても構わない。
【0020】
図1は、本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)の一実施形態である六角ボルトの胴部断面を示す図である。
本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)は、一端に雄ねじ部(3)が形成され、雄ねじ部(3)とボルト頭部(2)との間に電気絶縁部(4)を有し、電気絶縁部(4)は、雄ねじ部(3)よりも外径寸法が小さいことを特徴としている。
具体的には、ボルトの雄ねじ部(3)の外径dがφ16mmのとき、電気絶縁部(4)を形成する前の軸部の外径dはφ14.6mmである。厚さ0.4mmのPFAチューブを収縮被覆した電気絶縁部(4)の外径dは15.4mmであり、電気絶縁部(4)を形成した軸部は、雄ねじ部(3)よりも外径が小さい。
これにより、従来の絶縁用ボルト軸部がフランジ(5)のボルト穴(7)径に対して、約1mmのクリアランスしか無いのに対し、本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)の電気絶縁部(4)の外径は3.6mm~4.1mm小さくなるよう設計されているため、フランジ締結時に外径がボルト穴にかかるような大きさである(RFタイプの)絶縁ガスケット(6)との干渉接触が起こらず、ボルト取り付けをスムーズにおこなうことができる。
また、頭付ボルトタイプの絶縁用ボルトを使用することで、従来のスタッドタイプの絶縁用ボルトと比較して締付時にトルクがかけやすく、強い軸力を発生させることができる。このことから、安定したトルク管理が可能となり、絶縁ガスケット(6)の面圧が確保されるため、適切なフランジ締結をおこなうことができる。
さらに、本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)は、電気絶縁部(4)を形成した後も軸部の外径が一般用ボルトの軸径より細いため、一般用の頭付ボルトと同様に使用でき、金属ワッシャ(9)、絶縁ワッシャ(10)の内径寸法を変更することなく使用することができる。
【0021】
本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)の電気絶縁部材料として使用するPFA、及び本発明の絶縁継手構造で使用する絶縁ワッシャ材料の機械的性質を測定した結果、いずれも定められた規格値を満たすものであった。
【0022】
図2は、本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)を取り付けて締結作業をおこなう、配管のフランジ(5)部分を示す図である。図中の斜線部分は、絶縁ガスケット(6)を表す。
配管のフランジ(5)間には、絶縁シール材として絶縁ガスケット(6)を使用するが、絶縁ガスケット(6)の外径がフランジ(5)のボルト穴(7)部径にかかるような大きさである(RFタイプの)ガスケットを使用することが好ましい。RFタイプの絶縁ガスケット(6)を使用するとき、絶縁ガスケット(6)のセンタリングをおこなえるよう絶縁ガスケット(6)の外径がフランジ(5)のボルト穴(7)にかかるようになっている。
絶縁ガスケット(6)の外径がフランジ(5)のボルト穴(7)にかかることで、有効ボルト穴(7)径が規格値よりも小さくなるため、従来のスタッドタイプの絶縁用ボルトのように、ねじ外径より大きいスリーブを装着すると、ボルトをフランジ(5)に取り付ける時、スリーブが絶縁ガスケット(6)に干渉し、ボルトが通らなくなる。
一方本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)は、一般用ボルトと同様に使用できるため、絶縁ガスケット(6)に干渉することなくスムーズに取り付けることができ、絶縁ガスケット(6)のセンタリングも容易におこなうことができる。
【0023】
本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)は、高温高圧環境下で使用されるため、フランジ(5)間に用いられる絶縁ガスケット(6)は、適切なものを選定する必要がある。使用ガスケットの推奨締付トルクで施工することで、絶縁締結機能を最大限に発揮する構造となる。
絶縁ガスケット(6)の成分例としては、充填剤入りPTFE材で、アルミナやシリカが配合されているものが挙げられる。また、中芯を使用する場合は、中芯材は応力緩和が少ないものを選択することが好ましい。
【0024】
絶縁用ボルトと絶縁ガスケット(6)は、求める機能及び作用効果を発揮させるため、的確な組み合わせで使用することが必要である。
包みガスケット(中芯有りのもの)を使用した場合、締め付けトルクの管理が難しくなる。特に、中芯材に金属ガスケットを使用すると、外皮(PTFE)との推奨締め付けトルクの差が大きく、要求される締め付けトルクの範囲が狭まり、特に施工管理が難しくなる。よって、施工性に優れた本発明の絶縁用ボルトが有用である。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態である絶縁用六角ボルトを用いて締結した配管におけるフランジ(5)の絶縁継手構造の断面を示す図である。
図4は、従来のスタッドタイプの絶縁用ボルトを用いて締結した配管におけるフランジ(5)の絶縁継手構造の断面を示す図である。
絶縁用ボルトを埋設管の出入り口で使用する場合、管が地中から垂直方向にフランジ(5)が取り付けられるため、絶縁用ボルトを垂直に入れて使用することになる。
図4で示したように、スタッドタイプの絶縁用ボルトで締結する場合、上下のナット(8)両方で締め付ける必要がある。この時、上下ナット(8)がボルトねじ部に対して片側が絶縁部まで入り、もう片方がねじ部端面付近で施工されると締付不良(トルク不足)が発生する。
このように、電気絶縁部(4)の位置がフランジ(5)面間と同じ位置に施工しなければ絶縁不良を起こす。高温高圧環境下になると、締め付け不足や絶縁不良による電蝕によって、流体の漏洩事故につながる。
【0026】
本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)は、電気絶縁部の位置が、フランジ(5)同士の締結時にフランジ面間(フランジ(5)同士を合わせた厚み寸法)と合致する位置に設けられたことを特徴としている。
図3で示したように、本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)でフランジ(5)を締結する場合、片側は頭部としてボルトと一体になっているため、ナット(8)や絶縁部の位置ずれは無くなる。これにより締付が安定し、確実かつ高度な絶縁性を得ることができることから、漏洩事故を未然に防ぐことができる。
【0027】
本発明の電気絶縁用頭付ボルト(1)は、株式会社大井製作所製の管フランジ用OHI絶縁ボルト(高温用O#1000H)を使用する。耐熱性は、配管内の使用流体温度を基準に200℃迄の高温条件下においても電気絶縁性を確保することができる。
【実施例
【0028】
以下、本発明の高温高圧条件下で用いるための電気絶縁用頭付ボルトの実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
<高温高圧環境下の電気絶縁用ボルト垂直方向取り付け作業における比較>
本発明の電気絶縁用頭付ボルトの一実施形態である六角ボルトと、従来のスタッドタイプの絶縁用ボルトとを比較し、フランジに垂直方向に取り付ける際の施工性、作業性、機能性についてそれぞれ優(〇)、良(△)、不可(×)の三段階により評価をおこなった。
【0030】
【表1】
【0031】
[施工性]
絶縁用ボルトによってフランジの締結をおこなう場合、従来のスタッドタイプでは両方の雄ねじ部に取り付けたナットにより、絶縁部分がフランジ穴中で適性位置に来るよう位置合わせをおこなった後にナットを締め付けねばならず、締付時には両側のナットを締め付ける必要があるため、施工には多くの手間と時間を要する。
一方で、本発明の電気絶縁用頭付ボルトは、雄ねじ部は片側のみに形成されており、頭部でボルトの位置決めができ、ナットを一方向から締め付けることで容易に位置調整及び取り付けをおこなうことが可能である。
【0032】
[作業性]
トルク管理において、スタッドタイプの絶縁用ボルトは、ナットが両側に付いているため、両方向より締め込む必要があり約2倍の手間が必要となる上、片側のみに雄ねじ部が付いた頭付ボルトと比較し、ねじの緩みも約2倍となる。さらに、スタッドタイプの絶縁用ボルトは、適切に締めないとボルトが共回りしてトルクがかかりにくいため、トルク管理及びメンテナンス性において、本発明の電気絶縁用頭付ボルトに劣る。
本発明の電気絶縁用頭付ボルトは、ナットを一方向から締め込むことでトルク管理が容易におこなえるため、従来のスタッドタイプの絶縁用ボルトと比較し、作業性が格段に向上した。
【0033】
[機能性]
フランジの締結時には、フランジ同士を合わせた厚みに絶縁用ボルトの電気絶縁部が適合するように取り付ける必要がある。スタッドタイプの絶縁用ボルトは両側にナットが付いており、ナットを締め付けた後に電気絶縁部が適切な位置になっているかが外部から確認できず、施工状況によっては電気絶縁性を得ることができない。
一方、本発明の電気絶縁用頭付ボルトは、電気絶縁部の長さがフランジ同士を合わせた厚みと同じか、もしくは大きい上に頭部で位置決めができるため、ナットを締め付けた後も絶縁部の位置はフランジ間に収まり、確実に絶縁性を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の高温高圧環境下で用いる電気絶縁用頭付ボルトは、締付時にトルクがかけやすいことから、適切にフランジ締結をおこなうことができる。
また、電気絶縁用頭付ボルトの電気絶縁部の外径寸法が雄ねじ部よりも小さいことから、フランジのボルト穴部と電気絶縁部の干渉接触が起こらず、ボルト取り付けをスムーズにおこなうことができる。
さらに、地面と垂直方向の配管に使用する場合、頭部を下側にして反対側の雄ねじ部のナットを締める絶縁継手構造において、従来のスタッドタイプの絶縁用ボルトのように電気絶縁部の長さを調節する必要がなく、高所等作業条件の悪い場所においても締結作業を容易におこなうことができる。
従って、例えば、大型ビルの空調機器の電気防蝕の配管工事では、地面と水平方向の配管には安価なスタッドタイプの絶縁用ボルトを、垂直方向の配管には本発明の電気絶縁用頭付ボルトを使用することにより、配管時のトータルコストを抑えながら、施工性、作業性、機能性に優れた電気絶縁用頭付ボルト及びこの電気絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
電気絶縁用頭付ボルト
2 ボルト頭部
3 雄ねじ部
4 電気絶縁部
5 フランジ
6 絶縁ガスケット
7 ボルト穴
8 ナット
9 金属ワッシャ
10 絶縁ワッシャ
【要約】
【課題】高温高圧環境下で用いるための絶縁用頭付ボルト及びこの絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造を提供する。
【解決手段】高温高圧環境下で用いるための電気絶縁用頭付ボルトであって、頭付ボルトの一端には雄ネジ部が形成され、雄ネジ部とボルト頭部との間に電気絶縁部を有し、電気絶縁部は、雄ネジ部よりも外径寸法が小さいことを特徴とする絶縁用頭付ボルト、及びこの絶縁用頭付ボルトと、絶縁用頭付ボルトの雄ねじ部に螺合するナットと、ナットよりも中央側に配され、絶縁用頭付ボルトによって締結される被連結部材と当接する絶縁ワッシャを備え、配管端部のフランジ同士がRFタイプの絶縁ガスケットを介して締結された絶縁継手構造であって、絶縁用頭付ボルトの電気絶縁部の位置が、フランジ同士の締結時にフランジ面間と合致する位置に設けられたことを特徴とする、絶縁用頭付ボルトを用いた絶縁継手構造。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4