(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】エバネッセント導波路検知のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G01N21/17 N
(21)【出願番号】P 2019520841
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(86)【国際出願番号】 US2017057345
(87)【国際公開番号】W WO2018075744
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-12
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598041463
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・ユーエスエー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】チャレナー,ウィリアム・アルバート
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05446534(US,A)
【文献】特開2016-114357(JP,A)
【文献】特開2005-300212(JP,A)
【文献】特開平10-082734(JP,A)
【文献】特開2016-038216(JP,A)
【文献】特開平07-294421(JP,A)
【文献】特開2005-061904(JP,A)
【文献】特開2000-352554(JP,A)
【文献】特開2012-107901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内側の試料の導波路分光法のための装置であって、
窓を有する基板であって、前記窓が、対象となる波長において透明であり、試料を保持する前記容器に結合される、基板と、
前記試料に隣接する透明な前記窓の内面に位置する前記対象となる波長において透明な材料の導波路コアであって、前記試料の屈折率よりも大きい屈折率を有する導波路コアと、
導波路に出入りする光を結合するように構成された光学素子と、
前記容器の外側に位置する光源と、
前記容器の外側に位置する1つまたは複数の検出器と
を備え、
前記容器の前記内側の前記導波路に隣接してまたは前記導波路内に位置する格子、を有し、
前記格子の周期は、前記格子の一端から他端まで変化する装置。
【請求項2】
前記導波路が、クラッドを備え、前記導波路コアが、前記導波路コアと前記基板との間に堆積された前記クラッドの屈折率よりも大きい屈折率を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記導波路が、前記基板の屈折率よりも小さい屈折率を有するクラッドを備え、前記クラッドが、3波長以上の厚さを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記導波路コアが、前記基板の屈折率よりも大きい屈折率を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記光学素子が
さらに、プリズムを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記プリズムが、前記容器の外側の前記窓に位置する、請求項5に記載の装置
。
【請求項7】
前記導波路コアが、単一のTE偏光導波路モードを伝送するように構成された厚さを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記導波路コアが、単一のTE偏光導波路モードおよび単一のTM偏光モードを伝送するように構成された厚さを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記導波路コアが、Si
3N
4、Al
2O
3、Ta
2O
5、Si
xO
yN
1-x-y、Si、Ge、ダイヤモンド、ZnS、およびZnSeからなる群から選択される材料で作製される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記導波路が、SiO
2、MgF
2、CaF
2、およびSi
xO
yN
1-x-yからなる群から選択される材料で作製されたクラッドを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記基板が、Si、ガラス、溶融シリカ、Al
2O
3、ZnS、ZnSe、ダイヤモンド、KBr、BaF
2、およびCaF
2からなる群から選択される材料で作製される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記容器の外側に位置し、分光測定を行うように構成されたデバイスをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記デバイスが、分光計およびフィルタのうちの少なくとも一方を備える、請求項
12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、一般に、エバネッセント導波路検知のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
減衰全反射分光法は、化学的/生物学的化合物の同定、濃度の測定などのためにそれらを測定するための技術である。いくつかの手法が、報告されている。1つの報告された手法では、ATR結晶の厚さをプレーナ導波路としても知られる数波長未満の厚さになるまで薄くすることによって、導波路と試料との界面における多重反射が大幅に増加するためにこの技術の感度が向上する。10,000ほどの向上が、報告されている。
【0003】
例えば、溶液中の化合物の濃度を決定するために、明確な吸収線が存在する赤外領域で化学的または生物学的化合物のスペクトルを測定することもしばしば興味深い。しかしながら、多くの場合、対象となる化合物の吸収帯は、非常に弱い。例えば、10mMol濃度の化合物の吸光度は、2~2.4μmの波長帯でわずか0.0002~0.0035であり得る。したがって、導波路特性に対する溶液の吸光度の影響を最大にすることが望ましい。加えて、これらの吸収帯に関連する導波路透過率の小さな変化を正確に測定するために、機器のドリフトに対する慎重な補正が必要である。
【0004】
報告されている手法では、基板を通して導波路に光を結合する手段が記載されている。しかしながら、広帯域結合を達成するためにはプリズムと2つの格子との複雑な組合せが必要である。
【0005】
別の報告されている技術は、光を導波路に結合するために基板の導波路と同じ側に位置する単一のプリズムを使用する。しかしながら、この技術では、光が試料と同じ側から導波路に結合されるので、光を密封された容器に容易に結合させることはできない。
【0006】
溶液を通して光を透過させる必要なしに溶液の分光測定を行うための手段として、導波路分光法または減衰全反射分光法が以前から議論されている。報告されている導波路分光法の技術では、光は、溶液を透過しない。代わりに、溶液は、導波路コアに隣接し、溶液内の導波路モードのエバネッセント場内でのみ導波路と相互作用し、それは典型的には一波長程度である。したがって、溶液内で粒子を散乱させる効果が減少する。導波路のコアに付着しているかまたはほぼ付着している粒子のみが、導波路のコアを伝播する光に何らかの影響を有し得る。
【0007】
しかしながら、粒子、そして特に細胞は、経時的に導波路コア上に沈降するかまたは付着する傾向を有し得る。これらの粒子は、それらがコア面のほぼ波長内にある範囲でコアと相互作用するだけであっても、コアから光を散乱させることによってコアを透過する光のスペクトルに依然として影響を及ぼし得る。したがって、従来の導波路分光法は、溶液中の粒子によって依然として影響を及ぼされる可能性がある。
【0008】
典型的には、導波路コアは、複数のTEおよびTMモードをサポートする厚さを有する。コアはまた、ただ1つのTEおよび1つのTMモードを伝送するように特別に設計または構成されてもよい。
【0009】
多くの場合、バックグラウンドスペクトルは、試料溶液の測定を行う直前に、溶解した化合物を全く含まない溶液について測定される。他の要因の中でも、光源、検出器および機器の応答のスペクトル強度は、バックグラウンドの測定と試料溶液の測定との間の間隔中に変化しないので、バックグラウンドスペクトルは試料スペクトルを正確に正規化するために使用することができる。しかしながら、場合によっては、試料測定の直前にバックグラウンドスペクトルを測定することは不可能である。例えば、バックグラウンドスペクトルを周期的に測定する機会なしに数週間にわたって溶液を監視する必要がある場合である。この状況では、機器のドリフト、例えば、光源のスペクトル出力の変化が経時的に発生した場合、試料測定の開始時に測定されたバックグラウンドスペクトルを使用して試料スペクトルを正確に正規化することはできない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、限定はしないが、光散乱粒子を含む粒子も含有し得る溶液の様々な成分の濃度の測定の必要性に対処する。例えば、バイオリアクタでは、バイオリアクタ内の細胞が増殖しているので、グルコース、乳酸塩、グルタミン酸塩、アンモニアおよび他の生化学物質の濃度を監視することがしばしば必要である。光が溶液を伝播すると溶液内の細胞が光を散乱させ、それによって所与の溶液の厚さを透過した光の量を検出不可能な点まで大幅に減少させるだけでなく、透過光のスペクトル依存性も変化させるので、これらの生化学物質の濃度を決定するためにバイオリアクタの溶液を通して透過光スペクトル測定を行うことは実用的ではない。
【0011】
本発明はまた、光が導波路の反対側から基板を通過するように、基板の導波路に出入りする光を結合するための簡単な手段の必要性にも対処する。これは、導波管が密封された容器の内側に位置し、光源および検出器が容器の外側に位置するときに導波路センサを使用するための要件である。導波路に出入りする光を結合するための手段は、例えば、導波路に出入りする光を結合するように構成された光学素子を含むことができる。光学素子は、プリズム、格子、または当業者に知られている他の同様の光学素子を含むことができる。本発明の一態様は、光源および検出器が試料とは反対側の基板の側に位置する、ケイ素基板を使用する導波路分光法のための装置および方法を提供する。
【0012】
一実施形態では、容器の内側の試料の導波路分光法のための装置が提供される。装置は、窓を有する基板であって、窓が、対象となる波長において透明であり、試料を保持する容器に結合される、基板と、試料に隣接する透明な窓の内面に位置する対象となる波長において透明な材料の導波路コアであって、試料の屈折率よりも大きい屈折率を有する導波路コアと、導波路に出入りする光を結合するように構成された光学素子と、容器の外側に位置する光源と、容器の外側に位置する1つまたは複数の検出器とを備える。
【0013】
別の実施形態では、微粒子を含有する試料に導波路分光法を実行するためのリッジ導波路が提供され、リッジ導波路は、2つ以上のリッジを備え、リッジの上面間の隙間は、隙間が約1波長以下であり、微粒子の最小寸法よりも小さくなるようになっている。
【0014】
導波路は、クラッドを備え、導波路コアは、コアと基板との間に堆積されたクラッドの屈折率よりも大きい屈折率を有する。いくつかの他の実施形態では、導波路は、クラッドを備え、クラッドは、基板の屈折率よりも小さい屈折率を有し、クラッドは、3波長以上の厚さを有する。さらにいくつかの実施形態では、導波路コアは、基板の屈折率よりも大きい屈折率を有してもよい。
【0015】
導波路コアは、薄膜導波路コアであってもよい。いくつかの実施形態では、導波路コアは、単一のTE偏光導波路モードを伝送するように構成された厚さを有することができる。いくつかの他の実施形態では、導波路コアは、単一のTE偏光導波路モードおよび単一のTM偏光モードを伝送するように構成された厚さを有することができる。導波路コアおよびクラッド層は、単一のTEおよびTMモードをサポートするように構成されるか、または伝播モードに対して所定の値よりも大きくなるように構成される導波路内の厚さを有することができる。
【0016】
導波路コアは、Si3N4、Al2O3、Ta2O5、SixOyN1-x-y、Si、Ge、ダイヤモンド、ZnS、およびZnSeからなる群から選択される材料で作製されてもよい。導波路は、SiO2、MgF2、CaF2、およびSixOyN1-x-yからなる群から選択される材料で作製されたクラッドを有してもよい。基板は、Si、ガラス、溶融シリカ、Al2O3、ZnS、ZnSe、ダイヤモンド、KBr、BaF2、およびCaF2からなる群から選択される材料で作製されてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、装置は、容器の外側に位置し、分光測定を行うように構成されたデバイスを含んでもよい。デバイスは、分光計およびフィルタのうちの少なくとも一方を含んでもよい。
【0018】
さらに別の実施形態では、システムを使用して導波路スペクトルを測定するための方法が提供され、システムは、TEおよびTM導波路モードの両方をサポートする試料と接触する導波路を備える偏光光と、光源と、偏光子と、検出器とを備える。いくつかの実施形態では、偏光子は、特定の周波数で回転して透過光の偏光を回転させてもよい。
【0019】
偏光子は、隣接する偏光子セグメントが互いに直交するように配向され、セグメントの半分がTE導波路モードに適切な光を通過させるように配向され、もう半分がTM導波路モードに対する光を通過させるように配向される、特定の周波数で回転するマルチセグメント偏光子を備えてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、偏光子は、回転せず、TEまたはTM導波路モードのいずれかを励起する配向に対して45°で光を通過させる配向に固定される。いくつかの実施形態では、偏光子は、回転しないが導波路に対して45°の配向に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の一実施形態による、内側面に導波路を設けた一箇所に窓口を有する容器、および容器の外側に位置する分光光学系の一例を示す図である。
【
図2】基板Sの底面に沿って延びる導波路に光を入射させるために、広帯域光源からの光がプリズムPrを通って基板Sの上面の格子G1上に集束され、次に基板の底面の第2の格子G2上に集束される従来の装置を示す図である。
【
図3】広帯域光源からの光がプリズムPrを通って基板の同じ側の導波路上に集束される従来の装置を示す図である。
【
図4】コア、例えば、SiNコアおよびクラッド、例えば、SiO
2クラッドを有する導波路がSi基板上に堆積される本開示の一実施形態を示す図である。クラッドの厚さは、一般に、コアに入る光が基板に急速に結合し戻されないようにするために数波長である。基板は、そのバンドギャップより下で、すなわち、>~1μmの波長に対して実質的に透明である。2μmの波長では、水の屈折率は、1.438であり、Si
3N
4の屈折率は、1.924であり、SiO
2の屈折率は、1.326である。横方向電気偏光(TE)モードであり、1.4806のモード指数を有するフィルムスタック内のプレーナ導波路モードが存在する。この波長におけるSiの屈折率は、3.449である。SF6ガラスで作製されたプリズムは、この波長で1.75の屈折率を有する。約57.8°の入射角θを有するこの波長の光ビームは、導波路にエバネッセントにエネルギーを結合する。β=45°、ξ=68°のSF6プリズムの場合、ケイ素内の光ビームの入射角は、約25.4°である。ケイ素基板と水との間の臨界角は、24.6°である。したがって、ケイ素基板には全反射が存在し、その結果、光は水中に透過しない。
【
図5】プリズムの代わりに格子カプラが使用される本開示の一実施形態を示す図である。回折格子は、導波路のコア/クラッド領域内に位置する。法線入射(θ=0°)、n
mode=1.4806、n
prism=1.75およびλ
0=2μmであるので、格子周期は、1.35μmである。導波路光を外部結合するために、同じ格子周期が選択される。
【
図6】
図4と同様であり、導波路からの光を検出器に結合するために使用される第2のプリズムを有する本開示の一実施形態を示す図である。
【
図7】
図5と同様であり、導波路からの光を検出器に結合するために使用される第2の格子を有する本開示の一実施形態を示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態による、導波路とは反対側の基板の側のプリズムを使用して光を導波路に結合することを示す図である。プリズム内での入射光の角度は、θであり、空気中では、ξである。
【
図9】複数のリッジを備えるリッジ導波路が基板の上に配置される本開示の一実施形態を示す図である。導波路は、
図9に示すように、各リッジの上面がリッジの他の部分よりもわずかに広くなるように設計することができる。リッジ間のリッジの上面における隙間は、微粒子のサイズよりも狭い。例えば、微粒子が主にバイオリアクタ溶液中の心筋細胞であり、典型的には長さ100μmおよび幅10μm~25μmの細長い形状を有する場合、上面のリッジ間の隙間はわずか幅5μmであり、それによってより強い電場が存在するリッジ間の領域への細胞の侵入を防止するが、それでもなおバイオリアクタの流体がリッジ間の空間を満たし、導波路モードからの場と相互作用することを可能にする。
【
図10】本開示の一実施形態による、導波路を透過した光の強度を変調する手段として回転偏光子を使用する導波路分光法システムを示す図である。
【
図11】
図11の(a)は本開示の一実施形態による、回転マウントに取り付けられたシート偏光子またはワイヤグリッド偏光子を示す図である。
図11の(b)は、本開示の一実施形態による、複数のセグメントを有する回転マウントを示す図である。各セグメント内には、隣接したセグメントの偏光の方向が直交するようにシート偏光子またはワイヤグリッド偏光子が存在する。
【
図12】本開示の一実施形態による、導波路を透過した光の強度を監視するために固定偏光子および偏光ビームスプリッタを使用する導波路分光法システムを示す図である。
【
図13】TEおよびTM導波路モード用の溶融シリカ基板上に堆積されたSi
3N
4導波路コアと接触する100Mグルコース溶液のモード指数の虚数部をSiNコア厚さの関数として示すグラフである。
【
図14】TE
0およびTM
0導波路モード用の溶融シリカ基板上に堆積された550nmのSi
3N
4導波路コア上の100Mグルコース溶液のモード指数(Im(K))の虚数部を波長(nm)の関数として示すグラフである。
【
図15】TE
0およびTM
0モードの両方について1cmの導波路を通るスペクトル透過率、およびスペクトル透過率の差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、対象となる波長において透明であり、その上に導波路コアおよびクラッド薄膜が堆積される基板を記載する。コアの屈折率は、クラッドおよび/または基板の屈折率よりも大きくてもよい。基板の屈折率がコアの屈折率よりも大きい場合、クラッドは、コアを基板から部分的に分離し、コア導波路モードから基板への光漏れを減らすために、数波長の厚さにすることができる。基板の屈折率がコアの屈折率よりも小さい場合、基板自体がクラッドとして機能するため、クラッド層は不要である。
【0023】
プリズムもしくは回折格子、またはその2つの組合せを使用して、基板を通して光を導波路に結合することができる。プリズムは、基板の外面または容器の外側の窓に位置することができる。いくつかの実施形態では、格子は、容器の内側の導波管内または導波路に隣接して位置してもよい。いくつかの実施形態では、格子は、導波路と基板との界面に位置してもよい。
【0024】
基板、例えば、ケイ素基板の裏側から入射する光ビームがコア薄膜で導波路モードを励起するためには、入射光ビームの波数ベクトルの成分は、導波路モードの成分と等しくなければならない。プリズムは、例えば、
図4に示すように、この波数ベクトルの整合を可能にするように構成され得る。プリズムがn
prismの屈折率を有し、プリズム内の光ビームの入射角がθである場合、波数ベクトル成分を整合させるために必要な要件は、以下の式(1)または式(2)に示される。
【0025】
【0026】
【0027】
導波路モードのモード指数n
modeは、当業者に知られている式を使用して計算することができる。赤外領域で透明な市販のプリズムを、使用することができる。例えば、
図8に示すように、結合プリズム角がβである場合、空気中の入射角ξは、式(3)によって与えられる。
【0028】
【0029】
ケイ素基板内の光ビームの入射角は、式(4)によって与えられる。
【0030】
【0031】
ケイ素基板と水との間の臨界角は、式(5)によって決定される。
【0032】
【0033】
図5は、プリズムが導波路のコア/クラッド領域内に位置する回折格子によって置き換えられる本開示の別の実施形態を示す。格子は、プリズムの代わりをする。光を導波路に結合する入射角は、格子の周期pを調整することによって調整することができる。格子の深さを調整することによって、結合効率を調整することができる。格子をチャープする(格子の周期を一端から他端までわずかに変える)ことによって、格子は、従来の格子よりも広い範囲の波長および/または入射角にわたって光を効率的に結合するように構成することができる。
【0034】
回折格子は、導波路の平面における入射光の波数ベクトルの成分から整数倍の格子ベクトルを加算または減算し、2つの和が導波路モードの波数ベクトルに等しいとき、光は導波路に結合する。特に、結合式は、式(6)に示される。
【0035】
【0036】
式中、mは、整数であり、pは、格子の周期である。いくつかの実施形態では、m=1が選択されてもよい。
【0037】
本開示では、Thorlabs、Edmund ScientificおよびKarl Lambrecht,Inc.を含む様々な供給元からの結合プリズムを使用することができる。Thorlabs、Newport Corp.、およびEdmund Scientificを含む様々な供給元から入手可能な広帯域光源を使用することができる。University WaferおよびWRS Materialsを含む様々な供給元から入手可能なウェハ基板を使用することができる。Hionix,Inc.およびLionix BVを含む様々な供給元から入手可能な薄膜コーティングを使用することができる。Spectral Products、Newport、およびOcean Opticsを含む様々な供給元から入手可能な分光計を使用することができる。Thorlabs、Newport Inc.、Cal Sensors、およびAgiltronを含む様々な供給元から入手可能な検出器を使用することができる。
【0038】
ここで
図9を参照すると、本開示の一実施形態が示されており、複数のリッジを備えるリッジ導波路が基板の上に配置される。導波路は、
図9に示すように、各リッジの上面がリッジの他の部分よりもわずかに広くなるように構成することができる。リッジ間のリッジの上面における隙間は、微粒子のサイズよりも狭い。例えば、微粒子が主にバイオリアクタ溶液中の心筋細胞であり、典型的には長さ約100μmおよび幅約10μm~25μmの細長い形状を有する場合、上面のリッジ間の隙間はわずか幅約5μmであり、それによってより強い電場が存在するリッジ間の領域への細胞の侵入を防止するが、それでもなおバイオリアクタの流体がリッジ間の空間を満たし、導波路モードからの場と相互作用することを可能にする。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態では、リッジ導波路が提供され、導波路のコアと接触する流体の導波路分光法を可能にしながら、同時に特定のサイズの微粒子が流体内の導波路の高電場領域に入ることを排除するように構成される。一実施形態では、導波路は、リッジ間の隙間が周囲の流体内の微粒子のサイズよりも小さくなるように、実質的に1波長以下内に間隔を置いて配置された複数のリッジを有するように構成される。リッジ間のリッジの上面における隙間は、間隙内への粒子の侵入を防止するために必要である微粒子のサイズよりも小さくてもよい。
【0040】
リッジ導波路は、リッジの少なくとも1つの上面がリッジの少なくとも1つの残りの部分よりも広くなるように構成されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、リッジ導波路は、ケイ素基板のケイ素を含んでもよい。リッジ導波路の材料は、Si3N4、Al2O3、Ta2O5、SixOyN1-x-y、Si、Ge、ダイヤモンド、ZnS、およびZnSeからなる群から選択されてもよい。
【0042】
多種多様な構成のためのリッジ導波路の製造のためのプロセスが当業者に知られており、様々な異なる製造施設で実行することができる。
【0043】
ここで
図10を参照すると、本開示の一実施形態を示しており、光源からの光は、非偏光、円偏光、または45°の偏光配向を有する直線偏光であり得る。光源は、光源の配向がTEまたはTM導波路モードのいずれかを励起するための配向に対して45°であるように直線偏光されてもよい。
図11(a)または
図11(b)にさらに示すように、回転偏光子もまた提供される。光は、試料と接触する導波路コアと、導波路コアの下にある導波路クラッドとを有する導波路上に集束される。基板は、クラッドの下にあってもよい。
図10では、回転偏光子は、光源と試料との間に配置されるように示されている。回転偏光子の他の構成もまた、考えられる。例えば、いくつかの実施形態では、回転偏光子は、試料と検出器との間に置かれてもよい。
図10は、分光計またはモノクロメータが試料の後ろに配置されてもよいことをさらに示す。分光計またはモノクロメータはまた、光源と試料との間に置かれてもよいことを理解されたい。光源が単一波長光源(例えば、レーザ)または波長可変光源(例えば、波長可変レーザ)である場合、分光計またはモノクロメータは、必要ではない場合もある。
【0044】
回転偏光子は、第1の特定の周波数で回転してもよい。これにより、透過光の偏光が回転周波数の倍数であり得る第2の特定の周波数で変調される。偏光子が
図11(b)に示すようなセグメントを備える場合、偏光子を透過する光は、図示の実施形態では、それぞれ0°および90°であるTE導波路モードおよびTM導波路モードの方向に交互に偏光されるべきである。
図11(a)に示す回転シート偏光子の場合、透過光の偏光は、偏光子が回転するにつれて0°から90°まで連続的に変化する。回転偏光子が導波路の前に置かれる場合、導波路上に集束された透過光は、それらの変調強度において90°の位相シフトでTEおよびTMモードの両方を励起する。回転偏光子が導波路の後ろに置かれる場合、TEおよびTM導波路モードの両方からの光をそれらの間に90°の位相シフトで透過させる。
【0045】
伝送されたTEおよびTMモードの光強度は、別々に測定され、減算または分割されて最終スペクトルを得ることができる。他の実施形態では、組み合わされた伝送されたTEおよびTMモードの光の強度は、ロックイン増幅器または位相敏感同期検波エレクトロニクスを備えた単一の検出器によって測定することができる。両方のモードについて導波路を透過した光強度が等しい場合、回転偏光子が回転しても光強度に変化はない。検出された光強度は、導波路モードの2つの偏光の透過光強度に変化があるときだけ回転偏光子によって変調される。2つの偏光の透過光強度が、光を2つのモードに結合する効率が異なるなど、試料による吸収以外の何らかの要因によって異なる場合、2つのモードの透過光強度は、例えば、より弱いモードにより多くの光を入れるために光源の入力偏光を調整することによって、検出器において等しくなるように補償することができる。ロックイン増幅器を使用して、偏光子および導波路を透過した信号を同期的に検出してもよい。2つのモードはそれらの変調信号において相対的な90°の位相シフトを有するので、2つのモードの信号レベルはまた、回転偏光子の位相に対してロックイン検出の位相を調整することによって、ロックインからのゼロ出力信号に対して補償および調整することもできる。
【0046】
一実施形態では、偏光子は、回転していないがTEまたはTM導波路モードのいずれかを励起する配向に対して45°で光を通過させる配向に固定される。
図12に示すような別の実施形態では、偏光子は、回転していないが導波路に対して45°の配向に固定される。光源からの非偏光光が偏光子を透過すると、光の半分はTE導波モードを励起し、光のもう半分はTM導波路モードを励起する。システムの出力に設けられた偏光ビームスプリッタは、これらのモードのうちの1つからの光を1つの検出器に反射し、透過光は第2の検出器に進む。図示のように、2つのロックイン増幅器を使用して、TEおよびTMモードの透過信号を別々に検出することができる。2つのモードについて検出された出力信号振幅が等しくない場合、2つのロックイン増幅器からの検出された出力信号振幅が等しくなるように検出器エレクトロニクスの利得を調整することができる。
【0047】
TEおよびTMモードは、導波路のコアと接触する流体と異なるように相互作用する。流体への電場の浸透は、モードの種類ならびにコア/クラッド厚さおよび屈折率の詳細に依存する。
図13では、導波路を伝播する光がどれだけ速く減衰するかを測定する導波路モード指数の虚数部が、溶融シリカ基板のSi
3N
4コアのコア厚さおよびグルコース溶液の関数としてプロットされている。計算は、当業者に知られている標準的な導波路の定式化に基づいてもよい。この計算では、コアおよびクラッドは、吸収していない。グルコース溶液のみが吸収しているので、モード指数の虚数部は、グルコース溶液中の光の吸収によるものである。コア厚さに応じて、異なる数のTEおよびTMモードが導波路に存在する場合がある。コアが薄すぎると、どちらの偏光の伝播モードも存在しない。コア厚さがゼロの開始点から増加するにつれて、コア厚さが約320nmを超える場合の虚数モード指数の値によって示されるように、TE
0モードが伝播することができる厚さに最初に達する。このコア厚さにおけるモード指数の虚数部が大きいことは、TE
0導波路モードが非常に減衰されていることを示す。一般に、これはモードがグルコース溶液のような試料溶液と強く相互作用していることを示すので、望ましい。コア厚さがさらに増加するにつれて、TE
0モードの減衰は急速に低下する。コア厚さが約540nmに達すると、第1のTMモード(TM
0)が伝播し始める。それはまた、約540nmのコア厚さに対して非常に大きい虚数モード指数を有し、非常に減衰されていることを示す。しかしながら、このコア厚さでのTE
0モードに対するモード指数の虚数部は、はるかに小さい。したがって、このコア厚さでは、TM
0モードは、TE
0モードよりもグルコース溶液とはるかに強く相互作用している。
【0048】
波長の関数としてのモード指数の虚数部は、TE
0およびTM
0モードの両方について550nmの固定コア厚さに対して
図14にプロットされている。モード指数の虚数部のゼロ以外の値は、モデル計算におけるグルコースによる吸収に全体的に起因する。2つの異なるモード間でグルコースによる吸収に大きな差が存在することが明確に示されており、TM
0モードは、全波長範囲にわたってTE
0モードよりも大きな減衰を示している。
【0049】
図12に示す一実施形態に例示するように、TEおよびTMモードの透過率の信号は、異なるロックイン増幅器によって別々に検出することができる。これらの信号は、制御コンピュータによってデジタル的に減算または分割されてもよい。
図15は、TE
0およびTM
0モードに関して1cmの導波路に沿ってグルコースの10mMol溶液を通る透過率、ならびに透過率差スペクトルを計算したものを示す。透過率差スペクトルは、グルコース溶液の吸収特徴を明確に示しており、したがって、グルコース濃度を決定するために使用することができる。TEおよびTMモードから信号を減算することによって、光源光強度または導波路結合効率、あるいは両方のモードと同様に信号強度に影響を及ぼす他の要因における共通の変化を差/分割スペクトルから実質的に除去することができ、それによってバックグラウンドスペクトル測定のために純粋な溶液、例えば、微粒子を含まない試料を導波路センサに周期的に提供する必要なしにグルコース溶液のスペクトル吸光度の長期測定を行うことが可能になる。
【0050】
偏光子または偏光子セグメントは、シート偏光子およびワイヤグリッド偏光子の一方または両方から作製することができる。様々な波長範囲のためのシート偏光子およびワイヤグリッド偏光子は、Thorlabs、Edmund Scientific、およびKnight Opticalを含む多数の供給元から入手可能である。これらは適切な形状および偏光角に切断され、回転「チョッパー」マウントに取り付けられる。回転「チョッパー」は、Thorlabs、Edmund ScientificおよびNewport Corp.を含む様々な供給元から入手可能である。いくつかの実施形態では、偏光子は、偏光ビームスプリッタキューブ、グラントムソンプリズム、ウォラストンプリズム、グランテイラープリズム、またはそれらの任意の組合せであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
G1 格子
G2 第2の格子
Pr プリズム
S 基板