(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】二次電池用スラリーの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20220511BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
(21)【出願番号】P 2018510784
(86)(22)【出願日】2017-03-20
(86)【国際出願番号】 KR2017002961
(87)【国際公開番号】W WO2017175990
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2018-03-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】10-2016-0041157
(32)【優先日】2016-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒュン スク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、サン フーン
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】土屋 知久
【審判官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-157257(JP,A)
【文献】特開2004-303572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の製造に用いられるスラリーの製造のための粉末を前記スラリーの製造用のミキサーに投入する粉末投入段階;
前記ミキサーに溶媒を投入した後、前記ミキサーに加えられるトルク値を測定するデータ収集段階;
前記データ収集段階で収集されたトルク値を用いて前記スラリーを製造するための前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であるニーディングポイント(kneading point)を計算する計算段階; 及び
前記スラリーを製造するための前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であるニーディングポイント(kneading point)に到達するまで前記ミキサーに前記溶媒を更に投入するニーディングポイント到達段階
を含み、
前記データ収集段階は、
前記ミキサーに溶媒を投入する溶媒投入段階; 及び
前記ミキサーに加えられるトルク値を測定するトルク測定段階;を含み、
前記溶媒投入段階及び前記トルク測定段階は交互に行われることにより、前記ミキサーに加えられるトルク値を複数で測定し、
前記データ収集段階と前記
計算段階の間で行われ、前記データ収集段階で収集された複数のトルク値のうち最大トルク値を格納する格納段階;
を更に含み、
前記ニーディングポイントは、前記ミキサーに加えられるトルク値が、前記最大トルク値の一定の割合に該当するトルク値に到達する際の前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であり、
前記一定の割合は、30から50%の範囲内に属する値である
二次電池用スラリーの製造方法。
【請求項2】
二次電池の製造に用いられるスラリーの製造のための粉末及び溶媒を混合するミキサー;
前記ミキサーに溶媒を注入する溶媒投入調節ユニット;
前記粉末及び溶媒の混合の過程で、前記ミキサーに加えられるトルクを測定するトルク測定器
;
前記トルク測定器で測定されたトルク値を格納する格納装置;
及び
前記格納装置に格納されたトルク値のうち最大トルク値を用いて、前記スラリーを製造するための前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であるニーディングポイント(kneading point)を計算する計算装置;
を含み、
前記溶媒投入調節ユニットは、時間の間隔を置いて前記ミキサーに前記溶媒を注入し、
前記トルク測定器は、前記溶媒投入調節ユニットが前記ミキサーに前記溶媒を注入した状態で、前記ミキサーに加えられるトルクを測定し、
前記ミキサーに加えられるトルク値が、前記格納装置に格納されたトルク値のうち最大の値である最大トルク値の一定の割合に該当するトルク値に到達する際の前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であるニーディングポイント(kneading point)に到達するまで前記ミキサーに前記溶媒を更に投入し、
前記一定の割合は、30から50%の範囲内に属する値である
二次電池用スラリーの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年4月4日付韓国特許出願第10-2016-0041157号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池用スラリーの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0003】
反復的な充電及び放電が可能な二次電池(Secondary Battery)は、多様な電子機器に用いられている。一方、電子機器の種類及び形状の多様化に伴い、電子機器に搭載される二次電池の形状も多様になっている。一方、最近では、二次電池としてリチウムを用いるリチウムイオン二次電池が多く用いられている。
【0004】
このような二次電池を製造するためには、負極活物質がコーティングされた負極、正極活物質がコーティングされた正極、及び負極と正極との間に配置される分離膜などが必要である。特に、二次電池を構成する負極活物質及び正極活物質などを製造するためには、スラリー(Slurry)と呼ばれる、電極活物質、導電材及びバインダーなどの混合物が必要な場合が多い。
【0005】
このようなスラリーを製造するためには、粉末と溶媒を混合する過程が必要であり、このような混合はミキサーでなされるようになる。特に、スラリーを製造するためには粉末と溶媒の混合の割合が重要であり、このように、スラリーを製造するための粉末及び溶媒の混合の割合をニーディングポイント(kneading point)と称する。スラリーの製造段階では、このようなニーディングポイントで一定時間の間ミキサー内で混合された後、二次電池の材料として用いられる。
【0006】
ところが、このようなニーディングポイントは、スラリーの製造に必要な粉末及び溶媒などの材料及び含量により変わるようになる。また、ニーディングポイントは、スラリーの製造に用いられるミキサーの大きさ及び構造によっても変わる。
【0007】
従来には、このようなミキサー内でスラリーを製造する際、ニーディングポイントを決定するために作業者がミキサーの内部を随時確認していた。この過程で外部の不純物等がミキサーの内部に流入される場合が多く、これによりスラリーの品質が低下するという問題点が発生していた。また、人間である作業者がミキサーの内部を直接確認しなければならなかったので、誤りが発生せざるを得ず、最適化されたニーディングポイントを決定し難いとの問題点も存在していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、スラリーの製造過程でミキサーの内部を直接確認しなくともニーディングポイントを決定し、スラリーに外部の不純物が流入されないようにすることにより、二次電池の製造に用いられるスラリーの品質を向上させることにある。
【0009】
本発明の他の目的は、スラリーの製造過程でニーディングポイントを決定する定型化された方法及び装置を提供することにより、最適化されたニーディングポイントを決定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明の一側面によれば、二次電池の製造に用いられるスラリーの製造のための粉末を前記スラリー製造用ミキサーに投入する粉末投入段階; 前記ミキサーに溶媒を投入した後、前記ミキサーに加えられるトルク値を測定するデータ収集段階; 及び前記データ収集段階で収集されたトルク値を用いて前記スラリーを製造するための前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であるニーディングポイント(kneading point)を計算する計算段階;を含む二次電池用スラリーの製造方法が提供される。
【0011】
前記データ収集段階は、前記ミキサーに溶媒を投入する溶媒投入段階; 及び前記ミキサーに加えられるトルク値を測定するトルク測定段階;を含み、前記溶媒投入段階及び前記トルク測定段階は交互になされることにより、前記ミキサーに加えられるトルク値を複数で測定することができる。
【0012】
前記データ収集段階と前記計算段階の間で行われ、前記データ収集段階で収集された複数のトルク値のうち最大トルク値を格納する格納段階;を更に含むことができる。
【0013】
前記ニーディングポイントに到達するまで、前記ミキサーに前記溶媒を更に投入するニーディングポイント到達段階;を更に含むことができる。
【0014】
前記計算段階で、前記ニーディングポイントは、前記ミキサーに加えられるトルク値が、前記最大トルク値の一定の割合に該当するトルク値に到達する際の前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であってよい。
【0015】
前記一定の割合は、30から50%の範囲内に属する値であってよい。
【0016】
前記目的を達成するための他の側面によれば、二次電池の製造に用いられるスラリーの製造のための粉末及び溶媒を混合するミキサー; 前記ミキサーに溶媒を注入する溶媒投入調節ユニット; 前記粉末及び溶媒の混合の過程で前記ミキサーに加えられるトルクを測定するトルク測定器; 前記トルク測定器で測定されたトルク値を格納する格納装置; 及び前記格納装置に格納されたトルク値のうち最大トルク値を用いて、前記スラリーを製造するための前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であるニーディングポイント(kneading point)を計算する計算装置;を含み、前記溶媒投入調節ユニットは、時間の間隔を置いて前記ミキサーに前記溶媒を注入し、前記トルク測定器は、前記溶媒投入調節ユニットが前記ミキサーに前記溶媒を注入した状態で、前記ミキサーに加えられるトルクを測定する二次電池用スラリーの製造装置が提供される。
【0017】
前記溶媒投入調節ユニットは、前記ニーディングポイントに到達するまで前記ミキサーに前記溶媒を更に投入することができる。
【0018】
前記ニーディングポイントは、前記ミキサーに加えられるトルク値が、前記最大トルク値の一定の割合に該当するトルク値に到達する際の前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であってよい。
【0019】
前記一定の割合は、30から50%の範囲内に属する値であってよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、スラリーの製造過程でミキサーの内部を直接確認しなくともニーディングポイントを決定し、スラリーに外部の不純物が流入されないようにすることにより、二次電池の製造に用いられるスラリーの品質を向上させることができる。
【0021】
本発明の他の目的は、スラリーの製造過程でニーディングポイントを決定する定型化された方法及び装置を提供することにより、最適化されたニーディングポイントを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】スラリーの製造過程において、溶媒の投入量に従ってミキサーに加えられるトルクの変化を示したグラフである。
【
図2】本発明に係る二次電池用スラリーの製造方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。しかし、本発明が以下の実施例により制限されたり限定されるものではない。
【0024】
充電及び放電が反復的に可能な二次電池を製造するためには、負極活物質がコーティングされた負極、正極活物質がコーティングされた正極、及び負極と正極の間に配置される分離膜などが必要である。特に、二次電池を構成する負極活物質及び正極活物質などを製造するためには、スラリー(Slurry)と呼ばれる、電極活物質、導電材及びバインダーなどの混合物の製造が先行されなければならない。
【0025】
このようなスラリーは、粉末と溶媒の混合を介して製造される。すなわち、スラリーを製造するためのスラリー製造用ミキサー(以下、「ミキサー」と称する)に粉末と溶媒を投入した後で混合することによりスラリーを製造することになる。よって、スラリーの製造過程では、粉末と溶媒の混合の割合と、そのような粉末と溶媒を混合するためのミキサーの役割が非常に重要である。
【0026】
一方、ミキサーを用いて粉末と溶媒を混合する過程で粉末が溶媒を吸収することになり、これにより粉末及び溶媒の混合物は粘度を有することになる。よって、粉末と溶媒の混合過程で、ミキサーにはトルクが加えられるようになる。
図1は、スラリーの製造過程で、溶媒の投入量に従ってミキサーに加えられるトルクの変化を示したグラフである。
【0027】
より詳しく、
図1では、ミキサーに粉末を先ず投入した後、溶媒を漸進的に投入することに伴ってミキサーに加えられるトルクの変化を示したグラフである。
図1に示されているところのように、溶媒の投入量が増加すれば、粉末が溶媒を吸収することにより粉末及び溶媒の混合物が粘度を有することになり、ミキサーに加えられるトルク値が増加することになる。このような傾向は、トルク値が最大になるポイントまで続く。以後は、比較的に溶媒の量が多くなって粉末及び溶媒の混合物の粘度が減少することになるので、トルク値も減少することになる。
【0028】
一方、前述したところのように、本発明は、スラリーの製造過程でミキサーの内部を直接確認しなくとも最適化されたニーディングポイント(kneading point)を提供することにその特徴がある。ニーディングポイントとは、スラリーの製造のための粉末及び溶媒の混合の割合であって、ミキサーは、このようなニーディングポイントで粉末と溶媒を混合してスラリーを製造することになる。本発明によれば、ミキサーに粉末を先ず投入した後、時間の間隔を置いて(すなわち、間欠的に) 溶媒を投入しつつ、それに応じてミキサーに加えられるトルク値を測定し、かかるトルク値に基づいてニーディングポイントを計算することになる。
【0029】
このため、本発明の一実施形態によれば、二次電池の製造に用いられるスラリーの製造のための粉末及び溶媒を混合するミキサー、ミキサーに溶媒を注入する溶媒投入調節ユニット、 粉末及び溶媒の混合過程でミキサーに加えられるトルクを測定するトルク測定器、トルク測定器で測定されたトルク値を格納する格納装置、及び格納装置に格納されたトルク値のうち最大トルク値を用いて前記スラリーを製造するための前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であるニーディングポイント(kneading point)を計算する計算装置を含む。以下、各構成の役割に対してより詳しく説明する。
【0030】
溶媒投入調節ユニットは、時間の間隔を置いて複数回にわたってミキサーに溶媒を投入する。すなわち、溶媒投入調節ユニットは、粉末が予め投入されているミキサーに間欠的に溶媒を投入する。
【0031】
溶媒投入調節ユニットにより溶媒がミキサーに投入されると、トルク測定器は、溶媒投入調節ユニットが前記ミキサーに前記溶媒を注入した状態でミキサーに加えられるトルクを測定することになる。このとき、前述したところのように、溶媒投入調節ユニットは、時間の間隔を置いて複数回にわたってミキサーに溶媒を投入することになるため、トルク測定器も複数回にわたってミキサーに加えられるトルクを測定することになる。例えば、溶媒投入調節ユニットがミキサーに溶媒を4回にわたって投入すると、トルク測定器もミキサーに加えられるトルクを4回にわたって測定することになる。トルク測定器で測定されたトルク値は、前述したところのように格納装置に格納される。
【0032】
本発明によれば、ニーディングポイントは、格納装置に格納された複数のトルク値のうち最大トルク値に基づいて計算される。すなわち、本発明によれば、ニーディングポイントは、格納装置に格納された複数のトルク値のうち最大トルク値の一定の割合に該当するトルク値に対応される粉末及び溶媒の混合の割合となる。このとき、一定の割合は、30から50%の範囲内に属する値であってよい。格納装置に格納された複数のトルク値のうち最大トルク値に対応される粉末及び溶媒の混合の割合がニーディングポイントとなる場合、粉末及び溶媒の混合物の粘度が大きすぎるため、ミキサー内で適切な混合が難しくなる。よって、最大トルク値の一定の割合に該当するトルク値に対応される粉末及び溶媒の混合の割合をニーディングポイントで計算することにより、適切な混合が可能となる。本発明によれば、このときの一定の割合が30から50%の範囲内に属する値の場合、粉末及び溶媒の適切な混合が可能になるため、最適のスラリーを製造することができるようになる。
【0033】
以下、本発明の一実施形態に係る二次電池用スラリーの製造方法に対して説明する。
【0034】
図2は、本発明に係る二次電池用スラリーの製造方法を示したフローチャートである。
【0035】
図2に示す通り、先ず二次電池の製造に用いられるスラリーの製造のための粉末をミキサーに投入する粉末投入段階;がなされる。以後、ミキサーに溶媒を投入した後、ミキサーを介して溶媒と粉末を混合しながらミキサーに加えられるトルク値を測定するデータ収集段階;及びデータ収集段階で収集されたトルク値を用いて前記スラリーを製造するための前記粉末及び前記溶媒の混合の割合であるニーディングポイント(kneading point)を計算する計算段階;が順次なされる。
【0036】
このとき、データ収集段階は、ミキサーに溶媒を投入する溶媒投入段階;及びミキサーに加えられるトルク値を測定するトルク測定段階;を含む。このとき、前述したところのように、溶媒投入調節ユニットでは、時間の間隔を置いて複数回にわたってミキサーに溶媒を投入し、それに応じてトルク測定器で複数回にわたってミキサーに加えられるトルク値を測定することになるので、溶媒投入段階及びトルク測定段階は交互に行われることになる。
【0037】
一方、本発明によれば、データ収集段階と前記計算段階の間で行われ、前記データ収集段階で収集された複数のトルク値のうち最大トルク値を格納する格納段階;を更に含むことができる。格納段階で格納された最大トルク値は、粉末と溶媒の混合の割合であるニーディングポイントを計算するために用いられる。
【0038】
本発明に係るニーディングポイントは、ミキサーに加えられるトルク値が、前記格納段階で格納された最大トルク値の一定の割合に該当するトルク値に到達する際の粉末及び溶媒の混合の割合である。このとき、一定の割合は30から50%の範囲内に属する値であってよい。最大トルク値の30から50%の範囲内に該当するトルク値に到達する際の粉末及び溶媒の混合の割合であるとき、ミキサー内での混合作業が円滑になされ得ることは前述した通りである。
【0039】
ニーディングポイントが計算されると、ニーディングポイントに到達するまでミキサーに溶媒を更に投入するニーディングポイント到達段階;がなされる。ニーディングポイント到達段階を介してミキサー内の粉末及び溶媒の混合の割合がニーディングポイントに到達すると、ミキサーでは、前記ニーディングポイントで粉末及び溶媒を混合することにより、二次電池の製造に用いられるスラリーが完成することになる。