(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】電流測定装置、電流測定方法及び前記電流測定装置を含むバッテリーパック
(51)【国際特許分類】
G01R 31/58 20200101AFI20220511BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20220511BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G01R31/58
G01R19/00 B
G01R31/00
(21)【出願番号】P 2020524594
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 KR2019007013
(87)【国際公開番号】W WO2019245215
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0072156
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0064721
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウォン-テ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヤン-リム
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-154711(JP,A)
【文献】特開2017-015432(JP,A)
【文献】特開2016-101068(JP,A)
【文献】特開2011-085470(JP,A)
【文献】国際公開第2016/071990(WO,A1)
【文献】特開2013-034319(JP,A)
【文献】特開平06-130112(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0279094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/58
G01R 19/00
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの充放電経路に設けられるスイッチング回路と、
前記充放電経路に設けられるシャント抵抗素子を含み、前記シャント抵抗素子の両端にかかる電圧に対応する電流信号を出力するように構成される電流測定部と、
前記スイッチング回路の両端にかかる電圧を測定するように構成された電圧測定部と、
前記スイッチング回路の温度を測定するように構成された温度測定部と、
前記スイッチング回路、前記電流測定部、前記電圧測定部及び前記温度測定部に動作可能に結合した制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記電流信号に基づき、前記シャント抵抗素子を通して流れる電流を示す第1電流値を決定するように構成され、
前記測定された電圧及び前記測定された温度に基づき、前記スイッチング回路を通して流れる電流を示す第2電流値を決定するように構成され、
前記測定された温度に応じて正常範囲を
決定し、
前記第1電流値と前記第2電流値との差を前記正常範囲と比較して、前記シャント抵抗素子が正常状態であるか否かを判定し、
前記第1電流値と前記第2電流値との差が正常範囲内である場合、前記第1電流値と前記第2電流値との平均値を、前記充放電経路を通して流れる電流を示す第3電流値として決定するように構成される
装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記測定された温度に基づき、前記スイッチング回路のオン抵抗を決定するように構成され、
前記第2電流値は、前記測定された電圧を前記オン抵抗で割った値である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スイッチング回路の温度とオン抵抗との対応関係が記録されているルックアップテーブルが保存されているメモリーデバイスをさらに含み、
前記制御部は、
前記測定された温度をインデックスとして用いて、前記ルックアップテーブルから前記測定された温度に関わって記録されているオン抵抗を、前記スイッチング回路の前記オン抵抗として決定するように構成される請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1電流値と前記第2電流値との差が前記正常範囲から外れる場合、前記第2電流値を前記第3電流値として決定するように構成される請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1電流値と前記第2電流値との差が正常範囲から外れる場合、フォールトメッセージを出力するように構成される請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記測定された温度が減少するほど、前記正常範囲を拡大するように構成される請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置を含むバッテリーパック。
【請求項8】
バッテリーの充放電経路に設けられるスイッチング回路の両端にかかる電圧を測定する段階と、
前記スイッチング回路の温度を測定する段階と、
前記充放電経路に設けられるシャント抵抗素子の両端にかかる電圧に基づき、前記シャント抵抗素子を通して流れる電流を示す第1電流値を決定する段階と、
前記測定された電圧及び前記測定された温度に基づき、前記スイッチング回路を通して流れる電流を示す第2電流値を決定する段階と、
前記測定された温度に応じて正常範囲を
決定する段階と、
前記第1電流値と前記第2電流値との差を前記正常範囲と比較して、前記シャント抵抗素子が正常状態であるか否かを判定する段階と、
前記第1電流値と前記第2電流値との差が正常範囲内である場合、前記第1電流値と前記第2電流値との平均値を、前記充放電経路を通して流れる電流を示す第3電流値として決定する段階と、を含む
電流測定方法。
【請求項9】
前記第2電流値は、
前記測定された電圧を前記測定された温度に関わるオン抵抗で割った値である請求項8に記載の
電流測定方法。
【請求項10】
前記シャント抵抗素子が正常状態であるか否かを判定する段階においては、
前記第1電流値と前記第2電流値との差が前記正常範囲内である場合、前記シャント抵抗素子が正常状態であると判定される請求項8または9に記載の
電流測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーパックの充放電経路を通して流れる電流を測定するための装置及び方法、並びに前記装置を含むバッテリーパックに関する。
【0002】
本出願は、2018年6月22日出願の韓国特許出願第10-2018-0072156号及び2019年5月3 1日出願の韓国特許出願第10-2019-0064721号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、ノートブックPC、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急増し、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれ、反復的な充放電の可能な高性能バッテリーについての研究が活発に進行しつつある。
【0004】
現在、商用化したバッテリーとしては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどがあり、このうち、リチウムバッテリーは、ニッケル系のバッテリーに比べてメモリー効果がほとんど起こらず、充放電が自由で、自己放電率が非常に低くてエネルギー密度が高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
バッテリーを通して流れる電流を測定するために、バッテリーのための充放電経路にシャント抵抗素子(shunt resistor)が設けられ得る。シャント抵抗素子を活用して測定された電流は、過電流を判定するか、またはバッテリーの充電状態(SOC:State-Of-Charge)及び健康状態(SOH:State-Of-Health)を推定するのに必須に活用される。
【0006】
シャント抵抗素子を活用した電流測定は、シャント抵抗素子の両端にかかる電圧を基準抵抗で割ることを基本原理とする。基準抵抗は、シャント抵抗素子の材料、大きさ及び形状などを考慮して予め決められる。ところが、シャント抵抗が時間の経過につれて次第に劣化するか、または振動及び衝撃によって損傷する場合、シャント抵抗素子の実際抵抗は基準抵抗と大きい差を有するようになる。
【0007】
特に、自動車安全のための国際規約であるISO 26262に関わり、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)の4つのクラスのうち最も高いDクラスを満すためには、シャント抵抗素子を含む電流センサーによって測定された電流が信頼できるか(即ち、前記電流センサーが正常であるか)を判定する必要がある。従来には、前記電流センサーによって測定された電流と他の電流センサー(例えば、ホール効果電流センサー)によって測定された電流を相互比較することで、電流測定結果の信頼性を図っている。しかし、二つの電流センサーが必須であることから、費用が多くかかり、空間活用性が低いという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、電流センサーを追加的に備えなくても、バッテリーの充放電経路に設けられるシャント抵抗素子が正常状態であるか否かを診断することができる装置及び方法、並びに前記装置を含むバッテリーパックを提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的及び長所は、下記する説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一面による電流測定装置は、バッテリーのための充放電経路を通して流れる電流を測定するためのものである。前記電流測定装置は、前記充放電経路に設けられるスイッチング回路と、前記充放電経路に設けられるシャント抵抗素子を含み、前記シャント抵抗素子の両端にかかる電圧に対応する電流信号を出力するように構成される電流測定部と、前記スイッチング回路の両端にかかる電圧を測定するように構成された電圧測定部と、前記スイッチング回路の温度を測定するように構成された温度測定部と、前記スイッチング回路、前記電流測定部、前記電圧測定部及び前記温度測定部に動作可能に結合した制御部と、を含む。前記制御部は、前記電流信号に基づき、前記シャント抵抗素子を通して流れる電流を示す第1電流値を決定するように構成される。また、前記制御部は、前記測定された電圧及び前記測定された温度に基づき、前記スイッチング回路を通して流れる電流を示す第2電流値を決定するように構成される。前記制御部は、前記第1電流値及び前記第2電流値に基づき、前記シャント抵抗素子が正常状態であるか否かを判定するように構成される。
【0011】
前記制御部は、前記測定された温度に基づき、前記スイッチング回路のオン抵抗を決定するように構成され得る。前記第2電流値は、前記測定された電圧を前記オン抵抗で割った値である。
【0012】
前記電流測定装置は、前記スイッチング回路の温度とオン抵抗との対応関係が記録されているルックアップテーブルが保存されているメモリーデバイスをさらに含み得る。前記制御部は、前記測定された温度をインデックスとして用いて、前記ルックアップテーブルから前記測定された温度に関わって記録されているオン抵抗を、前記スイッチング回路の前記オン抵抗として決定するように構成され得る。
【0013】
前記制御部は、前記第1電流値及び前記第2電流値に基づいて、前記充放電経路を通して流れる電流を示す第3電流値を決定するように構成され得る。
【0014】
前記制御部は、前記第1電流値と前記第2電流値との差が正常範囲内である場合、前記第1電流値、前記第2電流値及び前記第1電流値と前記第2電流値との平均値のいずれか一つを前記第3電流値として決定するように構成され得る。
【0015】
前記制御部は、前記第1電流値と前記第2電流値との差が正常範囲から外れる場合、前記第2電流値を前記第3電流値として決定するように構成され得る。
【0016】
前記制御部は、前記第1電流値と前記第2電流値との差が正常範囲から外れる場合、フォールトメッセージを出力するように構成され得る。
【0017】
前記制御部は、前記測定された温度に基づいて、前記正常範囲を決定するように構成され得る。前記制御部は、前記測定された温度が減少するほど、前記正常範囲を拡大するように構成され得る。
【0018】
本発明の他面によるバッテリーパックは、前記電流測定装置を含む。
【0019】
本発明のさらに他面による方法は、バッテリーのための充放電経路を通して流れる電流を測定するためのものである。前記方法は、前記充放電経路に設けられるスイッチング回路の両端にかかる電圧を測定する段階と、前記スイッチング回路の温度を測定する段階と、前記充放電経路に設けられるシャント抵抗素子の両端にかかる電圧に基づき、前記シャント抵抗素子を通して流れる電流を示す第1電流値を決定する段階と、前記測定された電圧及び前記測定された温度に基づき、前記スイッチング回路を通して流れる電流を示す第2電流値を決定する段階と、前記第1電流値及び前記第2電流値に基づき、前記シャント抵抗素子が正常状態であるか否かを判定する段階と、を含む。
【0020】
前記第2電流値は、前記測定された電圧を前記測定された温度に関わるオン抵抗で割った値であり得る。
【0021】
前記シャント抵抗素子が正常状態であるか否かを判定する段階においては、前記第1電流値と前記第2電流値との差が正常範囲内である場合、前記シャント抵抗素子が正常状態であると判定され得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施例の少なくとも一つによれば、電流センサーを追加してくても、バッテリーのための充放電経路に設けられるシャント抵抗素子が正常状態であるか否かを診断することができる。
【0023】
なお、本発明の効果は前述の効果に制限されず、言及していないさらに他の効果は、請求範囲の記載から当業者にとって明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例による電流測定装置の機能的構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の電流測定装置を含むバッテリーパックの構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図1及び
図2のスイッチング回路に関わる第1ルックアップテーブルを例示的に示す。
【
図4】
図1及び
図2の制御部に含まれた論理回路を例示的に示す。
【
図5】本発明の他の実施例による電流測定方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0026】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0027】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素のうちいずれか一つを残りと区別する目的として使用され、このような用語によって構成要素が限定されることではない。
【0028】
なお、明細書の全体にかけて、ある部分が、ある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、明細書に記載の「制御ユニット」のような用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を示し、これはハードウェアやソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの結合せにより具現され得る。
【0029】
さらに、明細書の全体に亘って、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されているとするとき、これは、「直接的に連結(接続)」されている場合のみならず、その中間に他の素子を介して「間接的に連結(接続)」されている場合も含む。
【0030】
図1は、本発明の一実施例による電流測定装置の機能的構成を概略的に示す図であり、
図2は、
図1の電流測定装置を含むバッテリーパックの構成を概略的に示す図である。
【0031】
図1及び
図2を参照すれば、バッテリーパックPは、バッテリー10、スイッチング回路50及び電流測定装置1(以下、「装置」と称する。)を含む。
【0032】
バッテリー10は、少なくとも一つのバッテリーセルを含む。複数のバッテリーセルがバッテリー10に含まれる場合、複数のバッテリーセルは相互電気的に直列または並列に接続し得る。
【0033】
スイッチング回路50は、少なくとも一つの充電スイッチ及び少なくとも一つの放電スイッチを含み得る。各充電スイッチは、各放電スイッチに電気的に直列接続し得る。スイッチング回路50に複数の充電スイッチが含まれる場合、複数の充電スイッチは電気的に並列接続し得る。スイッチング回路50に複数の放電スイッチが含まれる場合、複数の放電スイッチは、電気的に並列接続し得る。
【0034】
各充電スイッチは、バッテリー10を充電する方向へ流れる電流を制御できる。例えば、各充電スイッチは、バッテリー10の正極端子とバッテリーパックPの正極端子との間に位置し、バッテリーパックPの正極端子からバッテリー10の正極端子へ流れ込む電流である充電電流の大きさを調節し得る。
【0035】
各放電スイッチは、バッテリー10を放電する方向へ流れる電流を制御できる。例えば、各放電スイッチは、バッテリー10の正極端子とバッテリーパックPの正極端子との間に位置し、バッテリー10の正極端子からバッテリーパックPの正極端子へ流れ出る電流である放電電流の大きさを調節し得る。
【0036】
例えば、各充電スイッチ及び各放電スイッチは、ゲート、ドレーン及びソース端子を含むFET(Field Effect Transistor)であり得る。FETは、ゲート端子とソース端子との間に印加された電圧の大きさによって、オンまたはオフされ得る。
【0037】
装置1は、バッテリー10の充放電経路を通して流れる電流を測定するように提供される。装置1は、電圧測定部100、温度測定部200、電流測定部300及び制御部400を含む。装置1は、メモリーデバイス500をさらに含み得る。
【0038】
電圧測定部100は、スイッチング回路50の両端に電気的に接続し得る。即ち、電圧測定部100は、スイッチング回路50にかかる電圧を測定するように、スイッチング回路50に電気的に並列接続し得る。
【0039】
電圧測定部100は、スイッチング回路50の一端と他端との電位差をスイッチング回路50の電圧として測定し得る。例えば、各充電スイッチの一端がバッテリー10の正極端子に電気的に接続しており、各放電スイッチの一端がバッテリーパックPの正極端子に電気的に接続しており、各充電スイッチの他端と各放電スイッチの他端とが電気的に接続している場合、各充電スイッチの一端と各放電スイッチの一端との電位差がスイッチング回路50の電圧として電圧測定部100によって測定され得る。
【0040】
電圧測定部100は、制御部400と電気的信号を交換できるように、制御部400に動作可能に結合し得る。電圧測定部100は、制御部400からの電圧測定命令に応じて、単位時間ごとにスイッチング回路50の電圧を測定し、測定されたスイッチング回路50の電圧を示す電圧信号を制御部400に出力し得る。
【0041】
温度測定部200は、スイッチング回路50から所定の距離内に位置し、スイッチング回路50の温度を測定するように提供される。温度測定部200は、制御部400と電気的信号を交換できるように、制御部400に動作可能に結合し得る。温度測定部200は、単位時間ごとにスイッチング回路50の温度を測定し、測定されたスイッチング回路50の温度を示す温度信号を制御部400に出力し得る。熱電対のような公知の温度センサーが温度測定部200として活用され得る。
【0042】
電流測定部300は、シャント抵抗素子30及び信号処理回路32を含む。
【0043】
シャント抵抗素子30は、バッテリー10の負極端子とバッテリーパックPの負極端子との間の充放電経路に位置し得る。シャント抵抗素子30の両端にかかる電圧は、充放電経路を通して流れる電流の方向と強度に依存する。
【0044】
信号処理回路32は、制御部400と電気的信号を交換できるように、制御部400に動作可能に結合する。信号処理回路32は、制御部400からの電流測定命令に応じて、シャント抵抗素子30の両端にかかる電圧に基づき、単位時間ごとにシャント抵抗素子30を通して流れる電流を測定し、測定された電流の方向及び大きさを示す電流信号を制御部400に出力し得る。
【0045】
信号処理回路32の二つの入力端子は、シャント抵抗素子30の一端と他端に各々電気的に接続し得る。信号処理回路32は、信号処理回路32の二つの入力端子を介して受信されるシャント抵抗素子30の両端にかかる電圧を増幅した後、増幅した電圧を示すデジタル信号を前記電流信号として制御部400に伝送し得る。制御部400は、オーム法則によって、単位時間ごとの信号処理回路32からの電流信号に基づいて充放電経路を流れる電流の方向及び強度を示す第1電流値を決定し得る。
【0046】
制御部400は、ハードウェア的に、ASICs(application specific integrated circuits)、DSPs(digital signal processors)、DSPDs(digital signal processing devices)、PLDs(programmable logic devices)、FPGAs(field programmable gate arrays)、マイクロプロセッサー(microprocessors)、その他の機能の遂行のための電気的ユニットの少なくとも一つを用いて具現され得る。制御部400には、メモリーデバイス500が内蔵され得る。
【0047】
制御部400は、電圧測定部100からの単位時間ごとの電圧信号に基づき、スイッチング回路50の両端にかかる電圧を示す電圧値を決定する。制御部400は、温度測定部200からの単位時間ごとの温度信号に基づき、スイッチング回路50の温度を示す温度値を決定する。
【0048】
制御部400は、スイッチング回路50に関わる電圧値及び温度値に基づき、スイッチング回路50を通して流れる電流の方向及び強度を示す第2電流値を単位時間ごとに決定し得る。
【0049】
第1電流値及び第2電流値は、いずれもバッテリー10の充放電経路を通して流れる電流の方向及び強度を示すことから、通常の場合には第1電流値と第2電流値とは相互同一であるか、または許容可能な範囲内の差のみを有する。一方、シャント抵抗素子30が損傷するか、またはシャント抵抗素子30に短絡などが発生した場合には、第1電流値と第2電流値との差がよほど大きくなり得る。
【0050】
制御部400は、単位時間ごとのスイッチング回路50の温度に基づき、スイッチング回路50のオン抵抗(on-resistance)を推定できる。スイッチング回路50のオン抵抗とは、スイッチング回路50がオン状態である間におけるスイッチング回路50の抵抗を指すものであって、温度に依存するパラメータであり得る。制御部400は、スイッチング回路50の温度とオン抵抗との対応関係が記録されている第1ルックアップテーブルを参照して、特定の時点で測定されたスイッチング回路50の温度に対応するものとして第1ルックアップテーブル内に記録されているオン抵抗を、前記特定の時点におけるスイッチング回路50のオン抵抗として推定し得る。前記第1ルックアップテーブルは、メモリーデバイス500に予め保存され得る。
【0051】
制御部400は、オームの法則に従って、前記特定の時点におけるスイッチング回路50の両端にかかる電圧を、前記推定されたオン抵抗で割ることで、前記特定時点におけるスイッチング回路50に流れる電流を示す第2電流値を決定できる。
【0052】
制御部400は、第1電流値及び第2電流値に基づき、充放電経路に流れる電流を示す第3電流値を決定できる。例えば、制御部400は、第1電流値と第2電流値との差に基づき、第1電流値を充放電経路に流れる電流値として判断し得る。他の例で、制御部400は、第1電流値及び第2電流値に基づき、第1電流値と第2電流値との平均を充放電経路に流れる電流値として判断し得る。さらに他の例で、制御部400は、第1電流値と第2電流値との差に基づき、第2電流値を充放電経路に流れる電流値として判断し得る。
【0053】
制御部400は、第1電流値と第2電流値との差に基づき、シャント抵抗素子30が正常状態であるか否かを診断できる。例えば、制御部400は、第1電流値と第2電流値との差が正常範囲(例えば、-10~10mA)内である場合、シャント抵抗素子30が正常状態であると判定し得る。
【0054】
正常範囲は、予め決められたものであり得る。代案的に、正常範囲は、スイッチング回路50の温度に基づき、制御部400によって決定され得る。スイッチング回路50は、スイッチング回路50の温度が増加するほどスイッチング回路50のオン抵抗は減少し、スイッチング回路50の温度が減少するほどスイッチング回路50のオン抵抗は増加する特性を有し得る。したがって、制御部400は、スイッチング回路50の温度が増加するほど正常範囲を縮小し、スイッチング回路50の温度が減少するほど正常範囲を拡大できる。スイッチング回路50の温度と正常範囲との対応関係が記録された第2ルックアップテーブルが、メモリーデバイス500に予め保存されていてもよい。制御部400は、スイッチング回路50の温度をインデックスとして用いて、スイッチング回路50の温度に関わる正常範囲を第2ルックアップテーブルから獲得できる。
【0055】
制御部400は、第1電流値と第2電流値との差が正常範囲を超過する場合、シャント抵抗素子30が故障状態であると判定し得る。シャント抵抗素子30が故障状態であるというのは、シャント抵抗素子30が劣化または損傷することによって、シャント抵抗素子30の抵抗と基準抵抗との差が一定のレベルを超えた状態を意味する。前記正常範囲を示すデータは、メモリーデバイス500に予め保存され得る。制御部400は、シャント抵抗素子30が故障状態であると判定するとき、フォールトメッセージを外部デバイス2へ伝送し得る。外部デバイス2は、バッテリーパックPが装着される電気システム(例えば、電気自動車)のECU(Electronic Control Unit)であり得る。
【0056】
制御部400は、第1電流値と第2電流値との差が前記正常範囲内である場合、第1電流値、第2電流値及び第1電流値と第2電流値との平均値のいずれか一つを第3電流値として決定し得る。第1電流値と第2電流値との差が前記正常範囲内であるというのは、第1電流値が信頼可能であることを意味するためである。
【0057】
制御部400は、第1電流値と第2電流値との差が前記正常範囲から外れた場合、第2電流値を第3電流値として決定し得る。
【0058】
メモリーデバイス500は、制御部400と電気的信号を交換できるように制御部400に動作可能に結合し得る。メモリーデバイス500は、情報を記録して消去できる保存媒体であれば、その種類は特に制限されない。例えば、メモリーデバイス500は、RAM、ROM、レジスター、ハードディスク、光記録媒体または磁気記録媒体であり得る。メモリーデバイス500は、制御部400によって各々アプローチ可能に、例えば、データバスなどによって制御部400に電気的に接続し得る。メモリーデバイス500は、制御部400が各々実行する各種制御ロジッグを含むプログラム、及び/または制御ロジッグが実行されるときに発生するデータを保存及び/または更新及び/または消去及び/または伝送できる。
【0059】
図3は、
図1及び
図2のスイッチング回路に関わる第1ルックアップテーブルを例示的に示す。
【0060】
図3を参照すれば、前述したように、制御部400は、スイッチング回路50のオン抵抗を決定するために、メモリーデバイス500に保存されている第1ルックアップテーブルを参照し得る。
【0061】
例えば、制御部400は、温度測定部200から受信したスイッチング回路50の温度がaである場合、温度aをインデックスとして用いて、前記第1ルックアップテーブル内で温度aに関わるxをスイッチング回路50のオン抵抗として決定し得る。他の例で、制御部400は、スイッチング回路50の温度がbである場合、前記第1ルックアップテーブル内で温度bに関わるyをスイッチング回路50のオン抵抗として決定し得る。
【0062】
装置1は、スイッチング回路50に含まれたFETのような半導体スイッチのオン抵抗が温度に依存して変わる特性を活用し、スイッチング回路50の温度及びスイッチング回路50の両端にかかる電圧に基づいてスイッチング回路50を通して流れる電流を示す第2電流値を決定する。その後、装置1は、第2電流値をシャント抵抗素子30を活用して測定された第1電流値と比較することで、ホール効果センサーなどを追加しなくても電流測定の正確度を向上させることができるという長所がある。
【0063】
図4は、
図1及び
図2の制御部に含まれた論理回路を例示的に示す。
図4を参照すれば、制御部400は、制御部400に含まれた論理回路450を用いて、第2電流値を決定し得る。ここで、前記論理回路450は、スイッチング回路50の温度T
SWとスイッチング回路50の両端にかかる電圧V
SWを入力値として受信するとき、第2電流値I
SWを出力値として出力するように構成された論理回路であり得る。
【0064】
装置1は、バッテリー管理システム(BMS:Battery Management System)に適用可能である。即ち、BMSは、前記装置1を含み得る。装置1の各構成要素の少なくとも一部は、従来のBMSに含まれた構成の機能を補完または追加することで具現できる。例えば、装置の制御部400及びメモリーデバイス500は、BMSの構成要素として具現され得る。
【0065】
図5は、本発明の他の実施例による電流測定方法を概略的に示すフローチャートである。
図5の方法に含まれた各段階の遂行主体は、装置1の各構成要素であると言える。
【0066】
図5を参照すれば、段階S100において、制御部400は、電圧測定部100からの電圧信号、温度測定部200からの温度信号及び電流測定部300からの電流信号を収集する。
【0067】
段階S110においては、制御部400は、電圧信号及び温度信号に基づき、スイッチング回路50の両端にかかる電圧を示す電圧値及びスイッチング回路50の温度を示す温度値を決定する。
【0068】
段階S120においては、制御部400は、電流信号に基づき、シャント抵抗素子30を通して流れる電流を示す第1電流値を決定する。シャント抵抗素子30は、充放電経路に設けられるものであることから、第1電流値は充放電経路を通して流れる電流を示すものでもある。
【0069】
段階S130において、制御部400は、段階S110で決められた電圧値及び温度値に基づき、スイッチング回路50を通して流れる電流を示す第2電流値を決定する。スイッチング回路50は、充放電経路に設けられるものであることから、第2電流値は充放電経路を通して流れる電流を示すものでもある。
【0070】
段階S140において、前記第1電流値及び前記第2電流値に基づき、シャント抵抗素子30が正常状態であるか否かを判定する。例えば、第1電流値と第2電流値との差が前記正常範囲内である場合、シャント抵抗素子30が正常状態であると判定され得る。一方、第1電流値と第2電流値との差が前記正常範囲から外れる場合、シャント抵抗素子30が故障状態であると判定され得る。段階S140の値が「いいえ」である場合、段階S150へ進む。段階S140の値が「はい」である場合、前記方法は終了する。
【0071】
段階S150において、制御部400は、フォールトメッセージを外部デバイス2へ伝送し得る。フォールトメッセージは、シャント抵抗素子30が故障状態であることを使用者または外部デバイス2に知らせるためのものである。
【0072】
以上で説明した本発明の実施例は、必ずしも装置及び方法を通じて具現されることではなく、本発明の実施例の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を通じて具現され得、このような具現は、本発明が属する技術分野における専門家であれば、前述した実施例の記載から容易に具現できるはずである。
【0073】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0074】
また、上述の本発明は、本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想から脱しない範囲内で多様な置換、変形及び変更が可能であるため、上述の実施例及び添付された図面によって限定されず、多様な変形が行われるように各実施例の全部または一部を選択的に組み合わせて構成可能である。