(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ヘッドホンにおける能動ノイズ低減
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20220511BHJP
G10K 11/175 20060101ALI20220511BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20220511BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H04R1/10 101Z
G10K11/175
G10K11/178 120
H04R3/00 320
(21)【出願番号】P 2016082704
(22)【出願日】2016-04-18
【審査請求日】2019-04-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-29
(32)【優先日】2015-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504147933
【氏名又は名称】ハーマン ベッカー オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マルクス クリストフ
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】樫本 剛
【審判官】新井 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-193420(JP,A)
【文献】特開昭55-102991(JP,A)
【文献】特開昭56-8994(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/316231(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
H04R 1/02
H04R 1/10
H04R 1/28
H04R 3/00
H04R 5/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動ノイズ低減ヘッドホンであって、
内表面及び外表面を有する剛性カップ状シェルであって、前記内表面は、開口部を呈するキャビティを包囲している、剛性カップ状シェルと、
前記外表面
の表面積の50%以上に亘って音声をピックアップし、前記ピックアップされた音声を再現する第1の電気信号を提供するように構成された
面積式マイクロフォンを含むマイクロフォンの配置と、
前記第1の電気信号に基づき第2の電気信号を提供するように構成された能動ノイズ制御フィルタと、
前記キャビティの前記開口部に配置され前記第2の電気信号から音声を生成するように設定されたスピーカと
を備え、
前記能動ノイズ制御フィルタは、前記外表面を越えたところから前記内表面を越えて前記シェルを通って伝達するノイズが、前記スピーカによって生成される前記音声によって低減されるように設定された伝達特性を有して
いる、ヘッドホン。
【請求項2】
前記
面積式マイクロフォ
ンは、前記外表面の表面積の90%以上に亘って音声をピックアップするように構成されてい
る、請求項1に記載のヘッドホン。
【請求項3】
前記面積式マイクロフォンが音圧感応膜を含む、請求項1または2に記載のヘッドホン。
【請求項4】
前記音圧感応膜が電気機械フィルムから作製されている、請求項3に記載のヘッドホン。
【請求項5】
前記能動ノイズ制御フィルタは、フィードフォワード能動ノイズ制御経路に接続されている、請求項1~4のいずれかに記載のヘッドホン。
【請求項6】
内表面及び外表面を有する剛性カップ状シェルを備えるヘッドホンのための能動ノイズ低減方法であって、前記内表面は、開口部を呈するキャビティを包囲し、前記方法は、
前記外表面
の表面積の50%以上に亘って音声をピックアップするように構成されている面積式マイクロフォンを用いて音声をピックアップし、前記ピックアップされた音声を再現する第1の電気信号を提供することと、
前記第1の電気信号をフィルタリングすることにより、第2の電気信号を提供することと、
前記キャビティの前記開口部において前記第2の電気信号から音声を生成することと
を含み、
フィルタリングは、前記外表面を越えたところから前記内表面を越えて前記シェルを通って伝達するノイズが、前記開口部において生成される前記音声によって低減されるように設定された伝達特性を用いて実行され
る、方法。
【請求項7】
前記音声が前記外表面の表面積の90%以上に亘ってピックアップされる、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動ノイズコントロール(ANC)ヘッドホン及びANCヘッドホンを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドホンはまた、能動ノイズキャンセル(ANC)としても知られている能動ノイズ低減を備えることができる。一般に、ノイズ低減は、フィードバック雑音低減またはフィードフォワード雑音低減、或いはそれらの組合せとして分類することができる。フィードバックノイズ低減システムにおいて、マイクロフォンは、リスナーの耳に雑音源から延びる音響経路に配置される。スピーカは、マイクロフォンと雑音源との間に配置される。ノイズ源からのノイズとスピーカから発せられたアンチノイズがマイクロフォンによって収集され、その残留ノイズに基づいて、アンチノイズは、ノイズ源からのノイズを低減するように制御される。フィードフォワード雑音低減システムでは、マイクロフォンは、ノイズ源とスピーカとの間に配置される。ノイズがマイクロフォンによって収集され、位相が反転されて、外部ノイズを低減するようにスピーカから発せられる。複合フィードフォワード/フィードバック(ハイブリッド)ノイズ低減システムにおいては、第1のマイクロフォンは、スピーカとリスナーの耳との間の音響経路に配置される。第2のマイクロフォンは、ノイズ源とスピーカの間の音響経路内に配置され、騒音源からの雑音を収集する。第2のマイクロフォンの出力は、ノイズ源からのノイズがリスナーの耳に到達する音響経路の伝送特性と同様に第1のマイクロフォンからスピーカへの音響経路の伝送特性を生成するために使用される。スピーカは、第1のマイクロフォンと雑音源との間に配置される。第1のマイクロフォンによって収集された雑音は位相が反転され、外部からのノイズを低減するためにスピーカから発せられる。多数方向からの多数のノイズ源によって発せられるノイズを低減するために、既知のヘッドホンの性能を向上させることが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
能動ノイズ低減ヘッドホンは、内表面及び外表面を有する剛性カップ状シェルを備え、内表面は開口部を呈するキャビティを包囲している。ヘッドホンはさらに、外表面上に一定の間隔で分散された少なくとも3つの位置で音をピックアップし、ピックアップされた音声を再現する第1の電気信号を提供するように構成されたマイクロフォンの配置と、第1の電気信号に基づき第2の電気信号を提供するように構成された能動ノイズ制御フィルタを備えている。加えて、ヘッドホンは、キャビティの開口部に配置され第2の電気信号から音を生成するように設定されたスピーカを備えている。能動ノイズ制御フィルタは、前記外表面を越えたところから前記内表面を越えてシェルを通って伝達する雑音が、スピーカによって生成される音声によって低減されるように設定された伝達特性を有している。
【0004】
能動ノイズ低減方法は、開口を呈したキャビティを包囲する凸面と凹面を有する剛性カップ状のシェルを備えたヘッドホンのために開示されている。方法は、凸状の表面上に一定の間隔で分散された少なくとも3つの位置で音をピックアップし、ピックアップされた音声を表す第1の電気信号を提供することを含む。さらに方法は、第2の電気信号を提供するために、第1の電気信号をフィルタリングし、キャビティの開口部で第2の電気信号からの音声を生成することを含む。フィルタリングは、凸面の外表面を越えたところから凹面の内表面を越えてシェルを通って伝達する雑音が、開口部に発生する音声によって低減されるように設定された伝達特性を用いて行われる。
【0005】
他のシステム、方法、特徴及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を検討することにより当業者には明らかとなる、或いは明らかになるであろう。そのような追加のシステム、方法、特徴及び利点はすべて、本明細書に含まれ、本発明の範囲内であり、そして添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
能動ノイズ低減ヘッドホンであって、
内表面及び外表面を有する剛性カップ状シェルを備え、上記内表面は開口部を呈するキャビティを包囲しており、さらに、
上記外表面上に一定の間隔で分散された少なくとも3つの位置で音声をピックアップし、ピックアップされた音声を再現する第1の電気信号を提供するように構成されたマイクロフォンの配置と、
上記第1の電気信号に基づき第2の電気信号を提供するように構成された能動ノイズ制御フィルタと、
上記キャビティの開口部に配置され上記第2の電気信号から音声を生成するように設定されたスピーカとを備え、
上記能動ノイズ制御フィルタは、上記外表面を越えたところから上記内表面を越えてシェルを通って伝達するノイズが、スピーカによって生成される音声によって低減されるように設定された伝達特性を有しているヘッドホン。
(項目2)
上記マイクロフォンの配置は、上記外表面の表面積における50%以上の音声を拾うように構成されている面積式マイクロフォンから成る、上記項目に記載のヘッドホン。
(項目3)
上記マイクロフォンの配置は、上記外表面の表面積における90%以上の音声を拾うように構成されている面積式マイクロフォンから成る、上記項目のいずれか一項に記載のヘッドホン。
(項目4)
上記面積式マイクロフォンが音圧感応膜を含む、上記項目のいずれか一項に記載のヘッドホン。
(項目5)
上記音圧感応膜が電気機械フィルムから作製されている、上記項目のいずれか一項に記載のヘッドホン。
(項目6)
上記マイクロフォンの配置は、上記外表面上に一定の間隔で分散された少なくとも3箇所に配置された少なくとも3つの個別のマイクロフォンを含む、上記項目のいずれか一項に記載のヘッドホン。
(項目7)
上記少なくとも3つの個別のマイクロフォンは、上記第1の電気信号を形成するために、上記少なくとも3つの個別のマイクロフォンからの電気出力信号を結合するように構成された信号結合モジュールの上流側に接続されている、上記項目のいずれか一項に記載のヘッドホン。
(項目8)
上記信号結合モジュールは、上記第1の電気信号を形成するために、上記少なくとも3つの個別のマイクロフォンからの電気出力信号を集計する加算器から成る、上記項目のいずれか一項に記載のヘッドホン。
(項目9)
上記少なくとも3つの個別のマイクロフォンは無指向性マイクロフォンである、上記項目のいずれか一項に記載のヘッドホン。
(項目10)
上記能動ノイズ制御フィルタは、フィードフォワード能動ノイズ制御経路に接続されている、上記項目のいずれか一項に記載のヘッドホン。
(項目11)
内表面と外表面を有する剛性カップ状シェルを備えるヘッドホンのための能動ノイズ低減方法であって、上記内表面は開口部を呈するキャビティを包囲するものにおいて、上記方法は、
上記外表面上に一定の間隔で分散された少なくとも3箇所で音声を拾い、
収音音声を再現する第1の電気信号を提供し、
第2の電気信号を提供するために、上記第1の電気信号をフィルタリングし、
キャビティの開口部に上記第2の電気信号からの音声を生成することから成り、
フィルタリングは、上記外表面を越えたところから上記内表面を越えてシェルを通って伝達する雑音が、上記開口部で生成される音声によって低減されるように設定された伝達特性を用いて実行される上記方法。
(項目12)
上記音声が上記外表面における表面積の50%以上に亘って拾われる、上記項目に記載の方法。
(項目13)
上記音声が上記外表面における表面積の90%以上に亘って拾われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
上記音声は、上記外表面上に一定の間隔で分散された上記少なくとも3箇所に配置された少なくとも3個の個別のマイクロフォンによって拾われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
上記第1の電気信号が上記音声を再現する個々の電気信号の和である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(摘要)
実施形態は、開口部を呈するキャビティを包囲している内表面と外表面を有する剛性カップ状のシェルを備えたヘッドホンのための能動ノイズ低減システム及び方法に関して開示されている。システム及び方法は、外表面上に一定の間隔で分散された少なくとも3箇所で音声を拾い、収音音声を再現する第1の電気信号を提供する。システム及び方法はさらに、第2の電気信号を提供するために、前記第1の電気信号をフィルタリングし、キャビティの開口部に第2の電気信号からの音声を生成することから成る。フィルタリングは、外表面を越えたところから内表面を越えてシェルを通って伝達するノイズが、開口部で生成される音声によって低減されるように設定された伝達特性を用いて実行される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明は、添付図面を参照しながらなされる非限定的な実施形態の以下の説明からより良く理解することができる。
【
図1】例示的なフィードバック型能動ノイズコントロール(ANC)イヤホンの簡略化した図である。
【
図2】例示的なフィードフォワード型ANCイヤホンの簡略化した図である。
【
図3】例示的なハイブリッド型ANCイヤホンの簡略化した図である。
【
図4】従来の単一小型(基準)マイクロフォンを有する例示的なイヤホンの簡略化した図である。
【
図5】面積式(基準)マイクロフォンを有する例示的なイヤホンの簡略化した図である。
【
図6】面積式マイクロフォンに近似する(基準)マイクロフォンアレイを備えた例示的なイヤホンの簡略化した図である。
【
図7】
図6に示したマイクロフォンアレイの下流に接続された回路の簡略化した回路図である。
【
図8】イヤホンのシェル上に一定の間隔で配置されたマイクロフォンの典型的な配列の簡略化した図である。
【
図9】マイクロフォンアレイと樽状の形状を有するシェルとを備える別の例示的なイヤホンの簡略化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、例示的なフィードバックタイプの能動ノイズコントロール(ANC)イヤホン100( 例えば、2つのイヤホンを備えるヘッドホンの一部として)の簡略化した図である。トンネル101で示される音響経路(チャンネルとも呼ばれる)は外耳道によって確立され、イヤホン100の一部であって、外耳道ノイズ、すなわち主ノイズ102はノイズ源103から第1の端部109に導入される。主ノイズ102の音波はトンネル101を通り、トンネル101の第2の端部110へ伝わり、イヤホン100がリスナーの頭部に装着されたときに、ここから音波が例えばリスナーの耳104の鼓膜に放射される。トンネル101内の主ノイズ102を低減するかキャンセルするためには、例えばスピーカ105のような音声放射トランスデューサがトンネル101に相殺音106を導入する。相殺音106は、主ノイズ102に対応するか或いは同じ振幅を有するが、逆位相の振幅である。トンネル101に入る主ノイズ102はエラーマイクロフォン107によって収集され、キャンセル信号を生成するためにフィードバックANC処理モジュール108によって処理され、次に主ノイズ102を低減するためにスピーカ105によって発せられる。エラーマイクロフォン107はスピーカ105の下流に配置され、スピーカ105よりもトンネル101の第2の端部110により近く、すなわちリスナーの耳104、特にその鼓膜により近くに配置されることになる。
【0008】
図2は、例示的なフィードフォワード方式のANCイヤホン200の簡略化した図である。
図1に示したイヤホン100におけるマイクロフォン107のように、スピーカ105とトンネル101の第2の端部110との間に配置される代わりに、マイクロフォン201がトンネル101の第1の端部109とスピーカ105との間に配置されている点で、イヤホン200は
図1に示したイヤホン100とは異なる。さらに、フィードバックANC処理モジュール108の代わりに、フィードフォワードANC処理モジュール202がマイクロフォン、すなわちマイクロフォン201とスピーカ105に接続されている。図示したフィードフォワードANC処理モジュール202は、例えば非適応型フィルタ、すなわち固定された伝達関数を有するフィルタであってもよく、しかし、スピーカ105とトンネル101の第2の端部110との間に配置されてフィードフォワードANC処理モジュール202(の伝達関数)を制御する追加のエラーマイクロフォン203と関連して代替的に適応することができる。
【0009】
図3は、例示的なハイブリッド型ANCイヤホン300の簡略化した図である。
図1及び
図2に関連して上述したヘッドホン100と200に基づいて、(基準)マイクロフォン201は主ノイズ102を検出し、その出力は、主ノイズ102がトンネル101の第2の端部110に到達する経路の伝送特性に一致するように、スピーカ105から(エラー)マイクロフォン107への音響経路の伝送特性をモデル化するために使用される。主ノイズ102及びスピーカ105から発せられる音声は(エラー)マイクロフォン107によって検知され、スピーカ105からエラーマイクロフォン107への信号経路の適合(例えば、推定される)伝送特性を用いて位相が反転され、次に2つのマイクロフォン201と107との間に配置されたスピーカ105から発せられるが、これによってリスナーの耳104における望ましくないノイズを低減する。信号反転、伝送経路モデル(推定される)、場合によっては適応は、ハイブリッドANC処理モジュール301によって実行される。例えば、ハイブリッドANC処理モジュール301には、マイクロフォン201からの信号を処理するために
図2に示したフィードフォワードANC処理モジュール202と同様のフィードフォワード処理モジュール、及びマイクロフォン107からの信号を処理するために
図1に示したフィードバックANC処理モジュール108と同様のフィードバック処理モジュールが備えられていてもよい。
【0010】
図4に示す例示的なイヤホン400(2つのイヤホンを備えるフィードフォワードANCヘッドホンの一部)では、剛性カップ状のシェル401は、開口部405を呈するキャビティ404を包囲する例えば凸面402のインナと、凹面403のアウターを有している。スピーカ406のように電気信号を音声に変換する電気音響変換器がキャビティ404の開口部405内に配置され、能動ノイズ制御フィルタ407によって提供される電気信号から音声を生成する。能動ノイズ制御(ANC)フィルタ407には、一般的に単一の(基準)マイクロフォン408からだけの電気信号が供給され、シェル401の凸面402上の一箇所だけで音を拾う。ANCフィルタ407は、例えばフィードフォワード型またはハイブリッド型能動ノイズ制御を提供するように構成されていてもよい。たとえマイクロフォン408が無指向特性を有している場合でも、ノイズ源409によって放たれた音声のシェア410はマイクロフォン408によって拾うことができるが、一方で別のシェア411は拾われない。しかし、双方のシェア410及び411は、ヘッドホンを着用しているリスナー(図示せず)の耳に到達することができ、マイクロフォン408によって拾われた音声、従って収音に対応した電気信号はリスナーの耳に到達する音声と同等のものではない、或いは完全に同等のものではない。マイクロフォン信号がリスナーによって知覚される音声にどれほど対応しているかは、ノイズ源409の位置及びノイズ源409の指向性に依存している。結果として、ヘッドホンのノイズ低減性能は、とりわけマイクロフォン408の位置とノイズ源409の指向性に関連したノイズ源409の位置に左右される。
【0011】
図4に示したイヤホン400に基づいて、
図5に示す例示的なイヤホン500では、マイクロフォン408は面積式マイクロフォン501(すなわち、拡張された膜面積を有するマイクロフォン)で置換されているが、これは凸面401の面積の50%以上、例えば75%以上、90%以上、または100%までをカバーすることができる。面積式マイクロフォン501は、例えば気泡構造を有するエレクトレット材料である電気機械フィルム(EMFi)のような任意の感圧または力感応フィルムで製造することができる。他の固体高分子エレクトレットを上回るEMFiの利点は、強力な永久電荷と結合した空洞内部構造に起因する柔軟性に基づいており、これによってEMFiは、その表面に垂直に加わる動的な力に対して著しく感応するものとなる。母材は、低価格のポリプロピレン(PP)であってもよい。
【0012】
EMFiは空隙によって分離された、いくつかのポリプロピレン層から成っていてもよい。フィルムの表面に加わる外力は、空隙の厚さを変化させる。その後、ポリプロピレン/空隙界面に存在する電荷は相互に移動し、その結果、ミラー電荷が電極に発生する。発生した電荷は膜厚の変化に比例する。材料に弾性があるので、発生した電荷は膜に作用する力(または圧力)にも比例する。基本的なボイド形成PPフィルムは、特別に作製されたポリマーを二軸配向することによって連続プロセスで製造され、これが気泡構造を形成する。EMFiのより詳細な説明は、例えば米国特許第4,654,546号、或いはJukka Lekkala及びMika Paajanen著「EMFi-センサとアクチュエータのための新しいエレクトレット材料」、1999年第10回エレクレットについての国際シンポジウムを参照されたい。製造プロセスの間に、EMFiはコロナ放電装置によって充電される。最後に、フィルムは導電性の電極層で被覆され、EMFi構造が完成される。フィルムは3つの層を有しており、そのうちの数ミクロンの厚さの表面層は滑らかで均質であるのに対し、主要な厚い中間部分は葉のようなPP-層によって分離された平らな空隙に満ちている。
【0013】
代替的に、面積式マイクロフォンは、これよりも大幅に小さい膜面積をそれぞれが有する多数のマイクロフォン601によって近似させることができる。マイクロフォン601はマイクロフォンアレイを形成し、凸状の表面402上に一定の間隔で分散されるが、半球体における任意の立体角のためにマイクロフォン601の少なくとも一方が任意の位置で指向性雑音源から直接ノイズを受信するように、マイクロフォン601の指向性はこれらが重なるようなものであってもよい。
【0014】
例えば、マイクロフォン602は無指向性の特性を有していてもよく、これらの出力信号は、
図5に関連して上述した面積式マイクロフォン501の出力信号を代用することができる出力信号を提供するために、加算器701によって
図7に示すように集計することができる。マイクロフォン出力信号の集計により、マイクロフォン602のアレイは面積式マイクロフォンと同様な指向挙動を示し、このことはゼロ番目の部屋モードを音響的にキャプチャするセンサとして見ることができることを意味する。さらに、マイクロフォン出力信号の集計によって、マイクロフォンによって生成されるノイズは10log
10(N)[dB]だけ減少することになるが、Nは用いられるマイクロフォンの数である。その上で、小さな膜のマイクロフォン602のノイズ挙動は、一般的に面積式マイクロフォン501のノイズ挙動よりも既にそれ自体が優れている。
【0015】
図8は、マイクロフォン602のアレイを示す正面図であり、これの側面図は
図6に示されている。図から認められるように、マイクロフォンは凸面402に亘って一定の間隔で分散されており、このことはマイクロフォン602がいくつかの確立されたルール、法律、原則、またはタイプに従って形成され、構築され、配置され、或いは注文され得ることを意味している。特に、マイクロフォン602は、正多角形(二次元配列)のような正三角形及び等角の両方に配置してもよいし、全ての多面体角度が正多面体(3次元配列)として合同である合同正多角形である面を有していてもよい。例えば、正三角形の角に配置することができる3つのマイクロフォン602を使用してもよい。その他の構成は、正方形の角に配置された4個のマイクロフォンから成るものであってもよい。規則的に分散された3つまたは4つの、或いはそれ以上のマイクロフォンの配列の多様性は、より複雑な構成を形成するように組み合わせることも可能である。例えば、
図8は13個のマイクロフォン602の菱形配置を示している。
【0016】
シェルは、
図4~6に示すヘッドホンのように、例えば皿状または
図9に示すように樽状など様々な形状(シェル901)を有していてもよく、ここではマイクロフォン602は樽状部分の底壁902上だけでなく側壁903上にも配置される。例えばフィードフォワードANCまたはハイブリッドANC処理モジュールに関連して、ANCフィルタ407は従来型のものであってもよい。その基本的な適応及び非適応構造は、例えば、Sen M.Kuo及びDennis R.Morgan著「アクティブノイズコントロール:チュートリアルレビュー」、1999年6月、IEEEの議事録、第6号、第87巻に記載されている。
【0017】
実施形態の説明は、例示及び説明の目的でなされてきた。実施形態に対する適切な修正及び変形は、上記の説明に照らして行うことができ、或いは方法を実施することで習得することができる。例えば、特に断りのない限り、記載された方法の1つまたはそれ以上が、適切な装置及び/または装置の組合せによって実行することができる。記載された方法及び関連する操作は、本出願で説明した順序に加えて、並行に、及び/または同時に、など様々な順序で行うことができる。記載されたシステムは、本質的に例示であり、追加の構成要素を含み、及び/または構成要素を省略してもよい。本発明の主題は、様々なシステム及び構成のすべての新規かつ非自明な組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに開示された他の特徴、機能、及び/または特性を含む。
【0018】
本出願で使用されるように、「a」または「an」で始まる単語によって単数形で記載された構成要素またはステップは、そのような除外が明記されない限り、前述の構成要素またはステップの複数を除外しないと理解されるべきである。さらに、本発明の「一実施形態」または「一実施例」への言及は、記載した特徴を組み込んだ付加的な実施形態の存在を排除すると解釈されることを意図するものではない。用語「第1」、「第2」及び「第3」などは、単にラベルとして使用され、それらオブジェクト上の数値要件または特定な位置順序を課すことを意図するものではない。