IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アドミニストレイターズ オブ ザ テューレイン エデュケイショナル ファンドの特許一覧

特許7071119直列流れの中の溶液条件を変化させる装置および方法
<>
  • 特許-直列流れの中の溶液条件を変化させる装置および方法 図1
  • 特許-直列流れの中の溶液条件を変化させる装置および方法 図2
  • 特許-直列流れの中の溶液条件を変化させる装置および方法 図3
  • 特許-直列流れの中の溶液条件を変化させる装置および方法 図4
  • 特許-直列流れの中の溶液条件を変化させる装置および方法 図5
  • 特許-直列流れの中の溶液条件を変化させる装置および方法 図6
  • 特許-直列流れの中の溶液条件を変化させる装置および方法 図7A
  • 特許-直列流れの中の溶液条件を変化させる装置および方法 図7B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】直列流れの中の溶液条件を変化させる装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/75 20060101AFI20220511BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G01N21/75 Z
B01J19/00 321
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2017520968
(86)(22)【出願日】2015-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-12-14
(86)【国際出願番号】 US2015055204
(87)【国際公開番号】W WO2016061024
(87)【国際公開日】2016-04-21
【審査請求日】2018-10-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】62/063,020
(32)【優先日】2014-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517129522
【氏名又は名称】アドミニストレイターズ オブ ザ テューレイン エデュケイショナル ファンド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】リード ウェイン エフ
【合議体】
【審判長】福島 浩司
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-194079(JP,A)
【文献】特表2011-525967(JP,A)
【文献】特表2002-517527(JP,A)
【文献】特表2003-500499(JP,A)
【文献】特表2007-522298(JP,A)
【文献】特表2007-511357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0296472(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0240011(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0090630(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-21/83
G01N35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)試料を含むように適合された、化学反応器または注入ループである、試料リザーバと、
(b)
(i)第1の混合室溶液を含むように適合された第1の混合室であって、前記第1の混合室溶液が希釈された試料を含む、第1の混合室
(ii)前記試料を前記試料リザーバから前記第1の混合室内に送達するように適合された第1の試料ポンプ、
(iii)第1の液体を含むように適合された第1の液体リザーバであって、前記第1の液体が前記第1の混合室における前記試料の第1の条件を変更するように構成されており、前記第1の条件が、イオン強度、pH値、界面活性剤含量、及び溶媒極性からなるグループから選択される、第1の液体リザーバ、
(iv)前記第1の液体を前記第1の液体リザーバから前記第1の混合室内に送達するように適合された第1の液体ポンプであって、前記第1の液体を前記第1の混合室内で試料と混合して前記試料の前記第1の条件を変更し、前記試料を希釈し、前記第1の混合室溶液を生成する、第1の液体ポンプ、および
(v)前記第1の混合室と流体連通する第1の検出器であって、前記第1の混合室溶液の属性を検出するように構成された、第1の検出器、
を備える第1のシステムと、
(c)前記第1のシステムに対して直列の第2のシステムであって、
(i)前記第1の検出器の下流にあり前記第1の検出器と流体連通する第2の混合室であって、第2の混合室溶液を含むように適合され、前記第2の混合室溶液が、希釈された第1の混合室溶液を含む、第2の混合室、
(ii)第2の液体を含むように適合された第2の液体リザーバであって、前記第2の液体が前記第2の混合室における前記第1の混合室溶液の第2の条件を変更するように構成されており、前記第2の条件が、イオン強度、pH値、界面活性剤濃度、及び溶媒極性からなるグループから選択される、第2の液体リザーバ、
(iii)前記第2の液体を前記第2の液体リザーバから前記第2の混合室内に送達するように適合された第2の液体ポンプであって、前記第2の液体を前記第2の混合室内で前記第1の混合室溶液と混合して前記第1の混合室溶液の前記第2の条件を変更し、前記第1の混合室溶液を希釈し、前記第2の混合室溶液を生成する、第2の液体ポンプ、
および
(iv)前記第2の混合室と流体連通する第2の検出器であって、前記第2の混合室溶液の属性を検出するように構成された、第2の検出器、
を備える第2のシステムと
を備える装置。
【請求項2】
前記第2のシステムに対して直列の第3のシステムをさらに備え、前記第3のシステムが、
(i)前記第2の検出器の下流にあり前記第2の検出器と流体連通する第3の混合室であって、第3の混合室溶液を含むように適合され、前記第3の混合室溶液が、希釈された第2の混合室溶液を含む、第3の混合室、
(ii)第3の液体を含むように適合された第3の液体リザーバであって、前記第3の液体が前記第3の混合室における前記第2の混合室溶液の第3の条件を変更するように構成されており、前記第3の条件が、イオン強度、pH値、界面活性剤含量、及び溶媒極性からなるグループから選択される、第3の液体リザーバ、
(iii)前記第3の液体を前記第3の液体リザーバから前記第3の混合室内に送達するように適合された第3の液体ポンプであって、前記第3の液体を前記第3の混合室内で前記第2の混合室溶液と混合して前記第2の混合室溶液の前記第3の条件を変更し、前記第2の混合室溶液を希釈し、前記第3の混合室溶液を生成する、第3の液体ポンプ、および
(iv)前記第3の混合室と流体連通する第3の検出器であって、前記第3の混合室溶液の属性を検出するように構成された、第3の検出器、
を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
直列経路で1つまたは複数の追加のシステムをさらに備え、前記1つまたは複数の追加のシステムがそれぞれ、混合室、液体リザーバ、液体ポンプおよび少なくとも1つの検出器を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
1つまたは複数の追加の検出器をさらに備え、前記1つまたは複数の追加の検出器がそれぞれ、
前記試料リザーバと前記第1の混合室の間に前記試料リザーバおよび前記第1の混合室と流体連通して配置されており、または
前記第1の混合室、又は前記第2の混合室下流に、前記第1の混合室又は前記第2の混合室流体連通して配置されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
それぞれの検出器が、光散乱、紫外/可視吸収、赤外吸収、屈折率測定、粘度、伝導率、pH、旋光測定、濁度、蛍光、円偏光二色性、ラマン散乱および複屈折からなるグループから選択されたタイプの検出器である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
それぞれのシステムが少なくとも2つの検出器を備える、請求項1から5までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも2つの検出器が、同じ属性を異なる条件下で検出する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも2つの検出器が互いに連絡する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
それぞれの検出器が別の検出器と連絡する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
混合室から検出器に混合室溶液を送達するように適合された少なくとも1つの追加の試料ポンプをさらに備える、請求項1から9までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの追加の試料ポンプが、前記第1の混合室から前記第1の検出器に前記第1の混合室溶液を送達し、または前記第2の混合室から前記第2の検出器に前記第2の混合室溶液を送達るように適合された、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記試料リザーバが注入ループである、請求項1から11までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記試料が、ポリマー、モノマー、塩、酸、塩基、界面活性剤、ナノ粒子、タンパク質、多糖、コロイド、細胞もしくは細胞の断片、細胞器官、ミセル、金属イオン、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液、小分子、蛍光染料、キレート剤またはこれらの組合せを含む、請求項1から12までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記試料が、ポリマー、モノマーまたはこれらの組合せを含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
第1世代の重合反応の自動連続オンラインモニタリング(「FGA」)システムと流体連通する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記FGAシステムが混合室と流体連通する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
(a)化学反応器または注入ループである試料リザーバから、第1の混合室に試料を流入させること、
(b)前記第1の混合室に第1の液体を流入させること、
(c)前記試料と前記第1の液体とを混合し、前記試料を希釈して第1の混合室溶液を形成することであって、前記第1の液体が前記第1の混合室における前記試料の第1の条件を変更するように構成されており、前記第1の条件が、イオン強度、pH値、界面活性剤含量、及び溶媒極性からなるグループから選択されること、
(d)前記第1の混合室溶液の流れを第1の検出器に通して、前記第1の混合室溶液の属性を検出すること、
(e)前記第1の混合室溶液を前記第1の検出器から第2の混合室に流すこと、
(f)前記第1の液体とは同一でない第2の液体を前記第2の混合室に流入させること、
(g)前記第1の混合室溶液と前記第2の液体とを混合し、前記第1の混合室溶液を希釈して第2の混合室溶液を形成することであって、前記第2の液体が前記第2の混合室における前記第1の混合室溶液の第2の条件を変更するように構成されており、前記第2の条件が、イオン強度、pH値、界面活性剤含量、及び溶媒極性からなるグループから選択されること、および
(h)前記第2の混合室溶液の流れを第2の検出器に通して、前記第2の混合室溶液の属性を検出すること
を含む方法。
【請求項18】
前記第1の混合室に前記試料を流入させる前に、前記試料リザーバからの前記試料を検出器に流すことをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(i)前記第2の混合室溶液を前記第2の検出器から第3の混合室に流すこと、
(j)第3の液体を前記第3の混合室に流入させること、
(k)前記第2の混合室溶液と前記第3の液体とを混合し、前記第2の混合室溶液を希釈して第3の混合室溶液を形成することであって、前記第3の液体が前記第3の混合室における前記第2の混合室溶液の第3の条件を変更するように構成されており、前記第3の条件が、イオン強度、pH値、界面活性剤含量、及び溶媒極性からなるグループから選択されること、および
(l)前記第3の混合室溶液の流れを第3の検出器に通して、前記第3の混合室溶液の属性を検出すること
をさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の混合室溶液又は前記第2の混合室溶液うちの少なくとも1つの混合室溶液の流れを、1つまたは複数の追加の検出器に通すことをさらに含む、請求項17から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の混合室溶液又は前記第2の混合室溶液流れがそれぞれ、少なくとも2つの検出器に通される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも2つの検出器が、同じ属性を異なる条件下で検出する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも2つの検出器が互いに連絡する、請求項17から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
それぞれの検出器が別の検出器と連絡する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
混合室溶液をFGAに流すことをさらに含む、請求項17から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の混合室溶液又は前記第2の混合室溶液うちの少なくとも1つの混合室溶液の条件を、それぞれ、前記第1の検出器又は前記第2の検出器通す前に調節することをさらに含む、請求項17から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記試料リザーバからの前記試料が、ポリマー、モノマー、塩、酸、塩基、界面活性剤、ナノ粒子、タンパク質、多糖、コロイド、細胞もしくは細胞の断片、細胞器官、ミセル、金属イオン、キレート剤、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液、小分子、蛍光染料またはこれらの組合せを含む、請求項17から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記試料リザーバからの前記試料が、ポリマー、モノマーまたはこれらの組合せを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の条件がイオン強度であり、前記第2の条件がイオン強度である、請求項17から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の条件がpHであり、前記第2の条件がpHである、請求項17から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の混合室溶液又は前記第2の混合室溶液属性を検出する前記第1又は第2の検出器が、光散乱、紫外/可視吸収、赤外吸収、屈折率測定、粘度、伝導率、pH、旋光測定、濁度、蛍光、円偏光二色性、ラマン散乱および複屈折からなるグループから選択されたタイプの検出器である、請求項17から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記試料リザーバが、化学反応器であり、重合反応を行うように構成されている、請求項17から31までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援の声明
本発明の一部は、全米科学財団によって授与されたEPS-1430280の下、米国政府の支援を受けてなされたものである。米国政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2014年10月13日に出願された米国特許仮出願第62/063,020号の恩典を主張するものであり、その開示は、参照によって本明細書に組み込まれている。
本開示は、限定はされないが、電解質、酸、塩基、界面活性剤、小分子、蛍光染料、薬物、キレート剤、ポリマー、コロイドなどのフォーミュレーション添加物(formulation additive)の増分を直列に添加し、それぞれのフォーミュレーションステップにおいて、検出器段が、それぞれの添加物の効果をモニタリングすることを可能にする、直列経路での溶液条件のフォーミュレーションに関する。本開示は、特に、直列経路で流れている溶液の条件を変化させ、直列経路を溶液が流れているときに溶液の属性(property)を検出する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化学反応が起こっているときにその化学反応をモニタリングすることができれば、例えば,ポリマー反応、重合反応および重合後反応中にポリマーの特性およびポリマーの相互作用を決定することができれば、コストが低減し、反応効率が増大する。ポリマー「反応」は、ポリマーおよび/もしくはコロイドが生成される反応、修飾される反応、または、それら自体または他の種と化学的にもしくは物理的に相互作用する反応を含む。重合反応は、限定はされないが、重縮合、フリーラジカル重合および制御ラジカル重合(controlled radical polymeriation:CRP)、および非共有重合反応を含む。参考文献1~8を参照されたい。重合後修飾は、生体共役反応(bioconjugation)などによる、帯電した基、グラフト鎖および生体分子でのポリマーの官能化を含む。参考文献1~3を参照されたい。ポリマー相互作用は、帯電した構造体(参考文献1~4を参照されたい)ならびに物質を捕捉および放出する自己集合構造体を形成する、中性ポリマーの界面活性剤会合を含む。参考文献1~3を参照されたい。
【0004】
重合反応の連続モニタリングを可能にする装置は既に開発されている。例えば米国特許第653,150号および8,322,199号を参照されたい。これらの特許はそれぞれ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。これらの重合反応の自動連続オンラインモニタリング(Automatic Continuous Online Monitoring of Polymerizaion Reactions:「ACOMP」)システムは、「流体-流体」試料ハンドリングの代わりとなることによって中間処理ステップを回避する。「第1世代のACOMP」(First Generation ACOMP:「FGA」)では、希釈されたストリームを生成するために、反応器流体が連続的に抽出、希釈および条件調節される。中間の固相は回避され、高倍率の希釈(1000倍以上)は、元の溶媒をごく小さな混和物にすることにより、溶媒を変化させることがある。このような抽出/希釈/条件調節は10~200秒かかりうる。
第2世代のACOMPシステム(Second Generation ACOMP:「SGA」)は、刺激応答性ポリマーの合成中のポリマー刺激応答の始まりおよび進展を測定するように特に設計されている。WO2009/149328;McFaul, Colin A. et al., "Simultaneous Multiple Sample Light Scattering Detection Of LCST During Copolymer Synthesis", Polymer, 2011, 4825-4833; Reed, Wayne F. et al., "Online, continuous monitoring of the sensitivity of the LCST of NIPAM-Am copolymers to discrete and broad composition distributions", Polymer, 2014, 4899-4907を参照されたい。図1は、米国特許第6,653,150号、8,322,199号および6,052,184号に記載されているFGAシステムを示す。これらの特許はその全体が参照によって組み込まれている。このFGAシステムは、SGAに流れを供給する。この図は、(直列送達ポンプから発出する管路を用いる)直列動作モードを示し、このモードでは、N個の検出器列段の全体にわたって溶媒条件は同じままだが、温度、光による照射、超音波などの刺激は段ごとに変化しうる。この図はさらに、溶液条件を変化させる目的に使用される並列流れシステムを示し、この並列流れシステムは、完全に別個の流れ経路を含む。直列流れ経路と並列流れ経路は、ソレノイドダイバータ弁(図の「sol」)への信号によって切り換えることができる。並列流れ動作モードは、反応器から引き抜かれた液体が、並列送達ポンプに入ることを要求し、この並列送達ポンプは、その液体をN個の別個のストリームに分割する。Nは検出器列の数である。次いで、所望の異なる組成の溶媒をN個のストリームのそれぞれのストリームと個別に混合するために、マルチヘッド臑動ポンプが使用される。この並列法の使用は、直列法の使用のN倍の反応器から引き抜きを必要とする。Nは一般に8または16などの数であり、そのため、並列モードでの反応による消費は、直列モードのそれよりも1桁大きい。さらに、並列モードは、N個の異なる溶媒と混合するN個のストリームを並列に駆動することができる別個の送達ポンプを必要とする。
【0005】
図1の並列流れ設計は、複雑さ、コスト、性能および効率に関していくつかの欠陥を示す。重合反応などの化学反応中に、同時にさまざまな溶液条件下にある反応生成物および中間物を自動連続モニタリングすることができるシステムが求められている。同時に異なる溶液条件下にある化学反応生成物および中間物のこのようなモニタリングが、より低いコストおよびより高い性能および効率で、簡単に実施されることが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、直列流れ中の液体ストリームの溶液条件を別々の増分で変化させる装置および使用方法を提供する。この装置および方法は、溶液に対する増分変化と増分変化の間の直列流れ経路内に、1つまたは複数の検出器を挿入する。
本開示の目的は、溶液の属性を決定する手段を提供することにある。この属性は、限定はされないが、溶液に含まれるポリマーまたはコロイドの状態を含む。
【0007】
本開示の追加の目的は、測定する多数の溶液条件を個々の並列混合段を使用して得るのではなしに、多数の条件の溶液を単一の直列流れの中に提供する、より簡潔で、経済的で、実用的でかつ効率的な方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本開示が、
(a)試料を含むように適合された試料リザーバ(例えば化学反応器または注入ループ)と、
(b)(i)第1の混合室溶液を含むように適合された第1の混合室、(ii)試料を試料リザーバから第1の混合室内に送達するように適合された第1の試料ポンプ、(iii)第1の溶媒を含むように適合された第1の溶媒リザーバ、(iv)第1の溶媒を第1の溶媒リザーバから第1の混合室内に送達するように適合された第1の溶媒ポンプ、および(v)第1の混合室と流体連通する第1の検出器を含む第1のシステムと、
(c)第1のシステムに対して直列の第2のシステムであって、(i)第1の検出器の下流にあり第1の検出器と流体連通する第2の混合室であり、第2の混合室溶液を含むように適合された第2の混合室、(ii)第2の溶媒を含むように適合された第2の溶媒リザーバ、(iii)第2の溶媒を第2の溶媒リザーバから第2の混合室内に送達するように適合された第2の溶媒ポンプ、および(iv)第2の混合室と流体連通する第2の検出器を含む第2のシステムと
を含む装置を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、この装置が、第2のシステムに対して直列の第3のシステムをさらに含み、この第3のシステムが、(i)第2の検出器の下流にあり第2の検出器と流体連通する第3の混合室であり、第3の混合室溶液を含むように適合された第3の混合室、(ii)第3の溶媒を含むように適合された第3の溶媒リザーバ、(iii)第3の溶媒を第3の溶媒リザーバから第3の混合室内に送達するように適合された第3の溶媒ポンプ、および(iv)第3の混合室と流体連通する第3の検出器を含む。
いくつかの場合には、この装置が、直列経路で1つまたは複数の追加のシステムをさらに含み、この1つまたは複数の追加のシステムがそれぞれ、混合室、溶媒リザーバ、溶媒ポンプおよび少なくとも1つの検出器を含む。この装置に含まれるシステムの数は、この装置が使用されている特定の用途に依存する。この装置が直列経路で有することができるシステムの数に制限はない。
【0010】
さまざまな場合に、この装置は、1つまたは複数の追加の検出器をさらに含む。さまざまな場合に、この1つまたは複数の追加の検出器は、試料リザーバと第1の混合室の間に配置されており、試料リザーバおよび第1の混合室と流体連通している。いくつかの実施形態では、この1つまたは複数の追加の検出器が、第1の混合室、第2の混合室または第3の混合室(存在するとき)の下流に、第1の混合室、第2の混合室または第3の混合室(存在するとき)と流体連通して配置されている。いくつかの場合には、特定のシステム内に存在する検出器が互いに連絡する。
さまざまな実施形態で、それぞれの検出器は、光散乱、紫外/可視吸収、赤外吸収、屈折率測定、粘度、伝導率、pH、旋光測定、濁度、蛍光、円偏光二色性、ラマン散乱および複屈折からなるグループから選択されたタイプの検出器である。いくつかの場合には、この装置のそれぞれのシステム(例えば第1のシステム、第2のシステム、第3のシステム)が、少なくとも2つの検出器を含む。いくつかの実施形態では、この少なくとも2つの検出器が、光散乱および粘度を検出する。さまざまな実施形態で、この少なくとも2つの検出器は、同じ属性を異なる条件下で(例えば異なる温度で)検出する。
【0011】
さまざまな場合に、この装置は、混合室から検出器に混合室溶液を送達するように適合された少なくとも1つの追加の試料ポンプを含む。さまざまな実施形態で、この少なくとも1つの追加の試料ポンプは、第1の混合室から第1の検出器に第1の混合室溶液を送達し、または第2の混合室から第2の検出器に第2の混合室溶液を送達し、または(存在するときに)第3の混合室から第3の検出器に第3の混合室溶液を送達するように適合されている。
【0012】
いくつかの場合には、この装置が、第1の混合室と記第1の検出器の間、第2の混合室と第2の検出器の間、または第3の混合室と第3の検出器の間(存在するとき)に配置された条件調節構成要素をさらに含む。この条件調節構成要素は、第1の混合室溶液または第2の混合室溶液の条件を予め選択された条件に調節することができる。さまざまな場合に、この装置は、第1の混合室と第1の検出器の間に配置された第1の条件調節構成要素であって、第1の混合室溶液の条件を調節することができる第1の条件調節構成要素、および第2の混合室と第2の検出器の間に配置された第2の条件調節構成要素であって、第2の混合室溶液の条件を調節することができる第2の条件調節構成要素をさらに含む。
さまざまな場合に、試料は、ポリマー、モノマー、塩、酸、塩基、界面活性剤、ナノ粒子、タンパク質、多糖、コロイド、細胞もしくは細胞の断片、細胞器官、ミセル、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液、小分子、金属イオン、キレート剤、蛍光染料またはこれらの組合せを含む。例えば、試料は、ポリマー、モノマーまたはこれらの組合せを含むことができる。
【0013】
いくつかの場合には、この装置が、第1世代の重合反応の自動連続オンラインモニタリング(「FGA」)システムと流体連通している。さまざまな場合に、このFGAシステムは混合室と流体連通している。
別の態様では、本開示が、(a)試料リザーバから第1の混合室に試料を流入させること、(b)第1の混合室に第1の溶媒を流入させること、(c)試料と第1の溶媒とを混合して、第1の混合室溶液を形成すること、(d)第1の混合室溶液の流れを第1の検出器に通して、第1の混合室溶液の属性を検出すること、(e)第1の混合室溶液を第1の検出器から第2の混合室に流すこと、(f)第1の溶媒とは同一でない第2の溶媒を第2の混合室に流入させること、(g)第1の混合室溶液と第2の溶媒とを混合して、第2の混合室溶液を形成すること、および(h)第2の混合室溶液の流れを第2の検出器に通して、第2の混合室溶液の属性を検出することを含む方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法が、第1の混合室に試料を流入させる前に、試料リザーバからの試料を検出器に流すことをさらに含む。
さまざまな実施形態で、この方法は、(i)第2の混合室溶液を第2の検出器から第3の混合室に流すこと、(j)第3の溶媒を第3の混合室に流入させること、(k)第2の混合室溶液と第3の溶媒とを混合して、第3の混合室溶液を形成すること、および(l)第3の混合室溶液の流れを第3の検出器に通して、第3の混合室溶液の属性を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法が、試料溶液の流れを、直列経路での4つ以上の追加のシステム(例えば4、5、6、7、8、9もしくは10個または10個よりも多くのシステム)に通すことをさらに含む。試料溶液の流れが通されるシステムの数は、この方法が実施されている特定の用途に依存する。直列経路で試料溶液の流れを通すことができる混合室の数および溶液条件の数に制限はない。
【0015】
いくつかの場合には、この方法が、第1の混合室溶液、第2の混合室溶液または第3の混合室溶液(存在するとき)のうちの少なくとも1つの混合室溶液の流れを、1つまたは複数の追加の検出器に通すことを含む。例えば、第1の混合室溶液、第2の混合室溶液または第3の混合室溶液(存在するとき)の流れがそれぞれ、少なくとも2つの検出器を通ることができる。さまざまな場合に、この少なくとも2つの検出器は、同じ属性を異なる条件下で検出する。
いくつかの実施形態では、この方法が、混合室溶液(例えば第1の混合室溶液、第2の混合室溶液、第3の混合室溶液(存在するとき)をFGAに流すことをさらに含む。
【0016】
さまざまな実施形態で、この方法は、対応するそれぞれの第1の検出器、第2の検出器または第3の検出器に通す前に、第1の混合室溶液、第2の混合室溶液または第3の混合室溶液(存在するとき)のうちの少なくとも1つの混合室溶液の条件を調節することをさらに含む。
さまざまな場合に、化学反応器からの試料は、ポリマー、モノマー、塩、酸、塩基、界面活性剤、ナノ粒子、タンパク質、多糖、コロイド、細胞もしくは細胞の断片、細胞器官、ミセル、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液、小分子、蛍光染料、キレート剤、金属イオンまたはこれらの組合せを含む。例えば、化学反応器からの試料は、ポリマー、モノマーまたはこれらの組合せを含むことができる。
いくつかの実施形態では、第1の混合室溶液が、第2の混合室溶液とは異なる条件を有し、この条件が、温度、イオン強度、pH、溶媒極性、純粋な溶媒の混合物、溶液組成、試料濃度(例えば希釈された反応器液体の濃度)、照明および放射からなるグループから選択される。例えば、この異なる条件を、イオン強度またはpHとすることができる。さまざまな実施形態で、それぞれの混合室は、別の混合室とは異なる状態を有する。
【0017】
いくつかの場合には、第1の混合室溶液、第2の混合室溶液または第3の混合室溶液(存在するとき)の属性を検出する検出器が、光散乱、紫外/可視吸収、赤外吸収、屈折率測定、粘度、伝導率、pH、旋光測定、濁度、蛍光、円偏光二色性、ラマン散乱および複屈折からなるグループから選択されたタイプの検出器である。
いくつかの実施形態では、化学反応器が重合反応を含む。
さまざまな場合に、少なくとも1つの溶媒の組成が、その溶媒が混合室に流入する前に少なくとも1つの検出器によって検出された属性に基づいて変更される。
【0018】
図面に関して書かれた以下の詳細な説明を検討することによって、当業者には、他の態様および利点が明白となろう。本明細書に開示された装置および方法は、さまざまな形態の実施形態を受け入れることができるが、以降の説明は、特定の実施形態を含む。本開示は例示目的であること、および、本開示が、記載された特定の実施形態に本発明を限定することは意図されていないことを理解すべきである。
図示され以下で説明される発明のある種の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲において示されるが、本発明が、指定された詳細に限定されることは意図されていない。これは、本発明の趣旨からいかなる形であれ逸脱することなく、示された発明の形態および詳細ならびに示された発明の動作のさまざまな省略、改変、置換および変更を実施することができることを当業者は理解するためである。「不可欠」または「必須」と特に明示されていない限り、本発明の特徴は不可欠でもまたは必須でもない。
【0019】
以下の図面は本明細書の部分を構成する。以下の図面は、本発明のある種の態様をさらに示すために含まれている。これらの図面のうちの1つまたは複数の図面を、本明細書に提示された特定の実施形態の説明とともに参照することによって、本発明をより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第2世代のACOMP(「SGA」)内に流れを供給する第1世代のACOMP(「FGA」)システムの略図である。
図2】実装されたときの本開示の一実施形態を示す図である。
図3】実装されたときの本開示の一実施形態を示す図である。この装置は、第1の混合室から直接に通じる別個の抽出および希釈段を含み、この別個の抽出および希釈段は次いで、別個の測定のための第1世代のACOMPにつながる。このことは、直列流れストリーム中で利用可能な濃度および溶液条件とは異なる濃度および溶液条件下でFGA測定を実施する必要があるときに望ましいことがある。
図4】本開示に基づく直列流れ装置を使用した50:50アクリルアミドとスチレンスルホネートのバッチ共重合による比粘度、UVおよび光散乱データを、時間に対して示した図である。
図5】本開示に基づく直列流れ装置を使用した50:50アクリルアミドとスチレンスルホネートのバッチ共重合におけるモノマーの組成ドリフトを、時間に対して示した図である。
図6】本開示に基づく直列流れ装置を使用してスチレンスルホネートモノマーをアクリルアミドに添加した半バッチ共重合反応による比粘度、UVおよび光散乱データを、時間に対して示した図である。
図7A】本開示に基づく直列流れ装置を使用したアクリルアミドとスチレンスルホネートとの間のバッチ反応(図7A)および半バッチ反応(図7B)におけるηsp(t)の挙動の対比を示す図である。
図7B】本開示に基づく直列流れ装置を使用したアクリルアミドとスチレンスルホネートとの間のバッチ反応(図7A)および半バッチ反応(図7B)におけるηsp(t)の挙動の対比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書では、反応溶液のサンプリングされた部分が直列経路で流れるときに反応の条件を変更および/または検出することにより、重合反応などの化学反応の連続モニタリングおよび制御を可能にする装置および方法が開示される。本開示は、特に、直列流れ中の液体ストリームの溶液条件を別々の増分で変化させる装置および方法を提供する。この装置および方法は、溶液に対する増分変化と増分変化の間の直列流れ経路内に、1つまたは複数の検出器を挿入する。このことは、溶液条件と溶液条件と間に配置されたこの1つまたは複数の測定機器が、溶液の属性を決定することを可能にする。この属性は、所与のそれぞれの溶液条件にある溶液に含まれるポリマーまたはコロイドの状態を含む。この方式は、測定する多数の溶液条件を個々の並列混合段を使用して得るのではなしに、多数の条件の溶液を単一の直列流れの中に提供する、はるかに簡潔で、経済的で、実用的でかつ効率的な方式である。
【0022】
本明細書に開示された直列装置および方法は、知られている並列装置および方法よりも、試料の浪費がかなり少なく、より経済的であり、より効率的であり、性能がより高い。異なる溶液条件ごとに1つの試料ストリームを必要とする(すなわち、N個の異なる溶液条件に対してN個の試料ストリームが必要な)並列装置とは対照的に、直列装置は、どれだけ多くの異なる溶液条件が存在しても1つの試料ストリームだけを使用する(すなわち、N個の異なる溶液条件に対して1つの試料ストリームで済む)。したがって、並列流れ装置および方法は、直列装置よりも、反応器からの試料をN倍消費し、このことは、並列法を、はるかに無駄の多いものにする。さらに、並列装置および方法は、溶液条件ごとに別個の溶液送達ポンプを必要とする(すなわちN個の溶液送達ポンプを必要とする)。対照的に、直列装置は、全てのN個の段を通して溶液を駆動する単一の溶液送達ポンプを使用することができ、このことは、直列装置をかなり経済的にする。さらに、潜在的に、動作時間中のポンプの問題が、同じ動作間隔の単一の溶液送達ポンプの問題のN倍になりうる。このことは、並列法の性能を、直列装置の性能よりも劣ったものにする。さらに、N個の溶液送達ポンプの保守コストは、直列装置内の単一の溶液送達ポンプの保守コストのN倍になりそうである。
【0023】
本開示の利点は、合成中に、ポリマーおよび/またはコロイドの応答および属性を、異なる溶液条件下で同時にモニタリングすることを、本開示が可能にする点である。したがって、限定はされないが、イオン強度、pH、界面活性剤、蛍光染料、温度および照明などの溶液条件の変化に対するポリマーの応答を、その合成のそれぞれの瞬間のポリマーまたはコロイドの特性と相関させることができる。その結果は、溶液条件に対するポリマーまたはコロイドの応答を制御する物理的過程および化学的過程のより完全な理解、および最適化された合成プロセスである。本開示は、限定はされないが刺激応答性ポリマーおよびコロイドを含む高性能のポリマーの工業規模の製造を可能にする。このような製造は、あまりに困難であるために現在のところ最適化したりスケールアップしたりすることができないでいる。
【0024】
図1に示された並列流れ設計を有するACOMPシステムは、本明細書に開示された直列流れ設計によって改善されるいくつかの欠点を有する。例えば、並列モードの反応器引き抜き流量は、直列モードに比べてN倍である。Nは、検出段の数である。この混合システムは、N個のそれぞれ段が別個の希釈および混合を必要とするため、より複雑である。このシステムは、直列流れ経路と並列流れ経路の両方を必要とし、直列モードと並列モードを切り換える必要があるため、システム全体の複雑さおよびコストは増大する。このシステムはさらに、pH、イオン強度または界面活性剤の変更などの変更と変更の間に溶液条件を段階的に変化させるときに、反応器液体および希釈溶媒を浪費する。
【0025】
本明細書に開示された直列流れモデルは、並列流れモデルや図1で使用されている直列/並列組合せ流れモデルにはない多くの利点を提供する。それらの利点には、限定はされないが、より単純な設計、より低い構築コスト、動作上および保守上の問題のより低い確率、反応器液体および溶媒のより少ない消費、および連続する複数の段において異なる溶媒成分を添加できる能力、すなわち「オンラインフォーミュレーション」が含まれる。これらの利点は、ACOMPシステムのより低い動作コストおよび効率利得に寄与する。
【0026】
しかしながら、いくつかの場合には、溶媒変化が、以前のそれぞれの変化から外れて起こり、その結果、全く異なる多くの溶媒条件(例えば異なる溶媒、イオン強度は同じだが異なる塩)を同時に試験することができないため、直列流れモデルが最適ではない。以下は、直列モードが最適でないときの例である:反応器液体とある程度両立できる異なる溶媒中のポリマーの立体配座属性を試験したいとき、および異なるタイプの塩、界面活性剤、特定の金属イオン、異なる染料などに対するポリマーの挙動を試験するとき。これらの試験はいずれも直列モードでは実行することができない。また、いくつかの実施形態において、非平衡溶液が単一の溶液条件下での測定だけを必要とする場合には、本開示が必要ない。
【0027】
本明細書に開示された直列モードは、混合段と混合段の間でイオン強度を段階的に増大させることによりイオン強度の増大に対するポリマーの挙動を測定することができるときに特に有利である。これは、並列モードでも実行することができるが無駄が多く効率も悪い。多数の段を並列に使用して、「オンラインフォーミュレーション」、すなわち異なる溶液成分、例えば界面活性剤、他のポリマー、塩、pH変化を逐次的に加える効果を達成することができるが、それは、並列段希釈のために「フォーミュレートされたリザーバ」全体を準備するはるかに無駄が多く効率の悪いプロセスによってなされる。さらに、溶液に関係しない因子の変化も、直列モードで最もよく実行されるが、それは、溶媒を変化させる特徴、例えば段間の温度、照明または照射を変化させる特徴を必要としない。これは、限定はされないがイオン化放射および超音波を含む。これらの変化は並列モードでも実行することができるが、それは効率が非常に悪く無駄の多いものになろう。
【0028】
いくつかの実施形態では、さまざまな溶液条件下で実質的に同時に非平衡性溶液を測定する必要がある場合に、本発明を使用することができる。実質的に同時にという句は、複数の測定に必要な時間が、その非平衡性プロセスの時間尺度よりもはるかに短いことを意味する。例えば、異なる溶液条件での全てのこのような測定を1分未満で実行することができ、非平衡性プロセスが、起こるのに数十分または数時間かかる変化を含む場合、これらの測定は、溶液の瞬間的な非平衡状態に対して「実質的に同時」と言えるであろう。一例が、通常は数十分から数時間続くフリーラジカル単独重合反応およびフリーラジカル共重合反応である。ACOMPシステム、または直列検出器を有するシステム、例えば多検出器ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて光散乱、粘度測定、屈折率および紫外/可視吸光度検出器を使用するシステムでは一般に、連続する複数の直列検出器間に遅延時間が生じる。この遅延時間は、検出器間の「死空間」および使用される流量に依存する。非限定的な例は、流量が2ml/分であり、検出器間の死空間が0.10mlである場合である。この場合には、検出器間に3秒の遅延が生じる。本発明について言うと、非限定的な一例として、N=8段であり、1段につき2つの検出器(例えば光散乱および粘度検出器)がある場合、最初の検出器から最後の検出器まで全体で約48秒の遅延が生じる。大部分の重合反応は数十分または数時間かかり、このような遅延は通常、取るに足らないとみなされる。さらに、分析ソフトウェアは、データを分析して、流れているストリーム中のポリマーおよび/またはコロイドの属性を計算するときに、検出器間の遅延を容易に考慮する。したがって、この装置は、任意の瞬間に、多数の異なる条件下にある同じ瞬時試料に対する測定を本質的に同時に実施する。
【0029】
本明細書で使用されるとき、用語「含むように適合された」は、何か、例えば液体をその中に有する、保持する、または担持する物体の能力を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「送達するように適合された」は、何か、例えば液体を別の物体まで運び、運搬しまたは輸送する物体の能力を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「~と連絡する」は、2つ以上の構成要素間の任意の形態の相互作用を指し、この相互作用は、機械的、電気的、磁気的および電磁気的な相互作用を含む。2つの構成要素は互いに接続されていてもよく、互いに直接に接触していなくてもよく、2つの構成要素間に中間装置があってよい。
本明細書で使用されるとき、用語「~と流体連通する」は、流体の流れ、流体の移動および/もしくは輸送のためのルートおよび/またはルート系統、ならびに/または、関心の部分、セクションもしくは構成要素間を流体が流れる一般的な能力もしくは性能を指す。
【0030】
直列流れ装置
本明細書に開示された直列流れ装置を使用して、溶液条件の変化に対してポリマーおよびコロイドがどのように応答するのかを決定することができる。大部分のポリマーおよびコロイドは、溶液条件の変化に対して何らかの形で応答する。例えば、高分子電解質鎖は、イオン強度が低下すると膨張することがあり、ポリ酸およびポリ塩基は、pHが変化すると立体配置的変化を受けることがあり、コロイドは、溶液条件が変化すると合体することがある。このカテゴリ内の他の焦点は、刺激応答性ポリマー(stimuli responsive polymer:「SRP」)または「スマートポリマー(smart polymer)」が、溶液条件の変化、主にそれらの合成中の溶液条件の変化に対してどのように応答するのかを測定することに関する。SRPは、全てのポリマーの空間内の比較的に小さなカテゴリであるが、表面修飾材料、自己回復材料および薬物送達剤などの機能を提供するSRPの開発は現在、強い関心を呼んでいる。本明細書で企図されるSRPの特定のいくつかの例は、限定はされないが、下限臨界溶液温度(lower critical solution temperature)を有するSRP、例えば、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(pNIPAM)およびそのコポリマー;上限臨界溶液温度(upper critical solution temperature)を有するSRP;キャビタンド;デンドリマー;星形ポリマー;ミセル化し、超分子集合体を形成することができるブロックコポリマー;シクロデキストリン;生体ポリマーと混成体を形成した合成ポリマー、例えば、多糖に重合されたアクリル酸エステル、タンパク質または多糖にグラフト重合されたポリエチレングリコール;シリカのナノ粒子;金属;ポリマーがグラフト重合した絶縁体および半導体を含む。例えば参考文献42~50を参照されたい。
【0031】
図2は、本開示の一実施形態を示す。反応器は、ポンプ1によって駆動される再循環ループを有する。本明細書に開示された装置では、この再循環ループが任意選択である。ポンプ1は、歯車型、遠心、シリンジ、臑動、ピストン、スロット、ローブ(lobe)または他のタイプのポンプとすることができる。ポンプ2は、この再循環ループから、通常は特に反応器の容積および反応の持続時間に応じた0.01cm3/分~25cm3/分の範囲の小さな連続ストリームを引き抜く。ポンプ2は、歯車ポンプ、ピストンポンプ、臑動ポンプ、シリンジポンプ、ローブポンプ、スロットポンプ、Qポンプ(Fluid Metering,Inc.米ニューヨーク州Syosset)を含む、反応器液体の粘度によく適したタイプのポンプとすることができる。
【0032】
いくつかの場合には、再循環ループ内の圧力を徐々に解放し、所望の抽出流量を自動的に維持する質量流量コントローラを、ポンプ2の代わりに使用することができる。ポンプ2の調量された流れは混合室内に供給される。この混合室は、ポンプ3を介して溶媒リザーバからも供給を受ける。この混合室は、高圧混合室または低圧混合室とすることができる。ポンプ3の仕事は単に、制御可能な流量でリザーバから混合室内に溶媒をポンピングすることだけであり、したがって、ポンプ3の仕事は、ドージングポンプ、蠕動ポンプおよびピストンポンプを含む多種多様なポンプのそれとすることができる。混合室内の典型的な希釈は、100%未満から数千倍までとすることができる。例えば、反応器が、高濃度のモノマーおよびポリマーを含まない場合には、50%などの非常に低い希釈を提供するだけで十分なことがある。反応器液体が希薄である場合、この混合室を含む最初の溶媒希釈段を省略することができ、引き抜かれた液体は、システムの残りの部分を通過し、液体の増分添加を受け取って、後続のそれぞれの段で溶液条件を変化させる。混濁した反応器溶液の場合、または(例えば光学粒度測定用の)極めて希薄な溶液が必要な場合には、希釈を数千倍とすることができる。
【0033】
ポンプ4は、混合室の希釈された内容物を連続的に引き抜き、それをポンピングして、直列液体流れ経路の残りの部分に通す。これは、後続の全ての混合段に通すことを含む。ポンプ4に対する流量は通常0.2~5ml/分の範囲にあるが、状況に応じて、これよりも遅くまたは速くすることもできる。ポンプ4から出た後、この流れている液体はその直列経路をなおも進み、検出器の列、すなわち検出器段1に入る。検出器段1では、pH装置および伝導率装置が、流れている液体のpHおよび伝導率の測定を実施する。検出器段1では、流れている液体が、その直列経路をなおも進み、液体に対する特性測定を実施する他の検出器の列に入る。一実施形態では、流れているストリームが、モノマー、ポリマー、単純な電解質(例えば塩)、酸、塩基、界面活性剤、ナノ粒子、タンパク質、多糖または他の生体ポリマー、コロイド粒子、生物細胞または細胞断片、細胞器官、ミセル、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液、小分子、キレート剤、金属イオンおよび蛍光染料のうちの1つまたは複数を含む。使用される検出器のタイプは、以下のうちの1つまたは複数を含む:単一角度または多角度全強度光散乱(single or multi-angle total intensity light scattering)、動的光散乱、ミー散乱、蛍光、濁度、粘度、屈折計、旋光計、円偏光二色性、近または中間赤外、およびラマン検出。通常決定されるポリマーおよびコロイド特性のタイプは、重量平均分子量、分子量分布、固有粘度、モノマーの転化、コモノマーの転化、組成ドリフト、瞬時および平均コモノマー組成、多分散性、光学活性、拡散係数、ビリアル係数および他の相互作用係数、微粒子含量、ならびに異なる波長における蛍光の比を含む。このような測定は、ポリマーまたはコロイドについての多くの特性を明らかにすることができる。この特性は、(薬物または蛍光染料などの)小分子を捕捉するその能力、2次および3次構造を形成する能力、光学活性、ミセル化、立体配置的変化、相転移(下限臨界溶液温度または上限臨界溶液温度など)、枝分れ度、架橋、濃度に依存した会合、凝集およびナノ構造化を含む。
【0034】
検出段1の後、ポンプ5が、液体リザーバ2からの所望の液体を、検出段1を出たストリーム中に送達し、混合室1内で混合が実施される。混合された液体の流れは次いで検出段2に通され、そこで、検出段1における属性と同様の属性が測定される。一実施形態では、検出段2が、検出段1と同じ構成要素を含む。他の実施形態では、検出段2が、段1の構成要素および/または他の構成要素の任意の組合せを含む。すなわち、異なる検出段が同じ検出器を含む必要はない。
【0035】
検出段2の後、流れている液体は、液体リザーバ3からの所望の液体、例えば、所与のpH、イオン強度、界面活性剤の所与の濃度、小分子、またはポリマーもしくはコロイド、蛍光染料もしくは標識および薬物の液体と、ポンプ6を使用して混合され、この混合された液体は次いで検出段3を通過する。これらの液体添加段および検出段は、検出段Nから液体が出るまで続く。いくつかの実施形態では、この液体が廃棄され、他の実施形態では、この液体が、(ゲル浸透クロマトグラフィーなどの)クロマトグラフィーシステムに注入され、多数の検出または単に濃度検出にかけられる。参考文献51に記載されているように、自動注入を備えるGPCシステムを接続したシステムが最近、発表された。他の実施形態では、遠隔機器上でのさらなる分析のために、この液体の全体またはこの液体の刻時されたアリコートが保存される。この分析は、ゲル浸透クロマトグラフィー(「サイズ排除クロマトグラフィー」とも呼ばれる)、NMR、質量分析、ラマン散乱、赤外吸収、示差走査熱量測定、レオメトリー、熱重量分析および他の多くのタイプの測定を含む。
【0036】
低圧混合室(low pressure mixing chamber:「LPMC」)が使用される場合にはしばしば「空費段(wasting stage)」が生じる。すなわち、主出口ストリーム中に引っ張られるよりも速く液体がLPMC内にポンピングされることがありうる。この場合の過剰は、除去され、吸い上げられ、または「廃棄される」。例えば、0.1cm3/分のストリームを反応器から連続的に抽出し、LPMC内で、溶媒リザーバからの1.9cm3/分の流れと混合するとする。希釈は20倍である。この混合された液体のうち0.5ml/分だけを溶液送達ポンプによって直列ストリーム中にポンピングする場合、流入流量が流出流量と等しくなるように通常は固定体積であるLPMCを出た残りの1.5ml/分は、廃棄されるか、または溶剤回収(または他の目的)に回され、直列流れを形成する主ストリームの部分を構成しない。
【0037】
本明細書に開示された混合室は、LPMCまたは高圧混合室(high pressure mixing chamber:「HPMC」)とすることができる。LPMCが使用されるときには、溶液ポンプを使用して、LPMCから試料溶液を、装置を通して、もしあれば後続の検出器および後続の混合室に引き抜くことができる。HPMCが使用されるとき、試料溶液は、追加の溶液ポンプを必要とすることなく検出器および後続の混合室内を流れることができる。また、LPMC内の試料溶液の体積はしばしば、HPMC内に存在する体積よりもかなり大きい。例えば、多くのミリフルイディックHPMCの混合容積は10マイクロリットルであり、一方、典型的なLPMC容積は1ミリリットル~50ミリリットルである。したがって、いくつかの実施形態ではHPMCの方が好ましいが、しばしばLPMCを利用することができ、普通は1システム当たり1つまたは2つだけ利用される。
【0038】
図3は、実装されたときの本開示の一実施形態を示す。この装置は、第1の混合室から直接に通じる別個の抽出および希釈段を含み、この別個の抽出および希釈段は次いで、別個の測定のための第1世代のACOMPにつながる。このことは、直列流れストリーム中で利用可能な濃度および溶液条件とは異なる濃度および溶液条件下でFGA測定を実施する必要があるときに望ましいことがある。
他の実施形態では、本明細書に開示された装置が、1つまたは複数の直列希釈段を有する。基本的に段数に制限はなく、それよりも多くの希釈段を有する機器またはそれよりも少ない希釈段を有する機器を構築することができる。
【0039】
さまざまな実施形態では、本開示が、8つの直列希釈段を有する。他の実施形態では、本発明が、直列流れ中で溶液条件をどのように決定するのかを制御する自動制御を提供する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された装置が、
(a)試料を含むように適合された試料リザーバ(例えば化学反応器または注入ループ)と、
(b)(i)第1の混合室溶液を含むように適合された第1の混合室、(ii)試料を試料リザーバから第1の混合室内に送達するように適合された第1の試料ポンプ、(iii)第1の溶媒を含むように適合された第1の溶媒リザーバ、(iv)第1の溶媒を第1の溶媒リザーバから第1の混合室内に送達するように適合された第1の溶媒ポンプ、および(v)第1の混合室と流体連通する第1の検出器を含む第1のシステムと、
(c)第1のシステムに対して直列の第2のシステムであって、(i)第1の検出器の下流にあり第1の検出器と流体連通する第2の混合室であり、第2の混合室溶液を含むように適合された第2の混合室、(ii)第2の溶媒を含むように適合された第2の溶媒リザーバ、(iii)第2の溶媒を第2の溶媒リザーバから第2の混合室内に送達するように適合された第2の溶媒ポンプ、および(iv)第2の混合室と流体連通する第2の検出器を含む第2のシステムと
を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、この装置が、第2のシステムに対して直列の第3のシステムをさらに含み、この第3のシステムが、(i)第2の検出器の下流にあり第2の検出器と流体連通する第3の混合室であり、第3の混合室溶液を含むように適合された第3の混合室、(ii)第3の溶媒を含むように適合された第3の溶媒リザーバ、(iii)第3の溶媒を第3の溶媒リザーバから第3の混合室内に送達するように適合された第3の溶媒ポンプ、および(iv)第3の混合室と流体連通する第3の検出器を含む。
【0041】
いくつかの場合には、この装置が、直列経路で1つまたは複数の追加のシステムをさらに含み、この1つまたは複数の追加のシステムがそれぞれ、混合室、溶媒リザーバ、溶媒ポンプおよび少なくとも1つの検出器を含む。例えば、この装置は、合計で2、3、4、5、6、7、8、9または10個のシステムを含むことができる。いくつかの実施形態では、この装置が、10個よりも多くのシステムを含むことができる。この装置に含まれるシステムの数は、この装置が使用されている特定の用途に依存する。この装置が直列経路で有することができるシステムの数に制限はない。
さまざまな実施形態で、この装置は、試料リザーバから流れ出た試料を試料リザーバ内に戻すことを可能にする再循環ループをさらに含む。いくつかの実施形態では、この装置が再循環ループを含まない。
【0042】
いくつかの場合には、この装置が、1つまたは複数の追加の検出器をさらに含む。さまざまな場合に、この1つまたは複数の追加の検出器は、試料リザーバと第1の混合室の間に配置されており、試料リザーバおよび第1の混合室と流体連通している。いくつかの実施形態では、この1つまたは複数の追加の検出器が、第1の混合室、第2の混合室または第3の混合室(存在するとき)の下流に、第1の混合室、第2の混合室または第3の混合室(存在するとき)と流体連通して配置されている。いくつかの場合には、特定のシステム内に存在する検出器が互いに連絡している。
【0043】
この装置の検出器は、反応試料の属性を検出することができる。属性を検出する目的に使用される検出器の例は、限定はされないが、光散乱、紫外/可視吸収、赤外吸収、屈折率測定、粘度、伝導率、pH、偏光測定、濁度、蛍光、円偏光二色性、ラマン散乱および複屈折を含む。いくつかの場合には、装置内に存在するどの検出器も同じ属性を検出しない。さまざまな場合に、装置内に存在する検出器は全て同じ属性を検出するが、それらの検出器はその属性を異なる条件下で検出する。いくつかの実施形態では、装置内に存在する検出器のうちの少なくとも2つの検出器が同じ属性を検出する。
さまざまな実施形態で、この装置のそれぞれのシステムは、異なる条件で動作する少なくとも2つ(例えば2、3または4つ)の検出器を含み、その少なくとも2つの検出器が検出する溶液は、同じ組成を有する。これらの実施形態では、装置内を流れている試料溶液を、混合室を出た後にいくつかの別個のストリームに分割することができ、それぞれの別個のストリームは、その別個のストリームの属性を検出するために別個の検出器に流れることができる。それらの別個のストリームは次いで、この検出ステップの後に、後続の混合室内で再結合して、直列流れ経路を進み続けることができる。例えば、pNIPAMおよびそのコポリマーは、特にイオン強度に依存する下限臨界溶液温度(「LCST」)を経る。本開示によれば、装置の混合室内で、pNIPAMコポリマーを含む試料溶液を調製することができる。特定の溶液条件およびポリマーの特定の合成状態の下でLCSTを決定することを可能にするため、混合室から流出する結果として生じる混合室溶液を2つ以上のストリームに分割し、それぞれ異なる温度にある2つ以上の光散乱検出器に送達することができる。イオン強度を変化させる後続の混合段も同様に、対応するイオン強度の下でLCSTを決定するため、それらの混合段の後に2つ以上の光散乱検出器を有することができる。合成のそれぞれの特定の瞬間におけるLCSTが測定されているため、イオン強度および組成、モル質量などのポリマー特性の関数としてのLCSTの包括的な図を、反応中に構築することができる。
【0044】
本明細書に開示された混合室は、低圧混合室または高圧混合室とすることができる。いくつかの実施形態では、第1の混合室と第2の混合室のうちの少なくとも一方の混合室が低圧混合室である。本明細書において以前に開示したとおり、低圧混合室が使用される実施形態では空費段が存在しうる。さまざまな実施形態で、全ての混合室が高圧混合室である。
【0045】
この装置は、混合室から検出器に混合室溶液を送達するように適合された少なくとも1つの追加の試料ポンプを含むことができる。さまざまな実施形態で、この少なくとも1つの追加の試料ポンプは、第1の混合室から第1の検出器に第1の混合室溶液を送達し、または第2の混合室から第2の検出器に第2の混合室溶液を送達し、または(存在するときに)第3の混合室から第3の検出器に第3の混合室溶液を送達するように適合されている。いくつかの実施形態では、この装置が、低圧混合室および少なくとも1つの追加の試料ポンプまたは溶液ポンプを含む。さまざまな場合に、この装置は、高圧混合室だけを含み、追加の試料ポンプまたは溶液ポンプを含まない。
【0046】
いくつかの場合には、この装置が、混合室と検出器の間(例えば、第1の混合室と第1の検出器の間、第2の混合室と第2の検出器の間、または第3の混合室と第3の検出器の間(存在するとき))に配置された条件調節構成要素をさらに含む。この条件調節構成要素は、第1の混合室溶液または第2の混合室溶液の条件を予め選択された条件に調節することができる。さまざまな場合に、この装置は、第1の混合室と第1の検出器の間に配置された第1の条件調節構成要素であって、第1の混合室溶液の条件を調節することができる第1の条件調節構成要素、および第2の混合室と第2の検出器の間に配置された第2の条件調節構成要素であって、第2の混合室溶液の条件を調節することができる第2の条件調節構成要素をさらに含む。条件調節は、限定はされないが、膜、フリット(frit)、ディスク、焼結金属フィルタおよび他のタイプのフィルタなどのフィルタにより、流れている溶液を濾過すること、反応器内での発熱過程または他の過程によって生じる可能性がある気泡を雰囲気に放出すること、界面活性剤などを用いて反応器成分の相を反転させること、モノマーを蒸発させること、ならびに、密度に従って溶液成分を分離することを含むことができる。いくつかの場合には、金属イオンなどのイオンを直列流れから排除することが望ましく、その場合には、条件調節が、電極を使用してそのようなイオンを引きつけ、それらのイオンを、流れている溶液から除去することを含むことができる。
【0047】
試料リザーバは、第1の検出器に送達する液体を含むことができる任意の容器とすることができる。第1の検出器に送達するこの液体は、任意選択で、第1の混合室を通して第1の検出器に送達される。例えば、試料リザーバを、化学反応器または注入ループとすることができる。いくつかの実施形態では、試料リザーバが化学反応器である。これらの実施形態では、試料リザーバが、重合反応などの化学反応を含む。さまざまな実施形態では、試料リザーバが、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography:GPC)およびサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography:SEC)などのクロマトグラフィー装置内に一般的に見られる試料ループと注入弁などの注入ループである。このようなシステムに注入されるループ内の試料の体積は通常0.01cm3から1cm3である。したがって、例えば小体積の試料を直列装置内に注入し、その試料を、直列経路で提供されたN個の溶液条件下でモニタリングする用途における試料リザーバとして、注入ループを使用することができる。注入ループの使用は特に、ある種の化学試料を得ることが難しいとき、またはある種の化学試料が高価であるときに有利である。例えば、多くの新たなポリマー、特に刺激応答性ポリマーは、数ミリグラムまたは数十ミリグラムなどといった少量で生産される。現在の直列流れ装置内の検出器内の典型的な濃度は、0.001g/cm3から0.010g/cm3である。0.100cm3の典型的な注入ループを用いると、注入される0.100cm3の溶液中において0.1ミリグラムという少量の化学試料を使用することが可能になる。試料が非常に高価である別の分野は、治療用モノクローナル抗体および抗ウイルス性タンパク質などの生物学的薬物の開発の分野である。このような薬物の開発では、1ミリグラムまたは数十ミリグラムの生産に数か月の作業がかかることがある。直列装置は、1回の注入で、それらの薬物の挙動を、さまざまな溶液条件下で試験することを可能にするであろう。
【0048】
いくつかの場合には、装置内を流れる試料が、限定はされないが、モノマー、塩、酸、塩基、界面活性剤、ナノ粒子、タンパク質、多糖、コロイド、細胞もしくは細胞の断片、細胞器官、ミセル、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液、小分子、キレート剤、金属イオン、蛍光染料またはこれらの組合せを含む成分を含むことができる。例えば、この試料は、ポリマー、モノマーまたはこれらの組合せを含むことができる。
いくつかの実施形態では、溶媒リザーバ内の溶媒のうちの少なくとも1つの溶媒が、装置内に存在する少なくとも1つの他の溶媒と同一ではない(または装置内に存在する他のどの溶媒とも同一ではない)(例えば第3の溶媒は、第1の溶媒または第2の溶媒のうちの少なくとも一方の溶媒と同一でない)。例えば、装置内に存在する溶媒のうちの2つの溶媒は、異なるpH値および/または異なるイオン強度を有することができる。いくつかの実施形態では、第1の溶媒と第2の溶媒が異なるイオン強度を有する。さまざまな場合に、第1の溶媒と第2の溶媒は異なるpH値を有する。
【0049】
さまざまな実施形態では、装置内に存在する溶媒のうちの少なくとも1つの溶媒が、ポリマー、モノマー、塩、酸、塩基、界面活性剤、ナノ粒子、タンパク質、多糖、コロイド、細胞もしくは細胞の断片、細胞器官、ミセル、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液、小分子、蛍光染料、キレート剤、金属イオンまたはこれらの組合せを含む。例えば、第1の溶媒および/または第2の溶媒は、ポリマー、モノマー、塩、酸、塩基、界面活性剤、ナノ粒子、タンパク質、多糖、コロイド、細胞もしくは細胞の断片、細胞器官、ミセル、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液、小分子、キレート剤、金属イオン、蛍光染料またはこれらの組合せを含むことができる。
【0050】
いくつかの場合には、この装置が、第1世代の重合反応の自動連続オンラインモニタリング(「FGA」)システムと流体連通している。さまざまな場合に、このFGAシステムは混合室と流体連通している。本明細書に開示された装置にFGAを接続して、装置から試料ストリームを別個に抽出し、その試料ストリームをFGAに流入させることができるようにすると、異なるタイプの塩、界面活性剤、特定の金属イオン、異なる染料などの効果が所望であるときに、例えば、反応器液体と両立する異なる溶媒中のポリマーの立体配座属性を検出することができる。
【0051】
方法
本明細書ではさらに、重合反応などの化学反応をモニタリングまたは制御する方法が開示される。この方法は、(a)試料リザーバから第1の混合室に試料を流入させること、(b)第1の混合室に第1の溶媒を流入させること、(c)試料と第1の溶媒とを混合して、第1の混合室溶液を形成すること、(d)第1の混合室溶液の流れを第1の検出器に通して、第1の混合室溶液の属性を検出すること、(e)第1の混合室溶液を第1の検出器から第2の混合室に流すこと、(f)第1の溶媒とは同一でない第2の溶媒を第2の混合室に流入させること、(g)第1の混合室溶液と第2の溶媒とを混合して、第2の混合室溶液を形成すること、および(h)第2の混合室溶液の流れを第2の検出器に通して、第2の混合室溶液の属性を検出することを含む。この方法は、流れている試料に対して実施された多数の測定に応答して、反応の条件を変化させることをさらに含む。反応条件のこのような変化は、限定はされないが、反応温度、撹拌速度、試薬の添加を含むことができる。この試薬は、限定はされないが、モノマー、開始剤、触媒、失活剤、枝分れ剤、空気および他の気体、小分子、例えば塩などである。
【0052】
いくつかの実施形態では、この方法が、第1の混合室に試料を流入させる前に、試料リザーバからの試料を検出器に流すことをさらに含む。これらの場合には、その意図された用途に対して試料が十分に希薄であり、試料の属性を検出する前に試料を溶媒と混合する必要がない。
【0053】
本明細書に開示された方法はさらに、反応溶液に追加の溶媒(例えば第3の溶媒、第4の溶媒、第5の溶媒、第6の溶媒、第7の溶媒、第8の溶媒)を直列に導入し、それぞれの添加の後に反応溶液の属性を検出する追加のステップを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、この方法が、(i)第2の混合室溶液を第2の検出器から第3の混合室に流すこと、(j)第3の溶媒を第3の混合室に流入させること、(k)第2の混合室溶液と第3の溶媒とを混合して、第3の混合室溶液を形成すること、および(l)第3の混合室溶液の流れを第3の検出器に通して、第3の混合室溶液の属性を検出することをさらに含む。試料溶液の流れが通されるシステムの数は、この方法が実施されている特定の用途に依存する。直列経路で試料溶液の流れを通すことができる混合室の数および溶液条件の数に制限はない。
【0054】
いくつかの場合には、この方法が、第1の混合室溶液、第2の混合室溶液または第3の混合室溶液(存在するとき)のうちの少なくとも1つの混合室溶液の流れを、1つまたは複数の追加の検出器に通すことを含む。例えば、本明細書において以前に説明したとおり、第1の混合室溶液、第2の混合室溶液または第3の混合室溶液(存在するとき)の流れがそれぞれ、少なくとも2つの検出器を通ることができる。さまざまな場合に、この少なくとも2つの検出器は、同じ属性を異なる条件下で(例えば同じ溶液条件下の異なる温度で)検出する。
本明細書において以前に説明したとおり、いくつかの実施形態では、この方法が、混合室溶液(例えば第1の混合室溶液、第2の混合室溶液、第3の混合室溶液(存在するとき)をFGAに流すことをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法が、混合室溶液を検出器に流す前に、その混合室溶液の条件を調節することを含むことをさらに含む。例えば、この方法は、対応するそれぞれの第1の検出器、第2の検出器または第3の検出器に通す前に、第1の混合室溶液、第2の混合室溶液または第3の混合室溶液(存在するとき)のうちの少なくとも1つの混合室溶液の条件を調節することを含むことができる。
いくつかの場合には、この方法の混合ステップを低圧または高圧で実施することができる。例えば、混合ステップ(c)、(g)および(k)(存在するとき)のうちの少なくとも1つの混合ステップが低圧で実施される。さまざまな場合に、混合ステップ(c)、(g)および(k)はそれぞれ高圧で実施される。
いくつかの実施形態では、化学反応器からの試料が、ポリマー、モノマー、塩、酸、塩基、界面活性剤、ナノ粒子、タンパク質、多糖、コロイド、細胞もしくは細胞の断片、細胞器官、ミセル、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液、小分子、キレート剤、金属イオン、蛍光染料またはこれらの組合せなどの分子または添加物を含む。例えば、化学反応器からの試料は、ポリマー、モノマーまたはこれらの組合せを含むことができる。
さまざまな場合に、第1の溶媒または第2の溶媒のうちの少なくとも一方の溶媒は、ポリマー、モノマー、塩、酸、塩基、界面活性剤、ナノ粒子、タンパク質、多糖、コロイド、細胞もしくは細胞の断片、細胞器官、ミセル、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液、小分子、キレート剤、金属イオン、蛍光染料またはこれらの組合せを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、混合室溶液のうちの少なくとも2つの混合室溶液が、互いに異なる条件を有する。例えば、第1の混合室溶液は、第2の混合室溶液とは異なる条件を有することができる。いくつかの場合には、この異なる条件を、温度、イオン強度、pH、溶媒極性、純粋な溶媒の混合物、溶液組成、試料濃度(例えば希釈された反応器液体の濃度)、照明および放射からなるグループから選択することができる。例えば、この異なる条件を、イオン強度またはpHとすることができる。さまざまな実施形態で、それぞれの混合室は、別の混合室とは異なる状態を有する。
いくつかの場合には、属性を検出するそれぞれの検出器が、光散乱、紫外/可視吸収、赤外吸収、屈折率測定、粘度、伝導率、pH、旋光測定、濁度、蛍光、円偏光二色性、ラマン散乱および複屈折からなるグループから選択されたタイプの検出器である。
【0056】
いくつかの場合には、化学反応器が重合反応を含む。さまざまな実施形態において、この化学反応は、ポリマー修飾反応(例えばアルキル化、カルボキシル化、硫酸化、四級化(quaternarization)、ヒドロキシル化、アミノ化、PEG化(PEGylation)およびリン酸化)を含む。
さまざまな場合に、この方法は、少なくとも1つの溶媒の組成を、その溶媒が混合室に流入する前に少なくとも1つの検出器によって検出された属性に基づいて変更することをさらに含む。したがって、その中に提供された方法は、重合反応などの反応の制御を可能にする。
【0057】
用途
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された装置および方法は、刺激応答性ポリマー(「SRP」)(すなわちスマートポリマー)が刺激(例えば、温度、湿度、pH、光、電場、磁場、別の分子、それ自体の濃度の変化)にさらされたときにSRPの物理的および化学的変化をモニタリングするのに有用である。SRPは、例えば、センシング、試剤のカプセル封入および放出、粘度制御、マイクロパターニング、医療用途(例えば生体共役反応させたポリマーとしての用途)、自己回復、感光性、光学部品および電子部品の電気属性、ナノワイヤならびに光起電力などのいくつかの用途に対して有用である。参考文献1~8を参照されたい。
【0058】
本明細書に開示された装置および方法は、適当な挙動の刺激応答性、相互作用属性および特定の相挙動を有するようにSRPを「微調整する」ことを可能にする。限定はされないが、pH、イオン強度、イオン、溶媒極性、界面活性剤含量、特定の小分子、SRP濃度の変化(例えばSRPは相互に刺激として作用しうる)、および他のポリマーなどの条件の変化は「刺激」とみなされ、SRPは、限定はされないが、相変化、ミセル化、薬物の捕捉および放出を含む多くの方式で応答しうる。本明細書に開示された装置および方法は、直列流れがN個の段を通って進むときに、これらの刺激のうちの任意の刺激を、所望の量および組合せでSRPに導入することを可能にする。N個のそれぞれの段では検出が実施され、この検出は、ポリマーがそれぞれの段でこれらの刺激に応答するかどうか、およびポリマーがそれぞれの段でこれらの刺激にどのように応答するのかを明らかにする。
【0059】
本明細書に記載された装置および方法とは対照的に、ポリマー特性をポリマーの刺激応答性に関係づける大部分の方法は、時間がかかり、また効率が悪い。それらの方法は通常、一連の最終生成物またはアリコート(例えばChemspeed、Symyx)を合成し、次いで、それらの最終生成物またはアリコートの特性を直列に評価することを含む。最終生成物の調製は単独でも長時間かかることがあり、沈殿、乾燥および再溶解などのステップを必要とする。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびNMRなどの方法を用いた最終生成物の合成後分析は、合成中にポリマー特性がどのように変化するのかに関する情報をほとんどもたらさず、反応を制御する機会も全くない。
【0060】
本明細書に開示された装置および方法は、一般に刺激応答性ポリマーとはみなされていないポリマーに対しても有用である。多くの通常のポリマーおよび天然ポリマーに対する研究、開発、最適化および製造は、本開示から利益を得ることができる。例えば、通常の官能化反応中、例えば電気的に中性のポリマーを帯電したポリマーまたは高分子電解質に転化させる反応中には、その分子の多くの属性、例えば、その分子の固有粘度、静的および動的寸法、排除体積、他の種との相互作用が変化しうる。この場合、本開示は、転化の程度、および、転化のそれぞれの瞬間に、ポリマーが、直列流れ中のN個の異なる溶液条件に対してどのように応答するかを連続的に評価することを可能にする。非限定的な一例は、中性のポリアクリルアミドを水酸化ナトリウム(NaOH)で処理して、負に帯電したカルボキシレート基をポリマー骨格鎖上に形成するものである。本開示では、ポリマーが、N個の異なる溶液条件、例えば(例えば0モル濃度から0.5Mの濃度範囲のNaClを使用した)N個の異なるイオン強度条件にさらされ、それぞれの段で、そのポリマーの固有粘度、寸法および(例えばビリアル係数A2、A3に関して測定された)排除体積が測定される。この操作は、そのポリマーの合成のそれぞれの瞬間におけるさまざまな条件下でのポリマーの最も重要な属性のマップを提供する。FGAは、たとえ本開示がなくとも、完全な測定および分析をその検出器から1秒ごとに提供する。この速度は、反応またはプロセス全体の時間尺度に応じて増大させまたは低下させることができる。ポリアクリルアミドおよびNaOHに対する中性ポリマーから高分子電解質へのこのタイプの転化がFGAによってモニタリングされた非限定的な一例。そこでは、単一の溶液条件および単一の検出段だけが記載されている。参考文献1を参照されたい。
【0061】
これらの他にも、本明細書に開示された装置および方法をポリマー修飾反応中に使用することによってより完全に理解することができ、最適化することができる多くのポリマー修飾反応が存在する。これらのポリマー修飾反応は、限定はされないが、アルキル化、カルボキシル化、硫酸化、四級化、ヒドロキシル化、アミノ化、PEG化およびリン酸化を含む。ポリ塩基およびポリ酸が形成される場合には、直列流れ段でpH感度を試験することができる。
【0062】
ポリマー生成物の修飾を含まない合成反応中に本開示を使用することもできる。例えば、限定はされないが、段階的な鎖成長反応で高分子電解質を合成することができる。本発明は、それらの合成のそれぞれの瞬間におけるそれらの高分子電解質の挙動をN個の溶液条件下でマップして、高分子電解質の線電荷密度、分子量などの属性と変化する溶液条件との間の関係が明らかにされるようにすることを可能にする。制御ラジカル重合(例えばATRP、NMP、ROMP、RAFT)などのより進歩した重合の形態は、高度に制御された形でのポリマーの成長を可能にする。同様に、本発明は、ポリマーの合成のそれぞれの段階における異なる溶液条件下のポリマーの情報を与える。
通常のポリマーおよびSRPの多くは、それらの合成に2種類以上のモノマーを含み、そのようなポリマーは「コポリマー」と呼ばれる。SRPおよび通常のポリマーに対する本明細書に開示された装置および方法の使用に包含されるものを超える、コポリマーに対するそれらの装置および方法の追加の使用は、限定はされないが、ランダムコポリマーおよびブロックコポリマーに関する溶液条件のモニタリングを含む。ランダムコポリマーの場合、溶解度、寸法、他の分子およびポリマーとの相互作用などはしばしば、コポリマー鎖中のコモノマーの比率に大きく依存する。例えば、ビニルピロリドンとポリクオタニウム-11(polyquaternium-11)とを共重合させた場合、水溶液中での溶解度は、コポリマーの組成と溶液のイオン強度の両方に強く依存する。本発明は、コポリマー集団の挙動を、それらの合成のそれぞれの瞬間においてN個の異なる溶液条件下でモニタリングして、溶液の挙動とコポリマーの組成および分子量との間の関係が明らかにされるようにすることを可能にする。同様に、ブロックコポリマーは、ミセルおよび他のナノおよびマイクロ構造体を形成する能力を獲得することができる。それらの構造体の属性は、コポリマー中の相対的なブロック長および組成と溶液条件の両方に依存する。したがって、本開示は、ブロックコポリマーの構造および組成とブロックコポリマー溶液の挙動との間の関係を明らかにする。
【0063】
本発明を適用することができる他の種類の材料はナノ粒子であり、これには、中実または中空ナノ粒子と取り付けられたポリマーとの混成体であるナノ粒子が含まれる。混成体をなすナノ粒子の場合には、ナノ粒子にポリマーを取り付け、またはナノ粒子の表面からポリマーを成長させる。これらのナノ粒子は、限定はされないが、シリカ、金または他の金属、カーボンナノチューブ、粘土および他の鉱物、ウイルス、細菌、他の微生物、ならびに細胞および細胞小器管などの多種多様な材料でできた粒子とすることができる。これらの粒子と混成体を形成することができるポリマーは、実質的に全てのポリマーを含む。ナノ粒子およびナノ粒子混成体の使用は、限定はされないが、薬物のカプセル封入および放出、ナノ医学において有用な抗菌剤、抗生物質および他の試剤、油漏れ改善のための油の捕捉、ならびに光学、電子および機械システム用のコーティングを含み、このコーティングは船舶用の防汚剤を含む。本開示のN個の段を使用して、試剤をカプセル化するナノ粒子またはナノ粒子/ポリマー混成系の能力を試験し、安定性を試験し、凝集をモニタリングし、合成および処理のそれぞれの瞬間におけるN個の溶液条件に対する他の応答をモニタリングすることができる。このことは、粒子の属性および粒子挙動との関係をより完全に理解すること、合成を最適化すること、および効率的製造を可能にすることにつながるであろう。
【0064】
本開示の他の用途は、溶液の連続滴定である。溶液中の多くの材料は、限定はされないが、pH、イオン強度、特定のイオンの存在、小分子、極性および界面活性剤などの溶液条件の変化に対してさまざまに応答する。溶液を連続「滴定」して、溶液をある1つの状態から別の状態にすること、例えば溶液のpHをある1つのpHから別のpHにすることは一般的に実施されており、酸などの材料を所与の量加えて溶液条件を変化させることも一般的な方法である。自動連続混合(Automatic Continuous Mixing:ACM)(参考文献2~3参照)などの既存の方法は、多数の経路に沿った溶液条件を、溶液中の全て試剤の組成が及ぶ空間内において、プログラムされた方式で、連続的または段階的に変化させる能力を提供することができる。
【0065】
実施形態
一実施形態では、本明細書に開示された装置および方法を使用して、コポリマーの下限臨界溶液温度(「LCST」)をモニタリングすることができる。例えば、N-イソプロピルアクリルアミド(「NIPAM」)と別のモノマー(例えばスチレンスルホネート)のLCSTを、鎖の長さおよび組成に基づいてモニタリングすることができる。15℃から90℃の範囲の8つの初期温度を選択することができる。それぞれの直列段に光散乱検出器を置くことができる。この光散乱検出器は、LCSTに到達したことを検出することができ、LCSTに到達したことは、散乱の急激な増大によって表される。合成中に、選択された範囲の一部分にわたってLCSTがなく、ある温度範囲にLCSTが集まっている場合、コントローラは、LCSTを明らかにしない範囲の温度を移動させて、LCSTが見つかった範囲の付近によりタイトに集めることができる。これは、合成中の組成、分子量または他の属性の関数としてLCSTを決定する際のより適切なデータおよび精度を与える。さらに、p-NIPAMおよびそのコポリマーのLCSTは、イオン強度に敏感であるため、少なくとも1つの段は、温度変化の代わりにまたは温度変化に加えて、イオン強度の変化を含むこともできる。同様に、イオン強度範囲を、最も大きなLCST効果を生じる範囲に調整するアルゴリズムを見つけることもできる。いくつかの実施形態では、温度変化とイオン強度変化の両方を達成するために、温度の自動コントローラおよびポンプ流量の自動コントローラが使用される。装置内で使用されるポンプは、外部制御のための特徴を提供し、この外部制御は普通、USB接続、Ethernetなどを介して達成される。
【0066】
他の実施形態では、本明細書に開示された装置および方法を使用して、ポリマーを合成するのに最適なpHを見つけることができる。例えば、あるポリマーが、ある範囲のpHにわたって凝集体を形成する場合には、本明細書に開示された装置を使用して、合成中の最も有効なpH範囲に迫ることができ、任意の数の所望の段について、装置の溶液条件を変化させるためのポンプ速度を、最も有効な範囲に収まるように調整することができる。
【0067】
下表1に例示されているように、本明細書に開示された装置を使用して、pHに敏感なポリマーの合成中にそのポリマーのイオン環境を変更することもできる。段番号nの主ストリーム流量は、段番号nの検出器列を通って流れる流量であり、この流量は、直前のポンプの主ストリーム流量に段番号nのリザーバ流量を加えたものからなる。表1は、どのようにすればイオン強度を0から651mM(0.651M)まで変化させることができるのかを示す。限定はされないが、NaCl、KCl、MgCl2およびMgSO4など、所望の任意の電解質を使用することができる。最初の5つの段においては試料ストリームの希釈が非常に低く、段5の終わりで4%である。高いイオン強度を達成するために希釈が増大されているため、最終段は19%の希釈を有する。これらの希釈は小さく、よく分かっており、そのため、検出器測定に基づく計算を実施する際に必要な任意の補正を加えることができる。例えば、分子量および固有粘度の計算を実施するのに必要なポリマー濃度を、それぞれの段で考慮することができる。
【0068】
【表1】
【0069】
下表2に例示されているように、イオン強度ではなくpHを複数の段で変化させる溶液条件環境において、本明細書に開示された装置を使用することもできる。表2は、どのようにすれば8段でpHを7から2.42まで低下させることができるのかを示す。いくつかの実施形態では、連続する複数の段においてpHを上昇させ、次いで低下させ、逆に、連続する複数の段においてpHを低下させ、次いで上昇させる。いくつかの実施形態では、緩衝液を使用し、連続する複数の段においてイオン強度条件およびpH条件を変化させる。HCl、HF、H2SO4、NaOHおよびNH4OHを含む所望の任意の酸または塩基を使用することができる。
【表2】

いくつかの実施形態では、電解質、酸、塩基の性質、ならびに使用する緩衝および賦形剤(例えばTRIS、塩酸グアニジン、アルギニン、ポリソルベート)材料に加えて、pHとイオン強度の両方を、さまざまな直列段において変化させる。
【0070】
さまざまな実施形態では、合成中にスマートポリマー(SRP)の特性を評価するため、および合成中の溶液条件の変化に対してそれらのSRPがどのように応答するのかを決定するために、本開示が使用される。ACOMPおよびSGAプラットホームを使用することによって、本発明は、SRP溶液環境の変化に対してSRPがどのように応答するのかについての定量的なモニタリングを、単一の実験で可能にする。
【0071】
いくつかの場合には、試剤をカプセル化する能力などのナノ粒子およびナノ粒子/ポリマー混成系の特性を試験し、安定性を試験し、凝集をモニタリングし、合成および処理のそれぞれの瞬間におけるN個の溶液条件に対する他の応答をモニタリングするために、本開示が使用される。
【実施例
【0072】
以下の実施例は例示のために提供されたものであり、以下の例が本発明の範囲を限定することは意図されていない。
実施例:アクリルアミドとスチレンスルホネートの共重合のモニタリングおよび制御
図2に具体化されているものなどの本明細書に開示された発想を使用して、本発明の原型を設計および構築した。この装置の7つの段を構築した。これらの段はそれぞれ、特注の単一の毛細管粘度計および特注の90°光散乱フローセルを備える。これらの7つの粘度計は、Validyne(P55D-1-K-1-28-S-4)差圧変換器から構築した。この差圧変換器は、フローキャピラリのそれぞれの端を圧力変換器の高圧側および低圧側に接合するための「T」フィッティングを備える。圧力差信号は、電圧に比例しており、この電圧を、コンピュータに接続されたアナログ/ディジタル変換器に提供した。2Hzなどの所望の任意のサンプルレートを使用することができた。このタイプの粘度計は以前に記載されている。参考文献39を参照されたい。
【0073】
7つの光散乱フローセルは、アルミニウムから構築した。それらのフローセルは、5mmの中心穴およびまっすぐな流れ経路を備える。660nmの真空波長において垂直偏波入射で動作する35mWのLaserMaxダイオードレーザによって、セルの窓を通した試料体積の照明を提供した。それぞれのセルはそれ自体の35mWレーザをする。セルの内部穴と同じ高さに、光ファイバを、この目的のためにあけられた穴および光ファイバをその場に固定するための液体クロマトグラフィーフェルール(ferrule)によって装着した。それぞれのセルから延びる光ファイバは、散乱光を集め、その散乱光を、電荷結合素子(CCD)カメラ(Mightex Corp.Model TCE-1304-U)に伝送する。このCCDは、この散乱強度データを、USB接続を介して、2Hzなどの所望の任意のサンプリングレートでコンピュータに送る。
【0074】
2つの4ヘッドシリンジポンプ(Nexus 6000)を使用して、6つのシリンジ(それぞれのポンプに3つのシリンジ)を収容した。それらのそれぞれのシリンジを所望の溶液で満した。装置の連続する複数の段に、シリンジの内容物を、所望の任意の流量で注入することができる。これらの実験では、それぞれの段の後に増大するイオン強度(ionic strength:「IS」)を提供するために、それぞれのシリンジが、異なる濃度のNaClを有する。表3は、それぞれの段における溶液条件を示す。本明細書で使用されるとき、イオン強度(「IS」)は、下式のように定義される。
【数1】
上式で、[i]は、モル/m3で表したそれぞれのイオンのモル濃度、ziは、1イオンあたりの電気素量、yは、親化合物である塩が溶解して生じるイオンの数である。NaClについては、Na+およびCl-に関してy=2、zi 2=1である。
【0075】
下表3は、このマルチヘッドシリンジポンプとともに使用される20mlシリンジ(直径1.9cm)のリザーバイオン強度(すなわち[NaCl])、それぞれの段の注入流量、その結果生じるそれぞれの段における正味のイオン強度、および検出器列に流入している元の濃度からのそれぞれの段における希釈係数を示す。元の流れには、希釈係数(dilution factor)1が割り当てられている。
【0076】
【表3】
【0077】
これらの反応は、時に共重合高分子電解質(copolyelectrolyte)と呼ばれるコポリマー高分子電解質のフリーラジカルベースの合成を含む。電気的に中性のモノマーアクリルアミド(「Am」)をアニオン性モノマースチレンスルホネート(「SS」)と共重合させた。反応性比(reactivity ratio)は、rSS=2.14およびrAm=0.18と、広範囲に分離されているため、バッチ反応中に強い組成ドリフトが生じる。図4は、バッチ共重合による代表的な生データを示す。Am/SSのモル/モル比は50/50であった。
【0078】
高分子電解質の立体配座、寸法、流体力学および相互作用は、高分子電解質の線電荷密度ζおよび液体支持媒質のISに対して非常に敏感である。ζを固定してISを減少させると、高分子電解質鎖に沿ったイオン遮蔽が低下し、これによって、高分子電解質鎖が、増大したポリマー内静電反発力により膨潤し、ポリマー間排除体積を増大させることはよく知られている。これらはともに、高分子電解質の膨張、および高分子電解質の増大した静電位の相互作用に起因する。参考文献40を参照されたい。高分子電解質の膨潤は、固有粘度[η]の増大によって表され、この膨潤および増大した静電的相互作用はともに、2次、3次およびより高次のビリアル係数A2、A3などを増大させる。それぞれのIS段に粘度検出器と光散乱検出器の両方を有するこの例の装置は、固有粘度およびビリアル係数を測定することができる。ビリアル係数の増大は光散乱強度を低下させる。q=0(散乱角0)の限界では、絶対レイリー散乱比IRが下式によって与えられる。
【数2】
上式で、cは、ポリマー濃度、Mwは、重量平均モル質量、Kは、光学定数であり、垂直偏波入射光に対するKは、下式によって与えられる。
【数3】
上式で、nは、溶媒屈折率、λは、入射光の真空波長、dn/dcは、選択された溶媒中のポリマーの示差屈折率、qは、通常の散乱波数ベクトルq=(4πn/λ)sin(θ/2)であり、θは散乱角である。7つの流れ通過検出器はθ=90°にあり、したがって、q=0にはないが、このサイズのポリマー(<106g/モル)に対する90°における傾向は、0°における傾向に定性的に従う。この装置では、q=0への角度外挿を実施するために、それぞれの光散乱検出器により多くの角度を追加することが可能である。
【0079】
図4に示されているように、0.1mMで、LSは、合成が進むにつれて最大まで急激に上昇する(図の縦線は、高分子電解質の合成反応が始まったときを示す)。このLSの増大は、光を散乱させるポリマー鎖の形成に起因する。最大に到達したことは、式2のA2とA3の両方の作用に起因する。式2のA3項は、ピーク後のLSの低下につながる。終わり近くのLSのわずかな上昇は、SS自体が、その高い反応性比により非常に急速に消費されることに起因し、そのため、反応の終わり近くでは、純粋なアクリルアミド単独ポリマーが生成される。これは、共重合高分子電解質よりも高いモル質量を有する。
【0080】
全体の溶液粘度η(t)は、ポアズイユ(Poisseuille)の法則に従った単一の毛細管粘度計の前後での圧力降下によって測定され(参考文献29参照)、η(t)は、下式により、溶媒粘度ηsolvent、ポリマー固有粘度[η]およびポリマー濃度cに関係する。
【数4】
上式で、KHは、無次元の流体力学的相互作用定数であり、通常、中性のコイルポリマーに対しては0.4に等しく、帯電したコイルポリマーに対してはこれよりも小さい。比粘度ηsp(t)は、下式のように定義される。
【数5】
ポリマーに対する[η]は下式によって与えられる。
【数6】
上式で、VHは、ポリマーの流体力学的体積、Mは、ポリマーのモル質量である。
【0081】
図4から、0.1mMでは、ηsp(t)が、その最終的な値まで単調に増大することが分かる。最終的な値は、他のどのISよりも高い。単調に増大するのは、低ISでは、膨潤した高分子電解質により、VHが、その最大になるためである。
【0082】
次に、10mM ISにおけるLSを見ると、図4に示されているように、増大したISが、コイルサイズを縮小し、したがって、[η]、A2およびA3を低下させている。その結果、LSは依然としてピークに達するが、このピークは、0.1mM ISに対するピークよりも高い。これは、10mMの場合のA2およびA3が、0.1mMの場合よりも小さいためである。対照的に、ηsp(t)は小さくなる。これは、ポリマー鎖の収縮に伴って、VH、したがって[η]が小さくなるためである(式5)。50mM ISの場合と100mM ISの場合の両方について、ηsp(t)は低下し続ける。
130mM ISでは、光散乱がもはやピークを持たない。このことは、この場合、A3は無視できるほどに小さいが、A2は依然として効果を有することを示している。終わりにおける散乱レベルは、他のISにおけるLSよりも高い。これは、A2およびA3の値が、最も大きなISで最小になるためである。
【0083】
図4には、206nmおよび255nmにおけるUV吸収の値も示されている。これらを使用して、それぞれのモノマーの濃度cSS(t)およびcAm(t)を、時間の関数として計算することができる。全体のモノマー質量転化の割合は、ポリマーの総濃度を、モノマーの初期合計質量で割ったものと定義される。
【数7】
SS(t)およびcAm(t)が既知であるとすると、任意の瞬間tに形成されているポリマー鎖の瞬間的な質量組成割合は以下のようになる。
【数8】
上式で、Finst,Am(t)は、tにおけるコポリマー鎖中のAmの質量の瞬間的な割合であり、Finst,SSも同様である。したがって、これらの後者の量は、合成中、コポリマーの組成ドリフトに従う。コポリマー組成およびドリフトをACOMPによって処理するこのような方式は、例えば参考文献41に記載されている。
これらのUV信号は、図5に示されたf、FinstAmおよびFinst,SSにつながる。
【0084】
出発反応器溶液が水中のAmだけを含み、SSを含むリザーバ溶液を一定の流量で流す半バッチ反応も実行した。これは、バッチ反応とは逆のケースに至った。Amからスタートすることは、最初に中性のポリマー鎖が生成され、反応器にSSが流れると、SS組成が増大した鎖、したがってζが増大した鎖が生成されることを意味する。
図6は、206nmおよび254nmにおけるUV吸収を示す。このUV吸収はISから独立しており、単一のISだけで測定した。図6にはさらに、比粘度が、時間に対して示されている。ISを1mMから10mM、50mMに増大させると、比粘度は、どの時刻においても著しく低下する。
【0085】
図7aおよび7bはそれぞれ、バッチ反応および半バッチ反応におけるηsp(t)の挙動を対比する。図7aでは、バッチ反応器内で、SSが、急速に使い果たされ、その結果、反応器内のポリマー中の中性Amの濃度が常に増大する。Amは電気的に中性であるため、SSが使い尽くされ、Amが優勢になるにつれて、比粘度の増大は、時間とともに徐々に低下する。このことは、下に凹の湾曲によって、すなわち時間に対する比粘度の負の2次導関数によって示されている。図7bでは、SSを含む溶液の半バッチ流れが反応器に入ることにより、帯電したSSの量が増大し、このことが、高分子電解質鎖の膨潤の増大につながり、このことが、上に凹の湾曲、すなわち時間に対する比粘度の正の2次導関数時につながる。バッチ反応の場合と半バッチ反応の場合の両方で、比粘度は、任意の瞬間において、イオン強度が高い順に低い。
【0086】
参考文献
本出願は、米国特許出願第12/479,052号(Methods and Instrumentation for During-synthesis monitoring of polymer functional evolution)、ならびに米国特許第6,653,150号(Automatic Mixing and Dilution Methods for Online Characterization)および米国特許第8,322,199号(Two-Stage Polymer Analysis System and Method Using Automatic Dilution)を、参照によって本明細書に組み込む。
【0087】





【0088】
追加の態様
0179
本明細書では、一態様において、液体および液体の内容物の特性を測定する装置であって、
化学反応器と、
化学反応器から液体を自動的に抽出し、連続反応器流れを提供する手段と、
液体中への逐次直列添加(successive serial addition)を実施する手段と、
1つまたは複数の液体添加段間に挿入された1つまたは複数の測定機器であり、その中を液体が直列に流れる測定機器と
を備える装置が開示される。
0180
液体の内容物が、以下のうちの1つまたは複数である、段落[0179]に記載の装置;ポリマー、モノマー、ナノ粒子、コロイド、ミセル、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクル、乳濁液。
0181
液体中への直列添加が、液体の以下の特性のうちの1つまたは複数の特性を変化させる、段落[0179]に記載の装置:pH、イオン強度。
【0089】
0182
液体が、以下のうちの1つまたは複数を含む、段落[0179]に記載の装置;ポリマー、モノマー、ナノ粒子、コロイド、ミセル、凝集体、ミクロゲル、微結晶、リポソーム、ベシクルおよび乳濁液。
0183
液体が刺激応答性ポリマーを含む、段落[0179]に記載の装置。
0184
化学反応器が重合反応のために使用される、段落[0179]に記載の装置。
0185
化学反応器、および化学反応器から液体を自動的に抽出し、連続反応器液体流れを提供する手段が、ACOMPシステム(米国特許第6,653,150号)によって提供される、段落[0179]に記載の装置。
0186
液体が、条件調節および希釈される、段落[0179]に記載の装置。
0187
液体が、米国特許第6,653,150号に記載の装置および方法を使用して条件調節および希釈される、段落[0179]に記載の装置。
【0090】
0188
逐次直列添加を実施する手段が、液体の条件を変化させる、段落[0179]に記載の装置。
0189
変化させる液体の条件が、以下のうちの1つまたは複数を含む、段落[0188]に記載の装置:pH、イオン強度、添加された小分子、極性、溶媒組成、添加された界面活性剤、ポリマーおよび特定のイオン。
0190
前記1つまたは複数の測定機器が以下の中から選択された、段落[0179]に記載の装置:pH、伝導率、単一角度または多角度全強度光散乱、動的光散乱、ミー散乱、蛍光、濁度、粘度、屈折計、旋光計、円偏光二色性、近または中間赤外およびラマン検出。
【0091】
0191
1つまたは複数の測定機器が、流れているストリーム中のポリマーおよび/またはコロイドの特性を与える、段落[0179]に記載の装置。
0192
逐次直列添加を実施する手段が、累積フォーミュレーションステップを表す、段落[0179]に記載の装置。
0193
液体中のポリマーおよび/またはコロイドに対するフォーミュレーションステップの効果が、1つまたは複数の液体添加段の間に挿入された、その中を液体が直列に流れる前記1つまたは複数の測定機器によって測定される、段落[0192]に記載の装置。
0194
所望の希釈レベルを達成し、前記希釈された液体の流れている溶液を生成するために、流れている抽出された液体を第1の溶媒と混合する第1の希釈に対してLMPCが使用される、段落[0179]に記載の装置。
【0092】
0195
液体および液体の内容物の特性を測定する装置であって、
化学反応器と、
化学反応器から液体を自動的に抽出し、連続反応器流れを提供する手段と、
流れている抽出された液体中への逐次直列添加を実施する手段と、
1つまたは複数の液体添加段間に挿入された1つまたは複数の測定機器であり、その中を液体が直列に流れる測定機器と、
流れている抽出された液体中への逐次直列添加を実施する手段を自動的に調整および制御するために、前記1つまたは複数の測定機器の測定を評価する1つまたは複数の手段と
を備える装置。
0196
直列添加に対する自動調整が、ポンプ速度を制御することによって実施される、段落[0195]に記載の装置。
0197
逐次直列添加を実施する手段が、以下の中から選択される、段落[0195]に記載の装置:温度、pH、イオン強度、特定のイオンの存在、小分子、極性および界面活性剤。
0198
液体および液体の内容物の特性を測定する方法であって、
化学反応器から、液体の連続ストリームを自動的に抽出するステップと、
前記ストリームの第1の希釈を実施して、希釈された反応器内容物の連続的に流れているストリームを生成するステップと、
1つまたは複数の希釈段で液体を添加して、希釈された反応器内容物の流れているストリームの性質を変化させるステップと、
希釈された反応器内容物および液体ストリーム内容物の流れているストリームの属性を、前記1つまたは複数の希釈段間に挿入された機器を用いて測定するステップと
を含む方法。
【0093】
0199
化学反応器から、液体の連続ストリームを自動的に抽出するステップ、および前記ストリームの第1の希釈を実施して、希釈された反応器内容物の連続的に流れているストリームを生成するステップが、ACOMP装置(米国特許第6,653,150号)を使用することによって達成される、段落[0198]に記載の方法。
以上の説明は、明瞭な理解のためだけに示されたものである。当業者には本発明の範囲内の変更が明白であることがあるため、以上の説明から、不必要な限定を理解すべきでない。
【0094】
用語「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」および「含む(involving)」(同様に「備える(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」および「含む(involves)」)などは、相互に交換可能に使用され、同じ意味を有する。具体的には、これらの用語はそれぞれ、米国特許法における「備える(comprising)」の一般的な定義と整合的に定義され、したがって、「少なくとも以下のもの」を意味するオープン型の用語であると解釈され、さらに、追加の特徴、限定、態様などを排除しないものと解釈される。したがって、例えば、「ステップa、bおよびcを含むプロセス」は、そのプロセスが少なくともステップa、bおよびcを含むことを意味する。用語「a」または「an」が使用されるときには、そのような解釈が文脈上無意味でない限りにおいて、「1つまたは複数(one or more)」であることが理解される。
【0095】
本明細書で句「例えば(for example)」、「などの(such as)」、(「含む(including)」)などが使用されるときには、そうではないと明示されていない限り、「ただしそれだけに限定されない(and without limitation)」という句が続くものと理解される。同様に、「例(an example)」、「例示的な(exemplary)」なども非限定的であると理解される。
用語「実質的に(substantially)」は、意図された目的に負の影響を与えない記述語からの逸脱を許す。たとえ語「実質的に」が明示的に示されていない場合であっても、その記述語は、用語「実質的に」によって修飾されているものと理解される。したがって、例えば、句「レバーが垂直に延びる」は、そのレバーがその機能を実行するために正確に垂直に配置される必要がある場合を除いて、「レバーが実質的に垂直に延びる」を意味する。
【0096】
本明細書の全体を通じて、成分または材料を含むとして組成物が記載されている場合、そうではないと記載されていない限り、それらの組成物は、列挙された成分もしくは材料の任意の組合せから本質的になることもでき、または列挙された成分もしくは材料の任意の組合せからなることもできることが企図される。同様に、特定のステップを含むとして方法が記載されている場合、そうではないと記載されていない限り、それらの方法は、列挙されたステップの任意の組合せから本質的になることもでき、または列挙されたステップの任意の組合せから本質的になることもできることが企図される。本明細書に例示的に開示された発明は、本明細書に特に開示されていない要素またはステップがなくても適当に実施することができる。
【0097】
本明細書に開示された方法の実施、および本明細書に開示された方法の個々のステップの実施は、手動で、および/または、電子機器の助けを借りてもしくは電子機器によって提供される自動化によって実行することができる。特定の実施形態に関してプロセスを説明したが、それらの方法に関連した行為を実行する他の方式を使用することもできることを当業者は容易に理解するであろう。例えば、そうすることはできないと記載されていない限り、その方法の範囲または趣旨から逸脱することなくさまざまなステップの順序を変更することができる。加えて、それらの個々のステップのうちのいくつかのステップを組み合わせ、省略し、または追加のステップにさらに分割することもできる。
【0098】
本明細書に引用された全ての特許、出版物および参考文献は、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。本開示と組み込まれた特許、出版物および参考文献との間に矛盾がある場合、本開示は、それらをうまく処理するはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B