(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解質
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20220511BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20220511BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20220511BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20220511BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0565
H01M10/0568
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2021509714
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2019009357
(87)【国際公開番号】W WO2020036337
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2018-0095688
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・キョン・シン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ホ・アン
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・フン・イ
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535919(JP,A)
【文献】特開平08-295715(JP,A)
【文献】特開2004-095556(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0066724(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0043992(KR,A)
【文献】特表2015-513172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0565
H01M 10/0568
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.6Mから5M濃度のリチウム塩;
下記化学式1で表される単位を含む第1オリゴマー及び下記化学式2で表される単位を含む第2オリゴマーを含むオリゴマー混合物;及び
有機溶媒を含むリチウム二次電池用電解質
であって、
前記リチウム二次電池用電解質は、液体電解質であり、
前記オリゴマー混合物は、前記リチウム二次電池用電解質100重量部に対して0.01重量部から1重量部で含まれ、
前記オリゴマー混合物は、前記第1オリゴマー及び前記第2オリゴマーが(1~50):(50~99)の重量比で含まれる、リチウム二次電池用電解質:
【化1】
前記化学式1で、
R
a及びR
bは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、
前記pは1から50の整数である。
【化2】
前記化学式2で、
R
h、R
i、R
j及びR
kは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、
前記sは1から50の整数である。
【請求項2】
1.6Mから5M濃度のリチウム塩;
下記化学式1で表される単位を含む第1オリゴマー及び下記化学式2で表される単位を含む第2オリゴマーを含むオリゴマー混合物;及び
有機溶媒を含むリチウム二次電池用電解質であって、
前記リチウム二次電池用電解質は、ゲルポリマー電解質であり、
前記オリゴマー混合物は、前記リチウム二次電池用電解質100重量部に対して2重量部から10重量部で含まれ、
前記オリゴマー混合物は、前記第1オリゴマー及び前記第2オリゴマーが(1~30):(70~99)の重量比で含まれる、リチウム二次電池用電解質:
【化3】
前記化学式1で、
R
a
及びR
b
は、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、
前記pは1から50の整数である。
【化4】
前記化学式2で、
R
h
、R
i
、R
j
及びR
k
は、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、
前記sは1から50の整数である。
【請求項3】
前記リチウム塩の濃度は、1.6Mから4Mである、請求項1
または2に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項4】
前記リチウム塩の濃度は、1.6Mから3Mである、請求項1
から3の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項5】
前記第1オリゴマーは、下記化学式1aで表されるオリゴマーである、請求項1から
4の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化5】
前記化学式1aで、
前記R
a、R
b、R
f及びR
gは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、
前記R
cは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
前記R
d及びR
eは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキレン基であり、
前記R’は、水素または炭素数1から3のアルキル基であり、
前記oは、1から3の整数であり、
前記pは、1から50の整数であり、
前記q1及びq2は、それぞれ独立して、1から15の整数であり、
前記r1及びr2は、それぞれ独立して、1から15の整数である。
【請求項6】
前記第1オリゴマーは、下記化学式1bで表されるオリゴマーである、請求項1から
4の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化6】
前記化学式1bで、
前記R
a、R
b、R
f及びR
gは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、
前記R
cは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
前記R
d及びR
eは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキレン基であり、
前記o’は、1から2の整数であり、
前記o’’は、1から3の整数であり、
前記pは、1から50の整数であり、
前記q1及びq2は、それぞれ独立して、1から15の整数であり、
前記r1及びr2は、それぞれ独立して、1から15の整数である。
【請求項7】
前記第2オリゴマーは、下記化学式2aで表されるオリゴマーである、請求項1から
6の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化7】
前記化学式2aで、
R
h、R
i、R
j及びR
kは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、
前記R
mは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
前記R’’は、水素または炭素数1から3のアルキル基であり、
前記mは、1から3の整数であり、
前記sは、1から50の整数であり、
前記tは、1から20の整数であり、
前記uは、1から10の整数である。
【請求項8】
前記第2オリゴマーは、下記化学式2bで表されるオリゴマーである、請求項1から
6の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化8】
前記化学式2bで、
R
h、R
i、R
j及びR
kは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、
前記R
mは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
前記m’は、1から2の整数であり、
前記m’’は、1から3の整数であり、
前記sは、1から50の整数であり、
前記tは、1から20の整数であり、
前記uは、1から10の整数である。
【請求項9】
前記リチウム二次電池用電解質は、下記化学式3で表されるハロゲン化ベンゼン化合物をさらに含み、
前記化学式3で表されるハロゲン化ベンゼン化合物は、前記リチウム二次電池用電解質100重量部に対して0.01重量部以上50重量部未満で含まれる、請求項1から
8の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化9】
前記化学式3で、前記Xは、F、Cl、及びBrよりなる群から選択される少なくとも1つ以上のハロゲン元素であり、前記nは、1から3の整数である。
【請求項10】
重合開始剤をさらに含む、請求項
2に記載のリチウム二次電池用電解質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年8月16日付韓国特許出願第10-2018-0095688号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用電解質に関し、より詳細には、高濃度のリチウム塩を用いて容量特性に優れながらも、イオン伝導度及び機械的強度が改善されたリチウム二次電池用電解質に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラ及びカムコーダなどの携帯用電源としてのみならず、電動工具(power tool)、電気自転車、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(plug-in HEV、PHEV)などの中大型電源としてその応用が急速に拡大されている。このような応用分野の拡大及び需要の増加に伴い、電池の外形的な形状と大きさも多様に変わっている。このような要求に応じるためには、電池の構成成分は大電流が流れる条件で電池性能の具現が安定的になされなければならない。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を負極及び正極として使用し、二つの電極の間に選択的に分離膜を含み、電解質を両電極の間に介在させて製造され、前記負極及び正極でのリチウムイオンの挿入及び脱離による酸化還元反応により電気が生成または消費される。
【0005】
一方、最近、応用分野の拡大によりリチウム二次電池の活用度と重要性が徐々に増加しており、特に、HEV/PHEVのような高出力が要求される環境においては電池の出力特性の向上が要求される。電池の出力特性とは、与えられた電圧でどのくらい大きな電流を流すことができるのかに対する尺度であって、一般的に、電流が増加する際に電池から得ることができる出力は、初期には増加して最高値に到達した後に減少する傾向を示す。これは、分極現象に関連するものであって、電流が特定値以上に増加すれば電池の電圧が減少するからであり、与えられた電圧範囲で得ることができる容量も減少するようになる。このような分極現象は、リチウムイオンの拡散速度及び電池内部の抵抗と関わっているため、電池の出力特性を向上させるためにはリチウムイオンの拡散の速度及びイオン伝導度の特性を向上させることが必要である。
【0006】
最近には、電池の出力特性を向上させるための1つの方法として、高濃度のリチウム塩を含む電解質を用いてリチウムイオン輸率(Li+ transference number)及びリチウムイオンの解離度を上昇させて電池の出力特性を向上させる方案が考案されている。
【0007】
高濃度リチウム塩を用いるようになると、電池の出力特性が向上するのはもちろん、リチウムイオンと結合しないフリー溶媒(free solvent)の量を減少させて高温安全性もまた向上させることができる。具体的には、電池が充電される場合、正極活物質からリチウムが脱離することがあるため構造的に不安定な状態であるが、高温条件に露出される場合、その構造が崩壊されながら酸素ラジカルが発生し得る。このとき発生する酸素ラジカルは、反応性が非常に高いため、リチウムイオンと結合していないフリー溶媒と反応して発熱反応を引き起こし得る。このような場合に、電解質に高濃度のリチウム塩を用いることになると、フリー溶媒の量を減少させ、発熱反応を抑制して電池の高温安全性が高くなり得る。
【0008】
但し、高濃度のリチウム塩を用いることになる場合、電解質の粘度が上昇するようになる。このとき、電解質内でのイオンの移動度は、ストークス(Stokes)の法則に基づいて電解質の粘度に反比例するので、電解質のイオン伝導性がむしろ低下するという問題点が発生し得る。
【0009】
また、ゲルポリマー電解質を用いる場合には、一定水準以上の機械的強度を有するようにし、電池の安全性を一定水準以上に維持できなければならない。
【0010】
したがって、高濃度のリチウム塩を用いて電池の出力特性、容量特性、高温安全性を向上させることができながらも、電池のイオン伝導性を一定水準以上に維持させることができ、電池の機械的強度も優れたリチウム二次電池用電解質に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0040127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、高濃度のリチウム塩を用いてリチウム二次電池の出力特性及び容量特性が向上されながらも、機械的強度及び高温安全性を改善させることができるリチウム二次電池用電解質を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一側面において、本発明は、1.6Mから5M濃度のリチウム塩、下記化学式1で表される単位を含む第1オリゴマー及び下記化学式2で表される単位を含む第2オリゴマーを含むオリゴマー混合物及び有機溶媒を含むリチウム二次電池用電解質を提供する。
【0014】
【0015】
前記化学式1で、Ra及びRbは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記pは1から50の整数である。
【0016】
【0017】
前記化学式2で、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記sは1から50の整数である。
【0018】
このとき、前記第1オリゴマーは、下記化学式1aで表されるオリゴマーであってよい。
【0019】
【0020】
前記化学式1aで、前記Ra、Rb、Rf及びRgは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記Rcは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、前記Rd及びReは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキレン基であり、前記R’は、水素または炭素数1から3のアルキル基であり、前記oは、1から3の整数であり、前記pは、1から50の整数であり、前記q1及びq2は、それぞれ独立して、1から15の整数であり、前記r1及びr2は、それぞれ独立して、1から15の整数である。
【0021】
または、前記第1オリゴマーは、下記化学式1bで表されるオリゴマーであってよい。
【0022】
【0023】
前記化学式1bで、前記Ra、Rb、Rf及びRgは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記Rcは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、前記Rd及びReは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキレン基であり、前記o’は、1から2の整数であり、前記o’’は、1から3の整数であり、前記pは、1から50の整数であり、前記q1及びq2は、それぞれ独立して、1から15の整数であり、前記r1及びr2は、それぞれ独立して、1から15の整数である。
【0024】
一方、第2オリゴマーは、下記化学式2aで表されるオリゴマーであってよい。
【0025】
【0026】
前記化学式2aで、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記Rmは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、前記R’’は、水素または炭素数1から3のアルキル基であり、前記mは、1から3の整数であり、前記sは、1から50の整数であり、前記tは、1から20の整数であり、前記uは、1から10の整数である。
【0027】
または、前記第2オリゴマーは、下記化学式2bで表されるオリゴマーであってよい。
【0028】
【0029】
前記化学式2bで、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記Rmは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、前記m’は、1から2の整数であり、前記m’’は、1から3の整数であり、前記sは、1から50の整数であり、前記tは、1から20の整数であり、前記uは、1から10の整数である。
【0030】
他の側面において、前記リチウム二次電池用電解質は、下記化学式3で表されるハロゲン化ベンゼン化合物をさらに含んでよく、前記化学式3で表されるハロゲン化ベンゼン化合物は、前記リチウム二次電池用電解質100重量部に対して0.01重量部以上50重量部未満で含まれてよい。
【0031】
【0032】
前記化学式3で、前記Xは、F、Cl、及びBrよりなる群から選択される少なくとも1つ以上のハロゲン元素であり、前記nは、1から3の整数である。
【0033】
一側面において、前記リチウム二次電池用電解質は、液体電解質であってよい。
【0034】
前記リチウム二次電池用電解質が液体電解質の場合、前記オリゴマー混合物は、前記リチウム二次電池用電解質100重量部に対して0.01重量部から1重量部で含まれてよい。
【0035】
前記リチウム二次電池用電解質が液体電解質の場合、前記オリゴマー混合物は、前記第1オリゴマー及び前記第2オリゴマーが(1~50):(50~99)の重量比で含まれてよい。
【0036】
他の側面において、前記リチウム二次電池用電解質は、ゲルポリマー電解質であってよい。
【0037】
前記リチウム二次電池用電解質がゲルポリマー電解質の場合、前記オリゴマー混合物は、前記リチウム二次電池用電解質100重量部に対して2重量部から10重量部で含まれてよい。
【0038】
前記リチウム二次電池用電解質がゲルポリマー電解質の場合、前記オリゴマー混合物は、前記第1オリゴマー及び前記第2オリゴマーが(1~30):(70~99)の重量比で含まれてよい。
【0039】
前記リチウム二次電池用電解質がゲルポリマー電解質の場合、重合開始剤がさらに含まれてよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によるリチウム二次電池用電解質は、高濃度のリチウム塩を用いて、リチウムイオンの解離度に優れ、電池の初期容量を向上させてリチウム二次電池の出力特性及び高温安全性を改善させることができる。また、ゲルポリマー電解質の場合、機械的性能も改善させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に対してより詳細に説明する。
【0042】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0043】
本明細書で用いられる用語は、単に例示的な実施例を説明するために用いられるものであって、本発明を限定しようとする意図のものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0044】
本明細書において、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらの組み合わせなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除するものではないと理解されるべきである。
【0045】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味してよく、特に他に規定しない限り、分子量は重量平均分子量を意味してよい。例えば、本発明では、GPC 条件でAgilent社製1200シリーズを用いて測定し、このとき用いられたカラムは、Agilent社製PL mixed Bカラムを用いてよく、溶媒はTHFを用いてよい。
【0046】
リチウム二次電池用電解質
本発明によるリチウム二次電池用電解質は、1.6Mから5M濃度のリチウム塩;化学式1で表される単位を含む第1オリゴマー及び化学式2で表される単位を含む第2オリゴマーを含むオリゴマー混合物及び有機溶媒を含むリチウム二次電池用電解質であってよい。
【0047】
前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質に1.6Mから5M、好ましくは1.6Mから4M、より好ましくは1.6Mから3Mの濃度で含まれてよい。リチウム塩が前記濃度範囲内で含まれる場合、リチウムイオンが十分に供給され、リチウムイオン輸率(Li+ transference number)及びリチウムイオンの解離度が向上されるので、電池の出力特性が向上し得る。
【0048】
また、高濃度リチウム塩を用いる場合、リチウムイオンと結合しないフリー溶媒(free solvent)の量を減少させて高温安全性を向上させることができる。具体的には、電池が充電される場合、正極活物質からリチウムは脱離され得るので構造的に不安定な状態であるが、高温条件に露出される場合、その構造が崩壊されながら酸素ラジカルが発生し得る。このとき発生する酸素ラジカルは反応性が非常に高いため、フリー溶媒と反応して発熱反応を引き起こし得る。このとき、高濃度のリチウム塩を用いると、多量のリチウムイオンがフリー溶媒と反応してフリー溶媒の量を減少させることができるため、発熱反応を抑制して電池の高温安全性が高くなり得る。
【0049】
具体的には、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば特に制限なく用いられてよい。具体的には、前記リチウム塩は、カチオンとしてLi+を含み、アニオンとしてF-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、AlO4
-、AlCl4
-、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、BF2C2O4
-、BC4O8
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、CF3SO3
-、C4F9SO3
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(F2SO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-及び(CF3CF2SO2)2N-よりなる群から選択される1種または必要に応じて2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
前記リチウム二次電池用電解質は、下記化学式1で表される単位を含む第1オリゴマー及び下記化学式2で表される単位を含む第2オリゴマーを含むオリゴマー混合物を含む。
【0051】
先ず、下記化学式1で表される単位を含む第1オリゴマーに対して説明する。
【0052】
【0053】
前記化学式1で、Ra及びRbは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記pは、1から50の整数である。前記pは、好ましくは1から45の整数、より好ましくは1から40の整数である。
【0054】
前記化学式1で表される単位を含む第1オリゴマーは-Si-O-基を含んでいるため、界面活性剤として作用して電解質の濡れ性(wetting)を向上させることができる。一方、第1オリゴマーは、難燃性に優れたケイ素元素を含んでいるため、リチウム二次電池の発熱及び発火の現象を抑制させることができるので、熱安全性も優秀である。但し、リチウム二次電池用電解質がゲルポリマー電解質の場合、第1オリゴマーが単独で用いられると硬直度が高くないので、ゲルポリマー電解質としての機械的強度(modulus)が低いという問題点がある。
【0055】
したがって、前記のような問題点を克服するため、下記で説明する化学式2で表される単位を含む第2オリゴマーをともに含むオリゴマー混合物を用いて、電解質の濡れ性及び熱安全性に優れながらも、機械的強度が向上されるリチウム二次電池用電解質を提供することができる。
【0056】
具体的には、前記第1オリゴマーは、下記化学式1aで表されるオリゴマーであってよい。
【0057】
【0058】
前記化学式1aで、前記Ra、Rb、Rf及びRgは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記Rcは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、前記Rd及びReは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキレン基であり、前記R’は、水素または炭素数1から3のアルキル基であり、前記oは、1から3の整数であり、前記pは、1から50の整数であり、前記q1及びq2は、それぞれ独立して、1から15の整数であり、前記r1及びr2は、それぞれ独立して、1から15の整数である。このとき、前記pは、好ましくは1から45の整数、より好ましくは1から40の整数である。
【0059】
前記化学式1aで表されるオリゴマーで、前記脂肪族炭化水素基は、脂環族炭化水素基または線状炭化水素基を含む。
【0060】
前記脂環族炭化水素基は、置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルキレン基;イソシアネート基(NCO)を含有する置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルキレン基;置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルケニレン基;及び置換または非置換の炭素数2から20のヘテロシクロアルキレン基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上を含むことができる。
【0061】
前記線状炭化水素基は、置換または非置換の炭素数1から20のアルキレン基;イソシアネート基(NCO)を含有する置換または非置換の炭素数1から20のアルキレン基;置換または非置換の炭素数1から20のアルコキシレン基;置換または非置換の炭素数2から20のアルケニレン基;及び置換または非置換の炭素数2から20のアルキニレン基よりなる群から選択された少なくとも1つ以上を挙げることができる。
【0062】
また、前記化学式1aで表されるオリゴマーで、前記芳香族炭化水素基は、置換または非置換の炭素数6から20のアリレン基;または置換または非置換の炭素数2から20のヘテロアリレン基を含むことができる。
【0063】
具体的な例を挙げると、前記化学式1aで表されるオリゴマーは前記化学式1a-1で表されるオリゴマーであってよい。
【0064】
【0065】
前記化学式1a-1で、前記pは、1から50の整数であり、前記q1及びq2は、それぞれ独立して、1から15の整数であり、前記r1及びr2は、それぞれ独立して、1から15の整数である。前記pは、好ましくは1から45の整数、より好ましくは1から40の整数である。
【0066】
または、前記第1オリゴマーは、下記化学式1bで表されるオリゴマーであってよい。
【0067】
【0068】
前記化学式1bで、前記Ra、Rb、Rf及びRgは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記Rcは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、前記Rd及びReは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキレン基であり、前記o’は、1から2の整数であり、前記o’’は、1から3の整数であり、前記pは、1から50の整数であり、前記q1及びq2は、それぞれ独立して、1から15の整数であり、前記r1及びr2は、それぞれ独立して、1から15の整数である。
【0069】
このとき、前記pは、好ましくは1から45の整数、より好ましくは1から40の整数である。
【0070】
前記化学式1bで表されるオリゴマーで、前記脂肪族炭化水素基は、脂環族炭化水素基または線状炭化水素基を含む。
【0071】
前記脂環族炭化水素基は、置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルキレン基;イソシアネート基(NCO)を含有する置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルキレン基;置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルケニレン基;及び置換または非置換の炭素数2から20のヘテロシクロアルキレン基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上を含むことができる。
【0072】
前記線状炭化水素基は、置換または非置換の炭素数1から20のアルキレン基;イソシアネート基(NCO)を含有する置換または非置換の炭素数1から20のアルキレン基;置換または非置換の炭素数1から20のアルコキシレン基;置換または非置換の炭素数2から20のアルケニレン基;及び置換または非置換の炭素数2から20のアルキニレン基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上を挙げることができる。
【0073】
また、前記化学式1bで表されるオリゴマーで、前記芳香族炭化水素基は、置換または非置換の炭素数6から20のアリレン基;または置換または非置換の炭素数2から20のヘテロアリレン基を含むことができる。
【0074】
具体的な例を挙げると、前記化学式1bで表されるオリゴマーは、前記化学式1b-1で表されるオリゴマーであってよい。
【0075】
【0076】
前記化学式1b-1で、前記pは、1から50の整数であり、前記q1及びq2は、それぞれ独立して、1から15の整数であり、前記r1及びr2は、それぞれ独立して、1から15の整数である。前記pは、好ましくは1から45の整数、より好ましくは1から40の整数である。
【0077】
このとき、前記化学式1aまたは化学式1bで表される第1オリゴマーの重量平均分子量(MW)は繰り返し単位の個数により調節されてよく、1,000g/molから100,000g/mol、具体的には1,000g/molから50,000g/mol、より具体的には1,000g/molから10,000g/molであってよい。前記第1オリゴマーの重量平均分子量が前記範囲内である場合、電解質内の分散性に優れ、ゲルポリマー電解質に用いられる場合には、硬化された以後の機械的物性に優れ、ゲルポリマーの形状を一定に維持することができる。
【0078】
次に、化学式2で表される単位を含む第2オリゴマーに対して説明する。
【0079】
【0080】
前記化学式2で、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記sは、1から50の整数である。好ましくは、前記sは1から45の整数、より好ましくは、前記sは1から40の整数である。
【0081】
前記化学式2で表される単位を含む第2オリゴマーはカーボネート基を含んでおり、この際、カーボネート基は有機溶媒との親和性が高く、リチウム塩を解離する能力に優れるため、リチウムイオンの解離数(Lithium ion solvation)を向上させることができる。また、リチウム二次電池用電解質がゲルポリマー電解質の場合、硬直度が高いのでゲルポリマー電解質の機械的性能も改善させることができる。
【0082】
但し、第2オリゴマーが単独で電解質に用いられる場合、表面張力を上昇させ、粘度を上昇させ得るので、電解質の濡れ性(wetting)が相対的に劣化され得るという問題点がある。
【0083】
このとき、前記ケイ素元素を含む第1オリゴマーをともに用いる場合、第1オリゴマーは界面活性剤として作用することになるので、電解質の表面張力を下げることができる。よって、第1オリゴマーと第2オリゴマーをともに用いる場合、電解質のリチウム塩の解離度を向上させ、電池の出力特性を改善させる同時に電解質の濡れ性を一定水準以上に維持させ、電解質と電極の間の界面特性も優秀に維持することができる。また、リチウム二次電池用電解質がゲルポリマー電解質の場合、第1、2オリゴマーをともに用いるようになれば、機械的性能も一定水準以上に維持することができる。
【0084】
一方、前記第2オリゴマーは、下記化学式2aで表されるオリゴマーであってよい。
【0085】
【0086】
前記化学式2aで、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記Rmは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、前記R’’は、水素または炭素数1から3のアルキル基であり、前記mは、1から3の整数であり、前記sは、1から50の整数であり、前記tは、1から20の整数であり、前記uは、1から10の整数である。好ましくは、前記sは1から45の整数、より好ましくは、前記sは1から40の整数である。
【0087】
前記化学式2aで表されるオリゴマーで、前記脂肪族炭化水素基は、脂環族炭化水素基または線状炭化水素基を含む。
【0088】
前記脂環族炭化水素基は、置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルキレン基;イソシアネート基(NCO)を含有する置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルキレン基;置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルケニレン基;及び置換または非置換の炭素数2から20のヘテロシクロアルキレン基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上を含むことができる。
【0089】
前記線状炭化水素基は、置換または非置換の炭素数1から20のアルキレン基;イソシアネート基(NCO)を含有する置換または非置換の炭素数1から20のアルキレン基;置換または非置換の炭素数1から20のアルコキシレン基;置換または非置換の炭素数2から20のアルケニレン基;及び置換または非置換の炭素数2から20のアルキニレン基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上を挙げることができる。
【0090】
また、前記化学式2aで表されるオリゴマーで、前記芳香族炭化水素基は、置換または非置換の炭素数6から20のアリレン基;または置換または非置換の炭素数2から20のヘテロアリレン基を含むことができる。
【0091】
具体的な例を挙げると、前記化学式2aで表されるオリゴマーは、下記化学式2a-1で表されるオリゴマーであってよい。
【0092】
【0093】
前記sは、1から50の整数であり、前記tは、1から20の整数であり、前記uは、1から10の整数である。好ましくは、前記sは1から45の整数、より好ましくは、前記sは1から40の整数である。
【0094】
前記第2オリゴマーは、下記化学式2bで表されるオリゴマーであってよい。
【0095】
【0096】
前記化学式2bで、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1から5のアルキル基であり、前記Rmは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、前記m’は、1から2の整数であり、前記m’’は、1から3の整数であり、前記sは、1から50の整数であり、前記tは、1から20の整数であり、前記uは、1から10の整数である。このとき、好ましくは、前記sは1から45の整数、より好ましくは、前記sは1から40の整数である。
【0097】
前記化学式2bで表されるオリゴマーで、前記脂肪族炭化水素基は、脂環族炭化水素基または線状炭化水素基を含む。
【0098】
前記脂環族炭化水素基は、置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルキレン基;イソシアネート基(NCO)を含有する置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルキレン基;置換または非置換の炭素数4から20のシクロアルケニレン基;及び置換または非置換の炭素数2から20のヘテロシクロアルキレン基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上を含むことができる。
【0099】
前記線状炭化水素基は、置換または非置換の炭素数1から20のアルキレン基;イソシアネート基(NCO)を含有する置換または非置換の炭素数1から20のアルキレン基;置換または非置換の炭素数1から20のアルコキシレン基;置換または非置換の炭素数2から20のアルケニレン基;及び置換または非置換の炭素数2から20のアルキニレン基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上を挙げることができる。
【0100】
また、前記化学式2bで表されるオリゴマーで、前記芳香族炭化水素基は、置換または非置換の炭素数6から20のアリレン基;または置換または非置換の炭素数2から20のヘテロアリレン基を含むことができる。
【0101】
具体的な例を挙げると、前記化学式2bで表されるオリゴマーは、下記化学式2b-1で表されるオリゴマーであってよい。
【0102】
【0103】
前記sは、1から50の整数であり、前記tは、1から20の整数であり、前記uは、1から10の整数である。好ましくは、前記sは1から45の整数、より好ましくは、前記sは1から40の整数である。
【0104】
このとき、前記化学式2aまたは前記化学式2bで表される第2オリゴマーの重量平均分子量(MW)は繰り返し単位の個数により調節されてよく、500g/molから200,000g/mol、具体的には1,000g/molから150,000g/mol、より具体的には2,000g/molから100,000g/molであってよい。前記第2オリゴマーの重量平均分子量が前記範囲内である場合、電解質内に溶解性及び分散性を一定水準以上に維持することができる。
【0105】
一方、前記リチウム二次電池用電解質は、電池の充放電サイクル特性をさらに向上させ、電解質の難燃性を向上させるために、下記化学式3で表されるハロゲン化ベンゼン化合物をさらに含むことができる。
【0106】
【0107】
前記化学式3で、前記Xは、F、Cl、及びBrよりなる群から選択される少なくとも1つ以上のハロゲン元素であり、前記nは、1から3の整数である。
【0108】
このとき、前記化学式3で表されるハロゲン化ベンゼン化合物は、前記リチウム二次電池用電解質100重量部に対して0.01重量部以上50重量部未満、より好ましくは2重量部から40重量部で含まれてよい。
【0109】
前記化学式3で表されるハロゲン化ベンゼン化合物の具体的な例としては、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロフルオロベンゼン、ブロモフルオロベンゼンなどを挙げることができ、これらを1種以上混合して用いることができる。
【0110】
具体的には、前記リチウム二次電池用電解質は、液体電解質またはゲルポリマー電解質であってよい。このとき、前記リチウム二次電池用電解質の種類により、前記オリゴマー混合物内の混合の比率が変わり、前記オリゴマー混合物が前記リチウム二次電池の全重量に対して含まれる含量も変わる。
【0111】
例えば、リチウム二次電池用電解質が液体電解質の場合、前記オリゴマー混合物は、前記リチウム二次電池用電解質100重量部に対して0.01重量部から1重量部、好ましくは0.025重量部から0.75重量部、より好ましくは0.05重量部から0.75重量部で含まれてよい。前記オリゴマー混合物が前記範囲内に含まれる場合、濡れ性(wetting)に優れ、リチウム塩の解離度が高い電解質を提供することができる。
【0112】
一方、リチウム二次電池用電解質が液体電解質の場合、前記第1オリゴマー及び前記第2オリゴマーが(1~50):(50~99)の重量比、好ましくは(1~45):(55~99)、より好ましくは(1~40):(60~99)の重量比で混合される。前記第1、第2オリゴマーが前記範囲で混合される場合、電解質の表面張力が低いため電解質の濡れ性に優れながらも、有機溶媒との親和度及びリチウム塩の解離度が高いためリチウムイオンの移動特性を向上させることができる。
【0113】
他の例を挙げると、前記リチウム二次電池用電解質がゲルポリマー電解質の場合、前記オリゴマー混合物は、前記リチウム二次電池用電解質100重量部に対して2重量部から10重量部、好ましくは2重量部から9重量部、より好ましくは2重量部から8重量部で含まれてよい。前記オリゴマー混合物が前記範囲内に含まれる場合、前記オリゴマーが安定的にポリマーネットワークの構造を形成することができ、電解質の濡れ性(wetting)を一定水準以上に維持することができる。一方、リチウムイオンの移動性が改善され、高濃度のリチウム塩を用いて粘度が多少上昇したとしてもリチウムイオンのイオン伝導性を一定水準以上に維持することができる。
【0114】
このとき、リチウム二次電池用電解質がゲルポリマー電解質の場合、前記オリゴマー混合物は、前記第1オリゴマー及び前記第2オリゴマーが(1~30):(70~99)の重量比、より好ましくは(5~30):(70~95)の重量比で含まれるものであってよい。
【0115】
リチウム二次電池用電解質が液体電解質の場合と異なり、ゲルポリマー電解質の場合、第1オリゴマーの含量が第2オリゴマーと同等な水準の重量比で含まれる場合にはリチウム塩の分解産物との副反応が起こるので、ゲルポリマー電解質をなすポリマーマトリックスが損傷し得る。よって、ゲルポリマー電解質の場合、前記範囲の重量比で混合されるのが好ましい。
【0116】
前記オリゴマー混合物内で、前記第1オリゴマー及び第2オリゴマーが前記重量比の範囲内に含まれれば、電解質の表面張力が低いため電解質の濡れ性に優れながらも、有機溶媒との親和度及びリチウム塩の解離度が高いためリチウムイオンの移動特性を向上させることができる。
【0117】
一方、前記リチウム二次電池用電解質がゲルポリマー電解質の場合、重合開始剤をさらに含む。重合反応の種類により、熱重合または光重合方法を用いることができ、前記重合開始剤は、当業界に知られている通常の重合開始剤が用いられてよい。例えば、アゾ系化合物、ペルオキシド系化合物またはこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1つ以上であってよい。
【0118】
具体的には、前記重合開始剤は、ベンゾイルペルオキシド(benzoyl peroxide)、アセチルペルオキシド(acetyl peroxide)、ジラウリルペルオキシド(dilauryl peroxide)、ジ-tert-ブチルペルオキシド(di-tert-butyl peroxide)、t-ブチルペルオキシ-2-エチル-ヘキサノアート(t-butyl peroxy-2-ethyl-hexanoate)、クミルヒドロペルオキシド(cumyl hydroperoxide)及びヒドロゲンペルオキシド(hydrogen peroxide)などの有機過酸化物類やヒドロ過酸化物類と、2,2’-アゾビス(2-シアノブタン)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN;2,2’-Azobis(iso-butyronitrile))及び2,2’-アゾビスジメチル-バレロニトリル(AMVN;2,2’-Azobisdimethyl-Valeronitrile)よりなる群から選択される1種以上のアゾ化合物類などがあるが、これらに限定しない。
【0119】
前記重合開始剤は、前記オリゴマー混合物の全重量を基準として0.1重量%から5重量%、好ましくは0.1重量%から4重量%、より好ましくは0.1重量%から3重量%で含まれてよい。前記重合開始剤が前記範囲内に含まれれば、未反応重合開始剤が残留することを最小化することができ、ゲル化が一定水準以上になされ得る。
【0120】
一方、本発明によるリチウム二次電池用電解質がゲルポリマー電解質の場合には、前記ゲルポリマー電解質は硬化する工程を経て形成されてよい。このとき、ゲルポリマー電解質に硬化するためには、電子ビーム(E-BEAM)、ガンマ線、常温または高温エイジング工程で硬化されてよい。本発明の一実施形態によると、熱硬化を介して進められてよい。このとき、硬化の時間はおおよそ2分から48時間程度かかり、熱硬化の温度は40℃から100℃、具体的には、40℃から80℃となり得る。
【0121】
前記有機溶媒は、リチウム二次電池用電解質に通常用いられるものなどを制限なく用いることができる。例えば、エーテル化合物、エステル化合物、アミド化合物、線状カーボネート化合物、または環状カーボネート化合物などをそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0122】
前記環状カーボネート化合物の具体的な例としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)よりなる群から選択されるいずれか1つまたはこれらのうち2種以上の混合物がある。また、前記線状カーボネート化合物の具体的な例としては、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートよりなる群から選択されるいずれか1つまたはこれらのうち2種以上の混合物などが代表的に用いられてよいが、これらに限定されるものではない。
【0123】
特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち、高粘度の有機溶媒で誘電率が高いため電解質内のリチウム塩をよく解離させるものとして知られているエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートのような環状カーボネートが用いられてよく、このような環状カーボネートに加え、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線状カーボネートを適当な比率で混合して用いれば、高い電気伝導率を有する電解質を製造することができる。
【0124】
また、前記エーテル化合物としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル及びエチルプロピルエーテルよりなる群から選択されるいずれか1つまたはこれらのうち2種以上の混合物を用いてよいが、これらに限定されるものではない。
【0125】
そして、前記エステル化合物としては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネートのような線状エステル;及びγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンのような環状エステルよりなる群から選択されるいずれか1つまたはこれらのうち2種以上の混合物を用いてよいが、これらに限定されるものではない。
【0126】
一方、本発明によるリチウム二次電池用電解質は、添加剤をさらに含むことができる。添加剤の具体的な例示として、ビニレンカーボネート(VC)、プロパンスルトン(PS)、ポリフェニレンスルファイド、スクシノニトリル(SN)、プロペンスルトン(PRS)、ビニルエチレンカーボネート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiODFB)、エチレンスルファート、アジポニトリル及びリチウムビス(オキサラト)ボレートよりなる群から選択される1種以上の化合物を添加剤として用いることができる。添加剤として前記列記された化合物をともに用いる場合、正極及び負極上に同時に安定的な被膜を形成することができる。このとき、負極上に形成された被膜により、高温、高圧の条件下においても電解質が分解されることを抑制することができるのはもちろん、正極上に形成された被膜により正極に含まれた遷移金属が溶出されることを抑制するので、電池の高温、高圧特性及び安定性が改善され得る。
【0127】
次に、本発明によるリチウム二次電池を説明する。
【0128】
本発明の一具現形態によるリチウム二次電池は、少なくも1つ以上の正極、少なくとも1つ以上の負極、前記正極と負極の間に選択的に介在され得る分離膜、及び前記リチウム二次電池用電解質を含む。このとき、前記リチウム二次電池用電解質に対しては、前述の内容と同一なので、具体的な説明を省略する。
【0129】
前記正極は、正極集電体上に正極活物質、電極用バインダー、電極導電材及び溶媒などを含む正極活物質スラリーをコーティングして製造することができる。
【0130】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが用いられてよい。
【0131】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物であって、具体的にはコバルト、マンガン、ニッケルまたはアルミニウムのような1種以上の金属とリチウムを含むリチウム複合金属酸化物を含むことができる。より具体的には、前記リチウム複合金属酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4など)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-Y1MnY1O2(ここで、0<Y1<1)、LiMn2-z1Niz1O4(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y2CoY2O2(ここで、0<Y2<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y3MnY3O2(ここで、0<Y3<1)、LiMn2-z2Coz2O4(ここで、0<Z2<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(Nip1Coq1Mnr1)O2(ここで、0<p1<1、0<q1<1、0<r1<1、p1+q1+r1=1)またはLi(Nip2Coq2Mnr2)O4(ここで、0<p2<2、0<q2<2、0<r2<2、p2+q2+r2=2)など)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip3Coq3Mnr3MS1)O2(ここで、Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg及びMoよりなる群から選択され、p3、q3、r3及びs1は、それぞれ独立した元素の原子分率であって、0<p3<1、0<q3<1、0<r3<1、0<s1<1、p3+q3+r3+s1=1である)など)などを挙げることができ、これらのうちいずれか1つまたは2つ以上の化合物が含まれてよい。
この中でも、電池の容量特性及び安定性を高めることができるという点で、前記リチウム複合金属酸化物は、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(例えば、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、またはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2など)、またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2など)などであってよく、リチウム複合金属酸化物を形成する構成元素の種類及び含量比の制御による改善効果の顕著さを考慮すると、前記リチウム複合金属酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O2またはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2などであってよく、これらのうちいずれか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてよい。
【0132】
前記正極活物質は、正極活物質スラリーのうち溶媒を除いた固形分の全重量を基準として60重量%から98重量%、好ましくは70重量%から98重量%、より好ましくは80重量%から98重量%で含まれてよい。
【0133】
前記電極用バインダーは、正極活物質と電極導電材などの結合と集電体に対する結合を助ける成分である。具体的には、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。通常、前記電極用バインダーは、正極活物質スラリーのうち溶媒を除いた固形分の全重量を基準として1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から15重量%、より好ましくは1重量%から10重量%で含まれてよい。
【0134】
前記電極導電材は、正極活物質の導電性をさらに向上させるための成分である。前記電極導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、グラファイト;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどの炭素系物質;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてよい。市販されている導電材の具体的な例としては、アセチレンブラック系(シェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)やデンカブラック(Denka Singapore Private Limited)またはガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)の製品など)、ケッチェンブラック(Ketjenblack)、EC系(アルマックカンパニー(Armak Company)の製品)、ブルカン(Vulcan)XC-72(キャボットカンパニー(Cabot Company)の製品)及びスーパー(Super)P(Timcal社の製品)などがある。前記電極導電材は、正極活物質スラリーのうち溶媒を除いた固形分の全重量を基準として1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から15重量%、より好ましくは1重量%から10重量%で含まれてよい。
【0135】
前記溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone))などの有機溶媒を含んでよく、前記正極活物質、及び選択的に正極用バインダー及び正極導電材などを含む際に好適な粘度となる量で用いられてよい。例えば、正極活物質、及び選択的に正極用バインダー及び正極導電材を含む固形分の濃度が60重量%から95重量%、好ましくは70重量%から95重量%、より好ましくは70重量%から90重量%となるように含まれてよい。
【0136】
また、前記負極は、例えば、負極集電体上に負極活物質、負極用バインダー、負極導電材及び溶媒などを含む負極活物質スラリーをコーティングして製造することができる。一方、前記負極は、金属集電体自体を電極として用いることができる。
【0137】
前記負極集電体は、一般に3μmから500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することで負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてよい。
【0138】
前記負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、炭素質材料;リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、Si、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、NiまたはFeである金属類(Me);前記金属類(Me)からなる合金類;前記金属類(Me)の酸化物(MeOx);及び前記金属類(Me)と炭素との複合体よりなる群から選択される1種または2種以上の負極活物質を挙げることができる。
【0139】
前記負極活物質は、負極活物質スラリーのうち溶媒を除いた固形分の全重量を基準として60重量%から98重量%、好ましくは70重量%から98重量%、より好ましくは80重量%から98重量%で含まれてよい。
【0140】
前記電極用バインダー、電極導電材及び溶媒に対する内容は、前述した内容と同一なので、具体的な説明を省略する。
【0141】
前記分離膜としては、従来に分離膜として用いられていた通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いてよく、または通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いてよいが、これらに限定されるものではない。
【0142】
以下、具体的な実施例を介して本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本記載の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能なことは当業者において明らかなことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属するのは当然のことである。
【実施例】
【0143】
[実施例]
1.実施例1
(1)リチウム二次電池用液体電解質の製造
エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)を1:9の体積比で含む有機溶媒に化学式1b-1で表される第1オリゴマー(重量平均分子量(Mw):3,000g/mol)を0.05重量%、化学式2b-1で表される第2オリゴマー(重量平均分子量(Mw):3,000g/mol)を0.45重量%添加した後、LiPF6の濃度が2Mとなるように添加してリチウム二次電池用液体電解質を製造した。
【0144】
(2)正極の製造
溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に正極活物質(((Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2)、NCM811):導電材(バンドル型炭素ナノチューブ):バインダー(ポリビニリデンフルオライド(PVDF))を97.7:0.3:2の重量比で混合し、正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーを厚さが20μmである正極集電体(Al薄膜)に塗布し、乾燥及びロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。
【0145】
(3)負極の製造
溶剤である蒸留水に負極活物質(黒鉛(AGP8)):導電材(カーボンブラック):バインダー(ポリビニリデンフルオライド(PVDF))を97:0.5:2.5の重量比で混合し、負極活物質スラリーを製造した。前記負極活物質スラリーを厚さが10μmである負極集電体(Cu薄膜)に塗布し、乾燥及びロールプレス(roll press)を実施して負極を製造した。
【0146】
(4)リチウム二次電池の製造
前述の方法で製造した正極と負極を、ポリエチレン多孔性フィルムを分離膜とし、正極/分離膜/負極の順に順次積層して電極組立体を製造した後、これをパウチ型二次電池ケースに収納した後、前記パウチ型二次電池ケースの内部に前記リチウム二次電池用液体電解質を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0147】
2.実施例2
リチウム二次電池用電解質を製造するとき、第1オリゴマーを0.2重量%、第2オリゴマーを0.3重量%添加したことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池用液体電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0148】
3.実施例3
(1)リチウム二次電池用ゲルポリマー電解質用組成物の製造
エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)を1:9の体積比で含む有機溶媒に、化学式1b-1で表される第1オリゴマー(重量平均分子量(Mw):3,000g/mol)を0.5重量%、化学式2b-1で表される第2オリゴマー(重量平均分子量(Mw):3,000g/mol)を4.5重量%添加した後、LiPF6の濃度が2Mとなるように添加し、重合開始剤としてAIBNを前記第1、第2オリゴマー混合物の全重量に対して0.4重量%添加し、リチウム二次電池用ゲルポリマー電解質用組成物を製造した。
【0149】
(2)リチウム二次電池用ゲルポリマー電解質及びリチウム二次電池の製造
正極と負極は実施例1と同一の方法で製造した後、製造した正極と負極を分離膜とともに順次積層して電極組立体を製造した後、これをパウチ型二次電池ケースに収納した後、前記パウチ型二次電池ケースの内部に実施例3によるリチウム二次電池用ゲルポリマー電解質用組成物を注入し、25℃で3日間保管した(常温エイジング)。その後、60℃で24時間の間保管し(ゲルポリマー電解質用組成物の硬化)、リチウム二次電池用ゲルポリマー電解質が形成されたリチウム二次電池を製造した。
【0150】
4.実施例4
リチウム二次電池用ゲルポリマー電解質用組成物を製造するとき、第1オリゴマーを0.15重量%、第2オリゴマーを2.85重量%添加したことを除いては、実施例3と同一の方法でリチウム二次電池用ゲルポリマー電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0151】
[比較例]
1.比較例1
リチウム二次電池用液体電解質を製造するとき、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)を3:7の体積比で含む有機溶媒に第1オリゴマー及び第2オリゴマーをいずれも添加せず、LiPF6の濃度が1.2Mとなるように添加したことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池用液体電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0152】
2.比較例2
リチウム二次電池用液体電解質を製造するとき、LiPF6の濃度が5.5Mとなるように添加したことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池用液体電解質を製造しようとしたものの、電解質内にLiPF6が十分溶解されていないため、リチウム二次電池用液体電解質を製造することができなかった。
【0153】
3.比較例3
リチウム二次電池用液体電解質を製造するとき、LiPF6の濃度が1Mとなるように添加したことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池用液体電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0154】
4.比較例4
リチウム二次電池用液体電解質を製造するとき、第1オリゴマー及び第2オリゴマーをいずれも添加していないことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池用液体電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0155】
5.比較例5
リチウム二次電池用液体電解質を製造するとき、第1オリゴマーのみ単独で0.5重量%添加したことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池用液体電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0156】
6.比較例6
リチウム二次電池用液体電解質を製造するとき、第2オリゴマーのみ単独で0.5重量%添加したことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池用液体電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0157】
7.比較例7
リチウム二次電池用ゲルポリマー電解質用組成物を製造するとき、第1オリゴマーのみ単独で5重量%添加したことを除いては、実施例3と同一の方法でリチウム二次電池用ゲルポリマー電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0158】
8.比較例8
リチウム二次電池用ゲルポリマー電解質用組成物を製造するとき、第2オリゴマーのみ単独で5重量%添加したことを除いては、実施例3と同一の方法でリチウム二次電池用ゲルポリマー電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0159】
[実験例]
1.実験例1:表面張力の評価
実施例1及び2、比較例1から6で製造されたリチウム二次電池用電解質の表面張力を測定した。表面張力は、テンシオメーター(TENSIOMETER)装置を用いて、デュノイリング法(Du Nouy ring method)を適用して3回以上繰り返し測定した。測定された表面張力は、下記表1に示した。
【0160】
【0161】
前記表1を参照すれば、比較例より実施例の表面張力が相対的に低いことを確認することができる。比較例3、5の場合、実施例と比べると、表面張力が類似の水準を維持することを確認することができるが、下記で検討するとおり、初期容量などが他の実施例よりさらに低い。
【0162】
2.実験例2:イオン伝導度の測定
実施例1から4、比較例1から8で製造されたリチウム二次電池用電解質のイオン伝導度を測定した。
【0163】
実施例1及び2、比較例1から6の場合、プローブ(Probe)形態のイオン伝導度の測定装置(Probe:InLab 731、model:S470、製造社:Mettler Torodo)を用いて常温(25℃)と低温(0℃)におけるイオン伝導度を測定した。
【0164】
実施例3及び4、比較例7及び8で製造されたリチウム二次電池用ゲルポリマー電解質用組成物の場合、バンド型の伝導性ガラス基板上にコーティングした後、65℃で5時間の間熱硬化させ、十分乾燥させた。次いで、アルゴン雰囲気下でスパッタ(sputter)法を用いてそれぞれの膜の上部に白金(Pt)電極を1mm直径の円形にコーティングした後、交流インピーダンス測定法を用いて常温(25℃)と低温(0℃)におけるイオン伝導度を測定した。イオン伝導度は、VMP3測定装置と4294Aを用いて周波数の帯域100MHz~0.1Hzで測定した。測定されたイオン伝導度は、下記表2に示した。
【0165】
【0166】
前記表2を参照すれば、実施例の常温イオン伝導度が、比較例より高いか同等な水準を維持することを確認することができ、低温イオン伝導度の場合、実施例がさらに高いことを確認することができる。一方、比較例3は、低温で電解質が凍りつきはじめ、低温におけるイオン伝導度の測定が困難であることを確認することができる。
【0167】
3.実験例3:初期容量及び抵抗の測定
実施例1から4と比較例1から8で製造されたそれぞれのリチウム二次電池に対して、14mAの電流(0.1C レート(rate))でフォーメーション(formation)を進めた後に4.2V、47mA(0.33C、0.05C カットオフ(cut-off))のCC/CV充電と3V、47mA(0.33C)のCC放電を3回繰り返す。このとき、3回目の放電容量を初期容量として測定した。
【0168】
初期容量を測定した後、完全に充電されたリチウム二次電池を常温(25℃)でそれぞれ350mA(2.5C)の電流で10秒の放電を進めるときに発生する電圧の降下を記録し、R=V/I(オームの法則)を用いて算出したDC抵抗値を初期抵抗として測定した。このとき、測定された初期容量及び初期抵抗の結果を下記表3に示した。
【0169】
【0170】
前記表3を参照すれば、実施例の初期容量が比較例よりさらに高いことを確認することができる。
【0171】
4.実験例4:常温における電池容量維持率の評価
実施例1から4及び比較例1から8で製造されたリチウム二次電池に対して、14mAの電流(0.1C レート(rate))でフォーメーション(formation)を進めた後、このときの放電容量を初期容量として設定した。その後、4.2V、47mA(0.33C、0.05C カットオフ(cut-off))のCC/CV充電と3V、47mA(0.33C)のCC放電を常温(25℃)でそれぞれ200回進めた。その後、200回目の放電容量と初期容量を比べて容量維持率を計算し、その結果を表4に示した。
【0172】
【0173】
前記表4を参照すれば、実施例の常温での容量維持率が、比較例より高いか同等な水準であることを確認することができる。このとき、実施例の初期容量が比較例より高いので、実施例がさらに大きい容量を高い維持率で維持できることを確認することができる。
【0174】
5.実験例5:高温安全性の評価(ホットボックステスト:HOT box test)
実施例1から4及び比較例1から8で製造されたリチウム二次電池をSOC(State Of Charge)100%に完全に充電させた後、リチウム二次電池を150℃で4時間の間放置したときに発火されるか否か、及びその発火が開始される時間を確認する実験を実施した。その結果を下記表5に示した。
【0175】
【0176】
前記表5を参照すれば、実施例のいずれも発火しないことを確認することができる。
【0177】
6.実験例6:機械的物性の測定
実施例3、4及び比較例7、8で製造されたリチウム二次電池用ゲルポリマー電解質用組成物を65℃で基板上に塗布し、5時間の間熱硬化させた後、十分乾燥させてゲルポリマー電解質を形成した。その後、回転式レオメータ(Roatainonal Rheometer)(DHR2)装置を用いて、それぞれのゲルポリマー電解質に対して0.1~10Hzの範囲内で弾性係数を測定した。測定された結果を下記表6に示した。
【0178】
【0179】
前記表6を参照すると、ゲルポリマー電解質の機械的強度も実施例が比較例に比べて優れていることを確認することができる。