(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】X線管のコンディショニングのための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H05G 1/26 20060101AFI20220511BHJP
H05G 1/02 20060101ALI20220511BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H05G1/26 G
H05G1/02 P
A61B6/03 330A
A61B6/03 320F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020136284
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2020-12-22
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-バプティスト・ティボルト
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・シェイ
(72)【発明者】
【氏名】グレイ・ストロング
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-175894(JP,A)
【文献】特開平10-234722(JP,A)
【文献】特開2002-034965(JP,A)
【文献】特開2017-064392(JP,A)
【文献】特開2014-236848(JP,A)
【文献】特開平06-318500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0063530(US,A1)
【文献】特表2010-524619(JP,A)
【文献】特開2006-014781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00 - 1/70
A61B 6/00 - 6/14
G21K 1/00 - 7/00
H01J 35/00 -35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像システム(100)のための方法であって、
診断スキャンに先立ち、放射源(104)のX線管
にX線を発生させて前記X線管をコンディショニングする
ステップであって、
前記X線管が、前記X線管の初期温度
と、前記診断スキャンのための前記X線管の所望の温度
と、前記X線管の熱モデルを用いて前記コンディショニングの終了と診断スキャンの開始との間の時間枠における温度の低下を予測したときの予測結果と、に基づいて調整される
、ステップ
を含む方法。
【請求項2】
閉ループ制御システムによって、前記X線管の前記初期温度および終了基準に基づいて、前記X線管の前記コンディショニング時に前記X線管へともたらされるべきエネルギの量を推定するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記X線管の前記初期温度は、熱モデルによって推定され、前記初期温度は、周囲温度、最後のしきい値期間において前記X線管で発生させたX線の電力、および前記X線管の熱特性のうちの1つ以上に基づいてモデル化される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記終了基準は、前記診断スキャンの開始時のX線管の前記所望の温度、および前記X線管の前記コンディショニングの終了と前記診断スキャンの前記開始との間の時間を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記診断スキャンの前記開始時の前記X線
管の前記所望の温度は、前記X線管の前記コンディショニングの前記終了における前記X線管の最終温度、前記X線管の前記熱特性、および前記X線管の前記コンディショニングの前記終了と前記診断スキャンの前記開始との間の時間の関数である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記発生させるX線の調整は、前記X線管の前記コンディショニングの際に、前記推定されたエネルギの量に基づいて前記X線管へともたらされる電力を調整することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
もたらされるべき
前記電力を、前記X線管の前記コンディショニングの際に、単一のX線
放射または一連の連続的なX線
放射においてもたらすことができる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記X線の前記発生時に、X線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)の経路に遮断プレート(704)を配置して前記X線がコリメータ(412)から出ないように阻止するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記遮断プレート(704)は、前記コリメータ(412)の出力ポート(418、812)を覆って配置され、前記コリメータの開口(414、424、444、464、484、816、826)および前記出力ポート(418、812)を完全に遮り、前記開口(414、424、444、464、484、816、826)は、第1のコリメータブレード(408、802)と第2のコリメータブレード(410、804)との間のギャップによって形成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記遮断プレート(704)は、前記第1のコリメータブレード(408、802)および前記第2のコリメータブレード(410、804)のうちの一方の下面に結合させられ、前記下面は、前記コリメータ(412)の前記出力ポート(418、812)に近い、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
ギャップによって隔てられた第1のコリメータブレード(408、802)および第2のコリメータブレード(410、804)を含んでいるX線コリメータであって、前記ギャップ
はコリメータ(412)の開口(414、424、444、464、484、816、826)を形成しているX線コリメータ(412)と、
前記第1のコリメータブレード(408、802)に結合させられ、X線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)の経路に配置され、診断スキャンに先立つX線管のコンディショニングのためのX線の発生時に前記X線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)を前記コリメータ(412)から出ないように遮る遮断プレート(704)
であって、前記第1のコリメータブレード(408、802)の下部に結合させられ、前記第1のコリメータブレード(408、802)の前記下部の第1のエッジを過ぎて延びており、前記第1のエッジは、前記第2のコリメータブレード(410、804)から遠い遮断プレートと、
を備える撮像システム(100)。
【請求項12】
前記X線管の前記コンディショニングは、前記診断スキャンの直前に前記X線管の温度をより高い温度へと上昇させることを含み、前記より高い温度は、X線ターゲットの延性状態に対応する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記遮断プレート(704)は、前記第1のコリメータブレード(408、802)の前記下部に面同士で接触している、請求項
11に記載のシステム。
【請求項14】
撮像システム(100)のための方法であって、
診断スキャンの開始に先立って、
X線管においてX線を発生させることによって前記X線管をウォームアップするステップと、
前記X線管の温度の閉ループ制御によって前記発生させるX線の電力を調整するステップと、
前記X線管の前記ウォームアップ時に、遮断プレート(704)をX線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)の経路に配置することによって前記X線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)をコリメータ(412)から出ないように遮るステップで
あって、前記遮断プレートが、前記第1のコリメータブレード(408、802)の下部に結合させられ、前記第1のコリメータブレード(408、802)の前記下部の第1のエッジを過ぎて延びており、前記第1のエッジは、前記第2のコリメータブレード(410、804)から遠い、ステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題の実施形態は、診断用の医療撮像に関し、より具体的には、コンピュータ断層撮影画像化方法のためのX線管のコンディショニングに関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲での撮像の様態は、放射線の形態のエネルギを撮像対象へと伝えることができる。次いで、伝えられたエネルギに基づいて、撮像対象の内部の構造または機能に関する情報を表す画像を生成することができる。コンピュータ断層撮影(CT)画像化においては、放射線が、放射源から撮像対象を通過して検出器へと伝わる。CTシステムを動かすX線管は、高エネルギの電子ビームを回転ターゲットへと加速および集束させることにより、X線を生成する。個々の電子がターゲットに衝突すると、ターゲットの原子との相互作用によって放出されるエネルギが、X線光子を多色のスペクトルのもとで等方的に発生させ、X線光子の最大エネルギは、入射電子の最大エネルギに一致する。X線光子は、X線ビームを定めるウィンドウを通って管から出る。スキャンの際に、X線源から放出され、撮像対象によって減衰させられたX線は、検出器によって収集または検出され、診断画像の再構成に使用される。
【0003】
撮像対象の診断スキャンのためのX線曝露に先立って、X線管の温度を、所望のより高い温度範囲へと高めることができる。所望の温度範囲において、ターゲット材料は延性を有することができ、したがって材料がより丈夫になり、すべてのビームエネルギがもたらされるターゲット材料上の焦点に関して、ターゲット材料の融点まで衝撃に耐えることができる。所望の温度範囲において、X線管について、ターゲット材料を劣化させることなく、より高い電力を使用することができる。より高い電力を使用することで、画質の向上ももたらすことができる。所望の温度範囲を下回ると、ターゲット材料が脆くなる可能性があり、したがって高エネルギの電子ビームがターゲットに衝突すると、ターゲットの劣化を生じさせるような疲労破壊につながる可能性がある。所望の温度範囲を超えると、ターゲット材料は、さらなるエネルギを受け取ったときに溶融する可能性があり、結果として、焦点の崩壊においてターゲットトラックがエッチングされる可能性がある。
【0004】
診断スキャンに先立ち、管のウォームアップなどの管のコンディショニング手順を実行して、ターゲットの温度を所望の動作温度範囲へと高めることができる。管のウォームアップの効果的なやり方は、スキャンに先立ってX線を発生させることである。管のウォームアップ手順は、脆性モードを超えてターゲットを延性モードへと徐々にウォームアップするために、時間をかけてX線管へとエネルギを届ける所定の一連の低電力かつ長時間の曝露を含むことができる。ターゲット材料を劣化させることなく、診断画像の一貫した画像品質によって信頼できる診断結果を保証する信頼できかつ高速な管のウォームアップ方法について、ニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
一実施形態においては、撮像システムのための方法が、診断スキャンに先立ち、放射源のX線管をコンディショニングするために、X線管の初期温度および診断スキャンのためのX線管の所望の温度に基づいて調整されるX線を、X線管において発生させるステップを含む。
【0007】
以上の簡単な説明が、詳細な説明においてさらに説明される概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供されていることを理解されたい。特許請求される主題の重要または本質的な特徴を特定することは意図されておらず、特許請求される主題の範囲は、詳細な説明に続く特許請求の範囲によって一義的に定義される。さらに、特許請求される主題は、上述され、あるいは本開示のいずれかの部分において述べられる欠点を解決する実施態様に限定されない。
【0008】
本発明を、実施形態(ただし、これらに限られるわけではない)についての以下の説明を添付の図面を参照しつつ検討することで、よりよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による撮像システムの絵図を示している。
【
図2】本発明の一実施形態による典型的な撮像システムの概略のブロック図を示している。
【
図3】キャリッジと、線質硬化フィルタと、複数のボウタイフィルタとを含む典型的な統合型フィルタアセンブリの不等角投影図を示している。
【
図4A】第1のサイズのX線ビームのためのコリメーション装置を示している。
【
図4B】第2のサイズのX線ビームのための
図4Aのコリメーション装置を示している。
【
図4C】第3のサイズのX線ビームのための
図4Aのコリメーション装置を示している。
【
図4D】第4のサイズのX線ビームのための
図4Aのコリメーション装置を示している。
【
図4E】第5のサイズのX線ビームのための
図4Aのコリメーション装置を示している。
【
図5A】3つのボウタイフィルタと線質硬化フィルタとを有するフィルタアセンブリの第1の位置を示している。
【
図5B】
図5Aのフィルタアセンブリの第2の位置を示している。
【
図5C】
図5Aのフィルタアセンブリの第3の位置を示している。
【
図5D】
図5Aのフィルタアセンブリの第4の位置を示している。
【
図6】統合型フィルタアセンブリに含まれる複数のフィルタを使用して撮像を行うための典型的な方法のフローチャートを示している。
【
図7】遮断プレートを含むコリメータブレードを示している。
【
図8A】遮断プレートを含むX線ビーム用のコリメーション装置の第1の位置を示している。
【
図8B】遮断プレートを含むX線ビーム用のコリメーション装置の第2の位置を示している。
【
図9】診断スキャンに先立つX線管のコンディショニングのための典型的な方法のフローチャートを示している。
【
図10】スキャン前のX線管の温度の典型的な開ループ制御を説明するブロック図を示している。
【
図11】診断スキャンの前にスカウトスキャンを使用してX線管をコンディショニングするための典型的な方法のフローチャートを示している。
【
図12】スカウトスキャンプロトコルのガイドされた選択を説明するブロック図を示している。
【
図13】スカウトスキャンおよび診断スキャンの最中のX線管の温度の変動の典型的なプロットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明は、対象のX線撮像のさまざまな実施形態に関する。とくには、線質硬化フィルタおよびボウタイフィルタを1つ以上使用するCT撮像のためのシステムおよび方法が提供される。
図1および
図2は、1つ以上のフィルタが放射源と撮像対象との間に配置される撮像システムの典型的な実施形態を示している。撮像される撮像対象の解剖学的構造に基づいて、異なるフィルタを選択することができる。
図3は、対象に到達するビームの空間的な分布および状態を調整するように配置されてよいキャリッジ、線質硬化フィルタ、および複数のボウタイフィルタを含む統合型フィルタアセンブリの例を示している。一例として、単一のキャリッジにおいて、2つのボウタイフィルタを、互いに隣り合わせて配置することができ、さらに線質硬化フィルタも、2つのボウタイフィルタの間で、同じキャリッジに組み合わせることができる。単一のボウタイフィルタ、または線質硬化フィルタとボウタイフィルタとの組み合わせを、キャリッジをビームに垂直な軸に沿って移動させることによって、ビームの経路に配置することができる。
図5A~
図5Dは、3つのボウタイフィルタと線質硬化フィルタとを有する典型的なフィルタアセンブリのさまざまな位置を示している。1つ以上のフィルタを通過して対象に到達するX線ビームのサイズを、
図4A~
図4Eに示されるように、選択された開口サイズに基づいて平行化することができる。診断スキャンに先立つX線管のコンディショニングの際に、
図7ならびに
図8Aおよび
図8Bに示されるような遮断プレートを使用して、X線ビームをコリメータを通過して撮像対象に到達することがないように遮断することができる。
図6は、統合型フィルタアセンブリに含まれる1つ以上のフィルタを使用して対象の撮像を行うための典型的な方法を示している。X線管のコンディショニングのための典型的な方法が、
図8および
図11に示されている。X線管のコンディショニング手法の一部としてのX線ターゲットの温度の閉ループ制御の例が、
図10に示されている。アルゴリズムを用いたスカウトスキャンプロトコルのガイド付き選択を説明するブロック図が、
図12に示されている。スカウトスキャンおよび診断スキャンの最中のX線管温度の変動の典型的なプロットが、
図13に示されている。
【0011】
CTシステムが例として説明されるが、本技法が、トモシンセシスおよびCアーム血管造影法などのような他の撮像の様態を使用して取得される画像に適用されるときにも有用であり得ることを、理解されたい。CTという撮像の様態についての本説明は、1つの適切な撮像の態様の一例として提示されているにすぎない。
【0012】
さまざまな実施形態を、異なる種類の撮像システムに関連して実施することができる。例えば、さまざまな実施形態を、放射源がデカルト座標系のx-y平面内に位置するように平行化され、一般的に「撮像面」と呼ばれる扇形または円錐形のビームを投射するCT撮像システムに関連して、実施することができる。X線ビームは、患者などの撮像対象を通過する。ビームは、撮像対象によって減衰させられた後に、放射検出器のアレイに衝突する。検出器アレイにおいて受光される減衰後の放射線ビームの強度は、撮像対象によるX線ビームの減衰に依存する。アレイの各々の検出器素子が、その検出器の場所におけるビーム強度の測定値である別々の電気信号を作り出す。すべての検出器からの強度測定値が別々に取得され、透過プロファイルが作成される。
【0013】
第3世代のCTシステムにおいては、放射源および検出器アレイが、X線ビームが角度を絶えず変化させつつ撮像対象と交差するように、撮像平面内で撮像される物体(対象の一領域など)の周囲をガントリと共に回転する。完全なガントリの回転は、ガントリが完全な360度の1回転を終えるときに生じる。或る1つのガントリ角度における検出器アレイからの一群のX線減衰測定値(例えば、投射データ)が、「ビュー」と呼ばれる。したがって、ビューは、ガントリの各々の刻み位置である。物体の「スキャン」は、X線源および検出器の1回転の間に異なるガントリ角度またはビュー角度で行われた一組のビューを含む。
【0014】
軸方向の診断スキャンにおいて、投射データが処理され、撮像対象を通って得られた2次元スライスに対応する画像が構築される。スカウトスキャン(本明細書においては、ローカライザスキャンとも呼ばれる)が、撮像対象の長手軸に沿った投影ビューをもたらし、一般に、それぞれが対象の内部構造を含む集合体を提供する。一組の投射データから画像を再構成するための1つの方法は、当技術分野において、フィルタ補正逆投影法と呼ばれる。このプロセスは、スキャンからの減衰測定値を、ディスプレイ上の対応するピクセルの輝度を制御するために使用される「CT値」または「ハウンズフィールド単位」(HU)と呼ばれる整数に変換する。
【0015】
サイズ、形状、およびエネルギなどのビーム特性は、スカウトスキャン(本明細書においては、ローカライザスキャンとも呼ばれる)と診断スキャンとで異なる。特定のスカウトスキャンおよび診断スキャンにおいて、より高出力のX線源を使用することが望まれる。より高い出力は、診断スキャンの品質を向上させ、ターゲットを含むX線管の熱安定性を向上させる。しかしながら、X線の出力を大きくすると、患者のX線放射の被ばくが増加する可能性がある。ビームを減衰させ、患者の身体へと進入する前にX線ビームのエネルギを減少させるために、線質硬化フィルタをビームの経路に使用することができる。より小さなビーム(より小さいビームカバレッジ)においては、線質硬化フィルタをボウタイフィルタと一緒に使用することがとくに望ましいかもしれず、一方で、より大きなビームカバレッジでのスキャンは、ボウタイフィルタのみを使用することができる。線質硬化フィルタおよびボウタイフィルタは、所望に応じてビームへと出し入れすることができる別々のキャリッジに取り付けることができる。しかしながら、複数のキャリッジを追加すると、装置にコストおよび複雑さが追加される。また、スキャンの各部分の間でキャリッジをビームへと出し入れする必要があるため、スキャンの完了までの時間が長くなる可能性がある。したがって、本明細書に開示される実施形態によれば、キャリッジと、線質硬化フィルタと、複数のボウタイフィルタとを含む単一の統合型フィルタアセンブリを取り入れることができる。スキャン設定に基づいて、キャリッジからの1つ以上のフィルタをビームの経路に配置することができる。複数のボウタイフィルタおよび線質硬化フィルタを単一の統合型フィルタアセンブリに取り入れることにより、機構の信頼性を高めつつ、機構のコストおよび複雑さを低減することができる。
【0016】
図1が、迅速かつ反復的な画像の再構成を可能にするように構成された典型的なCTシステム100を示している。とくには、CTシステム100は、患者、無生物の物体、1つ以上の製造部品、ならびに/あるいは可動テーブル228上に配置された身体の内部に存在する歯科用インプラント、ステント、および/もしくは造影剤などの異物など、対象112を撮像するように構成される。一実施形態において、CTシステム100は、ガントリ102を含み、ガントリ102は、対象112の撮像に使用するためのX線放射106のビームを投射するように構成された少なくとも1つのX線放射源104をさらに含むことができる。X線放射源104は、X線管およびターゲットを含む。X線管は、高エネルギの電子ビームを回転ターゲットへと加速および集束させることにより、X線を発生させる。個々の電子がターゲットに衝突すると、ターゲットの原子との相互作用によって放出されるエネルギが、X線光子を多色のスペクトルのもとで等方的に発生させ、X線光子の最大エネルギは、入射電子の最大エネルギに一致する。X線光子は、X線ビームを定めるウィンドウを通って管から出る。次いで、ビームを、コリメータブレードおよびフィルタを使用して平行化および調整することができる。
【0017】
具体的には、放射源104は、ガントリ102の反対側に位置する検出器アレイ108に向けてX線106を投射するように構成される。
図1には放射源104が1つだけ示されているが、特定の実施形態においては、異なるエネルギレベルで対象112に対応する投影データを取得するために、複数の放射源を用いて複数のX線106を投射することができる。放射源は、グラファイトおよび金属で製造されたX線ターゲットを含むことができる。
【0018】
特定の実施形態において、CTシステム100は、逐次近似または分析的画像再構成方法を使用して、対象112のターゲットボリュームの画像を再構成するように構成された画像処理ユニット110をさらに含む。例えば、画像処理ユニット110は、対象112のターゲットボリュームの画像を再構築するために、フィルタ補正逆投影(FBP)などの分析的な画像再構成の手法を使用することができる。別の例として、画像処理ユニット110は、対象112のターゲットボリュームの画像を再構成するために、高度統計的逐次近似再構成(ASIR)、共役勾配(CG)、最尤期待値最大化(MLEM)、モデルベース逐次近似再構成(MBIR)、などの逐次近似画像再構成手法を使用することができる。
【0019】
図2が、
図1のCTシステム100と同様の典型的な撮像システム200を示している。本開示の態様によれば、システム200は、ユーザ入力に応答して自動露光制御を実行するように構成される。一実施形態において、システム200は、検出器アレイ108(
図1を参照)を含む。検出器アレイ108は、対応する投影データを取得するために患者などの対象204を通過するX線ビーム106(
図1を参照)を協働して検知する複数の検出器素子202をさらに含む。したがって、一実施形態において、検出器アレイ108は、セルまたは検出器素子202の複数の行を含むマルチスライス構成で製作される。そのような構成においては、検出器素子202の1つ以上の追加の行が、投影データを取得するための並列構成に配置される。
【0020】
フィルタキャリッジ240を、ガントリ102内で放射源104と対象204との間に取り付けることができる。キャリッジ240を、z方向にビームへと出し入れできる一方で、ビームは、実質的にy方向にある。2つの異なるボウタイフィルタ、すなわち第1のボウタイフィルタ241および第2のボウタイフィルタ242が、一例として
図2に示されている。第1のボウタイフィルタ241は、キャリッジのキャビティに形成された第1のスロットに収容され、第2のボウタイフィルタ242は、キャリッジのキャビティに形成された第2のスロットに収容され、第1のスロットは、タブを介して第2のスロットから離されている。ここでは、ボウタイフィルタは、例として長方形で示されている。すべてのボウタイフィルタは、剛直であり、変形不可能である。あるいは、ボウタイフィルタは、さまざまな種類の解剖学的構造を撮像するための適切なX線特殊スペクトルを提供するために、異なる形状および材料構成を有してもよい。線質硬化フィルタ243は、2つのボウタイフィルタ241および242の間でキャリッジ240に結合させて示されている。線質硬化フィルタ243は、第1のボウタイフィルタ241および第2のボウタイフィルタ242の各々に少なくとも部分的に重なることができる。一例において、線質硬化フィルタは、第1のボウタイフィルタ241および第2のボウタイフィルタ242の各々に部分的にのみ重なる。別の例において、線質硬化フィルタ243は、第1のボウタイフィルタ241および第2のボウタイフィルタ242のうちの1つに完全に重なることができる。線質硬化フィルタ243は、長方形の支持構造の各々と、支持構造の下方に積み重ねられた1つ以上の長方形の金属シートとを含む。長方形の支持構造をアルミニウムで製作することができ、1つ以上の長方形の金属シートを銅で製作することができ、1つ以上の長方形の金属シートの各々は、異なる厚さを有することができる。複数のフィルタを含むキャリッジの例が、
図3に示される。
【0021】
この例において、X線ビーム106は、線質硬化フィルタ243および第2のボウタイフィルタ242を通過する。しかしながら、キャリッジ240を、ビームが線質硬化フィルタを通過せずに(第1または第2の)ボウタイフィルタを通過できるような位置に移動させることができる。一例として、キャリッジ240が左側へとさらに移動すると、ビームは第2のボウタイフィルタ242のみを通過することができる。このようにして、ビームをボウタイフィルタならびに線質硬化フィルタおよびボウタイフィルタの各々に通すことが可能である。
【0022】
ボウタイフィルタは、(患者などの)撮像対象の横断面における放射ビームの空間分布を変化させることができる。例えば、分布を変化させた放射ビームは、対象の中心においてより高いエネルギを有し、対象の周辺においてより低いエネルギを有することができる。ボウタイフィルタの各々を、頭部、胸部、および腹部など、人体の特定の解剖学的構造または部分を撮像するように設計することができる。撮像時に、ボウタイフィルタのうちの1つを、スキャンされる対象の解剖学的構造に基づいて選択でき、選択されたフィルタを、放射ビームの経路に配置することができる。解剖学的構造の変化に応じて、フィルタを或るフィルタから別のフィルタへと変更することができる。スキャンの性質に基づいて、キャリッジは、線質硬化フィルタが放射ビームの経路に配置されても、配置されなくてもよいように、キャリッジを位置させることができる。線質硬化フィルタは、ビームを減衰させ、低エネルギ成分を除去することにより、スカウトスキャンなどの特定のスキャンに合わせてビームを調整することができる。フィルタハウジング内のフィルタの典型的な配置が、
図5A~
図5Dに示されている。
【0023】
図5に示されるフィルタ駆動システム590などのフィルタ駆動システムをキャリッジ240に結合させ、1つ以上のフィルタを放射ビームの経路へと出し入れすることができる。一実施形態においては、モータが、シャフトを介してキャリッジ内のフィルタを結合させることができる。モータでシャフトを回転させることによってフィルタをシャフトに沿って平行移動させることにより、ボウタイフィルタを或るボウタイフィルタから別のボウタイフィルタへと切り替えることができ、さらには/あるいは線質硬化フィルタをビームの経路に導入したり、もしくはビームの経路から取り除いたりすることができる。人体の特定の部分の撮像を行うために、フィルタのうちの1つを選択して、放射源と撮像対象との間のX線ビームへと平行移動させることができる。コンピューティングデバイス216が、選択されたフィルタを放射ビームへと移動させるように、フィルタ駆動システムのモータへとコマンドを送信することができる。フィルタ駆動システムが、フィルタ位置情報をコンピューティングデバイス216へと送り返してもよい。
【0024】
特定の実施形態において、システム200は、所望の投影データを取得するために、対象204の周囲の異なる角度位置を横切って移動するように構成される。したがって、ガントリ102およびガントリに取り付けられた構成要素(放射源104、フィルタハウジング240、および検出器202など)を、例えば異なるエネルギレベルで投影データを取得するために、回転中心206を中心にして回転するように構成することができる。あるいは、対象204に対する投影角度が時間の関数として変化する実施形態においては、取り付けられた構成要素を、円弧に沿ってではなく、一般的な曲線に沿って移動するように構成することができる。
【0025】
一実施形態において、システム200は、ガントリ102の回転およびX線放射源104の動作などの構成要素の動きを制御するための制御機構208を含む。特定の実施形態において、制御機構208は、電力およびタイミング信号を放射源104へともたらすように構成されたX線コントローラ210をさらに含む。加えて、制御機構208は、撮像要件に基づいてガントリ102の回転速度および/または位置を制御するように構成されたガントリモータコントローラ212を含む。
【0026】
特定の実施形態において、制御機構208は、検出器素子202から受信されたアナログデータをサンプリングし、後の処理のためにアナログデータをデジタル信号に変換するように構成されたデータ取得システム(DAS)214をさらに含む。DAS214によってサンプリングおよびデジタル化されたデータは、コンピューティングデバイス(プロセッサとも呼ばれる)216へと送信される。一例において、コンピューティングデバイス216は、データをストレージデバイス218に記憶する。ストレージデバイス218は、例えば、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、コンパクトディスク読み出し/書き込み(CD-R/W)ドライブ、デジタル多用途ディスク(DVD)ドライブ、フラッシュドライブ、および/またはソリッドステートストレージデバイスを含むことができる。
【0027】
加えて、コンピューティングデバイス216は、データの取得および/または処理などのシステムの動作を制御するために、DAS214、X線コントローラ210、およびガントリモータコントローラ212のうちの1つ以上にコマンドおよびパラメータを提供する。特定の実施形態において、コンピューティングデバイス216は、オペレータ入力に基づいてシステムの動作を制御する。コンピューティングデバイス216は、コンピューティングデバイス216に動作可能に接続されたオペレータコンソール220を介して、例えばコマンドおよび/またはスキャンパラメータを含むオペレータ入力を受信する。オペレータコンソール220は、オペレータによるコマンドおよび/またはスキャンパラメータの指定を可能にするキーボードまたはタッチスクリーンを含むことができる。
【0028】
図2にはオペレータコンソール220が1つだけ示されているが、例えば、システムパラメータを入力または出力し、検査を要求し、さらには/あるいは画像を閲覧するために、2つ以上のオペレータコンソールがシステム200に接続されてもよい。さらに、特定の実施形態においては、システム200を、例えば施設または病院内で現場または遠方のいずれかに位置し、あるいはインターネットおよび/または仮想プライベートネットワークなどの1つ以上の設定可能な有線および/または無線ネットワークを介して完全に異なる場所に位置する複数のディスプレイ、プリンタ、ワークステーション、および/または同様のデバイスに接続してもよい。
【0029】
一実施形態において、例えば、システム200は、画像保管通信システム(PACS)224を含み、あるいはPACS224に接続される。典型的な実施態様において、PACS224は、オペレータがさまざまな場所においてコマンドおよびパラメータを提供し、かつ/または画像データにアクセスできるように、放射線科情報システムおよび/または病院情報システムなどの遠方のシステムならびに/あるいは内部または外部のネットワーク(図示せず)にさらに接続される。
【0030】
コンピューティングデバイス216は、オペレータによって提供され、さらには/あるいはシステムによって定められたコマンドおよびパラメータを使用して、テーブルモータコントローラ226を動作させ、テーブルモータコントローラ226が、可動テーブル228を制御することができる。とくには、テーブルモータコントローラ226は、対象204のターゲットボリュームに対応する投影データを取得するために、ガントリ102内に対象204を適切に位置させるようにテーブル228を移動させる。
【0031】
前述のように、DAS214は、検出器素子202によって取得された投影データをサンプリングおよびデジタル化する。その後に、画像再構成器230が、サンプリングされてデジタル化されたX線データを使用して、高速再構成を実行する。
図2は、画像再構成器230を別個のエンティティとして示しているが、特定の実施形態において、画像再構成器230は、コンピューティングデバイス216の一部を形成してもよい。あるいは、画像再構成器230は、システム200に存在しなくてもよく、代わりに、コンピューティングデバイス216が、画像再構成器230の1つ以上の機能を実施してもよい。さらに、画像再構成器230は、その場に位置しても、あるいは遠方に位置してもよく、画像再構成器230を、有線または無線ネットワークを使用してシステム100に動作可能に接続することができる。とくにに、1つの典型的な実施形態は、画像再構成器230のために「クラウド」ネットワーククラスタ内のコンピューティングリソースを使用することができる。
【0032】
一実施形態において、画像再構成器230は、再構成された画像をストレージデバイス218に記憶する。あるいは、画像再構成器230は、診断および評価のための有用な患者情報を生成するために、再構成された画像をコンピューティングデバイス216に送信する。特定の実施形態において、コンピューティングデバイス216は、再構成された画像および/または患者情報を、コンピューティングデバイス216および/または画像再構成器230に通信可能に接続されたディスプレイ232に送信する。
【0033】
図3は、典型的な統合型フィルタアセンブリ315の不等角投影
図300を示している。フィルタアセンブリ315は、長方形のキャリッジ318を含むことができる。一例において、キャリッジ318は、
図2のキャリッジ240であってよい。キャリッジ318は、キャリッジ318のキャビティ内に長さ方向に形成された第1のスロット321および第2のスロット323を含むことができる。第1のスロット321を、タブ333によって第2のスロット323から隔てることができる。一例においては、2つのスロット321および323の各々が、キャリッジ318の全長にわたって延びてよい。別の例においては、2つのスロット321および323の各々が、キャリッジ318の長さの一部分について延びてよい。
【0034】
第1のボウタイフィルタ320を第1のスロット321に収容できる一方で、第2のボウタイフィルタ322を第2のスロット323に収容することができる。一例においては、第1のボウタイフィルタ320および第2のボウタイフィルタ322を互いに隣り合わせに、しかしながら接触させずに配置することができる。別の例においては、第1のボウタイフィルタ320および第2のボウタイフィルタ322を互いに隣り合わせに、面同士を接触させて配置することができる。第1のボウタイフィルタ320および第2のボウタイフィルタ322の各々を、第1の真っ直ぐな長辺と、中央リッジを含む第2の平行な長辺とを有する「ボウタイ」として形作ることができる。一例において、第1のボウタイフィルタ320および第2のボウタイフィルタ322は、同じサイズ(幅、長さ、厚さ、など)であってよい。別の例において、第1のボウタイフィルタ320および第2のボウタイフィルタ322は、異なるサイズ(幅、長さ、厚さ、など)であってよい。第1のボウタイフィルタ320および第2のボウタイフィルタ322の各々を、グラファイトで形成することができる。ボウタイフィルタを使用して、フィルタを通過するX線ビーム342の空間分布を調整することができ、ボウタイフィルタのサイズが、フィルタを通過するX線ビーム342に対して行われる空間分布の調整のレベルを決定する。キャリッジ318は、ボウタイフィルタを視認可能にすることができる切り欠き335を側壁に含むことができる。この例に示されるように、第2のボウタイフィルタ322は、キャリッジ318の側壁および切り欠き335と同一平面にあってよい。ボウタイフィルタは、ナットおよびボルトによってそれぞれのスロット内に固定することができる。
【0035】
線質硬化フィルタ302を、第1のボウタイフィルタ320と第2のボウタイフィルタ322との間において、キャリッジ318に結合させることができる。線質硬化フィルタ302を、第1のボウタイフィルタ320と第2のボウタイフィルタ322との間の凹部345に埋め込むことができる。線質硬化フィルタ302の長さは、第1のボウタイフィルタ320および第2のボウタイフィルタ322のそれぞれの長さ以上であってよい。しかしながら、線質硬化フィルタ302の幅は、第1のボウタイフィルタ320および第2のボウタイフィルタ322のそれぞれの幅よりも狭くてよい。長方形の線質硬化フィルタ302は、第1のボウタイフィルタ320と第2のボウタイフィルタ322との間に配置されるため、線質硬化フィルタ302は、第1のボウタイフィルタ320および第2のボウタイフィルタ322の各々に少なくとも部分的に重なることができ、ボウタイフィルタの上面/側面に面を共有するように接触することができる。
【0036】
線質硬化フィルタ302は、支持構造304と、支持構造304の下方の1つ以上の金属シートとを含むことができる。この例においては、第1の金属シート306および第2の金属シート308を、支持構造304の下方に配置することができる。第1の金属シート306、第2の金属シート308、および支持構造304の各々を一緒に積み重ね、複数のボルト312によって各々の端部においてキャリッジ318に固定することができる。この例においては、複数の同心の穴が、第1の金属シート306、第2の金属シート308、および支持構造304の各々の2つの端部に形成され、各々のボルト(線質硬化フィルタ302の各層をキャリッジ318に取り付けるために使用される)を、各層に存在する同心の穴の各々に通すことができる。一例として、線質硬化フィルタ302の一端を、キャリッジ318のタブ333に取り付けることができる。一例においては、支持構造304を、アルミニウムなどの金属で製作することができ、第1の金属シート306および第2の金属シート308を、同じ金属または異なる金属で製作することができる。銅を使用して第1の金属シート306および第2の金属シート308の一方または両方を形成することができる。
【0037】
線質硬化フィルタ302を使用して、より低いエネルギの放射線を遮ることにより、線質硬化フィルタ302を通過するX線ビーム342を減衰させて「硬化」させることができる。ビームの減衰の程度は、減衰層(金属シートなど)の数、各々の減衰層の厚さ、減衰層に使用される材料、および減衰層の全体的なサイズのうちの1つ以上に依存し得る。
【0038】
一例として、302において線質硬化材料のより薄いシートまたはより弱いシートを使用する場合、支持プレート304を使用して、線質硬化材料の中央を曲げるように作用し得るガントリの回転力による302のたわみを制限することができる。この実施形態において、支持プレートは、撮像に使用される硬化後のX線ビームの断面積の外側に配置される。このようにして、線質硬化フィルタは、撮像用のX線ビームの硬化のみを担当できる一方で、線質硬化フィルタの撮像ビームが通過する領域に近接する支持プレートによって機械的に強化される。さらに、支持プレートを、線質硬化フィルタの付近の余分なX線の散乱を最小限に抑えるために、アルミニウムなどの堅固であるが軽量な材料から製作することができる。
【0039】
アルミニウムフィルタ324を、キャリッジ318の下側に結合させることができ、キャリッジ318の下面全体に沿って延在させることができる。アルミニウムフィルタは、X線ビーム342を、ビームが1つ以上の線質硬化フィルタおよびボウタイフィルタを通過した後に、さらに調整することができる。
【0040】
撮像時に、X線ビーム342は、最初に線質硬化フィルタ302を通過し、次いでボウタイフィルタを通過し、その後にアルミニウムフィルタ324を通過する。キャリッジ318を、ビームをボウタイフィルタおよび線質硬化フィルタ302上に位置させるために、矢印340によって示されるように、ビーム342の方向に垂直な方向に沿って移動させることができる。線質硬化フィルタ302およびボウタイフィルタの組み合わせを選択することによって、ビームの減衰のレベルおよび空間分布を調整することができる。一例においては、キャリッジを、ビームが線質硬化フィルタ302および第1のボウタイフィルタ320を通過し、ビームが線質硬化フィルタ302と重なる第1のボウタイフィルタのエッジの近くにあるように位置させることができる。別の例においては、キャリッジを、ビームが第1のボウタイフィルタ320のみを通過し、ビームが線質硬化フィルタ302と重ならない第1のボウタイフィルタの別のエッジの近くにあるように位置させることができる。さらに別の例においては、キャリッジを、ビームが線質硬化フィルタ302および第2のボウタイフィルタ322を通過し、ビームが線質硬化フィルタ302と重なる第2のボウタイフィルタ322のエッジに近接するように位置させることができる。さらなる例においては、キャリッジを、ビームが第2のボウタイフィルタ322のみを通過し、ビームが線質硬化フィルタ302と重ならない第2のボウタイフィルタの別のエッジに近接するように位置させることができる。1つ以上の線質硬化フィルタ302およびボウタイフィルタを通過した後に、ビームは、スキャンされる対象に進入する前に、常にアルミニウムフィルタ324を通過することができる。
【0041】
線質硬化フィルタによるビームの減衰は、診断スキャンに先立つスカウトスキャンにおいてとくに望まれる可能性がある。診断スキャンにおいては、線質硬化フィルタを伴わないボウタイフィルタを、診断スキャンに使用することができる。典型的には、スカウトスキャンについては、診断スキャンに使用されるビームサイズと比べてより小さいビーム(カバレッジ)を使用することができる。より小さいビームは、ボウタイフィルタよりも狭い線質硬化フィルタ302を完全に通過することができる。線質硬化フィルタをボウタイフィルタと共に取り入れることにより、1つのキャリッジをスカウトスキャンおよび診断スキャンの両方に使用することができ、したがってスカウトスキャンおよび後続の診断スキャンにおけるキャリッジ間の切り替えに必要な構成要素の数および時間を削減することができる。また、線質硬化フィルタを使用することにより、X線管の温度がより高出力のX線源を、対象の放射線被ばくを増加させることなく、スキャンの際に使用することができる。より高い出力は、スカウトスキャンおよび/または後続の診断スキャンの品質を向上させ、ターゲットを含むX線管の熱安定性を向上させることができる。一貫して高いX線管ターゲットの温度は、最適な動作温度の近くにとどまり続け、すなわち内部部品の温度サイクルが少ないほど信頼性が向上するがゆえに、デバイスの長期信頼性に貢献することができる。
【0042】
このようにして、
図1~
図3は、撮像対象を受け入れるガントリと、ガントリ内に配置され、放射線曝露を放出する放射源と、放射源に対してガントリの反対側に配置された検出器と、ガントリ内で撮像対象を移動させるための可動テーブルと、非一時的なメモリに保存された命令を備える演算デバイスと、ガントリに取り付けられたフィルタキャリッジと、フィルタキャリッジ内に配置された第1のボウタイフィルタ、第2のボウタイフィルタ、および線質硬化フィルタとを備えており、線質硬化フィルタは、第1のボウタイフィルタと第2のボウタイフィルタとの間に取り付けられ、第1のボウタイフィルタおよび第2のボウタイフィルタの各々に部分的に重なり、フィルタ駆動システムが、第1のボウタイフィルタ、第2のボウタイフィルタ、および線質硬化フィルタのうちの1つ以上を放射ビームへと出し入れすることによってフィルタを切り替える、撮像システムを提供する。
【0043】
図4A~
図4Eは、X線ビームのコリメーション装置412の断面を示している。コリメーション装置412は、
図3の統合型フィルタアセンブリ315を含むことができる。統合型フィルタアセンブリ315は、線質硬化フィルタ302、第1のボウタイフィルタ320、第2のボウタイフィルタ322、およびアルミニウムフィルタ324を含むことができる。X線ビームは、統合型フィルタアセンブリ315を通過した後に、第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との間に形成されたギャップ(開口)を通過することができる。第1のコリメータブレード408および第2のコリメータブレード410の各々を、鉛または遭遇した放射線を吸着できるタングステンなどの他の減衰材料から形成することができる。第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との間のギャップを通過した後に、X線ビームは、コリメータ出力ポート(開口部)418を介してコリメーション装置412(コリメータ)を出ることができる。第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との間のギャップは、所望のビームカバレッジに対応し得る。さまざまなサイズのビームを、所望のスキャンおよび対象(スキャンされる解剖学的構造、など)の特性に基づいて調整することができる。したがって、スカウトスキャンに使用されるビームのサイズは、特定の解剖学的構造の診断スキャンに使用されるビームのサイズよりも小さくてよい。
図4A~
図4Eの典型的な実施形態においては、5mm、10mm、15mm、20mm、および25mmの特定のビーム幅が示されているが、他の実施形態において、他の幅のビームを使用してもよい。
【0044】
コリメーション装置412の第1の実施形態400において、所望のX線ビームサイズは5mmである。キャリッジ302は、X線ビーム415が線質硬化フィルタ302、第1のボウタイフィルタ320、およびアルミニウムフィルタの各々を通過するようなやり方で配置される。統合型フィルタアセンブリ315を出た後に、X線ビーム415は、第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との間の開口414を通過するときに5mmのサイズにコリメートされる。第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との相対的な位置を調整することにより、開口414のサイズを5mmに適合させることができる。ビームがフィルタを通過するときにX線ビームが調整される統合型フィルタアセンブリ315を通過した後に、ビームは、開口414によって5mmという所望のサイズにコリメートされる。その後に、開口414を出るX線ビーム415は、スキャンされる対象に到達することができる。
【0045】
コリメーション装置412の第2の実施形態420において、所望のX線ビームサイズは10mmである。キャリッジ302は、X線ビーム425を線質硬化フィルタ302、第1のボウタイフィルタ320、およびアルミニウムフィルタの各々に通すことができるようなやり方で配置される。統合型フィルタアセンブリ315を出た後に、X線ビーム425は、第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との間の開口424を通過するときに10mmのサイズにコリメートされる。第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との相対的な位置を調整することにより、開口424のサイズを10mmに適合させることができる。ビームがフィルタを通過するときにX線ビーム425が調整される統合型フィルタアセンブリ315を通過した後に、ビームは、開口424によって10mmという所望のサイズにコリメートされる。その後に、開口424を出るX線ビーム425は、スキャンされる対象に到達することができる。
【0046】
コリメーション装置412の第3の実施形態440において、所望のX線ビームサイズは15mmである。キャリッジ302は、X線ビーム445が線質硬化フィルタ302、第1のボウタイフィルタ320、およびアルミニウムフィルタの各々を通過するようなやり方で配置される。統合型フィルタアセンブリ315を出た後に、X線ビーム445は、第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との間の開口444を通過するときに15mmのサイズにコリメートされる。第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との相対的な位置を調整することにより、開口444のサイズを15mmに適合させることができる。ビームがフィルタを通過するときにX線ビームが調整される統合型フィルタアセンブリ315を通過した後に、ビームは、開口444によって15mmという所望のサイズにコリメートされる。その後に、開口444を出るX線ビーム445は、スキャンされる対象に到達することができる。
【0047】
コリメーション装置412の第4の実施形態460において、所望のX線ビームサイズは20mmである。キャリッジ302は、X線ビーム465が線質硬化フィルタ302、第1のボウタイフィルタ320、およびアルミニウムフィルタの各々を通過するようなやり方で配置される。統合型フィルタアセンブリ315を出た後に、X線ビーム465は、第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との間の開口464を通過するときに20mmのサイズにコリメートされる。第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との相対的な位置を調整することにより、開口464のサイズを20mmに適合させることができる。ビームがフィルタを通過するときにX線ビームが調整される統合型フィルタアセンブリ315を通過した後に、ビームは、開口464によって20mmという所望のサイズにコリメートされる。その後に、開口464を出るX線ビームは、スキャンされる対象に到達することができる。
【0048】
コリメーション装置412の第5の実施形態480において、所望のX線ビームサイズは25mmである。キャリッジ302は、X線ビーム485が線質硬化フィルタ302、第1のボウタイフィルタ320、およびアルミニウムフィルタの各々を通過するようなやり方で配置される。統合型フィルタアセンブリ315を出た後に、X線ビーム485は、第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との間の開口484を通過するときに25mmのサイズにコリメートされる。第1のコリメータブレード408と第2のコリメータブレード410との相対的な位置を調整することにより、開口484のサイズを25mmに適合させることができる。ビームがフィルタを通過するときにX線ビームが調整される統合型フィルタアセンブリ315を通過した後に、ビームは、開口484によって25mmという所望のサイズにコリメートされる。その後に、開口484を出るX線ビームは、スキャンされる対象に到達することができる。
【0049】
図5A~
図5Dは、フィルタハウジング510内に3つのフィルタ508、506、および507を有するフィルタアセンブリ500の典型的な構成を示している。一例として、3つのフィルタ508、506、および507の各々は、ボウタイフィルタであってよい。この例において、第1のフィルタ508および第2のフィルタ506は、キャリッジ504内に一緒に配置されている。線質硬化フィルタ513を、第1のフィルタ508と第2のフィルタ506との間において、キャリッジ504に結合させることができる。一例において、キャリッジ504は、
図3のキャリッジ318であってよい。
【0050】
キャリッジ504を、ボールねじ511に結合させることができ、キャリッジを、第1のモータ502で第1のシャフトを回転させることにより、第1のシャフト505に沿って平行移動させることができる。第3のフィルタ507を、ボールねじ512に結合させることができ、第2のモータ503で第2のシャフトを回転させることにより、第2のシャフト509に沿って平行移動させることができる。キャリッジ504が第1のシャフト505に沿って平行移動するときに第2のシャフト509がキャリッジ504に干渉することがないように、局所的なクリアランスの特徴(図示せず)がキャリッジ504に存在する。X線ビーム(
図1および
図2のX線放射106など)の方向が、501で示されている。一方または両方のシャフト505および509をモータ502および503のそれぞれによって回転させることで、3つのフィルタのうちの1つを、線質硬化フィルタ513と共に、X線ビームのビーム経路へと選択的に平行移動させることができる。第1および第2のシャフトを、1本の線に整列させることができ、ギャップ523によって互いに離すことができる。X線ビーム501は、ギャップ523を通過することができる。モータ(モータ503など)、モータに結合したシャフト(シャフト509など)、およびシャフトに結合したフィルタ(フィルタ507など)が、フィルタ駆動システム590を形成できる。フィルタアセンブリ500は、1つ以上のフィルタ駆動システムを含むことができる。
【0051】
図5Aは、フィルタアセンブリ500の第1の位置520を示している。X線ビーム501は、いずれのフィルタも通過することなく、フィルタハウジング510を通過する。第1のフィルタ508、第2のフィルタ506、および線質硬化フィルタ513を含むキャリッジ504は、第1のモータ502の近くに配置されてよく、第3のフィルタは、第2のモータ503の近くに配置されてよい。
【0052】
図5Bは、フィルタアセンブリ500の第2の位置540を示している。X線ビーム501は、フィルタハウジング810内の線質硬化フィルタ513および第1のフィルタ508の各々を通過する。フィルタアセンブリ500を、第1のモータ502を作動させ、(キャリッジ504内の)線質硬化フィルタ513および第1のフィルタ508をX線ビームの経路へと平行移動させることによって、第1の位置520から第2の位置540へと移行させることができる。
【0053】
図5Cは、フィルタアセンブリ500の第3の位置560を示している。X線ビーム501は、フィルタハウジング810内の第2のフィルタ506のみを(線質硬化フィルタ513を介在させずに)通過する。フィルタアセンブリ500を、第1のモータ502を作動させ、(キャリッジ504内の)第2のフィルタ506をX線ビームの経路へと平行移動させることによって、第1の位置520または第2の位置540から第3の位置560へと移行させることができる。
【0054】
図5Dは、フィルタアセンブリ500の第4の位置580を示している。X線ビーム501は、フィルタハウジング510内の第3のフィルタ507を通過する。フィルタアセンブリ500を、第1のモータ502を作動させてキャリッジ504を第1のモータ502の近くへと平行移動させ、その後または同時に、第2のモータ503を作動させて第3のフィルタ507をX線ビームの経路へと平行移動させることによって、上述の第1、第2、または第3の位置から第4の位置580へと移行させることができる。
【0055】
非一時的なメモリに格納された命令に基づいて、コンピューティングデバイス(
図2のコンピューティングデバイス216など)が、2つのモータのうちの1つ以上を作動させることにより、フィルタアセンブリを上述の位置のうちのいずれかから別の位置へと移動させることができる。一実施形態においては、2つのフィルタおよび線質硬化フィルタが、キャリッジに配置される。一例として、2つのフィルタを、1つのシャフトに結合させ、1つのモータによって駆動することができる。別の例としては、2つのフィルタのうちの一方および線質硬化フィルタが、1つのシャフトに結合させられ、1つのモータによって駆動され、2つのフィルタのうちの他方が、第2のシャフトに結合させられ、第2のモータによって駆動される。別の実施形態においては、4つ以上のフィルタおよび複数の線質硬化フィルタを、フィルタハウジング内に配置することができる。例えば、ハウジング内のフィルタの総数が偶数である場合、各々のシャフトに結合させられるフィルタの数は同じである。ハウジング内のフィルタの総数が奇数である場合、各々のシャフトに結合させられるフィルタの数は異なる。
【0056】
さらに別の実施形態において、フィルタハウジング内のフィルタの配置は、フィルタの種類に基づくことができる。ここで、フィルタの種類は、そのフィルタが撮像用に設計された対象の部分によって決定され得る。例えば、第1の部分と第2の部分とがつながっている場合に、対象の第1の部分を撮像するために使用される第1のフィルタと、対象の第2の部分を撮像するために使用される第2のフィルタとを、互いに隣接させて配置することができる。第1の部分および第2の部分がつながっていない場合、第1のフィルタおよび第2のフィルタを(別のフィルタによって隔てられるなど)互いに離して配置することができる。一例として、腹部の撮像のためのフィルタを、胸部の撮像のためのフィルタに隣接させ、しかしながら頭部を撮像するためのフィルタからは離して配置することができる。このようにして、腹部の撮像後に胸部が撮像される場合に、フィルタを或るフィルタから別のフィルタへと迅速に切り替えることが可能である。腹部の撮像後に頭部が撮像される場合、撮像対象を腹部の撮像から頭部の撮像へと物理的に移動させる必要があるため、フィルタの切り替えの時間はより長くてよい。線質硬化フィルタを、スカウトスキャンに使用することができる2つのフィルタの間に結合させることができる。
【0057】
他の実施形態においては、フィルタを含むキャリッジは、ラックアンドピニオン、ベルト、またはケーブル駆動システムのいずれかで平行移動させることができる。フィルタアセンブリのフィルタ駆動システムは、2秒以内に或る1つのフィルタを別のフィルタに切り替えることができる。例えば、フィルタをフィルタ駆動システムによって2秒未満で3~5インチ平行移動させることができる。
【0058】
図6は、(
図3の統合型フィルタアセンブリ315などの)統合型フィルタアセンブリに含まれる複数のフィルタを使用して画像スキャンを実行するための典型的な方法600を示している。方法600は、連続するスキャン間で同じキャリッジ内のフィルタを変更することによって、撮像対象の複数の解剖学的構造の画像の取得を達成する。方法600および本明細書で説明されるすべての方法を、撮像システムのコンピューティングデバイス(
図2のコンピュータ216など)の非一時的なメモリに格納された命令に従って実行することができる。
【0059】
602において、撮像スキャンの対象(
図2の対象204など)を、可動テーブル(
図2のテーブル228など)上に配置することができる。テーブルモータコントローラが、対象の適切な部分が撮像のためにガントリ内に位置するように、テーブルを移動させることができる。
【0060】
604において、このルーチンは、スカウトスキャンが望ましいかどうかを判断することを含む。スカウトスキャンは、撮像対象の長手軸に沿った投影ビューをもたらし、一般に、それぞれが対象の内部構造を含む集合体を提供する。スカウトスキャンの際には、撮像システムのすべての構成要素を静止位置に維持することができる一方で、撮像システムに対象を通過させることで、対象のスキャンを実行することができる。スカウトスキャンを、後続の診断スキャンのために対象の関心領域を特定するために使用することができる。
【0061】
スカウトスキャンが望ましいと判断された場合、606において、スカウトスキャンを実行するためのスキャンパラメータを設定することができる。例えば、ユーザは、スキャンプロトコルまたはメニューに従ってスキャンパラメータを入力または選択することができる。スキャンパラメータは、スキャン中に使用されるフィルタの種類および順序を含むことができる。例として、スカウトスキャンに関して、対象の撮像に使用されるX線ビームを調整するために、ボウタイフィルタを線質硬化フィルタと共に使用することができる。スキャンパラメータは、スキャンタイミングの設定も含むことができる。一例として、スキャンタイミングは、各部分の撮像に関する開始時間および継続時間を含むことができる。
【0062】
608において、ボウタイフィルタ(
図3のボウタイフィルタ320など)および線質硬化フィルタ(例えば、
図3の線質硬化フィルタ302など)を含むキャリッジに結合させたモータを動作させることによって、ボウタイフィルタおよび線質硬化フィルタをX線ビームの経路に位置させることができる。キャリッジを、X線ビームの平面に垂直な平面内でシャフトに沿って移動させて、ボウタイフィルタおよび線質硬化フィルタをビーム内に配置することができる。コントローラが、シャフトおよびキャリッジを所望の位置へと移動させるようにモータを作動させることができる。ボウタイフィルタは、(患者などの)撮像対象の横断面における放射ビームの空間分布を変化させることができる。例えば、分布を変化させた放射ビームは、対象の中心においてより高いエネルギを有し、対象の周辺においてより低いエネルギを有することができる。線質硬化フィルタは、より低いエネルギの放射線を遮ることにより、ビームを減衰および「硬化」させることができる。線質硬化フィルタは、ボウタイフィルタに少なくとも部分的に重なってよく、ビームは最初に線質硬化フィルタを通過し、その後にボウタイフィルタに進入することができる。
【0063】
610において、方法600は、撮像対象のデータセットの取得を開始すると同時に、撮像対象の解剖学的構造を監視することができる。例えば、放射源(
図1および
図2の104など)を作動させることができ、ボウタイフィルタおよび線質硬化フィルタを介した撮像対象の放射線曝露(
図1および
図2の106など)を開始することができる。スカウトスキャンについて、最小許容ビームを使用することができる。一例において、ビームは5mmであってよい。線質硬化フィルタを使用して対象に到達するビームを減衰させることにより、X線管の温度がより高出力のX線源を、対象の放射線被ばくを増加させることなく、スカウトスキャンの際に使用することができる。より高い出力は、診断スキャンの品質を向上させ、ターゲットを含むX線管の熱安定性を改善する。一例において、50kWのX線出力スキャン技術(100kV、500mA)を使用することができる。
【0064】
データセットは、検出器(
図2の108など)から、撮像対象からの透過放射線信号の受光時に取得される。一例として、取得されたデータセットを分析することによって、撮像対象の解剖学的構造を監視することができる。別の例として、撮像対象の解剖学的構造を、現時点の撮像場所によって推定することができる。現時点の撮像場所を、スキャンの開始位置および可動テーブルの移動距離に基づいて計算することができる。一実施形態においては、対象の解剖学的構造を、さまざまな種類にグループ化することができる。例えば、人体の解剖学的構造を、サイズに基づいて、頭部、胸部、および腹部などの種類にグループ化することができる。
【0065】
612において、このルーチンは、スカウトスキャンが終了したかどうかを判断することを含む。スカウトスキャンの終了を、ステップ606で設定されたプロトコルに基づいて判断することができる。スカウトスキャンが終了していないと判断された場合、614において、スカウトスキャンを継続し、データを取得することができる。
【0066】
スカウトスキャンが終了したと判断された場合、616において、このルーチンは、診断スキャンが望まれるかどうかを判断することを含む。一例として、診断スキャンを実行する決定を、スカウトスキャンにおいて取得されたデータから再構成された画像に基づいて行うことができる。スカウトスキャンからの画像は、二次元または三次元であってよい。スカウトスキャンに基づいて、診断スキャンのための特定の解剖学的構造を選択することができる。診断スキャンは、スカウトスキャンでは得ることができないかもしれない特定の解剖学的構造の詳細な画像をもたらすことができる。
【0067】
604においてスカウトスキャンが望まれないと判断された場合、このルーチンは、診断スキャンが望まれるかどうかを判断するためのステップ616へと直接進むことができる。スカウトスキャンが常に診断スキャンに先行する必要はない。
【0068】
診断スキャンが望まれず、スカウトスキャンが完了したと判断された場合、618において、スカウトスキャンから取得されたデータセットが表示および保存される。一実施形態においては、対象の異なる部分から取得されたデータセットを再構成し、画像を形成することができる。取得されたデータセットおよび処理された画像を、撮像システムのストレージに保存でき、さらなるスキャンは実行されなくてよい。その後に、このルーチンは終了する。
【0069】
診断スキャンが望まれると判断された場合、このルーチンは、診断スキャンを実行するためのスキャンパラメータを設定することができるステップ620へと進むことができる。ユーザは、スキャンプロトコルまたはメニューに従ってスキャンパラメータを入力または選択することができる。スキャンパラメータは、スキャン中に使用されるフィルタの種類および順序を含むことができる。フィルタの種類を、撮像される撮像対象の解剖学的構造に基づいて選択することができる。パラメータは、スキャンタイミングの設定も含むことができる。一例として、スキャンタイミングは、各部分の撮像に関する開始時間および継続時間を含むことができる。撮像対象の解剖学的情報を、演算デバイスのメモリへとロードすることができる。解剖学的情報は、事前のスキャンから取得可能である。解剖学的情報は、以前のスカウトスキャンまたは局所スキャンから取得されてよい。このステップは、対象の適切な部分が撮像のためにガントリ内に位置するように、可動テーブルによって撮像対象を移動させることをさらに含むことができる。
【0070】
622において、造影剤を撮像対象に注入することができる。造影剤は、特定の解剖学的構造に関して特定的に取得される画像のコントラストを向上させることができる。このステップは、随意によるステップであり、造影剤を使用せずに診断スキャンを実行してもよい。
【0071】
624において、ボウタイフィルタを含むキャリッジに結合させたモータを動作させることにより、ボウタイフィルタをX線ビームの経路に配置することができる。フィルタの種類は、対象の現時点の撮像部分の解剖学的構造に基づいて決定されてよい。キャリッジを、X線ビームの平面に垂直な平面内でシャフトに沿って移動させて、ボウタイフィルタをビーム内に配置することができる。診断スキャンにおいては、より大きなビームサイズが使用され、したがって線質硬化フィルタはもはや使用されなくてよい。一例において、診断スキャンに使用されるボウタイフィルタは、スカウトスキャンで使用されるボウタイフィルタと同じであってよい。別の例において、診断スキャンに使用されるボウタイフィルタは、スカウトスキャンに使用されるボウタイフィルタとは違ってよい。このようにして、追加の構成要素を必要とせずに、1つ以上のボウタイフィルタおよび線質硬化フィルタを含む単一のキャリッジを、スカウトスキャンおよび診断スキャンの両方に使用することができる。
【0072】
626において、撮像対象のデータセットを取得できると同時に、撮像対象の解剖学的構造を監視することができる。例えば、放射源を作動させ、選択されたボウタイフィルタを介した撮像対象の放射線への曝露を開始することができる。診断スキャンについて、25mm~160mmのビームサイズを使用することができる。データセットは、検出器から、撮像対象からの透過放射線信号の受光時に取得される。一例として、取得されたデータセットを分析することによって、撮像対象の解剖学的構造を監視することができる。別の例として、撮像対象の解剖学的構造を、現時点の撮像場所によって推定することができる。現時点の撮像場所を、スキャンの開始位置および可動テーブルの移動距離に基づいて計算することができる。一実施形態においては、対象の解剖学的構造を、さまざまな種類にグループ化することができる。例えば、人体の解剖学的構造を、サイズに基づいて、頭部、胸部、および腹部などの種類にグループ化することができる。
【0073】
628において、このルーチンは、診断スキャンが終了したかどうかを判断することを含む。診断スキャンの終了を、ステップ620で設定されたプロトコルに基づいて判断することができる。診断スキャンが終了していないと判断された場合、630において、診断スキャンを継続し、データを取得することができる。
【0074】
診断スキャンが終了したと判断された場合、診断スキャンから取得されたデータセットが表示および保存される。一実施形態においては、対象の異なる部分から取得されたデータセットを再構成し、画像を形成することができる。取得されたデータセットおよび処理された画像を、撮像システムのストレージに保存でき、さらなるスキャンは実行されなくてよい。その後に、このルーチンは終了する。
【0075】
このようにして、第1の撮像(スカウトスキャンなど)の際に、キャリッジに収容された線質硬化フィルタおよび第1のボウタイフィルタを放射源と撮像対象との間の放射ビームの経路に位置させるようにキャリッジを移動させることができ、第2の撮像(診断スキャンなど)の際に、線質硬化フィルタおよび第1のボウタイフィルタを放射線の経路から外し、キャリッジに収納された第2のボウタイフィルタを放射線の経路に位置させるように、キャリッジを移動させることができる。
【0076】
このように、単一のキャリッジが、複数のキャリッジを積み重ねてスキャン間でキャリッジを切り替えることを必要とせずに、対象に進入するX線ビームの経路に選択的に配置することができる1つ以上のボウタイフィルタおよび線質硬化フィルタを含むことができる。線質硬化フィルタを使用して対象に到達するビームを減衰させることの技術的効果は、X線管の温度がより高出力のX線源を、対象の放射線被ばくを増加させることなく、スキャンの際に使用できることである。全体として、より高い出力は、診断スキャンの品質を向上させ、ターゲットを含むX線管の熱安定性を改善する。
【0077】
撮像対象の診断スキャンのためのX線曝露に先立って、X線管の温度を、所望のより高い温度範囲へと高めることができる。所望の温度範囲において、ターゲット材料は延性を有することができ、したがって材料がより丈夫になり、すべてのビームエネルギがもたらされるターゲット材料上の焦点に関して、ターゲット材料の融点まで衝撃に耐えることができる。所望の温度範囲において、X線管について、ターゲット材料を劣化させることなく、より高い電力を使用することができる。より高い電力を使用することで、診断スキャンの画質の向上ももたらすことができる。
【0078】
タングステン合金ターゲットの望ましい温度範囲は、200℃~300℃の間であってよい。ターゲットを望ましい温度範囲に加熱した後に、ターゲットがこの温度範囲に留まる時間は、X線管の冷却特性ならびに管へと熱をもたらす曝露の頻度および性質の関数である。したがって、X線管の熱管理システムは、曝露の完了後に管から熱を効率的に取り除き、管を300℃未満に戻すように設計される。しかしながら、管が所望の患者処理能力と比べてあまりにも速く冷めることができる場合、管は、必要とされる出力レベルで次の患者をスキャンするには温度が低すぎるかもしれない。
【0079】
したがって、診断スキャンの実行が可能になる前に管の温度を高めてターゲットの温度を望ましい温度範囲に維持するために、管のコンディショニング手順(本明細書においては、管のウォームアップとも呼ばれる)が望まれるかもしれない。管のウォームアップの効果的なやり方は、X線を発生させることである。管のウォームアップ手順は、典型的には、脆性モードを超えてターゲットを延性モードへと徐々にウォームアップするために、時間をかけて充分なエネルギを届けることができる所定の一連の低電力かつ長時間の曝露で構成されてよい。したがって、CTスキャナのオペレータは、不要な放射線被ばくを避けるために、患者が入室する前に手動で管のウォームアップを開始させることができる。ターゲットが脆性モードでないことを確実にするために、管の実際の(初期)状態に関係なく、同じウォームアップ手順を使用することができる。
【0080】
しかしながら、各々の診断スキャンの前にオペレータが管のコンディショニングを手動で開始させなければならない場合、コンディショニングのプロセスによって、1日にできる限り多くの回数のスキャンを実行しようとするオペレータのワークフローが中断される可能性がある。ウォームアップの手順のために、不要な放射線被ばくを避けるために患者を室外で待たせなければならない追加の3~5分が必要になる可能性がある。この追加の管のコンディショニングの時間を、2人の連続する患者の間で毎回費やさなければならない場合、スキャンの迅速な完了を維持することが困難になると考えられる。
【0081】
ターゲット温度が望ましい温度範囲を下回っているときにスキャンを続けると、許容される曝露の出力が管を保護するために制限されるため、画像品質の低下が観察される可能性がある。したがって、温度の低い管では、診断スキャンの最中に所望の画質を得るための推奨放射線量がもたらされない可能性がある。
【0082】
オペレータは、患者のスキャンとは別のツールを使用して、管のウォームアップを手動で開始させなければならないかもしれない。システムはX線管の状態に関する情報をオペレータに提供するが、管のコンディショニングは、システムにおけるオペレータの固有のワークフローの一部であるとは限らない。他方で、たとえ管のウォームアップの目的であっても、X線をオンにするとき、オペレータはスキャン室に誰も存在しないことを確認する必要があるため、コンディショニングを自動化することはできない。
【0083】
開ループを実行する管のウォームアップのための固定の事前に定められた曝露手順の使用は、ウォームアップ手順の終わりにおける正確なターゲット温度を制御できない可能性がある。例えば、診断スキャン時に高温限界(例えば、300℃)を超える可能性がある。特定の較正ステップ(例えば、焦点の整列)などの一部のツールにとっても、ウォームアップの終了時の望ましいターゲット温度は、一貫した結果を生み出すために有益であると考えられる。また、詳細な較正が最初に実行されてシステムに保存されたときのシステム環境に一致する温度での動作は、診断スキャンにとっても有益であると考えられる。管に大量のエネルギをもたらす長いウォームアップ手順を繰り返し実行すると、管のいくつかの構成要素にストレスがかかり、管の使用寿命が短くなる可能性がある。したがって、管のウォームアップの一貫性および使いやすさを中心とした上述の課題を克服するために、新たな手法が必要である。
【0084】
したがって、本明細書において開示される実施形態によれば、スキャン室内でスキャンのために対象(患者など)を準備しつつ、より短時間で管を効果的にウォームアップするために、一式の管コンディショニング手法を実行することができる。X線管の温度を、閉ループ制御システムを介して制御することができる。管の初期の熱状態、管の所望の熱状態、および所望の熱状態への到達までの利用可能時間が入力として使用し、管の挙動の熱モデルを使用して、管を所望の状態に移行させるために必要な曝露パラメータ(電圧、電流、曝露時間、など)を計算することができる。管の初期の熱状態を考慮し、閉ループシステムを使用することにより、温度をオーバーシュートすることなく、最終的な所望の熱状態に到達することができる。さまざまなスキャン(管のウォームアップの完了後の異なる時点において予知される診断スキャン、または較正手順のための異なるウォームアップ結果、など)について、異なる最終的な熱状態を選択することができる。コンディショニングから対象のスキャンまでの時間など、コンディショニングの結果を直接選択することにより、管のターゲットが、患者の処置ごとにさまざまであり、さまざまな患者処理量である各日の異なる時刻においてさまざまであり、あるいはオペレータのさまざまな勤務シフトまたはチームごとにさまざまであり得る診断のための曝露の時点における最適な温度範囲に常にとどまることを保証することができる。
【0085】
管のウォームアップのためのX線の発生時に、X線遮断プレートを出口(患者の前)のコリメータ開口の前方に配置して、対象の前の主X線ビーム経路を完全に遮断することができる。このようにして、対象を室内において診断スキャンのために準備しつつ、管のコンディショニングのためのX線の発生を続けることができる。管のコンディショニングのための時間を対象の準備のために使用することにより、各々の対象について必要とされる全体的な時間を短縮することができ、より多数のスキャンを1日に取り入れることができる。
【0086】
診断スキャンに先立って、1回以上のスカウトスキャンを実行することができる。直後の診断スキャンのためにX線管をコンディショニングするために、より高出力のX線ビームをスカウトスキャンの際に使用することができる。スカウトスキャンの際に対象に到達するX線ビームの経路に線質硬化フィルタを追加することにより、対象に到達するビームを減衰させることができ、したがって対象の放射線被ばくを減らすことができる。さらに、X線ビームのうちの対象に到達する部分を減らすことによって、対象が受け取る実際の放射線量を減らすために、スカウト曝露のビームコリメーションを(スリット開口などへと)大幅に縮小することができる。このようにして、典型的にはスカウトスキャンに続く診断スキャンの直前に、管のウォームアップを効果的に完了させることができる。これにより、管のコンディショニングをスキャン時間外に手動で実行する必要がないシームレスなワークフローが可能になる。実際のスキャンの最中に管をコンディショニングすることで、焦点位置を少ない熱運動において一貫して実行することができ、診断スキャン条件を、システム較正ベクトルを最初に生成したやり方に一致させることで、より良好な画質を実現することができる。また、管のウォームアップが、管が冷める時間を間にあまり挟むことなく診断スキャンの曝露の直前に実行されるため、あまり時間を要さない。
【0087】
図7は、コリメータブレード702と遮断プレート704とを含むコリメータブレードアセンブリ700を示している。コリメータブレード702は、
図4A~
図4Eのコリメータブレード408または410であってよい。遮断プレート704を、x-z平面においてコリメータブレードの下面に取り付けることができ、x線ビームは、y方向にコリメータブレードアセンブリ700へと入射する。
【0088】
遮断プレート704を、一方向においてコリメータブレード702のエッジの外側へと延長することができる。遮断プレート704の延長部分は、X線ビームを通過させるための開口を形成するコリメータブレード702のエッジから遠ざかる方に延びてよい。一例として、遮断プレートの幅(x方向)は、遮断プレート704をプレートに入射するあらゆるX線を完全に吸収するように配置することによって、出力ポートを通過する放射線を遮断できるように、コリメータの出力ポート(開口部)よりも長くてよい。遮断プレート704の長さ(z方向)は、コリメータブレード702の長さに等しくてよい。
【0089】
遮断プレート704は、コリメータブレード702の下面(下部)に完全または部分的に重なることができる。この例において、遮断プレート704は、コリメータブレード702の下部に面同士で接触している。別の実施形態においては、遮断プレート704をコリメータブレード702とコリメータの出力ポートとの間に配置した状態で、コリメータブレード702の下部と遮断プレート704との間にギャップが存在してもよい。遮断プレート704は、遮断プレート704に接触するあらゆる直接または散乱X線ビームを吸収できるように、鉛またはタングステンで製作されてよい。
【0090】
この例において、コリメータブレード702の上面(上部)は湾曲するように図示されており、これは、検出器に衝突するX線ビームについて平行なビームプロファイルを得ることを容易にする。別の実施形態において、コリメータブレード702の上面は平坦であってもよい。
【0091】
図8Aおよび
図8Bは、遮断プレートを含むX線ビーム用のコリメーション装置812を示している。X線ビームは、1つ以上のフィルタ(ボウタイフィルタおよび/または線質硬化フィルタなど)を通過した後に、第1のコリメータブレード802と第2のコリメータブレード804との間に形成されるギャップ(開口)を通過することができる。一例として、第1のコリメータブレードは、
図4A~
図4Eの第1のコリメータブレード408および/または
図7のコリメータブレード702であってよく、第2のコリメータブレードは、
図4A~
図4Eの第2のコリメータブレード410であってよい。第1のコリメータブレード802と第2のコリメータブレード804との間のギャップを通過した後に、X線ビームは、コリメータ出力ポート(開口部)812を介してコリメータを出ることができる。第1のコリメータブレード802と第2のコリメータブレード804との間のギャップは、所望のビーム直径に対応できる。
【0092】
入射する直接または散乱X線ビームを遮断するように、第1の遮断プレート806を第1のコリメータブレード802の下部に結合させることができ、第2の遮断プレート807を第2のコリメータブレード804の下部に結合させることができる。第1の遮断プレート806は、X線ビーム全体を出力ポートを介してコリメータから出ることがないように遮断することが望まれる場合にX線ビームを効果的に遮断するために第1のコリメータブレード802のエッジを過ぎて延びてよい。
【0093】
図8Aは、コリメーション装置812の第1の位置800を示している。コリメーション装置812は、X線ビームがコリメータを出ることが望まれ、対象をスキャンするために使用されるとき、第1の位置に位置することができる。
【0094】
X線ビーム808は、第1のコリメータブレード802と第2のコリメータブレード804との間の開口816を通過するときに所望のサイズにコリメートされる。第1のコリメータブレード802および第2のコリメータブレード804の相対的な位置を調整することにより、開口816のサイズを所望のビームサイズに適合させることができる。次いで、コリメートされたX線ビームは、出力ポート812を介してコリメータを出ることができる。
図8Bは、コリメーション装置812の第2の位置850を示している。
【0095】
図8Bは、コリメーション装置812の第2の位置850を示している。コリメーション装置812は、X線管のコンディショニング時など、X線ビームをコリメータから出ることがないように阻止することが望まれるときに、第2の位置に位置することができる。X線管のコンディショニング(ウォームアップ)時に、X線管にエネルギを与えるためにX線を発生させることができる。しかしながら、実際のスキャンの前の対象の放射線被ばくを低減するために、X線を、コリメータを出て後のスキャンのための準備中の対象に到達することがないように遮ることができる。
【0096】
第1のコリメータブレード802と第2のコリメータブレード804との間に形成される開口(ギャップ)826ができるだけ小さくなり、第1のコリメータブレード802、第2のコリメータブレード804、第1の遮断プレート806、および第2の遮断プレート807のうちの1つ以上によってX線ビーム808および存在し得る二次(散乱)放射線816を完全に遮断できるように、第1のコリメータブレード802および第2のコリメータブレード804の一方または両方を、互いに最も近付くように移動させることができる。
【0097】
この例においては、第1のコリメータブレード802が、第1の遮断プレート806と共に、X線全体をコリメータの出力ポート812に到達することがないように遮断するために効果的に使用されている。このようにして、別個の遮断プレートをコリメータブレードに取り付け、遮断プレートをX線ビームの経路に配置することにより、一次X線ビームおよび散乱放射線を、対象に到達することがないように遮断することができる。したがって、X線管のウォームアップ中に、望ましくない放射線被ばくの可能性を伴わずに、スキャン室において対象の準備を行うことができる。
【0098】
このようにして、
図7、
図8A、および
図8Bのシステムは、X線コリメータ用のシステムであって、コリメータの開口を形成するギャップによって隔てられた第1のコリメータブレードおよび第2のコリメータブレードと、前記第1のコリメータブレードに組み合わせられ、診断スキャンに先立つX線管のコンディショニングのためのX線の発生時にX線ビームの経路に配置されてX線ビームをコリメータから出ることがないように遮る遮断プレートとを含むシステムを可能にする。
【0099】
図9は、診断スキャンに先立つX線管のコンディショニングのための典型的な方法900を示している。方法900を、診断スキャンの完了後に実行することができ、さらには/あるいは別の診断スキャンが間近である旨の知らせを(例えば、オペレータを介して)受け取ったときに実行することができる。
【0100】
902において、このルーチンは、スキャンの前にX線管のウォームアップが望ましいかどうかを判断することを含む。X線管のウォームアップは、X線管およびX線ターゲットの温度を所望の温度範囲まで高めることを含むことができる。一例において、所望の温度範囲は、200℃~300℃の間であってよい。診断スキャンの前に、ターゲット材料が望ましい温度範囲に到達するように、X線管のウォームアップが望ましいかもしれない。所望の温度範囲を下回ると、ターゲット材料が脆くなる可能性があり、したがって高エネルギの電子ビームがターゲットに衝突すると、ターゲットの不具合を生じさせるような疲労破壊につながる可能性がある。スキャン時により高いX線出力を使用することで、画質の向上をもたらすことができる。
【0101】
X線管のウォームアップが望まれないと判断された場合、904において、現在のX線管の状態を維持することができる。一例においては、現在のX線管の状態において、管を積極的に加熱するためにX線を発生させる必要がない。別の例においては、X線管におけるX線の発生を、いかなる変更も伴わずに継続することができる。
【0102】
スキャンの前にX線管のウォームアップが望ましいと判断された場合、906において、X線管の初期(現在)温度を推定することができる。一例においては、熱モデルを使用して、X線管の初期温度を推定することができる。初期温度を、周囲温度、最後に較正された期間(最後の5時間など)における曝露履歴(管において発生させたX線の出力など)、ならびに管およびターゲットの熱伝達係数などのX線管の熱特性に基づいてモデル化することができる。モデルは、状態の経時変化に伴うターゲットの温度など、管の熱状態を推定することができる。したがって、ターゲットの温度は、管および他の関連の構成要素の温度と同じであるかもしれない。別の例において、ターゲットの温度は、管の温度とは異なるかもしれず、別個の初期ターゲット温度および初期管温度が推定されてもよい。別の例においては、X線管の温度を、X線管に収容された温度センサからの入力に基づいて推定することができる。
【0103】
908において、次の診断スキャンの開始時の所望のターゲット温度およびスキャンの開始までの時間を決定することができる。スキャンの開始時の望ましいターゲット温度、および管のウォームアップルーチンの完了から診断スキャンの開始までの残り時間を、終了基準と呼ぶことができる。終了基準は、一部のツールまたはシステムプリセットに組み込まれても、ユーザによって選択されてもよい。一例として、ユーザは、スキャンプロトコルまたはメニューに従って所望の温度を入力または選択することができる。また、ユーザは、次の診断スキャンの開始時間を入力することができる。
【0104】
一例においては、患者のスキャンに関して、ユーザおよび/またはシステムは、ウォームアップ手順の完了の5分後に管のターゲットが200℃を超えているべきであると決定することができる。これは、患者を準備し、解剖学的構造を配置し、造影剤注入の準備をするための充分な時間を可能にしつつ、ターゲットが、低温管限界を回避し、患者の撮像において最大の利用可能な管出力を可能にするように、依然として脆性モードを超えていることを保証することができる。別の例において、ユーザは、異なる患者または最初の診断曝露の前の手順に関してより多くの時間が必要とされる状況において、ウォームアップ手順の完了から200℃(スキャンの開始時)までの時間を10分に延長することを望むかもしれない。さらに別の例においては、焦点整列などの較正ツールが、焦点を平均動作管温度に整列させることで、患者スキャンのための動作を最適化し、時間の経過における整列の一貫性を改善するために、管のウォームアップの1分後にターゲットが330℃であることを必要とするかもしれない。
【0105】
910において、遮断プレートを、コリメータにおいてコリメータ開口を遮るように配置することができる。遮断プレート(
図8Bの遮断プレート806など)を、出口(患者前)コリメータ開口の前方に配置することができる。遮断プレートを、プレートに接触するX線放射を吸収することによって放射線の対象への到達を阻止することができるタングステンで製作することができる。遮断プレートを、コリメータの出力ポートを覆って、コリメータの開口および出力ポートを完全に遮断するように位置させることができ、ここで開口は、第1のコリメータブレードと第2のコリメータブレードとの間のギャップによって形成されている。遮断プレートを、第1のコリメータブレードおよび第2のコリメータブレードのうちの一方の下面に結合させることができ、下面は、コリメータの出力ポートに近い面である。遮断プレートは、第1のコリメータブレードの下部の第1のエッジを越えて延在でき、第1のエッジは、第2のコリメータブレードから遠いエッジである。
【0106】
遮断プレートは、コリメータの出力ポートに完全に重なることができ、コリメータ内の充分な遮蔽と相俟って、開いたポートを通ってコリメータアセンブリから漏れる間接的な散乱および迷放射線は無視できる。したがって、コリメータブレードを、特定の最小開口を維持し、ビームを完全には遮らないように設計することができる。したがって、遮断プレートが存在しない場合、望ましくない散乱放射線がコリメータから漏れる可能性がある。したがって、別個の遮断プレートを使用することにより、X線ビームを、管のウォームアップ中に対象に到達することがないように完全に遮ることができる。
【0107】
912において、管のウォームアップのためにX線放射を開始することができる。例えば、放射源(
図1および
図2の104など)を作動させることができる。X線ビームを、対象へと到達する前に遮断プレートによって減衰させることができる。このX線放射は、スキャンには使用されていない。914において、閉ループシステムを介してX線の放射線量を調整することにより、X線管の温度を調整することができる。(ステップ908において決定された)ウォームアップの終了基準、ならびに初期のX線管およびX線ターゲットの温度を、熱管理モジュールへの入力として使用することができる。熱管理モジュールは、時間の経過に伴う管の熱状態のモデルを含む。開始温度条件およびX線管の熱モデルに鑑みて、熱管理モジュールは、所望の時間後に管のターゲットを温度目標に一致させる特定のウォームアップ曝露のシーケンスを計算することができる。ウォームアップシーケンスを、終了基準に対する管の実際の状態に合わせて自動的に調整することができる。一例においては、初期のターゲット温度に基づいて、モジュールは、管を所望の温度まで暖めるために望まれる充分なエネルギを供給するために、管へともたらされる(管の電圧および電流の形態の)電力の大きさを決定することができる。ターゲットの温度を、ウォームアップ段階において継続的に推定することができ、モジュールは、X線管の現在の温度に基づいて管の電力を調整することができる。
【0108】
一例として、温度がより速い速度で上昇する場合に、X線管へともたらされる電力を減らすことができる一方で、温度上昇速度が遅い場合には、管の電力を増やすことができる。モジュールが、X線管の熱モデルを使用して、ウォームアップの終了と診断スキャンの開始との間の時間枠における温度の低下を予測し、これに従って、ウォームアップ段階の終わりにおいて達成される最終温度を調整することができる。ウォームアップ段階の終わりにおける到達温度は、ウォームアップの終わりから診断スキャンの開始までの時間における熱損失および温度低下を考慮して、診断スキャンの望ましい温度範囲よりも高くてよい。例として、ウォームアップ期間の終了から5分後に200℃で診断スキャンを開始すべき場合、(管の積極的な加熱を中止したときに)診断スキャン前の5分間における放熱によって診断スキャンの開始時の温度が200℃になるように、ウォームアップ期間の終了温度を220℃に調整することができる。このようにして、X線管のコンディショニングの閉ループ制御により、診断スキャンの開始時に所望の温度に到達することができる。
【0109】
管のウォームアップが特定の目標を達成するために必要であるよりも長く実行されることがないことで、システムの効率を向上させることができる。また、閉ループ制御により、終了状態(診断スキャンの開始)の正確な制御を改善でき、したがって低温管限界または管冷却遅延を回避することができる。また、管が必要以上のエネルギを受け取ることがなく、したがって管への不要なストレスを軽減することができる。
【0110】
たとえ適応的な管のウォームアップを備えても、オペレータは、低温制約を回避するために、必要に応じて、管のコンディショニングを開始させることを依然として必要とする可能性がある。システムが、患者の段取りとは無関係に、あるいはシステムにおける通常のワークフローの一部として自動的に、手動での管のウォームアップを実行できるワークフローをサポートすることが望ましいと考えられる。
【0111】
管のコンディショニングのためにX線が発生させられている間に、916において、撮像スキャンの対象(
図2の対象204など)を、次の診断スキャンのために準備することができる。対象を、可動テーブル(
図2のテーブル228など)上に位置させることができる。テーブルモータコントローラが、対象の適切な部分が撮像のためにガントリ内に位置するように、テーブルを移動させることができる。造影剤を撮像対象へと注入することができる。造影剤は、特定の解剖学的構造に関して特定的に取得される画像のコントラストを向上させることができる。このステップは、随意によるステップであり、造影剤を使用せずに診断スキャンを実行してもよい。X線ビームが対象に到達しないように遮蔽されているため、対象の準備を、対象を放射線に曝すことなく管のウォームアップと同時に行うことができる。
【0112】
管のウォームアップの最中に、診断スキャンの実行のためのスキャンパラメータを設定することができる。ユーザは、スキャンプロトコルまたはメニューに従ってスキャンパラメータを入力または選択することができる。スキャンパラメータは、スキャン中に使用されるフィルタの種類および順序を含むことができる。フィルタの種類を、撮像される撮像対象の解剖学的構造に基づいて選択することができる。パラメータは、スキャンタイミングの設定も含むことができる。一例として、スキャンタイミングは、各部分の撮像に関する開始時間および継続時間を含むことができる。撮像対象の解剖学的情報を、演算デバイスのメモリへとロードすることができる。解剖学的情報は、事前のスキャンから取得可能である。解剖学的情報は、以前のスカウトスキャンまたは局所スキャンから取得されてよい。このステップは、対象の適切な部分が撮像のためにガントリ内に位置するように、可動テーブルによって撮像対象を移動させることをさらに含むことができる。
【0113】
918において、このルーチンは、ウォームアップ段階の終わりにおいて所望のターゲット温度に達したかどうかを判断することを含む。すでに述べたように、ウォームアップ段階の終わりにおけるターゲットの所望の温度は、診断スキャンの開始時の所望の温度よりも高くてよい。ウォームアップ期間の終わりにおいて所望のターゲットの温度に到達していないと判断された場合、920において、X線の発生を、管温度の閉ループ制御において続けることができる。
【0114】
ウォームアップ段階の終わりにおいて所望のターゲット温度に到達したと判断された場合、921において、放射源を停止させることによってX線の発生を中断させることができる。922において、遮断プレートをX線ビームの経路の外へと移動させ、診断スキャンにおいて使用されるべきフィルタをビームの経路へと移動させることができる。ボウタイフィルタを含むキャリッジに結合させたモータを動作させることにより、ボウタイフィルタをX線ビームの経路に配置することができる。フィルタの種類は、対象の現時点の撮像部分の解剖学的構造に基づいて決定されてよい。キャリッジを、X線ビームの平面に垂直な平面内でシャフトに沿って移動させて、ボウタイフィルタをビーム内に配置することができる。
【0115】
924において、放射源を作動させることによってX線の発生を開始させることができ、診断スキャンを、設定されたスキャンパラメータに従って開始させることができる。このようにして、診断スキャンの開始前に、X線管においてX線を発生させることによってX線管をウォームアップすることができ、発生させるX線の出力を、X線管の温度の閉ループ制御によって調整することができ、X線管のウォームアップの最中に、X線ビームの経路に遮断プレートを配置することにより、X線ビームをコリメータから出ないように遮ることができる。
【0116】
図10は、スキャン前のX線管の温度の開ループ制御を説明するブロック
図1000を示している。1002において、スキャンの前に実行されるX線管のコンディショニングの終了基準を、ユーザによる入力またはシステムによる入力のいずれかとして定義することができる。終了基準は、次のスキャンの開始時のX線ターゲットの温度、および管のコンディショニング(本明細書において、ウォームアップとも呼ばれる)段階の終了から次のスキャンの開始までの時間を含むことができる。
【0117】
終了基準が定義されると、1004において、システムは、終了基準を達成するためにウォームアップ段階においてX線管へともたらすべきエネルギの量を計算することができる。もたらすべきエネルギの量を決定するために、1012において、システムは、熱モデルおよび/またはX線管温度センサを介して現在のX線管の温度を調べる。システムは、現在の温度および終了基準を入力とし、X線管へともたらすべきエネルギの量を出力とするルックアップテーブルを使用して、もたらすべきエネルギの量を決定することができる。
【0118】
1006において、システムは、X線管へともたらすべきエネルギの量を、特定のX線ウォームアップ曝露に変換することができる。エネルギを、単一の連続的なX線曝露として与えることができ、あるいは一連の個別のX線曝露として与えることができる。各々の曝露においてもたらされる電力を、X線管へともたらすべきエネルギの量および曝露の持続時間に基づいて推定することができる。X線管へともたらすことができる最大可能電力などのシステム制約を考慮して、システムは、X線管へともたらすべきエネルギの量を入力とするルックアップテーブルおよび各々の(または、唯一の)X線曝露においてもたらされる電力に基づいて、管のウォームアップ段階においてもたらされる電力を決定することができる。
【0119】
1008において、ユーザは、放射源を作動させて、管内でX線を発生させることができる。発生したX線の出力が、最終基準を満たすために望ましいエネルギの量を与えることができる。X線管のコンディショニング中に、X線ビームの患者への到達を阻止するために、遮断プレートをX線ビームコリメータ管内に配置することができる。1010において、患者を後続の診断スキャンに向けて準備することができ、終了基準に到達すると、診断スキャンを実行することができる。あるいは、較正スキャン(患者が存在しても、存在しなくてもよい)を実行してもよい。
【0120】
ひとたびスキャンが完了すると、X線管は同じ患者または次の患者の次のスキャンのために直ちに準備され、システムが現在のX線管の温度を調べ、X線管の閉ループ温度制御に使用する。
【0121】
前述のように、診断スキャンの前にX線ターゲット温度に到達することが望まれる。所望の熱範囲よりも下で動作させると、X線管ターゲット材料が脆くなり、したがってターゲットにおける亀裂の数を増加させ、ターゲットの劣化につながる可能性がある。所望の熱範囲よりも上で動作させると、システムが過熱し、診断スキャン時に充分に迅速な冷却が不可能である。X線管を所望の温度範囲を外れて動作させると、X線ターゲット材料の長期信頼性が低下し、管の保守に関する直接コストが高くなり、ユーザの間接コストが高くなり、システムが最適動作範囲よりも上または下のいずれかで動作している場合の動作電流値の範囲も減少する。
【0122】
典型的なコンディショニング手順は、通常は最適な動作状態に到達するために必要な実際のエネルギレベルを考慮せずに、X線管ターゲットへと熱エネルギを放出する可能性がある。これは、実際の診断スキャンの開始時に管がこの過剰に加えられた熱エネルギから充分に冷める必要があるため、ピーク能力へのアクセスを制限する可能性がある。患者の解剖学的構造のスキャンを含むCTベースの手順において、X線放射に対する患者の吸収線量のレベルが、手順の適切性を考慮するために重要である。スキャン時またはスキャン前に、患者の放射線被ばくが所定のレベルを超えないことを保証するために、適切な措置を講じることができる。
【0123】
診断スキャンに先立って、1回以上のスカウトスキャンを実行することができる。直後の診断スキャンのためにX線管をコンディショニングするために、より高出力のX線ビームをスカウトスキャンの際に使用することができる。
【0124】
スカウトスキャンの直前に、所望のX線ターゲット温度範囲に到達するための目標エネルギレベルを、スキャンパラメータ最適化アルゴリズムへの入力としてもたらすことができる。さらに、患者の放射線吸収線量の限界を、スキャンパラメータ最適化アルゴリズムへの入力として使用することができる。次いで、アルゴリズムは、後続のスカウトスキャンのスキャンパラメータを、目標エネルギをX線管に与えて管を次の診断スキャンに向けて最適にコンディショニングする一方で、患者の被ばくをスカウトスキャンについてユーザによって選択された吸収線量レベルに抑えることができるように、調整することができる。スカウトスキャンの際に対象に到達するX線ビームの経路に線質硬化フィルタを追加することにより、対象に到達するビームを減衰させることができ、したがって対象の放射線被ばくを減らすことができる。スカウトスキャンの際により高出力のビームを使用することにより、スカウトスキャンの画質を向上させることができるとともに、後続の診断スキャンのスキャン範囲を、自信を持って定める能力の維持、および根拠をなすスカウト画像のコントラスト対ノイズ比の維持など、スカウトモードの重要な属性も維持または改善することができる。
【0125】
図11は、診断スキャンの前にX線管をコンディショニングするためにスカウトスキャンを使用するための典型的な方法1100を示している。方法1100を、診断スキャンの完了後に実行することができ、さらには/あるいは診断スキャンが間近である旨の知らせを(例えば、オペレータを介して)受け取ったときに実行することができる。
【0126】
1102において、このルーチンは、スキャンの前にX線管のウォームアップが望ましいかどうかを判断することを含む。X線管のウォームアップは、X線管およびX線ターゲットの温度を所望の温度範囲まで高めることを含むことができる。一例において、所望の温度範囲は、200℃~300℃の間であってよい。診断スキャンの前に、ターゲット材料が望ましい温度範囲に到達するように、X線管のウォームアップが望ましいかもしれない。所望の温度範囲を下回ると、ターゲット材料が脆くなる可能性があり、したがって高エネルギの電子ビームがターゲットに衝突すると、ターゲットの劣化を生じさせるような疲労破壊につながる可能性がある。スキャン時により高いX線出力を使用することで、画質の向上をもたらすことができる。
【0127】
X線管のウォームアップが望まれないと判断された場合、1104において、現在のX線管の状態を維持することができる。一例においては、現在のX線管の状態において、管を積極的に加熱するためにX線を発生させる必要がない。別の例においては、X線管におけるX線の発生を、いかなる変更も伴わずに継続することができる。
【0128】
スキャンの前にX線管のウォームアップが望まれると判断された場合、1106において、許容される患者の吸収線量範囲を、オペレータからの入力として受け取ることができる。許容される吸収線量範囲の上限は、スキャン対象に有害な影響を与えることがあり得ないX線被ばくのレベルに対応することができる。一例として、対象に接触するX線放射の被ばくレベルを、式1によって与えることができる。
【0129】
【数1】
ここで、CTDI
Volは、ユーザが定める患者の許容X線吸収線量範囲の上限であり、
【0130】
【数2】
は、参照技術における対象の吸収線量であって、
【0131】
【数3】
は、X線管における電圧(kV)に基づき、Scout powerは、X線管における電圧(kV)およびX線管における電流(mA)の関数であり、Cradle speedは、対象を載せたベッドの速度(単位は、mm/秒)であり、apertureは、システムのアイソセンタにおけるビーム開口である。一例として、患者の放射線被ばくは、患者の吸収線量またはスカウトスキャン中の放射線(scoutCTDIvol)であってよい。患者の被ばくは、CTシステムによって取得されたものとは異なってもよい。1108において、診断スキャンの前に実行されるべきスカウトスキャンの回数を決定することができる。オペレータは、キーボードまたはオペレータコンソールのタッチスクリーンを介して、所望のスカウトスキャンの回数を入力することができる。一例として、2回のスカウトスキャンを、1回は対象の側面から、もう1回は対象の正面から実行することができる。
【0132】
1110において、スカウトスキャンのスキャン範囲を決定することができる。スカウトスキャンの継続時間を、スキャン範囲とクレードル速度との組み合わせによって決定することができる。例として、クレードルは、最低速度と最高速度との間で移動可能であってよい。スカウトスキャンの継続時間は、クレードル速度の関数であってよい。スカウトスキャンの継続時間は、最低のクレードル速度において最も長くなる可能性がある。したがって、スキャン範囲は、スカウトスキャンの最大継続時間を設定することもできる。
【0133】
1112において、X線管の初期(現在)温度を、後続の診断スキャンの開始時の所望のX線ターゲット温度(本明細書において、最終温度と呼ばれる)とともに決定することができる。一例においては、熱モデルを使用して、X線管の初期温度を推定することができる。初期温度を、周囲温度、最後に較正された期間(最後の5時間など)における曝露履歴(管において発生させたX線の出力など)、ならびに管およびターゲットの熱伝達係数などのX線管の熱特性に基づいてモデル化することができる。モデルは、状態の経時変化に伴うターゲットの温度など、管の熱状態を推定することができる。したがって、ターゲットの温度は、管および他の関連の構成要素の温度と同じであるかもしれない。別の例において、ターゲットの温度は、管の温度とは異なるかもしれず、別個の初期ターゲット温度および初期管温度が推定されてもよい。別の例においては、X線管の温度を、X線管に収容された温度センサからの入力に基づいて推定することができる。
【0134】
スキャンの開始時の望ましいターゲット温度、およびスカウトスキャンの完了から診断スキャンの開始までの残り時間を、終了基準と呼ぶことができる。終了基準は、一部のツールまたはシステムプリセットに組み込まれても、ユーザによって選択されてもよい。一例として、ユーザは、スキャンプロトコルまたはメニューに従って所望の温度を入力または選択することができる。また、ユーザは、次の診断スキャンの開始時間を入力することができる。
【0135】
一例においては、患者のスキャンに関して、ユーザおよび/またはシステムは、スカウトスキャンの完了の5分後に管のターゲットが200℃を超えているべきであると決定することができる。これは、患者を準備し、解剖学的構造を配置し、造影剤注入の準備をするための充分な時間を可能にしつつ、ターゲットが、低温管限界を回避し、患者の撮像において最大の利用可能な管出力を可能にするように、依然として脆性モードを超えていることを保証することができる。別の例において、ユーザは、困難な患者または診断曝露の前の手順に関してより多くの時間が必要とされる状況において、スカウトスキャンの完了から200℃(スキャンの開始時)までの時間を10分に延長することを望むかもしれない。
【0136】
1114において、所望のX線ターゲット温度を達成するためにX線管に与えられるべきエネルギの量を、初期温度および後続の診断スキャンの開始時の所望のX線ターゲット温度(最終温度)に基づいて推定することができる。所望のエネルギ量を、初期温度、最終温度、およびスカウトスキャンの完了から診断スキャンの開始までの時間の関数として推定することができる。一例において、2回以上のスカウトスキャンが連続して実行される場合、所望のエネルギを分割し、2回以上の分割にて与えることができる。スカウトスキャンの最中にX線管に与えられるエネルギを、式2によって与えることができる。
【0137】
【数4】
ここで、energyは、スカウトスキャンの最中にX線管に与えられるエネルギの量であり、scout powerは、X線管電圧およびX線管電流の大きさの数学的な積であり、cradle speedは、対象を載せたベッドの速度(単位は、mm/秒)であり、scout lengthは、実行される数回のスカウトスキャンの合計時間である。scout lengthは、実行されるスカウトスキャンの回数および各々のスカウトスキャンの継続時間の関数であってよい。
【0138】
1116において、スキャンパラメータ最適化アルゴリズムを使用し、(ステップ1106で決定された)許容される患者吸収線量範囲、(ステップ1108で決定された)スカウトスキャンの回数、(ステップ1110で決定された)各々のスカウトスキャンのスキャン範囲、および(ステップ1114で決定された)X線ターゲットのウォームアップのための所望のエネルギに基づいて、スカウトスキャンのスキャンパラメータを決定することができる。所望の最終的な熱状態を達成するために管へともたらされるべき電力は、X線管のウォームアップのための所望のエネルギおよびスカウトスキャンの持続時間の関数である。アルゴリズムは、スキャンの過程において管へともたらされるべき電力を推定し、その電力に対応するX線管の電流および電圧を決定することができる。したがって、異なる出力レベルは、異なるX線の線量をもたらす。
【0139】
上述の入力に基づいてスキャンパラメータ最適化アルゴリズムによって定められるスキャンパラメータは、X線管電圧(kV)、X線管電流(kA)、スキャン中のクレードル速度(mm/秒)、システムのアイソセンタにおけるビーム開口、ビーム焦点サイズ、スキャン視野、使用される1つ以上のフィルタ、などを含むことができる。スキャンパラメータ最適化アルゴリズムは、スカウトスキャンの開始前にスキャンパラメータを自動的に定めることができる。
【0140】
スカウトスキャンパラメータは、システムのエネルギ需要およびユーザによって設定された患者の吸収線量限度に合わせて調整される。これを達成するために、アルゴリズムは、システムの熱入力需要、ユーザが選択した吸収線量範囲、および独立して設定されたスキャン範囲に調和するように上述のスキャンパラメータを自動的に選択し、患者の吸収線量範囲内でスキャン範囲の過程において入力エネルギ目標を満足させるスカウトスキャンを生成する。例として、エネルギ目標は、すべての有効なスカウトスキャン範囲50~2000mmにわたって25~400kJの範囲にあってよい。許容できる(ユーザが設定した)患者の吸収線量レベルは、0.02mGy~0.5mGyの範囲にあってよい。例として、エネルギ需要が200kJであり、スカウトスキャン範囲が450mmに独立して設定され、ユーザが0.02~0.06mGyの間のscoutCTDIvol範囲を選択した場合、アルゴリズムは、0.04mGyの吸収線量において200kJのエネルギを付与する80kVのX線管電圧、555mAのX線管電流、および100mm/秒のクレードル速度を自動的に選択することができる。この例は、付与されるエネルギおよび患者の吸収線量という2つの目標を満たすためのアルゴリズムによるシステムパラメータの選択方法の背後にある機構を示している。
【0141】
図12は、スキャンプロトコルのガイドされた選択を説明するブロック
図1200を示している。スキャンパラメータ最適化アルゴリズム1202を使用して、スカウトスキャンパラメータ1212を決定することができる。スキャンパラメータ最適化アルゴリズム1202への入力は、最適なX線ターゲット温度を達成するための所望のエネルギ1204、対象の最大許容放射線吸収線量レベル(または、範囲)1206、各スキャンの継続時間などのスカウトスキャンごとのスキャン範囲1208、および所望のエネルギ1204を付与するために実行されるべきスカウトスキャンの回数1210を含むことができる。入力に基づいて、スキャンパラメータ最適化アルゴリズム1202は、スキャンの全期間にわたって所望のエネルギのレベルを付与できるように、各々のスカウトスキャンの過程においてもたらされるべき電力を最適化することができる。一例として、アルゴリズムは、ルックアップテーブルを使用し、各々のスキャンにおいてもたらされるべき電力に基づき、出力としてスカウトスキャンパラメータ1212を決定することができる。アルゴリズム1202によって自動的に定められるスカウトスキャンパラメータは、X線管電圧(kV)、X線管電流(kA)、スキャン中のクレードル速度(mm/秒)、システムのアイソセンタにおけるビーム開口、ビーム焦点サイズ、スキャン視野、使用される1つ以上のフィルタ、などを含むことができる。
【0142】
図11に戻ると、1118において、アルゴリズムによって定められたスキャンパラメータに基づいて、スカウトスキャンを開始することができる。スカウトスキャンのためのX線ビームの生成に先立って、ボウタイフィルタ(
図3のボウタイフィルタ320など)および線質硬化フィルタ(例えば、
図3の線質硬化フィルタ302など)を含むキャリッジに結合させたモータを動作させることによって、ボウタイフィルタおよび線質硬化フィルタをX線ビームの経路に位置させることができる。キャリッジを、X線ビームの平面に垂直な平面内でシャフトに沿って移動させて、ボウタイフィルタおよび線質硬化フィルタをビーム内に配置することができる。コントローラが、シャフトおよびキャリッジを所望の位置へと移動させるようにモータを作動させることができる。線質硬化フィルタは、より低エネルギの放射線を遮ってビームを減衰させることにより、スカウトスキャン時の患者の放射線被ばくを減少させることができる。線質硬化フィルタを使用することにより、スカウトスキャンの際により高出力のX線ビームを使用してX線管を加熱しつつ、対象の吸収線量レベルをユーザ指定の吸収線量範囲内に維持することができる。線質硬化フィルタは、ボウタイフィルタに少なくとも部分的に重なってよく、ビームは最初に線質硬化フィルタを通過し、その後にボウタイフィルタに進入することができる。ひとたびフィルタがビームの経路に配置されると、放射源を作動させ、X線を発生させることができる。スカウトスキャンのデータセットが、検出器(
図2の108など)から、撮像対象からの透過放射線信号の受光時に取得される。
【0143】
このようにして、キャリッジは、線質硬化フィルタおよび1つ以上のボウタイフィルタと、診断スキャンに先行するスカウトスキャンの際に放射源と撮像対象との間の放射ビームの経路に線質硬化フィルタと1つ以上のボウタイフィルタのうちの1つとを選択的に配置するようにキャリッジを移動させるフィルタ駆動システムとを含むことができ、スカウトスキャンは、選択された患者放射線吸収線量制限およびX線管のウォームアップのためにX線管に与えられるべき放射源のエネルギの量に基づいて計算されたスキャンパラメータに従って実行される。
【0144】
1120において、このルーチンは、スカウトスキャンが終了したかどうかを判断することを含む。スカウトスキャンの終了を、ステップ1116においてアルゴリズムによって決定されたスキャンパラメータに基づいて判断することができる。スカウトスキャンが終了していないと判断された場合、1121において、スカウトスキャンを継続し、X線管を加熱することができる。一例においては、2回以上のスカウトスキャンを連続して実行することができる。各々のスカウトスキャンのスキャンパラメータを、アルゴリズムによって定めることができる。
【0145】
スカウトスキャンが終了したと判断された場合、1122において、スカウトスキャンから取得されたデータセットが表示および保存される。一実施形態においては、対象の異なる部分から取得されたデータセットを再構成し、画像を形成することができる。取得されたデータセットおよび処理された画像を、撮像システムのストレージに保存でき、さらなるスキャンは実行されなくてよい。
【0146】
1122において、放射源を作動させることによってX線の発生を開始させることができ、診断スキャンを、設定されたスキャンパラメータに従って開始させることができる。ボウタイフィルタを含むキャリッジに結合させたモータを動作させることにより、ボウタイフィルタをX線ビームの経路に配置することができる。線質硬化フィルタを、X線ビームの経路の外へと移動させることができ、少なくとも1つのボウタイフィルタを、X線ビームの経路に位置させることができる。フィルタの種類は、対象の現時点の撮像部分の解剖学的構造に基づいて決定されてよい。診断スキャンにおいては、より大きなビームサイズが使用され、したがって線質硬化フィルタはもはや使用されなくてよい。一例において、診断スキャンに使用されるボウタイフィルタは、スカウトスキャンで使用されるボウタイフィルタと同じであってよい。別の例において、診断スキャンに使用されるボウタイフィルタは、スカウトスキャンに使用されるボウタイフィルタとは違ってよい。キャリッジを、X線ビームの平面に垂直な平面内でシャフトに沿って移動させて、ボウタイフィルタをビーム内に配置することができる。
【0147】
このようにして、診断スキャンの開始前に、患者の吸収線量限度、診断スキャンに先立つ1回以上のスカウトスキャンの継続時間、スカウトスキャンの回数、および診断スキャンの開始時のx線管の最終温度の各々について、ユーザ入力を受け取ることができ、1回以上のスカウトスキャンにおいてX線管に与えられるべきエネルギの量を、X線管温度の現在の温度、x線管の最終温度、および診断スキャンの開始時間に基づいて推定することができ、1回以上のスカウトスキャンのスキャンパラメータを、患者の吸収線量限度および1回以上のスカウトスキャンにおいてX線管に与えられるべきエネルギの量に基づいて計算することができ、ビーム線質硬化フィルタを、X線ビームの経路に配置することができ、計算されたスキャンパラメータに従って1回以上のスカウトスキャンを実行して、X線管をウォームアップすることができる。
【0148】
図13は、スカウトスキャンおよびその後の診断スキャンの最中のX線ターゲット温度の変動の典型的なプロット1300を示している。線1302が、熱モデルまたはX線管に収容された温度センサの出力を介して推定されたX線ターゲット温度の変動を示している。診断スキャンに関して、ターゲットの所望の温度範囲は、温度T2と温度T3との間である。
【0149】
スカウトスキャンを、時刻t1において開始させることができる。スカウトスキャンに先立ち、ターゲットの温度は、温度T1と温度T2との間であってよい。診断スキャンが温度T2未満で実行されると、ターゲット材料が脆くなり、ターゲットに衝突する高エネルギの電子ビームが疲労破壊を引き起こし、ターゲットの劣化が発生する可能性がある。スカウトスキャン時のX線発生の最中に、時刻t2においてターゲットの温度が温度T3を超えて上昇する可能性がある。T3を超えての診断スキャンの実行は、X線管の劣化を引き起こす可能性がある。
【0150】
時刻t3において診断スキャンが実行されるときまでに、ターゲットの温度は、ターゲット材料が延性となり、高出力のX線ビームを管に悪影響を及ぼすことなく診断スキャンに使用することができるT1とT2との間の最適温度範囲まで低下できる。例として、T1は100℃であってよく、T2は200℃であってよく、T3は300℃であってよい。
【0151】
このようにして、スキャンパラメータ最適化アルゴリズムは、X線管システムに目標のレベルの熱エネルギを与えると同時に、患者の被ばくを目標の吸収線量範囲内のユーザによって選択されたX線吸収線量とするように、スカウトスキャンのいくつかのスキャン技術パラメータ(管電圧、クレードル速度、電流、ボウタイフィルタ、X線ビームの開口、など)を自動的に定めることができる。このアルゴリズムは、通常の患者ワークフローの一部である手順におけるスカウトスキャンの画質を改善しつつ、この二重のタスクを達成する。診断スキャン時のX線管の最適な熱条件は、X線管の信頼性の向上に直接つながり、交換の商業コストの削減および顧客満足度の向上を同時にもたらす。
【0152】
診断スキャンに先立ってX線管を熱的にコンディショニングすることにより、スキャンにおいてCTシステムの最大出力能力を使用することができ、したがって診断画像の品質の一貫性が向上する。X線管のコンディショニングにスカウトスキャンを使用することで、スキャンのワークフローの通常の1日において、場合によっては患者スキャンスケジュールの一部として行われ、CT技術者がタイミングを管理しなければならない別途の追加の室外での管のウォームアップの必要性を低減し、あるいは無くすことにより、ワークフローを改善することが可能である。
【0153】
図1~
図5D、
図7、
図8A、および
図8Bは、さまざまな構成要素の相対的な配置の典型的な構成を示している。互いに直接接触して示され、あるいは直接結合して示されている場合、そのような要素を、少なくとも一例において、それぞれ直接接触または直接結合していると称することができる。同様に、互いに連続または隣接して示されている要素は、少なくとも一例において、それぞれ互いに連続または隣接していてよい。一例として、互いに面同士を接触させて位置している構成要素を、面同士を接触させていると称することができる。別の例として、間に空間だけを存在させ、間に他の構成要素を存在させずに互いに離れて位置している要素を、少なくとも一例において、そのように称することができる。さらに別の例として、互いに上/下に示され、互いに反対側に示され、あるいは互いに左/右に示されている要素を、お互いに対してそのように称することができる。さらに、図に示されるように、少なくとも一例においては、最も上方の要素または要素の最も上方の点を、構成要素の「上部」と称することができ、最も下方の要素または要素の最も下方の点を、構成要素の「下部」と称することができる。本明細書において使用されるとき、上部/下部、上/下、および上方/下方は、図の垂直軸を基準にでき、図の要素のお互いに対する配置を説明するために使用可能である。したがって、他の要素の上方に示されている要素は、一例において、他の要素の垂直上方に配置される。さらに別の例として、図中に示された要素の形状を、それらの形状を有する(例えば、円形である、直線状である、平坦である、湾曲している、丸みを帯びている、面取りされている、斜めである、など)と称することができる。さらに、互いに交差して示されている要素を、少なくとも一例において、交差要素または互いに交差していると称することができる。またさらに、別の要素の内部に示され、あるいは別の要素の外部に示されている要素を、一例において、そのように称することができる。
【0154】
一例においては、撮像システムのための方法が、診断スキャンに先立ち、放射源のX線管をコンディショニングするために、X線管の初期温度および診断スキャンのためのX線管の所望の温度に基づいて調整されるX線を、X線管において発生させるステップを含む。上記の例の方法は、追加で、または随意により、閉ループ制御システムによって、X線管の初期温度および終了基準に基づいて、X線管のコンディショニング時にX線管へともたらされるべきエネルギの量を推定するステップをさらに含む。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、X線管の初期温度は、熱モデルによって推定され、初期温度は、周囲温度、最後のしきい値期間においてX線管で発生させたX線の電力、およびX線管の熱特性のうちの1つ以上に基づいてモデル化される。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、終了基準は、診断スキャンの開始時のX線管の所望の温度、およびX線管のコンディショニングの終了と診断スキャンの開始との間の時間を含む。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、診断スキャンの開始時のX線管の所望の温度は、X線管のコンディショニングの終了におけるX線管の最終温度、X線管の熱特性、およびX線管のコンディショニングの終了と診断スキャンの開始との間の時間の関数である。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、発生させるX線の調整は、X線管のコンディショニングの際に、推定されたエネルギの量に基づいてX線管へともたらされる電力を調整することを含む。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、もたらされるべき電力を、X線管のコンディショニングの際に、単一のX線曝露または一連の連続的なX線曝露においてもたらすことができる。上記の例のいずれかまたはすべては、追加で、または随意により、X線の発生時に、X線ビームの経路に遮断プレートを配置して、X線がコリメータから出ないように阻止するステップをさらに含む。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、コリメータは、1つ以上のフィルタを介してX線管の窓からX線ビームを受け取る。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、遮断プレートは、コリメータの出力ポートを覆って配置され、コリメータの開口および出力ポートを完全に遮り、開口は、第1のコリメータブレードと第2のコリメータブレードとの間のギャップによって形成されている。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、遮断プレートは、第1のコリメータブレードおよび第2のコリメータブレードのうちの一方のコリメータブレードの下面に結合させられ、この下面は、コリメータの出力ポートに近い。上記の例のいずれかまたはすべては、追加で、または随意により、X線管のコンディショニングの終わりにおけるX線管の最終温度へのX線管の温度の上昇に応答して、診断スキャンの開始までX線の発生を中断させるステップをさらに含む。
【0155】
別の典型的な方法の撮像システムは、ギャップによって隔てられた第1のコリメータブレードおよび第2のコリメータブレードを含んでいるX線コリメータであって、ギャップはコリメータの開口を形成しているX線コリメータと、第1のコリメータブレードに結合させられ、X線ビームの経路に配置され、診断スキャンに先立つX線管のコンディショニングのためのX線の発生時にX線ビームをコリメータから出ないように遮る遮断プレートとを備える。上記の例の方法において、追加で、または随意により、X線管のコンディショニングは、診断スキャンの直前にX線管の温度をより高い温度へと上昇させることを含み、より高い温度は、X線ターゲットの延性状態に対応する。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、遮断プレートは、第1のコリメータブレードの下部に結合させられ、遮断プレートは、第1のコリメータブレードの下部の第1のエッジよりも延びており、第1のエッジは、第2のコリメータブレードから遠い。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、遮断プレートは、第1のコリメータブレードの下部に面同士で接触している。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、遮断プレートは、診断スキャンの際に、第1のコリメータブレードを移動させることによってX線ビームの経路の外へと動かされる。
【0156】
さらに別の例においては、撮像システムのための方法が、診断スキャンの開始に先立って、X線管においてX線を発生させることによってX線管をウォームアップするステップと、X線管の温度の閉ループ制御によって、発生させるX線の電力を調整するステップと、X線管のウォームアップ時に、遮断プレートをX線ビームの経路に配置することによってX線ビームをコリメータから出ないように遮るステップとを含む。上記の例の方法において、追加で、または随意により、温度の閉ループ制御は、X線管の初期温度を推定することと、初期温度に基づき、診断スキャンの開始においてX線管の最終温度を得るためにX線管へともたらすべきエネルギの量を推定するステップと、推定されたX線管へともたらすべきエネルギに基づいて、発生させるX線の電力を調整することとを含む。上記の例のいずれかまたはすべてにおいて、追加で、または随意により、発生させるX線の電力を調整することは、X線管におけるX線の発生時にX線管の電圧およびX線管の電流を調整することを含む。
【0157】
本明細書において使用されるとき、単数形で記載され、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語に続けられる要素またはステップは、とくに明示的に述べられない限り、そのような要素またはステップが複数存在することを排除しないと理解されるべきである。さらに、本発明の「一実施形態」への言及は、そこで述べられる特徴をやはり含むさらなる実施形態の存在を除外すると解釈されるべきではない。さらに、とくに明示的に述べられない限り、特定の性質を有する要素または複数の要素を「備える(comprising)」、「含む(including)」、または「有する(having)」実施形態は、その性質を有さない追加のそのような要素を含むことができる。「含む(including)」および「そこで(in which)」という用語は、それぞれの用語「備える(comprising)」および「そこで(wherein)」の平易な言葉での同等物として使用される。さらに、「第1の」、「第2の」、および「第3の」などの用語は、単にラベルとして使用され、それらの対象に数値的要件または特定の位置的順序を課すことを意図しない。
【0158】
本明細書は、本発明を最良の態様も含めて開示するとともに、あらゆる装置またはシステムの製作および使用ならびにあらゆる関連の方法の実行を含む本発明の実施を当業者にとって可能にするために、実施例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定められ、当業者であれば想到できる他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言から相違しない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言から実質的には相違しない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲の技術的範囲に包含される。
[実施態様1]
撮像システム(100)のための方法であって、
診断スキャンに先立ち、放射源(104)のX線管をコンディショニングするために、前記X線管の初期温度および前記診断スキャンのための前記X線管の所望の温度に基づいて調整されるX線を、前記X線管において発生させるステップ
を含む方法。
[実施態様2]
閉ループ制御システムによって、前記X線管の前記初期温度および終了基準に基づいて、前記X線管の前記コンディショニング時に前記X線管へともたらされるべきエネルギの量を推定するステップ
をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
前記X線管の前記初期温度は、熱モデルによって推定され、前記初期温度は、周囲温度、最後のしきい値期間において前記X線管で発生させたX線の電力、および前記X線管の熱特性のうちの1つ以上に基づいてモデル化される、実施態様2に記載の方法。
[実施態様4]
前記終了基準は、前記診断スキャンの開始時のX線管の前記所望の温度、および前記X線管の前記コンディショニングの終了と前記診断スキャンの前記開始との間の時間を含む、実施態様3に記載の方法。
[実施態様5]
前記診断スキャンの前記開始時の前記X線ターゲットの前記所望の温度は、前記X線管の前記コンディショニングの前記終了における前記X線管の最終温度、前記X線管の前記熱特性、および前記X線管の前記コンディショニングの前記終了と前記診断スキャンの前記開始との間の時間の関数である、実施態様4に記載の方法。
[実施態様6]
前記発生させるX線の調整は、前記X線管の前記コンディショニングの際に、前記推定されたエネルギの量に基づいて前記X線管へともたらされる電力を調整することを含む、実施態様2に記載の方法。
[実施態様7]
前記もたらされるべき電力を、前記X線管の前記コンディショニングの際に、単一のX線曝露または一連の連続的なX線曝露においてもたらすことができる、実施態様5に記載の方法。
[実施態様8]
前記X線の前記発生時に、X線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)の経路に遮断プレート(704)を配置して前記X線がコリメータ(412)から出ないように阻止するステップ
をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様9]
前記コリメータ(412)は、1つ以上のフィルタを介して前記X線管の窓から前記X線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)を受け取る、実施態様8に記載の方法。
[実施態様10]
前記遮断プレート(704)は、前記コリメータ(412)の出力ポート(418、812)を覆って配置され、前記コリメータの開口(414、424、444、464、484、816、826)および前記出力ポート(418、812)を完全に遮り、前記開口(414、424、444、464、484、816、826)は、第1のコリメータブレード(408、802)と第2のコリメータブレード(410、804)との間のギャップによって形成されている、実施態様8に記載の方法。
[実施態様11]
前記遮断プレート(704)は、前記第1のコリメータブレード(408、802)および前記第2のコリメータブレード(410、804)のうちの一方の下面に結合させられ、前記下面は、前記コリメータ(412)の前記出力ポート(418、812)に近い、実施態様8に記載の方法。
[実施態様12]
前記X線管の前記コンディショニングの前記終わりにおける前記X線管の前記最終温度への前記X線管の温度の上昇に応答して、前記診断スキャンの開始まで前記X線の発生を中断させるステップ
をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様13]
ギャップによって隔てられた第1のコリメータブレード(408、802)および第2のコリメータブレード(410、804)を含んでいるX線コリメータであって、前記ギャップは前記コリメータ(412)の開口(414、424、444、464、484、816、826)を形成しているX線コリメータ(412)と、
前記第1のコリメータブレード(408、802)に結合させられ、X線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)の経路に配置され、診断スキャンに先立つX線管のコンディショニングのためのX線の発生時に前記X線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)を前記コリメータ(412)から出ないように遮る遮断プレート(704)と、
を備える撮像システム(100)。
[実施態様14]
前記X線管の前記コンディショニングは、前記診断スキャンの直前に前記X線管の温度をより高い温度へと上昇させることを含み、前記より高い温度は、X線ターゲットの延性状態に対応する、実施態様13に記載のシステム。
[実施態様15]
前記遮断プレート(704)は、前記第1のコリメータブレード(408、802)の下部に結合させられ、前記遮断プレート(704)は、前記第1のコリメータブレード(408、802)の前記下部の第1のエッジを過ぎて延びており、前記第1のエッジは、前記第2のコリメータブレード(410、804)から遠い、実施態様13に記載のシステム。
[実施態様16]
前記遮断プレート(704)は、前記第1のコリメータブレード(408、802)の前記下部に面同士で接触している、実施態様15に記載のシステム。
[実施態様17]
前記遮断プレート(704)は、前記診断スキャンの際に前記第1のコリメータブレード(408、802)を移動させることによって前記X線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)の前記経路の外へと動かされる、実施態様15に記載のシステム。
[実施態様18]
撮像システム(100)のための方法であって、
診断スキャンの開始に先立って、
X線管においてX線を発生させることによって前記X線管をウォームアップするステップと、
前記X線管の温度の閉ループ制御によって前記発生させるX線の電力を調整するステップと、
前記X線管の前記ウォームアップ時に、遮断プレート(704)をX線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)の経路に配置することによって前記X線ビーム(106、342、415、425、445、465、485、808)をコリメータ(412)から出ないように遮るステップと、
を含む方法。
[実施態様19]
前記温度の前記閉ループ制御は、前記X線管の初期温度を推定することと、前記初期温度に基づき、前記診断スキャンの前記開始において前記X線管の最終温度を得るために前記X線管へともたらすべきエネルギの量を推定するステップと、前記推定された前記X線管へともたらすべきエネルギに基づいて、前記発生させるX線の電力を調整することとを含む、実施態様18に記載の方法。
[実施態様20]
前記発生させるX線の電力を調整することは、前記X線管における前記X線の前記発生時に前記X線管の電圧および前記X線管の電流を調整することを含む、実施態様18に記載の方法。
【符号の説明】
【0159】
100 CTシステム
102 ガントリ
104 X線放射源
106 X線ビーム、X線放射
108 検出器アレイ
110 画像処理ユニット
112 対象
200 撮像システム
202 検出器素子
204 対象
206 回転中心
208 制御機構
210 X線コントローラ
212 ガントリモータコントローラ
214 データ取得システム(DAS)
216 コンピューティングデバイス、コンピュータ
218 ストレージデバイス
220 オペレータコンソール
224 画像保管通信システム(PACS)
226 テーブルモータコントローラ
228 可動テーブル
230 画像再構成器
232 ディスプレイ
240 キャリッジ、フィルタハウジング
241 第1のボウタイフィルタ
242 第2のボウタイフィルタ
243 線質硬化フィルタ
300 不等角投影図
302 線質硬化フィルタ、キャリッジ
304 支持構造、支持プレート
306 第1の金属シート
308 第2の金属シート
312 ボルト
315 統合型フィルタアセンブリ
318 キャリッジ
320 第1のボウタイフィルタ
321 第1のスロット
322 第2のボウタイフィルタ
323 第2のスロット
324 アルミニウムフィルタ
333 タブ
335 切り欠き
340 矢印
342 X線ビーム
345 凹部
400 コリメーション装置の第1の実施形態
408 第1のコリメータブレード
410 第2のコリメータブレード
412 コリメーション装置
414 開口
415 X線ビーム
418 出力ポート(開口部)
420 コリメーション装置の第2の実施形態
424 開口
425 X線ビーム
440 コリメーション装置の第3の実施形態
444 開口
445 X線ビーム
460 コリメーション装置の第4の実施形態
464 開口
465 X線ビーム
480 コリメーション装置の第5の実施形態
484 開口
485 X線ビーム
500 フィルタアセンブリ
501 X線ビーム
502 第1のモータ
503 第2のモータ
504 キャリッジ
505 第1のシャフト
506 第2のフィルタ
507 第3のフィルタ
508 第1のフィルタ
509 第2のシャフト
510 フィルタハウジング
511 ボールねじ
512 ボールねじ
513 線質硬化フィルタ
520 フィルタアセンブリの第1の位置
523 ギャップ
540 フィルタアセンブリの第2の位置
560 フィルタアセンブリの第3の位置
580 フィルタアセンブリの第4の位置
590 フィルタ駆動システム
600 方法
700 コリメータブレードアセンブリ
702 コリメータブレード
704 遮断プレート
800 コリメーション装置の第1の位置
802 第1のコリメータブレード
804 第2のコリメータブレード
806 第1の遮断プレート
807 第2の遮断プレート
808 X線ビーム
810 フィルタハウジング
812 出力ポート、コリメーション装置
816 開口、放射線
826 開口
850 コリメーション装置の第2の位置
900 方法
1000 ブロック図
1100 方法
1200 ブロック図
1202 スキャンパラメータ最適化アルゴリズム
1204 所望のエネルギ
1206 対象の最大許容放射線吸収線量レベル(または、範囲)
1208 スキャンごとのスキャン範囲
1210 スカウトスキャンの回数
1212 スカウトスキャンパラメータ
1300 典型的なプロット
1302 線