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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】分離膜基材のない分離膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/426 20210101AFI20220511BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20220511BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220511BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20220511BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20220511BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220511BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220511BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20220511BHJP
   C08F 4/04 20060101ALI20220511BHJP
   C08F 4/28 20060101ALI20220511BHJP
   C08F 4/34 20060101ALI20220511BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220511BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H01M50/426
H01M50/411
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/429
H01M50/434
H01M50/443
H01M50/489
C08F4/04
C08F4/28
C08F4/34
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
C08F299/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020535553
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 KR2019004646
(87)【国際公開番号】W WO2019221401
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0055138
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ホ・アン
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ウ・ナム
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ドゥク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・アン・イ
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-069457(JP,A)
【文献】特開2007-035544(JP,A)
【文献】特開2015-144082(JP,A)
【文献】特開2016-139604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
C08J 5/18
C08F 4/04
C08F 4/28
C08F 4/34
C08F 299/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極間の電気絶縁性を確保するための電気化学素子用多孔性分離膜であって、
前記分離膜はポリオレフィン基材を含んでおらず、
無機物粒子、前記無機物粒子間の結合のための高分子バインダー、及び架橋剤を含む分離膜用組成物を混合してコーティングしてから乾燥した後、前記架橋剤を架橋結合することによって製造され、
前記分離膜用組成物において前記架橋剤の含量は、固形分総重量を基準に重量%超過~20重量%以下であり、
前記架橋剤は下記の化学式で表現される、電気化学素子用多孔性分離膜
【化1】
【化2】
【化3】
前記化学式1~3で、mは1~100の整数、nは0~30の整数、oは1~1,000の整数である。前記化学式1~3の重量平均分子量は1,000~100,000である。
【化4】
前記化学式4で、m4は1~100の整数、n4は0~30の整数、o4は1~1,000の整数である。前記化学式4の重量平均分子量は1,000~100,000であり、p値はこれに従属する変数である。
【化5】
前記化学式5で、a、cは1~30の整数、bは1~1000の整数、重量平均分子量は1,000~100,000である。
【請求項2】
前記無機物粒子は、誘電率が1以上の高誘電率無機物粒子、圧電性(piezoelectricity)を有する無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、アルミナ水和物又はこれらの2種以上の混合物である、請求項1に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項3】
前記無機物粒子は、Al、AlOOH、SiO、MgO、TiO及びBaTiOからなる群から選択される1種以上である、請求項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項4】
前記高分子バインダーは、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン、ポリビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチルレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム(SBR)、TFE、フッ素ゴム及びポリイミドからなる群から選択される1種以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項5】
前記高分子バインダーは、PVdF、TFE及びポリイミドからなる群から選択される1種以上である、請求項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項6】
前記分離膜は、開始剤及び/又は反応触媒をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項7】
前記架橋剤の反応温度は120℃~160℃である、請求項1からのいずれか一項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項8】
前記開始剤は、アゾ(azo)系化合物又はペルオキシド(peroxide)系化合物である、請求項またはに記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項9】
前記アゾ系化合物は、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)の中で少なくとも1種以上が選択される、請求項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項10】
前記ペルオキシド系化合物は、テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシカーボネート、ブチルペルオキシネオデカノエート、ジプロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジエトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジエトキシヘキシルペルオキシジカーボネート、ヘキシルペルオキシジカーボネート、ジメトキシブチルペルオキシジカーボネート、ビス(3-メトキシ-3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、ジブチルペルオキシジカーボネート、ジセチル(dicetyl)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチル(dimyristyl)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート(peroxypivalate)、ヘキシルペルオキシピバレート、ブチルペルオキシピバレート、トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジメチルヒドロキシブチルペルオキシネオデカノエート、アミルペルオキシネオデカノエート、アトフィナ(Atofina)、ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、アミルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ラウリルペルオキシド、ジラウロイル(dilauroyl)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド又はジベンゾイルペルオキシドの中で少なくとも1種以上が選択される、請求項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項11】
前記分離膜の厚さは5μm~30μmである、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項12】
前記分離膜において架橋剤の含量は、固形分総重量を基準に重量%超過~10重量%以下である、請求項1から11のいずれか一項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項13】
前記分離膜の通気度は、50sec/100cc~4,000sec/100ccである、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の電気化学素子用多孔性分離膜を含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2018年5月14日付の韓国特許出願第2018-0055138号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は分離膜基材のない分離膜に関するものであり、具体的には分離膜の基材を成すポリオレフィン樹脂基材を含んでいないながらも無機物と前記無機物を結合させるバインダー高分子を含む分離膜に関するものである。
【背景技術】
【0003】
スマートフォン、ノートブック型PC、タブレット型PC、携帯用ゲーム機のような携帯用機器の軽量化及び高機能化につれて、駆動電源として使われる二次電池に対する需要が増加している。過去にはニッケル-カドミウム、ニッケル-水素、ニッケル-亜鉛電池などが使われていたが、現在は作動電圧が高くて単位重量当たりのエネルギー密度が高いリチウム二次電池が最も多く使われている。
【0004】
リチウム二次電池は携帯用機器市場の成長に比例してその需要が増加しており、最近には電気自動車(EV)及びハイブリッド電気自動車(HEV)の動力源、新材生エネルギーの貯蔵用にまでその使用領域が拡がっている。
【0005】
リチウム二次電池は、正極/分離膜/負極の構造の充放電可能な電極組立体を電池ケースに装着した構造である。正極及び負極は金属集電体の片面又は両面に電極活物質などを含むスラリーを塗布し、乾燥及び圧延することによって製造される。
【0006】
分離膜は二次電池の寿命を決める重要な要素の一つであり、正極と負極を電気的に絶縁させながら電解液は円滑に通過するようにイオン透過性及び機械的強度が必要である。高エネルギーリチウム二次電池の適用対象が拡がるにつれて分離膜の高温安全性に対する要求も高くなっている。
【0007】
既存の通常使われる分離膜基材と無機物コーティング層からなる分離膜はその材料特性によって電極との接着力が十分ではないから、製造工程によって界面で部分的に浮き上がるかしわを発生させるなどの問題がある。また、分離膜基材として一般的に使われるポリオレフィンは高温で融解するなど、熱的安全性にも問題がある。
【0008】
このような問題点を解決するために、ポリオレフィン分離膜基材を除去し、無機物コーティング層のみで分離膜を構成したが、分離膜自体の絶縁性が著しく低いため、電気化学素子に適用する場合、内部短絡に弱く、低い引張強度又は伸び率によって分離膜が容易に破れて電極組立体の内部で微細な短絡が発生する致命的な欠点がある。
【0009】
特許文献1は有機改質されたアルミニウムベーマイト及び有機高分子から構成された微細多孔性高分子層を開示しているが、これらの強度を向上させるための重合などの方法を開示していない。
【0010】
特許文献2はリチウム電池用電解質、及びこれを含む負極及びリチウム電池に関するものであり、正極と負極との間に電解質及び固体電解質などから構成され、分離膜の役割を果たす中問層を開示している。前記電解質が正極と負極との間に介在されるか、分離膜を含むことができるという点で本発明に対応する構造であるが、表面改質されたナノ粒子複合体がブロック共重合体に分散されている点で、本発明とは違いがある。また、特許文献2は前記ナノ粒子が表面改質されることによる効果のみ記載している。
【0011】
非特許文献1はPVdF-HFP/PEGDMA(ポリエチレングリコールジメタクリレート)の架橋について開示しているが、前記物質を分離膜に適用したものは開示せず、高分子電解液のみに適用している。
【0012】
非特許文献2はベーマイトナノ粒子とポリビニリデンフルオリド高分子をリチウム二次電池用分離膜として開示しているが、ストレスの高い電池セルの組立過程に適用するのには適しないと言及している。
【0013】
非特許文献3は柔軟性があり、熱的安全性があるリチウム二次電池の分離膜としてマグネシウムアルミネートを基にする多孔性セラミック膜を開示しているが、強度を向上させるための方法を開示していない。
【0014】
このように、高温環境に対する安全性が高く、優れた絶縁性を有し、引張強度及び伸び率が向上し、電解液含浸特性に優れ、高いイオン伝達が可能であるポリオレフィン基材のない分離膜に対する効果的な技術は未だ提示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国登録特許第8883354号公報
【文献】韓国公開特許第2016-0140211号公報
【非特許文献】
【0016】
【文献】Thermal shundown behavior of PVdF-HFP based polymer electrolytes comprising heat sensitive cross linkable oligomers, J. power Sources 144, 2005
【文献】Boehmite-based ceramic separator for lithium-ion batteries, Journal of Applied Electrochemisrty, 2016, 69
【文献】Thin, flexible and thermally stable ceramic membranes as separator for lithium-ion batteries, Journal of Membrane Science, 2014, 103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は前記のような問題点を解決するためのものであり、ポリオレフィン基材を含まなく、無機物粒子、前記無機物粒子間の結合のためのバインダーを含む構造の分離膜を使うことにより、従来の分離膜の絶縁性を確保するとともに、高温環境に対する安全性が高く、優れた絶縁性を有し、電解液含浸特性に優れ、高いイオン伝達が可能であり、分離膜自体の引張強度及び伸び率を向上させることにより、分離膜の損傷によって短絡が発生することを防止することができる技術及び前記技術が適用された分離膜を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記のような問題点を解決するための本発明は、正極と負極間の電気絶縁性を確保するための電気化学素子用多孔性分離膜であって、前記分離膜はポリオレフィン基材を含んでおらず、無機物粒子、前記無機物粒子間の結合のための高分子バインダー、及び架橋剤を含む分離膜用組成物を混合してコーティングしてから乾燥した後、前記架橋剤を架橋結合することによって製造され、前記分離膜用組成物において前記架橋剤の含量は、固形分総重量を基準に0重量%超過~5重量%以下である、電気化学素子用多孔性分離膜を提供する。
【0019】
前記架橋剤は下記の化学式で表現されることができる。
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
前記化学式1~3で、mは1~100の整数、nは0~30の整数、oは1~1,000の整数である。前記化学式1~3の重量平均分子量は1,000~100,000である。
【0024】
【化4】
【0025】
前記化学式4で、m4は1~100の整数、n4は0~30の整数、o4は1~1,000の整数である。前記化学式4の重量平均分子量は1,000~100,000であり、p値はこれに従属する変数である。
【0026】
【化5】
【0027】
前記化学式5で、a、cは1~30の整数、bは1~1000の整数、重量平均分子量は1,000~100,000である。
【0028】
前記無機物粒子は、誘電率が1以上の高誘電率無機物粒子、圧電性(piezoelectricity)を有する無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、アルミナ水和物又はこれらの2種以上の混合物であり、好ましくはAl、AlOOH、SiO、MgO、TiO及びBaTiOからなる群から選択される1種以上である。
【0029】
前記高分子バインダーは、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン、ポリビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム(SBR)、TFE、フッ素ゴム及びポリイミドからなる群から選択される1種以上であり、好ましくはPVdF、TFE及びポリイミドからなる群から選択される1種以上である。
【0030】
前記分離膜は、開始剤及び/又は反応触媒をさらに含むことができ、前記架橋剤の反応温度は120℃~160℃である。
【0031】
前記開始剤は、アゾ(azo)系化合物又はペルオキシド(peroxide)系化合物であり、具体的に、前記アゾ系化合物は、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)の中で少なくとも1種以上が選択されるものであり、好ましくは2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)である。
【0032】
前記ペルオキシド系化合物は、テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシカーボネート、ブチルペルオキシネオデカノエート、ジプロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジエトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジエトキシヘキシルペルオキシジカーボネート、ヘキシルペルオキシジカーボネート、ジメトキシブチルペルオキシジカーボネート、ビス(3-メトキシ-3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、ジブチルペルオキシジカーボネート、ジセチル(dicetyl)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチル(dimyristyl)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート(peroxypivalate)、ヘキシルペルオキシピバレート、ブチルペルオキシピバレート、トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジメチルヒドロキシブチルペルオキシネオデカノエート、アミルペルオキシネオデカノエート、アトフィナ(Atofina)、ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、アミルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ラウリルペルオキシド、ジラウロイル(dilauroyl)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド又はジベンゾイルペルオキシドの中で少なくとも1種以上が選択されるものである。
【0033】
前記分離膜の厚さは5μm~30μmであることが好ましい。
【0034】
前記分離膜において架橋剤の含量は、固形分総重量を基準に0重量%超過~5重量%以下、前記分離膜の通気度は、50sec/100cc~4,000sec/100ccである。
【0035】
本発明は本発明による電気化学素子用分離膜を含む電気化学素子を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について詳細に説明する。説明に先立ち、この明細書及び特許請求範囲に使用された用語又は単語は通常的又は辞書的意味に限定して解釈されてはいけなく、発明者は自分の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に合う意味と概念に解釈されなければならない。したがって、この明細書に記載された実施例に提示された構成は本発明の最も好適な一実施例に過ぎなく、本発明の技術的思想を全部代弁するものではないので、本出願の時点にこれらを代替することができた多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0037】
本発明は、正極と負極間の電気絶縁性を確保するための電気化学素子用分離膜であって、前記分離膜はポリオレフィン基材を含んでおらず、無機物粒子、前記無機物粒子間の結合のための高分子バインダー、及び架橋剤を含む電気化学素子用分離膜を提供する。
【0038】
本発明の分離膜は、従来の一般的な分離膜に比べて、ポリオレフィン系の分離膜基材がない構造である。すなわち、従来の一般的な分離膜はポリオレフィン系の分離膜基材の一面に無機物とバインダーからなる無機物層が塗布された構造であるのに対して、本発明は従来の分離膜基材を省略し、無機物層を構成する物質がそのまま分離膜を構成する。
【0039】
一方、他の従来の分離膜として、前記無機物層のみで構成される分離膜は、ポリオレフィン分離膜基材が省略されるから、分離膜の全体的な強度が低くなるのに伴い電極組立体間に介在された分離膜が損傷して短絡が発生する可能性が高くなる問題がある。
【0040】
1)架橋剤
前記架橋剤は下記の化学式で表現されることができる。
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
前記化学式1~3で、mは1~100の整数、nは0~30の整数、oは1~1,000の整数である。前記化学式1~3の重量平均分子量は1,000~100,000である。
【0045】
【化9】
【0046】
前記化学式4で、m4は1~100の整数、n4は0~30の整数、o4は1~1,000の整数である。前記化学式4の重量平均分子量は1,000~100,000であり、p値はこれに従属する変数である。
【0047】
【化10】
【0048】
前記化学式5で、a、cは1~30の整数、bは1~1000の整数、重量平均分子量は1,000~100,000である。
【0049】
前記分離膜において架橋剤の含量は、固形分総重量を基準に2重量%超過~20重量%以下、好ましくは2重量%超過~10重量%以下、より好ましくは2重量%超過~8重量%以下、より好ましくは3重量%超過~7重量%以下、最も好ましくは4重量%超過~6重量%以下である。
【0050】
前記分離膜において、架橋剤の含量が上限値より多い場合には、完全に架橋されずに局部的に架橋剤が可塑剤(plasticizer)の役割を果たすようになり、むしろ引張強度が著しく減少するので好ましくない。
【0051】
20重量%を超える場合、無機物の含量が少なくてイオン伝導度が低くなり、膜の熱的収縮などの機械的物性の低下が発生し得る。
【0052】
本発明は、前記架橋剤が特定の温度で反応して3次元網状構造を成し、網状構造の特性上、密度が高くなるにつれて剛性に関連した物性が向上し、電子の移動に影響を与えるから絶縁抵抗が高くなる。
【0053】
前記架橋剤の反応温度は120℃~160℃の範囲、より好ましくは130℃~150℃の範囲であり得る。前記温度範囲に到達する前の低温では線形構造を有する架橋剤が前記温度範囲に到達することによって反応が起こり、架橋結合によって3次元網状構造が形成される。
【0054】
前記架橋剤の反応温度が120℃より低い場合には架橋剤の架橋結合部位の結合が切れなくて架橋反応が起こりにくく、160℃より高い場合には架橋剤が溶融し得るので好ましくない。
【0055】
また、本発明による分離膜は、無機物粒子とバインダーからなる分離膜に対して架橋剤が付け加わる構成を有するから、分離膜基材が省略されても高い絶縁破壊電圧(breakdown voltage)を有する。
【0056】
具体的に、伝導性物質である鉄(Fe)のような異物を本発明の分離膜に適用する場合、自動車用二次電池に適用され、分離膜基材を含む分離膜と比較するとき、ほぼ類似の絶縁破壊電圧値を有することが確認され、また、前記伝導性物質の適用前と適用後の絶縁破壊電圧の減少がほとんど起こらない。
【0057】
2)無機物粒子
無機物粒子は、無機物粒子間の空間が形成できるようにして微細気孔を形成する役割と物理的形態を維持することができる一種のスペーサー(spacer)の役割を兼ね、一般的に200℃以上の高温になっても物理的特性が変わらない特性を有する。
【0058】
このような無機物粒子は電気化学的に安定さえすれば特に限定されない。すなわち、本発明で使える無機物粒子は適用される電池の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+を基準に0~5V)で酸化反応及び/又は還元反応が起こらないものであれば特に限定されない。特に、電解質イオン伝達能力が高い無機物粒子を使う場合、電気化学素子内の性能向上を図ることができるので、できるだけ電解質イオン伝達能力が高いことが好ましい。また、前記無機物粒子が高い密度を有する場合、分離膜の形成時に分散させるのに難しさがあるだけではなく、電池の製造時に重さ増加の問題点もあるので、できるだけ密度が小さいことが好ましい。また、誘電率が高い無機物の場合、液体電解質内の電解質塩、例えばリチウム塩の解離度増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0059】
前記のような理由のため、前記無機物粒子は誘電率が1以上、好ましくは10以上の高誘電率無機物粒子、圧電性(piezoelectricity)を有する無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、アルミナ水和物又はこれらの中で2以上の混合物であり得る。
【0060】
前記誘電率が1以上の無機物粒子の例としては、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiC又はこれらの混合物などがあるが、これに限定されるものではない。
【0061】
前記圧電性(piezoelectricity)無機物粒子は常圧では不導体であるが、一定の圧力が印加された場合、内部構造の変化によって電気が通じる物性を有する物質を意味するものであり、誘電率が100以上の高誘電率特性を示すだけでなく、一定の圧力を印加することによって引張又は圧縮される場合、電荷が発生し、一面は正に、反対側は負にそれぞれ帯電されることにより、両面間に電位差が発生する機能を有する物質である。
【0062】
前記のような特徴を有する無機物粒子を使う場合、Local crush、Nailなどの外部衝撃によって両電極の内部短絡が発生する場合、分離膜にコートされた無機物粒子によって正極と負極が直接接触しないだけでなく、無機物粒子の圧電性によって粒子内の電位差が発生し、これにより両電極間の電子移動、すなわち微細な電流が流れることにより、電池の緩い電圧減少及びこれによる安全性向上を図ることができる。
【0063】
前記圧電性を有する無機物粒子の例としては、BaTiO、Pb(Zr、Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO(PMN-PT)hafnia(HfO)又はこれらの混合物などがあるが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子はリチウム元素を含むがリチウムを貯蔵せずにリチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子を指称するものであり、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子は粒子構造の内部に存在する一種の欠陥(defect)によってリチウムイオンを伝達及び移動させることができるから、電池内のリチウムイオン伝導度が向上し、これにより電池性能の向上を図ることができる。
【0065】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の例としては、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14LiO-9Al-38TiO2-39Pなどの(LiAlTiP)系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.250.75などのリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、LiNなどのリチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、LiPO4-LiSiSなどのSiS系ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiILiなどのP系ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、又はこれらの混合物などがあるが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記アルミナ水和物は、製造方法によって結晶質のものとゲル状のものに分類される。前記結晶質アルミナ水和物は、ギブザイトγ-Al(OH)、バイエライトAl(OH)、ダイアスポアα-AlOOH、ベーマイトγ-AlOOHの4種があり、ゲル状のアルミナ水和物にはアルミニウムイオンを含む水溶液をアンモニアによって沈澱させた水酸化アルミニウムがこれに相当し、好ましくはベーマイトγ-AlOOHが使われることができる。
【0067】
前述した高誘電率無機物粒子、圧電性を有する無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子及びアルミナ水和物を混用する場合、これらの相乗効果は倍加することができる。
【0068】
前記無機物粒子の大きさは制限がないが、均一な厚さのフィルム形成及び適切な孔隙率のために、できるだけ0.001μm~10μmの範囲であることが好ましい。0.001μm未満の場合、分散性が低下して分離膜の物性を調節しにくく、10μmを超える場合、同じ固形分含量で製造される分離膜の厚さが増加して機械的物性が低下し、また余りにも大きな気孔の大きさによって電池の充放電時に内部短絡が起こる確率が高くなる。
【0069】
3)高分子バインダー
前記高分子バインダーは、液体電解液の含浸時にゲル化して高い電解液膨潤度(degree of swelling)を示す特徴を有することができる。実際に、前記バインダー高分子が電解液膨潤度に優れた高分子の場合、電池の組立後に注入される電解液は前記高分子に染み込み、吸収された電解液を保有する高分子は電解質イオン伝導能力を有するようになる。また、従来の疎水性ポリオレフィン系分離膜に比べて電池用電解液に対する濡れ性(wetting)が改善されるだけでなく、従来に使われにくかった電池用極性電解液の適用も可能であるという利点がある。よって、できれば溶解度指数が15~45MPa1/2の高分子が好ましく、15~25MPa1/2及び30~45MPa1/2の範囲がより好ましい。溶解度指数が15MPa1/2未満でありながら45MPa1/2を超える場合、通常的な電池用液体電解液によって含浸(swelling)されにくくなる。
【0070】
具体的に、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン、ポリビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチルレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム(SBR)、TFE、フッ素ゴム及びポリイミドからなる群から選択される1種以上であり、好ましくはPVdF、TFE及びポリイミドからなる群から選択される1種以上である。
【0071】
4)開始剤及び反応触媒
前記分離膜は、架橋反応による物理的特性が向上する効果を高めるために、前記架橋剤に対する反応開始剤をさらに含むことができる。
【0072】
前記開始剤はアゾ(azo)系化合物又はペルオキシド(peroxide)系化合物である。具体的に、前記アゾ系化合物は、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)の中で少なくとも1種以上が選択されるものであり、好ましくは2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)である。
【0073】
前記ペルオキシド系化合物は、テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシカーボネート、ブチルペルオキシネオデカノエート、ジプロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジエトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジエトキシヘキシルペルオキシジカーボネート、ヘキシルペルオキシジカーボネート、ジメトキシブチルペルオキシジカーボネート、ビス(3-メトキシ-3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、ジブチルペルオキシジカーボネート、ジセチル(dicetyl)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチル(dimyristyl)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート(peroxypivalate)、ヘキシルペルオキシピバレート、ブチルペルオキシピバレート、トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジメチルヒドロキシブチルペルオキシネオデカノエート、アミルペルオキシネオデカノエート、アトフィナ(Atofina)、ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、アミルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ラウリルペルオキシド、ジラウロイル(dilauroyl)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド又はジベンゾイルペルオキシドの中で少なくとも1種以上が選択されるものである。
【0074】
5)分離膜の特性
本発明による分離膜は、従来の分離膜と比較するとき、分離膜基材がない構造であるから分離膜自体の強度が問題となることができるので、相対的に大きな厚さとなることができる。前記分離膜の厚さは5μm~30μmの範囲となることができる。
【0075】
前記分離膜の厚さが5μmより小さな場合には、分離膜の強度が低くて損傷しやすく、30μmより大きな場合には、全体的な電極組立体の厚さが増加して容量が減少することができるので好ましくない。
【0076】
前記分離膜の通気度は50sec/100cc~4,000sec/100ccの範囲であることができるが、前記通気度が50sec/100ccより小さな場合には、絶縁特性が非常に劣悪であり、4,000sec/100ccより大きな場合には、電解液含浸性及びイオン伝導度が低くなるので好ましくない。
【0077】
前記分離膜の物理的性質は反応温度及び反応時間によって影響され、反応時間が長くなるほどかつ反応温度が増加するほど、架橋反応の程度が増加する。
【0078】
6)電極組立体の構成及び応用
また、本発明は、正極と負極、前記正極と負極との間に介在された前記分離膜、及び電解質を含む電気化学素子を提供する。ここで、前記電気化学素子はリチウム二次電池であり得る。
【0079】
前記正極は正極集電体上に正極活物質、導電材及びバインダーの混合物を塗布した後、乾燥することによって製造され、必要によって、充填剤をさらに添加することもできる。
【0080】
前記正極集電体は、一般的に3μm以上~500μm以下の厚さを有するように製造される。このような正極集電体は、当該電池の化学的変化を引き起こさないながらも導電性を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、又はアルミニウム又はステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使われることができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0081】
前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物又は1又はそれ以上の遷移金属に置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(ここで、xは0~0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B又はGaであり、x=0.01~0.3である)で表現されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn又はTaであり、x=0.01~0.1である)又はLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、Cu又はZnである)で表現されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンに置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどを挙げることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0082】
前記導電材は、通常的に、正極活物質を含む混合物総重量を基準に1~30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池の化学的変化を引き起こさないながらも導電性を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファネースブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使われることができる。
【0083】
前記バインダーは活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に役立つ成分であり、通常的に正極活物質を含む混合物総重量を基準に1~30重量%添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
【0084】
前記充填剤は正極の膨脹を抑制する成分であり、選択的に使われ、当該電池の化学的変化を引き起こさないながらも繊維状材料であれば特に制限されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使われる。
【0085】
前記負極は負極集電体上に負極材料を塗布及び乾燥することによって製作され、必要によって、前述したような成分が選択的にさらに含まれることもできる。
【0086】
前記負極集電体は、一般的に3μm以上~500μm以下の厚さを有するように製造される。このような負極集電体は、当該電池の化学的変化を引き起こさないながらも高導電性を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、銅又はステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使われることができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使われることができる。
【0087】
前記負極活物質としては、例えば、難黒鉛化性炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族元素、2族元素、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;珪素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、及びBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料などを使うことができる。
【0088】
また、本発明は、前記電気化学素子を含む電池パックを提供することができる。
【0089】
具体的に、前記電池パックは、高温安定性及び長いサイクル特性と高いレート特性などが要求されるデバイスの電源として使われることができる。このようなデバイスの詳細な例としては、モバイル電子機器(mobile device)、ウェアラブル電子機器(wearable device)、電池的モーターによって動力を受けて動作する動力工具(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵装置(Energy Storage System)などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0090】
これらのデバイスの構造及びその製作方法は当該分野に公知となっているので、本明細書ではそれについての詳細な説明は省略する。
【0091】
<実施例>
以下、本発明の具体的に説明するために実施例及び実験例に基づいてより詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例及び実験例によって制限されるものではない。本発明による実施例は他のさまざまな形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されるものに解釈されてはいけない。本発明の実施例は当該分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0092】
<実施例1>
無機物粒子としてベーマイト(AlO(OH))、バインダーとしてポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP、5130)、及び架橋剤として化学式4の化合物が78:20:2の比率で混合された固形分の含量がスラリー総重量を基準に18重量%となるようにスラリーを製造した。
【0093】
具体的に、ベーマイト(AlO(OH))28.08g、PVdF-HFP7.2g及び化学式4の化合物0.72gをアセトン164gに添加した後、スラリーを製造した。前記スラリーを分離膜形態に成形した後、150℃で30分間乾燥することによって分離膜を製造した。架橋反応が完了した後、常温で追加の乾燥を進めた後、分離膜を完成した。
【0094】
<実施例2>
実施例1のスラリーに開始剤である2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.0072gを追加したことを除き、実施例1と同様な方法で分離膜を製造した。
【0095】
<実施例3>
実施例1のスラリーにおいて、化学式4の化合物の代わりに化学式5の化合物に変更したことを除き、実施例1と同様な方法で分離膜を製造した。
<実施例4>
実施例2のスラリーにおいて、化学式4の化合物の代わりに化学式5の化合物に変更したことを除き、実施例2と同様な方法で分離膜を製造した。
【0096】
<比較例1>
架橋剤である化学式4及び化学式5の化合物を含まないようにベーマイト(AlO(OH))及びポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP、5130)が78:22の比率で混合された固形分を使った点を除き、実施例1と同様な方法で分離膜を製造した。
【0097】
<実験例1>
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、比較例1の分離膜に対する体積絶縁抵抗、電気抵抗、引張強度、寸法変化率、スウェリング、通気度、厚さなどを測定した。
【0098】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上で説明したように、本発明による電気化学素子用分離膜は、従来の分離膜とは違い、分離膜基材として使われるポリオレフィン基材を含んでおらず、無機物粒子、バインダー及び架橋剤を含む物質からなるので、分離膜基材の熱的安全性が低い問題を克服することができ、前記架橋剤化合物が3次元網状構造を形成することによって分離膜の絶縁性が著しく向上することができる。
【0100】
また、前記架橋剤が線形構造から3次元網状構造に変形されることにより、分離膜自体の引張強度及び伸び率が向上するので、分離膜の損傷可能性が低くなり、結果的に、電池の内部で短絡が発生することを防止することができる。
【0101】
また、高温環境に対する安全性が高く、電解液含浸特性に優れ、高イオン伝達が可能であるという利点がある。