(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】搬送装置及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65G 13/00 20060101AFI20220511BHJP
B21B 39/14 20060101ALI20220511BHJP
B21B 39/00 20060101ALI20220511BHJP
B21B 39/08 20060101ALI20220511BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20220511BHJP
B65H 7/10 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B65G13/00 A
B21B39/14 J
B21B39/00 F
B21B39/08 A
B65H5/06 H
B65H5/06 F
B65H7/10
(21)【出願番号】P 2018044132
(22)【出願日】2018-03-12
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】小川 茂
(72)【発明者】
【氏名】保木本 達也
(72)【発明者】
【氏名】西山 和宏
(72)【発明者】
【氏名】川原 啓史
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094340(JP,A)
【文献】特開平09-052108(JP,A)
【文献】特開平11-333509(JP,A)
【文献】米国特許第04291562(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 13/00
B21B 39/00-41/22
B65H 5/06
B65H 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を狭圧するピンチロールと、
前記ピンチロールの軸方向両端部それぞれにおいて前記ピンチロールを圧下する圧下装置と、
前記ピンチロールの前記軸方向両端部それぞれにおける荷重を測定する荷重測定装置と、
前記ピンチロールを回転させ
ることにより、前記板材に
付加される張力
を所定の張力に調整し、前記ピンチロールに前記板材を搬送させる駆動装置と、
前記ピンチロールにより搬送されている前記板材の、板幅中心位置を測定する位置測定装置と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記軸方向両端部それぞれにおいて前記ピンチロールの圧下を開始するように前記圧下装置を制御することと、
前記荷重測定装置から前記軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値を取得し、前記軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値の合計であるピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達したか否かを判定することと、
前記初期荷重に到達した場合に、前記軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値から導出される荷重作用点位置が、前記位置測定装置により測定された前記板幅中心位置に近づくように、前記圧下装置を制御することと、
前記荷重作用点位置と前記板幅中心位置との離間距離が、所定の許容範囲内であるか否かを判定することと、
前記所定の許容範囲内である場合に、前記ピンチロールに所定のトルク増分を与え前記板材に
付加される張力を
所定の張力に調整するように前記駆動装置を制御することと、を実行するように構成されている、搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記離間距離が前記板材の幅方向の長さの1/6以下である場合に、前記離間距離が前記所定の許容範囲内であると判定する、請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記板材に
付加される張力が
所定の張力に調整された後、前記離間距離を前記所定の許容範囲内に維持しつつ、通板安定のための前記圧下装置の制御を実行するように構成されている、請求項1又は2記載の搬送装置。
【請求項4】
板材を狭圧するピンチロールと、前記ピンチロールの軸方向両端部それぞれにおいて前記ピンチロールを圧下する圧下装置と、前記ピンチロールの前記軸方向両端部それぞれにおける荷重を測定する荷重測定装置と、前記ピンチロールを回転させ
ることにより、前記板材に
付加される張力を
所定の張力に調整し、前記ピンチロールに前記板材を搬送させる駆動装置と、前記ピンチロールにより搬送されている前記板材の、板幅中心位置を測定する位置測定装置と、を備える搬送装置を用い、
前記軸方向両端部それぞれにおいて前記ピンチロールの圧下を開始するように前記圧下装置を制御することと、
前記荷重測定装置から前記軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値を取得し、前記軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値の合計であるピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達したか否かを判定することと、
前記初期荷重に到達した場合に、前記軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値から導出される荷重作用点位置が、前記位置測定装置により測定された前記板幅中心位置に近づくように、前記圧下装置を制御することと、
前記荷重作用点位置と前記板幅中心位置との離間距離が、所定の許容範囲内であるか否かを判定することと、
前記所定の許容範囲内である場合に、前記ピンチロールに所定のトルク増分を与え前記板材に
付加される張力を
所定の張力に調整するように前記駆動装置を制御することと、を含む搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板材の製造ラインにおいては、板材の面外変形を防止しながら板材を円滑に搬送すべく、上下一対のピンチロールで板材を挟圧し、板材に張力を付加しつつ搬送する装置が用いられる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板材の製造ラインでは、板材の板幅中心位置が製造ラインの中心から外れ、板材の一部がピンチロール胴部から咬みだし板材が損傷することが問題となる場合がある。このような問題を避けるべく、特許文献1に開示されている装置では、ピンチロールのプロフィルとベンディング力の制御に加えて、作業側及び駆動側のピンチロール荷重を測定して、荷重が大きい側に板材が移動していると判断し、荷重が大きい側の圧下位置を相対的に締め込んでいる。なお、以下では作業側と駆動側の圧下装置を逆方向に操作することを圧下レベリング、同方向に操作することを同時圧下と呼称し、作業側と駆動側を合わせた簡略表現として「左右」という表現も用いる。
【0005】
ここで、例えば
図5に示すように、板材の板厚分布が均一でない等の事情によって、板材幅方向における板材の一端部のみがピンチロールに接している場合を考える。この状態で、荷重が大きい側(一端部)の圧下位置が相対的に絞め込まれ、ピンチロールによる板材の搬送が開始されると、板材に加わるモーメントによって、板材はライン中心から一端部方向に急激に移動・逸脱し、板材がライン中心から外れる場合がある。このような事象を避けるための対策としては、板材に付加する張力を所定の目標値よりも小さい値に抑えて操業することが有効な場合が多い。しかしながら、これでは板材に張力を付加するというピンチロールの本来の機能を十分に活用することができず、状況によっては所定の張力を得るためピンチロールを増設する必要が生じることがある。
【0006】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、搬送開始時において板材がライン中心から外れることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る搬送装置は、板材を狭圧するピンチロールと、ピンチロールの軸方向両端部それぞれにおいてピンチロールを圧下する圧下装置と、ピンチロールの軸方向両端部それぞれにおける荷重を測定する荷重測定装置と、ピンチロールを回転させて板材に所定の張力を付加し、ピンチロールに板材を搬送させる駆動装置と、ピンチロールにより搬送されている板材の、板幅中心位置を測定する位置測定装置と、制御部と、を備え、制御部は、軸方向両端部それぞれにおいてピンチロールの圧下を開始するように圧下装置を制御することと、荷重測定装置から軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値を取得し、軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値の合計であるピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達したか否かを判定することと、初期荷重に到達した場合に、軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値から導出される荷重作用点位置が、位置測定装置により測定された板幅中心位置に近づくように、圧下装置を制御することと、荷重作用点位置と板幅中心位置との離間距離が、所定の許容範囲内であるか否かを判定することと、所定の許容範囲内である場合に、板材に所定の張力を付加するようにピンチロール駆動装置を制御することと、を実行するように構成されている。
【0008】
本開示に係る搬送装置では、ピンチロールの圧下が開始された後にピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達したか否かが判定され、軸方向両端部の荷重現在値から導出される荷重作用点位置が板材の板幅中心位置に近づくように、圧下装置が制御される。ここで、例えば
図5に示すように、ピンチロールが板材の一端部のみと接触しているような場合には、当該一端部の荷重が大きく、荷重作用点位置は当該一端部となる。本開示に係る搬送装置では、荷重作用点位置を板材の板幅中心位置に近づけるように制御されるため、板材の他端部の圧下位置が相対的に締め込まれる。そして、荷重作用点位置と板幅中心位置との離間距離が許容範囲内となった場合すなわち荷重作用点位置が板幅中心位置に十分近づいた場合に、ピンチロールによる板材の搬送が開始されるので、板材がライン中心に沿って搬送されることとなる。すなわち、本開示に係る搬送装置によれば、搬送開始時において板材がライン中心から外れることを抑制することができる。
【0009】
制御部は、離間距離が板材の板幅の1/6以下である場合に、離間距離が所定の許容範囲内であると判定してもよい。板幅中心位置との離間距離が板幅の1/6以下とされることにより、板材における板材幅方向の全域がピンチロールと接触することになるので、ピンチロールから板材に張力を適切に付加することができると共に、安定的に板材を搬送することができる。
【0010】
制御部は、ピンチロールを回転させた状態において、荷重作用点位置が板幅中心位置に近づくように、圧下装置を制御することを更に実行するように構成されていてもよい。これにより、ピンチロールから板材に張力を付加された搬送が開始された後においても、板材を蛇行させずに安定的に搬送することができる。
【0011】
本開示の一態様に係る搬送方法は、板材を狭圧するピンチロールと、ピンチロールの軸方向両端部それぞれにおいてピンチロールを圧下する圧下装置と、ピンチロールの軸方向両端部それぞれにおける荷重を測定する荷重測定装置と、ピンチロールを回転させて板材に所定の張力を付加し、ピンチロールに板材を搬送させる駆動装置と、ピンチロールにより搬送されている板材の、板幅中心位置を測定する位置測定装置と、を備える搬送装置を用い、軸方向両端部それぞれにおいてピンチロールの圧下を開始するように前記圧下装置を制御することと、荷重測定装置から軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値を取得し、軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値の合計であるピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達したか否かを判定することと、初期荷重に到達した場合に、軸方向両端部それぞれにおける荷重現在値から導出される荷重作用点位置が、位置測定装置により測定された板幅中心位置に近づくように、圧下装置を制御することと、荷重作用点位置と板幅中心位置との離間距離が、所定の許容範囲内であるか否かを判定することと、所定の許容範囲内である場合に、ピンチロールを回転させて板材に所定の張力を付加するように駆動装置を制御することと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ピンチロールから板材に張力を付加された搬送時において板材がライン中心から外れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る板材搬送装置の概略構成を示す模式図である。
【
図3】板材搬送処理の実行手順を示すフローチャートである。
【
図4】板幅全体にわたって線荷重分布が三角形状に分布する状態を示す図である。
【
図5】板材の一端部のみがピンチロールと接触する状態を示す模式図である。
【
図6】モーメントに応じた板材の偏りを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[板材搬送装置]
最初に、
図1を参照して、本実施形態に係る板材搬送装置100(搬送装置)の概要を説明する。板材搬送装置100は、板材2の製造・処理ラインにおいて、上下一対のピンチロール1a,1bで板材2を挟持しながら所定の搬送方向に板材2を搬送する装置である。板材搬送装置100は、ピンチロール1a,1bと、圧下装置3a,3bと、ロードセル4a,4b(荷重測定装置)と、位置測定装置5と、ピンチロール駆動装置6(駆動装置)と、コントローラ50(制御部)と、を備えている。
【0016】
ピンチロール1a,1bは、上下から板材2を所定の圧力で挟持し、所定の搬送方向に板材2を搬送する回転体である。ピンチロール1a,1bは、ピンチロール駆動装置6に回転力を付加されて回転し、挟持した板材2に張力を付加して板材2を搬送する。ピンチロール1a,1bは、駆動側DSにおいてピンチロール駆動装置6に接続されており、ピンチロールトルクを介して板材2に張力を付加する。ピンチロール1a,1bは、例えば凸クラウン形状とされている。上側のピンチロール1aにおける軸方向の一端側(駆動側DS)はチョックを介して圧下装置3aに接続されており、軸方向の他端側(作業側WS)はチョックを介して圧下装置3bに接続されている。下側のピンチロール1bにおける駆動側DSはチョックを介してロードセル4aに接続されており、作業側WSはチョックを介してロードセル4bに接続されている。
【0017】
圧下装置3a,3bは、ピンチロール1aの駆動側DS及び作業側WS(軸方向両端部)それぞれにおいてピンチロール1aを圧下する。圧下装置3aは、ピンチロール1aの駆動側DSを圧下する。圧下装置3bは、ピンチロール1aの作業側WSを圧下する。圧下装置3a,3bは、コントローラ50の制御に応じてピンチロール1aの圧下を開始する。
【0018】
ロードセル4a,4bは、ピンチロールの駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重を測定する。ロードセル4bは、ピンチロール1bの作業側WSにおける荷重を測定する。ロードセル4a,4bは、駆動側DS及び作業側WSにおける荷重現在値を連続的に(常時)測定し、コントローラ50に出力する。当該コントローラ50に出力された荷重値は、圧下装置3a,3bの圧下制御に用いられる(詳細は後述)。
【0019】
位置測定装置5は、ピンチロール1a,1bによって搬送されている板材2の板幅中心位置zCを測定する。位置測定装置5は、板材2の板幅中心位置zCを連続的に(常時)測定する。位置測定装置5は、例えば所定の位置に固定して配置されており、検出した板材の板端位置と既知である板材2の板幅とから、搬送されている板材2の板材幅方向における板幅中心位置zCを導出する。或いは、位置測定装置5は、板材2の板幅が既知でない場合には、板材2の板材幅方向における両端位置を測定することにより板材2の板幅中心位置zCを導出してもよい。位置測定装置5は、測定した板材2の板幅中心位置zCを、コントローラ50に出力する。なお、位置測定装置5による位置測定方法は限定されるものではなく、例えば、フォトマイクロセンサ、エリアセンサ、光電センサ、近接センサ、ファイバセンサ、又はレーザセンサ等の既知のセンサを用いることができる。
【0020】
ピンチロール駆動装置6は、ピンチロール1a,1bを回転させて板材2に所定の張力を付加し、ピンチロール1a,1bに板材2を搬送させる。ピンチロール駆動装置6は、コントローラ50からの制御信号に応じて、ピンチロール1a,1bを回転させる。
【0021】
コントローラ50は、ピンチロール1a,1bが板材2に接している状態において、駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおいてピンチロール1aの圧下を開始するように圧下装置3a,3bを制御することと、ロードセル4a,4bから駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値を取得し、駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値の合計であるピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達したか否かを判定することと、初期荷重に到達した場合に、ロードセル4a,4bからから取得した駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値から導出される荷重作用点位置が、位置測定装置5により測定された板材2の板材幅方向における板幅中心位置zCに近づくように、圧下装置3a,3bを制御することと、荷重作用点位置と板幅中心位置zCとの離間距離が、所定の許容範囲内であるか否かを判定することと、所定の許容範囲内であると共に、ピンチロール荷重現在値が所定の設定荷重に到達したことを確認した場合に、板材2に所定の張力を付加するようにピンチロール駆動装置6を制御することと、を実行するように構成されている。
【0022】
以下、コントローラ50の具体的な構成例を説明する。コントローラ50は、機能モジュールとして、圧下開始部7と、荷重判定部8と、圧下制御部9と、荷重作用点位置判定部10と、駆動制御部11とを有する。
【0023】
圧下開始部7は、ピンチロール1a,1bが板材2に接している状態において、駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおいてピンチロール1aの圧下を開始するように圧下装置3a,3bを制御する。圧下開始部7は、ピンチロール1a,1bが板材2に接しているか否かを、以下の方法により検知することができる。すなわち、圧下開始部7は、例えば、上下ピンチロール1a,1bの間隔が板材2の板厚よりも小さくされている場合において、板材2がピンチロール1a,1bに咬み込んだ際にロードセル4a,4bによって測定される荷重現在値の変化から、ピンチロール1a,1bに板材2が接していることを検知する。或いは、上下ピンチロール1a,1bの間隔が板材2の板厚よりも大きい状態で板材2を導入する場合には、圧下開始部7は、ピンチロール1a、1bの近傍に板材2の検知器を配備することにより、ピンチロール1a,1bに板材2が接していることを検知する。
【0024】
圧下開始部7は、ピンチロール1a,1bに板材2が接していることを検知すると、直ちに、圧下装置3a,3bを同時圧下(駆動側DS及び作業側WS同時圧下)させ、ピンチロール1a,1bによる板材2の狭圧を開始させる。ピンチロール1a,1bによる板材2の狭圧が開始されることにより、ロードセル4a,4において測定される荷重が徐々に増大していく。
【0025】
荷重判定部8は、ロードセル4a,4bから駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値を取得し、駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値の合計であるピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達したか否かを判定する。ここで、初期荷重は、ピンチロール1a,1bによって板材2が搬送される際の駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重の合計、すなわち板材2に所定の張力を付加するために必要な設定荷重よりも小さい荷重とされる。初期荷重は、例えば設定荷重の10~20%程度とされる。
【0026】
なお、設定荷重は例えば以下のようにして決める。例えば、板厚1mm、板幅1000mmの板材2に単位断面積あたり10MPaの張力を付加する場合、ピンチロール1a,1bから板材2に付加すべきトータル張力は10kNとなる。ピンチロール1a,1bと板材2との間の摩擦係数が種々の変動要因を考慮しても例えば0.2以上となると想定される場合には、ピンチロール1a,1bと板材2との間でスリップを生じない設定荷重は、10kN×0.5/0.2=25kN以上ということになる。ここで、0.5というファクターを掛けている理由は、板材2の上下面に作用する摩擦力を考慮し、片面分から供給すべき摩擦力を演算しているためである。
【0027】
初期荷重に到達したことが、圧下制御部9の処理が開始される契機となるため、例えば板材2の板厚差が大きい場合(ピンチロール1a,1bと板材2との接触状態が不均一になりやすい場合)等においては、初期荷重を極力小さくし、圧下制御部9の処理が速やかに開始されるように制御することが好ましい。
【0028】
圧下制御部9は、初期荷重に到達した場合に、ロードセル4a,4bからから取得した駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値から導出される荷重作用点位置が、位置測定装置5により測定された板材2の板材幅方向における板幅中心位置zCに近づくように、圧下レベリングを行う。圧下レベリングとは、圧下装置3a,3bの駆動側DS及び作業側WSそれぞれを互いに逆方向に操作することをいう。
【0029】
圧下制御部9は、以下の(1)式により、荷重作用点位置を求める。以下の(1)式では、駆動側DS及び作業側WSの圧下位置間距離をa、ロードセル4a,4bの測定値をPD,PWとし、板材2とピンチロール1a,1b間に作用する荷重分布を板材2に付加される荷重及びモーメントの観点で等価な集中荷重に置き換えた場合の荷重作用点位置をzPとする。
【0030】
【0031】
ここで、例えば圧下レベリング開始時点において、
図5のように板材2における作業側WSの端部のみがピンチロール1aに接触している場合、荷重作用点位置は作業側WSの端部となる。この場合、ライン中心LCの近傍にある板材2の板材幅方向における板幅中心位置z
Cに荷重作用点位置を近づけるべく、駆動側DSの圧下位置を絞め込み、作業側WSの圧下位置を開放する方向に圧下レベリングを行う。当該圧下レベリングは、上述した特許文献1に開示されている従来の圧下レベリング(荷重の大きい側の圧下位置を更に絞め込む)とは逆方向の制御である。
【0032】
荷重作用点位置判定部10は、圧下レベリングの結果、荷重作用点位置と板幅中心位置zCとの離間距離が、所定の許容範囲内となっているか否かを判定する。荷重作用点位置判定部10は、例えば荷重作用点位置と板幅中心位置zCとの離間距離が、板材2の板材幅方向の長さの1/6以下である場合に、当該離間距離が所定の許容範囲内であると判定する。
【0033】
図4は、例えば
図5に示したように板材2が作業側WSの端部のみでピンチロール1aと接触した状態から駆動側DSの圧下位置を相対的に絞め込むように圧下レベリングが行われ、板材2の全幅とピンチロール1aとが接触し始めた状態を示しており、ピンチロール1a及び板材2の単位幅あたりの荷重(線荷重)の幅方向分布を模式的に示している。この状態では、駆動側DSの端部の線荷重が零の、三角形分布線荷重となっている。この場合の荷重作用点位置は、線荷重分布を示す三角形の重心となる。当該重心は、板材2の板材幅方向における板幅中心位置z
Cから板幅bの1/6だけ作業側WSに寄った位置となる。この状態になると、板材2の全幅とピンチロール1aとが接触しているので、
図6に示すような板材2の上流側を作業側WSに回転させる方向のモーメントが作用する状態を回避することができ(詳細は後述)、安定した通板を実現することができる。以上より、離間距離の許容範囲は、板材2の板材幅方向の長さの1/6以下とされる。
【0034】
駆動制御部11は、上記離間距離が所定の許容範囲内である場合に、ピンチロール1a,1bを回転させて板材2に所定の張力を付加するようにピンチロール駆動装置6を制御する。より詳細には、駆動制御部11は、離間距離が所定の許容範囲であると共に、ピンチロール荷重現在値が所定の設定荷重に到達した場合に、ピンチロール1a,1bに所定のトルク増分を与え板材2に所定の張力を付加するようにピンチロール駆動装置6を制御する。なお、ピンチロール荷重現在値が設定荷重に到達した後も、板厚変動等の外乱に備えて、設定荷重を維持すべく圧下装置3a,3bの同時圧下制御(駆動側DS及び作業側WS同時圧下)は継続して実施される。
【0035】
また、圧下制御部9は、ピンチロール1a、1bが回転している状態(板材2が搬送されている状態)においては、荷重作用点位置が板材2の板材幅方向における板幅中心位置z
Cに近づくように、圧下レベリングを行う。当該圧下レベリング制御は、ピンチロール1a,1bから作用する張力によって板材2が
図6のように傾くことを避けるために、荷重作用点位置と板材2の板材幅方向における板幅中心位置z
Cとの距離は、板幅の1/6以下となる範囲で制御されることが好ましい。
【0036】
図2に示されるように、コントローラ50は、一つ又は複数のプロセッサ53と、メモリ54と、ストレージ55と、入出力ポート56と、入力部57とを有する回路51により構成される。入出力ポート56は、入力部57からユーザの入力に係る制御信号を受け、位置測定装置5から板材2の板幅中心位置z
Cに係る制御信号を受け、ロードセル4a,4bから駆動側DS及び作業側WSそれぞれの荷重に係る制御信号を受け、圧下装置3a,3bに制御信号を出力し、ピンチロール駆動装置6にピンチロール駆動に係る制御信号を出力する。入力部57は入出力ポート56に接続され、オペレータによる入力を受け付ける。入力部57は、例えば、操作スイッチ、キーボード、マウス又はタッチパネル等により構成される。入力部57は、例えば、ネットワーク回線を介して入出力ポート56に接続されていてもよい。
【0037】
ストレージ55は、コントローラ50による処理を実行させるためのプログラムを記録している。ストレージ55は、コンピュータ読み取り可能であればどのようなものであってもよい。具体例として、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等が挙げられる。メモリ54は、ストレージ55からロードしたプログラム及びプロセッサ53の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ53は、メモリ54と協働してプログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。
【0038】
なお、コントローラ50のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えばコントローラ50の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0039】
[板材搬送処理]
次に、搬送方法の一例として、コントローラ50が行う、搬送開始時における板材2の搬送処理手順を説明する。
図3に示すように、コントローラ50は、ステップS1~S10を実行する。
【0040】
ステップS1では、圧下開始部7が、板材2がピンチロール1aに到達しているか否かを判定する。具体的には、圧下開始部7は、ピンチロール1a,1bが板材2に接しているか否かを検知することにより、当該判定を行う。板材2がピンチロール1aに到達していると判定された場合にはステップS2が実行され、到達していないと判定された場合には所定時間経過後に再度ステップS1が実行される。
【0041】
ステップS2では、圧下開始部7が、圧下装置3a,3bを同時圧下(駆動側DS及び作業側WS同時圧下)させ、ピンチロール1a,1bによる板材2の狭圧を開始させる。
【0042】
ステップS3では、荷重判定部8が、ロードセル4a,4bから駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値を取得し、駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値の合計であるピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達したか否かを判定する。ピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達していると判定された場合には、ステップS4及びステップS6が実行される。
【0043】
ステップS4では、圧下制御部9が、荷重作用点位置が板材2の板材幅方向における板幅中心位置zCに近づくように、圧下レベリングを行う。
【0044】
ステップS5では、圧下レベリングの結果、荷重作用点位置と板幅中心位置zCとの離間距離が、所定の許容範囲内となっているか(荷重作用点位置が板幅中心に近接しているか)否かを判定する。荷重作用点位置判定部10は、例えば荷重作用点位置と板幅中心位置zCとの離間距離が、板材2の板材幅方向の長さの1/6以下である場合に、当該離間距離が所定の許容範囲内であると判定する。許容範囲内であると判定された場合には、ステップS7が完了していることを条件にステップS9が実行され、許容範囲内でないと判定された場合には引き続き圧下レベリング(ステップS4)が実行される。
【0045】
ステップS6では同時圧下が継続され、ステップS7において荷重判定部8によりピンチロール荷重現在値が、板材2に所定の張力を付加するために必要な設定荷重に到達しているか否かが判定される。到達していないと判定された場合には圧下が継続される(ステップS6)。
【0046】
ステップS9では、駆動制御部11が、ピンチロール1a,1bに所定のトルク増分を与え板材2に所定の張力を付加するようにピンチロール駆動装置6を制御する。
【0047】
ステップS9によって板材2の搬送が開始された後、ステップS10では、圧下制御部9が、ピンチロール1a、1bが回転している状態(板材2が搬送されている状態)においては、通板安定のために、圧下装置3a,3bの駆動側DS及び作業側WSそれぞれを制御し圧下レベリングを行う。また、ステップS8において設定荷重を維持するための同時圧下制御が行われる。以上のように搬送作業中は、通板安定のための圧下レベリング制御と設定荷重を維持するための同時圧下制御を継続的に実施することで、定常的に安定な搬送作業を実施する。
【0048】
[本実施形態の作用効果]
従来、板材の製造・処理ラインにおいては、板材の面外変形を防止し、板材に張力を付加しながら板材を円滑に搬送するため、駆動された上下一対のピンチロールで板材を挟圧し搬送する装置が用いられる。このような装置においては、板材の板幅中心が該板材製造・処理ラインの中心から外れ、最悪の場合、板材の一部がピンチロール胴部から咬み出し板材が損傷する事象が発生し得る。当該事象を回避するために、例えば特許文献1には、ピンチロールのプロフィルとベンディング力の制御に加えて、作業側及び駆動側の荷重を測定して、荷重の大きい側に板材が移動していると判断し、荷重の大きい側の圧下位置を相対的に締め込む方向の圧下位置制御を実施する装置が開示されている。当該装置では、荷重を測定して荷重が大きい側の圧下位置を相対的に締め込む、すなわち、少なくとも一時的には作業側と駆動側のうち荷重が大きい側の荷重がさらに増大する方向に圧下レベリングを実施する。
【0049】
特許文献1に開示されたような装置では、板材の搬送を開始する際、板材の先端をピンチロールで挟圧した状態で所定の設定荷重に到達した後に、ピンチロールの駆動装置を操作して板材に張力を与える。しかしながら、当該張力が付加された直後に、板材の進行に伴って板材がライン中心から幅方向に急激に移動・逸脱する事象が発生し得る。当該事象を回避するための対策として、例えば板材に付与する張力を所定の目標値よりも小さい値に抑えて操業することが考えられる。しかしながら、当該対策では、板材に張力を付加するというピンチロールの本来の機能を十分に活用することができず、場合によっては所定の張力を得るためピンチロールを増設する必要が生じることもある。
【0050】
本発明者らは、ピンチロールから板材に張力を付与する過程と板材の挙動の関係について検討を重ね、以下の(A)及び(B)の知見を得た。
【0051】
(A)一般に板材の搬送を開始する際は、まず圧下装置を操作して所定の設定荷重になるまで板材をピンチロールで挟圧する。そして所定の設定荷重が実現された時点で駆動装置を操作して板材に所定の張力を付加する。このとき板材の板厚分布によってはピンチロールと板材の接触状態が不均一になっている場合がある。例えば、
図5に示す例では、板材2の作業側WSの板厚が駆動側DSの板厚に比べて大きくなっている。この場合、ピンチロール荷重が小さい条件では、ピンチロール1aは板材2の作業側WSの端部のみと接触することになる。この状態でピンチロール駆動装置6を操作して板材2に搬送方向の張力を付加すると、その駆動力はピンチロール1aと板材接触面を介して板材2に伝達され、板材2の作業側WS端部に集中的に搬送方向力が付加されることとなる。その結果、
図6に示すように板材2の上流側を作業側WSに回転させる方向のモーメントが作用し、板材2の上流側は作業側WSに傾くことになる。そしてピンチロール1a、1bの回転に伴って板材2はピンチロール軸に垂直に進行するため板材2は作業側WSに寄って行くと考えられる。
【0052】
(B)上記の搬送開始時において、ピンチロール荷重が設定荷重になる前後で特許文献1に記載されたような圧下レベリングを実施する場合を考える。特許文献1の圧下レベリングでは、荷重の大きい側の圧下位置を相対的に絞め込む操作を実施するので、例えば
図5のように作業側WSの端部のみがピンチロール1aと接触している状態で圧下レベリングを実施すると、荷重の大きい側すなわち作業側WSの圧下位置を駆動側DSに比べて絞め込むことになるので、より一層、作業側WSの端部に局所的にピンチロール1aが接触することになる。このため、特許文献1に記載されたような圧下レベリングを実施した後にピンチロール駆動装置6を操作したとしても、
図6に示すような板材2の上流側を作業側WSに回転させる方向のモーメントが作用して、板材2が作業側WSに寄って行く現象を回避することができない。
【0053】
上記知見に基づき、本発明者らは、板材の搬送を開始する際の従来技術の問題点を解決し、板材を板材製造・処理ラインの幅方向中心位置に良好に保持しつつピンチロール駆動装置を操作して板材に張力を付加する方法に想到した。
【0054】
すなわち、本実施形態の板材搬送装置100は、板材2を狭圧するピンチロール1a,1bと、ピンチロール1a,1bの駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおいてピンチロール1aを圧下する圧下装置3a,3bと、ピンチロール1a,1bの駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重を測定するロードセル4a,4bと、ピンチロール1a,1bを回転させて板材2に所定の張力を付加することによりピンチロール1a,1bに板材2を搬送させるピンチロール駆動装置6と、ピンチロール1a,1bにより搬送されている板材2の、板材幅方向における板幅中心位置zCを測定する位置測定装置5と、コントローラ50と、を備え、コントローラ50は、駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおいてピンチロール1aの圧下を開始するように圧下装置3a,3bを制御することと、ロードセル4a,4bから駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値を取得し、駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値の合計であるピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達したか否かを判定することと、初期荷重に到達した場合に、ロードセル4a,4bからから取得した駆動側DS及び作業側WSそれぞれにおける荷重現在値から導出される荷重作用点位置が、位置測定装置5により測定された板材2の板材幅方向における板幅中心位置zCに近づくように、圧下装置3a,3bの駆動側DS及び作業側WSを制御することと、荷重作用点位置と板幅中心位置zCとの離間距離が、所定の許容範囲内であるか否かを判定することと、所定の許容範囲内である場合に、ピンチロール荷重現在値が所定の設定荷重に到達したことを確認したうえで、ピンチロール1a,1bを回転させて板材2に所定の張力を付加するようにピンチロール駆動装置6を制御することと、を実行するように構成されている。
【0055】
当該板材搬送装置100では、ピンチロール1a,1bの圧下が開始された後にピンチロール荷重現在値が所定の初期荷重に到達したか否かが判定され、駆動側DS及び作業側WSの荷重現在値から導出される荷重作用点位置が板材2の板材幅方向における板幅中心位置z
Cに近づくように、圧下装置3a,3bの駆動側DS及び作業側WSが制御される。ここで、例えば
図5に示すように、ピンチロール1aが板材2の一端部のみと接触しているような場合には、当該一端部の荷重が大きく、荷重作用点位置は当該一端部となる。板材搬送装置100では、荷重作用点位置を板材2の板幅中心位置z
Cに近づけるように制御されるため、板材2の他端部の圧下位置が相対的に締め込まれる。そして、荷重作用点位置と板幅中心位置z
Cとの離間距離が許容範囲内となった場合すなわち荷重作用点位置が板幅中心位置z
Cに十分近づいた場合に、ピンチロール1a,1bによる板材2の搬送が開始されるので、板材2がライン中心clに沿って搬送されることとなる。すなわち、板材搬送装置100によれば、搬送開始時において板材2がライン中心clから外れることを抑制することができる。
【0056】
コントローラ50は、荷重作用点位置と板幅中心位置zCとの離間距離が板材2の板材幅方向の長さの1/6以下である場合に、当該離間距離が上述した所定の許容範囲内であると判定する。板幅中心位置zCとの離間距離が板幅の1/6以下とされることにより、板材2における板材幅方向の全域がピンチロール1a,1bと接触することになるので、ピンチロール1a,1bから板材2に張力を適切に付加することができる。また、板材2における板材幅方向の全域がピンチロール1a,1bと接触していることにより、板材2の端部のみでピンチロールと接触した場合のように板材2に対して上流側を作業側WSに回転させる方向のモーメントが作用する状態とならず、安定的に板材2を搬送することができる。
【0057】
コントローラ50は、板材2に所定の張力が付加された後、板厚変動等の外乱に備えてピンチロール設定荷重を維持するためのピンチロール同時圧下制御と通板安定のための圧下レベリング制御を継続的に実施する。圧下レベリング制御は、基本的に板材が寄った側の圧下装置を相対的に絞め込む制御となるが、このときもピンチロールから作用する張力によって板材が
図6のように傾くことを避けるため、荷重作用点位置と板幅中心位置との距離は1/6以下となる範囲で制御を実施する。これにより、ピンチロール1a,1bによる板材2の搬送が開始された後においても、板材2を蛇行させずに安定的に搬送することができる。
【0058】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、荷重作用点位置を定める際に板材における線荷重分布を直線分布と仮定したが、ピンチロールプロフィルや板厚分布によって線荷重分布が曲線分布となる場合であっても、荷重作用点位置と板幅中心位置zCの距離とを所定の許容範囲に抑えることによって、上述した制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
1a,1b…ピンチロール、2…板材、3a,3b…圧下装置、4a,4b…ロードセル(荷重測定装置)、5…位置測定装置、6…ピンチロール駆動装置(駆動装置)、50…コントローラ(制御部)、100…板材搬送装置、DS…駆動側、WS…作業側、zC…板幅中心位置。