IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両の制御装置 図1
  • 特許-車両の制御装置 図2
  • 特許-車両の制御装置 図3
  • 特許-車両の制御装置 図4
  • 特許-車両の制御装置 図5
  • 特許-車両の制御装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20220511BHJP
   F16H 61/66 20060101ALI20220511BHJP
   F16H 59/48 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/66
F16H59/48
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018054952
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019168006
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 公一
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-25573(JP,A)
【文献】国際公開第2012/104993(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02
F16H 61/66-61/664
F16H 59/36-59/48
F16H 59/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源から出力される動力が入力される入力側要素、駆動輪側へ動力を出力する出力側要素及び前記入力側要素と前記出力側要素との間で動力を伝達する動力伝達部材を有する無段変速機と、
前記駆動源と前記入力側要素との間の動力の伝達を断接するクラッチと、
を備える車両の制御装置であって、
前記クラッチを開放させて前記車両を惰性走行させる惰行制御を実行可能な制御部を備え、
前記制御部は、前記惰行制御が開始されることに起因して前記車両に生じ得る加速度の変化における加速度変化量が閾値を超えると予測される場合、前記惰行制御を開始する際に前記無段変速機の変速比を目標変速比から低速側に変速させる、
車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記加速度変化量が前記閾値を超えると予測される場合、前記惰行制御を開始する際に前記無段変速機の変速比を前記加速度変化量に基づいて前記目標変速比から低速側に変速させる、
請求項に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記惰行制御を開始する際に前記無段変速機の変速比を前記目標変速比から低速側に変速させた後、前記無段変速機の変速比を前記目標変速比に徐々に戻す、
請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の燃費を向上させる目的で、所定の条件下において、車両を駆動源から駆動輪に動力が伝達されない状態にして当該車両を惰性走行させる制御が利用されている。例えば、そのような制御として、特許文献1に開示されているように、変速機を含む動力伝達系に設けられるクラッチを開放させて車両を惰性走行させる惰行制御がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-219904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、動力伝達系に設けられるクラッチを開放させて車両を惰性走行させる惰行制御に関する従来の技術では、惰行制御が開始されることに起因して車両の加速度が急峻に変化する場合があった。
【0005】
具体的には、上記惰行制御では、クラッチを開放させることによって、当該クラッチより駆動源側(上流側)の部分と駆動輪側(下流側)の部分との間での動力の伝達が遮断される。それにより、クラッチより駆動源側の部分が駆動輪の回転に伴い連れ回されることがなくなる。ゆえに、駆動輪の運動エネルギがクラッチより駆動源側の部分を連れ回すことに費やされることがなくなるので、燃費の向上が図られる。ここで、クラッチが開放されて惰行制御が開始される際に、動力伝達系における車軸まわりの等価慣性モーメントは急峻に減少する。それにより、車両の加速度が急峻に上昇する。このような車両の加速度の急峻な変化は、例えば、ドライバに違和感を与える要因又は車両の挙動を不安定にする要因となる。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、車両の加速度が急峻に変化することを抑制しつつ、燃費を向上させることが可能な、新規かつ改良された車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、駆動源と、前記駆動源から出力される動力が入力される入力側要素、駆動輪側へ動力を出力する出力側要素及び前記入力側要素と前記出力側要素との間で動力を伝達する動力伝達部材を有する無段変速機と、前記駆動源と前記入力側要素との間の動力の伝達を断接するクラッチと、を備える車両の制御装置であって、前記クラッチを開放させて前記車両を惰性走行させる惰行制御を実行可能な制御部を備え、前記制御部は、前記惰行制御が開始されることに起因して前記車両に生じ得る加速度の変化における加速度変化量が閾値を超えると予測される場合、前記惰行制御を開始する際に前記無段変速機の変速比を目標変速比から低速側に変速させる、車両の制御装置が提供される。
【0010】
前記制御部は、前記加速度変化量が前記閾値を超えると予測される場合、前記惰行制御を開始する際に前記無段変速機の変速比を前記加速度変化量に基づいて前記目標変速比から低速側に変速させてもよい。
【0011】
前記制御部は、前記惰行制御を開始する際に前記無段変速機の変速比を前記目標変速比から低速側に変速させた後、前記無段変速機の変速比を前記目標変速比に徐々に戻してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、車両の加速度が急峻に変化することを抑制しつつ、燃費を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る動力伝達系の概略構成を示す模式図である。
図2】同実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】同実施形態に係る制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】前後進切替機構が開放されている場合の動力伝達系における動力の伝達の断接状態を説明するための図である。
図5】参考例に係る制御装置による制御が行われる場合についての、車両の各状態量の推移の一例を示す図である。
図6】同実施形態に係る制御装置による制御が行われる場合についての、車両の各状態量の推移の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<1.動力伝達系の構成>
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る動力伝達系1の構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る動力伝達系1の概略構成を示す模式図である。図2は、本実施形態に係る制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
動力伝達系1は、車両に搭載され、例えば、図1に示されるように、エンジン10と、トルクコンバータ20と、前後進切替機構30と、CVT40と、トランスファクラッチ50と、オイルポンプ60と、バルブユニット70と、制御装置100とを備える。エンジン10は、本発明に係る駆動源の一例に相当する。また、CVT40は、本発明に係る無段変速機の一例に相当する。また、前後進切替機構30は、駆動源と無段変速機における入力側要素との間の動力の伝達を断接する本発明に係るクラッチの一例に相当する。
【0018】
動力伝達系1では、例えば、トルクコンバータ20、前後進切替機構30及びCVT40が、この順にエンジン10の出力側に連設される。エンジン10から出力される動力は、トルクコンバータ20を介して前後進切替機構30へ伝達される。前後進切替機構30に伝達された動力は、回転方向を前進方向又は後退方向に切り替えられてCVT40へ伝達される。CVT40に伝達された動力は、CVT40により変速されて駆動輪側へ出力される。CVT40から出力された動力は、前輪側駆動軸14f、フロントディファレンシャルギヤ15f及び前輪側車軸16fを介して駆動輪としての前輪17fへ伝達される。さらに、CVT40から出力された動力は、トランスファクラッチ50が締結されている場合、トランスファクラッチ50、後輪側駆動軸14r、リヤディファレンシャルギヤ15r及び後輪側車軸16rを介して駆動輪としての後輪17rへ伝達される。
【0019】
エンジン10は、ガソリン等を燃料として動力を生成する内燃機関である。上述したように、エンジン10は、本発明に係る駆動源の一例に相当する。エンジン10は、出力軸としてのクランクシャフト11を有する。クランクシャフト11には、ギヤ列12を介して機械式のオイルポンプ60が連結されている。また、クランクシャフト11は、トルクコンバータ20と接続される。
【0020】
オイルポンプ60は、エンジン10のクランクシャフト11の回転により駆動されて、バルブユニット70へ供給される油圧を発生させる。バルブユニット70は、トルクコンバータ20、前後進切替機構30、CVT40及びトランスファクラッチ50の各々と油路を介して接続されており、これらの各装置へ供給される油圧を調整可能である。バルブユニット70には、各装置へ供給される油圧を制御するための制御弁(例えば、比例電磁制御弁)が設けられる。
【0021】
トルクコンバータ20は、エンジン10のクランクシャフト11にフロントカバー23を介して連結されるポンプインペラ22と、ポンプインペラ22に対向するとともにタービン軸25に連結されるタービンライナ21とを備える。トルクコンバータ20内には作動油が供給されており、作動油を介して、ポンプインペラ22からタービンライナ21にエンジン10から出力される動力が伝達される。また、トルクコンバータ20内には、エンジン10のクランクシャフト11とタービン軸25とを直結するロックアップクラッチ24が設けられている。タービン軸25は、前後進切替機構30と接続される。
【0022】
ロックアップクラッチ24が開放されている場合(換言すると、トルクコンバータ20のロックアップ状態が解除されている場合)には、エンジン10から出力される動力は作動油を介して前後進切替機構30へ伝達される。一方、ロックアップクラッチ24が締結されている場合(換言すると、トルクコンバータ20がロックアップ状態である場合)には、エンジン10から出力される動力が直接的に前後進切替機構30へ伝達される。
【0023】
前後進切替機構30は、プラネタリギヤ31と、前進クラッチ32と、後退ブレーキ33とを備える。また、前後進切替機構30は、CVT40のプライマリ軸44と接続される。前後進切替機構30では、前進クラッチ32及び後退ブレーキ33の締結状態に応じて、CVT40のプライマリ軸44の回転方向が切り替え可能になっている。前進クラッチ32が締結され後退ブレーキ33が開放されることにより、タービン軸25と接続された入力軸34がプライマリ軸44に対して直結されるため、プライマリ軸44が正転方向に回転し、車両の前進走行が可能となる。また、前進クラッチ32が開放され後退ブレーキ33が締結されることにより、入力軸34がプラネタリギヤ31を介してプライマリ軸44に連結されるため、プライマリ軸44が逆転方向に回転し、車両の後退走行が可能となる。
【0024】
また、前進クラッチ32及び後退ブレーキ33がともに開放されることにより、プライマリ軸44へエンジン10からの動力が伝達されない状態になる。一方、上述したように、前進クラッチ32又は後退ブレーキ33のいずれか一方が締結されることにより、プライマリ軸44へエンジン10からの動力が伝達される状態になる。プライマリ軸44へ伝達される動力は、CVT40の入力側要素であるプライマリプーリ41へ伝達される。ゆえに、前後進切替機構30によって、エンジン10とプライマリプーリ41との間の動力の伝達が断接される。このように、前後進切替機構30は、駆動源と無段変速機における入力側要素との間の動力の伝達を断接する本発明に係るクラッチの一例に相当する。前進クラッチ32及び後退ブレーキ33がともに開放された状態は前後進切替機構30が開放された状態に相当し、前進クラッチ32又は後退ブレーキ33のいずれか一方が締結された状態は前後進切替機構30が締結された状態に相当する。
【0025】
CVT40は、プライマリプーリ41と、セカンダリプーリ42と、チェーン43と、プライマリ軸44と、セカンダリ軸45とを備える。プライマリプーリ41は、駆動源から出力される動力が入力される入力側要素の一例に相当する。また、セカンダリプーリ42は、駆動輪側へ動力を出力する出力側要素の一例に相当する。また、チェーン43は、入力側要素と出力側要素との間で動力を伝達する動力伝達部材の一例に相当する。このように、CVT40は、入力側要素、出力側要素及び動力伝達部材を有する本発明に係る無段変速機の一例に相当する。
【0026】
プライマリ軸44及びセカンダリ軸45は互いに並行に配設され、プライマリプーリ41はプライマリ軸44に固定され、セカンダリプーリ42はセカンダリ軸45に固定されている。プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42には、プライマリプーリ41とセカンダリプーリ42との間で動力を伝達するチェーン43が巻回されている。各プーリには固定シーブ及び可動シーブが設けられており、固定シーブ及び可動シーブによってチェーン43が挟持されている。具体的には、各プーリへ供給される油圧によって可動シーブが固定シーブ側へ押圧されることによって、チェーン43が挟持される。各プーリへ供給される油圧が調整されることにより、各プーリにおけるチェーン43の挟持圧が調整されて、各プーリ上でのチェーン43の巻き掛け半径が調整される。それにより、CVT40の変速比が調整される。CVT40は、プライマリ軸44へ入力される動力を、このように調整される変速比で変速してセカンダリ軸45へ出力する。セカンダリ軸45は、ギヤ列13を介して、前輪側駆動軸14fと接続されている。
【0027】
前輪側駆動軸14fは、フロントディファレンシャルギヤ15f及び前輪側車軸16fを介して駆動輪としての前輪17fと接続されている。セカンダリ軸45からギヤ列13を介して前輪側駆動軸14fへ伝達された動力は、フロントディファレンシャルギヤ15fによって前輪側車軸16fを介して左右の前輪17fへ分配されて伝達される。
【0028】
また、前輪側駆動軸14fには、トランスファクラッチ50を介して後輪側駆動軸14rが接続されている。後輪側駆動軸14rは、リヤディファレンシャルギヤ15r及び後輪側車軸16rを介して駆動輪としての後輪17rと接続されている。トランスファクラッチ50は、前輪側駆動軸14fと後輪側駆動軸14rとの間の動力の伝達を断接する。トランスファクラッチ50が締結されることにより、セカンダリ軸45からギヤ列13を介して前輪側駆動軸14fへ伝達された動力が後輪側駆動軸14rへ伝達される状態になる。それにより、後輪側駆動軸14rへ伝達された動力は、リヤディファレンシャルギヤ15rによって後輪側車軸16rを介して左右の後輪17rへ分配されて伝達される。この場合、車両は4輪駆動モードとなる。一方、トランスファクラッチ50が開放されることにより、セカンダリ軸45からギヤ列13を介して前輪側駆動軸14fへ伝達された動力が後輪側駆動軸14rへ伝達されない状態になる。この場合、車両は前輪駆動モードとなる。
【0029】
動力伝達系1には、種々のセンサが設けられ得る。例えば、動力伝達系1は、加速度センサ201と、車速センサ202と、アクセル開度センサ203と、プライマリ回転センサ204と、セカンダリ回転センサ205とを備える。
【0030】
加速度センサ201は、車両の加速度を検出し、検出結果を出力する。
【0031】
車速センサ202は、車両の速度である車速を検出し、検出結果を出力する。
【0032】
アクセル開度センサ203は、運転者によるアクセルペダルの操作量に相当するアクセル開度を検出し、検出結果を出力する。
【0033】
プライマリ回転センサ204は、プライマリ軸44の回転数を検出し、検出結果を出力する。
【0034】
セカンダリ回転センサ205は、セカンダリ軸45の回転数を検出し、検出結果を出力する。
【0035】
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0036】
また、制御装置100は、動力伝達系1における各装置と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。例えば、制御装置100は、エンジン10、バルブユニット70及び各センサと通信を行う。
【0037】
制御装置100は、例えば、図2に示されるように、取得部110と、制御部130とを備える。
【0038】
取得部110は、制御装置100が行う処理において用いられる各種情報を取得する。また、取得部110は、取得した情報を制御部130へ出力する。
【0039】
例えば、取得部110は、動力伝達系1における各センサと通信することによって、各センサから出力される検出結果を取得する。
【0040】
制御部130は、取得部110により取得された情報を用いて各処理を実行する。制御部130は、具体的には、車両の走行状態に応じて、エンジン10、前後進切替機構30及びCVT40の動作をそれぞれ制御する。本実施形態では、制御部130は、前後進切替機構30を開放させて車両を惰性走行させる惰行制御を実行可能である。それにより、燃費を向上させることが可能となる。
【0041】
制御部130は、例えば、予測部131と、エンジン制御部132と、前後進切替機構制御部133と、CVT制御部134とを備える。
【0042】
予測部131は、惰行制御が開始されることに起因して車両に生じ得る加速度の変化における加速度変化量ΔAが閾値を超えるか否かを予測する。加速度変化量ΔAは、このような加速度の変化における車両の加速度の変化量に相当する。予測部131による予測結果は、惰行制御の開始の際におけるCVT制御部134による制御に利用される。
【0043】
エンジン制御部132は、エンジン10の動作を制御する。具体的には、エンジン制御部132は、エンジン10における各装置の動作を制御することによって、スロットル開度、点火時期及び燃料噴射量等を制御する。それにより、エンジン制御部132は、エンジン10の出力を制御し得る。具体的には、エンジン制御部132は、アクセル開度の検出結果に基づいて算出される加速要求に応じてエンジン10の出力を制御する。
【0044】
前後進切替機構制御部133は、前後進切替機構30の動作を制御する。具体的には、前後進切替機構制御部133は、バルブユニット70の動作を制御することによって、前進クラッチ32及び後退ブレーキ33へ供給される油圧を制御する。それにより、前後進切替機構制御部133は、前後進切替機構30の締結状態を制御し得る。
【0045】
前後進切替機構制御部133は、基本的には、シフト位置に応じて前後進切替機構30の締結状態を制御する。例えば、前後進切替機構制御部133は、シフト位置がPレンジ(パーキングレンジ)又はNレンジ(ニュートラルレンジ)である場合に、前後進切替機構30を開放させる。また、例えば、前後進切替機構制御部133は、シフト位置がDレンジ(ドライブレンジ)又はRレンジ(リバースレンジ)である場合に、前後進切替機構30を締結させる。なお、シフト位置がDレンジである場合にはプライマリ軸44が正転方向に回転し、シフト位置がRレンジである場合にプライマリ軸44が逆転方向に回転するように前後進切替機構30が締結される。
【0046】
ここで、本実施形態では、前後進切替機構制御部133は、シフト位置がDレンジになっている走行中に、例えば惰行制御の開始条件が満たされる場合に、前後進切替機構30を開放させて車両を惰性走行させる惰行制御を開始する。それにより、駆動輪の運動エネルギが前後進切替機構30よりエンジン10側の部分を連れ回すことに費やされることがなくなるので、燃費を向上させることができる。
【0047】
なお、惰行制御の実行時において、エンジン制御部132は、エンジン10を燃料の噴射が行われない燃料カット状態としてもよく、燃料の噴射が行われる作動状態に維持してもよい。惰行制御の実行時においてエンジン10を燃料カット状態とすることにより、燃費をさらに向上させることができる。一方、惰行制御の実行時においてエンジン10を作動状態に維持することにより、惰行制御の終了後における車両の加速の応答性を向上させることができる。
【0048】
CVT制御部134は、CVT40の動作を制御する。具体的には、CVT制御部134は、バルブユニット70の動作を制御することによって、プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42へ供給される油圧を制御する。それにより、CVT制御部134は、CVT40の変速比を制御し得る。
【0049】
CVT制御部134は、基本的には、車速及びアクセル開度に基づいて目標変速比を決定し、CVT40の変速比を目標変速比に近づくように制御する。例えば、CVT制御部134は、プライマリ軸44の回転数及びセカンダリ軸45の回転数の検出結果に基づいてCVT40の変速比を制御する。
【0050】
ここで、本実施形態では、CVT制御部134は、惰行制御が開始されることに起因して車両に生じ得る加速度の変化における加速度変化量ΔAが閾値を超えると予測される場合、惰行制御の開始の際にCVT40の変速比を目標変速比から低速側に変速させる(換言すると、変速比を目標変速比から増大させる)。なお、目標変速比は、惰行制御が行われていない通常時において上記のように車両の走行状態(具体的には、車速及びアクセル開度)に基づいて決定される変速比の目標値である。
【0051】
なお、制御装置100が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。また、制御装置100は、上記の機能以外の機能を有していてもよい。例えば、制御装置100は、トルクコンバータ20及びトランスファクラッチ50の動作を制御してもよい。また、制御装置100が有する機能から一部の機能が省略されてもよい。例えば、制御装置100が有する機能からエンジン10の動作を制御する機能は省略されてもよい。
【0052】
<2.制御装置の動作>
続いて、図3図6を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100の動作について説明する。
【0053】
図3は、本実施形態に係る制御装置100が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3に示される制御フローは、例えば、あらかじめ設定された設定時間おきに繰り返される。なお、図3に示される制御フローは、惰行制御が実行されていない状態において開始される。
【0054】
図3に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS501において、制御部130は、惰行制御の開始条件が満たされるか否かを判定する。惰行制御の開始条件が満たされると判定された場合(ステップS501/YES)、ステップS503へ進む。一方、惰行制御の開始条件が満たされると判定されなかった場合(ステップS501/NO)、ステップS501の判定処理が繰り返される。
【0055】
惰行制御の開始条件としては、種々の条件が適用され得る。
【0056】
例えば、制御部130は、車速が第1車速基準値を超えており、かつ、走行路の勾配が勾配基準値を下回っており、かつ、アクセル開度が開度基準値を下回っていることを開始条件として適用する。なお、走行路の勾配は、走行路が上り坂である場合に正の値をとり、走行路が下り坂である場合に負の値をとる。制御部130は、例えば、車両の加速度に基づいて車両のピッチ方向についての傾きの角度であるピッチ角を走行路の勾配として算出し得る。
【0057】
車速が低いほど、駆動輪が有する運動エネルギは小さくなるので、惰行制御を実行することにより燃費が向上される度合いは小さくなる。ゆえに、第1車速基準値は、具体的には、惰行制御を実行することにより燃費が向上される度合いが所望の水準以上となる程度に車速が高いか否かを適切に判定し得る値に適宜設定される。
【0058】
また、走行路の勾配が大きいほど、車両は自重により減速しやすくなるので、惰行制御を実行することにより燃費が向上される度合いは小さくなる。ゆえに、勾配基準値は、具体的には、惰行制御を実行することにより燃費が向上される度合いが所望の水準以上となる程度に走行路勾配が小さいか否かを適切に判定し得る値に適宜設定される。例えば、勾配基準値は、走行路が上り坂であるか否かを適切に判定し得る値に適宜設定されてもよい。
【0059】
また、開度基準値は、具体的には、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれていない状態(つまり、アクセル操作が行われていない状態)となっているか否かを適切に判定し得る値に適宜設定される。
【0060】
ステップS503において、予測部131は、惰行制御が開始されることに起因して車両に生じ得る加速度の変化における加速度変化量ΔAが閾値を超えるか否かを予測する。加速度変化量ΔAが閾値を超えると予測された場合(ステップS503/YES)、ステップS505へ進む。一方、加速度変化量ΔAが閾値を超えると判定されなかった場合(ステップS503/NO)、ステップS513へ進む。
【0061】
惰行制御が開始される場合、前後進切替機構30が開放されることに起因して、動力伝達系1における車軸まわりの等価慣性モーメントの減少に伴って車両の加速度が上昇し得る。閾値は、具体的には、加速度変化量ΔAがドライバに違和感を与える要因又は車両の挙動を不安定にする要因となる程度に大きいか否かを適切に判定し得る値に適宜設定される。
【0062】
惰行制御が開始されることに起因して上記のように生じ得る加速度の変化における加速度変化量ΔAは、車両の走行抵抗に依存し、具体的には、走行抵抗が大きいほど大きくなる。ゆえに、予測部131は、加速度変化量ΔAを車両の走行抵抗に関連するパラメータに基づいて予測することが好ましい。具体的には、予測部131は、上記パラメータに基づいて、走行抵抗が大きいほど大きな値を加速度変化量ΔAとして予測することが好ましい。
【0063】
車両の走行抵抗に関連するパラメータとしては、種々の値が適用され得る。例えば、予測部131は、加速度変化量ΔAを上記パラメータとしての車両の車速に基づいて予測する。具体的には、予測部131は、車速が高いほど、走行抵抗が大きくなるので、大きな値を加速度変化量ΔAとして予測する。また、例えば、予測部131は、加速度変化量ΔAを上記パラメータとしての走行路の勾配に基づいて予測する。具体的には、予測部131は、走行路の勾配が大きいほど、走行抵抗が大きくなるので、大きな値を加速度変化量ΔAとして予測する。
【0064】
ステップS505において、制御部130は、前後進切替機構30を開放させて惰行制御を開始するとともに、CVT40の変速比を目標変速比から低速側に変速させる。
【0065】
このように、本実施形態では、制御部130は、惰行制御が開始されることに起因して車両に生じ得る加速度の変化における加速度変化量ΔAが閾値を超えると予測される場合、惰行制御を開始する際にCVT40の変速比を目標変速比から低速側に変速させる。なお、具体的には、前後進切替機構30の開放は前後進切替機構制御部133により行われ、CVT40の変速はCVT制御部134により行われる。
【0066】
図4は、前後進切替機構30が開放されている場合の動力伝達系1における動力の伝達の断接状態を説明するための図である。
【0067】
図4に示されるように、惰行制御によって前後進切替機構30が開放されると、前後進切替機構30よりエンジン10側(上流側)の部分R1と、前後進切替機構30より駆動輪側(下流側)の部分R2との間での動力の伝達が遮断される。それにより、動力伝達系1は、前後進切替機構30よりエンジン10側の部分R1が駆動輪の回転に伴い連れ回されない状態となる。ゆえに、動力伝達系1における車軸まわりの等価慣性モーメントは、前後進切替機構30より駆動輪側の部分R2の車軸まわりの等価慣性モーメントとなる。
【0068】
ここで、前後進切替機構30より駆動輪側の部分R2の車軸まわりの等価慣性モーメントIは、例えば、トランスファクラッチ50が締結され車両が4輪駆動モードとなっている場合、以下の式(1)により表される。
【0069】
【数1】
【0070】
なお、式(1)において、I44はプライマリ軸44の慣性モーメントを表し、I45はセカンダリ軸45の慣性モーメントを表し、I14fは前輪側駆動軸14fの慣性モーメントを表し、I14rは後輪側駆動軸14rの慣性モーメントを表し、I16fは左右一対の前輪側車軸16fの慣性モーメントの合計値を表し、I16rは左右一対の後輪側車軸16rの慣性モーメントの合計値を表し、I17fは左右一対の前輪17fの慣性モーメントの合計値を表し、I17rは左右一対の後輪17rの慣性モーメントの合計値を表し、r40はCVT40の変速比を表し、r13はギヤ列13のギヤ比を表し、r16はフロントディファレンシャルギヤ15f及びリヤディファレンシャルギヤ15rの各々のギヤ比を表す。
【0071】
ゆえに、前後進切替機構30より駆動輪側の部分R2の車軸まわりの等価慣性モーメントIは、CVT40の変速比r40が大きいほど大きくなる。よって、惰行制御を開始する際にCVT40の変速比r40を目標変速比から低速側に変速させることによって、変速比r40を増大させることにより、等価慣性モーメントIを増大させることができる。それにより、惰行制御の開始前後の間で、動力伝達系1における車軸まわりの等価慣性モーメントの急峻な変化を抑制することができるので、車両の加速度が急峻に上昇することを抑制することができる。
【0072】
ここで、加速度変化量ΔAが大きいほどドライバに違和感を与えるおそれ又は車両の挙動を不安定にするおそれが高くなるので、惰行制御の開始前後の間での車両の加速度の急峻な変化を効果的に抑制する必要性が大きくなる。ゆえに、CVT制御部134は、CVT40の変速比を加速度変化量ΔAに基づいて目標変速比から低速側に変速させることが好ましい。具体的には、CVT制御部134は、加速度変化量ΔAが大きいほど惰行制御の開始前後の間での動力伝達系1における車軸まわりの等価慣性モーメントの変化が小さくなるように、CVT40の変速比を変速させることが好ましい。
【0073】
次に、ステップS507において、CVT制御部134は、CVT40の変速比を目標変速比に徐々戻す。
【0074】
具体的には、CVT制御部134は、CVT40の変速比を目標変速比から低速側に変速させた後、ドライバに違和感を与えることを抑制しつつ可能な限り迅速にCVT40の変速比を目標変速比に戻すことが好ましい。
【0075】
次に、ステップS509において、制御部130は、惰行制御の終了条件が満たされるか否かを判定する。惰行制御の終了条件が満たされると判定された場合(ステップS509/YES)、ステップS511へ進む。一方、惰行制御の終了条件が満たされると判定されなかった場合(ステップS509/NO)、ステップS509の判定処理が繰り返される。
【0076】
惰行制御の終了条件としては、種々の条件が適用され得る。
【0077】
例えば、制御部130は、アクセル操作又はブレーキ操作が行われたことを終了条件として適用する。具体的には、制御部130は、アクセル開度及びブレーキ操作量に基づいて、アクセル操作又はブレーキ操作が行われたことを判定し得る。
【0078】
また、例えば、制御部130は、車両の加速度が加速度基準値を超えていることを終了条件として適用する。具体的には、加速度基準値は、車両の挙動が不安定となる程度に加速度が大きいか否かを適切に判定し得る値に適宜設定される。
【0079】
また、例えば、制御部130は、車度が第2車速基準値を下回っていることを終了条件として適用する。具体的には、第2車速基準値は、惰行制御を継続することにより燃費が向上される度合いが過度に小さくなる程度に車速が低いか否かを適切に判定し得る値に適宜設定される。
【0080】
ステップS511において、前後進切替機構制御部133は、前後進切替機構30を締結させて惰行制御を終了する。そして、図3に示される制御フローは終了する。
【0081】
上述したように、ステップS503の判定処理でNOと判定された場合、ステップS513へ進む。ステップS513において、前後進切替機構制御部133は、前後進切替機構30を開放させて惰行制御を開始する。ここで、ステップS513では、CVT40の変速比を目標変速比から低速側に変速させる制御は実行されない。ステップS513の次に、ステップS509の判定処理が行われる。
【0082】
このように、制御部130は、惰行制御が開始されることに起因して車両に生じ得る加速度の変化における加速度変化量ΔAが閾値以下であると予測される場合、CVT40の変速比を目標変速比から低速側に変速させる制御を実行することなく惰行制御を開始する。加速度変化量ΔAが閾値以下となる場合には、惰行制御が開始されることに起因して車両に生じ得る加速度の変化によってドライバに違和感を与える影響又は車両の挙動を不安定にする影響は、過度に小さい。ゆえに、このような場合にCVT40の変速比を目標変速比から低速側に変速させる制御を実行することなく惰行制御を開始することによって、燃費を効果的に向上させることができる。
【0083】
ここで、図5及び図6を参照して、参考例に係る制御装置及び本実施形態に係る制御装置100の各制御装置による制御が行われる場合についての、車両の各状態量の推移について説明する。
【0084】
図5は、参考例に係る制御装置による制御が行われる場合についての、車両の各状態量の推移の一例を示す図である。図5では、アクセル操作が行われていない状態で車両が走行しており、時刻T1において惰行制御の開始条件が満たされる場合における当該車両の各状態量の推移が示されている。
【0085】
参考例に係る制御装置は、本実施形態に係る制御装置100と同様に、惰行制御の開始条件が満たされる場合に、前後進切替機構30を開放させて車両を惰性走行させる惰行制御を開始する。一方、参考例に係る制御装置は、本実施形態に係る制御装置100と異なり、惰行制御の開始の際にCVT40の変速比を目標変速比から変速させる制御を実行しない。図5では、具体的には、このような参考例に係る制御装置が上述した車両の動力伝達系1に適用された場合における車両の各状態量の推移の一例が示されている。
【0086】
図5に示されるように、時刻T1以前において、車両は、シフト位置がDレンジになっており前後進切替機構30が締結されている状態で走行している。ここで、時刻T1において、惰行制御の開始条件が満たされることに伴い、前後進切替機構30は開放されて惰行制御が開始される。それにより、時刻T1において、動力伝達系における車軸まわりの等価慣性モーメントが急峻に減少することによって、図5に示されるように、車両の加速度が急峻に上昇する。
【0087】
図5では、このような加速度の急峻な上昇に伴い、時刻T1において、車速の減少速度が急峻に変化している様子が示されている。ここで、参考例では、惰行制御の開始の際にCVT40の変速比を目標変速比から変速させる制御が実行されないので、図5に示されるように、CVT40の変速比は、時刻T1の前後に亘って目標変速比となるように制御されている。
【0088】
上記のように、参考例では、時刻T1において、前後進切替機構30が開放されて惰行制御が開始されることによって、車両の加速度が急峻に上昇する。それにより、燃費の向上が図られる一方で、ドライバに違和感を与えるおそれ、又は車両の挙動を不安定にするおそれが生じる。
【0089】
図6は、本実施形態に係る制御装置100による制御が行われる場合についての、車両の各状態量の推移の一例を示す図である。なお、図6に示される例では、時刻T1までにおける車両の速度、車両の加速度及びCVT40の変速比の推移は図5に示される例と同様である。また、図6では、図5に示される例における各状態量の推移が二点鎖線により部分的に示されている。
【0090】
上述したように、本実施形態では、制御部130は、惰行制御が開始されることに起因して車両に生じ得る加速度の変化における加速度変化量ΔAが閾値を超えると予測される場合、惰行制御を開始する際にCVT40の変速比を目標変速比から低速側に変速させる。ここで、図6に示される例は、時刻T1において、加速度変化量ΔAが閾値を超えると予測される例に相当する。ゆえに、惰行制御の開始条件が満たされる時刻T1において、前後進切替機構30が開放されて惰行制御が開始するとともに、CVT40の変速比が目標変速比から低速側に変速する。それにより、惰行制御が開始される時刻T1の前後の間で、動力伝達系1における車軸まわりの等価慣性モーメントの急峻な変化が抑制されることによって、図6に示されるように、車両の加速度が急峻に上昇することが抑制される。
【0091】
図6では、このように加速度の急峻な変化が抑制されることに伴い、時刻T1において、車速の減少速度の急峻な変化が抑制されている様子が示されている。また、図6では、時刻T1において、CVT40の変速比が目標変速比から低速側に変速されて増大している様子が示されている。その後、図6に示されるように、時刻T1以降において、CVT40の変速比は目標変速比に徐々戻され、それに伴い車両の加速度は徐々に上昇する。
【0092】
上記のように、本実施形態では、時刻T1において、惰行制御の開始とともにCVT40の変速比が目標変速比から低速側に変速することによって、車両の加速度が急峻に上昇することが抑制される。それにより、車両の加速度が急峻に変化することを抑制しつつ、燃費を向上させることが可能となる。
【0093】
<3.制御装置の効果>
続いて、本発明の実施形態に係る制御装置100の効果について説明する。
【0094】
本実施形態に係る制御装置100では、制御部130は、惰行制御が開始されることに起因して車両に生じ得る加速度の変化における加速度変化量ΔAが閾値を超えると予測される場合、惰行制御を開始する際にCVT40の変速比を目標変速比から低速側に変速させる。それにより、惰行制御の開始前後の間で、動力伝達系1における車軸まわりの等価慣性モーメントの急峻な変化を抑制することができる。ゆえに、車両の加速度が急峻に上昇することを抑制することができる。よって、車両の加速度が急峻に変化することを抑制しつつ、燃費を向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部130は、加速度変化量ΔAを車両の走行抵抗に関連するパラメータに基づいて予測することが好ましい。それにより、車両の走行抵抗に依存する加速度変化量ΔAをより適切に予測することができる。ゆえに、加速度変化量ΔAがドライバに違和感を与える要因又は車両の挙動を不安定にする要因となる程度に大きいか否かをより適切に判定することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部130は、車両の走行抵抗に関連するパラメータに基づいて、車両の走行抵抗が大きいほど大きな値を加速度変化量ΔAとして予測することが好ましい。それにより、車両の走行抵抗に依存する加速度変化量ΔAをさらに適切に予測することができる。ゆえに、加速度変化量ΔAがドライバに違和感を与える要因又は車両の挙動を不安定にする要因となる程度に大きいか否かをさらに適切に判定することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部130は、加速度変化量ΔAが閾値を超えると予測される場合、惰行制御を開始する際にCVT40の変速比を加速度変化量ΔAに基づいて目標変速比から低速側に変速させることが好ましい。それにより、惰行制御の開始前後の間での動力伝達系1における車軸まわりの等価慣性モーメントの急峻な変化を加速度変化量ΔAに基づいて適切に抑制することができるので、惰行制御の開始前後の間での車両の加速度の急峻な変化を加速度変化量ΔAに基づいて適切に抑制することができる。
【0098】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部130は、惰行制御を開始する際にCVT40の変速比を目標変速比から低速側に変速させた後、CVT40の変速比を目標変速比に徐々に戻すことが好ましい。それにより、惰行制御を開始した後において、ドライバに違和感を与えることを抑制しつつ、動力伝達系1における車軸まわりの等価慣性モーメントを減少させて燃費を向上させることができる。
【0099】
<4.むすび>
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置100では、惰行制御が開始されることに起因して車両に生じ得る加速度の変化における加速度変化量ΔAが閾値を超えると予測される場合、惰行制御を開始する際にCVT40の変速比が目標変速比から低速側に変速する。それにより、惰行制御の開始前後の間で動力伝達系1における車軸まわりの等価慣性モーメントの急峻な変化を抑制することができるので、車両の加速度が急峻に変化することを抑制しつつ、燃費を向上させることができる。
【0100】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0101】
例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0102】
また、例えば、制御装置100が適用される車両の動力伝達系の構成は、図1を参照して説明した動力伝達系1に限定されない。制御装置100が適用される車両の動力伝達系は、駆動源と、入力側要素に当該駆動源から出力される動力が入力される無段変速機と、当該駆動源と当該入力側要素との間の動力の伝達を断接するクラッチとを備えていればよく、例えば、動力伝達系におけるこれらの構成要素以外の構成要素の有無及び配置は様々に変更されてもよい。
【0103】
また、例えば、上記では、制御装置100が適用される車両に駆動源としてエンジン10が設けられる例を説明したが、駆動源として他の駆動源が設けられてもよい。例えば、制御装置100が適用される車両に設けられる駆動源は、モータであってもよい。
【0104】
また、例えば、上記では、制御装置100が適用される車両に無段変速機として各プーリの間に巻回されたチェーンを有するチェーン式CVTのCVT40が設けられる例を説明したが、無段変速機として他の無段変速機が設けられてもよい。例えば、制御装置100が適用される車両に設けられる無段変速機は、動力伝達部材としてベルトを有するベルト式CVTであってもよく、トロイダル式CVTであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 動力伝達系
10 エンジン
13 ギヤ列
14f 前輪側駆動軸
14r 後輪側駆動軸
15f フロントディファレンシャルギヤ
15r リヤディファレンシャルギヤ
16f 前輪側車軸
16r 後輪側車軸
17f 前輪
17r 後輪
20 トルクコンバータ
30 前後進切替機構
31 プラネタリギヤ
32 前進クラッチ
33 後退ブレーキ
34 入力軸
40 CVT
41 プライマリプーリ
42 セカンダリプーリ
43 チェーン
44 プライマリ軸
45 セカンダリ軸
50 トランスファクラッチ
60 オイルポンプ
70 バルブユニット
100 制御装置
110 取得部
130 制御部
131 予測部
132 エンジン制御部
133 前後進切替機構制御部
134 CVT制御部
201 加速度センサ
202 車速センサ
203 アクセル開度センサ
204 プライマリ回転センサ
205 セカンダリ回転センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6