(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】かつら及びその装着方法
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
A41G3/00 F
A41G3/00 J
(21)【出願番号】P 2018048864
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000126218
【氏名又は名称】株式会社アートネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】矢内 大輔
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-009406(JP,A)
【文献】特開平10-053911(JP,A)
【文献】特開平09-157925(JP,A)
【文献】登録実用新案第3183419(JP,U)
【文献】特開昭52-148358(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103169185(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00,5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄毛用のかつらであって、
装着者の自毛を引出すことが可能な大きさの網目を形成するとともに、増毛のための毛髪が植設される糸状部材からなるネットと、
前記ネットの外周を取り囲むように前記糸状部材に結合された複数の止着部材と、
を含み、各止着部材は、前記自毛を止着することが可能な構成を備え
、
各止着部材が、前記ネットの外周を取り囲むことが可能な長さの形状保持材を一時的に保持することが可能な構成を備えることを特徴とするかつら。
【請求項2】
各止着部材が、互いに結合された第1及び第2環状部材からなり、各第1環状部材は、前記ネットの外周を取り囲むように前記糸状部材に結合され、
前記ネットの外周を取り囲むことが可能な長さの形状保持材を通過させることが可能な内径を有し、各第2環状部材には、前記自毛が止着される請求項
1に記載のかつら。
【請求項3】
各第2環状部材は、各第1環状部材よりも大きい内径を有する請求項
2に記載のかつら。
【請求項4】
各第1環状部材は、その直径方向に伸縮性を有する請求項
2又は3に記載のかつら。
【請求項5】
各止着部材が、前記糸状部材との結合部と、前記自毛の止着部とを含む一部品で構成される請求項
1に記載のかつら。
【請求項6】
各止着部材が、前記結合部と前記止着部との間に、前記ネットの外周を取り囲むことが可能な長さの形状保持材を保持するための間隔を有し、前記間隔には、前記形状保持材を一時的に保持することが可能な構成が設けられる請求項
5に記載のかつら。
【請求項7】
各止着部材が、前記間隔に前記形状保持材を一時的に保持するための水溶性の糸状部材を備え、前記形状保持材が、前記水溶性の糸状部材によって前記間隔に結着される請求項
6に記載のかつら。
【請求項8】
請求項
1~
6に記載されたかつらの装着方法であって、
前記形状保持材を各止着部材に保持させた状態で、前記かつらを装着者の頭部に載置する工程と、
装着者の自毛を各止着部材に止着する工程と、
前記形状保持材の少なくとも一部を切断し、各止着部材から取り外す工程と、
を含むことを特徴とするかつらの装着方法。
【請求項9】
請求項
7に記載されたかつらの装着方法であって、
前記形状保持材を各止着部材に保持させた状態で、前記かつらを装着者の頭部に載置する工程と、
装着者の自毛を各止着部材に止着する工程と、
前記水溶性の糸状部材を溶解させ、前記形状保持材を各止着部材から取り外す工程と、
を含むことを特徴とするかつらの装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄毛用のかつら及びその装着方法に関し、特に、かつらを一定の形状に保つための骨組みとなる構成要素を排除し、繊細で軽く柔軟性に富み、装着感を殆ど感じないかつらと、一定の形状を保つことが難しいかつらを頭部に容易に装着することを可能とするかつらの装着方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
男女を問わず、薄毛の一般的な対策として増毛とかつらが知られている。増毛は、頭部に生えている自毛に、人工毛や人毛(以下「毛髪」という)を結着する施術である。例えば、特許文献1に開示されているように、1本の自毛の根元に毛髪をV字形に結着して、毛量を3本に増やす。一方、薄毛用のかつらは、かつらの毛髪と頭部の自毛とを混ぜ合せることが可能な構成となっている。例えば、特許文献2に開示されているように、頭部を覆うネット状のベースのうち、薄毛に対応する部分に毛髪を植設し、これ以外の部分をカッターで切除して自毛の引き出しを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-63457号公報
【文献】特開平5-295605号公報
【文献】特開2002-115115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生え際、分け目、旋毛などの部分的な薄毛には、かつらよりも増毛が好適である。増毛は、薄毛が気になる部分の毛量をピンポイントで増すことができ、外観も自然であり、かつらのような装着感が全くない。しかし、毛髪を結着した自毛が伸びると、毛髪の結び目が上へと移動し、不自然な状態になる。このため、増毛には、専門家による月々のメンテナンスが必要であり、維持費が掛かる。このような経済的な理由から、増毛は、有効な薄毛対策でありながら、積極的に利用されていない。
【0005】
一方、薄毛用のかつらは、頭部を覆って自毛を引き出す構成であるため、頭皮や自毛から伝わる装着感が煩わしい。特に、薄毛の程度が軽い人は、装着感の煩わしさを我慢してまで、かつらを利用しようとは思わない。例えば、特許文献2のかつらは、ベースに第1及び第2形態保持体を放射状に設けて、かつらを一定の形状に保持している。自毛は、第1及び第2形態保持体の間から引き出される。第1及び第2形態保持体は、一定の形状を保持するための弾性を有するため、頭皮や自毛に接触圧を加え、頭部に装着感を与える。
【0006】
ここで、特許文献3には、かつらのアウトラインとなる周縁枠部材を構成要素から排除し、複数本のリブからなるフレームワークに擬毛を取り付けた構成のかつらが開示されている。特許文献3のかつらは、複数本のリブの間から引き出した装着者の自毛と、リブに取り付けた擬毛とを混ぜ合わせて頭部に装着される。
【0007】
特許文献3のかつらは、複数本のリブのいずれもが、かつらのアウトラインを形成しないので、頭皮への圧迫は軽減されるものと考えられる。しかし、各リブは、弾性を備えた剛性材料から成る芯材と、この芯材を覆う熱収縮性のチューブとで形成されており、その重量、接触面積及び硬さが、かつらの物理的存在を頭部に感じさせる。また、弾性と剛性とを兼ね備えた各リブは、その間から引き出された自毛に接触圧を加える。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、繊細で軽く柔軟性に富み、装着感を殆ど感じさせず、薄毛対策として誰でも手軽に利用することができるかつらを提供することを目的とする。また、本発明は、一定の形状を保つことが難しいかつらを頭部に容易に装着することを可能とするかつらの装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明のかつらは、薄毛用のかつらであって、装着者の自毛を引出すことが可能な大きさの網目を形成するとともに、増毛のための毛髪が植設される糸状部材からなるネットと、前記ネットの外周を取り囲むように前記糸状部材に結合された複数の止着部材と、を含み、各止着部材は、前記自毛を止着することが可能な構成を備える。
【0010】
(2)好ましくは、上記(1)のかつらにおいて、各止着部材が、前記ネットの外周を取り囲むことが可能な長さの形状保持材を一時的に保持することが可能な構成を備える。
【0011】
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)のかつらにおいて、各止着部材が、互いに結合された第1及び第2環状部材からなり、各第1環状部材は、前記ネットの外周を取り囲むように前記糸状部材に結合され、各第2環状部材には、前記自毛が止着される。
【0012】
(4)好ましくは、上記(3)のかつらにおいて、各第1環状部材は、前記ネットの外周を取り囲むことが可能な長さの形状保持材を通過させることが可能な内径を有する。
【0013】
(5)好ましくは、上記(3)又は(4)のかつらにおいて、各第2環状部材は、各第1環状部材よりも大きい内径を有する。
【0014】
(6)好ましくは、上記(3)~(5)のいずれかのかつらにおいて、各第1環状部材は、その直径方向に伸縮性を有する。
【0015】
(7)好ましくは、上記(1)又は(2)のかつらにおいて、各止着部材が、前記糸状部材との結合部と、前記自毛の止着部とを含む一部品で構成される。
【0016】
(8)好ましくは、上記(7)のかつらにおいて、各止着部材が、前記結合部と前記止着部との間に、前記ネットの外周を取り囲むことが可能な長さの形状保持材を保持するための間隔を有し、前記間隔には、前記形状保持材を一時的に保持することが可能な構成が設けられる。
【0017】
(9)好ましくは、上記(8)のかつらにおいて、各止着部材が、前記間隔に前記形状保持材を一時的に保持するための水溶性の糸状部材を備え、前記形状保持材が、前記水溶性の糸状部材によって前記間隔に結着される。
【0018】
(10)上記目的を達成するために、本発明の第1のかつらの装着方法は、上記(2)~(8)に記載されたかつらの装着方法であって、前記形状保持材を各止着部材に保持させた状態で、前記かつらを装着者の頭部に載置する工程と、装着者の自毛を各止着部材に止着する工程と、前記形状保持材の少なくとも一部を切断し、各止着部材から取り外す工程と、を含む。
【0019】
(11)上記目的を達成するために、本発明の第2のかつらの装着方法は、上記(9)に記載されたかつらの装着方法であって、前記形状保持材を各止着部材に保持させた状態で、前記かつらを装着者の頭部に載置する工程と、装着者の自毛を各止着部材に止着する工程と、前記水溶性の糸状部材を溶解させ、前記形状保持材を各止着部材から取り外す工程と、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明のかつらは、形状を保つための骨組みとなる構成要素を排除し、増毛のための毛髪、ネット及び止着部材を主たる構成要素とする。この結果、繊細で軽く柔軟性に富み、装着感を殆ど感じさせず、薄毛対策として誰でも手軽に利用することができるかつらが実現する。本発明のかつらは、極めて簡素な構成であり、装着感を殆ど感じさせないため、施術としての増毛により近い。
【0021】
一方、本発明のかつらは、形状を保つための骨組みとなる構成要素を排除した結果、頭部に装着されるまで一定の形状を保つことが難しく、頭部への装着作業が困難である。そこで、本発明のかつらは、ネットの外周を取り囲む長さの形状保持材を、各止着部材によって一時的に保持する構成を採用する。そして、本発明のかつらの装着方法は、装着者の自毛にかつらを止着するまでの間、各止着部材を介して、ネットの外周を形状保持材に間接的に保持させる。これにより、かつらのアウトラインが保たれ、すなわち、ネットが広がった状態に保たれ、装着者の自毛を各止着部材に止着する作業が容易となる。形状保持材は、装着者の自毛にかつらを止着した後、かつらから取り外される。したがって、形状保持材が装着者の頭部に装着感を感じさせることはない。このような本発明の装着方法によれば、一定の形状を保つことが難しいかつらを頭部に容易に装着することが可能となる。この結果、ヘアサロン等の店舗において、本発明のかつらによる増毛効果を、顧客に迅速に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るかつらを示す平面図である。
図1(b)は、前記かつらを示す側面図である。
図1(c)は、前記かつらを構成する止着部材の周辺を示す部分拡大図である。
【
図2】
図2(a)~(d)は、本発明の実施形態に係るかつらの装着方法を説明するための概略図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、本発明の実施形態に係るかつらの装着方法を説明するための概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係るかつらを頭部に装着した状態を示す平面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の第2実施形態に係るかつらを示す平面図である。
図5(b)は、前記かつらを構成する止着部材を示す部分拡大図である。
【
図6】
図6(a)~(d)は、本発明の第2実施形態に係るかつらの着脱方法を説明するための概略図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の第3実施形態に係るかつらを示す平面図である。
図7(b)は、前記かつらを構成する止着部材を示す部分拡大図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3実施形態に係るかつらを頭部に装着した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<かつらの第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係るかつらの構成について、
図1及び
図4を参照しつつ説明する。
図1(a)~(c)は、本発明の第1実施形態に係るかつら1の装着前の状態を示す。一方、
図4は、本発明の第1実施形態に係るかつら1の装着後の状態を示す。
【0024】
図1(a)、(b)に示すように、かつら1は、増毛のための図示しない毛髪と、ネット10と、複数の止着部材20とで構成される。形状保持材30は、かつら1の装着作業をサポートするための一時的な手段であり、かつら1を構成するものではない。
図4に示すように、装着者の頭部に装着されたかつら1は、増毛のための図示しない毛髪と、ネット10と、複数の止着部材20との3つの構成要素からなる。
【0025】
ネット10は、複数本の糸状部材を90度に交差させて結着し、装着者の自毛を引出すことが可能な大きさの網目を形成した構成になっている。ネット10を構成する糸状部材には、増毛のための図示しない毛髪が結着される。ネット10の網目の大きさは特に限定されるものではない。但し、本発明は、増毛を目的とする薄毛用のかつらに関するものであり、ネット10の網目は、比較的に多くの自毛を引き出すことが可能な大きさになると予想される。例えば、ネット10の網目は、全体的に15mm×15mmの大きさとし、増毛のための毛髪を密に植設したい箇所の網目を部分的に7.5mm×7.5mmとすることが可能である。さらに、頭部の生え際、分け目、旋毛の少なくともいずれか1つに対応するネット10の部分に人工皮膚を取り付けた構成にしてもよい。人工皮膚は、人工又は天然の繊維からなる織布で構成してもよいし、あるいは、ポリウレタンやシリコーン等の合成樹脂からなる肌色のフィルム又はシートで構成してもよい。
【0026】
ネット10を構成する糸状部材の直径や素材は、特に限定されるものではないが、より細くより高い強度を有するものが望ましい。例えば、ネット10を構成する糸状部材の素材は、成形性及び耐熱性等に優れたナイロン、ポリエステル、アクリルなどの熱可塑性樹脂が好ましく、糸状部材の直径は、1mm未満とすることが好ましい。
【0027】
複数の止着部材20は、ネット10の外周を取り囲むように、ネット10を構成する糸状部材に結合されている。
図1(c)に示すように、本実施形態の止着部材20は、互いに結合された第1環状部材21及び第2環状部材22の2つの部品で構成されている。第1環状部材21と第2環状部材22とは、互いの内側を通過するようにして鎖状に結合されている。
【0028】
第1環状部材21は、その直径方向(図中の両矢印を参照)に伸縮性を有する合成樹脂製の円筒で構成されている。第1環状部材21は、ネット10の最も外側に位置する網目を構成する糸状部材、又はネット10の最も外側に網目を構成しない糸状部材の端部に結合される。第1環状部材21の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、シリコーンゴムとすることが可能である。また、第1環状部材21の直径及び幅も、特に限定されるものではないが、例えば、直径1mm程度、幅1mm~2mm程度とすることができる。各第1環状部材21には、形状保持材30が挿通され、一時的に保持される。
【0029】
第2環状部材22は、例えば、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの合成樹脂製の線材からなる。第2環状部材22の直径は、特に限定されるものではないが、直径を大きくすると、装着者の自毛を通しやすくなる。第2環状部材22の直径は、例えば、5mm程度が好ましい。装着者の自毛は、例えば、第2環状部材22に結着され、接着剤で固定される。
【0030】
形状保持材30は、例えば、塑性変形可能な合成樹脂からなる。形状保持材30の素材は、特に限定されるものではなく、ネット10の外周の大半を取り囲むことが可能な長さと、外力を加えて変形させた形状を保つことができればよい。本実施形態では、形状保持材30として、三井化学株式会社(登録商標)の製品名「テクノロート」(登録商標)を用いている。
【0031】
形状保持材30は、各止着部材20の第1環状部材21に挿通され、かつら1のアウトラインを保つ。すなわち、形状保持材30は、各第1環状部材21を介して、ネット10を広げた状態に保つ。これにより、かつら1が一定の形状に保たれ、各止着部材20の第2環状部材22に装着者の自毛を止着する作業が容易となる。
【0032】
<かつらの装着方法の実施形態>
次に、本発明の第1実施形態に係るかつらの装着方法について、
図2~
図4を参照しつつ説明する。
【0033】
図2(a)に示すように、形状保持材30を各止着部材20の第1環状部材21に保持させた状態で、かつら1を装着者の頭部に載置する。形状保持材30によって、かつら1が
図1(a)、(b)に示す状態に保たれ、頭部の所定位置にかつら1を正確に配置することができる。
【0034】
次いで、
図2(b)~(d)に示すように、いずれかの止着部材20の第2環状部材22に鈎針100を挿通させ、装着者の自毛を鈎針100の先端で掬い上げ、第2環状部材22を通過させる。そして、
図3(a)に示すように、装着者の自毛を第2環状部材22に結着させ、結着部分を接着剤で固める。以上の止着工程を、全ての止着部材20に対して繰り返し行うことにより、かつら1が装着者の頭部に装着される。
【0035】
その後、
図3(b)、(c)に示すように、形状保持材30の少なくとも一部を切断して、各止着部材20の第1環状部材21から形状保持材30を取り外す。これにより、装着者の頭部に装着されたかつら1は、増毛のための図示しない毛髪と、ネット10と、各止着部材20とからなる極めて簡素な構成になる(
図4を参照)。
【0036】
<かつらの第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るかつらの構成について、
図5を参照しつつ説明する。
図5(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係るかつら2の装着前の状態を示す。
【0037】
図5(a)、(b)に示すように、かつら2は、1つの止着部材20が複数の第2環状部材22を備えた構成となっている。この構成により、装着者の頭部からかつら2を極めて容易に取り外すことが可能となる。
【0038】
すなわち、
図6(a)に示すように、かつら2は、複数の第2環状部材22のいずれか1つを用いて、上述した実施形態の装着方法と全く同じ手順で、装着者の頭部に装着される(
図6(b)を参照)。
【0039】
一方、
図6(c)に示すように、装着者の頭部からかつら2を取り外す場合は、自毛を結着させた第2環状部材22の一部を切断する。
図6(d)に示すように、切断された第2環状部材22は、第1環状部材21との結合が解かれる。全ての第2環状部材22を切断し、全ての第1環状部材21との結合を解くと、かつら2は、装着者の頭部から取り外される。
【0040】
このように、かつら2は、自毛が止着された第2環状部材22を全て切断することで、装着者の頭部から容易かつ迅速に取り外すことができる。そして、装着者の頭部から取り外したかつら2は、再び装着者の頭部に装着させることが可能である。すなわち、各第1環状部材21に新たな形状保持材30を挿通させて、かつら2を一定の形状に保ち、各第1環状部材21に残っている未使用の第2環状部材22に、装着者の自毛を止着させる。このようにして、かつら2は、再び装着者の頭部に装着される。
【0041】
<かつらの第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るかつらの構成について、
図7及び
図8を参照しつつ説明する。
図7(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係るかつら3の装着前の状態を示す。一方、
図8は、本発明の第3実施形態に係るかつら3の装着後の状態を示す。
【0042】
図7(a)、(b)に示すように、かつら3の各止着部材40は、合成樹脂製の一枚の板部材で構成されている。各止着部材40には、ネット10を構成する糸状部材との結合部40aと、自毛の止着部40bとが設けられている。
【0043】
結合部40aは、横方向に並ぶ2つの穿孔からなる。ネット10を構成する糸状部材は、結合部40aの2つの穿孔に通され、止着部材40の一端部に結合される。止着部40bは、結合部40aの反対側に設けられた開口からなる。装着者の自毛は、止着部40bの開口を通過させられ、止着部材40の他端部に結着される。
【0044】
止着部材40における結合部40aと止着部40bとの間には、形状保持材30を保持するための間隔があけられており、この間隔には、縦横に並んで配置された4つの穿孔40cが設けられている。そして、形状保持材30は、4つの穿孔40cに通された水溶性の糸状部材50によって止着部材40に保持される。
【0045】
かつら3は、上述した実施形態の装着方法と全く同じ手順で、装着者の頭部に装着されるが、形状保持材30を取り外す工程が、上述した実施形態の装着方法と異なる。すなわち、全ての止着部材40の止着部40bに装着者の自毛を結着した後、各止着部材40の水溶性の糸状部材50を全て溶解させる。これにより、形状保持材30は、ネット10の外周を取り囲む輪状のままで、各止着部材40から取り外される。これにより、装着者の頭部に装着されたかつら3は、増毛のための図示しない毛髪と、ネット10と、各止着部材40とからなる極めて簡素な構成になる(
図8を参照)。
【0046】
<作用効果>
本実施形態のかつら1、2、3は、形状を保つための骨組みとなる構成要素を排除し、増毛のための図示しない毛髪、ネット10及び止着部材20又は40を主たる構成要素とする。この結果、繊細で軽く柔軟性に富み、装着感を殆ど感じさせず、薄毛対策として誰でも手軽に利用することができるかつら1、2、3が実現する。本実施形態のかつら1、2、3は、極めて簡素な構成であり、装着感を殆ど感じさせないため、施術としての増毛により近い。
【0047】
一方、本実施形態のかつら1、2、3は、形状を保つための骨組みとなる構成要素を排除した結果、頭部に装着されるまで一定の形状を保つことが難しく、頭部への装着作業が困難である。そこで、本実施形態のかつら1、2、3は、ネット10の外周を取り囲む長さの形状保持材30を、各止着部材20又は40によって一時的に保持する構成を採用する。そして、本実施形態のかつら1、2、3の装着方法は、装着者の自毛にかつら1、2、3を止着するまでの間、各止着部材20又は40を介して、ネット10の外周を形状保持材30に間接的に保持させる。これにより、かつら1、2、3のアウトラインが保たれ、すなわち、ネット10が広がった状態に保たれ、装着者の自毛を各止着部材20又は40に止着する作業が容易となる。形状保持材30は、装着者の自毛にかつら1、2、3を止着した後、かつら1、2、3から取り外される。したがって、形状保持材30が装着者の頭部に装着感を感じさせることはない。このような本実施形態のかつら1、2、3の装着方法によれば、一定の形状を保つことが難しいかつら1、2、3を頭部に容易に装着することが可能となる。この結果、ヘアサロン等の店舗において、本実施形態のかつら1、2、3による増毛効果を、顧客に迅速に提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1、2、3 かつら
10 ネット
20 止着部材
21 第1環状部材
22 第2環状部材
30 形状保持材
40 止着部材
40a 結合部
40b 止着部
40c 穿孔
50 水溶性の糸状部材
100 鉤針