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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】電源管理システム及び電源分配装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20220511BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220511BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20220511BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20220511BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H02J13/00 311B
H02J7/00 P
H02J7/00 302B
H02J13/00 B
H02J1/00 304H
B60R16/023 Z
B60R16/02 645D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017098184
(22)【出願日】2017-05-17
(65)【公開番号】P2018196244
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】関谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】溝口 幸
(72)【発明者】
【氏名】小池 智礼
(72)【発明者】
【氏名】加来 芳史
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-241999(JP,A)
【文献】特開2007-237768(JP,A)
【文献】特開2014-080166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00-17/02
H02J 1/00-1/16
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電源装置(10)と、
前記電源装置に接続された電源線(PL)と、
前記電源線に接続された複数のリレー(24)であって、前記複数のリレーの各々には車両内負荷(31,20)が接続されている、複数のリレーを有する電源分配装置(20,20E)と、
前記電源線に接続された信号送信部であって、前記複数のリレーのいずれかを識別する識別情報と、オン指令又はオフ指令とを含む指令信号を前記電源線へ送信するように構成された信号送信部(15)を有する接続装置(32,50,50D)と、を備え、
前記電源分配装置は、
前記電源線に送信された前記指令信号を前記電源装置から前記電源線へ供給された電源から分離するように構成された信号分離部(21)と、
前記信号分離部により分離された前記指令信号を受信し、前記指令信号に含まれている前記識別情報に基づいて、前記複数のリレーの中から制御対象リレーを判定するように構成された信号受信部(22)と、
前記指令信号に前記オン指令が含まれている場合には、前記信号受信部により判定された前記制御対象リレーをオンにして、前記電源装置と前記制御対象リレーに接続された前記車両内負荷とを接続状態にし、前記指令信号に前記オフ指令が含まれている場合には、前記制御対象リレーをオフにして、前記電源装置と前記制御対象リレーに接続された前記車両内負荷とを遮断状態にするように構成されたリレー制御部(23)と、を備え、
前記電源分配装置として第1電源分配装置(20E)を備え、
前記車両内負荷として前記第1電源分配装置とは異なる前記電源分配装置である第2電源分配装置(20)を備え、
前記信号送信部を第1信号送信部(151)とし、
前記第1電源分配装置が有する前記複数のリレーを複数の第1リレーとし、
前記第2電源分配装置が有する前記複数のリレーを複数の第2リレーとし、
前記第1電源分配装置の前記信号受信部が受信する前記指令信号を第1指令信号とし、
前記第2電源分配装置の前記信号受信部が受信する前記指令信号を第2指令信号とし、
前記第1指令信号は、前記識別情報として、少なくとも前記複数の第2リレーのいずれかの識別番号を含み、
前記第1電源分配装置の前記信号受信部は、前記識別情報に基づいて、前記複数の第1リレーの中から、前記第2電源分配装置が接続された前記第1リレーである前記制御対象リレーを判定するように構成され、
前記第1電源分配装置は、
前記識別情報として前記識別番号を含む前記第2指令信号を、前記第2電源分配装置へ送信するように構成された第2信号送信部(152)を備える、
電源管理システム。
【請求項2】
前記複数のリレーのいずれかに接続されている前記車両内負荷として、第1車両内負荷(31)を備え、
前記接続装置として、前記第1車両内負荷と連携関係を有する第2車両内負荷(32)を備え、
前記第2車両内負荷は、前記連携関係に基づいて、前記第1車両内負荷が接続されている前記リレーに対する前記指令信号を、前記信号送信部から前記電源線へ送信する、
請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項3】
前記接続装置として、前記車両内負荷の電源を管理する電源管理装置(50)を備え、
前記電源管理装置は、自装置に入力された入力情報に基づいて、前記指令信号を前記信号送信部から前記電源線へ送信する、
請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項4】
前記複数のリレーのいずれかに接続されている前記車両内負荷として、第1車両内負荷(31)を備え、
前記電源管理装置が接続されている通信線(SL)と、
前記通信線に接続されており、前記第1車両内負荷と連携関係を有する第2車両内負荷(33)と、を備え、
前記第2車両内負荷は、前記連携関係に基づいて、前記第1車両内負荷が接続されている前記リレーの動作を指示する指示情報を、前記通信線を介して前記電源管理装置へ送信し、
前記電源管理装置は、前記第2車両内負荷から送信された前記指示情報に基づいて、前記第1車両内負荷が接続されている前記リレーに対する前記指令信号を、前記信号送信部から前記電源線へ送信する、
請求項3に記載の電源管理システム。
【請求項5】
前記電源管理装置に接続されており、前記車両内負荷の駆動を制御するためのスイッチ装置(90)であって、操作された場合に前記電源管理装置へ操作情報を入力するスイッチ装置を備え、
前記電源管理装置は、前記スイッチ装置から入力された操作情報に基づいて、前記スイッチ装置に対応した前記車両内負荷が接続されている前記リレーに対する前記指令信号を、前記信号送信部から前記電源線へ送信する、
請求項3に記載の電源管理システム。
【請求項6】
前記電源管理装置は、前記電源装置の状態を監視し、入力された前記電源装置の状態を示す状態情報に基づいて、前記複数のリレーから制御する前記リレーを選択して、選択した前記リレーに対する前記指令信号を、前記信号送信部から前記電源線へ送信する、
請求項3に記載の電源管理システム。
【請求項7】
前記信号分離部は、受動素子で構成されたフィルタを備える、
請求項1~のいずれか1項に記載の電源管理システム。
【請求項8】
車両に搭載されており、電源線(PL)を介して電源装置(10)に接続されている電源分配装置(20,20E)であって、
複数のリレーであって、前記複数のリレーの各々には車両内負荷が接続されている、複数のリレー(24)と、
前記電源線に送信された指令信号であって、前記複数のリレーのいずれかを識別する識別情報と、オン指令又はオフ指令とを含む指令信号を、前記電源装置から前記電源線へ供給された電源から分離するように構成された信号分離部(21)と、
前記信号分離部により分離された前記指令信号を受信し、前記指令信号に含まれている前記識別情報に基づいて、前記複数のリレーの中から制御対象リレーを判定するように構成された信号受信部(22)と、
前記指令信号に前記オン指令が含まれている場合には、前記信号受信部により判定された前記制御対象リレーをオンにして、前記電源装置と前記制御対象リレーに接続された前記車両内負荷とを接続状態にし、前記指令信号に前記オフ指令が含まれている場合には、前記制御対象リレーをオフにして、前記電源装置と前記制御対象リレーに接続された前記車両内負荷とを遮断状態にするように構成されたリレー制御部(23)と、を備え、
前記複数のリレーのいずれかに、前記車両内負荷として異なる他の電源分配装置(20)が接続されており、
前記指令信号は、前記識別情報として、少なくとも前記他の電源分配装置が有する複数のリレーのいずれかの識別番号を含み、
前記信号受信部は、前記識別情報に基づいて、前記複数のリレーの中から、前記他の電源分配装置に接続されたリレーである前記制御対象リレーを判定するように構成され、
前記識別情報として前記識別番号を含む他の指令信号を、前記他の電源分配装置へ送信するように構成された信号送信部(152)を備える、
電源分配装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電源を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の電源を管理するシステムとして、電源装置からの電源を負荷へ供給する複数の電源分配装置を備えた車載用電源分配システムが、特許文献1に開示されている。上記車載用電源システムでは、各電源分配装置は、ネットワークに接続されており、近傍のスイッチから他の電源分配装置に接続された負荷を駆動するためのスイッチ信号が入力されると、スイッチ信号を通信信号に変換して、ネットワークへ伝送する。そして、上記車載用電源システムでは、各電源分配装置は、他の電源分配装置からネットワークへ伝送された通信信号を取り込み、取り込んだ通信信号を制御信号に変換し、変換した制御信号に基づいて、電源供給装置からの電源を当該電源分配装置に接続された負荷へ供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-146080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車載用電源分配システムでは、ネットワークを介して通信信号が各電源分配装置へ伝送されるため、すべての電源分配装置が通信ネットワーク機器を備え、通信線に接続されている必要がある。よって、車両内の省線化を十分に実現できないという問題がある。また、2つの電源分配装置間で通信信号を伝送する際に、2つの電源分配装置が互いに異なる通信プロトコルのネットワークに接続されている場合には、通信信号のプロトコル変換を行う必要があり、電源管理が非効率になるという問題もある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、車両内を省線化して、効率的な電源制御を可能とする電源管理システム、及び電源分配装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、電源装置(10)と、電源線(PL)と、電源分配装置(20,20E)と、接続装置(32,50)と、を備える。電源装置は、車両に搭載されている。電源線は、電源装置に接続されている。電源分配装置は、電源線に接続されており、車両内負荷が接続された少なくとも1つのリレー(24)を有し、電源線を介して供給された電源をオン状態の前記リレーに接続された車両内負荷へ供給する。接続装置は、電源線に接続されており、リレーのオン又はオフを指令する指令信号を電源線へ送信する。さらに、電源分配装置は、信号分離部(21)と、信号受信部(22)と、リレー制御部(23)と、を備える。信号分離部は、電源線に送信された指令信号を電源から分離する。信号受信部は、信号分離部により分離された指令信号を受信する。リレー制御部は、信号受信部により受信された信号情報に基づいて、リレーの動作を制御する。
【0007】
本開示によれば、電源供給に用いられる電源線を介して、車両内負荷が接続されたリレーに対する指令信号が送信される。そのため、通信ネットワーク機器を備えていない電源分配装置であっても、リレー制御の対象とすることができる。また、電源線を介して指令信号を送信することにより、通信線を介して指令信号を送信する場合と比べて、通信線を削減して車両内を省線化することができる。さらに、電源分配装置と接続装置とが異なる通信プロトコルのネットワークに接続されている場合でも、電源線を介して指令信号を送信することで、プロトコル変換を行う必要がない。よって、車両内を省線化して、効率的な電源制御を実現することができる。
【0008】
なお、この欄及び特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る電源管理システムの構成を示すブロック図である。
図2】電源分配装置の信号分離部、信号受信部、及びリレー制御部の構成を示す回路図である。
図3】電源分配装置の信号分離部、信号受信部、及びリレー制御部の動作を示すタイムチャートである。
図4】第2実施形態に係る電源管理システムの構成を示すブロック図である。
図5】第3実施形態に係る電源管理システムの構成を示すブロック図である。
図6】第4実施形態に係る電源管理システムの構成を示すブロック図である。
図7】第4実施形態に係る電源管理の処理手順を示すフローチャートである。
図8】第5実施形態に係る電源管理システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。
(第1実施形態)
<1-1.システム構成>
まず、第1実施形態に係る電源管理システム100Aの構成について、図1を参照して説明する。電源管理システム100Aは、車両に搭載されたシステムであり、バッテリ10と、複数の電源分配装置20と、負荷31と、負荷32と、電源線PLと、を備える。
【0011】
バッテリ10は、12Vの直流電源の車載バッテリである。本実施形態では、バッテリ10が電源装置の一例に相当する。
電源線PLは、各電源分配装置20に接続されており、各電源分配装置20を介して負荷31及び負荷32のそれぞれへ、バッテリ10の直流電源を配電する配電線である。図1図4~6、及び図8では、電源線PLを太線で示している。
【0012】
各電源分配装置20は、電源線PLに接続されており、負荷31又は負荷32が接続された少なくとも1つのリレー24を備える。そして、各電源分配装置20は、電源線PLを介して供給された直流電源を、オン状態のリレー24に接続された負荷31又は負荷32へ分配する。各電源分配装置20の構成の詳細は後述する。
【0013】
負荷32は、信号送信部15を備えた車両内の負荷であり、例えば、信号送信部15を備えたECUである。負荷31は、車両内の負荷であり、例えばECUである。負荷31は、信号送信部15を備えていても備えていなくてもどちらでもよい。また、負荷32は、複数の負荷31のうちの負荷310と連携関係を有する負荷である。連携関係を有する負荷の例としては、負荷32としてシフトレバーECU、負荷310としてバックモニタECUの組み合わせが挙げられる。このような組み合わせの場合、負荷32が電源供給を受けて起動状態で負荷310がスリープ状態のときに、負荷32は、シフトレバーがバックの位置になったことを検出すると、負荷310を起動させる。具体的には、負荷32は、負荷310が接続されたリレー24に対してオンを指令する指令信号を、信号送信部15から電源線PLへ送信する。
【0014】
信号送信部15は、リレー24のオンオフを指令する指令信号を電源線PLへ送信する送信回路である。信号送信部15から電源線PLへ送信された指令信号は、電源線PL及び負荷32が接続された電源分配装置20を介して、負荷31が接続された電源分配装置20へ伝送される。その結果、指令信号がオン指令信号の場合は、指令信号に対応するリレー24がオン状態に切り替えられ、指令信号がオフ指令信号の場合は、指令信号に対応するリレー24がオフ状態に切り替えられる。
【0015】
<1-2.電源分配装置の構成>
次に、各電源分配装置20の構成について、図1図3を参照して説明する。各電源分配装置20は、信号分離部21と、信号受信部22と、ビットカウンタ23と、少なくとも1つのリレー24と、を備える。信号受信部22は、A/D変換部221と、1ビット照合部222と、全ビット照合部223と、を備える。図3のA~Eは、図2のA点における信号分離部21への入力信号、B点におけるA/D変換部221の出力信号、C点におけるメモリから出力される制御対象のリレー24のID、D点におけるクロック信号、及びE点におけるビットカウンタ23の出力信号を示す。
【0016】
信号分離部21には、図3のAに示すように、電源線PLを介して、指令信号が重畳された12Vの直流電源が入力される。指令信号は、制御対象のリレー24のID情報を含んだ信号である。信号分離部21は、電源線PLに重畳された電源と指令信号とを分離し、指令信号を取り込む。本実施形態では、信号分離部21は、前段にコンデンサと抵抗との直列体から構成されたハイパスフィルタ、後段に抵抗とコンデンサとの直列体から構成されたローパスフィルタを備え、受動素子のみで構成された5kHのバンドパスフィルタである。
【0017】
信号受信部22は、信号分離部21により分離された指令信号を受信する。
A/D変換部221は、コンパレータ221aを備え、信号分離部21の出力と閾値電圧とを比較して、信号分離部21の出力を「0」又は「1」のデジタル値に変換する。本実施形態では、A/D変換部221の出力信号は、「101010」の6ビットの信号となる。このうちの1ビット目は、これから指令信号を送信する合図を表すスタータビットであり、残りの5ビットが制御対象のリレー24のIDを示す。
【0018】
1ビット照合部222は、フリップフロップ回路222a(以下、FF回路222a)とXNOR回路222bとを備える。FF回路222aには、クロック信号のタイミングでコンパレータ221aの出力が1ビットずつ入力され、FF回路222aは、クロック信号のタイミングでコンパレータ221aの出力をラッチする。XNOR回路222bには、FF回路222aの非反転出力と、メモリから出力された当該電源分配装置20のリレー24のIDの値とが、1ビットずつ入力される。XNOR回路222bは、FF回路222aの出力とメモリの出力とが一致する場合には1を出力し、異なる場合に0を出力する。よって、指令信号とリレー24のIDとが一致すれば、XNOR回路222bの出力は「11111」となる。
【0019】
なお、メモリには、当該電源分配装置20が備えるすべてのリレー24のIDが記憶されている。図2は、簡略化して、指令信号と1つのリレー24のIDとを照合する構成を示しているが、1ビット照合部222は、指令信号とすべてのリレー24のIDとを並列に照合または順次照合する。
【0020】
全ビット照合部223は、AND回路223aとフリップフロップ回路223b(以下、FF回路223b)とを備える。AND回路223aは、XNOR回路222bの出力及びFF回路223bの非反転出力が1の場合に1を出力し、その他の場合に0を出力する。FF回路223bは、クロック信号のタイミングで、AND回路223aの出力をラッチする。よって、FF回路223bは、指令信号とリレー24のIDとが一致している間は1を出力し続け、一致しなくなると0を出力する。
【0021】
ビットカウンタ23は、FF回路223bの非反転出力「1」のビット数をカウントし、ビット数がリレー24のIDのビット数になった場合に、指令信号とIDが一致するリレー24へ、リレー24をオンまたはオフするリレー制御信号を送信する。本実施形態では、ビットカウンタ23がリレー制御部に相当する。
【0022】
リレー24は、オン状態のときに電源線PLと負荷31とを接続状態にし、オフ状態のときに電源線PLと負荷31とを遮断状態にする。リレー24がオン状態になり、電源線PLと負荷31とが接続状態になると、バッテリ10から負荷31へ、電源線PLを介して電源が供給される。なお、リレー24は、MOSFETリレーのような無線点リレーでもよいし、メカニカルリレーのような有接点リレーでもよい。
【0023】
<1-3.効果>
以上説明した、第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)電源線PLを介して、負荷310が接続されたリレー24に対する指令信号が送信される。そのため、通信ネットワーク機器を備えていない電源分配装置20であっても、リレー制御の対象とすることができる。また、電源線PLを介して指令信号を送信することにより、通信線を削減して車両内を省線化することができる。さらに、負荷31が接続された電源分配装置20と、負荷32が接続された電源分配装置20とが異なる通信プロトコルのネットワークに接続されている場合でも、電源線PLを介して指令信号を送信することで、プロトコル変換を行う必要がない。よって、車両内を省線化して、効率的な電源制御を実現することができる。
【0024】
(2)負荷32が信号送信部15を備えているため、負荷32から電源線PLへ、連携関係を有する負荷310に対する指令信号を送信することができる。よって、負荷32が信号送信部15を備えておらず、負荷32から他の装置を介さなければ電源線PLへ指令信号を送信できない場合と比べて、指令信号の送信遅延を抑制した電源制御を実現することができる。
【0025】
(3)信号分離部21を、簡易な受動素子で構成されたフィルタとすることで、能動素子を用いて信号分離部21を構成した場合と比べて、信号分離部21での消費電流を抑制することができる。
【0026】
(第2実施形態)
<2-1.システム構成>
第2実施形態に係る電源管理システム100Bの構成について、図4を参照して説明する。電源管理システム100Bは、車両に搭載されたシステムであり、バッテリ10と、複数の電源分配装置20と、電源管理装置50と、負荷31と、負荷33と、電源線PLと、通信線SLと、を備える。以下では、第1実施形態と共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0027】
本実施形態では、負荷33から直接電源線PLへ、負荷33と連携関係を有する負荷311が接続されたリレー24に対する指令信号を送信せずに、負荷33から電源管理部51を介して電源線PLへ指令信号を送信する点で、第1実施形態と異なる。
【0028】
通信線SLは、車両ネットワークを構成し、例えば、CANなどの通信プロトコルに従って信号を伝送する通信線である。CANは登録商標である。
負荷33は、負荷311と連携関係を有する車両内の負荷であり、例えばECUである。負荷33は、いずれかの電源分配装置20のリレー24に接続されているとともに、通信線SLに接続されている。負荷33は、負荷32とは異なり、信号送信部15を備えていても備えていなくてもよい。そして、負荷33は、連携関係に基づいて、他の電源分配装置20に接続された負荷311を起動させる場合に、負荷311が接続されているリレー24のオンを指示する指示情報を、通信線SLを介して電源管理装置50へ送信する。
【0029】
電源管理装置50は、信号送信部15と電源管理部51とを備え、電源線PLと通信線SLとに接続されている。詳しくは、信号送信部15が電源線PLに接続されており、電源管理部51が通信線SLに接続されている。電源管理部51は、電源線PLに接続された負荷31,33を含む車両内の負荷の電源を管理する。例えば、電源管理部51は、エンジンがオフ状態にもかかわらずライトが点灯している情報を取得した場合には、ライトの点灯を制御するECUが接続されたリレーのオフする指令する指令信号を、信号送信部15から電源線PLへ送信させる。
【0030】
また、電源管理部51は、負荷33から通信線SLを介して指示情報が送信された場合に、指示情報に基づいて、負荷311が接続されているリレー24に対する指令信号を、信号送信部15から送信させる。つまり、電源管理部51は、負荷33から送信された指示情報を電源管理装置50への入力情報として用いて、指令信号を信号送信部15から電源線PLへ送信させる。
【0031】
なお、電源管理装置50は、電源管理専用のECUでもよいし、他の制御を実施しつつ電源管理も行うECUでもよい。また、1つのECUが電源管理装置50の機能を有していてもよいし、複数のECUが電源管理装置50の機能を有していてもよい。
【0032】
<2-2.効果>
以上説明した第2実施形態によれば、前述した効果(1),(3)に加え、以下の効果が奏する。
【0033】
(4)負荷311が接続されているリレー24に対する指示情報が、通信線SLを介して、負荷33から電源管理装置50へ送信される。そして、電源管理装置50により、指示情報に基づいた指令信号が、電源線PLを介して負荷311が接続されている電源分配装置20へ送信される。よって、電源管理装置50は、バッテリ10から電源供給を受ける電源系全体の動作状況を把握し、電源系全体の電源制御を効率的に実現することができる。また、電源管理装置50が信号送信部15を備えているため、負荷33が信号送信部15を備えている必要がない。
【0034】
(5)負荷311が通信線SLに繋がっていない場合でも、負荷33から、電源管理装置50及び電源線PLを介して指令信号を送信して、負荷311のリレー24を制御することができる。また、負荷311が、電源管理装置50及び負荷33と異なる通信プロトコルの通信線に繋がっている場合でも、プロトコル変換をする必要がない。
【0035】
(第3実施形態)
<3-1.システム構成>
第3実施形態に係る電源管理システム100Cの構成について、図5を参照して説明する。電源管理システム100Cは、車両に搭載されたシステムであり、バッテリ10と、複数の電源分配装置20と、電源管理装置50と、スイッチ装置90と、負荷31と、電源線PLと、を備える。以下では、第2実施形態と共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第2実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0036】
スイッチ装置90は、車両内の負荷の駆動を制御するために、ドライバにより操作される操作部を備えた装置であり、電源管理装置50の電源管理部51に接続されている。スイッチ装置90としては、例えば、ライトの点灯をオンまたはオフするスイッチ装置が挙げられる。スイッチ装置90は、ドライバによりオン又はオフ操作された場合に、電源管理部51へ操作情報を入力する。
電源管理部51に操作情報が入力された場合、電源管理部51は、スイッチ装置90から入力された操作情報に基づいて、負荷31のうちのスイッチ装置90に対応した負荷315が接続されているリレー24に対する指令信号を、信号送信部15から電源線PLへ送信させる。
つまり、第2実施形態では、電源管理部51は、電源管理装置50への入力情報として、負荷33から送信された制御指示を用いたのに対して、第3実施形態では、電源管理部51は、電源管理装置50の入力情報として、スイッチ装置90から入力された操作情報を用いる。なお、スイッチ装置90は、電源管理装置50の信号送信部15へ操作情報を入力してもよく、信号送信部15は、操作情報が入力された場合に、リレー24に対する指令信号を電源線PLへ送信するようにしてもよい。また、電源管理装置50は、車両内のすべてのスイッチ装置90が接続された電源管理専用のECUでもよいし、スイッチ装置90ごとのECUでもよい。
【0037】
<3-2.効果>
以上説明した第3実施形態によれば、前述した効果(1),(3)に加え、以下の効果を奏する。
【0038】
(6)ドライバによりスイッチ装置90が操作された場合に、スイッチ装置90から電源管理装置50へ操作情報が入力される。そして、操作情報に基づいて、スイッチ装置90に対応した負荷315が接続されているリレー24に対する指令信号が、信号送信部15から電源線PLへ送信される。よって、ドライバによるスイッチ装置90の操作に応じたリレー制御を実現することができる。
【0039】
(第4実施形態)
<4-1.システム構成>
第4実施形態に係る電源管理システム100Dの構成について、図6を参照して説明する。電源管理システム100Dは、車両に搭載されたシステムであり、バッテリ10と、複数の電源分配装置20と、電源管理装置50Dと、負荷31と、電源線PLと、を備える。以下では、第2実施形態と共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第2実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0040】
電源管理装置50Dは、信号送信部15と、電源管理部51と、監視部52と、を備える。
監視部52は、電源線PLに接続されており、電源線PLを介して入力されたバッテリ10の状態を監視する。そして、監視部52は、バッテリ10の状態を示す状態情報を、電源管理部51へ入力する。詳しくは、監視部52は、バッテリ10の電圧を監視し、バッテリ10の電圧を電源管理部51へ入力する。電源管理部51は、入力されたバッテリ10の状態情報に基づいて、電源管理を実行する。
【0041】
<4-2.電源管理処理>
次に、電源管理部51が、監視部52から入力されたバッテリ10の電圧に基づいて、実行する電源管理の処理手順について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0042】
まず、S10では、監視部52から、バッテリ10の状態として、バッテリ10の充電状態を示す電圧を取得したか否か判定する。バッテリ10の電圧を取得していない場合には、取得するまで待機し、バッテリ10の電圧を取得した場合には、S20へ進む。
【0043】
続いて、S20では、S10で取得したバッテリ10の電圧に基づいて、バッテリ10の状態を判断する。
続いて、S30では、バッテリ上がりの兆候があるか否か判定する。詳しくは、バッテリ10の電圧が、予め設定された閾値電圧よりも低い場合には、バッテリ上がりの兆候ありと判定する。バッテリ上がりの兆候がない場合には、S10へ戻る。一方、バッテリ上がりの兆候がある場合には、S40へ進む。
【0044】
続いて、S40で、オン状態からオフ状態に切り替えるリレー24を選択する。詳しくは、比較的優先度の低い負荷が接続されているリレー24を選択する。そして、選択したリレー24に対してオフを指令する指令信号を、信号送信部15から電源線PLへ送信させる。以上で、本処理を終了する。
【0045】
なお、電源管理部51は、バッテリ10の状態が回復し、バッテリ上がりの兆候が見られなくなった場合には、S40で選択したリレー24に対してオンを指令する指令信号を、信号送信部15から電源線PLへ送信させてもよい。
【0046】
第2実施形態では、電源管理部51は、電源管理装置50への入力情報として、負荷33から送信された制御指示を用いたのに対して、第4実施形態では、電源管理部51は、電源管理装置50の入力情報として、バッテリ10の状態情報を用いる。
【0047】
<4-3.効果>
以上説明した第4実施形態によれば、前述した効果(1),(3)に加え、以下の効果を奏する。
【0048】
(7)バッテリ10の状態が監視され、バッテリ10の状態に応じて制御対象となるリレー24が選択され、選択されたリレー24に対する指令信号が、信号送信部15から電源線PLへ送信される。よって、バッテリ10の状態にバッテリ上がりの兆候が見られた場合には、優先度が比較的低い負荷31が接続されたリレー24をオフ状態に切り替えて電源の供給を制限し、バッテリ上がりを抑制することができる。
【0049】
(第5実施形態)
<5-1.システム構成>
第5実施形態に係る電源管理システム100Eの構成について、図8を参照して説明する。電源管理システム100Eは、車両に搭載されたシステムであり、バッテリ10と、電源分配装置20Eと、電源分配装置20と、電源管理装置50と、スイッチ装置90と、負荷31と、電源線PLと、を備える。以下では、第3実施形態と共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第3実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0050】
電源分配装置20E(以下、第1電源分配装置20E)は、電源線PLを介してバッテリ10に接続されており、信号分離部21、信号受信部22、ビットカウンタ23、及び少なくとも1つのリレー24に加えて、信号送信部15を備える。そして、第1電源分配装置20Eの少なくとも1つのリレー24には、負荷31として電源分配装置20(以下、第2電源分配装置20)が電源線PLを介して接続されている。そして、第2電源分配装置20の少なくとも1つのリレー24には、電源線PLを介して負荷35が接続されている。負荷35は、車両内の負荷であり、例えばECUである。
【0051】
つまり、本実施形態では、第1電源分配装置20Eと第2電源分配装置20が2段に接続されている。バッテリ10を最上流とした場合に、第1電源分配装置20Eは、バッテリ10に最も近い上流側に接続されており、第2電源分配装置20は第1電源分配装置20Eの下流側に接続されている。そして、負荷35は、第2電源分配装置20の下流側に接続されている。以下では、電源管理装置50の信号送信部15を第1信号送信部151、第1電源分配装置20Eの信号送信部15を第2信号送信部152とし、第1電源分配装置20Eの第2電源分配装置20が接続されたリレー24をリレー241、第2電源分配装置20の負荷35が接続されたリレー24をリレー242と称する。
【0052】
スイッチ装置90は、負荷35の駆動を制御するために、ドライバにより操作されるスイッチ装置である。電源管理部51は、スイッチ装置90から入力された操作情報に基づいて、第1信号送信部151から電源線PLへ指令信号を送信させる。このとき、負荷35へ電源を供給するには、前段のリレー241と後段のリレー242の両方をオン状態にする必要がある。よって、電源管理部51は、リレー241のID及びリレー242のIDを含む指令信号を送信させる。
【0053】
第2信号送信部152は、ビットカウンタ23に通信線を介して接続されているとともに、電源線PLに接続されている。第1電源分配装置20Eの信号受信部22により、リレー241のID及びリレー242のIDを含む指令信号が受信されると、ビットカウンタ23によりリレー241がオン状態に切り替えられるとともに、リレー242のID情報が第2信号送信部152へ送信される。第2信号送信部152は、リレー242のID情報に基づいて、リレー242に対する指令信号を、電源線PLを介して第2電源分配装置20へ送信する。これにより、リレー242もオン状態に切り替えられ、負荷35へ電源が供給される。
【0054】
また、電源管理部51は、リレー241のIDを含まずリレー242のIDを含む指令信号を、第1信号送信部151から送信させてもよい。この場合、第1電源分配装置20Eの信号受信部22は、第1電源分配装置20Eよりも下流側のリレー242のIDと指令信号との照合を行い、指令信号がリレー242のIDと一致した場合には、ビットカウンタ23へ「1」を送信するとともに、リレー242のID情報を第2信号送信部152へ送信する。これにより、リレー241及びリレー242がオン状態に切り替えられ、負荷35へ電源が供給される。
【0055】
なお、本実施形態は、第1電源分配装置20Eを第3実施形態に適用し、電源管理システム100Cの電源分配装置20の少なくとも1つを第1電源分配装置20Eにした実施形態であるが、第1電源分配装置20Eを適用できるのは第3実施形態に限らない。第1電源分配装置20Eを、第1実施形態や、第2実施形態、第4実施形態に適用してもよい。
【0056】
<5-2.効果>
以上説明した第5実施形態によれば、前述した効果(1)~(7)に加え、以下の効果を奏する。
【0057】
(8)第1電源分配装置20Eの信号受信部22により受信された信号情報に基づいて、第2信号送信部152からリレー241に接続された第2電源分配装置20へ、リレー242に対する指令信号が送信される。よって、複数の電源分配装置が直列に接続されている場合でも、複数の電源分配装置を跨いだリレー制御を実現することができる。
【0058】
(他の実施形態)
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0059】
(a)上記第5実施形態では、電源分配装置が2段に接続されているが、2段に限定されるものではない。電源分配装置を3段以上接続してもよい。つまり、信号送信部15を備える複数の第1電源分配装置20Eを直列に接続して、3つ以上の電源分配装置を跨いだリレー制御を実現してもよい。
【0060】
(b)上記各実施形態では、信号分離部21は、受動素子で構成されたフィルタであったが、これに限定されるものではない。信号分離部21は、受動素子で構成されたフィルタよりも消費電流は大きくなるものの、複雑な信号処理が可能なマイコンなどでもよい。
【0061】
(c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0062】
(d)上述した電源管理システムの他、当該電源管理システムに含まれる電源分配装置、電源管理方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0063】
10…バッテリ、20,20E…電源分配装置、24…リレー、31,32,33,35,310,315…負荷、50,50D…電源管理装置、PL…電源線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8