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特許7070977癌、自己免疫障害、及び慢性炎症に関連する他の病態の治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】癌、自己免疫障害、及び慢性炎症に関連する他の病態の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20220511BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220511BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220511BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P3/00
A61P9/12
A61P31/22
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017550601
(86)(22)【出願日】2016-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-04-12
(86)【国際出願番号】 US2016025126
(87)【国際公開番号】W WO2016161055
(87)【国際公開日】2016-10-06
【審査請求日】2019-03-12
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】62/140,618
(32)【優先日】2015-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517332579
【氏名又は名称】マイエムディー ファーマスーティカルズ (フロリダ)、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ、ジョニー アール.
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】渕野 留香
【審判官】穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-516869(JP,A)
【文献】米国特許第8916596(US,B2)
【文献】特開平6-9307(JP,A)
【文献】BioResources,2011年,Vol.6,No.2,p.1520-1531
【文献】THE LANCET,1964年11月7日,p.995-997
【文献】ONCOLOGY REPORTS,2013年,Vol.30,No.4,p.1587-1592
【文献】Brain,Behavior,and Immunity,2011年,Vol.25,Issue 8,p.1677-1688
【文献】THE AMERICAN JOURNAL OF CARDIOLOGY,1960年,Vol.6,No.6,p.1146-1151
【文献】Curr.Med.Res.and Opinion,2002年,Vol.20,No.1,p.39-40(DOI:10.1185/030079903125002757)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/80
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)JMEDPlus/JST7580/JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害の症状の低減において使用するためのイソミオスミン(isomyosmine)の単離形態またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物であって、
前記障害は、高血圧症(hypertension)、高血圧(high blood pressure)、単純疱疹ウイルス(HSV)の感染、または自己免疫性アミロイドーシスである、
イソミオスミン(isomyosmine)の単離形態またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2015年3月31日に出願された米国仮出願第62/140,618号の優先権を主張し、その開示は、本明細書にその全体が参照として組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
一態様において、癌の治療法は、治療を必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミン(isomyosmine)またはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物を投与することを含む。癌を治療する態様は、腫瘍微小環境の修正を伴ってもよい。イソミオスミンは、微小環境における過酸化水素及び/または他の活性酸素種(ROS)の産生をブロックし、ないしは別の方法で低減すると考えられ、それによって、内因性種の正常な機能を回復する助けとなり得る。腫瘍微小環境の修正はまた、他の癌療法、例えば化学療法の有効性を改善することができる。過酸化水素及び/または他のROSが腫瘍形成の原因であり得る限りにおいて、イソミオスミンもまた、腫瘍発症を予防または遅延させるために有効であり得る。
【0003】
別の態様において、自己免疫障害の治療法は、治療を必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物を投与することを含む。
【0004】
別の態様において、自閉症の治療法は、治療を必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物を投与することを含む。
【0005】
別の態様において、ウイルス感染の治療法は、治療を必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物を投与することを含む。一例では、このウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。別の例では、このウイルスは、ヒト・パピローマウイルス(HPV)である。
【0006】
別の態様において、高血圧症(hypertension)または高血圧(high blood pressure)の治療法は、治療を必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物を投与することを含む。
【0007】
いくつかの態様において、慢性炎症に関連する障害の治療法は、治療を必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物を投与することを含む。
【0008】
他の態様において、過酸化水素及び/または他のROSのレベルの増加に関連する障害の治療法は、治療を必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物を投与することを含む。イソミオスミンが、例えば、過酸化水素及び/または他のROSを産生するモノアミンオキシダーゼなどの酵素を阻害することによって、直接的または間接的のいずれかで過酸化水素の産生を阻害すると仮定する。過酸化水素及び/または他のROSのレベルの増加に関連する障害は、本明細書に言及される特定の癌及び自己免疫障害ならびにわずかに日常的な実験の助けを借りるだけで、過酸化水素(及び/または他のROS)のレベルの上昇に関連すると判定することができる他の病態が含まれる癌、自己免疫障害などを含むことができる。
【0009】
更に別の態様において、二重特性チロシンリン酸化制御性キナーゼ1A(DYRK1A)の異常発現または活性に関連する障害の治療法は、治療を必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物を投与することを含む。
【0010】
本発明のより完全な理解及びその特定の利点は、添付の図面を考慮して、以下の発明を実施するための形態を参照することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】イソミオスミン、ミオスミン、アナタビン、アナバシン、及びノルニコチンのMAO-Aの酵素活性を阻害するための能力を示すグラフである。
図2】イソミオスミン、ミオスミン、アナタビン、アナバシン、及びノルニコチンのMAO-Bの活性を阻害するための能力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の態様は、一部には、薬学的組成物を開示する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、個体に投与されるとき、副作用、アレルギー反応または有害もしくは不必要な反応を生じない任意の分子実体または組成物を意味する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される組成物」という用語は、「薬学的組成物」と同義であり、例えば、本明細書に開示される治療用化合物のうちのいずれかなどの活性成分の治療有効濃度を意味する。本明細書に開示される薬学的組成物は、医療及び獣医学用途に有用である。薬学的組成物は、単独で、または他の補助活性成分、薬剤、薬物またはホルモンと組み合わせて個体に投与されてもよい。
【0013】
本明細書に開示される薬学的組成物は、活性成分の薬学的に許容される組成物への加工を容易にする薬学的に許容される担体を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、「薬理学的担体」と同義であり、投与されるとき、長期にわたるまたは永続的な有害作用を実質的に有しない任意の担体を意味し、「薬理学的に許容されるビヒクル」、「安定剤」、「希釈剤」、「添加剤」または「賦形剤」などの用語を包含する。このような担体は、一般に、活性化合物と混合され、または活性化合物を希釈または囲い込むことを可能にし、固形剤、半固形剤、または液剤とすることができる。活性成分は可溶性とすることができるか、または所望の担体もしくは希釈剤中の懸濁液として送達できることが理解される。例えば、水、生理食塩水、グリシン、ヒアルロン酸、及びそれに類するものなどの水性媒体、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム、及びそれに類するものなどの固形媒体、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌ならびに抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤、または任意の他の不活性成分が挙げられるが、これらに限定されない様々な薬学的に許容される担体のいずれかを使用することができる。薬学的に許容される担体の選択は、投与方法に応じることができる。任意の薬学的に許容される担体が活性成分と不適合である場合を除き、薬学的に許容される組成物中でのその使用が企図される。このような薬学的担体の特定用途の非限定的な例は、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(Howard C.Ansel et al.,eds.,Lippincott Williams & Wilkins Publishers,7th ed.1999);REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(Alfonso R.Gennaro ed.,Lippincott,Williams & Wilkins,20th ed.2000)、Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics(Joel G.Hardman et al.,eds.,McGraw-Hill Professional,10th ed.2001)、及びHandbook of Pharmaceutical Excipients(Raymond C.Rowe et al.,APhA Publications,4th edition 2003)で見出すことができる。これらのプロトコルは、常用手順であり、任意の修正は当業者の範囲内で、及び本明細書の教示から十分にある。
[イソミオスミン]
【0014】
薬学的組成物は、イソミオスミンを含み得る。イソミオスミン(3-(3,4-ジヒドロ-2H-ピロール-2-イル)-ピリジン)は、ニコチンを含有するナス科(solanecea)植物に存在するニコチン関連アルカロイドである。
【化1】
【0015】
イソミオスミンは、周知の技術を用いて合成的に調製されてもよく、またいくつかの化学物質供給業者から市販されている。イソミオスミンは、ピリジン環に結合するピロール環内の不斉炭素原子のために、2つの光学異性体(+/-)を有する。文脈から明白でない限り、「イソミオスミン」という用語は、本明細書中で使用される場合、ラセミ混合物を含むエナンチオマー混合物(+/-)、ならびに一方または他方のエナンチオマーの単離形態を含める。
【0016】
文脈から明白でない限り、「イソミオスミン」は、本明細書で使用される場合、イソミオスミンの塩形態及び非塩形態の両方を指す。考えられる塩の非限定的な例は、P.H.Stahl et al.,Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,Weinheim/Zurich:Wiley-VCH/VHCA,2002に記載されており、1-ヒドロキシナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸(L)、アスパラギン酸(L)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳酸(+)、樟脳-10-スルホン酸(+)、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタン酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸(D)、グルコン酸(D)、グルクロン酸(D)、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イソ酪酸、乳酸(DL)、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸(-L)、マロン酸、マンデル酸(DL)、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸(-L)、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(+L)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(p)、及びウンデシレン酸の塩を含む。
【0017】
イソミオスミンを合成的に調製することに代わるものとして、タバコまたは他の天然に存在する供給源から抽出することによってイソミオスミンを得ることができる。例えば、タバコ抽出物は、乾燥したタバコの茎、ラミナ、またはそれらの両方から調製されてもよい。抽出プロセスにおいて、乾燥タバコ材料は、溶媒、典型的には水、エタノール、蒸気、または二酸化炭素で抽出される。得られた溶液は、イソミオスミンを含むタバコの可溶性成分を含有する。イソミオスミンは、液体クロマトグラフィーなどの適切な技術を用いてタバコの他の成分から精製されてもよい。
【0018】
製薬用途では、イソミオスミンの単離形態が一般的に使用される。本明細書で使用される場合、「イソミオスミンの単離形態」は、合成的に調製されたか、またはそれが生じる天然物質から実質的に分離されたイソミオスミンを指す。イソミオスミンの単離形態は、非常に高い純度(エナンチオマーが使用される場合にはエナンチオマー純度を含める)を有するべきである。合成イソミオスミンの場合、例えば、純度とは、最終反応生成物の重量に対するイソミオスミンの重量の比を指す。イソミオスミンを天然物質から単離する場合、例えば、純度とは、イソミオスミン含有抽出物の総重量に対するイソミオスミンの重量の比を指す。通常、純度のレベルは、少なくとも約95%、より一般的には、少なくとも約96%、約97%、約98%以上である。例えば、純度のレベルは、約98.5%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%以上であってもよい。
【0019】
理論に縛られることを望むものではないが、イソミオスミンは、基本的な細胞機能に影響を及ぼし、活性酸素種(ROS)、特に過酸化水素(H)の産生を直接的及び/または間接的に阻害する特有の能力を有すると考えられている。細胞は、通常、ミトコンドリアを有し、ミトコンドリアは分解してHを形成する傾向がある。いくつかの態様において、イソミオスミンは、ミトコンドリア機能の回復を補助すると考えられ、言い換えれば、ミトコンドリア機能障害を治療すると考えられている。イソミオスミンは、モノアミンオキシダーゼ(MAO-A及びMAO-Bを含む)、過酸化水素の産生を触媒する酵素の阻害剤である。
【0020】
イソミオスミンはまた、二重特異性チロシンリン酸化制御性キナーゼ1A(DYRK1A)を調節するとも考えられている。DYRK1Aは、身体の免疫応答の調節ならびにウイルス複製において役割を果たす。DYRK1Aの異常な発現または活性はまた、ダウン症候群及びアルツハイマー病を含む神経精神障害に関連している。DYRK1Aを調節するその能力のために、イソミオスミンは、癌からウイルス感染及び高血圧にまで及ぶ広範囲の疾患の治療に有効であり得る。
【0021】
本明細書中に開示される薬学的組成物は、任意に、緩衝液、防腐剤、緊張度調節剤、塩、抗酸化剤、浸透圧調節剤、生理学的物質、薬理学的物質、充填剤、乳化剤、湿潤剤、甘味剤または着香剤、及びそれに類するものが含まれるが、これらに限定されない、他の薬学的に許容される成分(または薬学的成分)を含むことができるが、これらに限定されない。得られる製剤が薬学的に許容されるという条件で、本明細書に開示される薬学的組成物を調製するために、様々な緩衝液及びpHを調節する手段を用いることができる。このような緩衝液には、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水及びホウ酸緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。組成物のpHを調整するために、酸または塩基を必要に応じて使用できることが理解される。薬学的に許容される抗酸化剤には、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、及びブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。有用な防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安定化オキシクロ組成物、及び、例えばDTPAまたはDTPA-ビスアミド、カルシウムDTPA、ならびにCaNaDTPA-ビスアミドなどのキレート剤が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的組成物で有用な緊張度調節剤には、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールまたはグリセリン及び他の薬学的に許容される緊張度調節剤などの塩が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的組成物は塩として提供することができ、また、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などが挙げられるが、これらに限定されない多くの酸で形成することができる。塩は、水性または他のプロトン性溶媒中で、対応する遊離塩基形態よりも可溶性が高い傾向がある。これら及び薬理学の分野で既知の他の物質を、薬学的組成物に含めることができることが理解される。
【0022】
一実施形態において、薬学的組成物は、イソミオスミンと、薬学的に許容されるアジュバントとを含む。別の実施形態において、本明細書に開示される薬学的組成物は、イソミオスミン、薬学的に許容される溶媒、及び薬学的に許容されるアジュバントを含む。この実施形態の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、薬学的に許容される安定剤を更に含んでもよい。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、薬学的に許容される成分、または薬学的に許容される担体及び薬学的に許容される成分の両方を更に含んでもよい。
【0023】
組成物は、イソミオスミンを単独で、または他の治療用化合物(複数可)と共に含有してもよい。治療用化合物は、疾患の診断、治癒、緩和、治療、または予防において、薬理学的活性もしくは他の直接的効果を提供する、あるいは、ヒトまたは動物の体の構造もしくは任意の機能に影響を及ぼす化合物である。本明細書に開示される治療用化合物は、薬学的に許容される塩、溶媒和物、または塩、例えば塩酸塩の溶媒和物の形態で使用されてもよい。更に、本明細書に開示される治療用化合物は、ラセミ化合物として、またはR-もしくはS-エナンチオマーを含む個々のエナンチオマーとして提供されてもよい。したがって、本明細書に開示される治療用化合物は、治療用化合物のR-エナンチオマーのみ、S-エナンチオマーのみ、またはR-エナンチオマー及びS-エナンチオマーの両方の組み合わせを含んでもよい。いくつかの態様において、治療用化合物は、抗炎症活性を有し得る。
【0024】
本明細書の「治療用化合物」への言及は、イソミオスミン、本明細書に記載されるイソミオスミン以外の活性化合物、またはその両方を指す場合がある。
【0025】
一実施形態において、本明細書に開示される治療用化合物は、炎症誘発分子のレベルを低下させることができる抗炎症活性を有する。この実施形態の一態様では、本明細書に開示される治療用化合物は、サブスタンスP(SP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、グルタメート、またはこれらの組み合わせのレベルを低下させることができる抗炎症活性を有する。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物は、感覚ニューロンから放出されるSP、CGRP、グルタメート、またはこれらの組み合わせのレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%まで低下させることができる抗炎症活性を有する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物は、感覚ニューロンから放出されるSP、CGRP、グルタメートまたはこれらの組み合わせのレベルを、例えば約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、または約50%~約70%の範囲で低下させることができる抗炎症活性を有する。
【0026】
プロスタグランジンは、局所的な炎症反応を媒介し、プロスタグランジン受容体に対する作用を通して全ての炎症機能に関与し、また走化性(マクロファージ、好中球、及び好酸球)、血管拡張及び痛覚過敏を含む炎症性シグナル伝達を媒介する。しかしながら、PG媒介炎症反応は、自己限定的(分解的)である。原理分解因子は、15dPGJ2と呼ばれるプロスタグランジンであり、ペルオキシソーム増殖因子-活性化受容体ガンマ(PPAR-γ)シグナル伝達の内因性アゴニストである。PPAR-γシグナル伝達経路は、1)マクロファージM1細胞のアポトーシスを誘導し、それによってTh1炎症誘発性サイトカインのレベルを低下させ、2)単球のマクロファージM2細胞への分化を促進する。マクロファージM2細胞は、Th2抗炎症性サイトカインを産生かつ放出する。
【0027】
一実施形態において、治療用化合物は、炎症誘発プロスタグランジンのレベルを低下させることができる抗炎症活性を有する。この実施形態の他の態様において、治療用化合物は、感覚ニューロンから放出される炎症誘発プロスタグランジンのレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%まで低下させることができる抗炎症活性を有する。この実施形態の更に他の態様において、治療用化合物は、感覚ニューロンから放出される炎症誘発プロスタグランジンのレベルを、例えば約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、または約50%~約70%の範囲で低下させることができる抗炎症活性を有する。
【0028】
別の実施形態において、治療用化合物は、15dPGJ2と実質的に類似の抗炎症活性を有する。この実施形態の態様において、治療用化合物は、例えば、15dPGJ2について観察される活性の少なくとも5%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%である抗炎症活性を有する。この実施形態の他の態様において、治療用化合物は、例えば、15dPGJ2について観察される約5%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約25%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約25%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約25%~約70%、約50%~約70%、約25%~約60%、約50%~約60%、または約25%~約50%の範囲である抗炎症活性を有する。
【0029】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、遺伝子の発現を調節する転写因子として機能する核内受容体タンパク質のグループである。全てのPPARは、レチノイドX受容体(RXR)とヘテロ二量体化し、ペルオキシソーム増殖因子ホルモン応答配列(PPRE)と呼ばれる標的遺伝子のDNA上の特定の領域に結合することが知られている。PPARは、細胞分化、発生、及び代謝(炭水化物、脂質、タンパク質の)、ならびに高等生物の腫瘍形成の調節に不可欠な役割を果たす。このファミリーは、PPAR-α、PPAR-γ、及びPPAR-δ(PPAR-βとしても知られる)の3つのメンバーを含む。PPAR-αは、肝臓、腎臓、心臓、筋肉、脂肪組織、ならびに他の組織において発現される。PPAR-δは、多くの組織で発現されるが、脳、脂肪組織、及び皮膚において顕著に発現される。PPAR-γは、それぞれ異なる発現パターンを有する3つのオルタナティブスプライシング型を含む。PPAR-γ1は、心臓、筋肉、結腸、腎臓、膵臓、及び脾臓を含む実質的に全ての組織で発現される。PPAR-γ2は、主に脂肪組織で発現される。PPAR-γ3は、マクロファージ、大腸、及び白色脂肪組織で発現される。PPARの内在性リガンドは、遊離脂肪酸及びエイコサノイドを含む。PPAR-γは、PGJ2(プロスタグランジン)によって活性化されるのに対して、一方PPAR-αは、ロイコトリエンB4によって活性化される。
【0030】
いくつかの様態において、治療用化合物は、一部のまたは全てのPPARシグナル伝達経路を刺激することができる抗炎症活性を有し得る。このような治療用化合物は、したがって、PPARパンアゴニストまたは恐らくは選択的PPARアゴニストとして作用し得ることが企図される。
【0031】
他の様態において、治療用化合物は、PPAR-αシグナル伝達経路を刺激することができる抗炎症活性を有する。この実施形態の態様では、本明細書に開示される治療用化合物は、例えば、少なくとも5%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%までPPAR-αシグナル伝達経路を刺激する。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物は、例えば、約5%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約25%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約25%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約25%~約70%、約50%~約70%、約25%~約60%、約50%~約60%、または約25%~約50%の範囲でPPAR-αシグナル伝達経路を刺激する。
【0032】
いくつかの様態において、治療用化合物は、PPAR-6シグナル伝達経路を刺激することができる抗炎症活性を有する。治療用化合物は、例えば、少なくとも5%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%までPPAR-6シグナル伝達経路を刺激することができる。場合によっては、治療用化合物は、例えば、約5%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約25%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約25%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約25%~約70%、約50%~約70%、約25%~約60%、約50%~約60%、または約25%~約50%の範囲でPPAR-6シグナル伝達経路を刺激する。
【0033】
いくつかの様態において、治療用化合物は、PPAR-γシグナル伝達経路を刺激することができる抗炎症活性を有する。治療用化合物は、PPAR-γの全てのアイソフォームに結合することができるか、またはPPAR-γ1、PPAR-γ2、PPAR-γ3、またはそれらの2つの任意の組み合わせに選択的に結合することが可能であり得る。治療用化合物は、少なくとも5%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%までPPAR-γシグナル伝達経路を刺激することができる。治療用化合物は、例えば、約5%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約25%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約25%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約25%~約70%、約50%~約70%、約25%~約60%、約50%~約60%、または約25%~約50%の範囲でPPAR-γシグナル伝達経路を刺激することができる。
【0034】
マクロファージは活性化され、固有の細胞表面分子を発現し、サイトカイン及びケモカインの離散セットを分泌する別個の表現型に極性化される。古典的なM1表現型は、例えばインターロイキン-6(IL-6)、IL-12、及びIL-23などのサイトカインによって推進される炎症誘発性Th1反応を支援し、一方、代替的なM2表現型は、IL-10によって推進される抗炎症プロセスを支援している。M2細胞は、刺激のタイプ、及びその後の表面分子及びサイトカインの発現に基づいて、サブセット、M2a、M2b、及びM2cに更に分類することができる。
【0035】
更に別の実施形態において、治療用化合物は、M1からM2への分解表現型の変化を促進することができる抗炎症活性を有する。治療用化合物は、マクロファージM1細胞のアポトーシスを誘導することができる抗炎症活性を有し得る。治療用化合物は、マクロファージM2細胞の分化を促進することができる抗炎症活性を有し得る。この実施形態の更に別の態様において、本明細書に開示される治療用化合物は、マクロファージM1細胞のアポトーシスを誘導し、またマクロファージM2細胞の分化を促進することができる抗炎症活性を有する。
【0036】
更に別の実施形態において、治療用化合物は、Th1及びTh2サイトカインを調節することができる抗炎症活性を有する。治療用化合物は、Th1細胞から放出されるインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、インターロイキン-12(IL-12)、またはそれらの組み合わせのレベルを低下させることができる抗炎症活性を有し得る。この実施形態の他の態様において、治療用化合物は、Th1細胞から放出されるIFN-γ、TNF-α、IL-12、またはこれらの組み合わせのレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低下させることができる抗炎症活性を有し得る。この実施形態の更に他の態様において、治療用化合物は、Th1細胞から放出されるIFN-γ、TNF-α、IL-12、またはこれらの組み合わせのレベルを、例えば約5%~約100%、約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、または約50%~約70%の範囲で低下させることができる抗炎症活性を有し得る。
【0037】
この実施形態の別の態様において、治療用化合物は、Th2細胞から放出されるIL-10のレベルを増加させることができる抗炎症活性を有する。治療用化合物は、Th2細胞から放出されるIL-10のレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%増加させることができる抗炎症活性を有し得る。この実施形態の更に他の態様において、治療用化合物は、Th2細胞から放出されるIL-10のレベルを、例えば約5%~約100%、10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、または約50%~約70%の範囲で増加させることができる抗炎症活性を有し得る。
【0038】
この実施形態の別の態様において、治療用化合物は、Th1細胞から放出されるIFN-γ、TNF-α、IL-12、またはそれらの組み合わせのレベルを低下させ、またTh2細胞から放出されるIL-10のレベルを増加させることができる抗炎症活性を有する。治療用化合物は、Th1細胞から放出されるIFN-γ、TNF-α、IL-12、またはこれらの組み合わせのレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%まで低下させることができ、またTh2細胞から放出されるIL-10のレベルを例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%まで増加させることができる抗炎症活性を有し得る。この実施形態の更に他の態様では、治療用化合物は、Th1細胞から放出されるIFN-γ、TNF-α、IL-12、またはこれらの組み合わせのレベルを、例えば、約5%~約100%、約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、または約50%~約70%の範囲で低下させることができ、またTh2細胞から放出されるIL-10のレベルを、例えば、約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、または約50%~約70%の範囲で増加させることができる抗炎症活性を有し得る。
【0039】
イソミオスミンに加えて、本明細書に記載される医薬製剤は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの追加の治療用化合物(複数可)を含んでもよい。NSAIDは、鎮痛特性、抗炎症特性、及び解熱特性を有する治療用化合物の大集団である。NSAIDは、シクロオキシゲナーゼを遮断することによって炎症を低減する。NSAIDとしては、アセクロフェナク、アセメタシン、アクタリット、アルコフェナク、アルミノプロフェン、アンフェナク、アロキシピリン、アミノフェナゾン、アントフェニン、アスピリン、アザプロパゾン、ベノリレート、ベノキサプロフェン、ベンジダミン、ブチブフェン、セレコキシブ、クロルテノキサシン、サリチル酸コリン、クロメタシン、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エモルファゾン、エピリゾール、エトドラク、エトリコキシブ、フェクロブゾン、フェルビナク、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フルルビプロフェン、グラフェニン、サリチル酸ヒドロキシエチル、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ラクチルフェネチジン、ロキソプロフェン、ルミラコキシブ、メフェナム酸、メロキシカム、メタミゾール、メチアジン酸、モフェブタゾン、モフェゾラク、ナブメトン、ナプロキセン、ニフェナゾン、ニフルム酸、オキサメタシン、フェナセチン、ピペブゾン、プラノプロフェン、プロピフェナゾン、プロカゾン、プロチジン酸、ロフェコキシブ、サリチルアミド、サルサレート、スリンダク、スプロフェン、チアラミド、チノリジン、トルフェナム酸、バルデコキシブ、及びゾメピラクが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
NSAIDは、それらの化学構造または作用機序に基づいて分類することができる。NSAIDの非限定的な例には、サリチレート誘導体NSAID、p-アミノフェノール誘導体NSAID、プロピオン酸誘導体NSAID、酢酸誘導体NSAID、エノール酸誘導体NSAID、フェナミン酸誘導体NSAID、非選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤、選択的シクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)阻害剤、及び選択的シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤が挙げられる。NSAIDは、プロフェンであってもよい。適切なサリチル酸誘導体NSAIDの例には、アセチルサリチル酸(アスピリン)、ジフルニサル、及びサルサレートが挙げられるが、これらに限定されない。適切なp-アミノフェノール誘導体NSAIDの例には、パラセタモール及びフェナセチンが挙げられるが、これらに限定されない。適切なプロピオン酸誘導体NSAIDの例は、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、デクスケトプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、プラノプロフェン、及びスプロフェンが挙げられるが、これらに限定されない。適切な酢酸誘導体NSAIDの例には、アセクロフェナク、アセメタシン、アクタリット、アルコフェナク、アンフェナク、クロメタシン、ジクロフェナク、エトドラク、フェルビナク、フェンクロフェナック、インドメタシン、ケトロラク、メチアジン酸、モフェゾラク、ナブメトン、ナプロキセン、オキサメタシン、スリンダク、及びゾメピラクが挙げられるが、これらに限定されない。適切なエノール酸(オキシカム)誘導体NSAIDの例には、ドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、及びテノキシカムが挙げられるが、これらに限定されない。適切なフェナミン酸誘導体NSAIDの例には、フルフェナム酸、メフェナム酸、メクロフェナム酸、及びトルフェナム酸が挙げられるが、これらに限定されない。適切な選択的COX-2阻害剤の例には、セレコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、ルミラコキシブ、メロキシカム、パレコキシブ、ロフェコキシブ、及びバルデコキシブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
治療用化合物は、化合物が有機溶媒中に可溶性であることを示すlogP値を有することができる。本明細書で使用される場合、「log値」という用語は、化合物についての分配係数(P)の対数(底は10である)を指し、親油性の尺度である。通常、Pは、平衡状態にある2つの不混和性溶媒の混合物の2つの相における非イオン化化合物の濃度の比として定義される。したがって、logP=Log10(P)であり、式中、P=[不混和性溶媒1中の溶質]/[不混和性溶媒2中の溶質]である。有機相及び水相に関して、化合物のlogP値は、任意の所定の水性溶媒及び有機溶媒のペアに対して一定であり、その値は、例えば振盪フラスコアッセイ、HPLCアッセイ、及び2つの不混和性電解質溶液間の界面(ITIES)アッセイを含む、当業者に既知のいくつかの相分配法のうちの1つによって経験的に決定することができる。
【0042】
この実施形態の態様において、治療用化合物は、化合物が有機溶媒中に実質的に可溶性であることを示すlogP値を有することができる。この実施形態の態様において、本明細書に開示される治療用化合物は、化合物が、例えば、有機溶媒中に少なくとも50%可溶であるか、有機溶媒中に少なくとも60%可溶であるか、有機溶媒中に少なくとも70%可溶性であるか、有機溶媒中に少なくとも80%可溶であるか、または有機溶媒中に少なくとも90%可溶性であることを示すlogP値を有してもよい。この実施形態の態様において、本明細書に開示される治療用化合物は、化合物が、例えば、有機溶媒中に約50%~約100%可溶であるか、有機溶媒中に約60%~約100%可溶であるか、有機溶媒中に約70%~約100%可溶であるか、有機溶媒中に約80%~約100%可溶であるか、または有機溶媒中に約90%~約100%可溶であることを示すlogP値を有してもよい。
【0043】
この実施形態の態様では、本明細書に開示される治療用化合物は、例えば、1.1超、1.2超、1.4超、1.6超、1.8超、2.0超、2.2超、2.4超、2.6超、2.8超、3.0超、3.2超、3.4超、または3.6超のlogP値を有してもよい。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物は、例えば、1.8~4.0、2.0~4.0、2.1~4.0、2.2~4.0、2.3~4.0、2.4~4.0、2.5~4.0、2.6~4.0、または2.8~4.0の範囲のlogP値を有してもよい。この実施形態の他の様態において、本明細書に開示される治療用化合物は、例えば、3.0~4.0、3.1~4.0、3.2~4.0、3.3~4.0、3.4~4.0、3.5~4.0、または3.6~4.0の範囲のlogP値を有してもよい。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物は、例えば、2.0~2.5、2.0~2.7、2.0~3.0、または2.2~2.5の範囲のlogP値を有してもよい。
【0044】
治療用化合物は、疎水性である極性表面積を有することができる。本明細書で使用される場合、「極性表面積」という用語は、化合物の構造中の極性原子の全てにわたる表面の合計を指し、疎水性の尺度である。典型的には、これらの極性原子には、例えば、酸素、窒素、及びそれらに結合した水素が含まれる。この実施形態の態様では、本明細書に開示される治療用化合物は、例えば、8.0nm未満、7.0nm未満、6.0nm未満、5.0nm未満、4.0nm未満、または3.0nm未満の極性表面積を有することができる。
【0045】
いくつかの態様において、治療用化合物は、PPAR-γアゴニストであり得る。適切なPPAR-γアゴニストの例には、ベンズブロマロン、カンナビジオール、シロスタゾール、クルクミン、デルタ(9)-テトラヒドロカンナビノール、グリチルレチン酸、インドメタシン、イルベサルタン、モナシン、マイコフェノール酸、レスベラトロル、6-ショウガオール、テルミサルタン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、ならびにトログリタゾンのようなチアゾリジンジオン、NSAID、及びフィブラートが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なPPAR-γアゴニストは、MassonらによるUS2011/0195993 A1に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
治療用化合物は、核内受容体結合剤であってもよい。適切な核内受容体結合剤の例には、レチノイン酸受容体(RAR)結合剤、レチノイドX受容体(RXR)結合剤、肝臓X受容体(LXR)結合剤、及びビタミンD結合剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
治療用化合物は、抗高脂血症剤であてもよい。抗高脂血症剤(脂質低下剤としても知られる)にはいくつかの部類がある。それらは、コレステロールプロファイル及び副作用に対するそれらの影響の両方で異なり得る。例えば、一部は低比重リポタンパク質(LDL)を低下させることができ、他のものは高比重リポタンパク質(HDL)を優先的に増加させることができる。臨床的に、薬剤の選択は、個体のコレステロールプロファイル、個体の心血管リスク、及び/または個体の肝臓ならびに腎臓機能に依存するであろう。適切な抗高脂血剤の例には、フィブラート、スタチン、トコトリエノール、ナイアシン、胆汁酸隔離剤(樹脂)、コレステロール吸収阻害剤、膵リパーゼ阻害剤、及び交感神経様作用アミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
治療用化合物は、フィブラートであってもよい。フィブラートは、脂質レベル改質特性を有する両親媒性カルボン酸の部類である。これらの治療用化合物は、ある範囲の代謝障害に使用される。1つの非限定的な使用は、抗子血症剤として使用であり、これは、例えばトリグリセリド及びLDLのレベルを低下させることができ、ならびに、HDLのレベルを増加させることができる。適切なフィブラートの例には、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、及びフェノフィブラートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
治療用化合物は、スタチンであってもよい。スタチン(またはHMG-CoAレダクターゼ阻害剤)は、肝臓中のコレステロールの産生において中心的な役割を果たす酵素HMG-CoAレダクターゼを阻害することにより、LDL及び/またはコレステロールレベルを低下させるために使用される治療用化合物の部類である。減少したコレステロールの利用可能性を相殺するために、肝LDL受容体の合成が増加し、その結果、血液からのLDL粒子の除去が増加する。適切なスタチンの例には、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
治療用化合物は、トコトリエノールであってもよい。トコトリエノールは、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の別の部類であり、肝LDL受容体の上方制御及び/または血漿LDLレベルの減少を誘導することによって、LDL及び/またはコレステロールレベルを低下させるために使用することができる。適切なトコトリエノールの例には、γ-トコトリエノール及びδ-トコトリエノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
治療用化合物は、ナイアシンであってもよい。ナイアシンは、脂質レベル改質特性を有する治療用化合物の部類である。例えば、ナイアシンは、肝ジシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ2を選択的に阻害することによりLDLを低下させ、トリグリセリド合成を減少させ、VLDL分泌を受容体HM74及びHM74AまたはGRP109Aを介して低減させることができる。これらの治療用化合物は、ある範囲の代謝障害に使用される。1つの非限定的な使用は、抗高脂血症剤としての使用であり、これは脂肪組織中の脂肪の分解を阻害することができる。ナイアシンは脂肪の分解を遮蔽するので、血液中の遊離脂肪酸の減少を引き起こし、その結果、肝臓による超低比重リポタンパク質(VLDL)及びコレステロールの分泌が減少する。VLDLレベルを低下させることにより、ナイアシンはまた、血液中のHDLレベルを増加させることも可能である。ナイアシンの例には、アシピモックス、ナイアシン、ニコチンアミド、及びビタミンB3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
治療用化合物は、胆汁酸隔離剤であってもよい。胆汁酸隔離剤(樹脂としても知られる)は、胃腸管内の胆汁の特定の成分に結合するために使用される治療用化合物の部類である。これらは、胆汁酸を封鎖し、それらの腸からの再吸収を防止することによって、胆汁酸の腸管循環を破壊する。胆汁酸隔離剤は、腸内に放出されたコレステロール含有胆汁酸を封鎖し、腸からの再吸収を防止することによって、LDL及びコレステロールを低下させるのに特に有効である。加えて、胆汁酸隔離剤は、HDLレベルを上昇させることもできる。適切な胆汁酸封鎖剤の例には、コレスチラミン、コレセベラム、及びコレスチポールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
いくつかの態様において、治療用化合物は、コレステロール吸収阻害剤であってもよい。コレステロール吸収阻害剤は、コレステロールの腸からの吸収を阻害する治療用化合物の部類である。コレステロール吸収の減少は、細胞の表面上のLDL受容体の上方制御、及びこれらの細胞へのLDLコレステロールの取り込みの増加をもたらし、したがって血漿中のLDLレベルを減少させる。適切なコレステロール吸収阻害剤の例には、エゼチミブ、フィトステロール、ステロール、及びスタノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
いくつかの態様において、治療用化合物は、脂肪吸収阻害剤であってもよい。脂肪吸収阻害剤は、脂肪の腸からの吸収を阻害する治療用化合物の部類である。脂肪吸収の減少は、カロリー摂取を低減させる。一態様において、脂肪吸収阻害剤は、腸内のトリグリセリドを分解する酵素である膵リパーゼを阻害する。適切な脂肪吸収阻害剤の例には、オルリスタットが挙げられるが、これに限定されない。
【0055】
治療用化合物は、交感神経様作用アミンであってもよい。交感神経様作用アミンは、カテコールアミン、エピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、及び/またはドーパミンなどの交感神経系の伝達物質の作用を模倣する治療用化合物の部類である。交感神経様作用アミンは、α-アドレナリンアゴニスト、β-アドレナリンアゴニスト、ドーパミンアゴニスト、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤、及びCOMT阻害剤として作用し得る。そのような治療用化合物は、とりわけ、心停止、低血圧、または更には早産の遅延を治療するために使用される。適切な交感神経様作用アミンの例には、クレンブテロール、サルブタモール、エフェドリン、偽エフェドリン、メタンフェタミン、アンフェタミン、フェニレフリン、イソプロテレノール、ドブタミン、メチルフェニデート、リスデキサンフェタミン、カチン、カチオニン、メツカチノン、コカイン、ベンジルピペラジン(BZP)、メチレンジオキシピロバレロン(MDPV)、4-メチルアミノレックス、ペモリン、フェンメトラジン、及びプロピルヘキセドリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
別の態様において、イソミオスミンは、禁煙を促進し、ないしは別の方法で個体のニコチンへの渇望やニコチン依存症を減らすか、または排除することを含む、タバコまたは他の物質依存を治療するために投与することができる。イソミオスミンは、MAO-A及びMAO-Bの両方を含む、モノアミンオキシダーゼ(MAO)の強力な阻害剤であることが判明した。前述の抗炎症機構の1つ以上を含む、これらの及び/または他のメカニズムを介して、イソミオスミンを含有する薬学的組成物は、タバコ依存を治療するために及び/またはニコチンへの渇望またはニコチン依存症の軽減もしくは排除で個人を支援するために、特に有効であり得る。一部の個人に対して、イソミオスミンの投与は、複数の障害の治療に有効であり得る。例えば、COPDは、喫煙者の間で比較的一般的な障害である。イソミオスミンを含有する組成物は、禁煙でこのような個人を支援するためだけでなく、喫煙に起因するかまたは喫煙に関連しようがしまいが、個人が罹患するCOPD及び/または他の慢性炎症関連障害の治療においても有用である。
【0057】
本明細書に開示される治療用化合物は、治療用化合物のエステルであってもよい。概して、治療用化合物のエステルは、エステル修飾されていない同じ治療用化合物と比較してlogP値を増加させる。エステル基は、例えば、治療用化合物の存在するカルボン酸またはヒドロキシル官能基によって、治療用化合物に結合され得る。治療用化合物のエステルは、増大した疎水性を有することができ、したがって、本明細書に開示された溶媒の低減量中に溶解することができる。場合によっては、治療用化合物のエステルは、本明細書に開示されたアジュバントと直接組み合わされ、それにより溶媒の必要性を排除してもよい。治療用化合物のエステルは、同じ治療用化合物の非エステル化形態が、本明細書に開示された溶媒中に別の方法で不混和性である状況において、本明細書に開示される薬学的組成物の作製を可能にし得る。治療用化合物のエステルは、化合物が本明細書中に開示されるアジュバントと組み合わせられる限り、炎症誘発反応をより効果的に阻害する方法で更に送達されてもよい。一実施形態において、治療用化合物のエチルエステルを形成するために、治療用化合物をエチルエステルと反応させてもよい。
【0058】
別の実施形態において、薬学的組成物は、先に述べたように、薬学的に許容される溶媒を含まない。この実施形態の一態様において、薬学的組成物は、治療用化合物及び薬学的に許容されるアジュバントを含むが、薬学的に許容される溶媒は含まない。
【0059】
薬学的組成物は、個体への習慣的な投与を可能にするのに十分な量で治療用化合物を含むことができる。この実施形態の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、例えば、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも35mg、少なくとも40mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも55mg、少なくとも60mg、少なくとも65mg、少なくとも70mg、少なくとも75mg、少なくとも80mg、少なくとも85mg、少なくとも90mg、少なくとも95mg、または少なくとも100mgの治療用化合物とすることができる。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、例えば、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1,000mg、少なくとも1,100mg、少なくとも1,200mg、少なくとも1,300mg、少なくとも1,400mg、または少なくとも1,500mgの治療用化合物とすることができる。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、例えば、約5mg~約100mg、約10mg~約100mg、約50mg~約150mg、約100mg~約250mg、約150mg~約350mg、約250mg~約500mg、約350mg~約600mg、約500mg~約750mg、約600mg~約900mg、約750mg~約1,000mg、約850mg~約1,200mg、または約1,000mg~約1,500mgの範囲であってもよい。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、例えば、約10mg~約250mg、約10mg~約500mg、約10mg~約750mg、約10mg~約1,000mg、約10mg~約1,500mg、約50mg~約250mg、約50mg~約500mg、約50mg~約750mg、約50mg~約1,000mg、約50mg~約1,500mg、約100mg~約250mg、約100mg~500mg、約100mg~約750mg、約100mg~約1,000mg、約100mg~約1,500mg、約200mg~約500mg、約200mg~約750mg、約200mg~約1,000mg、約200mg~約1,500mg、約5mg~約1,500mg、約5mg~約1,000mg、または約5mg~約250mgの範囲であってもよい。
【0060】
本明細書に記載の薬学的組成物は、薬学的に許容される溶媒を含み得る。溶媒は、別の固体、液体、またはガス状物(溶質)を溶解し、その結果溶液をもたらす液体、固体または気体である。本薬学的組成物に有用な溶媒には、薬学的に許容される極性非プロトン性溶媒、薬学的に許容される極性プロトン性溶媒、及び薬学的に許容される非極性溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される極性非プロトン性溶媒には、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される極性プロトン性溶媒には、酢酸、ギ酸、エタノール、n-ブタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1,2プロパンジオール、メタノール、グリセロール、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される非極性溶媒には、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、n-メチル-ピリリドン(n-methyl-pyrrilidone)(NMP)、及びジエチルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない
【0061】
本明細書に開示される薬学的組成物は、本明細書に開示される治療用化合物を溶解するのに十分な量で溶媒を含み得る。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、例えば、約90%(v/v)未満、約80%(v/v)未満、約70%(v/v)未満、約65%(v/v)未満、約60%(v/v)未満、約55%(v/v)未満、約50%(v/v)未満、約45%(v/v)未満、約40%(v/v)未満、約35%(v/v)未満、約30%(v/v)未満、約25%(v/v)未満、約20%(v/v)未満、約15%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、または約1%(v/v)未満の量で溶媒を含んでもよい。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、例えば、約1%(v/v)~90%(v/v)、約1%(v/v)~70%(v/v)、約1%(v/v)~60%(v/v)、約1%(v/v)~50%(v/v)、約1%(v/v)~40%(v/v)、約1%(v/v)~30%(v/v)、約1%(v/v)~20%(v/v)、約1%(v/v)~10%(v/v)、約2%(v/v)~50%(v/v)、約2%(v/v)~40%(v/v)、約2%(v/v)~30%(v/v)、約2%(v/v)~20%(v/v)、約2%(v/v)~10%(v/v)、約4%(v/v)~50%(v/v)、約4%(v/v)~40%(v/v)、約4%(v/v)~30%(v/v)、約4%(v/v)~20%(v/v)、約4%(v/v)~10%(v/v)、約6%(v/v)~50%(v/v)、約6%(v/v)~40%(v/v)、約6%(v/v)~30%(v/v)、約6%(v/v)~20%(v/v)、約6%(v/v)~10%(v/v)、約8%(v/v)~50%(v/v)、約8%(v/v)~40%(v/v)、約8%(v/v)~30%(v/v)、約8%(v/v)~20%(v/v)、約8%(v/v)~15%(v/v)、または約8%(v/v)~12%(v/v)の範囲の量で溶媒を含んでもよい。
【0062】
一実施形態において、溶媒は、薬学的に許容されるアルコールを含み得る。本明細書で使用される場合、「アルコール」という用語は、炭素原子が飽和している状態の、炭素原子に結合したヒドロキシル官能基(-OH)を含む有機分子を指す。この実施形態の態様では、アルコールは、例えば、C1-4アルコール、C2-4アルコール、C1-5アルコール、C1-7アルコール、C1-10アルコール、C1-15アルコール、またはC1-20アルコールであってもよい。この実施形態の他の態様において、アルコールは、例えば、一級アルコール、二級アルコール、または三級アルコールであってもよい。この実施形態の他の態様において、アルコールは、非環式アルコール、一価アルコール、多価アルコール(ポリオールまたは糖アルコールとしても知られる)、不飽和脂肪族アルコール、脂環式アルコール、またはこれらの組み合わせであり得る。一価アルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及び1-ヘキサデカノールが挙げられるが、これらに限定されない。多価アルコールの例には、グリコール、グリセロール、アラビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール(グルクチオール)、マンニトール、イノシトール、ラクチトール、ガラクチトール(イジトール)、及びイソマルトが挙げられるが、これらに限定されない。不飽和脂肪族アルコールの例には、プロパ-2-エン-1-オール、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール、及びプロパ-2-イン-1-オールが挙げられるが、これらに限定されない。脂環式アルコールの例としては、シクロヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキシル及び2-(2-プロピル)-5-メチル-シクロヘキサン-1-オールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
別の実施形態において、溶媒は、薬学的に許容されるアルコールと酸とのエステルを含んでもよい。適切な薬学的に許容されるアルコールは、本明細書に開示されるものを含む。適切な酸には、酢酸、酪酸、及びギ酸が挙げられるが、これらに限定されない。アルコールと酸とのエステルには、酢酸メチル、酪酸メチル、ギ酸メチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ギ酸エチル、酢酸プロピル、酪酸プロピル、ギ酸プロピル、酢酸ブチル、酪酸ブチル、ギ酸ブチル、酢酸イソブチル、酪酸イソブチル、ギ酸イソブチル、酢酸ペンチル、酪酸ペンチル、ギ酸ペンチル、及び1-ヘキサデシルアセテート、1-ヘキサデシルブチレート、及び1-ヘキサデシルホルメートを含むが、これらに限定されない。
【0064】
一実施形態において、溶媒は、薬学的に許容されるポリエチレングリコール(PEG)ポリマーを含んでもよい。ポリエチレンオキサイド(PEO)ポリマーまたはポリオキシエチレン(POE)ポリマーとしても知られているPEGポリマーは、エチレンオキサイドの重合によって調製され、100g/モル~10,000,000g/モルの広範囲の分子量にわたって市販されている。低分子質量を有するPEGポリマーは、液体または低融点の固体であり、一方高分子質量を有するPEGポリマーは固体である。PEGポリマーは、PEG 100、PEG 200、PEG 300、PEG 400、PEG 500、PEG 600、PEG 700、PEG 800、PEG 900、PEG 1000、PEG 1100、PEG 1200、PEG 1300、PEG 1400、PEG 1500、PEG 1600、PEG 1700、PEG 1800、PEG 1900、PEG 2000、PEG 2100、PEG 2200、PEG 2300、PEG 2400、PEG 2500、PEG 2600、PEG 2700、PEG 2800、PEG 2900、PEG 3000、PEG 3250、PEG 3350、PEG 3500、PEG 3750、PEG 4000、PEG 4250、PEG 4500、PEG 4750、PEG 5000、PEG 5500、PEG 6000、PEG 6500、PEG 7000、PEG 7500、PEG 8000、PEG 8500、PEG 9000、PEG 9500、PEG 10,000、PEG 11,000、PEG 12,000、PEG 13,000、PEG 14,000、PEG 15,000、PEG 16,000、PEG 17,000、PEG 18,000、PEG 19,000、またはPEG 20,000が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
別の実施形態において、溶媒は、薬学的に許容されるグリセリドを含んでもよい。グリセリドは置換グリセロールを含み、ここでは、グリセロールの1つ、2つ、または全ての3つのヒドロキシル基が、それぞれ脂肪酸を用いてエステル化されて、それぞれモノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドを生成する。これらの化合物において、グリセロールの各ヒドロキシル基は、異なる脂肪酸によってエステル化され得る。更に、グリセリドをアセチル化してアセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリド、及びアセチル化トリグリセリドを生成することができる。
【0066】
一実施形態において、溶媒は、薬学的に許容される固体溶媒を含んでもよい。固体溶媒は、本明細書に開示される薬学的組成物の固形投与製剤の製造において有用であり得る。典型的には、治療用化合物を溶解させるために固体溶媒は溶融される。薬学的に許容される固体溶媒には、メントール及び上記したPEGポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書の態様は、一部には、薬学的に許容されるアジュバントを開示する。アジュバントは、本明細書に開示される1つ以上の治療用化合物などの他の薬剤の効果を修正する薬理学的薬剤である。加えて、本明細書中に開示されるアジュバントは、本明細書に開示される治療用化合物を溶解し、アジュバント溶液を形成する溶媒として使用されてもよい。アジュバントは、炎症誘発反応をより効果的に阻害する方法で治療用化合物の送達を促進することができる。一実施形態において、アジュバントは、治療用化合物のマクロファージへの送達を容易にする。
【0068】
薬学的組成物は、溶液またはエマルジョンと混合するのに十分な量で薬学的に許容されるアジュバントを含むことができる。この実施形態の他の態様において、薬学的組成物は、例えば、少なくとも10%(v/v)、少なくとも20%(v/v)、少なくとも30%(v/v)、少なくとも35%(v/v)、少なくとも40%(v/v)、少なくとも45%(v/v)、少なくとも50%(v/v)、少なくとも55%(v/v)、少なくとも60%(v/v)、少なくとも65%(v/v)、少なくとも70%(v/v)、少なくとも75%(v/v)、少なくとも80%(v/v)、少なくとも85%(v/v)、少なくとも90%(v/v)、少なくとも95%(v/v)、または少なくとも99%(v/v)の量のアジュバントを含んでもよい。この実施形態の他の態様において、薬学的組成物は、例えば、約30%(v/v)~約99%(v/v)、約35%(v/v)~約99%(v/v)、約40%(v/v)~約99%(v/v)、約45%(v/v)~約99%(v/v)、約50%(v/v)~約99%(v/v)、約30%(v/v)~約98%(v/v)、約35%(v/v)~約98%(v/v)、約40%(v/v)~約98%(v/v)、約45%(v/v)~約98%(v/v)、約50%(v/v)~約98%(v/v)、約30%(v/v)~約95%(v/v)、約35%(v/v)~約95%(v/v)、約40%(v/v)~約95%(v/v)、約45%(v/v)~約95%(v/v)、または約50%(v/v)~約95%(v/v)の範囲の量でアジュバントを含んでもよい。この実施形態の更に他の態様において、薬学的組成物は、例えば、約70%(v/v)~約97%(v/v)、約75%(v/v)~約97%(v/v)、約80%(v/v)~約97%(v/v)、約85%(v/v)~約97%(v/v)、約88%(v/v)~約97%(v/v)、約89%(v/v)~約97%(v/v)、約90%(v/v)~約97%(v/v)、約75%(v/v)~約96%(v/v)、約80%(v/v)~約96%(v/v)、約85%(v/v)~約96%(v/v)、約88%(v/v)~約96%(v/v)、約89%(v/v)~約96%(v/v)、約90%(v/v)~約96%(v/v)、約75%(v/v)~約93%(v/v)、約80%(v/v)~約93%(v/v)、約85%(v/v)~約93%(v/v)、約88%(v/v)~約93%(v/v)、約89%(v/v)~約93%(v/v)、または約90%(v/v)~約93%(v/v)の範囲の量でアジュバントを含んでもよい。
【0069】
一実施形態において、アジュバントは、薬学的に許容される脂質であってもよい。脂質は、疎水性または両親媒性の小分子として広く定義することができる。一部の脂質の両親媒性の性質により、それらが水性環境中で小胞、リポソーム、または膜などの構造を形成することが可能となる。脂質の非限定的な例には、脂肪酸、グリセロ脂質(モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドのような)、リン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、糖脂質、及びポリケチドが挙げられる。本明細書に開示される薬学的組成物は、例えば、油、油性液体、脂肪、脂肪酸、ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪族アルコール、グリセリド(モノ-、ジ-またはトリ-グリセリド)、リン脂質、グリコールエステル、スクロースエステル、グリセロールオレエート誘導体、中鎖トリグリセリド、または、これらの混合物などの脂質を含むことができる。
【0070】
薬学的組成物において有用な脂質は、薬学的に許容される脂肪酸であってもよい。脂肪酸は、飽和または不飽和のいずれかであり得る長い非分岐炭化水素鎖を有するカルボン酸を含む。その結果、配置は、極性親水性末端を有する脂肪酸、及び水に不溶性である非極性疎水性末端を付与する。大部分の自然発生脂肪酸は、偶数個の炭素原子、典型的には4~24個の炭素原子の炭化水素鎖を有し、酸素、ハロゲン、窒素、及び硫黄を含有する官能基に結合することができる。合成または非天然の脂肪酸は、3~40個の炭素の炭素原子の任意の数の炭化水素鎖を有することができる。二重結合が存在する場合、シスまたはトランス幾何異性のいずれかの可能性があり、これは分子の分子構造に著しい影響を及ぼす。シス二重結合は脂肪酸鎖を屈曲させ、鎖内に二重結合が多くなるほど影響は顕著になる。大部分の自然発生脂肪酸はシス立体配置であるが、トランス型は一部の天然の、かつ部分的に水素化された脂肪及び油に存在する。脂肪酸の例には、カプリル酸(8:0)、ペラルゴン酸(9:0)、カプリン酸(10:0)、ウンデシル酸(11:0)、ラウリン酸(12:0)、トリデシル酸(13:0)、ミリスチン酸(14:0)、ミリストレイン酸(14:1)、ペンタデシル酸(15:0)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1)、サピエン酸(16:1)、マルガリン酸(17:0)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、エライジン酸(18:1)、バクセン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノール酸(linoelaidic acid)(18:2)、α-リノレン酸(18:3)、γ-リノレン酸(18:3)、ステアリドン酸(18:4)、ノナデシル酸(19:0)、アラキジン酸(20:0)、エイコセン酸(20:1)、ジホモ-γ-リノレン酸(20:3)、ミード酸(20:3)、アラキドン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5)、ヘンイコシル酸(21:0)、ベヘン酸(22:0)、エルカ酸(22:1)、ドコサヘキサエン酸(22:6)、トリコシル酸(23:0)、リグノセリン酸(24:0)、ネルボン酸(24:1)、ペンタコシル酸(25:0)、セロチン酸(26:0)、ヘプタコシル酸(27:0)、モンタン酸(28:0)、ノナコシル酸(29:0)、メリシン酸(30:0)、ヘナトリアコンチル酸(31:0)、ラクセル酸(32:0)、フィリン酸(33:0)、ゲダ酸(34:0)、セロプラスチン酸(35:0)、及びヘキサトリアコンチル酸(36:0)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
一実施形態において、アジュバントは、薬学的に許容される飽和または不飽和脂肪酸であってもよい。飽和または不飽和脂肪酸は、例えば、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも14個、少なくとも16個、少なくとも18個、少なくとも20個、少なくとも22個、少なくとも24個、少なくとも26個、少なくとも28個、または、少なくとも30個の炭素原子を含んでもよい。場合によっては、飽和または不飽和脂肪酸は、例えば、4~24個の炭素原子、6~24個の炭素原子、8~24個の炭素原子、10~24個の炭素原子、12~24個の炭素原子、14~24個の炭素原子、または16~24個の炭素原子、4~22個の炭素原子、6~22個の炭素原子、8~22個の炭素原子、10~22個の炭素原子、12~22個の炭素原子、14~22個の炭素原子、または16~22個の炭素原子、4~20個の炭素原子、6~20個の炭素原子、8~20個の炭素原子、10~20個の炭素原子、12~20個の炭素原子、14~20個の炭素原子、または16~20個の炭素原子を含む。不飽和の場合、脂肪酸は、例えば、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、または6個以上の二重結合を有することができる。
【0072】
薬学的に許容される飽和または不飽和脂肪酸は、室温で液体であり得る。脂肪酸の融点は、主として炭化水素鎖の飽和/不飽和度によって決定される。この実施形態の態様において、飽和または不飽和脂肪酸は、例えば20℃以下、15℃以下、10℃以下、5℃以下、0℃以下、-5℃以下、-10℃以下、-15℃以下、または-20℃以下の融点温度を有する。この実施形態の他の態様では、飽和または不飽和脂肪酸は、例えば、約-20℃~約20℃、約-20℃~約18℃、約-20℃~約16℃、約-20℃~約12℃、約-20℃~約8℃、約-20℃~約4℃、約-20℃~約0℃、約-15℃~約20℃、約-15℃~約18℃、約-15℃~約16℃、約-15℃~約12℃、約-15℃~約8℃、約-15℃~約4℃、または約-15℃~約0℃の範囲の融点温度を有する。
【0073】
別の実施形態において、アジュバントは、1種の薬学的に許容される脂肪酸を含んでもよい。アジュバントは、例えば、パルミチン酸のみ、ステアリン酸のみ、オレイン酸のみ、リノール酸のみ、またはリノレン酸のみを含んでもよい。あるいは、アジュバントは、複数の異なる薬学的に許容される脂肪酸を含んでもよい。アジュバントは、例えば、2つ以上の異なる脂肪酸、3つ以上の異なる脂肪酸、4つ以上の異なる脂肪酸、5つ以上の異なる脂肪酸、または6つ以上の異なる脂肪酸を含んでもよい。
【0074】
この実施形態の他の態様において、アジュバントは、少なくともパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及び/またはリノレン酸、ならびにそれらの任意の組み合わせを含む、2つ以上の異なる薬学的に許容される脂肪酸を含むことができる。アジュバントは、例えば、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、または少なくとも20:1のパルミチン酸及び/またはステアリン酸ならびに/もしくはオレイン酸:リノレン酸及び/またはリノール酸の比を含むことができる。いくつかの例では、アジュバントは、例えば、約1:1~約20:1、約2:1~約15:1、約4:1~約12:1、または約6:1~約10:1の範囲のパルミチン酸及び/またはステアリン酸ならびに/もしくはオレイン酸:リノレン酸及び/またはリノール酸の比を含むことができる。
【0075】
この実施形態の他の態様において、アジュバントは、少なくともパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール及び/またはリノレン酸、ならびにそれらの任意の組み合わせを含む、4つ以上の異なる薬学的に許容される脂肪酸を含むことができる。この実施形態の他の態様では、アジュバントは、例えば、10:10:1:1、9:9:1:1、8:8:1:1、7:7:1:1、6:6:1:1、5:5:1:1、4:4:1:1、3:3:1:1、2:2:1:1、または1:1:1:1のパルミチン酸:ステアリン酸:リノレン酸:リノール酸の比を含むことができる。この実施形態の他の態様では、アジュバントは、例えば、約10:10:1:1~約6:6:1:1、約8:8:1:1~約4:4:1:1、または、約5:5:1:1~約1:1:1:1の範囲のパルミチン酸:ステアリン酸:リノレン酸:リノール酸の比を含むことができる。
【0076】
薬学的組成物において有用な脂質は、薬学的に許容されるオメガ脂肪酸であってもよい。オメガ脂肪酸の非限定的な例には、オメガ-3、オメガ-6、及びオメガ-9が挙げられる。オメガ-3脂肪酸(n-3脂肪酸またはω-3脂肪酸としても知られる)は、共通してn-3位に最後の炭素-炭素二重結合、すなわち、脂肪酸のメチル末端から数えて3番目の結合を有する必須不飽和脂肪酸の一群である。オメガ-3脂肪酸は、正常な代謝に不可欠であり、人体内で合成できないため、「必須」脂肪酸である。オメガ-3脂肪酸は、ヘキサデカトリエン酸(16:3)、α-リノレン酸(18:3)、ステアリドン酸(18:4)、エイコサトリエン酸(20:3)、エイコサテトラエン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5)、ヘネイコサペンタエン酸(21:5)、ドコサペンタエン酸(22:5)、クルパノドン酸(22:5)、ドコサヘキサエン酸(22:6)、テトラコサペンタエン酸(24:5)、及びテトラコサヘキサエン酸(ナイシン酸)(24:6)を挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
オメガ-6脂肪酸(n-6脂肪酸またはω-6脂肪酸としても知られる)は、共通してn-6位に最後の炭素-炭素二重結合、すなわち、脂肪酸のメチル末端から数えて6番目の結合を有する不飽和脂肪酸の一群である。オメガ-6脂肪酸には、リノ-ル酸(18:2)、ガンマ-リノレン酸(18:3)、カレンジン酸(18:3)、エイコサジエン酸(20:2)、ジホモ-ガンマ-リノレン酸(20:3)、アラキドン酸(20:4)、ドコサジエン酸(22:2)、アドレン酸(22:4)、ドコサペンタエン酸(22:5)、テトラコサテトラエン酸(24:4)、及びテトラコサペンタエン酸(24:5)を含むが、これらに限定されない。オメガ-9脂肪酸(n-9脂肪酸またはω-9脂肪酸としても知られる)は、共通してn-9位に最後の炭素-炭素二重結合、すなわち、脂肪酸のメチル末端から数えて9番目の結合を有する不飽和脂肪酸の一群である。オメガ-9脂肪酸には、オレイン酸(18:1)、エライジン酸(18:1)、エイコセン酸(20:1)、ミ-ド酸(20:3)、エルカ酸(22:1)、及びネルボン酸(24:1)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
薬学的組成物において有用な脂質は、薬学的に許容される油であってもよい。油には、例えば約20℃などの通常の室温で液体である任意の脂肪酸が含まれる。対照的に、脂肪は、例えば約20℃などの通常の室温で固体である任意の脂肪酸が含まれる。本明細書に開示される薬学的組成物において有用な脂質として適切な油は、天然油または植物油であり得る。適切な天然油の例には、鉱油、トリアセチン、オレイン酸エチル、水素化天然油、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適切な植物油の例には、アーモンドオイル、ラッカセイ油、アボカド油、キャノーラ油、ヒマシ油、ココナッツオイル、コーン油、綿実油、グレープシードオイル、ヘーゼルナッツ油、大麻油、アマニ油(フラックスシード)、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、菜種油、コメヌカ油、ベニバナ油、胡麻油、大豆油、ダイズ油、ヒマワリ油、クルミ油、小麦胚芽油、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの油の各々は、当業者によって十分に認識されている多くの供給元から市販されている。
【0079】
油は、典型的には様々な脂肪酸の混合物である。例えば、アブラナ(brassica napus)の種子から得られるナタネ油は、約2:1の比率でオメガ-6脂肪酸とオメガ-3脂肪酸の両方を含む。別の例として、亜麻(linum usitatissimum)の種子から得られるアマニ油は、約7%のパルミチン酸、約3.4~4.6%のステアリン酸、約18.5~22.6%のオレイン酸、約14.2~17%のリノ-ル酸、及び約51.9~55.2%のα-リノレン酸を含む。場合によっては、薬学的組成物は、少なくとも2つの異なる脂肪酸、少なくとも3つの異なる脂肪酸、少なくとも4つの異なる脂肪酸、少なくとも5つの異なる脂肪酸、または少なくとも6つの異なる脂肪酸を含む油を含む。
【0080】
薬学的組成物において有用な脂質は、薬学的に許容されるグリセロ脂質であってもよい。グリセロ脂質は、主に一、二、及び三置換グリセロ-ルからなる。グリセロ脂質の1つの群はグリセリドであり、ここでは、グリセロールの1つ、2つ、または全ての3つのヒドロキシル基が、それぞれ脂肪酸を用いてエステル化されて、それぞれモノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドを生成する。これらの化合物において、グリセロールの各ヒドロキシル基は、異なる脂肪酸によってエステル化され得る。更に、グリセリドをアセチル化してアセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリド、及びアセチル化トリグリセリドを生成することができる。グリセロ脂質の1つの群はグリセリドであり、グリセロールの1つ、2つ、または3つ全てのヒドロキシル基が、グリコシド結合を介して結合した糖残基を有する。
【0081】
場合によっては、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される安定剤を含んでもよい。安定剤は、使用される特定の溶媒との不必要な反応の結果として生じ得る治療用化合物のエステルの形成を低減、または排除する。安定剤には、水、脂肪酸成分と酢酸とを含む犠牲酸、酢酸エチル、酢酸ナトリウム/酢酸(E262)、モノグリセリド、アセチル化モノグリセリド、ジグリセリド、アセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリド、脂肪酸、及び脂肪酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
一実施形態において、薬学的に許容される安定化剤は、薬学的に許容される乳化剤を含んでもよい。乳化剤(エマルジェントとしても知られる)は、その動力学的安定性を増加させることによって、液体分散相及び液体連続相を含むエマルジョンを安定化させる物質である。したがって、本明細書に開示される薬学的組成物を作製するために使用される溶媒及びアジュバントが通常は不混和性である状況において、本明細書に開示される乳化剤は、均質かつ安定なエマルジョンを生成するために使用される。乳化剤には、界面活性剤、多糖類、レクチン、及びリン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
この実施形態の一態様において、乳化剤は界面活性剤を含むことができる。本明細書で使用される場合、「界面活性剤」という用語は、天然または合成の両親媒性化合物を指す。界面活性剤は、非イオン性、双性イオン性、またはイオン性であり得る。界面活性剤の非限定的な例には、ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)20)、ポリソルベート40(TWEEN(登録商標)40)、ポリソルベート60(TWEEN(登録商標)60)、ポリソルベ-ト61(TWEEN(登録商標)61)、ポリソルベート65(TWEEN(登録商標)65)、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)、ポリソルベート81(TWEEN(登録商標)81)などのポリソルベート、ポロキサマー124(PLURONIC(登録商標)L44)、ポロキサマー181(PLURONIC(登録商標)L61)、ポロキサマー182(PLURONIC(登録商標)L62)、ポロキサマー184(PLURONIC(登録商標)L64)、ポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)F68)、ポロキサマー237(PLURONIC(登録商標)F87)、ポロキサマー338(PLURONIC(登録商標)L108)、ポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127)などのポロキサマー(ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー)、BRIJ(登録商標)30、及びBRIJ(登録商標)35などのポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、2-ドデコキシエタノール(LUBROL(登録商標)-PX)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(TRITON(登録商標)X-100)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO)、ショ糖モノラウレート、及びコール酸ナトリウムが挙げられる。界面活性剤賦形剤の他の非限定的な例は、例えば、Ansel,上記,(1999)、Gennaro,上記,(2000)、Hardman,上記,(2001)、及びRowe,上記,(2003)に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0084】
この実施形態の一態様において、乳化剤は多糖類を含むことができる。多糖類の非限定的な例には、グアガム、寒天、アルギン酸塩、カルジーン、デキストラン(デキストラン1K、デキストラン4K、デキストラン40K、デキストラン60K、及びデキストラン70Kなど)、デキストリン、グリコーゲン、イヌリン、デンプン、デンプン誘導体(ヒドロキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシブチルスターチ、及びヒドロキシペンチルスターチなど)、ヘタスターチ、セルロース、FICOLL、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロ-ス(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(NEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))、ポリ酢酸ビニル(PVA)、PVP12(KOLLIDON(登録商標)12)、PVP17(KOLLIDON(登録商標)17)、PVP25(KOLLIDON(登録商標)25)、PVP30(KOLLIDON(登録商標)30)、PVP90(KOLLIDON(登録商標)90)のような、18以下のK値、18超または95以下のK値、または95超のK値を有する、ポビドンとしても知られるポリビニルピロリドン(PVP)、及びポリエチレンイミン(PEI)が挙げられる。
【0085】
この実施形態の一態様において、乳化剤はレクチンを含むことができる。レクチンは、それらの糖部分に対して高度に特異的である糖結合タンパク質である。レクチンは、それらが結合する糖部分に従って分類することができ、また、マンノス結合レクチン、ガラクトース/N-アセチルガラクトサミン結合レクチン、N-アセチルグルキソサミン結合レクチン(N-acetylgluxosamine-binding lectins)、N-アセチルノイラミン結合レクチン、N-アセチルノイラミン酸結合レクチン、及びフコース結合レクチンが挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤の非限定的な例としては、コンカナバリンA、レンズマメレクチン、マツユキソウ(snowdrop)レクチン、ロイン、ピ-ナッツ凝集素(agglutinin)、ジャカイン、ヘアリーベッチ(hairy vetch)レクチン、コムギ胚芽凝集素、エルダーベリー(elderberry)レクチン、イヌエンジュ(Maackia anurensis)白血球凝集素(leukoagglutinin)、イヌエンジュ赤血球凝集素、ハリエニシダ(Ulex europaeus)凝集素、及びヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)レクチンが挙げられる。
【0086】
この実施形態の一態様において、乳化剤は、リン脂質を含むことができる。リン脂質の構造は、一般に、疎水性尾部及び親水性頭部を含み、性質上両親媒性である。ほとんどのリン脂質は、ジグリセリド、リン酸基、及びコリンなどの単純な有機分子を含むが、この規則の1つの例外がスフィンゴミエリンであり、スフィンゴミエリンは、グリセロ-ルの代わりにスフィンゴシンから誘導される。リン脂質には、ジアシルグリセリド及びホスホスフィンゴリピッドが挙げられるが、これらに限定されない。ジアシルグリセリドの非限定的な例には、ホスファチジン酸(ホスファチデート)(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)(PE)、ホスファチジルコリン(レシチン)(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、及びホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールホスフェート(PIP)、ファチジルイノシトールビスホスフェート(PIP2)、及びホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)を含むホスホイノシチドが含まれる。ホスホスフィンゴ脂質の非限定的な例には、セラミドホスホリルコリン(スフィンゴミエリン)(SPH)、セラミドホスホリルエタノールアミン(スフィンゴミエリン)(Cer-PE)、及びセラミドホスホリルグリセロールが挙げられる。
【0087】
一実施形態において、薬学的に許容される安定剤は、薬学的に許容される乳化剤を含まない。
【0088】
別の実施形態において、薬学的組成物は、薬学的に許容される乳化剤を含まない。
【0089】
薬学的組成物は、炎症誘発性反応をより効果的に阻害する方法で、治療用化合物(複数可)を細胞型、組織、器官または身体の領域により効果的に送達させ、またはそれらを標的として狙う送達系として作用することができる。この阻害は、慢性炎症の改善された治療を結果としてもたらす。例えば、薬学的組成物は、本明細書に開示される治療用化合物のマクロファージへの送達を容易にすることができる。この選択的生体内分布を達成する1つの可能な機序は、本明細書に開示される薬学的組成物が、カイロミクロンの活性を活用するように設計可能であるということである。カイロミクロンは、75nm~1,200nmの直径を有する比較的大きなリポタンパク質粒子である。カイロミクロンは、トリグリセリド(85~92%)、リン脂質(6~12%)、コレステロール(1~3%)、アポリポタンパク質(1~2%)を含み、腸から体内の他の場所に食物脂質を輸送する。カイロミクロンは、リポタンパク質の5つの主要なグループのうちの1つであり、他のものは、脂質及びコレステロールを血流の水性溶液中で移動させるVLDL、IDL、低比重リポタンパク質(LDL)、高比重リポタンパク質(HDL)である。
【0090】
消化中に、脂肪酸及びコレステロールは、胃腸管内でのリパーゼを含む膵液の作用による処理及び胆汁酸での乳化を受けて、ミセルを生成する。これらのミセルは、腸細胞として知られる小腸の吸収細胞によって、脂質の遊離脂肪酸としての吸収を可能にする。腸細胞内に一旦入ると、トリグリセリド及びコレステロールは、未成熟カイロミクロンに組み立てられる。未成熟カイロミクロンは、主として、トリグリセリド(85%)から構成され、いくつかのコレステロール及びコレステロールエステルを含有する。主なアポリポタンパク質成分は、アポリポタンパク質B-48(APOB48)である。これらの未成熟カイロミクロンは、エンドサイトーシスによって、腸細胞から乳糜管、すなわち小腸の絨毛に始まるリンパ管まで放出され、次いで胸管の鎖骨下静脈との接合部において血流中に分泌される。
【0091】
リンパ及び血液中を循環する間に、カイロミクロンは成分をHDLと交換する。HDLは、アポリポタンパク質C-II(APOC2)及びアポリポタンパク質E(APOE)を未成熟カイロミクロンに提供し、したがって、これを成熟カイロミクロン(多くの場合、簡単に「カイロミクロン」と称される)に変換する。APOC2は、リポタンパク質リパーゼ(LPL)活性に対する補因子である。トリグリセリド貯蔵が分配されると、カイロミクロンは、APOC2をHDLに戻し(しかし、APOEは保持する)、したがって、今やわずか30~50nmのカイロミクロンレムナントとなる。APOB48及びAPOEは、エンドサイトーシス及びリポタンパク質(VLDL、LDL、及びHDL)への分解に関して肝臓においてカイロミクロンレムナントを特定するために重要である。これらのリポタンパク質は、例えば肝細胞、脂肪細胞及びマクロファージを含むコンピテント細胞によって、加工かつ貯蔵される。したがって、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本明細書に開示される薬学的組成物の経口投与の際に、これらは胃腸管内にある間にミセルに加工され、腸細胞によって吸収され、また未成熟カイロミクロンに組み立てられ、これがカイロミクロンレムナントに結合したままとどまり、肝臓に取り込まれ、最終的にマクロファージに搭載される。
【0092】
本明細書の態様は、一部には、本明細書に開示される薬学的組成物を調製する方法を開示する。本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される薬学的に許容されるアジュバントを、本明細書に開示される治療用化合物と、治療用化合物が薬学的に許容されるアジュバント中に溶解することを可能にする条件下で接触させ、これにより、本明細書に開示される薬学的組成物を形成するステップを含む。
【0093】
本明細書の他の態様は、薬学的組成物を調製する方法を含む。方法は、a)薬学的に許容される溶媒を、治療用化合物と、治療用化合物が薬学的に許容される溶媒中に溶解することを可能にする条件下で接触させ、これにより溶液を形成するステップと、b)ステップ(a)で形成された溶液を、本明細書に開示される薬学的に許容されるアジュバントと、薬学的組成物の形成を可能にする条件下で接触させるステップと、を含むことができる。調製する方法は、薬学的に許容される溶媒を薬学的組成物から除去するステップ(c)を更に含んでもよい。
【0094】
方法のステップ(a)において薬学的に許容される溶媒と接触される治療用化合物の量は、広範に変化してもよい。使用される治療用化合物の量に影響を及ぼし得る因子としては、とりわけ、薬学的組成物中で望まれる治療用化合物の最終量、溶液中の治療用化合物の所望の濃度、治療用化合物の疎水性、治療用化合物の疎油性、接触ステップ(a)が行われる温度、及び接触ステップ(a)が行われる時間が挙げられる。
【0095】
方法のステップ(a)で使用される薬学的に許容される溶媒の容量もまた、広範囲にわたって変化してもよい。使用される薬学的に許容される溶媒の容量に影響を及ぼし得る因子としては、とりわけ、所望される薬学的組成物の最終量、溶液中の治療用化合物の所望される濃度、治療用化合物の疎水性、及び治療用化合物の疎油性が挙げられる。
【0096】
この実施形態の態様において、ステップ(a)で溶媒と接触される治療用化合物の量は、例えば、少なくとも10mg、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも70mg、少なくとも80mg、少なくとも90mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1,000mg、少なくとも1,100mg、少なくとも1,200mg、少なくとも1,300mg、少なくとも1,400mg、または少なくとも1,500mgであってもよい。この実施形態の他の態様において、ステップ(a)で溶媒と接触される治療用化合物の量は、例えば、約10mg~約100mg、約50mg~約150mg、約100mg~約250mg、約150mg~350mg、約250mg~約500mg、約350mg~約600mg、約500mg~約750mg、約600mg~約900mg、約750mg~約1,000mg、約850mg~約1,200mg、または約1,000mg~約1,500mgの範囲であってもよい。この実施形態の他の態様において、ステップ(a)で溶媒中に溶解される治療用化合物の量は、例えば、約10mg~約250mg、約10mg~約500mg、約10mg~約750mg、約10mg~1,000mg、約10mg~約1,500mg、約50mg~約250mg、約50mg~約500mg、約50mg~約750mg、約50mg~1,000mg、約50mg~約1,500mg、約100mg~約250mg、約100mg~約500mg、約100mg~約750mg、約100mg~1,000mg、約100mg~約1,500mg、約200mg~約500mg、約200mg~約750mg、約200mg~1,000mg、または約200mg~約1,500mgの範囲であってもよい。
【0097】
ステップ(a)は、治療用化合物が薬学的に許容される溶媒中で完全に溶解することを可能にするために、室温で行われてもよい。しかしながら、本方法の他の実施形態において、ステップ(a)は、室温を超える温度、例えば21℃超、25℃超、30℃超、35℃超、または37℃超で行われてもよい。特定の場合には、ステップ(a)は、治療用化合物が溶媒中で完全に溶解することを可能にするために、室温より低い温度で行われてもよい。しかしながら、本方法の他の実施形態において、ステップ(a)は、室温よりも低い温度、例えば10℃未満、5℃超、0℃超、-10℃超、または-20℃超で行われてもよい。ステップ(a)における接触することは、治療用化合物と薬学的に許容される溶媒とを、例えば、攪拌、転倒、音波処理、またはボルテックスによって混合することを含み得る。混合は、治療用化合物が溶媒中で完全に溶解されるまで、例えば、少なくとも1秒、少なくとも5秒、少なくとも10秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも45秒、少なくとも60秒、またはそれ以上にわたって行うことができる。
【0098】
治療用化合物の溶液中の濃度は、広範囲にわたって変化してもよい。例として、治療用化合物の濃度は、少なくとも0.00001mg/mL、少なくとも0.0001mg/mL、少なくとも0.001mg/mL、少なくとも0.01mg/mL、少なくとも0.1mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも100mg/mL、少なくとも200mg/mL、少なくとも500mg/mL、少なくとも700mg/mL、少なくとも1,000mg/mL、または少なくとも1,200mg/mLであってもよい。治療用化合物の濃度は、例えば、最大で1,000mg/mL、最大で1,100mg/mL、最大で1,200mg/mL、最大で1,300mg/mL、最大で1,400mg/mL、最大で1,500mg/mL、最大で2,000mg/mL、最大で2,000mg/mL、または最大で3,000mg/mLであってもよい。場合によっては、治療用化合物の濃度は、例えば、約0.00001mg/mL~約3,000mg/mL、約0.0001mg/mL~約3,000mg/mL、約0.01mg/mL~約3,000mg/mL、約0.1mg/mL~約3,000mg/mL、約1mg/mL~約3,000mg/mL、約250mg/mL~約3,000mg/mL、約500mg/mL~約3,000mg/mL、約750mg/mL~約3,000mg/mL、約1,000mg/mL~約3,000mg/mL、約100mg/mL~約2,000mg/mL、約250mg/mL~約2,000mg/mL、約500mg/mL~約2,000mg/mL、約750mg/mL~約2,000mg/mL、約1,000mg/mL~約2,000mg/mL、約100mg/mL~約1,500mg/mL、約250mg/mL~約1,500mg/mL、約500mg/mL~約1,500mg/mL、約750mg/mL~約1,500mg/mL、約1,000mg/mL~約1,500mg/mL、約100mg/mL~約1,200mg/mL、約250mg/mL~約1,200mg/mL、約500mg/mL~約1,200mg/mL、約750mg/mL~約1,200mg/mL、約1,000mg/mL~約1,200mg/mL、約100mg/mL~約1,000mg/mL、約250mg/mL~約1,000mg/mL、約500mg/mL~約1,000mg/mL、約750mg/mL~約1,000mg/mL、約100mg/mL~約750mg/mL、約250mg/mL~約750mg/mL、約500mg/mL~約750mg/mL、約100mg/ml~約500mg/mL、約250mg/mL~約500mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.0001mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.001mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.01mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.1mg/mL、約0.00001mg/mL~約1mg/mL、約0.001mg/mL~約0.01mg/mL、約0.001mg/mL~約0.1mg/mL、約0.001mg/mL~約1mg/mL、約0.001mg/mL~約10mg/mL、または約0.001mg/mL~約100mg/mLの範囲であってもよい。
【0099】
方法のステップ(b)で使用される薬学的に許容されるアジュバントの容量は、所望の任意の容量であってもよい。使用される薬学的に許容されるアジュバントの容量を決定するために使用される因子としては、所望される薬学的組成物の最終量、薬学的組成物中の治療用化合物の所望される濃度、溶媒:アジュバントの比、及び溶媒及びアジュバントの混和性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
この実施形態の態様において、溶液:アジュバントの比は、例えば、少なくとも5:1、少なくとも4:1、少なくとも3:1、少なくとも2:1、少なくとも0:1、少なくとも1:1、少なくとも1:2、少なくとも1:3、少なくとも1:4、少なくとも1:5、少なくとも1:6、少なくとも1:7、少なくとも1:8、少なくとも1:9、少なくとも1:10、少なくとも1:15、少なくとも1:20、または少なくとも1:25であってもよい。この実施形態の他の態様において、溶液:アジュバントの比は、例えば、約5:1~約1:25、約4:1~約1:25、約3:1~約1:25、約2:1~約1:25、約0:1~約1:25、約1:1~約1:25、約1:2~約1:25、約1:3~約1:25、約1:4~約1:25、約1:5~約1:25、約5:1~約1:20、約4:1~約1:20、約3:1~約1:20、約2:1~約1:20、約0:1~約1:20、約1:1~約1:20、約1:2~約1:20、約1:3~約1:20、約1:4~約1:20、約1:5~約1:20、約5:1~約1:15、約4:1~約1:15、約3:1~約1:15、約0:1~約1:15、約2:1~約1:15、約1:1~約1:15、約1:2~約1:15、約1:3~約1:15、約1:4~約1:15、約1:5~約1:15、約5:1~約1:12、約4:1~約1:12、約3:1~約1:12、約2:1~約1:12、約0:1~約1:12、約1:1~約1:12、約1:2~約1:12、約1:3~約1:12、約1:4~約1:12、約1:5~約1:12、約1:6~約1:12、約1:7~約1:12、約1:8~約1:12、約5:1~約1:10、約4:1~約1:10、約3:1~約1:10、約2:1~約1:10、約0:1~約1:10、約1:1~約1:10、約1:2~約1:10、約1:3~約1:10、約1:4~約1:10、約1:5~約1:10、約1:6~約1:10、約1:7~約1:10、または約1:8~約1:10の範囲であってもよい。
【0101】
ステップ(b)は、治療用化合物を含む溶液が薬学的組成物を形成するのを可能にするために、室温で行うことができる。しかしながら、本方法の他の実施形態において、ステップ(b)は、室温を超える温度、例えば21℃超、25℃超、30℃超、35℃超、または37℃超で行われてもよい。特定の場合には、ステップ(b)は、治療用化合物が薬学的に許容される溶媒中で完全に溶解することを可能にするために、室温より低い温度で行われてもよい。しかしながら、本方法の他の実施形態において、ステップ(b)は、室温よりも低い温度、例えば10℃未満、5℃超、0℃超、-10℃超、または-20℃超で行われてもよい。ステップ(b)における接触することは、溶液と薬学的に許容されるアジュバントとを、例えば、攪拌、転倒、音波処理、またはボルテックスによって混合することを含み得る。混合は、薬学的組成物が形成されるまで、例えば、少なくとも1秒、少なくとも5秒、少なくとも10秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも45秒、少なくとも60秒、またはそれ以上にわたって行うことができる。
【0102】
ステップ(c)において、薬学的組成物からの溶媒の除去は、蒸発、透析、蒸留、凍結乾燥、及び濾過が挙げられるが、これらに限定されない当該技術分野において既知の様々な手順のうちの1つを使用して達成することができる。これらの除去手順は、周囲大気の条件下、低圧下、または真空下で行われてもよい。
【0103】
一実施形態において、ステップ(c)は、薬学的に許容される溶媒の本明細書に開示される薬学的組成物からの完全な除去を結果としてもたらすことができる。この実施形態の態様において、ステップ(c)は、例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の薬学的に許容される溶媒の本明細書に開示される薬学的組成物からの除去を結果としてもたらすことができる。
【0104】
ステップ(c)は、本明細書に開示される薬学的に許容される溶媒の蒸発を可能にする温度で行われ、したがって、蒸発温度は溶媒依存的である。本明細書に開示される溶媒の蒸発温度に影響を及ぼす因子には、使用される特定の溶媒、存在する溶媒の量、存在する特定の治療用化合物、存在する特定のアジュバント、存在する治療用化合物の安定性、存在する治療用化合物の反応性、使用される特定の大気圧、蒸発を完了するために望ましい時間が挙げられるが、これらに限定されない。概して、薬学的組成物は、蒸発ステップが大気圧、例えば1気圧で行われる場合、加熱を必要とするであろう。しかしながら、高真空条件下では、蒸発ステップは、周囲温度より低い温度で、例えば22℃未満で行われてもよい。
【0105】
一実施形態において、溶媒の本明細書に開示される薬学的組成物からの除去は、環境大気圧でかつ周囲温度よりも高い温度で行われてもよい。この実施形態の態様において、溶媒の薬学的組成物からの除去は、環境大気圧で、かつ、例えば25℃超、30℃超、35℃超、40℃超、45℃超、50℃超、55℃超、60℃超、65℃超、70℃超、80℃超、または85℃超の温度で行われてもよい。この実施形態の他の態様において、溶媒の薬学的組成物からの除去は、環境大気圧で、かつ、例えば約25℃~約100℃、約25℃~約95℃、約25℃~約90℃、約25℃~約85℃、約25℃~約80℃、約25℃~約75℃、約25℃~約70℃、約25℃~約65℃、または約25℃~約60℃の範囲の温度で行われてもよい。
【0106】
別の実施形態において、溶媒の薬学的組成物からの除去は、真空下かつ周囲温度よりも高い温度で行われてもよい。この実施形態の態様において、溶媒の薬学的組成物からの除去は、真空下で、かつ、例えば20℃未満、18℃未満、16℃未満、14℃未満、12℃未満、10℃未満、8℃未満、6℃未満、4℃未満、2℃未満、または0℃未満の温度で行われてもよい。この実施形態の他の態様において、溶媒の薬学的組成物からの除去は、真空下で、かつ、例えば約-20℃~約20℃、-20℃~約18℃、約-20℃~約16℃、約-20℃~約14℃、約-20℃~約12℃、約-20℃~約10℃、約-20℃~約8℃、約-20℃~約6℃、約-20℃~約4℃、約-20℃~約2℃、約-20℃~約0℃、約-15℃~約20℃、約-10℃~約20℃、約-5℃~約20℃、約0℃~約20℃、約-10℃~約20℃、約-10℃~約18℃、約-10℃~約16℃、約-10℃~約14℃、約-10℃~約12℃、約-10℃~約10℃、約-10℃~約8℃、約-10℃~約6℃、約-10℃~約4℃、約-10℃~約2℃、または約-10℃~約0℃の範囲の温度で行われてもよい。
【0107】
本明細書に開示される薬学的組成物中の治療用化合物の最終濃度は、広範囲にわたって変化してもよく、一般的に治療有効量として特徴付けることができる。いくつかの態様において、薬学的組成物中の治療用化合物の最終濃度は、例えば、少なくとも0.00001mg/mL、少なくとも0.0001mg/mL、少なくとも0.001mg/mL、少なくとも0.01mg/mL、少なくとも0.1mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも100mg/mL、少なくとも200mg/mL、少なくとも500mg/mL、少なくとも700mg/mL、少なくとも1,000mg/mL、または少なくとも1,200mg/mLであってもよい。この実施形態の他の態様において、溶液中の本明細書に開示される治療用化合物の濃度は、例えば、最大で1,000mg/mL、最大で1,100mg/mL、最大で1,200mg/mL、最大で1,300mg/mL、最大で1,400mg/mL、最大で1,500mg/mL、最大で2,000mg/mL、最大で2,000mg/mL、または最大で3,000mg/mLであってもよい。この実施形態の他の態様において、薬学的組成物中の治療用化合物の最終濃度は、例えば、約0.00001mg/mL~約3,000mg/mL、約0.0001mg/mL~約3,000mg/mL、約0.01mg/mL~約3,000mg/mL、約0.1mg/mL~約3,000mg/mL、約1mg/mL~約3,000mg/mL、約250mg/mL~約3,000mg/mL、約500mg/mL~約3,000mg/mL、約750mg/mL~約3,000mg/mL、約1,000mg/mL~約3,000mg/mL、約100mg/mL~約2,000mg/mL、約250mg/mL~約2,000mg/mL、約500mg/mL~約2,000mg/mL、約750mg/mL~約2,000mg/mL、約1,000mg/mL~約2,000mg/mL、約100mg/mL~約1,500mg/mL、約250mg/mL~約1,500mg/mL、約500mg/mL~約1,500mg/mL、約750mg/mL~約1,500mg/mL、約1,000mg/mL~約1,500mg/mL、約100mg/mL~約1,200mg/mL、約250mg/mL~約1,200mg/mL、約500mg/mL~約1,200mg/mL、約750mg/mL~約1,200mg/mL、約1,000mg/mL~約1,200mg/mL、約100mg/mL~約1,000mg/mL、約250mg/mL~約1,000mg/mL、約500mg/mL~約1,000mg/mL、約750mg/mL~約1,000mg/mL、約100mg/mL~約750mg/mL、約250mg/mL~約750mg/mL、約500mg/mL~約750mg/mL、約100mg/ml~約500mg/mL、約250mg/mL~約500mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.0001mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.001mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.01mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.1mg/mL、約0.00001mg/mL~約1mg/mL、約0.001mg/mL~約0.01mg/mL、約0.001mg/mL~約0.1mg/mL、約0.001mg/mL~約1mg/mL、約0.001mg/mL~約10mg/mL、または約0.001mg/mL~約100mg/mLの範囲であってもよい。
【0108】
本明細書に開示される方法を使用して生成される薬学的組成物は、液体製剤または固形もしくは半固形製剤であり得る。液体製剤は、所望の温度範囲において液体の状態のままである他の脂肪酸の種々の脂質様油を使用して形成することができる。一実施形態において、本明細書に開示される薬学的組成物は、室温で液体である。この実施形態の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、例えば約25℃以上、約23℃以上、約21℃以上、約19℃以上、約17℃以上、約15℃以上、約12℃以上、約10℃以上、約8℃以上、約6℃以上、約4℃以上、または約0℃以上の温度で液体であるように製剤化することができる。
【0109】
固形もしくは半固形製剤は、種々のアジュバント様脂肪酸の異なる融点温度を活用することができる。固形もしくは半固形剤形の形成は、本明細書に開示される薬学的組成物を含む脂肪酸の対応の濃度を修正することによるものであり得る。例えば、リノレン酸は、約-11℃の融点温度(T)を有し、リノール酸は、約-5℃のTを有し、オレイン酸は、約16℃のTを有し、パルミチン酸は、約61~62℃のTを有し、またステアリン酸は、約67~72℃のTを有する。パルミチン酸、ステアリン酸またはオレイン酸の比率(複数可)を増加させることは、組成物の全体の融解温度を上昇させることになり、一方、逆に、リノール酸及びリノレン酸の比率(複数可)を増加させることは、組成物の融解温度を低減させることになるであろう。したがって、添加されるアジュバント成分の種類及び量を制御することによって、本明細書に開示される薬学的組成物は、室温では実質的に固形もしくは半固形であるが、それが摂取され、体温に達する場合に溶解するように作成することができる。得られた溶解組成物は、ミセルを容易に形成し、これらが腸によって吸収され、カイロミクロンに組み立てられ、最終的にマクロファージによって吸収される。固形剤形は、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤または坐剤であってもよい。
【0110】
本明細書の態様は、慢性炎症を有する個体の治療法を開示する。一実施形態において、本方法は、本明細書に記載される薬学的組成物を、治療を必要とする個体に投与するステップを含み、投与が、慢性炎症に関連する症状を低減し、これによって個体を治療する。
【0111】
本明細書の態様は、一部には、慢性炎症を患う個体を治療することを開示する。本明細書で使用される場合、「治療すること」という用語は、慢性炎症の臨床症状を個体において低減もしくは排除すること、または慢性炎症の臨床症状の発症を個体において遅延もしくは予防することを指す。例えば、「治療すること」という用語は、慢性炎症によって特徴付けられる病態の症状を、例えば、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%まで低減することを意味し得る。慢性炎症に関連する実際の症状は周知であり、慢性胃炎症の場所、慢性炎症の原因、慢性炎症の重症度、及び/または慢性炎症によって冒された組織もしくは器官が挙げられるが、これらに限定されない因子を考慮に入れることによって、当業者により判定することができる。当該技術分野においてであれば、慢性炎症の特定の種類に関連する適正症状または指標を熟知しているであろうし、個体が本明細書に開示される治療の対象であるかどうかを判定する仕方を熟知しているであろう。
【0112】
慢性炎症の症状には、浮腫、充血、紅斑、紫斑、圧痛、硬直、痛み、膨れ、発熱、悪寒、鼻づまり、頭重感、呼吸障害、体液貯留、血塊、食欲不振、心拍数増加、肉芽腫形成、線維素性、膿、非粘性漿液、または潰瘍ならびに疼痛が挙げられるが、これらに限定されない。慢性炎症に関連する実際の症状は周知であり、慢性胃炎症の場所、慢性炎症の原因、慢性炎症の重症度、冒された組織または器官、及び関連する障害が挙げられるが、これらに限定されない因子を考慮に入れることによって、当業者により判定することができる。
【0113】
慢性炎症の特異的パターンは、炎症が上皮表面で発生するか、または化膿菌が関与する場合などの、体内で起こる特定の状況中に見られる。例えば、肉芽腫性炎症は、結核、らい、サルコイドーシス、及び梅毒が挙げられるがこれらに限定されない、限られてはいるが多様な数の疾患から生じる肉芽腫の形成から結果として生じる炎症である。化膿性炎症は、好中球、死細胞、及び体液からなる大量の濃を結果としてもたらす炎症である。ブドウ球菌などの化膿菌による感染症は、この種の炎症に特有である。漿液性炎症は、通常、漿膜の中皮細胞によって産生されるが、血漿に由来する場合もある非粘性漿液の大量の滲出から生じる炎症である。皮膚の水疱がこのパターンの炎症を例示する。潰瘍性炎症は、下部層を露出し、また潰瘍を形成する上皮表面からの組織の壊死性損失から生じる炎症である。
【0114】
慢性炎症の症状は、様々な疾患及び障害の根底をなす障害の大きな関係のない集団と関連し得る。免疫系は、慢性炎症疾患にしばしば関与し、多くの免疫系障害が異常な炎症をもたらすことにより、アレルギー反応及びいくらかのミオパチーの両方において例証されている。慢性炎症過程において病因学的発生源を有する非免疫疾患には、癌、アテローム性動脈硬化症、及び虚血性心疾患が挙げられる。慢性炎症を症状として示す障害の非限定的な例には、座瘡、呑酸/胸やけ、加齢性黄斑変性(AMD)、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、貧血、虫垂炎、動脈炎、関節炎、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、亀頭炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、水疱性類天疱瘡、火傷、滑液包炎、癌、心停止、心臓炎、セリアック病、蜂窩織炎、子宮頚管炎、胆管炎、胆嚢炎、絨毛膜羊膜炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、硬変、大腸炎、うっ血性心不全、結膜炎、クローン病、シクロホスファミド誘発性膀胱炎、嚢胞性線維症、膀胱炎、感冒、涙腺炎、認知症、皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性潰瘍、消化器系疾患、湿疹、気腫、脳炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、全腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、線維筋痛症、線維症、結合組織炎、胃炎、胃腸炎、歯肉炎、糸球体腎炎、舌炎、心臓疾患、心臓弁機能不全、肝炎、化膿性汗腺炎、ハンチントン病、高脂血症に伴う膵炎、高血圧症、回腸炎、感染症、炎症性腸疾患、炎症性心肥大(inflammatory cardiomegaly)、炎症性ニューロパチー、インスリン抵抗性、間質性膀胱炎、間質性腎炎、虹彩炎、虚血、虚血性心疾患、角膜炎、角結膜炎、喉頭炎、ループス腎炎、乳腺炎、乳様突起炎、髄膜炎、代謝症候群(症候群X)、偏頭痛、多発性硬化症、脊髄炎、心筋炎、筋炎、腎炎、非アルコール性脂肪性肝炎、肥満症、臍炎、卵巣炎、睾丸炎、骨軟骨炎、骨減少症、骨髄炎、骨粗鬆症、骨炎、耳炎、膵炎、パーキンソン病、耳下腺炎、骨盤内炎症性疾患、尋常性天疱瘡、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、静脈炎、胸膜炎、肺炎、多発性嚢胞腎炎、直腸炎、前立腺炎、乾癬、歯髄炎、腎宇腎炎、門脈炎、腎不全、再灌流障害、網膜炎、リウマチ熱、鼻炎、卵管炎、サルコイドーシス、唾液腺炎、副鼻腔炎、痙攣性結腸、狭窄症、口内炎、卒中、外科合併症、滑膜炎、腱鞘炎、腱症、腱滑膜炎、血栓性静脈炎、扁桃炎、外傷、外傷性脳損傷、移植拒絶反応、膀胱三角炎、結核、腫瘍、尿道炎、滑膜包炎、ぶどう膜炎、膣炎、血管炎、及び外陰炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
一実施形態において、慢性炎症は、組織の炎症を含む。組織の炎症は、特定の組織または器官に限定される慢性炎症である。この実施形態の態様において、組織の炎症は、例えば、皮膚の炎症、筋肉の炎症、健の炎症、靭帯の炎症、骨の炎症、軟骨の炎症、肺の炎症、心臓の炎症、肝臓の炎症、膵臓の炎症、腎臓の炎症、膀胱の炎症、胃の炎症、腸の炎症、神経の炎症、及び脳の炎症を含む。
【0116】
別の実施形態において、慢性炎症は、全身性炎症を含む。関与する過程は組織の炎症と同一であるが、全身性炎症は、特定の組織に限定されず、実際には、内皮及び他の器官系を含める体全体を圧倒する。これが感染に起因する場合、敗血症という用語が適用され、菌血症という用語は、具体的に細菌性敗血症に適用され、ウイルス血症は、具体的にウイルス性敗血症に適用される。血管拡張及び器官機能障害は、敗血症ショック及び死につながり得る広範囲にわたる感染に関連する深刻な問題である。
【0117】
別の実施形態において、慢性炎症は、関節炎を含む。関節炎は、滑膜の炎症に起因する身体の関節への損傷を伴う病態の一群を含み、骨関節炎、リウマチ性関節炎、若年性突発性関節炎、強直性脊椎炎のような脊椎関節症(spondyloarthropathies like ankylosing spondylitis)、反応性関節炎(ライター症候群)、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患に関連する腸炎性関節炎(enteropathic arthritis associated with inflammatory bowel disease)、ウィップル(Whipple)病ならびにベーチェット(Behcet)病、敗血症性関節炎、痛風症(通風性関節炎、結晶誘発性滑膜炎、代謝性関節炎としても知られる)、偽性痛風症(カルシウム・ピロリン酸沈着症)、及びスチル(Still)病が挙げられるが、これらに限定されない。関節炎は、単一の関節を冒し(単関節炎)、2~4つの関節を冒し(少関節炎)、または5つ以上の関節を冒す(多発性関節炎)可能性があり、自己免疫疾患または非自己免疫疾患のいずれかとすることができる。
【0118】
別の実施形態において、慢性炎症は、自己免疫障害を含む。自己免疫障害は、各疾患の主要な臨床病理学的な特徴に応じて、大きく全身性及び器官特異的自己免疫障害に分類することができる。全身性自己免疫疾患には、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン(Sjogren)症候群、硬皮症、リウマチ性関節炎、及び多発性筋炎が挙げられるが、これらに限定されない。局所的自己免疫疾患は、内分泌学的疾患(1型真性糖尿病、橋本甲状腺炎、アジソン病など)、皮膚学的疾患(尋常性天疱瘡)、血液学的疾患(自己免疫性溶血性貧血)、神経性疾患(多発性硬化症)であり得るか、または体内組織の限局性の塊を伴い得る。自己免疫障害の種類には、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、アレルギーもしくは過敏症、筋委縮性側索硬化症、抗リン脂質抗体症候群(APS)、関節炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性膵炎、水疱性類天疱瘡、セリアック病、シャーガス病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、1型真性糖尿病(IDDM)、子宮内膜症、線維筋痛症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本甲状腺炎、化膿性汗腺炎、突発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、ループス(円板状エリテマトーデス、薬剤誘発性エリテマトーデス、ループス腎炎、新生児ループス、亜急性皮膚エリテマトーデス、及び全身性エリテマトーデスを含む)、限局性強皮症、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、ミオパチー、ナルコレプシー、神経性筋強直症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、原発性胆汁性胆管炎、再発性散在性脳脊髄炎(多相性散在性脳脊髄炎)、リウマチ熱、統合失調症、強皮症、シェーグレン症候群、腱滑膜炎、血管炎、及び白斑が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
別の実施形態において、慢性炎症は、ミオパチーを含む。ミオパチーは、免疫系が筋肉の成分を不適切に攻撃する場合に起こり、筋肉の炎症につながる。ミオパチーは、炎症性ミオパチー及び自己免疫性ミオパチーを含む。ミオパチーには、皮膚筋炎、封入体筋炎、及び多発性筋炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
別の実施形態において、慢性炎症は、血管炎を含む。血管炎は、白血球遊走及びその結果の損傷に起因する、リンパ管及び静脈(静脈炎)、動脈(動脈炎)ならびに毛細血管のような血管の血管壁の炎症を特徴とする障害の多様な群である。炎症は、体内のどこであっても、いかなるサイズの血管でも冒し得る。これは、動脈及び/または静脈のいずれも冒し得る。炎症は病巣である可能性があり、これが血管内の単一の場所を冒すか、あるいは特定の器官もしくは組織全体にわたって散在した炎症の領域を伴い広範囲にわたる場合もあり、または更には体内の複数の器官系を冒す場合もある。血管炎には、バージャー(Buerger)病(閉塞性血栓血管炎)、脳血管炎(中枢神経系血管炎)、チャーグ・ストラウス(Churg-strauss)動脈炎、クリオグロブリン血症、本脳性クリオグロブリン血管症、巨細胞性(側頭)動脈炎、ゴルファー(Golfer)血管炎、ヘノッフォ・シェーンライン(Henoch-Schonlein)紫斑病、過敏性血管炎(アレルギー性血管炎)、川崎病、顕微鏡的多発性動脈炎/血管炎、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発性筋痛症(PMR)、リウマチ性血管炎、高安動脈炎、ウェゲナー(Wegener)肉芽腫症、ならびに全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ性関節戦(RA)、再発性多発性軟骨炎、ベーチェット病、または他の結合組織障害のような結合組織障害に続発する血管炎、ウイルス感染に続発する血管炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
別の実施形態において、慢性炎症は、皮膚障害を含む。皮膚障害には、尋常性座瘡、水疱性類天疱瘡を含む座瘡、アトピー性皮膚炎及び慢性光線過敏性皮膚炎を含む皮膚炎、アトピー性湿疹、接触湿疹、乾燥性湿疹、脂漏性皮膚炎、発汗障害、貨幣状湿疹、静脈湿疹、疱疹状皮膚炎、神経皮膚炎、及び自家感作性皮膚炎、ならびにうっ滞性皮膚炎のような湿疹、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、尋常性乾癬、爪乾癬、滴状乾癬、頭皮乾癬、逆乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、ならびに乾癬性関節炎を含む乾癬、酒さ、及び斑状強皮症を含む強皮症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
別の実施形態において、慢性炎症は、胃腸障害を含む。胃腸障害には、過敏性腸疾患、クローン病を含む炎症性腸疾患、及び潰瘍性直腸炎、左側大腸炎、全大腸炎ならびに劇症大腸炎のような潰瘍性大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
別の実施形態において、慢性炎症は、心血管疾患を含む。LDLコレステロールが、動脈壁に埋め込まれるとき、これは免疫応答を引き起こし得る。慢性炎症は、ついには動脈を損傷する可能性があり、それらを破裂させ得る。心血管疾患は、心臓それ自体及び/または血管系、特に心臓につながりまた心臓から出る静脈ならびに動脈を冒す多くの特定疾患のいずれかである。高血圧症、心内膜炎、心筋炎、心臓弁機能障害、うっ血性心不全、心筋梗塞糖尿病性心疾患、動脈炎、静脈炎、血管炎のような欠陥炎症、動脈硬化症ならびに狭窄症のような動脈閉塞性疾患、炎症性心肥大、末梢動脈疾患、動脈瘤、塞栓症、解離、偽性動脈瘤、血管奇形、血管性母斑、血栓症、血栓性静脈炎、渦静脈、卒中が挙げられるが、これらに限定されない、60を超える種類の心血管障害がある。心臓を冒す心血管障害の症状には、胸の痛みもしくは胸の不快感(狭心症)、片腕もしくは両腕、左肩、首、顎、または背中の痛み、息切れ、めまい、速い心拍、吐き気、異常な心拍、疲労感が挙げられる、これらに限定されない。脳を冒す心血管障害の症状には、顔面、腕、または脚部、特に身体の片側の突然のしびれもしくは脱力感、突然の錯乱、発話障害または会話が理解できないこと、片眼もしくは両眼が突然見えにくくなること、突然のめまい、歩行困難、または平衡感覚もしくは調整の失調、原因不明の突然の激しい頭痛が挙げられるが、これらに限定されない。脚部、骨盤及び/または腕を冒す心血管傷害の症状には、筋肉の疼痛、うずく痛み、または痙攣である跛行、及び特に夜間の足またはつま先の冷感もしくは麻痺感が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
別の実施形態において、慢性炎症は、癌を含む。炎症は、腫瘍の周りの微小環境を編成し、増殖、生存、及び移動に寄与する。例えば、線維素性炎症は、繊維素が血管を通過することを可能にする血管透過性の大きな増加から生じる。癌細胞などの適当な凝固誘発刺激が存在する場合、線維素性滲出液が沈着される。これは、通常、漿膜腔において見られ、ここでは、線維素性滲出液の瘢痕への変換が、漿膜間で発生し、それらの機能を制限し得る。別の例では、癌は、NF-κB駆動性炎症性癌のような炎症性癌である。
【0125】
場合によっては、別の方法で癌を治療するために有効であり得る薬剤が、腫瘍の周りに創出された環境(「微小環境」)のために、無効になるか、または有効性が低くなる。これらの微小環境は、通常は、活性酸素種(ROS)、特に過酸化水素の高レベルに関連している。線維芽細胞もまた、過酸化水素を産生する。酸化もまた、癌細胞の外側で起こりやすい。
【0126】
一態様において、治療用化合物は、過酸化水素及び/または他のROSの濃度を低減することによってなど、腫瘍の微小環境を修正する。癌が繁殖している微小環境を修正することによって、治療用化合物は、内因性種の正常な機能を回復する助けとなり得る。更に、小環境の修正は、化学療法を含む他の癌療法の効力を改善し得る。過酸化水素及び/または他のROSの存在が腫瘍形成の原因であり得る限りにおいて、治療用化合物は、腫瘍の発症を予防または遅延させるために機能し得る。例えば、Poehlmann et al.,"Repeated H exposure drives cell cycle progression in an in vitro model of ulcerative colitis,"J Cell Mol.Med.2013 Dec;17(12):1619-1631を参照されたい。
【0127】
別の実施形態において、慢性炎症は、薬理学的誘発性炎症を含む。特定の薬物または外因性化学化合物は、炎症に影響を及ぼすことが知られている。例えば、ビタミンA欠乏症は、炎症反応の増加を引き起こす。コカイン及びエクスタシーなどの特定の不法薬物は、炎症と密接にかかわる転写因子(例えば、NF-κB)を活性化することによって、それらの有害作用の一部を及ぼし得る。
【0128】
別の実施形態において、慢性炎症は、感染症を含む。感染性生物は、循環系またはリンパ系を介して直近の組織の封鎖を脱出することができ、身体の他の部分に広がることができる。生物が急性炎症の作用によって封じ込められない場合、それは、すぐ近くのリンパ管を介してリンパ系に接近し得る。リンパ管の感染は、リンパ管炎として知られ、リンパ節の感染は、リンパ節炎として知られる。病原体は、血流に接近し、リンパ液排出を経て循環系に至る。感染症には、細菌性膀胱炎、細菌性脳炎、汎発性インフルエンザ、ウイルス性脳炎、イ及びウイルス性肝炎(A、B及びC型)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
別の実施形態において、慢性炎症は、組織または器官の損傷を含む。組織または器官の損傷には、熱傷、裂傷、創傷、穿刺、または外傷が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
別の実施形態において、慢性炎症は、移植拒絶を含む。移植拒絶は、移植された器官または組織が、レシピエントの免疫系が移植された器官または組織を攻撃するために、移植レシピエントの身体によって受容されないときに起こる。適応免疫応答の移植拒絶は、T細胞媒介性及び体液性免疫(抗体)機構の両方を通して媒介される。移植拒絶は、超急性拒絶、急性拒絶、または慢性拒絶に分類することができる。移植された器官または組織の慢性拒絶は、拒絶が移植された組織に対する十分に理解されていない慢性炎症及び免疫応答である場合のものである。「移植拒絶」という用語には、移植片対宿主病(GVHD)も含まれる。GVHDは、移植された骨髄中の機能的免疫細胞が、レシピエントを「異質なもの」として認識し、免疫的攻撃を加える同種骨髄移植のよく見られる合併症である。これは、ある特定の状況下で輸血においても起こり得る。GVHDは、急性及び慢性型に分けられる。急性及び慢性GVHDは、異なる免疫細胞サブセット、異なるサイトカインプロファイル、いくらか異なる宿主標的、及び治療に対する異なる応答を伴うように思われる。
【0131】
別の実施形態において、慢性炎症は、Th1媒介炎症性疾患を含む。十分に機能する免疫系において、免疫応答は、免疫の問題に対処するのに適している十分にバランスのとれた炎症誘発性Th1応答及び抗炎症性Th2応答をもたらさねばならない。一般的に言えば、炎症誘発性Th1応答が開始されると、身体は、このTh1応答を中和するために、Th2応答によって呼び起こされる抗炎症性応答に依存する。この中和作用応答は、例えば、アトピーにおけるIgE及び好酸球応答の促進に関連する及びIL-4、IL-5、及びIL-13、ならびに抗炎症性応答を有する更にIL-10などのTh2型サイトカインの放出を含む。Th1媒介炎症性疾患は、慢性炎症につながるTh1細胞によって生じる過剰の炎症誘発性応答を伴う。Th1媒介疾患は、ウイルスに、細菌に、または化学物質に(環境に)誘発され得る。例えば、ウイルスが引き超すTh1媒介疾患は、慢性または急性感染症を引き起こす場合があり、これが、呼吸障害またはインフルエンザを引き起こし得る。
【0132】
別の実施形態において、慢性炎症は、慢性神経性炎症を含む。慢性炎症神経性炎症とは、末梢視覚神経末端から放出されるSPまたはCGRPのような炎症性分子の放出を通して開始及び/または維持される炎症応答(すなわち、これらの神経における脊髄への正規の求心性シグナル伝達とは対照的な遠心性機能)を指す。慢性炎症神経性炎症は、一次性炎症及び二次性神経性炎症の両方を含む。本明細書で使用される場合、「一次性神経性炎症」という用語は、一次性知覚神経末端(C及びA-デルタ線維など)からの物質の放出によって開始されるか、またはこれから生じる組織炎症(炎症症状)を指す。本明細書で使用される場合、「二次性神経性炎症」という用語は、知覚神経末端を刺激し、また神経からの炎症媒体の放出を引き起こすペプチドまたはサイトカインなどの炎症媒体の非神経源(例えば、マスト細胞または免疫細胞などの血管床もしくは組織間質由来の溢出)によって開始される組織炎症を指す。慢性神経性炎症の両方の型(一次性及び二次性)の正味の効果は、末梢知覚神経線維の感作によって維持される炎症状態を有するためのものである。結果として生じる慢性神経性炎症の生理学的結果は、例えば皮膚痛(異痛症、痛覚過敏)、関節痛及び/または関節炎、内臓痛ならびに機能障害、肺機能障害、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び膀胱機能障害(例えば、膀胱痛、過活動性膀胱)などを生じている論議されている組織に応じる。
【0133】
いくつかの態様において、ウイルス感染を治療するために、イソミオスミンを含有する薬学的組成物が、個体に投与される。一例では、このウイルスはヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。別の例では、このウイルスは単純ヘルペスウイルス(HSV)である。更に別の例では、このウイルスはヒト・パピローマウイルス(HPV)である。HPV-6及びHPV-11などの低リスク粘膜HPVは、生殖器疣贅(尖圭コンジローム)を引き起こし、一方高リスクHPVは、浸潤扁平上皮癌に進行し得る扁平上皮内病変を引き起こす。ヒト子宮頚部癌の大半は、高リスクHPV感染に関連している。HPV-16は、はるかに最も高頻度に見られる粘膜高リスクHPV型であり、HPV-18及びHPV-31が後に続く。タバコ及びアルコール乱用の古典的リスク因子を欠如する患者における口腔癌、特に中咽頭癌のうちのおよそ20%もまた、高リスクHPV陽性である。高リスクHPV感染にまた高頻度に関連する他の肛門生殖管悪性腫瘍には、陰茎及び外陰膣癌ならびに肛門癌が含まれ、これらは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連AIDSによって個体で頻繁に発症する。
【0134】
一態様において、イソミオスミンは、高血圧(high blood pressure)(高血圧症(hypertension))を治療するために個体に投与することができる。イソミオスミンは、血統において細胞に正常機能を回復させることによって、高血圧(high blood pressure)及び高血圧症(hypertension)の症状を治療すると考えられる。
【0135】
本明細書に記載される組成物または化合物は、個体に投与することができる。個体は、通常はヒトである。典型的には、従来の慢性炎症治療の候補者である任意の個体が、本明細書に開示される慢性炎症治療の候補者である。術前評価は、通常、処置の全ての関連するリスク及び利益を開示する徹底したインフォームドコンセントに加えて、定期的な病歴及び身体的検査を含む。
【0136】
本明細書に開示される薬学的組成物は、治療用組成物を治療有効量で含み得る。本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、「治療有効量」、「有効用量」、または「治療有効用量」と同義であり、慢性炎症の治療に関して使用されるとき、所望の治療効果を得るのに必要な本明細書に開示される治療用化合物の最小用量を指し、慢性炎症に関連する症状を低減するのに十分な用量を含む。慢性炎症本明細書に開示される治療用化合物の有効性は、1つ以上の臨床症状、及び/または病態に関連する生理学的指標に基づいて、個体における改善を観察することによって判定することができる。慢性炎症における改善はまた、併用療法に対する必要性の低減によっても示すことができる。
【0137】
本特定の慢性炎症に対して個体に投与される明細書に開示される治療用化合物適切な有効量は、慢性炎症の種類、慢性炎症の場所、慢性炎症の原因、慢性炎症の重症度、所望される軽減の程度、所望される軽減の持続時間、使用される特定の治療用化合部、使用される治療用化合物の排出率、使用される試料用化合物の薬力学、組成物中に含まれる他の化合物の性質、投与の特定の経路、特定の特性、患者の病歴ならびにリスク因子(例えば、年齢、体重、健康全般、及びその種のものなど)、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない因子を考慮に入れることによって判定することができる。更に、治療用化合物の反復投与が用いられる場合、治療用化合物の有効量は、投与の頻度、治療用化合物の半減期、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない因子に更に応じるであろう。本明細書に開示される治療用化合物の有効量が、ヒトに投与される前に、インビトロアッセイ及び動物モデルを用いるインビボ投与試験から推定することができることは、当業者には既知である。
【0138】
この実施形態の他の態様において、治療有効量の本明細書に開示される治療用化合物は、慢性炎症に関連する症状を、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%まで低減する。この実施形態の他の態様において、治療有効量の本明細書に開示される治療用化合物は、慢性炎症に関連する症状を、例えば、最大で10%、最大で15%、最大で20%、最大で25%、最大で30%、最大で35%、最大で40%、最大で45%、最大で50%、最大で55%、最大で60%、最大で65%、最大で70%、最大で75%、最大で80%、最大で85%、最大で90%、最大で95%、または最大で100%まで低減する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物の有効量は、慢性炎症に関連する症状を、例えば、約10%~約100%、約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約20%~約100%、約20%~約90%、約20%~約80%、約20%~約20%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約30%~約100%、約30%~約90%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、または約30%~約50%まで低減する。
【0139】
この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物の治療有効量は、約0.001mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲である。この実施形態の態様において、本明細書に開示される治療用化合物の治療有効量は、例えば、少なくとも0.001mg/kg/日、少なくとも0.01mg/kg/日、少なくとも0.1mg/kg/日、少なくとも1.0mg/kg/日、少なくとも5.0mg/kg/日、少なくとも10mg/kg/日、少なくとも15mg/kg/日、少なくとも20mg/kg/日、少なくとも25mg/kg/日、少なくとも30mg/kg/日、少なくとも35mg/kg/日、少なくとも40mg/kg/日、少なくとも45mg/kg/日、または少なくとも50mg/kg/日であってもよい。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物の治療有効量は、例えば、約0.001mg/kg/日~約10mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約15mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約20mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約25mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約30mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約35mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約40mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約45mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約50mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約75mg/kg/日、または約0.001mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲であってもよい。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物の治療有効量は、例えば、約0.01mg/kg/日~約10mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約15mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約20mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約25mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約30mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約35mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約40mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約45mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約50mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約75mg/kg/日、または約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲であってもよい。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物の治療有効量は、例えば、約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約15mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約20mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約25mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約30mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約35mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約40mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約45mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約75mg/kg/日、または約0.1mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲であってもよい。
【0140】
この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物の治療有効量は、例えば、約1mg/kg/日~約10mg/kg/日、約1mg/kg/日~約15mg/kg/日、約1mg/kg/日~約20mg/kg/日、約1mg/kg/日~約25mg/kg/日、約1mg/kg/日~約30mg/kg/日、約1mg/kg/日~約35mg/kg/日、約1mg/kg/日~約40mg/kg/日、約1mg/kg/日~約45mg/kg/日、約1mg/kg/日~約50mg/kg/日、約1mg/kg/日~約75mg/kg/日、または約1mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲であってもよい。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される治療用化合物の治療有効量は、例えば、約5mg/kg/日~約10mg/kg/日、約5mg/kg/日~約15mg/kg/日、約5mg/kg/日~約20mg/kg/日、約5mg/kg/日~約25mg/kg/日、約5mg/kg/日~約30mg/kg/日、約5mg/kg/日~約35mg/kg/日、約5mg/kg/日~約40mg/kg/日、約5mg/kg/日~約45mg/kg/日、約5mg/kg/日~約50mg/kg/日、約5mg/kg/日~約75mg/kg/日、または約5mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲であってもよい。
【0141】
投与は、一回用量または蓄積量(連続投与)とすることができ、当業者によって容易に決定することができる。例えば、慢性炎症の治療は、本明細書に開示される薬学的組成物の有効用量の1回の投与を含んでもよい。あるいは、慢性炎症の治療は、例えば、1日1回、1日2回、数日ごとに1回、または1週間に1回などの期間の範囲にわたって行われる薬学的組成物の有効用量の複数回投与を含んでもよい。投与のタイミングは、個体の症状の重症度などの因子に応じて、個体間で異なり得る。例えば、本明細書に開示される薬学的組成物の有効用量は、個体に1日1回、無期限に、または個体がもはや治療を必要としなくなるまで投与され得る。当業者であれば、個体の病態が治療の過程の全体にわたって監視され得ること、及び本明細書に開示される薬学的組成物の有効量がそれに応じて調製され得ることを認識するであろう。
【0142】
一実施形態において、個体への投与時に、本明細書に開示される治療用化合物を含む薬学的組成物は、本明細書に開示されるアジュバントを含まないこと以外は同一の薬学的組成物中に含まれる治療用化合物の生体内分布とは異なる治療用化合物の生体内分布をもたらす。
【0143】
別の実施形態において、個体への投与時に、本明細書に開示される薬学的組成物の治療用化合物は、マクロファージに送達される。マクロファージは、炎症反応の制御に関与すると考えられる重要な細胞型のうちの1つである。マクロファージ内に存在する抗炎症性活性を有する治療用化合物の結果とした生じた高レベルは、慢性炎症の臨床的に有効な治療をもたらす。この実施形態の態様において、個体への投与時に、治療有効量の本明細書に開示される薬学的組成物の治療用化合物は、優先的にマクロファージに送達される。この実施形態の他の態様において、個体への投与時に、本明細書に開示される薬学的組成物の治療用化合物は、マクロファージに実質的に送達される。この実施形態の更に他の態様において、個体への投与時に、マクロファージに送達される本明細書に開示される薬学的組成物の治療用化合物の量は、投与された薬学的組成物中に含有される治療用化合物の総量の、例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%である。この実施形態の更に他の態様において、個体への投与時に、マクロファージに送達される本明細書に開示される薬学的組成物の治療用化合物の量は、投与された薬学的組成物中に含有される治療用化合物の総量の、例えば、約5%~約100%、約10%~約100%、約15%~約100%、約20%~約100%、約25%~約100%、約30%~約100%、約35%~約100%、約40%~約100%、約45%~100%、約50%~約100%、約5%~約90%、約10%~約90%、約15%~約90%、約20%~約90%、約25%~約90%、約30%~約90%、約35%~約90%、約40%~約90%、約45%~90%、約50%~約90%、約5%~約80%、約10%~約80%、約15%~約80%、約20%~約80%、約25%~約80%、約30%~約80%、約35%~約80%、約40%~約80%、約45%~80%、約50%~約80%、約5%~約70%、約10%~約70%、約15%~約70%、約20%~約70%、約25%~約70%、約30%~約70%、約35%~約70%、約40%~約70%、約45%~70%、または約50%~約70%の範囲である。
【0144】
別の実施形態において、個体への投与時に、本明細書に開示される薬学的組成物は、胃刺激を低減する。この実施形態の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、胃刺激を実質的に低減する。更に別の実施形態において、個体への投与時に、本明細書に開示される薬学的組成物は、薬学的許容されるアジュバントを含まないことを除いては同一の本明細書に開示される薬学的組成物と比較するとき、胃刺激を低減する。この実施形態の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、薬学的許容されるアジュバントを含まないことを除いては同一の本明細書に開示される薬学的組成物と比較するとき、胃刺激を実質的に低減する。この実施形態の他の態様において、治療有効量の本明細書に開示される治療用化合物は、胃刺激を、例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%まで低減する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、胃刺激を、例えば、約5%~約100%、約10%~約100%、約15%~約100%、約20%~約100%、約25%~約100%、約30%~約100%、約35%~約100%、約40%~約100%、約45%~100%、約50%~約100%、約5%~約90%、約10%~約90%、約15%~約90%、約20%~約90%、約25%~約90%、約30%~約90%、約35%~約90%、約40%~約90%、約45%~90%、約50%~約90%、約5%~約80%、約10%~約80%、約15%~約80%、約20%~約80%、約25%~約80%、約30%~約80%、約35%~約80%、約40%~約80%、約45%~80%、約50%~約80%、約5%~約70%、約10%~約70%、約15%~約70%、約20%~約70%、約25%~約70%、約30%~約70%、約35%~約70%、約40%~約70%、約45%~70%、または約50%~約70%の範囲で低減する。
【0145】
別の実施形態において、個体への投与時に、本明細書に開示される薬学的組成物は、腸刺激を低減する。この実施形態の態様において、薬学的組成物は、腸刺激を実質的に低減する。更に別の実施形態において、個体への投与時に、本明細書に開示される薬学的組成物は、薬学的許容されるアジュバントを含まないことを除いては同一の本明細書に開示される薬学的組成物と比較するとき、腸刺激を低減する。この実施形態の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、薬学的許容されるアジュバントを含まないことを除いては同一の本明細書に開示される薬学的組成物と比較するとき、腸刺激を実質的に低減する。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、薬学的許容されるアジュバントを含まないことを除いては同一の本明細書に開示される薬学的組成物と比較するとき、腸刺激を、例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%まで低減する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される薬学的組成物は、薬学的許容されるアジュバントを含まないことを除いては同一の本明細書に開示される薬学的組成物と比較するとき、腸刺激を、例えば、約5%~約100%、約10%~約100%、約15%~約100%、約20%~約100%、約25%~約100%、約30%~約100%、約35%~約100%、約40%~約100%、約45%~100%、約50%~約100%、約5%~約90%、約10%~約90%、約15%~約90%、約20%~約90%、約25%~約90%、約30%~約90%、約35%~約90%、約40%~約90%、約45%~90%、約50%~約90%、約5%~約80%、約10%~約80%、約15%~約80%、約20%~約80%、約25%~約80%、約30%~約80%、約35%~約80%、約40%~約80%、約45%~80%、約50%~約80%、約5%~約70%、約10%~約70%、約15%~約70%、約20%~約70%、約25%~約70%、約30%~約70%、約35%~約70%、約40%~約70%、約45%~70%、または約50%~約70%の範囲で低減する。
【0146】
本明細書に開示される薬学的組成物はまた、治療の全体的な治療効果を高めるために、他の治療用化合物と組み合わせて個体に投与することもできる。複合化合物の適応症を治療するための使用は、副作用の存在を低減しつつ有益な効果を高めることができる。
【0147】
以下の実施例は、上記記載の本開示の範囲を例証するが、それを限定するものではない。
【0148】
[実施例1]
この実施例は、イソミオスミン及び他のアルカロイドに対するモノアミンオキシダーゼ(MAO)の阻害を判定するための実験を記述する。MAOは、ミトコンドリアの該膜状に位置し、モノアミン神経伝達物質の異化作用に関与する。2つの十分に特性が明らかにされたアイソエンザイムが存在する。これらは、主として、セロトニン及びノルエピネフィリンを異化するMAO-Aと、ベンジルアミン及びフェニルエチルアミンを優先的に異化するMAO-Bである。ドーパミン及びチラミンは、両方のイソ型によって代謝される。
【0149】
MAOの活性を検出するために、発光方法(PromegaからのMOA-Glo測定キット、カタログ番号V1401)を使用した。この方法において、MAO基質(キットで提供されるカブトムシルシフェリンの誘導体)を試験される化合物(この場合、ミオスミン及び対照化合物)と混合する。次いで、MAO酵素(別々に購入されたAまたはBのいずれか)を、この混合物に添加し、反応物と室温で1時間インキュベートする。MAO酵素は、試験化合物によって阻害されない場合には、基質をメチルエステルルシフェリンに変換するであろう。最後に、ルシフェリン検出し薬(キットによって提供)を添加し(室温で20分間)、MAO反応を停止させて、メチルエステルルシフェリンをD-ルシフェリンに変換させる。D-ルシフェリンはルシフェラーゼと反応して、発光シグナルを生じさせ、これはD-ルシフェリン濃度と、したがってMAO活性と正比例し、発生した光の量が大きければ大きいほど、MAOの活性は高い。発光シグナルを測定し、照度計を用いて記録する。
【0150】
以下の材料は、Toronto Research Chemicals,North York,ONから入手した:イソミオスミン、カタログ番号I821350、マイオスミン、カタログ番号M835000、アナバシン、カタログ番号A637175、及びノルニコチン、カタログ番号N756995。アナタビンは、Emerson Resources,Norristown,PAから入手した。
【0151】
実験の陽性対照として、クロルジリン(十分に特性が明らかにされたMAO-Aの強力な阻害剤)及びデプレニール(十分に特性が明らかにされたMAO-Bの強力な阻害剤)を使用した。
【0152】
[MAO-A活性についての結果]
純粋なアルカロイドのイソミオスミン、ミオスミン、アナタビン、アナバシン、及びノルニコチンを比較したときに、イソミオスミンが、MAO-Aの酵素活性の阻害において、5つのうちで最も強力であった(図1)。この線グラフを読み取る方法は以下のとおりである:100%の活性は、試験化合物が酵素に対して効果を有しないことを意味し、0%の活性は、試験化合物が酵素の作用を完全に弱めることを意味する。曲線左側により多くシフトすればするほど、試験化合物のより大きな阻害が酵素に及ぼされる。図1で分かるように、イソミオスミンについての曲線が、試験された5つのアルカロイドの中では左側によりシフトされている。2mMの濃度(2,000μモル)は、約50%の阻害をもたらす。実験陽性対照であるクロルジリンについての曲線は、左側に大きくシフトされている。
【0153】
[MAO-B活性についての結果]
5つの純粋なアルカロイドのイソミオスミン、ミオスミン、アナタビン、アナバシン、及びノルニコチンをMAO-Bの阻害について試験を行ったときに、同様な結果を得た。イソミオスミンが、MAO-Bの酵素活性の阻害において、試験された5つのアルカロイドの中で最も強力であった(図2)。
【0154】
[実施例2]
この実施例は、自己免疫性アミロイドーシスを有することが診断された4期癌患者の治療を例証する。治療開始時には、患者はホスピスケアの下で寝たきりであり、わずか数日しか生きられないことを告知されていた。患者にイソミオスミン250mgの1日用量を投与した。治療2週間以内に、患者の症状は大幅に改善され、患者はベッドから起きて歩けるようになった。
【0155】
患者、従来の免疫グロブリン軽鎖カッパ/ラムダ検出を使用して試験した。免疫グロブリンカッパ及びλ(Igκ/λ)インサイチューハイブリダイゼーション(ISH)システムは、組織切片及び血液ならびに骨髄塗抹標本におけるヒトカッパ及びラムダ免疫グロブリン軽鎖メッセンジャーRNA(mRNA)の検出用に設計されている。このシステムは、ビオチン標識オリゴヌクレオチドプローブを使用する。プローブ-mRNA二本鎖は、ビオチン複合体を標的化する酵素抗体結合体を使用して間接的に検出される。発色現象については、色素基質を添加する。色素基質の酵素的反応は、光学顕微鏡検査によって可視化される着色沈殿物をもたらす。結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0156】
[実施例3]
この実施例は、唇上で発症する単純ヘルペスの種類である口唇ヘルペス(ヘルペス)を治療する他のイソミオスミンの投与を例証する。口唇ヘルペスの周期的な突発を経験する個体に、ヘルペスの発症を最初に感じたときに、100mgの用量のイソミオスミンを投与した。この治療は、ヘルペスの突発を予防するために有効であった。
【0157】
[実施例4]
この実施例は、高血圧を治療するためのイソミオスミンの投与を例証する。高血圧を経験している20人の個人に、それぞれ、イソミオスミンを1日当たり100mgの用量で投与した。個人の各々は、治療の過程において血圧の低減を経験した。個人の内の1人の血圧は、血流中にイソミオスミンを含まない場合145/86mmHgと測定され、イソミオスミンによる治療中には、109/59mmHgと測定された。個人の別の1人は、治療開始時においてII型糖尿病に対して治療されていた。治療から3ヶ月後に、この個人は糖尿病の症状を示さず、彼の既存の糖尿病の薬物治療を取りやめた。
【0158】
特定の実施形態が記載及び説明されてきたが、修正が当業者によってなされ得るために、本発明はこれらに限定されないことを理解するべきである。本出願は、本明細書に開示及び主張される根底をなす発明の趣旨及び範囲内にあるありとあらゆる修正を企図する。
図1
図2