(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】Friedel-Crafts反応の新しい新方法及び当該方法に用いられる触媒
(51)【国際特許分類】
C07C 45/46 20060101AFI20220511BHJP
C07C 49/813 20060101ALI20220511BHJP
C07C 25/18 20060101ALI20220511BHJP
C07C 17/263 20060101ALI20220511BHJP
C07C 49/80 20060101ALI20220511BHJP
B01J 27/10 20060101ALI20220511BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
C07C45/46
C07C49/813
C07C25/18
C07C17/263
C07C49/80
B01J27/10 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019546038
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 CN2019094381
(87)【国際公開番号】W WO2020164218
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2019-08-21
(31)【優先権主張番号】102019103840.5
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519299739
【氏名又は名称】福建永晶科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN YONGJING TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.6, Jin Ling Road, Jin Tang Industry Park, SHAOWU NANPING, Fujian 354003 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲き▼龍
(72)【発明者】
【氏名】杜 宏軍
(72)【発明者】
【氏名】呉 文挺
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-015936(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151116(WO,A1)
【文献】西独国特許出願公告第01044091(DE,B)
【文献】Olah, G.A. et. al.,Hydrogen Fluoride Antimony(V) Fluoride,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,2001年,PP.1-7
【文献】Yoneda et al.,ELECTROPHILIC SUBSTITUTION OF BENZENES WITH STRONG ELECTRON-WITHDRAWING GROUPS IN SUPER ACID MEDIA. FRIEDEL-CRAFTS ALKYLATION OF ACETOPHENONE,CHEMI LETT.,1979年,Vol.8, No.8,PP.1003-1006
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/46
C07C 49/813
C07C 25/18
C07C 17/263
C07C 49/80
B01J 27/10
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化されたアシル化又はアルキル化物を製造する方法であって、
出発原料化合物と五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal
5
)及びフッ化水素(HF)とを混合器に入れて混合するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた混合物とFriedel-Crafts試薬をマイクロリアクター1に入れ、Friedel-Crafts反応させ、Friedel-Crafts反応生成物を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で未反応のHF及びSbHal
5
を回収し、新しい出発原料化合物と前記混合器に入れて前記ステップ(2)を繰り返すステップ(3)と、
前記Friedel-Crafts反応生成物を精製し、精製産物を得るステップ(4)と、
前記精製産物とハロゲン化剤とをマイクロリアクター2に入れ、ハロゲン化反応させ、ハロゲン化されたアシル化又はアルキル化物を得るステップ(5)と、
を含み、
ステップ(2)、(5)において、以下の条件下で前記マイクロリアクター1及び2にフィーディングして反応させる、方法。
流速:10ml/h-400l/h
温度:30℃-150℃
圧力:5bar-50bar
滞留時間:1分間-60分間
【請求項2】
前記
出発原料化合物は、1つ又は複数の芳香環の化合物であ
る、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記出発原料化合物は、式(I)を有する化合物から選択される、請求項1
または2に記載の方法。
【化1】
(式中、Rnは、独立し
て二酸化窒素(NO
2)、ハロゲン
、置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4アルコキシ基
、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基
、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルコキシ基
であり、
Halは、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択されるハロゲン
であり、あるいは、Halは、存在せず、即ち、Halの位置に水素(H)が存在する。)
【請求項4】
前記出発原料化合物は、式(I)を有する化合物から選択され、
Rnは、独立してフッ素(f)、塩素(Cl)、ジフルオロアルコキシ基又はトリフルオロアルコキシ基からなる群より選択される1つ又は複数の置換基であり
、
Halは、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択されるハロゲン
であり、あるいは、Halは、存在せず、即ち、Halの位置に水素(H)が存在する、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記Friedel-Crafts試薬は、式(II)、式(III)又は式(IV)を有する化合物から選択される、請求項1
から4のいずれか1項に記載の方法。
【化2】
(式(II)中、R’nは、独立し
て二酸化窒素(NO
2)、ハロゲン
、置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4アルコキシ基
、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基
、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルコキシ基
であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して水素、トリハロメチル(-CHal
3)、ハロカルボニル(-(C=O)Hal)、ハロメチル(-CH
2Hal)、又はボロン酸基を示し、少なくともR1及びR2のうちの1つはトリハロメチル(-CHal
3)、ハロカルボニル(-(C=O)Hal)、ハロメチル(-CH
2Hal)又はボロン酸基であり、それぞれのハロゲン(Hal)は、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択され
、
式(III)中、R3は、独立して置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基を示し、ハロゲンは、フッ素(f)及び/又は塩素から選択され
、
Xは、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択されるハロゲンを示し
、あるいは、Xは、酸無水物基─O-(C=O)─R’3を示し、R’3は
、R3と同じであり、
式(IV)中、R4は、独立して置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基を示し、ハロゲンは、フッ素(f)及び/又は塩素から選択され
、
Yは、ハロゲンを示し、R4における任意の位置に存在してもよく、ハロゲンは、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択
される。)
【請求項6】
前記Friedel-Crafts試薬は、式(II)を有する化合物から選択され、
式(II)中、R’nは、独立して水素(H)、フッ素(f)、塩素(Cl)、ジフルオロアルコキシ基又はトリフルオロアルコキシ基からなる群より選択される1つ又は複数の置換基であり
、
R1及びR2は、それぞれ独立して水素、トリハロメチル(-CHal
3)、ハロカルボニル(-(C=O)Hal)、ハロメチル(-CH
2Hal)、又はボロン酸基を示し、少なくともR1及びR2のうちの1つはトリハロメチル(-CHal
3)、ハロカルボニル(-(C=O)Hal)、ハロメチル(-CH
2Hal)又はボロン酸基であり、ハロゲン(Hal)は、フッ素(f)、塩素(Cl)から選択
される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記Friedel-Crafts試薬は、式(III)を有する化合物から選択され、
式(III)中、R3は、独立して置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基を示し、ハロゲンは、フッ素(f)及び/又は塩素から選択され
、
Xは、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択されるハロゲンを示し
、あるいは、Xは、酸無水物基─O-(C=O)─R’3を示し、R’3は
、R3と同じである、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記Friedel-Crafts試薬は、式(IV)を有する化合物から選択され、
式(IV)中、R4は、独立して置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基を示し、ハロゲンは、フッ素(f)及び/又は塩素から選択され
、
Yは、ハロゲンを示し、R4における任意の位置に存在してもよく、ハロゲンは、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択
される、請求項
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるFriedel-Crafts(フリーデル・クラフツ)反応によりアシル化又はアルキル化アリール化合物、例えばアシル化又はアルキル化ベンゼンを製造又は合成する新しい方法、及び当該に用いられる新しい触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、Friedel-Crafts反応は、PAEK(ポリアリールエーテルケトン)の工業製造、特にPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)の工業製造に用いられている。
【0003】
例えば、PEEKは、ハイドロキノンと4,4’-ジフルオロベンゾフェノンとの縮合により製造される。前記ベンゾフェノンは、フルオロベンゼンを主要原料として調製される(Victrex WO2018/055384、中国特許出願CN107573500)。4,4’-ジフルオロベンゾフェノンは、4,4’-ジフルオロジフェニルメタンを酸化することにより調製され(ChemCatChem(2018),10(5),1096-1106)、或いは、フルオロベンゼンとCCl4とのFriedel-Craftsアルキル化反応(《化工進展》(2015),34(4),1104-1108)又はフルオロベンゼンと4-フルオロベンゾイルクロリドとのFriedel-Craftsアシル化反応(RaychemのUS4814508)により調製される。現在最も一般的なジフルオロジフェニルメタンの合成は、Balz-Schiemann反応により4,4’-メチレンビス[アニリン]を合成することである。この合成は、中国特許CN106008182(2016)及び他の作者によって発表された汚いNaNO2/HBF4化学に関する。フルオロベンゼンとホルムアルデヒドによるジフルオロジフェニルメタンの合成は、《法国公報》((1951)第318、323頁)に発表され、又は4-フルオロベンジルクロリドによる合成は、《化学学会期刊ケミカル・コミュニケーションズ》((1989)(18),1353-4)に発表されている。
【0004】
Friedel-Craftsアシル化による4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの合成は、フルオロベンゼン又は4-フルオロフェニルボロン酸を出発原料とする(《ケミカル・コミュニケーションズ》(ケンブリッジ、英国)(2017),53(93),12584-12587)。また、中国特許CN106045828(2016)には、4-フルオロ安息香酸誘導体又は4-フルオロトリクロロトルエン誘導体が開示されている。これらの方法のいずれもにおいて、少なくとも1つのステップにはBalz-Schiemann反応とFriedel-Crafts反応との組み合わせが含まれる。この2つの反応タイプは、いずれも非常に古い技術であるため、より新しい環境化学および反応技術に置き換えられることが望ましい。Mitsuiの特許US4453009には、「汚い(dirty)」Halex反応により4,4’-ジクロロベンゾフェノンから4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを合成することが開示されている。前記Halex化学品は、変換が不完全であるため「汚い」と考えられ、製品の分離が困難であり、大量の有毒排水が発生する場合が多い。カップリング生成物として得られた「汚い」KClは、通常埋め立てに用いられる。
【0005】
通常、反応器(イオン液体中で触媒したルイス酸)において、塩化ベンゾイルとクロロベンゼンとのFriedel-Crafts反応という従来技術が知られている(《ケミカル・コミュニケーションズ》(2008),37(8),844-845及び《中華化学学会期刊(台北)》(2000),47(6),1243-1246)。また、α-Fe2O3及びCaCO3ナノ粒子を有するマイクロリアクターでのFriedel-Craftが開示されている(《化学工程期刊》(アムステルダム、オランダ)(2018)331,443-449)。クロロベンゼン、クロロ安息香酸クロリド及びルイス酸であるAlCl3のFriedel-Crafts反応(収率:96%及び87-90%)が開示されている(《化工新型材料》(2012),40(2))。さらに、フッ素系溶媒における希土類(III)パーフルオロオクタンスルホン酸塩を使用すること(収率:86%)が開示されている(《フッ素化学期刊》(2005),126(8),1191-1195)。
【0006】
《化学技術(Khimicheskaya Tekhnologiya)》(モスクワ、ロシア連邦)(2001)(5),3-5から、Friedel-Crafts触媒が存在せず、約260℃の温度でクロロベンゼンと塩化テレフタロイルとを反応させた収率は86%であることが分かった。《青島科術大学学報》自然科学版(2007),28(1),39-42にもAlCl3を使用することが開示されている。また、日本特開JP2014237738にはルイス酸としてFeCl3を使用することが開示されている。
【0007】
《有機化学期刊》(1989),54(5),1201-3及び《応用化学国際版》(2011),50(46),10913-10916には、クロロベンジルクロリドとクロロベンゼンとのFriedel-Crafts反応が開示されている。
【0008】
例えば、Friedel-Crafts反応は、ベンゾフェノンの製造に適用できる。ベンゾフェノンの好ましいIUPAC名称は、ジフェニルケトンであり、他の名称は、ベンゾフェノン、フェニルケトン、ジフェニルケトン、ベンゾイルベンゼン、ベンゾイルフェニル、ジフェニルケトンが含まれ、CAS番号が119-61-9である。
【0009】
従来技術において、ベンゾフェノンは、銅で触媒されるジフェニルメタンと空気との酸化反応により製造される。実験室経路は、ベンゼンと四塩化炭素とを反応させてから、加水分解して得られたジフェニルジクロロメタンに関する。Friedel-Craftsによりルイス酸(例えば、塩化アルミニウム)触媒の存在下でベンゼンを塩化ベンゾイルでアシル化することによって製造されてもよい。他の合成経路は、パラジウム(II)/オキソメタレート触媒によるものである。これにより、アルコールは、各側に2つの基があるケトンに変換される。もう1つのあまり知られていないベンゾフェノンの合成反応は、無水安息香酸カルシウムの熱分解である。
【0010】
性質については、ジフェニルジクロロメタンは、式が(C6H5)2CCl2の有機化合物であり、無色固体であり、他の有機化合物の前駆体として使用することができる。
【0011】
従来技術において、ジフェニルジクロロメタンは、四塩化炭素及び無水塩化アルミニウムを触媒としてベンゼンのビズFriedel-Craftsアルキル化により製造される。ベンゾフェノンは、五塩化リンで処理されてもよい。
(C6H5)2CO+PCl5→(C6H5)2CCl2+POCl3
ジフェニルジクロロメタンを加水分解してベンゾフェノンを形成する。
(C6H5)2CCl2+H2O→(C6H5)2CO+2HCl
ジフェニルジクロロメタンは、テトラフェニルエチレン、ジフェニルメタンイミン塩酸塩及び無水安息香酸の合成に用いられる。
【0012】
ジフェニルメタンは、式が(C6H5)2CH2の有機化合物である。当該化合物は、メタンから構成され、2つの水素原子が2つのフェニル基によって置換されたものである。ジフェニルメタンは、有機化学における共通の骨格を構成する。ジフェニルメチルは、ベンズヒドリル(benzhydryl)とも呼ばれ、在ルイス酸(例えば、三塩化アルミニウム)の存在下で、塩化ベンジルとベンゼンとのFriedel-Craftsアルキル化反応により製造される。
C6H5CH2Cl+C6H6→(C6H5)2CH2+HCl
前記反応は、いずれも大量の廃棄物及び排水が発生し、高価な試薬が必要であり、又は工業規模では実用的ではない。
【0013】
本発明の目的は、従来技術に存在する欠点を克服するために、Friedel-Crafts反応により化合物を製造することにより、より効果的で、省エネな方法及び環境により優しい方法を提供するとともに、当該方法に用いられる有益な触媒を提供することである。本発明の別の目的は、Friedel-Crafts反応、及び当該方法に用いられる有益な触媒を提供することである。当該触媒は、フッ素化反応と容易に組み合わせることができる。ここで、フッ素化反応は、Friedel-Crafts反応の前又は後に行うことができる。本発明の別の目的は、Friedel-Crafts反応に用いられる触媒を提供することである。当該触媒は、Friedel-Crafts反応及びフッ素化反応に適用できる。
【発明の概要】
【0014】
請求項に限定されるように本発明の目的を実現し、詳細は後述する。一態様において、本発明は、いわゆるFriedel-Crafts反応によりアシル化又はアルキル化アリール化合物(例えば、アシル化又はアルキル化ベンゼン)を製造又は合成する新しい環境に優しい方法、及び当該方法に用いられる新しい触媒を提供する。他の態様において、本発明は、新しいFriedel-Crafts触媒又はFriedel-Crafts反応における触媒の新しい使用を提供する。
【0015】
有機分子において、フェニル基は、芳香環に由来するいかなる官能基又は置換基であり、一般には、芳香族炭化水素に由来するフェニル基又はナフチル基である。用語「アリール基」は概略的な用語であり、化学構造式において「Ar」で表される。
【0016】
単純なアリール基は、ベンゼンに由来する基であるフェニル基(化学式:C6H5)である。最も基本的なアリール基は、フェニル基であり、ベンゼン環の1つの水素原子がある置換基で置換されてなり、分子式C6H5-を有する。フェニル基を含む化合物を命名する際に、フェニル基を親炭化水素とし、接尾辞「-ベンゼン」で示すことができる。或いは、フェニル基は、置換基として扱われ、名称において「フェニル」と記される。このような命名は、フェニル基に結合された基が6つ以上の炭素原子からなるときに使われる。
【0017】
いわゆるFriedel-Crafts反応は、当業者に知られているものである。例えば、Friedel-Crafts反応は、Charles Friedel及びJames Craftsによって1877年に発見された一連の反応であって、置換基を芳香環に結合するためのものである。Friedel-Crafts反応には、主にアルキル化反応及びアシル化反応がある。いずれも求電子芳香族置換により行われる。
【0018】
Friedel-Craftsアルキル化では、強ルイス酸触媒を用いて芳香環とハロゲン化アルキルとをアルキル化反応させ、無水塩化第二鉄を触媒としてアルキル基を塩素イオンの前サイトに結合させる。当該反応の欠点は、生成物が反応物よりも求核性を有する。これは、アルキル化が発生したためである。また、当該反応は、一級アルキル化剤、いくつかの二級アルキル化剤、及び安定したカルボカチオンを生成するもの(例えば、ベンジル化されたもの)のみに非常に有用である。二級アルキルハロゲン化物の場合、出発カルボカチオン(R(+)-X-Al(-)-Cl3)は、カルボカチオン転位反応を発生する。
【0019】
Friedel-Craftsアシル化は、芳香環のアシル化を含む。典型的なアシル化剤は、酸塩化物である。典型的なルイス酸触媒は、酸及び三塩化アルミニウムである。酸無水物を用いることでFriedel-Craftsアシル化を行うこともできる。反応条件は、Friedel-Craftsアルキル化と類似する。当該反応は、アルキル化反応と比較して、以下の利点を有する。カルボニル基の電子吸収効果により、ケトン生成物は、常に出発分子よりも反応性が低いため、アシル化は複数回発生することがない。さらに、カルボカチオン転位が発生しない。これは、アシルイオンが共鳴構造で安定し、正電荷は酸素にあるためである。Friedel-Craftsアシル化の実現可能性は、酸塩化物試薬の安定性に依存する。
【0020】
本発明において、関連する化合物は、塩化テレフタロイル(TCL、1,4-フェニルジカルボニルクロリド、二塩化テレフタロイルとも呼ばれる)である。好ましいIUPAC名称は、ベンゼン-1,4-ジカルボニルジクロリドである。他の名称は、塩化テレフタロイル、1,4-フェニルジカルボニルクロリド、ベンゼン-1,4-ジカルボニルクロリド、二塩化テレフタロイル、二塩化テレフタロイル、塩化テレフタロイルであり、一般的な略語はTCLである。
【0021】
上記のように、従来技術における既知の反応は、いずれも大量の廃棄物及び排水が発生し、効果の試薬が必要であり、又は工業規模では実用的ではない。
【0022】
本発明は、従来技術の上記欠点を克服した。従って、本発明は、排水がなく、試薬の価格が合理的で、工業規模に適した方法を提供する。具体的には、非常に低価で清潔な、調製されやすい原料及びSbHal5に基づく触媒系を用いることにより上記目的を達成する。フッ素化合物の製造にも、本発明は非常に有利である。また、一実施形態において、本発明のFriedel-Crafts反応は、マイクロリアクターシステム中で行うことができる。
【0023】
一態様において、本発明は、五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)、好ましくは活性化された五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)(任意にフッ化水素(HF)で活性化される)の存在下で行われるFriedel-Crafts反応による化合物の製造方法を提供する。
【0024】
他の態様において、本発明は、Friedel-Crafts反応における五フッ化アンチモン触媒(SbHal5)、好ましくは活性化された五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)(任意にフッ化水素(HF)で活性化される)の触媒としての使用を提供する。
【0025】
他の態様において、本発明は、Friedel-Crafts反応による化合物の製造方法における五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)、好ましくは活性化された五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)(任意にフッ化水素(HF)で活性化される)の触媒としての使用を提供する。
【0026】
他の態様において、前記方法又は使用において、Friedel-Crafts反応とフッ素化反応とを組み合わせ、フッ素化反応は、Friedel-Crafts反応の前又は後に行うことができる。
【0027】
従って、本発明の一実施形態において、五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)、好ましくは活性化された五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)(任意にフッ化水素(HF)で活性化される)の存在下で行われるFriedel-Crafts反応による化合物の製造方法を提供する。ここで、製造される化合物は、フッ素化化合物である。
【0028】
驚いたことには、HFを用いてハロゲン化ベンゼン前駆体からフルオロベンゼンを製造し、ハロゲン化水素を形成する工業的には有益な方法において通常過剰なHFとともに使用されるフッ素化触媒は、Friedel-Crafts触媒とする驚くほどシンプルかつ有益な用途(HFが「低」濃度であるか、又はHFが存在しない場合)を提供することもできる。これによって、本発明の前の従来技術に存在していない方式により、Friedel-Crafts反応により化合物を製造する工業的に重要な原料としてアシル化又はアルキル化化合物を提供することができる。用語「低」濃度は、以下の発明の詳細な説明においてより具体的に定義される。
【0029】
ハロゲン化触媒及び/又はフッ素化触媒は、当業者によく知られており、本発明において、Sb、As、Bi、Al、Zn、Fe、Mg、Cr、Ru、Sn、Ti、Co、Ni、好ましくはSbに基づくものである。より好ましくはフッ素化触媒、特に、活性物質H2F+SbF6
-を提供するSbフッ素化触媒である。SbHal5がFriedel-Crafts反応の前又は後に過剰なHF中に保持される場合、フッ素化ステップに用いられるが、Friedel-Crafts反応においては、HFは「低」濃度、例えばppm範囲内のみで使用される。
【0030】
本発明によれば、アンチモン(Sb)は最良かつ最も安価な触媒であるが、As及びBiはフッ素化触媒として用いられてもよく、必要に応じて、金属の酸化段階IIIにおいて、特にSbHal5及びSbHal-IIIが混在する場合、又は他の金属化合物、例えば、MHal3化合物(例えばAsHal3及びBiHal3)と混在する場合、Friedel-Crafts反応に用いられてもよい。
【0031】
Friedel-Crafts反応は、通常Friedel-Crafts反応で用いられる反応器で行うことができる。フッ化水素(HF)、少なくとも微量(例えばppmの範囲内)のHFに対して耐性を有する反応器が好ましい。Friedel-Crafts反応は、断続的(バッチ式)または連続的(連続式)に行うことができるが、好ましくは連続式Friedel-Crafts反応である。本発明のFriedel-Crafts反応の一実施形態において、マイクロリアクターを使用することが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】トリフルオロアセチル化によりトリフルオロアセトフェノン及び3-クロロ-トリフルオロアセトフェノンを得る代表的な反応フローチャートを示す。
【
図2】ヘプタフルオロイソプロピル-3-メチルニトロベンゼンによる代表的な反応フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の概要における説明、特許請求の範囲における限定、及び以下の実施形態における詳しい説明の通り、本発明は、従来技術の不足を克服した。
従って、本発明は、従来技術の決定を克服した。本発明は、排水がなく、試薬価格が合理的で、工業規模に適した方法を提供する。
【0034】
具体的には、非常に低価で清潔で製造されやすい原料及びSbHal5に基づく触媒系を用いることにより当該目的を実現する。フッ素化化合物の製造にも、本発明は非常に有利である。また、一実施形態において、本発明のFriedel-Crafts反応は、任意にマイクロリアクターシステム中で行われる。以下のスキームに挙げられる化学反応は実施例であるが、本発明を制限するものではない。
【0035】
スキーム1:CCl
4のFriedel-Crafts反応による(ワンポット)断続的または連続的な製造(本発明方法)
【化1】
low concentration:低濃度
【0036】
スキーム2:4-クロロ安息香酸クロリドのFriedel-Crafts反応による(ワンポット)断続的または連続的な製造(本発明方法)
【化2】
low concentration:低濃度
【0037】
4-クロロ安息香酸クロリドの代替的なスキームとして、p-クロロフェニルボロン酸を使用することができる。反応は、1つ又は複数の回分式反応器において断続的に行うか、又はマイクロリアクターシステムにおいて連続的に行うことができる。好ましくは、相分離により有機材料と触媒及びHFとを分離する。結晶(MP:107℃)により分離された有機材料をさらに精製する。ボロン酸は、ホウ酸(B(OH)3)に関連する化合物であり、その3つのヒドロキシル基のうちの1つがアルキル基又はアリール基で置換されたものである。ボロン酸の一般構造はR’’-B(OH)2であり、Rは置換基である。炭素-ホウ素結合を有する化合物は、より大きいクラスの有機ボランに属する。ボロン酸はルイス酸として用いられる。
【0038】
スキーム3:4-クロロ-1-(クロロメチル)ベンゼンのFriedel-Crafts反応によるジクロロジフェニルメタンの断続的または連続的な製造(本発明方法)
【化3】
low concentration:低濃度
【0039】
塩化テレフタロイル及びフルオロベンゼンを用いる典型的なFriedel-Craftsの再度合成において、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を原料として用いる(《ゴムとプラスチック資源の利用》(2011)(2),1-4;Hoechstの特許US5300693;BASFの特許DE3531837)。本発明によれば、Friedel-Crafts反応においてクロロベンゼンから(スキーム4を参照)フッ素化ステップを行うことで、得られたジクロロ化合物をジフルオロ化合物に変換する。
【0040】
スキーム4:Friedel-Crafts反応による塩化テレフタロイル及びクロロベンゼンの変換(断続または連続)(本発明方法)
【化4】
【0041】
クロロベンゼンの代わりにフルオロベンゼンを用いる場合、ジフルオロ化合物を直接得ることができるため、別途なフッ素化ステップを必要とせず、Friedel-Craftsステップのみを使用すればよい。
【0042】
本発明の全ての反応は、回分式反応器(オートクレーブ)中で行うことができる。当該回分式反応器(オートクレーブ)は、HDPTFE又はSiC設備を備える。或いは、マイクロリアクター又はプラグフロー式反応器において連続的に行ってもよい。一連のSTR(「撹拌容器」)も可能であるが、プラグフロー及びマイクロリアクターはより有利である。
【0043】
本発明の方法に加えて、4-クロロ安息香酸クロリド、4-クロロベンジルクロリド及び塩化テレフタロイルのFriedel-Crafts反応は、既知の方法により行うことができる。しかし、本発明の方法によれば、余分な分離ステップが回避され、生成物の収率が向上する。
【0044】
スキーム5:本発明に基づくクロロベンゼンのアシル化
【化5】
low concentration:低濃度
【0045】
スキーム6:本発明に基づくフルオロベンゼンのアシル化
【化6】
low concentration:低濃度
【0046】
スキーム7:本発明に基づくクロロベンゼンのアシル化による4,4’-ジフルオロフェニルメタンの製造。
【化7】
low concentration:低濃度
【0047】
他の態様において、本発明は、いわゆるFriedel-Crafts反応によりアシル化又はアルキル化アリール化合物(例えばアシル化又はアルキル化ベンゼン)を製造又は合成する環境に優しい新しい方法、及び当該方法に用いられる新しい触媒を提供する。本発明は、Friedel-Crafts反応の新しい方法、特に特許請求の範囲で限定され、及び本明細書でさらに説明されるような、アシル化又はアルキル化アリール化合物を環境に優しく製造するFriedel-Crafts反応の方法を提供する。他の態様において、本発明は、それぞれ新しいFriedel-Crafts触媒又はFriedel-Crafts反応における触媒の新しい使用を提供する。
【0048】
従って、本発明は、従来技術の決定を克服し、驚くほどシンプルで有益な方法、従来技術に比較してより有効で省エネな方法、Friedel-Crafts反応に用いられるより環境に優しい方法を提供する。
【0049】
Friedel-Crafts反応は、通常Friedel-Crafts反応に用いられる反応器において行うことができるが、フッ化水素(HF)、少なくとも微量(例えばppmの範囲内)のHFに対して耐性を有する反応器が好ましい。Friedel-Crafts反応は、断続的又は連続的に行うことができる。連続的なFriedel-Crafts反応が好ましい。本発明において、Friedel-Crafts反応の一実施形態では、マイクロリアクターを用いることが特に好ましい。
【0050】
触媒
驚いたことには、HFを用いてハロゲン化ベンゼン前駆体からフルオロベンゼンを製造し、ハロゲン化水素を形成する工業的には有益な方法において通常過剰なHFとともに使用されるフッ素化触媒は、Friedel-Crafts触媒とする驚くほどシンプルかつ有益な用途(HFが「低」濃度であるか、又はHFが存在しない場合)を提供することもできる。これによって、本発明の前の従来技術に存在していない方式により、Friedel-Crafts反応により化合物を製造する工業的に重要な原料としてアシル化又はアルキル化化合物を提供することができる。
【0051】
本発明の方法で用いられるハロゲン化触媒、好ましくはフッ素化触媒は、いわゆるルイス酸であってもよいが、これに限定されない。ハロゲン化は、化学反応の1種であり、化合物又は材料に1種又は複数種のハロゲンを添加することに関する。ハロゲン化の経路及び化学量論比は、有機基質の構造特徴及び官能基及び特定のハロゲンに依存する。例えば、金属の無機化合物の合成にもハロゲン化が必要である。フッ素化は、ハロゲン化の1種であり、F(フッ素)は導入化合物又は材料におけるハロゲンである。ハロゲン化及び/又はフッ素化、及びこれらの反応で用いられるハロゲン化触媒及び/又はフッ素化触媒は、当業者によって知られている。例えば、中間体オニウムイオンを活性物質としてオレフィンにハロゲン(例えば、塩素及び/又はフッ素)を付加する。有機化学における「ハロゲンイオン」は、ハロゲン原子を含むいかなるオニウム化合物(イオン)、例えば、本明細書において、正電荷を持つフッ素原子をいう。
【0052】
ハロゲン化触媒及び/又はフッ素化触媒は、当業者によく知られており、本発明において、Sb、As、Bi、Al、Zn、Fe、Mg、Cr、Ru、Sn、Ti、Co、Ni、好ましくはSbに基づくものである。より好ましくはフッ素化触媒、特に、活性物質H2F+SbF6
-を提供するSbフッ素化触媒である。SbHal5がFriedel-Crafts反応の前又は後に過剰なHF中に保持される場合、フッ素化ステップに用いられるが、Friedel-Crafts反応においては、HFは「低」濃度、例えばppm範囲内のみで使用される。
【0053】
本発明によれば、アンチモン(Sb)は最良かつ最も安価な触媒であるが、As及びBiはフッ素化触媒として用いられてもよく、必要に応じて、金属の酸化段階IIIにおいて、特にSbHal5及びSbHal-IIIが混在する場合、又は他の金属化合物、例えば、MHal3化合物(例えばAsHal3及びBiHal3)と混在する場合、Friedel-Crafts反応に用いられてもよい。
【0054】
例えば、本発明の一態様では、フッ素化反応を提供する。フッ素化芳香族系(「フルオロベンゼン」)に用いられるアンチモン(Sb)触媒の使用は新しく有利である。例えば、触媒は、HF中のSbF5であり、SbCl5で作製される。もちろん、新鮮な触媒との反応が始まるときに、触媒アンチモン(Sb)上の1つ又は2つの塩素原子を置換し、一定時間のフッ素化後、全ての塩素原子を置換する。
【0055】
今まで、例えば、フルオロベンゼン及び誘導体は、工業的には、Balz Schiemann又はSandmeyer反応により製造されている。これらの反応は、化学的には非常に優れているが、大量の廃棄物及び非常に有毒な排水をもたらす問題がある。この原因で、多くの化学プラントが倒産した。例えば、中国、さらに世界中の多くの企業は、信頼性が高く環境的に許容されるフルオロベンゼンの供給源を持っていない。ここで、フルオロベンゼンの実施例にて説明される同様又は類似する問題は、通常他のフッ素化芳香族及びヘテロ芳香族化合物(例えば、製薬及び農業化学分野における構造単位)の製造にもある。
【0056】
実施例4、
図1、実施例5及び
図2には、Friedel-Crafts反応の使用に関連する具体的な実施例を示す。これらの実施例において、アルキル化及びアシル化を含み、各実施例は、引用によりその全ての内容及び全ての範囲を本明細書に組み込まれる。
【0057】
図1は、トリフルオロアセチル化によりトリフルオロアセトフェノン及び3-クロロ-トリフルオロアセトフェノンを得る代表的な反応フローチャートを示す。
【0058】
図2は、ヘプタフルオロイソプロピル-3-メチルニトロベンゼンによる代表的な反応フローチャートを示す。
【0059】
本発明に係るハロゲン化触媒を用いる新しいFriedel-Crafts方法は、フッ素化方法に組み合わせることができ、特に、本発明のFriedel-Crafts反応及びフッ素化反応の両者に用いる触媒を変化させる必要がない。例えば、好適な実施形態において、通常ハロゲン化触媒として用いられるアンチモン(Sb)ハロゲン化物を使用することができ、触媒を活性化可能なHFの濃度が「低」い場合、上記のようにFriedel-Crafts触媒として用いる。本発明の代替的なスキームにおいて、Friedel-Crafts反応には、HFが存在しなくてもよい。従って、本発明によれば、新しいFriedel-Crafts反応が提供され、当該反応は環境に優しく、例えば、フッ素化方法に容易に組み合わせることができ、そして、製造方法においてフッ素化方法により触媒することによって、いかなる(少なくともいかなる重要な)廃物である副生成物をもたらすことがなく、例えば、フルオロベンゼン及びその誘導体を製造することができる。例えば、このようなフッ素化方法では、市販レベルの塩化水素(HCl)しか生成されない。
【0060】
しかし、トリフルオロ酢酸をFriedel-Crafts試薬として用いることにより、特に、反応系にはフッ素化に対して不活性な他の化合物のみがある場合、触媒の活性化に用いられるHFの濃度をFriedel-Crafts反応に「低」濃度に保持する必要がなく、より多くの量の(例えば、アンチモン(Sb)のモル比よりも5倍又は10倍多い)HFが許容される。この場合、大量のHFが存在する可能性がある。
【0061】
反応器
さらに、本発明の一態様は、本発明で使用、本明細書で説明されるように、工場エンジニアリングに関する発明を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、当該方法は、マイクロリアクター中で実施される好ましい。
【0062】
本発明の一実施形態において、「マイクロリアクター」、「微細構造反応器」又は「マイクロチャネル反応器」とは、典型的な横寸法が約1mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置であり、一般的なものはマイクロチャネルを使う。通常、本明細書において、用語「マイクロリアクター」、「微細構造反応器」又は「マイクロチャネル反応器」とは、典型的な横寸法が約5mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置を指す。
【0063】
マイクロリアクター及びその中で物理的過程が発生する他の装置(例えばマイクロ熱交換器)について、マイクロプロセス工学分野において研究を行なった。前記マイクロリアクターは、通常連続流通反応器(回分式反応器に対して)をである。マイクロリアクターは、通常の拡大反応器と比較して、エネルギー効率、反応速度及び収率、安全性、信頼性、拡大可能性、その場/オンデマンド生産が大幅に改善され、プロセス制御がより精細になる。
【0064】
「フローケミストリー」においてマイクロリアクターを用いて化学反応を行う。
【0065】
マイクロリアクターを用いるフローケミストリーにおいて、回分式ではなく、連続的なフローで化学反応を行う。回分式生産は、製造において用いられる技術であり、一連のワークステーションで段階的に所望の目的物を生産し、異なるバッチの生成物を得る。回分式生産、バッチ生産(ワンタイム生産)及び大規模生産(フロー生産又は連続生産)は、3つの主な生産方法である。フローケミストリーにおいて、化学反応は、連続的なフローで行われる。この場合、各ポンプにより流体をパイプにポンピングし、各パイプが互いに接続されているため、流体は互いに接触する。これらの流体が反応性であると、反応が起きる。フローケミストリーは、大量の原料を用いて大規模製造を行う成熟した技術である。しかし、「フローケミストリー」という用語は、実験室規模の応用に対して作ったばかりの用語である。
【0066】
連続流通反応器(例えば、マイクロリアクターとして用いられる)は、通常管状であり、非反応性材料で作製される。当該非反応性材料は、従来技術において知られているものであり、試薬及び/又は反応物の特定の目的及び特性に依存する。混合方法は、拡散法であり、例えば、反応器の直径が狭い(例えば、<1mm)場合に拡散法を使用し、例えば、マイクロリアクター及びスタティックミキサーにおいて拡散法を使用する。連続流通反応器は、反応条件(熱伝達、時間及び混合)を良好に制御することができる。反応器内の試薬の滞留時間、即ち、反応が加熱又は冷却される時間は、反応器体積及びそれを通過する流速により計算される(滞留時間=反応器体積/流速)。従って、比較的長い滞留時間を達成するために、試薬をより遅くポンピングする、及び/又は体積がより大きな反応器を使用することができる。これにより、生産性は、数ミリリットル/分間から数リットル/時間に増加することができる。
【0067】
フロー式反応器の例には、回転ディスク反応器(ColinRamshaw)、回転管反応器、マルチセルフロー式反応器、振動流反応器、マイクロリアクター、熱交換反応器、吸引式反応器が含まれる。吸引式反応器において、1つポンプにより1種の試薬をポンピングし、反応物を吸引する。プラグフロー式反応器及び管型流通反応器がさらに含まれる。
【0068】
本発明の一実施形態において、マイクロリアクターを使用することが特に好ましい。
【0069】
Friedel-Crafts反応とフッ素化反応との組み合わせ
過剰な無水HFにおける五フッ化アンチモンは、強求核性フッ化物であるスーパーアシッドH2F+SbF-が生成する。なお,無水HFにおける高度にフッ素化されたSbF5は、溶媒として求核置換反応においてベンゼン、不活性なハロゲン化ベンゼン、特にクロロベンゼン、ブロモベンゼン、及びそれらの誘導体をフッ素化し、非常に不活性な前駆体は原料として用いることができる。当該フッ素化反応は過剰なHFの存在下で行われる。驚いたことに、HFの存在下でフッ素化に用いられる触媒は、HFが不存在、又は「低」濃度で存在する場合においても、Friedel-Crafts触媒として使用することもできる。過フッ素化溶媒のような不活性溶媒において、Sb-五ハロゲン化物は、主にルイス酸として作用し、加水分解のときにフェノール及びビフェニルを提供する。SbHal5がSbHal3に還元されて初めてハロゲン化は可能となるが、触媒されることではない。五フッ化アンチモンとコロロベンゼンとの反応は未知のものであり、当業者は、通常Friedel-Crafts生成物、又は重合、分解により不確定な生成物及びオリゴマーを生成することしか期待しない。Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 2: Physical Organic Chemistry (1997) (11),2301-2306には、クロロベンゼンとジフェニルジスルフィドとの反応が記載されており、当該反応において、SbCl5は、ハロゲン化試薬ではなく、Friedel-Crafts触媒として用いられる。Theoretical and Experimental Chemistry (2011),47 (2),123-128では、SbCl5は、ジクロロベンゼン、クラウンエーテル及び塩素ガスを生産するための塩素化試薬の一部であるが、工業生産に適合しないかもしれない。
【0070】
しかし、フッ素化反応が溶媒である無水HF中、環境温度よりもやや高い温度以上の温度範囲内で行われる場合、求核ハロゲン-フッ素置換は、非常に良い収率及び高い反応速度で進行する。これは、(過剰)HFにおいて五フッ化アンチモンのFriedel-Crafts触媒機能から求核フッ素化機能又はフッ素化剤機能への変化が発生し、つまり、スーパーアシッド性が極めて強い求核フッ素アニオン(F-)の形で、例えばクロロベンゼンに反応配偶体として提供され、好ましくは核フッ素化フルオロベンゼンを生成する。例えば、より活性が高い場合、フッ素化はすでに約40℃から始まる温度で起こり得る。しかし、前記40℃よりもやや高い温度は、HClが形成された直後に気相に入るのにも有利であるため、フッ素化反応が速くなる。酸化段階Vでのアンチモン(Sb)(即ち、Sb-V)は約130℃から始まる温度下でSb-IIIに分解するため、いかなる反応物が存在しない場合において、反応温度の上限は高すぎてはならない。従って、一実施形態において、フッ素化反応の温度範囲は約40℃から130℃である。好ましい実施形態において、フッ素化反応の温度範囲は約40℃から110℃であり、より好ましい範囲は、約50℃から110℃であり、さらに好ましい範囲は約60℃から110℃であり、より好ましい範囲は約70℃から110℃である。最も好ましくは、フッ素化反応の温度範囲は約80℃から110℃である。これは最適な温度範囲である。上記内容は、他のハロゲンなどの化学的不活性化置換基またはシアノ基やニトロ基などの強力な置換基を持つクロロベンゼンを含む、全てのクロロベンゼン及びその誘導体に適用される。同様に、他の核フッ素化芳香族が対応する核塩素化芳香族を出発物質として製造される場合、他の核フッ素化芳香族の製造に適用される。例えば、理論に束縛されることを望まないが、求核反応では、通常は不活性なCNやNO2などの置換基は、電子が置換基に引き付けられるため、求核剤に対する反応性を高め、したがってδ+は他の位置および芳香環で増加する。
【0071】
以下、本発明の一般的な実施形態をより詳細に説明し、当業者の教育的推測に基づいて適切に調査されることで、以下でさらに説明されるより具体的な実施形態から導出可能な本発明の幅を例示する。
【0072】
第1の実施形態において、本発明は、五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)、好ましくは活性化された五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)(任意にフッ化水素(HF)で活性化される)の存在下で行われる、Friedel-Crafts反応による化合物の製造方法に関する。
【0073】
第2の実施形態において、本発明は、Friedel-Crafts反応における五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)、好ましくは活性化された五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)(任意にフッ化水素(HF)で活性化される)の触媒としての使用に関する。
【0074】
第3の実施形態において、本発明は、Friedel-Crafts反応による化合物の製造方法における五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)、好ましくは活性化された五フッ化アンチモン触媒(SbHal5)(任意にフッ化水素(HF)で活性化される)の触媒としての使用に関する。
【0075】
第4の実施形態において、本発明は、前記方法又は使用に関する。ここで、Friedel-Crafts反応とフッ素化反応とを組み合わせ、フッ素化反応は、Friedel-Crafts反応の前又は後に行われる。
【0076】
従って、本発明は、一実施形態においてFriedel-Crafts反応による化合物の製造方法に関する。当該反応は、五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)、好ましくは活性化された五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)(任意にフッ化水素(HF)で活性化される)の存在下で行われ、製造された化合物はフッ素化化合物である。
【0077】
本発明は、一実施形態においてFriedel-Crafts反応により前記化合物、特に1つ又は複数の芳香環を含む化合物を製造する方法に関する。出発原料化合物である芳香環及びFriedel-Crafts試薬は、五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)、好ましくは活性化された五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)(任意にフッ化水素(HF)で活性化される)の存在下で反応され、好ましくは、製造された化合物は、フッ素化化合物である。
【0078】
本発明は、一実施形態において前記化合物の製造方法に関する。出発原料化合物は、式(I)を有する化合物から選択される。
【化8】
式中、原則的には、残基Rnは、フッ素化反応及びFriedel-Crafts反応の反応条件下で「不活性」ないかなる置換基であり、例えば、本発明に使用可能な環系及び不活性複素環を含み、好ましくは、
Rnは、独立して水素(H)、二酸化窒素(NO
2)からなる1つ又は複数の置換基を示し、存在する場合、好ましくは1つのRn基のみが二酸化窒素(NO
2)、ハロゲン(好ましくはフッ素(f)又は塩素(Cl))、置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4アルコキシ基(好ましくはジフルオロアルコキシ基又はトリフルオロアルコキシ基、より好ましくはジフルオロメトキシ又はトリフルオロメトキシ)、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基(ハロゲンは、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)から選択される)、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルコキシ基(ハロゲンは、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)から選択される)であり、
Halは、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)から選択されるハロゲンを示し、好ましくはフッ素(f)又は塩素(Cl)を示し、或いはHalが存在せず、即ち、Halの位置に水素(H)が存在する。
【0079】
一実施形態において、Halが存在せず、即ち、Halの位置に水素(H)が存在し、Rnは置換基R1n及び1つから5つ(好ましくは1つ)の置換基R2nを示し、R1nは水素(H)又は二酸化窒素(NO2)を示し、R2nは水素(H)、フッ素(f)、置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4アルコキシ基(好ましくはジフルオロアルコキシ基又はトリフルオロアルコキシ基、より好ましくはジフルオロメトキシ又はトリフルオロメトキシ)、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基(ハロゲンは、フッ素(f)及び/又は塩素(Cl)、好ましくはフッ素(f))、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルコキシ基(ハロゲンは、フッ素(f)及び/又は塩素(Cl)、好ましくはフッ素(f))を示す。
【0080】
例えば、このような実施形態において、Halが存在せず、即ち、Halの位置に水素(H)があり、Rnは単一の置換基R1n及び単一の置換基R2nを示し、R1nは水素(H)又は二酸化窒素(NO2)を示し、R2nは水素(H)、フッ素(f)或いは置換または非置換のC1-C2アルキル基を示し、好ましくはR2nは水素(H)又はメチル基を示す。代表的な実施例は、ベンゼン及び2-メチル-ニトロベンゼン(m-ニトロトルエン)である。
【0081】
例えば、前記化合物の製造方法において、出発原料化合物は、上記式(I)の化合物から選択される。
式中、Rnは独立して水素(H)、フッ素(f)、塩素(Cl)、置換または非置換のメチル基又はエチル基、好ましくはメチル基から選択される1つ又は複数の置換基を示し、
Halは、フッ素(f)又は塩素(Cl)から選択されるハロゲン、好ましくは塩素(Cl)を示す。
【0082】
例えば、前記化合物の製造方法において、出発原料化合物は、以下の化合物からなる群より選択される。1つのRn(好ましくはパラ位(4-Rn)のRn)はフッ素(f)又は塩素(Cl)であり、他のRnは水素であり、Halはフッ素(f)又は塩素(Cl)である。好ましくは、出発原料化合物は、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(好ましくは1,4-ジクロロベンゼン)、フルオロベンゼン及びジフルオロベンゼン(好ましくは1,4-ジフルオロベンゼン)からなる群より選択される。より好ましくは、出発原料化合物は、クロロベンゼン及びフルオロベンゼンからなる群より選択される。
【0083】
本発明は、一実施形態において上記化合物の製造方法に関する。ここで、Friedel-Crafts試薬は、式(II)、式(III)又は式(IV)を有する化合物からなる群より選択される。
【化9】
式(II)中、R’nは、独立して水素(H)、二酸化窒素(NO
2)から選択される1つ又は複数の置換基を示し、存在する場合、好ましくは1つのR’n基のみは二酸化窒素(NO
2)、ハロゲン(好ましくはフッ素(f)又は塩素(Cl))、置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4アルコキシ基(好ましくはジフルオロアルコキシ基又はトリフルオロアルコキシ基、より好ましくはジフルオロメトキシ又はトリフルオロメトキシ)、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基(ハロゲンは、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択される)、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルコキシ基(ハロゲン(Hal)は、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択される)であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して水素、トリハロメチル(-CHal
3)、ハロカルボニル(-(C=O)Hal)又はハロメチル(-CH
2Hal)を示し、R1及びR2の少なくとも1つは、トリハロメチル(-CHal
3)、ハロカルボニル(-(C=O)Hal)、ハロメチル(-CH
2Hal)、ボロン酸基であり、それぞれのハロゲン(Hal)は、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択され、好ましくは、ハロゲン(Hal)は、フッ素(f)及び塩素(Cl)から選択され、より好ましくは、ハロゲン(Hal)は塩素(Cl)であり、
式(III)中、R3は、独立して置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基を示し、ハロゲンは、フッ素(f)及び/又は塩素から選択され、好ましくは、R3はC1-C4-パーフルオロアルキル基又はC1-C4-クロロフルオロアルキル基であり、
Xは、フッ素(f)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択されるハロゲンであり、好ましくは、ハロゲンはフッ素(f)又は塩素(Cl)から選択され、より好ましくは、ハロゲンは塩素(Cl)であり、或いは、Xは、酸無水物基─O-(C=O)─R’3を示し、R’3は独立してR3について定義された意味を有し、好ましくは、R’3はR3と同じであり、
好ましくは、一実施形態において、R3は、C1-C4-パーフルオロアルキル基又は-C4-クロロフルオロアルキル基であり、Xは、塩素(Cl)であり、例えば、代表的なFriedel-Crafts試薬は、トリフルオロアセチルクロリドであり、或いはR3は、C1-C4-パーフルオロアルキル基又はC1-C4-クロロフルオロアルキル基であり、Xは、酸無水物基─O-(C=O)─R’3であり、代表的なFriedel-Crafts試薬は、トリフルオロ酢酸の無水物、クロロジフルオロ酢酸の無水物、又はジフルオロクロロ酢酸の無水物であり、
式(IV)中、R4は、独立して置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基を示し、ハロゲンは、フッ素(f)及び/又は塩素から選択され、好ましくは、R4はC1-C4-パーフルオロアルキル基又はC1-C4-クロロフルオロアルキル基であり、
Yは、ハロゲンを示し、R4の任意の位置にあってもよく、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択され、好ましくは、ハロゲンは塩素(Cl)であり、
好ましくは、一実施形態において、R4はC1-C4パーフルオロアルキル基であり、Yは塩素(Cl)であり、例えば、代表的なFriedel-Crafts試薬はヘプタフルオロプロピルクロリドである。
【0084】
ボロン酸は、ホウ酸(B(OH)3)に関連する化合物であり、その3つのヒドロキシル基のうちの1つがアルキル基又はアリール基で置換されたものである。ボロン酸の一般構造はR’’-B(OH)2であり、Rは置換基である。炭素-ホウ素結合を有する化合物は、より大きいクラスの有機ボランに属する。ボロン酸はルイス酸として用いられる。
【0085】
原則的には、残基Rnは、フッ素化反応及びFriedel-Crafts反応の反応条件下で「不活性」ないかなる置換基であり、例えば、本発明に使用可能な環系及び不活性複素環を含む。
【0086】
例えば、前記化合物を製造する過程において、Friedel-Crafts試薬は、前記式(II)の化合物から選択される。
式中、R’nは、水素(H)、フッ素(f)、塩素(Cl)、置換または非置換のメチル基又はエチル基、好ましくはメチル基からなる群より選択される1つ又は複数の置換基を示し、
R1及びR2は、それぞれ独立して水素、トリクロロメチル(-CCl3)、塩化カルボニル基(-(C=O)Cl)又はクロロメチル(-CH2Cl)を示し、R1及びR2のうちの少なくとも1つはトリクロロメチル(-CCl3)、塩化カルボニル基(-(C=O)Cl)、クロロメチル(-CH2Cl)又はボロン酸基である。
【0087】
例えば、前記化合物を製造する過程において、Friedel-Crafts試薬は、請求項7に記載の式(II)を有する化合物から選択され、R1及びR2はそれぞれ独立して水素、塩化カルボニル基(-(C=O)Cl)又はクロロメチル(-CH2Cl)を示し、R1及びR2のうちの少なくとも1つは塩化カルボニル基(-(C=O)Cl)、クロロメチル(-CH2Cl)又はボロン酸基である。
【0088】
例えば、前記化合物を製造する過程において、Friedel-Crafts試薬は、クロロ安息香酸クロリド、フルオロベンゾイルクロリド、(4-クロロフェニル)ボロン酸、ベンゼン-ジカルボニルジクロリド及びクロロメチルクロロベンゼンからなる群より選択され、好ましくは4-クロロ安息香酸クロリド、ベンゼン-1,4-ジカルボニルジクロリド又は4-(クロロメチル)-1-クロロベンゼンである。
【0089】
例えば、前記化合物を製造する過程において、Friedel-Crafts試薬は、前記式(II)を有する化合物から選択され、トリハロメチル(-CHal3)又はトリクロロメチル(-CCl3)は、それぞれ前記方法においてテトラハロメタンでその場で製造されるか、又は出発原料化合物の存在下で、前記方法においてテトラクロロメタンでその場で製造される。
【0090】
例えば、前記化合物を製造する過程において、Friedel-Crafts試薬は、テトラハロメタンでその場で製造され、出発原料化合物は、クロロベンゼン及びフルオロベンゼンである。
【0091】
本発明の一実施形態において、前記Friedel-Crafts反応による化合物の製造方法に関する。当該方法において、
(a)反応は五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)、好ましくは活性化された五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)の存在下で行われ、任意にフッ化水素(HF)で活性化され、当該方法は連続的な過程であり、或いは、
(b)2以上のステップを含む場合、以下のステップ(b1)及び(b2)を含み、
ステップ(b1)において、Friedel-Crafts反応の1つのステップとして、出発原料化合物とFriedel-Crafts試薬とを五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)の存在下で反応させ、任意に五ハロゲン化アンチモン触媒は低濃度で存在するフッ化水素(HF)によって活性化され、
ステップ(b2)において、フッ素化反応の1つのステップとして、化合物を五ハロゲン化アンチモン触媒(SbHal5)の存在下で過剰な濃度で存在するフッ化水素(HF)とを反応させ、
前記ステップ(b1)及び(b2)のうちの少なくとも1つは連続的な過程であり、
好ましくは、少なくともステップ(b2)のフッ素化反応は連続的な過程であり、
より好ましくは、前記ステップ(b1)のFriedel-Crafts反応及びステップ(b2)のフッ素化反応は、いずれも連続的な過程である。
【0092】
本発明は、一実施形態において、前記化合物の製造方法に関する。前記ステップ(b1)及び(b2)のうちの少なくとも1つは連続的な過程であり、
好ましくは、少なくともステップ(b2)のフッ素化反応は連続的な過程であり、
より好ましくは、前記ステップ(b1)のFriedel-Crafts反応及びステップ(b2)のフッ素化反応はともに連続的な過程であり、
前記連続的な過程は、横寸法の上限が約5mm以下又は約4mm以下の少なくとも1つの連続流通反応器、好ましくは少なくとも1つのマイクロリアクターにおいて行われ、
最も好ましくは、少なくともステップ(b2)のフッ素化反応ステップは、以下の1つ又は複数の条件下で少なくとも1つのマイクロリアクターにおいて行われる連続的な過程である。
流速:約10ml/h-約400l/h
温度:約30℃-約150℃
圧力:約5bar-約50bar
滞留時間:約1分間-約60分間、好ましくは約1分間-約60分間
【0093】
例えば、前記化合物を製造する過程において、少なくとも1つの前記連続流通反応器、好ましくは少なくとも1つのマイクロリアクターは、独立してSiC-連続流通反応器、好ましくはSiC-マイクロリアクターである。
【0094】
例えば、前記化合物を製造する過程において、前記過程は、前記化合物を製造する過程で得られた目的化合物を精製及び/又は分離し、精製及び/又は分離された化合物を生成するさらなるステップ(b3)に含まれる。
【0095】
例えば、前記方法において、さらなるステップ(b3)では、目的化合物の精製及び/又は分離は、相分離法を含むか又は相分離法から構成され、好ましくはさらなるステップ(b3)における目的化合物の精製及び/又は分離は、蒸留を含まず、精製及び/又は分離された目的化合物を生成する。
【0096】
HFの濃度
Friedel-Crafts反応において、用語「低」は、少なくとも微量HFの濃度をいい、例えば微量のHFは約0.1ppm-約100ppmの範囲内である。例えば、出発原料、反応物又は所望の生成物を溶媒として用いる場合、ppmレベルの微量HFを使用することができる。代替的には、不活性溶媒、例えば、ヘキサフルオロベンゼン又はパーフルオロデカンを溶媒として使用してもよい。いくつかの実施例において、HF濃度は、約ゼロ又はゼロ(HFが存在しない)であってもよい。
【0097】
ベンゼン核のフッ素化について、求核フッ素化H2F+SbF-を形成するために「過剰」なHFが必要である。
【0098】
HFの過剰について、H2F+SbF-の量の分析方法は限定されないが、推定することができ、Sbのモル量よりも約2倍過剰なHFは、比較的低い量であると考えてもよい。これは、この下限で反応混合物において十分なH2F+SbF6
-を形成できるためである。上限は重要ではなく、無限に過剰であっても構わないが、実際の原因から、フッ素化反応に必要なフッ素のモル量に適合するHFの上限が好ましい。従って、フッ素化反応の一実施形態において、Sbのモル量に対してHFの上限は多くとも約40倍過剰であってもよい。フッ素化反応の別の実施形態において、Sbのモル量に対してHFの上限は多くとも約30倍過剰であり、好ましくはHFの上限は多くとも約20倍、より好ましくは約10倍過剰である。
【0099】
従って、Sbのモル量に対して、フッ素化反応において過剰なHF濃度は、HFの約2倍-約40倍過剰である。フッ素化反応の別の実施形態において、フッ素化反応における過剰なHF濃度は、Sbのモル量に対して約2倍-約30倍過剰である。HFは、好ましくは約2倍-約20倍、より好ましくは約2倍-約10倍過剰である。
【0100】
本発明の化合物の製造方法の一実施形態において、少なくとも1つの前記連続流通反応器、好ましくは少なくとも1つのマイクロリアクターは、独立してSiC-連続流通反応器、好ましくはSiC-マイクロリアクターである。
【0101】
本発明の化合物の製造方法の一実施形態において、フッ素化反応では、触媒は、ハロゲン化触媒、好ましくはフッ素化触媒であり、Sb、As、Bi、Al、Zn、Fe、Mg、Cr、Ru、Sn、Ti、Co、Ni、好ましくはSbに基づき、より好ましくはフッ素化触媒であり、フッ素化触媒は、活性物質H2F+SbF6
-を提供するSbフッ素化触媒から選択される。
【0102】
好ましくは、本発明の化合物の製造方法の一実施形態において、フッ素化反応では、ハロゲン化触媒は、五塩化アンチモン及び/又は五フッ化アンチモンであり、好ましくは触媒は五フッ化アンチモン(SbF5)であり、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法における反応ステップの前にオートクレーブ中でSbCl5とHFとの反応により調製され、より好ましくはHFにおけるSbF5からなり、活性物質H2F+SbF6
-を形成する。
【0103】
前記反応は、いずれもマイクロリアクターを使用することができる。いくつかの実施形態において、回分式反応器中で行われ、或いは、プラグフロー又はマイクロリアクター中で連続的に(連続式で)行われる。SbVは、部分的にはSbIIIに還元され得るため、塩素又はフッ素であるハロゲンは、相分離器の下流のいかなるHF/触媒の再循環流にフィードされ得る(WO03/053580)。また、高度にフッ素化されたアンチモン(Sb)触媒と過剰なHFとの混合物は、非常に強い腐食性を有するため、本発明によれば、これらの反応は、SiC反応器またはHDPDFEが塗布された反応器中で行われるか、或いはSiC又はHDPDFEで裏付けられた反応器中で行われることが最も好ましい。一部のAl塗層にも正性抵抗がある。
【0104】
最終生成物が固体である場合、再結晶により精製することが好ましい。生成物が液体又は低融点固体である場合、蒸留により精製し、必要に応じて、いわゆる加熱コンデンサを有する固体蒸留により精製する。
【0105】
反応器の詳細
好ましい実施形態において、本発明に係る使用及び方法では、マイクロリアクターを用いる。しかし、本発明のより一般的な実施形態において、マイクロリアクターを用いる前記好ましい実施形態に加えて、例えば、横寸法の上限が約1cm以上の管型連続流通反応器を用いてもよい。従って、横寸法が約5mm以下又は約4mm以下であるこのような連続流通反応器とは、本発明の好ましい実施形態、例えば、マイクロリアクターを指す。連続的に操作するSTRシリーズは、別の選択肢であるが、マイクロリアクターを使用することがより好ましい。
【0106】
本発明の前記実施形態において、例えば好ましくは、管型連続流通反応器の最小横寸法は約>5mmであってもよいが、通常約1cm以下である。従って、例えば、好ましくは、管型連続流通反応器の横寸法は、約>5mm-約1cmの範囲内、又はこの範囲内の任意の値であってもよい。例えば、例えば好ましくは管状連続流通反応器の横寸法は、約5.1mm、約5.5mm、約6mm、約6.5mm、約7mm、約7.5mm、約8mm、約8.5mm、約9mm、約9.5mm、約10mm、又は前記値の間の任意値であってもよい。
【0107】
本発明の前記実施形態において、好ましくはマイクロリアクターを使用する。マイクロリアクターの最小横寸法は、約0.25mm以上、好ましくは約0.5mm以上であってもよいが、マイクロリアクターの最大横寸法は、約5mm以下である。従って、例えば、マイクロリアクターの横寸法の範囲は、約0.25mm-約5mmであってもよいが、好ましくは約0.5mm-約5mmであり、この範囲内の任意値であってもよい。例えば、マイクロリアクターの横寸法は、約0.25mm、約0.3mm、約0.35mm、約0.4mm、約0.45mm、約5mm、又は前記値の間の任意値であってもよい。
【0108】
上記のように、本発明の実施形態において、横寸法が約1cm以下の管型連続流通反応器を使用することが好ましい。このような連続流通反応器は、例えばプラグフロー式反応器(PFR)である。
【0109】
プラグフロー式反応器(PFR)は、連続管型反応器、CTR又はプラグフロー式反応器とも呼ばれ、是用于在連続的、流動的な円筒状システム中で化学反応を行う反応器である。PFR反応器モデルは、このように設計された化学反応器の挙動を予測するために用いられ、それにより、重要な反応器の変量、例えば、反応器のサイズを推測することができる。
【0110】
PFRを流れる流体は、一連の無限に薄い緊密な「プラグ(plug)」にモデル化されて反応器を流れることができる。前記プラグは、それぞれ均一な組成を有し、反応器において軸方向に沿って移動し、且つ各プラグは、前後のプラグと異なる組成を有する。主要な仮定は、流体がプラグフローにつれてPFRを経過して軸方向(前又は後)ではなく、径方向(即ち、横方向)において完璧に混合することである。
【0111】
従って、本明細書において、本発明で用いられる反応器タイプを定義するための用語、例えば「連続流通反応器」、「プラグフロー式反応器」、「管型反応器」、「連続流通反応器システム」、「プラグフロー式反応器システム」、「管型反応器システム」、「連続流通システム」、「プラグフローシステム」、「管型システム」は、互いに同義であり、交換することができる。
【0112】
反応器又はシステムは、複数のパイプとして配置することができ、(例えば)線状、環形、蛇状、環状、旋回管型又はそれらの組み合わせであってもよい。(例えば)旋回管型である場合、反応器又はシステムは、「旋回管型反応器」又は「旋回管型システム」とも呼ばれる。
【0113】
径方向、即ち横方向において、このような反応器又はシステムは、約1cm以下の内径又は内部断面サイズ(即ち、それぞれ縦寸法又は横寸法)を有する。従って、一実施例において、反応器又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約1cm、好ましくは約0.5mm-約1cm、より好ましくは約1mm-約1cmのであってもよい。
【0114】
さらなる実施例において、反応器又はシステムの横寸法は、約>5mm-約1cm又は約5.1mm-約1cmの範囲内であってもよい。
【0115】
横寸法が約5mm以下又は約4mm以下である場合、反応器は、「マイクロリアクター」と呼ばれる。さらなるマイクロリアクターの実施例において、反応器又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約5mm、好ましくは約0.5mm-約5mm、より好ましくは約1mm-約5mmの範囲であってもよい。或いは、反応器又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約4mm、好ましくは約0.5mm-約4mm、より好ましくは約1mm-約4mmの範囲であってもよい。
【0116】
反応物が固体である場合、不活性溶媒を使用することができる。従って、固体原料を使用する場合、前記固体原料を不活性溶媒に溶解する。適切な溶媒は、例えばアセトニトリル、又は過フッ素化若しくは部分フッ素化アルカン(例えば、ペンタフルオロブタン(365mfc))、線状又は環状の部分フッ素化または過フッ素化エーテル(如CF3-CH2-OCHF2(E245))、又はオクタフルオロテトラヒドロフランである。通常、利用可能な場合、または最初の合成後に、生成物自体も不活性溶媒として機能する。
【0117】
本発明の任意の実施例において、マイクロリアクターではなく、必要に応じて別の連続流通反応器を使用してもよい。(例えば)ハロゲン化又はフッ素化で用いられる触媒(ハロゲン化促進触媒、例えば、ハロゲン化触媒又は好ましくはハロゲン化触媒)組成物が反応過程において粘稠になりやすいか、又は前記触媒その自体が粘稠である場合、マイクロリアクターの代わりに、別の連続流通反応器を使用することが好ましい。この場合には、連続流通反応器は、下部の横寸法が上記マイクロリアクターの横寸法(即ち、約1mm)よりも大きいが、上部の横寸法が約4mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置である。従って、本発明の任意の実施例において連続流通反応器を使用する。用語「連続流通反応器」は、好ましくは、有限な空間中で化学反応を行う装置(典型的には、横寸法が約1mm-約4mmである)を指す。本発明のこのような実施例において、前記横寸法を有するプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器を連続流通反応器として使用することが特に好ましい。また、本発明のこのような実施例において、マイクロリアクターを使用する実施例と比較して、前記横寸法を有する連続流通反応器、好ましくはプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器は、より高い流速を有することが特に好ましい。例えば、このより高い流速は、本明細書に記載のマイクロリアクターの典型的な流速の約2倍以下、約3倍以下、約4倍以下、約5倍以下、約6倍以下、約7倍以下、又は約1倍-約7倍、約1倍-約6倍、約1倍-約5倍、約1倍-約4倍、約1倍-約3倍、約1倍-約2倍のいずれかの流速である。本発明のこの実施例において、好ましい前記連続流通反応器、より好ましいプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器を使用して、本発明書に記載のマイクロリアクターの製造材料を調製する。例えば、このような製造材料は、炭化ケイ素(SiC)及び/又は合金(例えば、本明細書に記載のマイクロリアクターの高耐食性のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金、例えばHastelloy(登録商標))である。
【0118】
本発明では、前記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続流通反応器を使用することにより、分離工程を簡単化することができるとともに、時間やエネルギーが係る(例えば)中間蒸留工程が必要とされない。特に、本発明では、前記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続流通反応器を使用することにより、相分離だけにより分離することができるとともに、未反応成分は、適宜な時又は必要な時に反応過程に再循環されてもよいか、又は生成物として用いられてもよい。
【0119】
本発明の好適な実施例では、本発明に係るマイクロリアクターを用いるが、マイクロリアクターに加えて又はそれの代わりに、それぞれプラグフロー式反応器又は管型流通反応器を使用してもよい。
【0120】
プラグフロー式反応器又は管型流通反応器及びその操作条件は、当業者にはよく知られている。
【0121】
本発明において上部の横寸法が約4mm以下の連続流通反応器、特にマイクロリアクターを使用することが好ましいが、場合によって、収率損失及びより長い滞留時間、より高い温度によりマイクロリアクターの使用が回避されるため、プラグフロー式反応器又は管型流通反応器を使用する。これにより、収率損失の問題が解決され、つまり、詰まり(望ましくない駆動方式による粒子の形成)が抑制される。これは、パイプの直径又はプラグフロー式反応器のチャンネルがマイクロリアクターよりも大きいためである。
【0122】
プラグフロー式反応器又は管型流通反応器を使用する欠点は、主観的な見方もなされることができる。一方、ある場所又は生産施設内のある方法の制限下で、この欠点は適切なものであり、収率損失が重要ではないと認められ、或いは他の利点又は制限に鑑みて許容できる場合がある。
【0123】
以下、マイクロリアクターを使用する実施形態により本発明をより詳しく説明する。本発明で使用されるマイクロリアクターは、好ましくはセラミック連続流通反応器であり、より好ましくはSiC(炭化ケイ素)連続流通反応器であり、トン規模で物質を生産することができる。熱交換器とSiCとを組み合わせて製造することにより、操作されにくいフローケミストリーの応用に対して最適化制御を行うことができる。コンパクトなモジュラー製造及び流れ生産用の反応器は、異なる方法に対して柔軟性を有し、一連の生産体積(5-400l/h)を使用することができ、空間に制限がある場合であっても化学製品の収量を増加させ、比類のない化学的適合性及び熱制御を有する。
【0124】
セラミック(SiC)マイクロリアクターは、(例えば)拡散接合に有利な3MSiC反応器であり、特にろう付け及び金属がなく、FDAに承認された材料又は他の薬物管理機関(例えば、EMA)に承認された材料に優れた熱伝達、質量伝達、優れた化学的適合性を提供する。炭化ケイ素(SiC)は、カーボランダム(carborundum)とも呼ばれ、ケイ素及び炭素を含み、当業者に知られているものである。例えば、合成SiC粉末は、大量に生産され、加工されて多くの用途に用いられている。
【0125】
例えば、本発明の実施例において、本発明の目的は、少なくとも1つの反応ステップがマイクロリアクター中で行われる方法によって目的を実現する。特に、本発明の好適な実施例において、本発明の目的は、少なくとも1つの反応ステップがSiCを含むか又はSiCで作製されたマイクロリアクター(「SiC-マイクロリアクター」)、或いは合金を含むか又は合金で作製されたマイクロリアクター、例えばHastelloy C中で行われる方法によって実現される。詳細は後述する。
【0126】
従って、例えば、本発明の一実施形態において、生産、好ましくは工業生産に適しているマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow Corningが提供したType G1SiC、又はChemtrixが提供したMR555 Plantrix SiC)を含むか、又はSiCで作製された「SiC-マイクロリアクター」であるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。或いは、例えば、本発明の他の実施例において、工業生産に適しているマイクロリアクターは、Ehrfeldが提供したHastelloy Cを含むか、又はそれで作製されたものであるが、これに制限されない。このようなマイクロリアクターは、本発明に係るフッ素化生成物の好適な工業生産に特に適している。
【0127】
生産規模のフロー式反応器に対する機械的要求及び化学的要求を満たすために、3M(商標)SiC(レベルC)でPlantrixモジュールを製造する。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造された反応器は、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。Chemtrix MR555 Plantrixについては、2017年にChemtrix BVによって印刷されたマニュアル「CHEMTRIXのPlantrix(登録商標)MR555シリーズに関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0128】
上記実施例に加えて、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のSiCを使用することができる。
【0129】
従って、本発明において、ChemtrixのProtrixをマイクロリアクターとして使用してもよい。Protrix(登録商標)は、3M(登録商標)炭化ケイ素で製造されたモジュール化の連続流通反応器であり、優れた耐薬品性及び熱伝達を提供する。3M(登録商標)SiC(レベルC)で製造されたProtrix(登録商標)モジュールは、フロー式反応器に対する機械的要求及び化学的要求を満たすことができる。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造された反応器は、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。この製造技術は、完全なSiC反応器(熱膨張係数=4.1x10-6K-l)を得るための製造方法である。
【0130】
0.2-20ml/minの流速及び25 bar以下の圧力に設定することにより、Protrix(登録商標)は、実験室規模の連続フロー方法に適用でき、さらにPlantrix(登録商標)MR555(x340倍率)に移転して物質の生産を行うことができる。Protrix(登録商標)反応器は、独特なフロー式反応器であり、以下の利点を有する。拡散接合による3M(登録商標) SiCモジュールは、統合した熱交換器を有し、比類のない熱制御及び優れた耐薬品性を提供し、標準ヒュームフードにおいてグラムレベルで極端な反応条件下で安全に操作することができ、試薬の添加量、生産力又は反応時間からみて、生産を効率的かつ柔軟に実行することができる。Protrix(登録商標)フロー式反応器の一般的なパラメーターは以下の通りである。可能な反応タイプは、(例えば)A+B→P1+Q(又はC)→Pであり、用語「A」、「B」、「C」は反応物を示し、「P」、「P1」は生成物を示し、「Q」はクエンチャーを示し、生産量(ml/min)は約0.2-約20であり、チャンネルサイズ(mm)は1x1(予熱ゾーン及び混合器ゾーン)、1.4x1.4(停留通道)であり、試薬供給は1-3であり、モジュールサイズ(幅x高さ)(mm)は110x260であり、フレームサイズ(幅x高さx長さ)(mm)は約400x300x250であり、モジュール/フレーム数は1-4である。Chemtrix Protrix(登録商標)反応器の技術情報については、2017年にChemtrix BVによって出版されたマニュアル「CHEMTRIXのProtrix(登録商標)に関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0131】
工業生産、プロセス開発及び小規模生産に適用可能なDow CorningのType G1SiCマイクロリアクターは、以下のサイズにより特徴付けられる。典型的な反応器サイズ(長さx幅x高さ)は88cmx38cmx72cmであり、典型的な流体モジュールサイズは188mmx162 mmである。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの特徴は、優れた混合及び熱交換、特許で保護されているHEART設計、小さい内部容積、長い滞留時間、高柔軟性、多用途、高耐薬品性のため高pH化合物、特にフッ化水素酸が適用すること、混合型ガラス/SiC溶液が製造材料として使用されること、他の先端的なフロー反応器とのシームレスな拡大である。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの典型的な技術パラメーターは以下の通りである。流速は約30ml/min-約200ml/minであり、操作温度は約-60℃-約200℃であり、操作圧力は約18barg(barg:ゲージ圧の単位、即ち、barで環境圧力又は大気圧よりも高い圧力)以下であり、用いられる材料は炭化ケイ素、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)、ペルフルオロエラストマーであり、流体モジュール内の容積は10 mlであり、必要に応じて管理機関、例えばFDA又はEMAにより承認されている。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの反応器は、多用途であり、その配置がカスタマイズすることができる。また、前記反応器上の任意の位置に注入スポットを増設することができる。
【0132】
Hastelloy(登録商標)Cは、式NiCr21Mo14Wで表される合金であり、「合金22」又は「Hastelloy(登録商標)C-22」とも呼ばれてもよい。前記合金は、耐食性が高いニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金であり、酸化性酸、還元性酸及び混合酸に対して優れた耐性を有することが知られている。前記合金は、用于排煙脱硫工場、化学工業、環境保護システム、廃棄物焼却工場、廃水処理工場に用いられている。前記実施例以外、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金を用いてもよい。合金成分の合計を100%とする場合、ニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金の典型的な組成(重量%)は、約51.0%以上、例えば約51.0%-約63.0%のNi(ニッケル)を主成分とし、Cr(クロム)が約20.0-約22.5%、Mo(モリブデン)が約12.5-約14.5%、W(タングステン又はウルフラム)が約2.5~約3.5%、Fe(鉄)が約6.0%以下、例えば約1.0%-約6.0%、好ましくは約1.5%-約6.0%、より好ましくは約2.0%-約6.0%である。或いは、Co(コバルト)は、合金成分の合計100%に対して約2.5%以下、例えば約0.1%-約2.5%の含有量で合金に存在してもよい。また、V(バナジウム)は、合金成分の合計100%に対して約0.35%以下、例えば約0.1%-約0.35%の含有量で合金に存在してもよい。さらに、合金成分の合計100%に対して、少量(即ち0.1%以下)の他の元素は、独立して(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)であり得る。少量(即ち0.1%以下)の他の元素が存在する場合には、前記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立して約0.1%以下、例えば約0.01-約0.1%、好ましくは約0.08%以下、例えば約0.01-約0.08%の含有量で存在してもよい。例えば、前記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立してC≦0.01%、Si≦0.08%、Mn≦0.05%、P≦0.015%、S≦0.02%の含有量で存在してもよい。通常、上記合金組成物には、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Al(アルミ)、Cu(銅)、N(窒素)及びCe(セリウム)のいずれかが微量でも存在しない。
【0133】
Hastelloy(登録商標)C-276合金は、極めて低い炭素含有量及びケイ素含有量により溶接の問題を緩和する鍛造ニッケル-クロム-モリブデン材料であるため、化学方法及び関連工業において広く用いられており、多くの腐食性化学薬品に対する耐性について、50年にわたる追跡記録により実証された。他のニッケル合金と同様に、可塑性を有し、成形及び溶接が容易であり、塩化物を含む溶液中の応力腐食割れ(オーステナイト系ステンレス鋼が受けやすい分解の態様)に対して優れた耐性を有する。そのクロム含有量及びモリブデン含有量が高いため、酸化性酸及び非酸化性酸に耐えることができ、塩化物及び他のハロゲン化物の存在下で孔食及び隙間腐食に対して顕著な耐性を示す。総成分100%に対して、重量%で一般的な組成は、Ni(ニッケル)57%(残部)、Co(コバルト)2.5%以下、Cr(クロム)16%、Mo(モリブデン)16%、Fe(鉄)5%、W(タングステン(tungsten)又はウルフラム(wolfram))4%であり、より少量の他の成分は、Mn(マンガン)1%以下、V(バナジウム)0.35%以下、Si(シリコン)0.08%以下、C(カーボン)0.01以下、Cu(銅)0.5%以下である。
【0134】
本発明の別の実施例において、例えば、前記生産、好ましくは前記工業生産に適したマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow CorningによってType G1SiCとして、又はChemtrixによってMR555 Plantrixとして提供されるSiC)で構成されるか、又は作製されたSiC-マイクロリアクターであるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。
【0135】
本発明によれば、本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において、1つ又は複数のマイクロリアクター、好ましくは1つ又は複数のSiC-マイクロリアクターを使用することができる。本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において1つ以上のマイクロリアクター、好ましくは1つ以上のSiC-マイクロリアクターを使用する場合、これらのマイクロリアクター、好ましくはSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。例えば、2つ、3つ、4つ又はより多くのマイクロリアクター、好ましくは2つ、3つ、4つ又はより多くのSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。
【0136】
反応及び/又は拡大条件を使用可能な実験室研究について、例えば、Chemtrix社の反応器Plantrixはマイクロリアクターとして使用することができるが、これに限定されない。
【0137】
場合によっては、マイクロリアクターのガスケットがHDPTFE以外の材料で作られていると、多少の膨張のために短時間の操作ですぐに漏れみが生じる可能性があるため、HDPTFEガスケットは、マイクロリアクターの長い動作時間を確保し、セトラーや蒸留塔などの他の機器部品を使用する。
【0138】
例えば、工業フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)は、ステンレス鋼フレームに置かれた(非浸入式)SiCモジュール(例えば3M(登録商標) SiC)から構成され、標準Swagelokコネクタを用いて前記フレームによりフィードラインと作動媒体との接続を構築する。作動媒体(熱流体又は熱流)と共に使用するときに、統合熱交換器を用いてモジュール内でプロセス流体を加熱又は冷却し、鋸歯状又は双鋸歯状の中間チャンネルの構造中で反応させる。前記構造は、プラグフローを得るとともに高熱交換能力を有するように設計される。基本IFR(例えばPlantrix(登録商標)MR555)システムは、1つのSiCモジュール(例えば3M(登録商標)SiC)及び1つの混合器(MRX)から構成され、前記混合器はA+B→Pタイプの反応を行うことができる。モジュールの数を増加することで反応時間及び/又はシステム生産性を増加することができる。クエンチャーQ/Cモジュールを増設することにより、反応タイプはA+B→P1+Q(又はC)→Pに拡大され、仕切られることで2つの温度領域が得られる。本明細書において、用語「A」、「B」及び「C」は反応物、「P」及び「P1」は生成物、「Q」はクエンチャーを示す。
【0139】
工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標) MR555)の典型的なサイズは、(例えば)ミリメートルでチャンネルサイズが4x4(「MRX」、混合器)及び5x5(「MRH-I/MRH-II」;MRHは滞留モジュールを示す)であり、モジュールサイズ(幅x高さ)が200mmx555mmであり、フレームサイズ(幅x高さ)が322mmx811mmである。工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の典型的な生産量は、(例えば)約50l/h-約400l/hである。また、用いられる流体の特性及び過程条件に応じて、工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の生産量は、(例えば)>400l/hであってもよい。滞留モジュールは、直列に配置することができる。これにより、必要な反応体積又は生産性が得られる。直列に配置可能なモジュールの数は、流体の特性及び目的流速に依存する。
【0140】
工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrixeMR555)の典型的な操作条件又は過程条件は、(例えば)温度範囲が約-30℃-約200℃、圧力差(作動過程)が<70℃、試薬供給が1-3、最大操作圧力(作動流体)が約200℃の温度で約5bar、最大操作圧力(プロセス流体)が約≦200℃の温度で約25barである。
【0141】
本発明で用いられる反応器の詳細は以下の通りである。
【0142】
本発明の一実施形態において、「マイクロリアクター」、「微細構造反応器」又は「マイクロチャネル反応器」とは、典型的な横寸法が約1mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置であり、一般的なものはマイクロチャネルを使う。通常、本明細書において、用語「マイクロリアクター」、「微細構造反応器」又は「マイクロチャネル反応器」とは、典型的な横寸法が約5mm以下又は約4mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置を指す。
【0143】
マイクロリアクターは、マイクロプロセスの分野において、物理的過程が発生する他の装置(例えばマイクロ熱交換器)と共に研究されている。前記マイクロリアクターは、通常連続流通反応器(回分式反応器に対して)をである。マイクロリアクターは、従来の規模の拡大反応器と比較して、エネルギー効率、反応速度及び収率、安全性、信頼性、拡大可能性、その場/オンデマンド生産が大幅に改善され、プロセス制御がより精細になるなどの利点を有する。
【0144】
マイクロリアクターを用いるフローケミストリーにおいて、回分式ではなく、連続的なフローで化学反応を行う。回分式生産は、製造において用いられる技術であり、一連のワークステーションで段階的に所望の目的物を生産し、異なるバッチの生成物を得る。回分式生産、バッチ生産(ワンタイム生産)及び大規模生産(フロー生産又は連続生産)は、3つの主な生産方法である。フローケミストリーにおいて、化学反応は、連続的なフローで行われる。この場合、各ポンプにより流体をパイプにポンピングし、各パイプが互いに接続されているため、流体は互いに接触する。これらの流体が反応性であると、反応が起きる。フローケミストリーは、大量の原料を用いて大規模製造を行う成熟した技術である。しかし、「フローケミストリー」という用語は、実験室規模の応用に対して作ったばかりの用語である。
【0145】
連続流通反応器(例えば、マイクロリアクターとして用いられる)は、通常管状であり、非反応性材料で作製される。当該非反応性材料は、従来技術において知られているものであり、試薬及び/又は反応物の特定の目的及び特性に依存する。混合方法は、拡散法であり、例えば、反応器の直径が狭い(例えば、<1mm)場合に拡散法を使用し、例えば、マイクロリアクター及びスタティックミキサーにおいて拡散法を使用する。連続流通反応器は、反応条件(熱伝達、時間及び混合)を良好に制御することができる。反応器内の試薬の滞留時間、即ち、反応が加熱又は冷却される時間は、反応器体積及びそれを通過する流速により計算される(滞留時間=反応器体積/流速)。従って、比較的長い滞留時間を達成するために、試薬をより遅くポンピングする、及び/又は体積がより大きな反応器を使用することができる。これにより、生産性は、数ミリリットル/分間から数リットル/時間に増加することができる。
【0146】
フロー式反応器の例には、回転ディスク反応器(ColinRamshaw)、回転管反応器、マルチセルフロー式反応器、振動流反応器、マイクロリアクター、熱交換反応器、吸引式反応器が含まれる。吸引式反応器において、1つポンプにより1種の試薬をポンピングし、反応物を吸引する。プラグフロー式反応器及び管型流通反応器がさらに含まれる。
【0147】
本発明の一実施形態において、マイクロリアクターを使用することが特に好ましい。
【0148】
本発明の任意の実施例において、マイクロリアクターではなく、必要に応じて別の連続流通反応器を使用してもよい。(例えば)ハロゲン化又はフッ素化で用いられる触媒(ハロゲン化促進触媒、例えば、ハロゲン化触媒又は好ましくはハロゲン化触媒)組成物が反応過程において粘稠になりやすいか、又は前記触媒その自体が粘稠である場合、マイクロリアクターの代わりに、別の連続流通反応器を使用することが好ましい。この場合には、連続流通反応器は、下部の横寸法が上記マイクロリアクターの横寸法(即ち、約1mm)よりも大きいが、上部の横寸法が約4mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置である。従って、本発明の任意の実施例において連続流通反応器を使用する。用語「連続流通反応器」は、好ましくは、有限な空間中で化学反応を行う装置(典型的には、横寸法が約1mm-約4mmである)を指す。本発明のこのような実施例において、前記横寸法を有するプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器を連続流通反応器として使用することが特に好ましい。また、本発明のこのような実施例において、マイクロリアクターを使用する実施例と比較して、前記横寸法を有する連続流通反応器、好ましくはプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器は、より高い流速を有することが特に好ましい。例えば、このより高い流速は、本明細書に記載のマイクロリアクターの典型的な流速の約2倍以下、約3倍以下、約4倍以下、約5倍以下、約6倍以下、約7倍以下、又は約1倍-約7倍、約1倍-約6倍、約1倍-約5倍、約1倍-約4倍、約1倍-約3倍、約1倍-約2倍のいずれかの流速である。本発明のこの実施例において、好ましい前記連続流通反応器、より好ましいプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器を使用して、本発明書に記載のマイクロリアクターの製造材料を調製する。例えば、このような製造材料は、炭化ケイ素(SiC)及び/又は合金(例えば、本明細書に記載のマイクロリアクターの高耐食性のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金、例えばHastelloy(登録商標))である。
【0149】
本発明では、前記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続流通反応器を使用することにより、分離工程を簡単化することができるとともに、時間やエネルギーが係る(例えば)中間蒸留工程が必要とされない。特に、本発明では、前記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続流通反応器を使用することにより、相分離だけにより分離することができるとともに、未反応成分は、適宜な時又は必要な時に反応過程に再循環されてもよいか、又は生成物として用いられてもよい。
【0150】
プラグフロー式反応器又は管型流通反応器及びその操作条件は、当業者にはよく知られている。
【0151】
本発明において上部の横寸法がそれぞれ約5mm以下又は約4mm以下の連続流通反応器、特にマイクロリアクターを使用することが好ましいが、場合によって、収率損失及びより長い滞留時間、より高い温度によりマイクロリアクターの使用が回避されるため、プラグフロー式反応器又は管型流通反応器を使用する。これにより、収率損失の問題が解決され、つまり、詰まり(望ましくない駆動方式による粒子の形成)が抑制される。これは、パイプの直径又はプラグフロー式反応器のチャンネルがマイクロリアクターよりも大きいためである。
【0152】
プラグフロー式反応器又は管型流通反応器を使用する欠点は、主観的な見方もなされることができる。一方、ある場所又は生産施設内のある方法の制限下で、この欠点は適切なものであり、収率損失が重要ではないと認められ、或いは他の利点又は制限に鑑みて許容できる場合がある。
【0153】
以下、マイクロリアクターを使用する実施形態により本発明をより詳しく説明する。本発明で使用されるマイクロリアクターは、好ましくはセラミック連続流通反応器であり、より好ましくはSiC(炭化ケイ素)連続流通反応器であり、トン規模で物質を生産することができる。熱交換器とSiCとを組み合わせて製造することにより、操作されにくいフローケミストリーの応用に対して最適化制御を行うことができる。コンパクトなモジュラー製造及び流れ生産用の反応器は、異なる方法に対して柔軟性を有し、一連の生産体積(5-400l/h)を使用することができ、空間に制限がある場合であっても化学製品の収量を増加させ、比類のない化学的適合性及び熱制御を有する。
【0154】
セラミック(SiC)マイクロリアクターは、(例えば)拡散接合に有利な3MSiC反応器であり、特にろう付け及び金属がなく、FDAに承認された材料又は他の薬物管理機関(例えば、EMA)に承認された材料に優れた熱伝達、質量伝達、優れた化学的適合性を提供する。炭化ケイ素(SiC)は、カーボランダム(carborundum)とも呼ばれ、ケイ素及び炭素を含み、当業者に知られているものである。例えば、合成SiC粉末は、大量に生産され、加工されて多くの用途に用いられている。
【0155】
従って、例えば、本発明の一実施形態において、生産、好ましくは工業生産に適しているマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow Corningが提供したType G1SiC、又はChemtrixが提供したMR555 Plantrix SiC)を含むか、又はSiCで作製された「SiC-マイクロリアクター」であるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。或いは、例えば、本発明の他の実施例において、工業生産に適しているマイクロリアクターは、Ehrfeldが提供したHastelloy Cを含むか、又はそれで作製されたものであるが、これに制限されない。
【0156】
生産規模のフロー式反応器に対する機械的要求及び化学的要求を満たすために、3M(商標)SiC(レベルC)でPlantrixモジュールを製造する。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造された反応器は、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。Chemtrix MR555 Plantrixについては、2017年にChemtrix BVによって印刷されたマニュアル「CHEMTRIXのPlantrix(登録商標)MR555シリーズに関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0157】
上記実施例に加えて、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のSiCを使用することができる。
【0158】
従って、本発明において、ChemtrixのProtrixをマイクロリアクターとして使用してもよい。Protrix(登録商標)は、3M(登録商標)炭化ケイ素で製造されたモジュール化の連続流通反応器であり、優れた耐薬品性及び熱伝達を提供する。3M(登録商標)SiC(レベルC)で製造されたProtrix(登録商標)モジュールは、フロー式反応器に対する機械的要求及び化学的要求を満たすことができる。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造された反応器は、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。この製造技術は、完全なSiC反応器(熱膨張係数=4.1x10-6K-l)を得るための製造方法である。
【0159】
0.2-20ml/minの流速及び25 bar以下の圧力に設定することにより、Protrix(登録商標)は、実験室規模の連続フロー方法に適用でき、さらにPlantrix(登録商標)MR555(x340倍率)に移転して物質の生産を行うことができる。Protrix(登録商標)反応器は、独特なフロー式反応器であり、以下の利点を有する。拡散接合による3M(登録商標) SiCモジュールは、統合した熱交換器を有し、比類のない熱制御及び優れた耐薬品性を提供し、標準ヒュームフードにおいてグラムレベルで極端な反応条件下で安全に操作することができ、試薬の添加量、生産力又は反応時間からみて、生産を効率的かつ柔軟に実行することができる。Protrix(登録商標)フロー式反応器の一般的なパラメーターは以下の通りである。可能な反応タイプは、(例えば)A+B→P1+Q(又はC)→Pであり、用語「A」、「B」、「C」は反応物を示し、「P」、「P1」は生成物を示し、「Q」はクエンチャーを示し、生産量(ml/min)は約0.2-約20であり、チャンネルサイズ(mm)は1x1(予熱ゾーン及び混合器ゾーン)、1.4x1.4(停留通道)であり、試薬供給は1-3であり、モジュールサイズ(幅x高さ)(mm)は110x260であり、フレームサイズ(幅x高さx長さ)(mm)は約400x300x250であり、モジュール/フレーム数は1-4である。Chemtrix Protrix(登録商標)反応器の技術情報については、2017年にChemtrix BVによって出版されたマニュアル「CHEMTRIXのProtrix(登録商標)に関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0160】
工業生産、プロセス開発及び小規模生産に適用可能なDow CorningのType G1SiCマイクロリアクターは、以下のサイズにより特徴付けられる。典型的な反応器サイズ(長さx幅x高さ)は88cmx38cmx72cmであり、典型的な流体モジュールサイズは188mmx162 mmである。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの特徴は、優れた混合及び熱交換、特許で保護されているHEART設計、小さい内部容積、長い滞留時間、高柔軟性、多用途、高耐薬品性のため高pH化合物、特にフッ化水素酸が適用すること、混合型ガラス/SiC溶液が製造材料として使用されること、他の先端的なフロー反応器とのシームレスな拡大である。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの典型的な技術パラメーターは以下の通りである。流速は約30ml/min-約200ml/minであり、操作温度は約-60℃-約200℃であり、操作圧力は約18barg(barg:ゲージ圧の単位、即ち、barで環境圧力又は大気圧よりも高い圧力)以下であり、用いられる材料は炭化ケイ素、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)、ペルフルオロエラストマーであり、流体モジュール内の容積は10 mlであり、必要に応じて管理機関、例えばFDA又はEMAにより承認されている。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの反応器は、多用途であり、その配置がカスタマイズすることができる。また、前記反応器上の任意の位置に注入スポットを増設することができる。
【0161】
Hastelloy(登録商標)Cは、式NiCr21Mo14Wで表される合金であり、「合金22」又は「Hastelloy(登録商標)C-22」とも呼ばれてもよい。前記合金は、耐食性が高いニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金であり、酸化性酸、還元性酸及び混合酸に対して優れた耐性を有することが知られている。前記合金は、用于排煙脱硫工場、化学工業、環境保護システム、廃棄物焼却工場、廃水処理工場に用いられている。前記実施例以外、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金を用いてもよい。合金成分の合計を100%とする場合、ニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金の典型的な組成(重量%)は、約51.0%以上、例えば約51.0%-約63.0%のNi(ニッケル)を主成分とし、Cr(クロム)が約20.0-約22.5%、Mo(モリブデン)が約12.5-約14.5%、W(タングステン又はウルフラム)が約2.5~約3.5%、Fe(鉄)が約6.0%以下、例えば約1.0%-約6.0%、好ましくは約1.5%-約6.0%、より好ましくは約2.0%-約6.0%である。或いは、Co(コバルト)は、合金成分の合計100%に対して約2.5%以下、例えば約0.1%-約2.5%の含有量で合金に存在してもよい。また、V(バナジウム)は、合金成分の合計100%に対して約0.35%以下、例えば約0.1%-約0.35%の含有量で合金に存在してもよい。さらに、合金成分の合計100%に対して、少量(即ち0.1%以下)の他の元素は、独立して(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)であり得る。少量(即ち0.1%以下)の他の元素が存在する場合には、前記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立して約0.1%以下、例えば約0.01-約0.1%、好ましくは約0.08%以下、例えば約0.01-約0.08%の含有量で存在してもよい。例えば、前記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立してC≦0.01%、Si≦0.08%、Mn≦0.05%、P≦0.015%、S≦0.02%の含有量で存在してもよい。通常、上記合金組成物には、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Al(アルミ)、Cu(銅)、N(窒素)及びCe(セリウム)のいずれかが微量でも存在しない。
【0162】
Hastelloy(登録商標)C-276合金は、極めて低い炭素含有量及びケイ素含有量により溶接の問題を緩和する鍛造ニッケル-クロム-モリブデン材料であるため、化学方法及び関連工業において広く用いられており、多くの腐食性化学薬品に対する耐性について、50年にわたる追跡記録により実証された。他のニッケル合金と同様に、可塑性を有し、成形及び溶接が容易であり、塩化物を含む溶液中の応力腐食割れ(オーステナイト系ステンレス鋼が受けやすい分解の態様)に対して優れた耐性を有する。そのクロム含有量及びモリブデン含有量が高いため、酸化性酸及び非酸化性酸に耐えることができ、塩化物及び他のハロゲン化物の存在下で孔食及び隙間腐食に対して顕著な耐性を示す。総成分100%に対して、重量%で一般的な組成は、Ni(ニッケル)57%(残部)、Co(コバルト)2.5%以下、Cr(クロム)16%、Mo(モリブデン)16%、Fe(鉄)5%、W(タングステン(tungsten)又はウルフラム(wolfram))4%であり、より少量の他の成分は、Mn(マンガン)1%以下、V(バナジウム)0.35%以下、Si(シリコン)0.08%以下、C(カーボン)0.01以下、Cu(銅)0.5%以下である。
【0163】
本発明の別の実施例において、例えば、前記生産、好ましくは前記工業生産に適したマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow CorningによってType G1SiCとして、又はChemtrixによってMR555 Plantrixとして提供されるSiC)で構成されるか、又は作製されたSiC-マイクロリアクターであるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。
【0164】
本発明によれば、本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において、1つ又は複数のマイクロリアクター、好ましくは1つ又は複数のSiC-マイクロリアクターを使用することができる。本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において1つ以上のマイクロリアクター、好ましくは1つ以上のSiC-マイクロリアクターを使用する場合、これらのマイクロリアクター、好ましくはSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。例えば、2つ、3つ、4つ又はより多くのマイクロリアクター、好ましくは2つ、3つ、4つ又はより多くのSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。
【0165】
反応及び/又は拡大条件を使用可能な実験室研究について、例えば、Chemtrix社の反応器Plantrixはマイクロリアクターとして使用することができるが、これに限定されない。
【0166】
例えば、工業フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)は、ステンレス鋼フレームに置かれた(非浸入式)SiCモジュール(例えば3M(登録商標) SiC)から構成され、標準Swagelokコネクタを用いて前記フレームによりフィードラインと作動媒体との接続を構築する。作動媒体(熱流体又は熱流)と共に使用するときに、統合熱交換器を用いてモジュール内でプロセス流体を加熱又は冷却し、鋸歯状又は双鋸歯状の中間チャンネルの構造中で反応させる。前記構造は、プラグフローを得るとともに高熱交換能力を有するように設計される。基本IFR(例えばPlantrix(登録商標)MR555)システムは、1つのSiCモジュール(例えば3M(登録商標)SiC)及び1つの混合器(MRX)から構成され、前記混合器はA+B→Pタイプの反応を行うことができる。モジュールの数を増加することで反応時間及び/又はシステム生産性を増加することができる。クエンチャーQ/Cモジュールを増設することにより、反応タイプはA+B→P1+Q(又はC)→Pに拡大され、仕切られることで2つの温度領域が得られる。本明細書において、用語「A」、「B」及び「C」は反応物、「P」及び「P1」は生成物、「Q」はクエンチャーを示す。
【0167】
工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標) MR555)の典型的なサイズは、(例えば)ミリメートルでチャンネルサイズが4x4(「MRX」、混合器)及び5x5(「MRH-I/MRH-II」;MRHは滞留モジュールを示す)であり、モジュールサイズ(幅x高さ)が200mmx555mmであり、フレームサイズ(幅x高さ)が322mmx811mmである。工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の典型的な生産量は、(例えば)約50l/h-約400l/hである。また、用いられる流体の特性及び過程条件に応じて、工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の生産量は、(例えば)>400l/hであってもよい。滞留モジュールは、直列に配置することができる。これにより、必要な反応体積又は生産性が得られる。直列に配置可能なモジュールの数は、流体の特性及び目的流速に依存する。
【0168】
工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrixeMR555)の典型的な操作条件又は過程条件は、(例えば)温度範囲が約-30℃-約200℃、圧力差(作動過程)が<70℃、試薬供給が1-3、最大操作圧力(作動流体)が約200℃の温度で約5bar、最大操作圧力(プロセス流体)が約≦200℃の温度で約25barである。
【0169】
以下、実施例にて本発明を説明するが、この実施例は本発明の範囲を制限しない。
【0170】
実施例1
4,4’-ジクロロベンゾフェノンマイクロリアクターにおける合成フロー、反応スキーム及び条件は以下の通りである。
【0171】
4-クロロ安息香酸クロリドとHF+触媒混合物とを予め混合し、好ましくは混合システム(例えば分割と再結合システム)において少なくとも部分的なクロロベンゾイルフルオリド及び対応するSbHal6
-錯体を形成し、これらは、混合物がマイクロリアクター1(構造材料是SiC)に入る前にクロロベンゼンに接触する。
【0172】
反応は、Friedel-Crafts反応により行われる。
【0173】
化学反応(マイクロリアクター)、Friedel-Craftsアシル化
【化10】
low concentration:低濃度
サイズが十分なセトラーを用いる場合、HF-触媒混合物は、主に4,4’-ジクロロベンゾフェノンである有機物質から分離する。次のステップにおいて、HF/触媒混合物は、マイクロリアクター2に入る前にSbに対して過剰なHF(モル比:>10、即ち、HF:Sb=>10:1)を添加することで求核フッ素化剤に変換する必要がある。マイクロリアクターIの後にセトラーがなく、相分離がない場合においても反応を行なってもよいが、マイクロリアクター1の後にこの概念及びセトラーを用いることにより、工業規模のプロセス制御がより容易に制御され得る。
【0174】
必要に応じて、Friedel-Crafts反応の後にフッ素化ステップを行い、4,4’-ジクロロベンゾフェノンを4,4’-ジフルオロベンゾフェノンに変換してもよい。
【0175】
実施例2
本発明のCCl4経路及び反応スキームは以下の通りである。反応条件は実施例1と同様である。
【0176】
CCl
4経路に基づくこの実施例において、CCl
4とのFriedel-Crafts反応は、以下のスキームに示すように、フルオロベンゼンを出発原料として用いる。フルオロベンゼンは、Friedel-Crafts反応の前にクロロベンゼンをフッ素化することで得ることができる。
化学反応(マイクロリアクター)、Friedel-Craftsアシル化
【化11】
low concentration:低濃度
得られた生成物を加水分解することにより4,4’-ジフルオロベンゾフェノン化合物を得ることができる。
【0177】
実施例3
以下、本発明の4-クロロベンジルクロリドの経路及び反応スキームを示す。反応条件は実施例1と同様である。
【0178】
化学反応(マイクロリアクター)、Friedel-Craftsアシル化
【化12】
low concentration:低濃度
得られた生成物をフッ素化処理することにより、ジフルオロジフェニルメタン化合物を形成することができる。
【0179】
実施例4
農業及び制約応用におけるFriedel-Craftsアルキル化及びアシル化
本実施例は、抗HIVエファビレンツ(Sustiva)に関する。
【化13】
例えば、EP582455(1994)及びUS5633405(1997)には、Friedel Craftsにより製造されたトリフルオロアセチル含有中間体を含むエファビレンツ(Sustiva)が開示されている。例えば、中国特許CN104744392(公開日:2015年7月1日)には、重要な前駆体4-クロロ-2-トリフルオロアセチルアニリンがBuLi(ブチルリチウム)及びトリフルオロ酢酸エチルをCF
3-基供与体として用いて高価で挑戦的な深部温度化学によって製造されることが開示されている。NH
2-基は、前もって保護基で覆われていなければならず、保護基は後で除去されなければならない。
【0180】
【化14】
R=保護基
ジクロロベンゼンを出発原料としてトリフルオロアシル化を行い、そしてアジド化学を有するアニリン-NH
2を導入する(Golubev,A.S.ら、Russian Chemical Bulletin,63(10),2264-2270;2014に)。4-クロロアニリンに由来する他の多段階合成経路が開示されている(Zhu Lingjianら、European Journal of Medicinal Chemistry,45(7),2726-2732;2726-2732)。CF
3-基供与体とする高価なCF
3-TMSが開示されている(Allendoerfer,Nadineら、Tetrahedron Letters,53(4),388-391;2012)。しかし、CF
3-TMSは非常に高価であり、且つエファビレンツに必要なより大きな工業規模に適用できない。
【0181】
Sb系はベンゼンに適用する。これは、トリフルオロアセチルが芳香族系を不活性化し、クロロベンゼン誘導体の形成を媒介するためである。当該クロロベンゼン誘導体は、既知の方法(例えばFeCl3+Cl2)によりメタ位に製造される。必要なアニリン誘導体は、例えば、硝化/H2還元により製造され得る。トリフルオロアセチルクロリドは、HCFC-123からTFACへの光酸化の直接的な次の化合物であり、大規模な工業規模で利用可能であるが、CF3-TMSや他のいくつかはそうではない。トリフルオロ酢酸エチルは、工業的に利用可能であり、無水トリフルオロ酢酸もCF3基供与体として使用できるが、高価であり、分子の一部しか使用されないため(原子効率が悪い)、あまり好ましくない。
【0182】
バッチ式の実施例
【化15】
benzene in HF:ベンゼンにおけるHF
N
2で加圧されたステンレス製シリンダーの液相から室温下で21.68g(0.1モル)SbF
5を含む20g(1.0モル)HF溶媒が入った250mlのRothオートクレーブにおける100g(1.28モル)ベンゼンに132.47g(1.0モル)のトリフルオロアセチルクロリド(TFAC)を添加した。混合物を80℃に加熱し、2時間保持し、TFACを加えた後、トリフルオロアセチルクロリドとHFとが反応してトリフルオロアセチルフルオリド及びHClが形成され(TFAC+HF→TFAF+HCl)、遊離HClの形成により圧力が直ちに増加する。水中での加水分解のためにオートクレーブを冷却した。中和、相分離及び減圧蒸留(沸点:53℃、20mbar)によりトリフルオロアセトフェノン(TFAPH)を得た。収率は150g(理論値の86%)であった。
【0183】
連続式の実施例
【化16】
benzene in HF:ベンゼンにおけるHF
図1は、反応フローチャート(マイクロリアクターの反応)を示す。
【0184】
蒸留後に、塩素化反応に必要なFeCl3を精製TFAPHに加えた。最後にステンレスカラムにおいて粗製3-クロロ-トリフルオロアセチルベンゼンを連続的に精製した。
【0185】
実施例5
Friedel-Craftsアルキル化の工業実施例。
【0186】
当分野の状態
トリフルオロトルエンは、通常、対応するCH
3-化合物を塩素化した後、無水HFでフッ素化することにより製造されている。当該反応プロセスは工業的には実用可能であり、収率が高く、HClのみが発生し、HClがさらに精製されて販売され得る。このタイプの反応では、Friedel-Craftsはいかなる利点も提供しないが、例えば、CF
3I又はCF
3Br及びCF
3Clに適用できる。パーフルオロアルキル化ベンゼンの誘導体、例えば、農業化学の活性成分に必要なヘプタフルオロイソプロピルメチルアニリン、例えば、フルベンジアミド(Flubendiamide)(EP0919542(1999))及びピリフルキナゾン(Pyrifluquinazon)(EP1626047(2006))は、状況がかなり異なっている。
【化17】
【0187】
2つの中間体に対しては、ヘプタフルオロイソプロピルメチルアニリンは必須である。US6600074(2002)及びEP1380568(2004)に従って、Na2S2O4及びヨウ化ヘプタフルオロイソプロピルを出発原料としてFriedel-Crafts反により製造される。
【0188】
これは典型的な求電子反応である(メチルアニリンは電子供与/促進換基で置換されているため)。工業規模の欠点は、高価なヨウ化ヘプタフルオロイソプロピルが必要であり、廃棄物からヨウ素をリサイクルする必要があることであるが、可能であれば非常に高価である。ヨウ素それ自体は高価な脱離基であり、有毒なフッ素化化合物とNa塩で汚染された廃棄物の形成は、たとえ記載された収率が非常に良好であっても、上記反応の別の大きな欠点である。
【0189】
現在の先行技術の反応
【化18】
新しい独創的なプロセス
ニトロ基は非常に強力な電子吸引性であるため、ニトロ基置換ベンゼンではFriedel-Crafts反応はまったく不可能であることを指摘する必要があります(上記の例のように、置換基を推進するように電子を過剰に補償する)。
【化19】
【0190】
Sb触媒の使用は、対応するヘプタフルオロイソプロピルクロリド(非常に一般的で安価な脱離基である塩素を含む)の使用を可能にする。最初のステップでは、反応性ヘプタフルオロイソプロピル化/Sb錯体が形成され、電子欠乏ニトロベンゼンと反応して、ヘプタフルオロイソプロピルベンゼン誘導体ヘプタフルオロイソプロピル-3-メチル-4-ニトロベンゼン(HFiPNB)が得られ、副産物としてHClを放出する。ヘプタフルオロイソプロピル-4-ニトロ-3-メチルベンゼン(HFiPNB)が非常に安定するため、NO2-基がアミノ基に継続的に還元されて必要なHFiPMAを形成することは、非常に合理的なステップである。(残念ながら、Friedel-CraftsのSb触媒は原料における保護されていないNH2-基に適用できないが、本発明の考慮すべきプロセスではない)。Friedel-Crafts製品であるHFiPNBは、新たに記述された農業用および園芸用殺虫剤の中間体でもあるが(US 2001/0041814の実施例12)、高価なヨードニトロトルエンで作製されるため、工業的に実現可能ではないかもしれず、すでに述べたようにヨウ素と同じ欠点を有する。
【0191】
手順
実施例5A及び5B:HCFC-217の合成
【化20】
thermal or photochemical:熱または光化学
ヘプタフルオロプロパン(HFC-227)の熱塩素化(実施例1)によりヘプタフルオロイソプロピルクロリド((CF
3)
2CFCl=HCFC-217)を製造した。HFC-227は、大規模な工業製品であり、消火剤として使用されている(Iikubo,Yuichi,Hedrick,Vicki;Brandstadter,Stephen M.;Cohn,Mitchelは、(2004)US20040127757には熱塩素化が開示されているが、精製されていない)。この手順の焦点は、HFC-217の合成ではなく、CFC中間体の貴重な製品へのリサイクルである。この熱手順による比較試験では、分離の収率はわずか54%であった。
【0192】
別の適用手順(実施例2)は、TQ 718 Hgランプを用いてHFC-227を光塩素化する方法である。この方法において、50℃で気相の等モルの(1時間あたり)400g(2.35モル)HFC-227及びCl2はガス流量計(ロタメーター)を通過し、Duran 50ガラスで作製された3Lガス体積を有する光反応器を連続的に通過する。2つの手順(実施例1+2)において、HCFC-217をドライアイス/メタノール冷却トラップに収集し、その後、加圧ステンレスカラムで蒸留することにより精製した。前記光化学過程において、蒸留中にステンレスシリンダーに集められた分離収率は、98%(理論値)であった。
【0193】
実施例5C:バッチ式(独創的)
【化21】
250mlのRothオートクレーブにおいて、圧力シリンダーに、溶媒である1g(0.05モル)HFにおける10.84g(0.05モル)SbF
5を含む67.2g(0.49モル)2-ニトロトルエン、及び100g(0.49モル)HCFC-217を添加した。混合物を80℃に加熱して2時間保持し、加熱のときから、圧力が増加し始めた。2時間後、オートクレーブを冷却し、内容物を水中で加水分解し、有機相を分離し、Na
2SO
4で乾燥して蒸留した。ヘプタフルオロイソプロピル-3-メチル-4-ニトロベンゼンメタノール(HFiPNB)の収率は145g、(理論値の)97%であった。
【0194】
実施例5D:バッチ式(非独創的)
US2001/0041814の実施例12-2の処方を用いた。
【0195】
氷冷下で11.4g(0.0374モル)2-メチル-4-(ヘプタフルオロプロピル-2-イル)-ニトロベンゼンを60mlのエタノールに溶解した溶液、及び29.5gのSnCl2・2H2Oを40ml塩酸に溶解した溶液を滴下した。30分間冷却した。滴下終了後、室温で2時間反応させた。反応終了後、反応溶液を200mlの氷水に入れ、氷冷下で40%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した。そして、均一な溶液を得るまで40%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、100mlのエチルエーテルで所望な化合物を抽出した。抽出液を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮し、真空蒸留により精製し、9.8g(理論値の84%)の目的化合物を得た。
【0196】
実施例5E:バッチ式(独創的)
Organic Syntheses(Collective Volume, 5, p. 346. Fox,B. A.;Threlfall,T. L.(1973))に記載の2,3-イミノピリジンに用いられる手順に従って、Fe/HClで還元した。
【化22】
【0197】
還流コンデンサーを備えた100mlフラスコに15.26g(0.05モル)のHFiPNB、30gの還元鉄、40mlの95%エタノール、10ml水及び0.5ml濃塩酸を入れた。混合物をスチームバスで1時間加熱した後、濾過して鉄を除去し、10mlの一部が熱い95%エタノールで3回洗浄した。濾液及び洗浄液を完全に蒸発させ、暗色残留物を50ml水中で再結晶し、1g活性炭を加え、熱いうちに混合物を濾過した。損失を防ぐために、熱エタノールで炭素を洗浄した。減圧蒸留(沸点:118℃、20mbar)した後、HFiPMAを得た。収率は94%(13.8g)であった。
【0198】
実施例5F:1つのマイクロリアクター及び2つの半回分式反応器における連続式手順(独創的)
図2は、ヘプタフルオロ-3-メチルニトロベンゼンの製造のための反応手順を示す。
【0199】
備考
Fe粒子によるマイクロリアクターチャネルのブロックの可能性があるため、還元ステップは、半回分式に保持されたが、原則的には、2つの半回分式反応器の代わりにマイクロリアクターを使用してもよい。
【0200】
連続/半回分式製造において、60℃下で原料をSiCで作製された第1の27mlChemtrixマイクロリアクターにフィードした。1時間あたり、マイクロリアクター1に12.06g(0.6モル)のHF(溶媒)に溶解した500g(3.6モル)の2-メチルニトロベンゼン、260g(1.2モル)のSbF5、及び736.1g(3.6モル)のHCFC-217を加えた。HClをサイクロンセパレータから脱出させた。本発明のHF及びSbF5は、セトラーにおいて第2相に分離した。HFiPNB相を連続精密蒸留し、沸点135℃、20mbar下で分離した。実施例5Eに記載されたように、エタノールに溶解したFe/HClを用いることにより、非常に経済的な手順でHFiPMAに変換した。HFiPMAの2つのステップの収率は94%であった。