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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】打抜き部受支装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/18 20060101AFI20220511BHJP
   B26F 1/44 20060101ALI20220511BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B26D7/18 F
B26F1/44 G
B26F1/40 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021196775
(22)【出願日】2021-12-03
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2021086792
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591038521
【氏名又は名称】大創株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】大塚 攘治
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-183641(JP,A)
【文献】特開平03-264295(JP,A)
【文献】特開平11-300696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/18
B26F 1/44
B26F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置であって、
前記打抜き部を受支する可動体と、
前記可動体を移動可能に支持する支持体と、
前記可動体を案内する案内手段と、
磁力によって吸着係合するように前記可動体、及び前記支持体にそれぞれ設けられる可動体側係合部、及び支持体側係合部と、
を備え、
前記打抜き部を介して前記可動体が前記上型によって押し下げられると、前記可動体側係合部と前記支持体側係合部との吸着係合が外れ、前記案内手段による案内により、前記可動体は下方に進むに従って前記支持体の内方側に移動し、
前記支持体側係合部は、前記支持体に固定される支持体側磁石であり、
前記可動体側係合部は、
前記可動体に固定される固定磁性体と、
前記支持体側磁石と前記固定磁性体との間に配され、前記固定磁性体に対し傾動可能に前記可動体に取着される傾動磁性体と、
を含み、
前記打抜き部を介して前記可動体が前記上型によって押し下げられると、前記支持体側磁石と前記傾動磁性体とが吸着係合しつつ前記固定磁性体に対し前記傾動磁性体が傾動し、その後、前記傾動磁性体と前記支持体側磁石との吸着係合が外れるように構成される打抜き部受支装置。
【請求項2】
シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置であって、
前記打抜き部を受支する可動体と、
前記可動体を移動可能に支持する支持体と、
前記可動体を案内する案内手段と、
磁力によって吸着係合するように前記可動体、及び前記支持体にそれぞれ設けられる可動体側係合部、及び支持体側係合部と、
を備え、
前記打抜き部を介して前記可動体が前記上型によって押し下げられると、前記可動体側係合部と前記支持体側係合部との吸着係合が外れ、前記案内手段による案内により、前記可動体は下方に進むに従って前記支持体の内方側に移動し、
前記支持体側係合部は、前記支持体に固定される支持体側磁石であり、
前記可動体側係合部は、
前記可動体に固定される可動体側磁石と、
前記支持体側磁石と前記可動体側磁石との間に配され、前記可動体側磁石に対し傾動可能に前記可動体に取着される傾動磁性体と、
を含み、
前記打抜き部を介して前記可動体が前記上型によって押し下げられると、前記支持体側磁石と前記傾動磁性体とが吸着係合しつつ前記可動体側磁石に対し前記傾動磁性体が傾動し、その後、前記傾動磁性体と前記支持体側磁石との吸着係合が外れるように構成される打抜き部受支装置。
【請求項3】
前記傾動磁性体の一端側が、前記可動体に設けられた係止爪部に引っ掛け状態で係合され、前記傾動磁性体の他端側が、前記可動体に設けられた切欠き部に上下動可能に係合されることにより、前記傾動磁性体は、前記係止爪部に引っ掛け状態で係合されている部分を支点として、上下方向に傾動可能に前記可動体に取り付けられる請求項1又は2に記載の打抜き部受支装置。
【請求項4】
前記可動体側係合部が前記支持体側係合部に近づく方向に前記可動体を付勢する付勢手段をさらに備える請求項1~3の何れか一項に記載の打抜き部受支装置。
【請求項5】
前記案内手段は、
下方に向かって前記支持体の内方側に延在するように前記支持体に設けられる細長開口部と、
前記細長開口部に係合するように前記可動体に設けられる軸部と、
前記可動体の前記軸部回りの回動を規制する回動規制ロッドと、
を含む請求項1~4の何れか一項に記載の打抜き部受支装置。
【請求項6】
前記付勢手段は、前記回動規制ロッドに外嵌される圧縮コイルばねである請求項5に記載の打抜き部受支装置。
【請求項7】
前記細長開口部は、前記支持体の外方に向かって斜め下向きに凸の円弧状に形成される請求項5又は6に記載の打抜き部受支装置。
【請求項8】
前記回動規制ロッドの下端側は、前記支持体に設けられた挿通孔に軸方向に移動可能に挿通されており、
前記挿通孔の内壁面は、前記可動体に向かう方向に末広がり状に形成される請求項5~7の何れか一項に記載の打抜き部受支装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平盤打抜き装置を用いて、例えば、箱体の展開形態であるシート状のブランクを製作する際には、以下の第1~第3工程が行われる。
【0003】
(第1工程)
所要寸法のシート材を平盤打抜き装置の給紙部から型打抜き部に供給し、箱体を展開した所定形状のブランクを得るための型打抜きを行う。このとき、型打抜きされたシート材は、ブランクと抜き屑となる部分(打抜き部)とが所要箇所に設けられた繋ぎ部によって繋ぎ止められることで横送り可能な状態にされる。
【0004】
(第2工程)
次いで、上記第1工程を経たシート材を、平盤打抜き装置の抜き屑除去部に送り、この抜き屑除去部において、突き押し片を具備する上型と、打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置を具備する下型との協働により、打抜き部を打ち抜いて抜き屑として除去する。ここで、下型に具備される打抜き部受支装置としては、受け片、支持フレーム、磁石、及び鋼板片を備えるものが用いられる(例えば、特許文献1を参照)。受け片は、打抜き部を受け止める受け面を有し、支持フレームに回動可能に支持されている。受け片、及び支持フレームには、それぞれ磁石、及び鋼板片が磁力によって吸着係合するように設けられている。
【0005】
第2工程においては、静止状態の上型に対し下型を上昇させる。これにより、静止状態にある突き押し片に対して打抜き部が受け片によって受支された状態で押し上げられる。このとき、突き押し片によって打抜き部が相対的に押し下げられて、ブランクと打抜き部とを繋ぎ止めている繋ぎ部が引き千切られる。これと同時に、打抜き部を介して受け片が突き押し片によって相対的に押し下げられることにより、磁石と鋼板片との吸着係合が外れ、受け面が下向きに傾斜するように受け片が回動する。打抜き部は、繋ぎ部が引き千切られた後、突き押し片によって相対的にさらに押し下げられて、回動した受け片の下向きに傾斜した受け面を滑り落ちて除去される。
【0006】
(第3工程)
そして、上記第2工程を経たシート材を、平盤打抜き装置の排出部に送り、この排出部において、シート材におけるブランクの回りの外郭余剰部からブランクを抜き落とす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-121485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の打抜き部受支装置では、特に、樹脂製のシート材から打ち抜かれた打抜き部が抜き屑となる場合、抜き屑と受け面との間の摩擦が大きくなるため、受け面が下向きに傾斜していても、抜き屑が受け片を滑り落ちないことがある。抜き屑が滑り落ちない場合、次の抜き屑除去動作が滞ることになり、製品(ブランク)の生産効率の悪化を招くことになる。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として確実に除去することができる打抜き部受支装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る打抜き部受支装置の特徴構成は、
シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置であって、
前記打抜き部を受支する可動体と、
前記可動体を移動可能に支持する支持体と、
前記可動体を案内する案内手段と、
磁力によって吸着係合するように前記可動体、及び前記支持体にそれぞれ設けられる可動体側係合部、及び支持体側係合部と、
を備え、
前記打抜き部を介して前記可動体が前記上型によって押し下げられると、前記可動体側係合部と前記支持体側係合部との吸着係合が外れ、前記案内手段による案内により、前記可動体は下方に進むに従って前記支持体の内方側に移動することにある。
【0011】
本構成の打抜き部受支装置によれば、打抜き部を介して可動体が上型によって押し下げられると、可動体側係合部と支持体側係合部との吸着係合が外れ、案内手段による案内により、可動体は下方に進むに従って支持体の内方側に移動する。シート材から打ち抜かれた打抜き部、すなわち抜き屑は、上型と可動体とによって挟まれた状態で可動体と共に押し下げられる。このとき、可動体は、案内手段による案内により、下方に進むに従って支持体の内方側に移動するため、その移動量の増大に応じて、抜き屑を受支している可動体の部分が小さくなる。そして、遂には、抜き屑を可動体によって受支できなくなり、抜き屑が可動体上から突き落される。従って、シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として確実に除去することができる。
【0012】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記支持体側係合部は、前記支持体に固定される支持体側磁石であり、
前記可動体側係合部は、
前記可動体に固定される固定磁性体と、
前記支持体側磁石と前記固定磁性体との間に配され、前記固定磁性体に対し傾動可能に前記可動体に取着される傾動磁性体と、
を含み、
前記打抜き部を介して前記可動体が前記上型によって押し下げられると、前記支持体側磁石と前記傾動磁性体とが吸着係合しつつ前記固定磁性体に対し前記傾動磁性体が傾動し、その後、前記傾動磁性体と前記支持体側磁石との吸着係合が外れるように構成されることが好ましい。
【0013】
本構成の打抜き部受支装置によれば、打抜き部を介して可動体が上型によって押し下げられると、支持体側磁石と傾動磁性体とが吸着係合しつつ固定磁性体に対し傾動磁性体が傾動し、その後、傾動磁性体と支持体側磁石との吸着係合が外れる。支持体側磁石と傾動磁性体とが吸着係合しつつ固定磁性体に対し傾動磁性体が傾動する間においては、傾動前の元の状態に戻そうとする磁力が傾動磁性体と支持体側磁石との間に作用する。この磁力は、傾動磁性体を介して可動体に作用し、可動体を押し上げる方向に付勢する。これにより、打抜き部が上型によって打ち抜かれる際、上型から打抜き部を介して可動体に作用する押圧力に対抗する反力が確保される。こうして、上型からの押圧力に対抗する反力が確保され、且つ打抜き部が上型と可動体とに挟まれた状態で、打抜き部が傾動磁性体の鉛直方向変位分の落差で可動体と共に押し下げられる。これにより、打抜き部に対し打抜き力を確実に作用させることができ、打抜き前において打抜き部がその周りのシート材部分に所要の繋ぎ部で繋ぎ止められている場合でも、当該繋ぎ部を確実に引き千切ることができる。その後、傾動磁性体と支持体側磁石との吸着係合が外れると、可動体が下方に進むに従って支持体の内方側に移動する動作が速やかに行われることになり、可動体上から抜き屑を速やかに突き落して除去することができる。
【0014】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記支持体側係合部は、前記支持体に固定される支持体側磁石であり、
前記可動体側係合部は、
前記可動体に固定される可動体側磁石と、
前記支持体側磁石と前記可動体側磁石との間に配され、前記可動体側磁石に対し傾動可能に前記可動体に取着される傾動磁性体と、
を含み、
前記打抜き部を介して前記可動体が前記上型によって押し下げられると、前記支持体側磁石と前記傾動磁性体とが吸着係合しつつ前記可動体側磁石に対し前記傾動磁性体が傾動し、その後、前記傾動磁性体と前記支持体側磁石との吸着係合が外れるように構成されることが好ましい。
【0015】
本構成の打抜き部受支装置によれば、打抜き部を介して可動体が上型によって押し下げられると、支持体側磁石と傾動磁性体とが吸着係合しつつ可動体側磁石に対し傾動磁性体が傾動し、その後、傾動磁性体と支持体側磁石との吸着係合が外れる。支持体側磁石と傾動磁性体とが吸着係合しつつ可動体側磁石に対し傾動磁性体が傾動する間においては、傾動前の元の状態に戻そうとする磁力が傾動磁性体と支持体側磁石との間、及び傾動磁性体と可動体側磁石との間の両方に作用する。これらの磁力は、傾動磁性体を介して可動体に作用し、可動体を押し上げる方向に付勢する。これにより、打抜き部が上型によって打ち抜かれる際、上型から打抜き部を介して可動体に作用する押圧力に対抗する反力が確保される。ここで、確保される反力は、可動体側係合部が可動体側磁石と傾動磁性体とを含む構成であるため、可動体側磁石の磁力が付加されることにより、可動体側係合部が固定磁性体と傾動磁性体と含む構成である場合よりも大きくなる。こうして、上型からの押圧力に対抗する反力が十分に確保され、且つ打抜き部が上型と可動体とに挟まれた状態で、打抜き部が傾動磁性体の鉛直方向変位分の落差で可動体と共に押し下げられる。これにより、打抜き部に対し打抜き力をより確実に作用させることができ、打抜き前において打抜き部がその周りのシート材部分に所要の繋ぎ部で繋ぎ止められている場合でも、当該繋ぎ部をより確実に引き千切ることができる。その後、傾動磁性体と支持体側磁石との吸着係合が外れると、可動体が下方に進むに従って支持体の内方側に移動する動作が速やかに行われることになり、可動体上から抜き屑を速やかに突き落して除去することができる。
【0016】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記傾動磁性体の一端側が、前記可動体に設けられた係止爪部に引っ掛け状態で係合され、前記傾動磁性体の他端側が、前記可動体に設けられた切欠き部に上下動可能に係合されることにより、前記傾動磁性体は、前記係止爪部に引っ掛け状態で係合されている部分を支点として、上下方向に傾動可能に前記可動体に取り付けられることが好ましい。
【0017】
本構成の打抜き部受支装置によれば、可動体に設けられた係止爪部に引っ掛け状態で係合されている部分を支点として、上下方向に傾動可能に傾動磁性体が可動体に取り付けられる。このような簡易な構成により、打抜き部を介して可動体が上型によって押し下げられたときに、支持体側磁石と傾動磁性体とが吸着係合しつつ固定磁性体、又は可動体側磁石に対し傾動磁性体が傾動し、その後、傾動磁性体と支持体側磁石との吸着係合が外れるような作動が行われるようにすることができる。
【0018】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記可動体側係合部が前記支持体側係合部に近づく方向に前記可動体を付勢する付勢手段をさらに備えることが好ましい。
【0019】
本構成の打抜き部受支装置によれば、可動体側係合部が支持体側係合部に近づく方向に可動体が付勢手段によって付勢されるので、打抜き部の打抜き除去動作に伴い可動体側係合部と支持体側係合部との吸着係合が外れても、両者を元の吸着係合した状態に速やかに戻すことができ、打抜き部の打抜き除去動作を容易に繰り返し行うことができる。
【0020】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記案内手段は、
下方に向かって前記支持体の内方側に延在するように前記支持体に設けられる細長開口部と、
前記細長開口部に係合するように前記可動体に設けられる軸部と、
前記可動体の前記軸部回りの回動を規制する回動規制ロッドと、
を含むことが好ましい。
【0021】
本構成の打抜き部受支装置によれば、打抜き部を介して可動体が上型によって押し下げられると、下方に向かって支持体の内方側に延在するように支持体に設けられる細長開口部に沿って、可動体に設けられる軸部が案内されるので、下方に進むに従って支持体の内方側に可動体を確実に移動させることができる。また、本構成の打抜き部受支装置においては、可動体の軸部回りの回動を規制する回動規制ロッドにより、打抜き部を介して可動体が上型によって押し下げられたとしても、可動体が軸部回りに回動するのを防ぐことができ、可動体が下方に進むに従って支持体の内方側に移動する際の可動体の姿勢を安定的に保つことができる。
【0022】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記付勢手段は、前記回動規制ロッドに外嵌される圧縮コイルばねであることが好ましい。
【0023】
本構成の打抜き部受支装置によれば、可動体側係合部が支持体側係合部に近づく方向に可動体を付勢する付勢手段が、回動規制ロッドに外嵌される圧縮コイルばねであるため、圧縮コイルばねが回動規制ロッドに支えられてその軸方向にスムーズに伸縮できることになり、圧縮コイルばねの弾発力を、可動体側係合部が支持体側係合部に近づく方向に可動体を付勢する付勢力として、可動体に確実に作用させることができる。
【0024】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記細長開口部は、前記支持体の外方に向かって斜め下向きに凸の円弧状に形成されることが好ましい。
【0025】
本構成の打抜き部受支装置によれば、細長開口部が、支持体の外方に向かって斜め下向きに凸の円弧状に形成されるので、可動体に設けられた軸部が細長開口部に沿ってスムーズに案内されるとともに、細長開口部と軸部との間の摩擦が軽減されて、細長開口部の周縁や軸部の摩耗を抑制することができる。
【0026】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記回動規制ロッドの下端側は、前記支持体に設けられた挿通孔に軸方向に移動可能に挿通されており、
前記挿通孔の内壁面は、前記可動体に向かう方向に末広がり状に形成されることが好ましい。
【0027】
本構成の打抜き部受支装置によれば、回動規制ロッドの下端側が挿通される、支持体に設けられた挿通孔が可動体に向かう方向に末広がり状に形成されるので、可動体の振れに伴い回動規制ロッドが振れたとしても、回動規制ロッドの外周面と挿通孔の内壁面とが干渉することがなく、可動体をスムーズに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る打抜き部受支装置を具備する打抜き屑除去装置の正面図である。
図2図2は、図1のA-A矢視図である。
図3図3は、可動体を示し、(a)は可動体側係合部の非装着状態の正面図、(b)は平面図、(c)は可動体側係合部の装着状態の正面図である。
図4図4は、側板部の正面図である。
図5図5は、打抜き屑除去動作説明図(1)である。
図6図6は、打抜き屑除去動作説明図(2)である。
図7図7は、打抜き屑除去動作説明図(3)である。
図8図8は、打抜き屑除去動作説明図(4)である。
図9図9は、別実施形態1の打抜き部受支装置を具備する打抜き屑除去装置の正面図である。
図10図10は、別実施形態2~5の打抜き部受支装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0030】
<打抜き屑除去装置の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る打抜き部受支装置30を具備する打抜き屑除去装置1の正面図である。図1に示す打抜き屑除去装置1は、固定状態で配設される上型3と、上型3に対し相対移動可能に昇降される下型5とを備え、上型3と下型5との協働により、下型5上に載置されたシート材Sにおける打抜き部Pを打ち抜いて抜き屑として除去するように構成されている。ここで、シート材Sは、例えば、箱体(製品)を展開した所定形状のブランクを得るための型打抜き工程を経たものである。型打抜き工程を経たシート材Sにおいては、ブランクと打抜き部Pとが所要箇所に設けられた繋ぎ部jによって繋ぎ止められている。打抜き部Pは、シート材Sにおける、製品段階において独立孔部分や、細い切込部分等となる箇所に残留する抜き屑となる部分である。
【0031】
<上型>
上型3は、主として、上型基板11、突き押し片13、及びシート押え片15により構成されている。上型基板11は、下型5の上方において上下方向に板面を臨ませて水平方向に延在している。突き押し片13は、上型基板11の下面から下向きに所定長さ突出するように上型基板11に植設されている。シート押え片15は、弾性変形可能な例えば発泡樹脂等からなり、突き押し片13の近傍に位置するように上型基板11の下面に貼着されている。
【0032】
<下型>
下型5は、上型基板11の下方において上下方向に板面を臨ませて水平方向に延在する下型基板21と、下型基板21に取り付けられる打抜き部受支装置30とを備えて構成されている。打抜き部受支装置30は、シート材Sにおける、上型3(突き押し片13)によって打ち抜かれる打抜き部Pを抜き屑として除去可能に受支する装置である。
【0033】
図2は、図1のA-A矢視図である。図2に示すように、打抜き部受支装置30は、下型基板21の端縁部に形成されるコの字状の切欠き部23に、下型基板21の上面と面一となるように組み込まれ、締結具25によって下型基板21に締結されて固定されている。
【0034】
<打抜き部受支装置>
図1に示すように、打抜き部受支装置30は、打抜き部Pを受支する可動体40と、可動体40を移動可能に支持する支持体50とを備えている。
【0035】
<可動体>
図3は、可動体40を示し、(a)は可動体側係合部の非装着状態の正面図、(b)は平面図、(c)は可動体側係合部の装着状態の正面図である。図3(a)に示すように、可動体40は、前部41、胴部42、及びテール部43を有している。前部41は、打抜き部Pが載置される水平面状の打抜き部載置面(打抜き部載置部)41aを有している。前部41は、前方(図3(a)において右方)に向かって先細台形状に形成されている。胴部42は、前部41の後方(図3(a)において左方)に延在するように前部41に一体的に設けられている。テール部43は、胴部42の下部位置から後方に向かって上向きに傾斜状態で延在するように胴部42に一体的に設けられている。可動体40において、胴部42とテール部43との境界部分には、前方に向かって凹状の切欠き部44が形成されている。切欠き部44の基部には、奥側に凹んだ第一係止凹部45が形成されている。テール部43の後端部には、上側において前方に折り返したような鉤形状の係止爪部46が形成されている。係止爪部46には、後述する傾動磁性体86の前端側が切欠き部44の上部に当接するように傾動磁性体86が後述する固定磁性体85に対し斜めに傾いた状態のときに、傾動磁性体86の後端側の上面に当接する当接面46aが形成されている。テール部43の後端部には、第一係止凹部45と対向するように奥側に凹んだ第二係止凹部47が形成されている。また、可動体40の上部において、前部41と胴部42との間には、前部41の一部が切り欠かれたような凹部48が形成されている。凹部48は、後述する前壁板部56に対し所要の隙間を存してその前壁板部56を受け入れ可能な大きさ、及び形状に形成され、可動体40の上部と支持体50の前壁板部56とが干渉しないようにするために設けられる。
【0036】
<支持体>
図1に示すように、支持体50は、主として、一対の側板部51、前側天板部52、後側天板部53、前側底板部54、後側底板部55、及び前壁板部56により構成されている。
【0037】
図4は、側板部51の正面図である。図4に示す側板部51は、可動体40の左右両側(図1において紙面を貫く方向の両側)に隣り合うように配置されている。側板部51は、上辺部61、下辺部62、前辺部63、及び後辺部64を有している。
【0038】
上辺部61は、前側上辺部61aと後側上辺部61bとを含む。前側上辺部61aは、側板部51の上側位置において前後方向に水平に延在する。後側上辺部61bは、側板部51の上下方向中間位置において前後方向に水平に延在する。
【0039】
下辺部62は、前側下辺部62aと後側下辺部62bとを含む。前側下辺部62aは、側板部51の下側位置において後方に向かって上向きに傾斜するように延在する。後側下辺部62bは、側板部51の下側位置において前後方向に水平に延在する。
【0040】
前辺部63は、上側前辺部63aと下側前辺部63bとを含む。上側前辺部63aは、前側上辺部61aと直角を成して連続するように鉛直方向に延在する。下側前辺部63bは、上側前辺部63aと鈍角をなし、且つ前側下辺部62aと略直角をなしてそれら上側前辺部63a、及び前側下辺部62aと連続するように下方に向かって後向きに傾斜状態で延在する。
【0041】
後辺部64は、上側後辺部64aと中間後辺部64bと下側後辺部64cとを含む。上側後辺部64aは、前側上辺部61a、及び後側上辺部61bに対しそれぞれ直角をなしてそれら前側上辺部61a、及び後側上辺部61bと連続するように鉛直方向に延在する。中間後辺部64bは、後側上辺部61b、及び後側下辺部62bに対しそれぞれ直角をなしてそれら後側上辺部61b、及び後側下辺部62bと連続するように鉛直方向に延在する。下側後辺部64cは、後側下辺部62bに対し直角をなす一方で、前側下辺部62aに対し鈍角をなしてそれら後側下辺部62b、及び前側下辺部62aと連続するように鉛直方向に延在する。
【0042】
図1に示すように、前側天板部52は、打抜き部Pを受支する位置に存している可動体40の打抜き部載置面41aが露出状態となるように、一対の側板部51における前側上辺部61a(図4参照)どうしを連結する。後側天板部53は、一対の側板部51における後側上辺部61b(図4参照)どうしを連結する。前側底板部54は、一対の側板部51における前側下辺部62a(図4参照)どうしを連結する。後側底板部55は、後側下辺部62b(図4参照)どうしを連結する。前壁板部56は、前側天板部52の前端部から所定長さで垂下するように前側天板部52に連設されている。このように、前壁板部56を設けることにより、シート材Sから打ち抜かれた打抜き部Pが支持体50の内部に侵入するのを防ぐことができる。
【0043】
<案内手段>
図1に示す打抜き部受支装置30は、下方に進むに従って支持体50の内方側に移動するように可動体40を案内する案内手段70をさらに備えている。案内手段70は、細長開口部71、軸部72、及び回動規制ロッド73を含む。
【0044】
図4に示すように、細長開口部71は、下方に向かって後向き(図4において左向き)に延在するように側板部51に形成されている。細長開口部71は、支持体50の外方、本例の場合は支持体50の前方(図4において右方)に向って斜め下向きに凸の円弧状を呈するように形成されている。
【0045】
図1に示すように、軸部72は、細長開口部71に係合するように可動体40に設けられている。図3(a)及び(b)に示すように、軸部72は、可動体40を貫通し両端部を可動体40から突出させた状態で固着される軸体75の両端部により形成される。こうして、支持体50(側板部51)に設けられる細長開口部71に沿って、可動体40に設けられる軸部72が案内されるので、下方に進むに従って支持体50の内方側に可動体40を確実に移動させることができる。特に、本例では、細長開口部71が、支持体50の前方に向かって斜め下向きに凸の円弧状に形成されるので、軸部72が細長開口部71に沿ってスムーズに案内される。なお、軸部72は、細長開口部71に沿って案内される構成であるため、従来(特許文献1)のように、受け片が回動する構成のものと比べて軸部72の摩耗を抑制することができ、製品寿命を延ばすことができる。特に、本例では、細長開口部71が、支持体50の前方に向かって斜め下向きに凸の円弧状に形成されるので、細長開口部71と軸部72との間の摩擦が軽減されて、細長開口部71の周縁や軸部72の摩耗を抑制することができる。
【0046】
図1に示すように、回動規制ロッド73は、可動体40の軸部72の回りの回動を規制するものである。回動規制ロッド73の上端側は、可動体40に差し込まれて固着されている。回動規制ロッド73の下端側は、支持体50における前側底板部54に設けられた挿通孔54aに貫通状態で軸方向に移動可能に挿通されている。こうして、可動体40の移動を案内しつつ、可動体40が軸部72の回りに回動するのを防ぐことができ、可動体40が下方に進むに従って支持体50の内方側に移動する際の可動体40の姿勢を安定的に保つことができる。
【0047】
なお、軸部72は、可動体40が案内手段70の案内によって移動する際に、細長開口部71に沿って移動する。細長開口部71と軸部72との間には、細長開口部71に対し軸部72がスムーズに相対移動できるように若干の隙間が設けられている。しかし、このような隙間が設けられていることに起因して、可動体40が案内手段70の案内によって移動する際に、可動体40が前後方向(図1において左右方向)に振れ、これに伴い、回動規制ロッド73も同様に振れることになる。このため、回動規制ロッド73の外周面と挿通孔54aの内壁面とが干渉し、可動体40がスムーズに移動できない虞がある。そこで、挿通孔54aの内壁面を、前側底板部54の下面側から上面側に向かう方向(可動体40に向かう方法)に末広がりの逆円錐台状に形成している。これにより、回動規制ロッド73が前後方向(図1において左右方向)に振れたとしても、回動規制ロッド73の外周面と挿通孔54aの内壁面とが干渉することがなく、可動体40をスムーズに移動させることができる。
【0048】
<支持体側係合部>
図1に示す打抜き部受支装置30は、磁力によって吸着係合可能に支持体50に設けられる支持体側係合部31としての支持体側磁石80をさらに備えている。支持体側磁石80は、一対の側板部51の配置方向に断面矩形状で延在する外観視直方体形状に形成されている。支持体側磁石80の両端部は、一対の側板部51のそれぞれに形成された取付孔65(図4参照)に固定状態で嵌着されている。支持体側磁石80は、その六面のうちの下面を可動体40におけるテール部43(図3(a)参照)の長さ方向中間部の面に対向させるように全体を所定角度傾斜させた状態でテール部43の上方に配置されている。支持体側磁石80としては、例えば、ネオジム磁石や、フェライト磁石、アルニコ磁石、サマリウム・コバルト磁石等が挙げられるが、小形でも強力な磁力が得られるネオジム磁石が好ましい。
【0049】
<可動体側係合部>
図1に示す打抜き部受支装置30は、磁力によって吸着係合可能に可動体40に設けられる可動体側係合部32としての固定磁性体85、及び傾動磁性体86をさらに備えている。
【0050】
図3(c)に示すように、固定磁性体85は、可動体40における第一係止凹部45と第二係止凹部47とに係止されている。固定磁性体85は、支持体側磁石80(図1参照)の下面と平行をなす板面を有する板状の磁性体(本例では鉄板)からなり、テール部43上に固定状態で載置されている。一方、傾動磁性体86は、支持体側磁石80(図1参照)の下面、及び固定磁性体85の上面と対向可能な板面を有する板状の磁性体(本例では鉄板)からなり、固定磁性体85と支持体側磁石80との間に配設されている。傾動磁性体86の後端側(一端側)は、可動体40における係止爪部46に引っ掛け状態で係合されている。傾動磁性体86の前端側(他端側)は、可動体40における切欠き部44に上下動可能に係合されている。こうして、傾動磁性体86は、係止爪部46に引っ掛け状態で係合されている部分を支点として、上下方向に傾動可能に可動体40に取り付けられている。このような簡易な構成により、打抜き部Pを介して可動体40が上型3によって押し下げられたときに、支持体側磁石80と傾動磁性体86とが吸着係合しつつ固定磁性体85に対し傾動磁性体86が傾動し、その後、傾動磁性体86と支持体側磁石80との吸着係合が外れるような作動が行われるようにすることができる。なお、固定磁性体85、及び傾動磁性体86は何れも、支持体側磁石80に吸着される強磁性体であり、例えば、鉄やニッケル、コバルト等の金属からなるものが挙げられる。
【0051】
<付勢手段>
図1に示す打抜き部受支装置30は、可動体40に設けられた固定磁性体85、及び傾動磁性体86が、支持体50に設けられた支持体側磁石80に近づく方向に可動体40を付勢する付勢手段としての圧縮コイルばね90をさらに備えている。こうして、打抜き部Pの打抜き除去動作に伴い、固定磁性体85、及び傾動磁性体86と、支持体側磁石80との吸着係合が外れても、両者を元の吸着係合した状態に速やかに戻すことができ、打抜き部Pの打抜き除去動作を容易に繰り返し行うことができる。
【0052】
圧縮コイルばね90は、支持体50における前側底板部54と可動体40の下面との間において回動規制ロッド73に外嵌されている。こうして、圧縮コイルばね90が回動規制ロッド73に支えられてその軸方向にスムーズに伸縮できることになる。これにより、可動体40に設けられた固定磁性体85、及び傾動磁性体86が、支持体側磁石80に近づく方向に可動体40を付勢する付勢力として、圧縮コイルばね90の弾発力を可動体40に確実に作用させることができる。
【0053】
図1に示すように、打抜き部受支装置30は、一対の側板部51における後側上辺部61b(図4参照)を下型基板21の下面に当接させるとともに、一対の側板部51における上側後辺部64a(図4参照)を下型基板21の切欠き部23の奥面に当接させるように下型基板21に組み付けられ、締結具25の締結により下型基板21に固定されている。打抜き部受支装置30において、細長開口部71の最上部に軸部72が係合している図1に示すような状態では、可動体40の打抜き部載置面41aが一対の側板部51における前側上辺部61a(図4参照)と面一で、且つ可動体40が一対の側板部51における上側前辺部63a(図4参照)から所定長さ突出される。これにより、図1に示すように、可動体40における打抜き部載置面41aが、上型3の突き押し片13の先端面(下端面)と対向し、且つ突き押し片13の下方に打抜き部Pが位置するように下型基板21上に載置されたシート材Sのその打抜き部Pを下面側から受支可能な状態となる。
【0054】
<打抜き屑除去動作>
次に、打抜き屑除去装置1を用いて打抜き部Pを抜き屑として打抜き、除去する動作について、図1の打抜き屑除去装置の正面図、及び図5図8の打抜き屑除去動作の説明図を用いて説明する。
【0055】
図1において、下型5における下型基板21の上面には、前工程で型抜きされたシート材Sが、突き押し片13の下方に打抜き部Pが位置するように送り込まれる。これにより、打抜き部Pは、可動体40の打抜き部載置面41aによって受支される。
【0056】
図5に示すように、静止状態の上型3に対し下型5を上昇させると、シート押え片15がシート材Sに接して弾性変形する。これにより、打抜き部Pの近傍が弾性変形したシート押え片15で押えられ、シート材Sが安定する。
【0057】
図6に示すように、下型5をさらに上昇させると、突き押し片13によって打抜き部Pが相対的に押し下げられ、打抜き部Pを介して可動体40が突き押し片13によって相対的に押し下げられる。可動体40が突き押し片13によって押し下げられると、支持体側磁石80と傾動磁性体86とが吸着係合しつつ固定磁性体85に対し傾動磁性体86が傾動する。傾動磁性体86が傾動する間においては、傾動前の元の状態に戻そうとする磁力が傾動磁性体86と支持体側磁石80との間に作用する。この磁力は、傾動磁性体86を介して可動体40に作用し、可動体40を押し上げる方向に付勢する。これにより、打抜き部Pが突き押し片13によって打ち抜かれる際、突き押し片13から打抜き部Pを介して可動体40に作用する押圧力に対抗する反力が確保される。こうして、突き押し片13からの押圧力に対抗する反力が確保され、且つ打抜き部Pが突き押し片13と可動体40とに挟まれた状態で、打抜き部Pが固定磁性体85に対する傾動磁性体86の鉛直方向変位分の落差で可動体40と共に押し下げられる。これにより、打抜き部Pに対し打抜き力を確実に作用させることができる。固定磁性体85に対する傾動磁性体86の鉛直方向変位分は、シート材Sの厚みの大きさ以上に設定されている。従って、打抜き部Pとその周りのシート材Sの部分とを繋ぎ止めている繋ぎ部j(図1参照)が確実に引き千切られる。なお、繋ぎ部jが引き千切られてシート材Sから打ち抜かれた打抜き部Pが、支持体50の内部に侵入しようとしても、前壁板部56によって阻止されるので、その後の打抜き部Pの突き落とし動作にスムーズに移行することができる。
【0058】
その後、図7に示すように、傾動磁性体86と支持体側磁石80との吸着係合が外れると、案内手段70による案内により、可動体40が下方に進むに従って支持体50の内方側に移動する。シート材Sから打ち抜かれた打抜き部P、すなわち抜き屑は、突き押し片13と可動体40とによって挟まれた状態で可動体40と共に押し下げられる。可動体40は、下方に進むに従って支持体50の内方側に移動するため、支持体50における側板部51の上側前辺部63a(図4参照)からの可動体40の突出量が、可動体40の移動量の増大に応じて小さくなり、これに伴い、抜き屑(打抜き部P)を受支している可動体40の部分が小さくなる。
【0059】
そして、遂には、図8に示すように、抜き屑(打抜き部P)を可動体40によって受支できなくなり、抜き屑が可動体40上から突き落される。こうして、打抜き部Pを抜き屑として確実に除去することができる。
【0060】
本実施形態の打抜き部受支装置30においては、図5に示すように、支持体50に装着された支持体側磁石80の磁力により、可動体40に装着された2枚の鉄板(固定磁性体85、傾動磁性体86)を介して可動体40が吸着保持されている。このようにして保持されている可動体40が突き押し片13によって相対的に押し下げられると、まず、図6に示すように、固定磁性体85に対し傾動磁性体86が開放され、次いで、図7図8に示すように、支持体側磁石80に対し傾動磁性体86が開放される。このように、可動体40の第1段階目の下降動作によって所要箇所に設けられた繋ぎ部jの全てを引き千切り(図5図6を参照)、可動体40の第2段階目の下降動作によって、打抜き部Pを突き落として抜き屑として除去する(図7図8を参照)。こうして、可動体40を2段階で下降させることにより、繋ぎ部jを確実に引き千切り、その後、打抜き部Pを抜き屑として確実に除去することができる。仮に、傾動磁性体86が設けられずに、固定磁性体85のみが設けられている場合、支持体側磁石80の磁力により、固定磁性体85を介して吸着保持されている可動体40が突き押し片13によって相対的に押し下げられると、支持体側磁石80に対し固定磁性体85が開放されて、可動体40が一気に下降する。このような可動体40の1段階の下降動作では、打抜き部Pが突き押し片13と可動体40とに挟まれた状態で押し下げられる動作が十分に行われず、所要箇所に設けられた繋ぎ部jの一部が引き千切られずに、打抜き部Pがシート材Sに残留してしまう虞がある。この場合、製品(ブランク)の品質が大きく損なわれることになる。上記のように、可動体40を2段階で下降させることにより、打抜き部Pを抜き屑として確実に除去することができるので、製品の品質を安定的に保つことができる。
【0061】
以上、本発明の打抜き部受支装置について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0062】
(別実施形態1)
図9は、別実施形態1の打抜き部受支装置30Aを具備する打抜き屑除去装置1の正面図である。なお、上記実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、別実施形態1に特有の部分を中心に説明することとする(後述する別実施形態2~5についても同様)。上記実施形態では、一対の側板部51における後側上辺部61b(図4参照)を下型基板21の下面に当接させるとともに、一対の側板部51における上側後辺部64a(図4参照)を下型基板21の切欠き部23の奥面に当接させるように下型基板21に組み付けられる打抜き部受支装置30を用いる例を示したが、これに限定されるものではなく、図9に示すような打抜き部受支装置30Aを用いてもよい。図9において、下型基板21は、下方に向って後向き(図9において左向き)に傾斜するような端面24を有している。図9に示す打抜き部受支装置30Aにおいて、一対の側板部51における上側後辺部64aは、端面24の形状に沿うように、前方(図9において右方)に向って上向きに傾斜するような形状とされている。上側後辺部64aがこのような形状に形成されるに伴い、図1に示す打抜き部受支装置30における一対の側板部51に設けられていた前側上辺部61a(図4参照)が省略されて、打抜き部受支装置30Aにおける一対の側板部51では、上側後辺部64aと上側前辺部63aとが鋭角を成して連続するような上向きに先鋭な形状に形成されている。このような一対の側板部51の形状に合わせるように、可動体40が斜め上向きに先細略台形状に形成されている。また、後側上辺部61bには、下型基板21の下面に当接する所要の滑り止め突起67が形成されている。それ以外については、上記実施形態の打抜き部受支装置30と基本的に同様の構造であり、打抜き部受支装置30Aによっても、打抜き部受支装置30と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
(別実施形態2)
図10は、別実施形態2~5の打抜き部受支装置30B~30Eの説明図である。図10(a)は、別実施形態2の打抜き部受支装置30Bを示す。図10(a)に示す打抜き部受支装置30Bにおいては、磁力によって吸着係合可能に可動体40に設けられる可動体側係合部32が、可動体側磁石101と傾動磁性体86とにより構成されている。可動体側磁石101は、可動体40における第一係止凹部45と第二係止凹部47とに係止されている。可動体側磁石101は、支持体側磁石80の下面と平行をなす板面を有する板状の磁石からなり、テール部43上に固定状態で載置されている。可動体側磁石101としては、例えば、ネオジム磁石や、フェライト磁石、アルニコ磁石、サマリウム・コバルト磁石等が挙げられるが、小形でも強力な磁力が得られるネオジム磁石が好ましい。
【0064】
この打抜き部受支装置30Bによれば、打抜き部P(図1参照)を介して可動体40が突き押し片13(図1参照)によって押し下げられると、支持体側磁石80と傾動磁性体86とが吸着係合しつつ可動体側磁石101に対し傾動磁性体86が傾動し、その後、傾動磁性体86と支持体側磁石80との吸着係合が外れる。支持体側磁石80と傾動磁性体86とが吸着係合しつつ可動体側磁石101に対し傾動磁性体86が傾動する間においては、傾動前の元の状態に戻そうとする磁力が傾動磁性体86と支持体側磁石80との間、及び傾動磁性体86と可動体側磁石101との間の両方に作用する。これらの磁力は、傾動磁性体86を介して可動体40に作用し、可動体40を押し上げる方向に付勢する。これにより、打抜き部Pが突き押し片13によって打ち抜かれる際、突き押し片13から打抜き部Pを介して可動体40に作用する押圧力に対抗する反力が確保される。ここで、確保される反力は、可動体側磁石101と傾動磁性体86とが可動体40に設けられる構成であるため、可動体側磁石101の磁力が付加されることにより、固定磁性体85と傾動磁性体86とが可動体40に設けられる構成の上記実施形態の場合よりも大きくなる。こうして、突き押し片13からの押圧力に対抗する反力が十分に確保され、且つ打抜き部Pが突き押し片13と可動体40とに挟まれた状態で、打抜き部Pが傾動磁性体86の鉛直方向変位分の落差で可動体40と共に押し下げられる。これにより、打抜き部Pに対し打抜き力をより確実に作用させることができる。
【0065】
(別実施形態3)
図10(b)は、別実施形態3の打抜き部受支装置30Cを示す。図10(b)に示す打抜き部受支装置30Cにおいては、磁力によって吸着係合可能に可動体40に設けられる可動体側係合部32が、可動体磁石111と傾動磁性体86とにより構成されている。可動体側磁石111は、可動体40における第一係止凹部45と第二係止凹部47とに係止されている。可動体側磁石111は、支持体側磁石80の下面と平行をなす板面を有する板状の磁性体112(本例では鉄板)と、可動体側磁石101(図10(a)参照)と同様の板状の磁石本体113とが積層されて全体として磁石として機能するように構成される複合体よりなるものである。このような構成の別実施形態3の打抜き部受支装置30Cによれば、傾動磁性体86と磁石本体113との間に、磁性体112が介在されるため、磁性体112によって磁石本体113を保護することができる。
【0066】
(別実施形態4)
図10(c)は、別実施形態4の打抜き部受支装置30Dを示す。図10(c)に示す打抜き部受支装置30Dにおいては、磁力によって吸着係合可能に支持体50に設けられる支持体側係合部31として、支持体側磁石121が用いられる構成とされている。支持体側磁石121は、支持体側磁石80(図10(a)及び(b)参照)と同様の磁石本体123と板状の磁性体124(本例では鉄板)とが積層されて全体として磁石として機能するように構成される複合体よりなるものである。このような構成の別実施形態4の打抜き部受支装置30Dによれば、傾動磁性体86と磁石本体123との間に、磁性体124が介在されるため、磁性体124によって磁石本体123を保護することができる。
【0067】
(別実施形態5)
図10(d)は、別実施形態5の打抜き部受支装置30Eを示す。図10(d)に示す打抜き部受支装置30Eは、上記別実施形態3と別実施形態4とを組み合わせたものである。このような構成の別実施形態5の打抜き部受支装置30Eによれば、磁性体112によって磁石本体113を保護することができるとともに、磁性体124によって磁石本体123を保護することができる。
【0068】
なお、図示による詳細説明は省略するが、傾動磁性体86について、例えば、磁性体と磁石と磁性体とを積層するというように、所要の磁石と磁性体とを適宜に積層して全体として磁性体として機能するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の打抜き部受支装置は、例えば、箱体を展開した所定形状のブランクを得るための型打抜き加工が施されたシート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
30 打抜き部受支装置
30A~30E 打抜き部受支装置
40 可動体
50 支持体
54a 挿通孔
70 案内手段
71 細長開口部(案内手段)
72 軸部(案内手段)
73 回動規制ロッド(案内手段)
80,121 支持体側磁石(支持体側係合部)
85 固定磁性体(可動体側係合部)
86 傾動磁性体(可動体側係合部)
90 圧縮コイルばね(付勢手段)
101,111 可動体側磁石(可動体側係合部)
【要約】
【課題】シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として確実に除去することができる打抜き部受支装置を提供する。
【解決手段】シート材Sにおける、上型3によって打ち抜かれる打抜き部Pを抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置30であって、打抜き部Pを受支する可動体40と、可動体40を移動可能に支持する支持体50と、可動体40を案内する案内手段70と、磁力によって吸着係合するように可動体40、及び支持体50にそれぞれ設けられる可動体側係合部32、及び支持体側係合部31とを備え、打抜き部Pを介して可動体40が上型3によって押し下げられると、可動体側係合部32と支持体側係合部31との吸着係合が外れ、案内手段70による案内により、可動体40は下方に進むに従って支持体50の内方側に移動する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10