(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20220511BHJP
A47G 1/02 20060101ALI20220511BHJP
A45D 42/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E03C1/042 B
A47G1/02 J
A45D42/00 Z
(21)【出願番号】P 2018020198
(22)【出願日】2018-02-07
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 和彦
(72)【発明者】
【氏名】玉木 孝典
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009411(JP,A)
【文献】特開2017-066611(JP,A)
【文献】特開2007-097949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
A47G 1/02
A45D 42/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体の外面に鏡を備えた水栓であって、前記鏡は
使用者に対し傾倒する方向に角度が調節可能であり、前記水栓本体の前記外面に沿って配置されることを特徴とする水栓。
【請求項2】
前記鏡は、前記水栓本体の上部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の水栓。
【請求項3】
前記水栓本体は鏡操作部を備え、前記鏡は前記鏡操作部によって角度を調節可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡を備えた水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図5及び
図6には、鏡を備えた水栓について記載されている。この水栓は、水栓本体上部の後方より垂直に立ちあがった平面部を有し、その平面部に鏡を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水栓において、鏡は一定の角度で立ち上がった状態でしか使用することができない。そのため、使用者は、水栓の前で歯磨きやメイク、髭剃り等を行う際に、顔の注視したい部分を鏡に映すために、自ら顔の角度姿勢等を変えて使う必要があり、不便であった。また、水栓本体上部の後方より立ち上がった平面部に鏡を有した構成であるため、意匠の自由度もなかった。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、鏡を備えた水栓において、使い勝手に優れるとともに美観に優れる水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、水栓本体の外面に鏡を備えた水栓であって、前記鏡は角度が調節可能であり、前記水栓本体の前記外面に沿って配置されることを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記鏡は、前記水栓本体の上部に設けられることが好ましい。
【0007】
上記構成において、前記水栓本体は鏡操作部を備え、前記鏡は前記鏡操作部によって角度を調節可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明は、鏡の角度を調節可能とし、水栓本体の外面に沿って配置させたため、使い勝手と美観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は、鏡を水栓本体の外面に沿って配置した水栓の斜視図。(b)は、鏡を別の角度に調節した斜視図。
【
図2】鏡を水栓本体の外面に沿って配置した水栓の平面図。
【
図3】(a)は、鏡を水栓本体の外面に沿って配置した水栓の右側面図、(b)は、鏡を別の角度に調節した水栓の右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、水栓の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態は、水,湯及び水と湯との混合水を吐水できるようにした、浴室用の湯水混合水栓(以下、単に水栓という)に具体化したものである。
【0011】
図1(a)及び
図2に示すように、水栓10における水栓本体16の後部の給水口及び給湯口(ともに図示しない)には、給水ジョイント11及び給湯ジョイント12がそれぞれ接続され、それらの給水ジョイント11及び給湯ジョイント12は、給水源から延びる配管及び給湯源から延びる配管(図示しない)にそれぞれ連結される。水栓本体16の後部のシャワー吐出口13には、シャワーホース14が接続され、そのシャワーホース14の先端にはシャワーヘッド(図示しない)が接続されている。水栓本体16の下部にはカラン吐出口15が設けられている。
【0012】
図1(a)に示すように、水栓本体16の右端には、吐水量調節ハンドル20が設けられ、水栓本体16の左端には温度調節ハンドル21が設けられている。
また、水栓本体16の前部には3つのボタンが左右に並んで設けられ、前部中央には後述のシャワー側押しボタン22が、前部左側には後述のカラン側押しボタン23が、前部右側には後述の鏡操作ボタン24が、それぞれ配置されている。なお、シャワー側押しボタン22及びカラン側押しボタン23は、スプリング及びカム(ともに図示しない)の作用によるプッシュオン・プッシュオフタイプであって、1回目のボタン22,23に対する押し込みにより、同ボタン22,23は後退してその位置で保持され、2回目のボタン22,23に対する押し込みにより、同ボタン22,23は突出位置に復帰する。
【0013】
そして、シャワー側押しボタン22及びカラン側押しボタン23の各ボタンが前方への突出状態にあるときには、シャワーヘッド及びカラン吐出口15が止水状態にある。シャワー側押しボタン22が押し込まれたときには、シャワーヘッドからのシャワー吐水が行われる。カラン側押しボタン23が押し込まれたときには、カラン吐出口15からの吐水が行われる。これらの吐水の場合、前記吐水量調節ハンドル20を回転操作することにより、吐水量が調節される。また、温度調節ハンドル21を回転操作することにより、吐水の温度が調節される。
【0014】
水栓本体16には、上部に鏡30が設けられており、
図1(a)、
図2、
図3(a)は、鏡30を水栓本体16の外面に沿って配置した場合の水栓10を示している。鏡30は、ガラス製の平面鏡で構成されている。
【0015】
図1(b)、
図3(b)は、鏡30を、水栓本体16の外面に沿って配置した状態から別の角度に調整した状態の斜視図と右側面図である。これらの図に示すように、水栓本体16の上部には外面としての上面17が設けられている。上面17は、平面視で略長方形状であり、水平かつ平坦に設けられている。そして、鏡30は平面視で上面17と略同形状に設けられている。
【0016】
鏡30は、水平な状態で上面17に沿う状態、つまり、鏡30と水栓本体16の上面17とは、面で接する状態となっている。そして、鏡30は、上面17の平面視で表れる4つの辺(線分)のうち、前側の辺を回転軸Aとして、回転移動できるように設けられている。なお、この明細書においては、鏡30を前側へ回転移動する方向、つまり
図3(b)において反時計回り方向を正転方向とし、後側へ回転移動する方向、つまり
図3(b)において時計回り方向を逆転方向として説明する。
【0017】
図1(b)、
図3(b)に示すように、水栓本体16の上面17の右端には、鏡30を支持するようにアーム31が設けられている。アーム31は、水栓本体16の内外を連通するように上面17に設けられた貫通孔18に挿通されており、側面視で部分円環状(円弧状)かつ平面視で断面長方形状に形成されている。そして、アーム31の上端は鏡が固定され、下端は水栓本体16の内部の機構部(図示しない)に連結されている。さらにアーム31は、上面17から水栓本体16の外側に露出した部分と水栓本体16の内側に隠蔽された部分(図示しない)とが一体に、回転軸Aを中心に回転移動可能に設けられている。また、貫通孔18は、アーム31が回転移動する際、干渉しない程度の大きさに形成されている。
【0018】
水栓本体16の前部右側には鏡操作部としての鏡操作ボタン24が設けられている。鏡操作ボタン24は押しボタンであり、指で押すと後退し、指を離すと後退した位置で保持されることなく、元の位置に復帰する。
鏡操作ボタン24とアーム31は、水栓本体16に内蔵された機構部(図示しない)を介して連動するように構成されている。
【0019】
次に、鏡30の角度の調節方法について説明する。
鏡30の正転方向への角度調節は、鏡操作ボタン24によって行う。
図1(a)、
図3(a)に示す、鏡30が水平な状態において、鏡操作ボタン24を押すと、鏡操作ボタン24の移動が水栓本体16に内蔵の機構部を介して、アーム31の回転運動に変換され、アーム31は正転方向に回転移動する。同時に、アーム31に支持された鏡30が正転方向へ回転移動する。
【0020】
鏡操作ボタン24を1回押すと、鏡30及びアーム31は所定の角度分だけ正転方向へ回転移動してその位置で保持される。そして、鏡30は、鏡操作ボタン24を押すごとに所定の角度分だけ正転方向へ回転移動して保持され、最大移動角度まで段階的に移動させることができる。鏡30が最大移動角度に保持された状態で鏡操作ボタン24を押しても、鏡30はそれ以上移動しない。本実施例では、鏡30は、鏡操作ボタン24を押すごとに18°移動し、最大移動角度は90°、つまり鉛直状態になるように設けられ、水平状態から数えて6段階の角度調節ができるように設けられている。
【0021】
鏡30の逆転方向への角度調節は、鏡操作ボタン24は使用せず、手で鏡30を逆転方向へ押すことによって行う。そして、適当な位置で鏡30を押すことを止めると、その位置で保持される。つまり、逆転方向へは無段階で角度を調節することができ、正転方向ではできなかった角度の微調節ができる。
【0022】
本実施形態においては、以下の効果がある。
(1)水栓本体16の外面に備えた鏡30は、角度を調節可能であり、使用者が姿勢を変えることなく使うことができるため、水栓10の使い勝手を向上させる。
【0023】
(2)鏡30は、水栓本体16の外面としての上面17に沿って配置することで、水栓10と一体感が生じるため、水栓10の美観を向上させる。
【0024】
(3)水栓10は、水栓本体16の上部に鏡30が設けられているため、清掃性が良い。また、鏡30は清掃等の摩擦に対して強いため、美観を長期的に保つことができる。
【0025】
(4)鏡操作ボタン24の操作により、鏡30の角度を調節できるため、鏡30の操作性を向上させる。
【0026】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・鏡30を配置する位置は、水栓本体10の上部だけに限定されず、前部等であってもよい。
・鏡30は、沿わせた水栓本体16の外面の範囲に収まるよう配置してもよいし、外面からはみ出るように配置してもよい。
【0027】
・水栓本体16の上面17は実体として存在しない面であってもよい。すなわち、水栓本体16の前面、右側面、左側面、背面の各上辺によって形成された仮想の面であってもよい。
・本実施形態において鏡30が水栓本体16の外面に沿って配置される状態とは、鏡30が平坦な上面17に対し平行に隙間なく接している状態であるが、鏡30と水栓本体16の一体感を失わない程度に鏡30と上面17が離間していてもよいし、鏡30と上面17が厳密に平行でなくともよい。
【0028】
・鏡操作ボタン24による鏡30の角度の調節は、正転方向・逆転方向どちらに対して行ってもよく、両方向に対して行えるようにしてもよい。
・鏡30の角度を調節する軸の方向は、実施形態の方向に限定されず、どのような方向であってもよい。また、一つの軸に対する調節だけでなく、複数の軸を組み合わせて調節可能に設けてもよい。さらに、ユニバーサルジョイント等を用いて3次元的に調節可能に設けてもよい。
【0029】
・鏡30は、鏡像を映すことのできるものであればよく、一般的な平面鏡の他、凹面鏡や凸面鏡、ハーフミラー等でもよい。
・鏡30は、複数枚設けてもよい。
【0030】
・鏡30の形状は平面視で長方形状に限定されず、例えば円形状や多角形状であってもよい。
・鏡30の材質はガラスに限定されず、例えば、アクリル等の樹脂製でもよいし、金属製であってもよい。
【0031】
・鏡操作ボタン24による鏡30の操作の動力は限定されず、押込みによる鏡操作ボタン24の変位を機械的に伝達する手動式でもよいし、モーター等を使用した電動式でもよい。
・鏡30操作部の操作方式は押しボタン式に限定されず、例えば、ダイヤル式等であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…水栓、11…水栓本体、17…上面(外面)、20…吐水量調節ハンドル、 21…温度調節ハンドル、24…鏡操作ボタン(鏡操作部)、30…鏡、31…アーム。