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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20220511BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 27/092 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 21/82 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H01L29/78 623A
H01L29/78 613Z
H01L29/78 617S
H01L21/88 Z
H01L27/04 H
H01L27/06 311B
H01L27/092 A
H01L27/088 331E
H01L21/82 D
H01L21/82 W
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018184556
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020053650
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 芳樹
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-133559(JP,A)
【文献】特開2007-158004(JP,A)
【文献】特開2006-294719(JP,A)
【文献】特開2005-347539(JP,A)
【文献】特開2004-152929(JP,A)
【文献】特開2008-042046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 23/522
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 21/8238
H01L 27/092
H01L 27/088
H01L 21/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に形成された半導体層と、
前記半導体層の一部であって、平面視において、周囲を素子分離部で囲まれた活性領域と、
前記活性領域において、前記半導体層上に形成されたMISFETのゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成された前記MISFETのゲート電極と、
前記活性領域において、前記ゲート電極の両側に位置する前記半導体層内に形成された前記MISFETのソース領域およびドレイン領域と、
前記MISFETを覆う第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成され、かつ、前記ゲート電極に接続された第1配線と、
前記第1配線を覆う第2絶縁膜と、
を有し、
平面視において、前記活性領域の面積に対する前記第1配線の面積の比率は、前記第2絶縁膜形成時のプラズマダメージによる前記MISFETの閾値変動を防止する第1所定値以下となっている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1所定値は500である、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
さらに、
前記第1絶縁膜上に形成され、前記ソース領域に接続された第2配線および前記ドレイン領域に接続された第3配線を有し、
平面視において、前記活性領域の面積に対する前記第2配線と前記第3配線との合計面積の比率は、前記第2絶縁膜形成時のプラズマダメージによる前記MISFETの閾値変動を防止する第2所定値以下となっている、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記第2所定値は500である、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記ゲート絶縁膜のSiO換算膜厚は、5nm以下である、半導体装置。
【請求項6】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に形成された半導体層と、
前記半導体層の一部であって、平面視において、周囲を素子分離部で囲まれた活性領域と、
前記活性領域において、前記半導体層上に形成されたMISFETのゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成された前記MISFETのゲート電極と、
前記活性領域において、前記ゲート電極の両側に位置する前記半導体層内に形成された前記MISFETのソース領域およびドレイン領域と、
前記MISFETを覆う第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成され、かつ、前記ゲート電極に接続された配線と、
前記配線を覆う第2絶縁膜と、
を有し、
前記ソース領域または前記ドレイン領域には、ダイオード素子が接続されており、
前記活性領域の面積に対する前記配線の面積の比率は、前記第2絶縁膜形成時のプラズマダメージによる前記MISFETの閾値変動を防止する所定値より高くなっている、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記ダイオード素子は、P型の前記半導体基板と、前記半導体基板に形成されたN型の半導体領域とで構成されている、半導体装置。
【請求項8】
(a)半導体基板と、前記半導体基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された半導体層と、前記半導体層の一部であって、平面視において、周囲を素子分離部で囲まれた第1活性領域と、を含むSOI基板を準備する工程、
(b)前記第1活性領域において、前記半導体層上に配置された第1ゲート絶縁膜と、前記第1ゲート絶縁膜上に配置された第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の両側において、前記半導体層内に配置されたソース領域およびドレイン領域と、を含むMISFETを形成する工程、
(c)前記SOI基板上に、前記MISFETを覆う第1絶縁膜を形成する工程、
(d)前記第1絶縁膜上に配線を形成する工程、
(e)PECVD法により、前記第1ゲート電極に接続された前記配線を覆う第2絶縁膜を形成する工程、
を有し、
前記配線には、保護素子が接続されており、
前記第1活性領域の面積に対する前記配線の面積の比率は、前記第2絶縁膜形成時のプラズマダメージによる前記MISFETの閾値変動を防止する所定値より高くなっている、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記保護素子は、ダイオード素子である、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ダイオード素子は、P型の前記半導体基板と、前記半導体基板に形成されたN型の半導体領域とで構成されている、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記保護素子は、
前記SOI基板において、前記第1活性領域とは異なる領域に配置された第2活性領域と、
前記第2活性領域において、前記半導体層上に配置された第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上に配置された第2ゲート電極と、
を含み、
前記第2ゲート絶縁膜の膜厚は、前記第1ゲート絶縁膜の膜厚と等しい、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、SOI基板を用いた半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
低消費電力向けの半導体装置として、SOI(Silicon On Insulator)基板にMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を形成する技術がある。SOI基板を用いた半導体装置では、半導体基板から埋め込み酸化膜で絶縁された半導体層に半導体素子(例えば、MISFET)が形成されているため、半導体素子に接続された金属配線を覆う絶縁膜の形成工程等において、プラズマ中に晒された金属配線がチャージアップし、半導体素子を劣化させる(以下、「プラズマダメージ」と呼ぶ。)ことが知られている。
【0003】
例えば、特開2003-133559号公報(特許文献1)には、SOI基板を用いた半導体装置の埋め込み酸化膜36の絶縁破壊を防止する技術が開示されている。インバータ12、14を構成するP型MOSFET18およびN型MOSFET20は、埋め込み酸化膜36上に形成されたP型拡散領域22およびN型拡散領域24を有し、ドレイン領域として機能するP型拡散領域22およびN型拡散領域24には第1金属配線16が接続されている。そして、第1金属配線16の加工、もしくは第1金属配線16を覆う第1層間絶縁膜48の堆積のためのプラズマプロセスにおいて、P型およびN型MOSFETの特性を劣化させないように、第1金属配線16の総面積と第1金属配線16が接続されたP型およびN型拡散領域22、24(ドレイン領域)の面積との比は、所定の値以下に制限されている。また、面積比が所定の値を超える場合には、第1金属配線16にダミー不純物拡散領域32、ダイオード39、または、バッファ42を接続することが示されている。特許文献1は、第1金属配線16で接続された前段インバータ12と後段インバータ14を含む半導体装置において、前段インバータ12を構成するP型およびN型MOSFET18および20の下に位置する埋め込み酸化膜36の絶縁破壊を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-133559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、半導体装置の消費電力を低減するためには、半導体装置を構成するMISFETの駆動電圧を低減することが有効である。そして、MISFETの駆動電圧を低減するためには、いわゆる「薄型BOX-SOI(SOTB:Silicon On Thin Buried oxide)技術」を使用することが有効であるとされている。「薄型BOX-SOI技術」を用いて形成されたMISFETを「SOTBトランジスタ」と呼ぶ。SOTBトランジスタは、半導体基板上に絶縁層(埋め込み絶縁膜、埋め込み酸化膜)を介して配置された半導体層に形成されている。ゲート電極は、半導体層上にゲート絶縁膜を介して配置され、ゲート電極の両側に位置するように半導体層内にソース領域およびドレイン領域が配置されている。
【0006】
また、半導体装置には、複数のSOTBトランジスタから成る論理回路が設けられている。なお、この複数のSOTBトランジスタは、多層配線層の配線を介して、互いに、かつ、電気的に接続されている。そして、低消費電力化の為に、多層配線層の各層の配線は、銅配線で構成されている。例えば、複数のSOTBトランジスタは第1層間絶縁膜で覆われており、第1層目の銅配線は、第1層間絶縁膜上に形成された第2層間絶縁膜に設けられた配線溝内に埋め込まれており、ゲート電極、ソース領域およびドレイン領域に接続されたゲート配線、ソース配線およびドレイン配線を含む。そして、第1層目の銅配線および第2層間絶縁膜は、銅の拡散を防止するバリア膜で覆われ、その上に、第2層目の銅配線を形成するための第3層間絶縁膜が積層されている。バリア膜および第3層間絶縁膜は、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成されている。
【0007】
バリア膜および第3層間絶縁膜の形成工程において、ゲート配線、ソース配線およびドレイン配線がプラズマ雰囲気に晒される。プラズマプロセス中において、その表面に金属配線が形成された半導体基板に、荷電粒子(イオン、電子)が入射すると、半導体基板に接続されていない浮遊状態の金属配線に電荷が蓄積され、チャージアップ現象が発生する。なお、第3層間絶縁膜の堆積時において、ゲート配線、ソース配線およびドレイン配線は、バリア膜で覆われているが、バリア膜形成工程と同様に、ゲート配線、ソース配線およびドレイン配線がアンテナとして作用し、チャージアップ現象が発生することが知られている。本願発明者の検討によれば、ゲート配線にチャージアップした電荷(例えば、電子)の影響で、ゲート配線に接続されたゲート電極を含むSOTBトランジスタの特性(例えば、閾値)が変動し、半導体装置の信頼性が低下することが判明した。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態によれば、半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に形成された絶縁層と、絶縁層上に形成された半導体層と、半導体層の一部であって、平面視において、周囲を素子分離部で囲まれた活性領域と、活性領域において、半導体層上に形成されたMISFETのゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたMISFETのゲート電極と、活性領域において、ゲート電極の両側に配置されるように、半導体層内に形成されたMISFETのソース領域およびドレイン領域と、を有する。さらに、半導体装置は、MISFETを覆う第1絶縁膜と、第1絶縁膜上に形成され、かつ、ゲート電極に接続された第1配線と、第1配線を覆う第2絶縁膜と、を有する。そして、平面視において、活性領域の面積に対する第1配線の面積の比率は、第2絶縁膜形成時のプラズマダメージによるMISFETの閾値変動を防止する所定値以下となっている。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】プラズマダメージの影響を分析するための半導体装置の要部断面図である。
図2】配線の総面積と閾値変動量(ΔVth)との関係を示すグラフである。
図3】ゲート配線の面積と閾値変動量(ΔVth)との関係を示すグラフである。
図4】ドレイン配線の面積と閾値変動量(ΔVth)との関係を示すグラフである。
図5】プラズマダメージのメカニズムを説明する断面図である。
図6】ゲートアンテナ比と閾値変動量(ΔVth)との関係を示すグラフである。
図7】ドレインアンテナ比と閾値変動量(ΔVth)との関係を示すグラフである。
図8】本実施の形態の半導体装置の製造工程の一部を示すフロー図である。
図9】本実施の形態の第1の例である半導体装置の要部平面図である。
図10図9のX1-X1´に沿う断面図である。
図11図9のX2-X2´に沿う断面図である。
図12】本実施の形態の第2の例である半導体装置の要部平面図である。
図13図12のX3-X3´に沿う断面図である。
図14】本実施の形態の第2の例における効果を示すグラフである。
図15】本実施の形態の第3の例である半導体装置の要部断面図である。
図16】本実施の形態の第4の例である半導体装置の要部平面図である。
図17】本実施の形態の第5の例である半導体装置の要部平面図である。
図18】本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図19図18に続く、半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図20図19に続く、半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図21図20に続く、半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0014】
また、実施の形態で用いる図面においては、図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。
【0015】
なお、以下の説明において、配線の面積とは、平面視における面積を意味する。
【0016】
(実施の形態)
本実施の形態の半導体装置は、複数のn型MISFETおよび複数のp型MISFETを有するが、主に、n型MISFETを用いて本実施の形態を説明する。
【0017】
まず、プラズマダメージによってn型MISFETが被る問題点とその対策を説明する。
【0018】
図1は、プラズマダメージの影響を分析するための半導体装置の要部断面図であり、n型MISFET(N0)の断面図である。n型MISFET(N0)は、完全空乏型のSOTBトランジスタであり、ゲート電極G、ソース領域SNおよびドレイン領域DNを有する。例えば、p型の半導体基板SBの主面上には絶縁層BXを介して半導体層SMが形成されており、半導体層SMの主面上にはゲート絶縁膜GFを介してゲート電極Gが配置され、ゲート電極Gの両端において、半導体層SMの内部にソース領域SNおよびドレイン領域DNが設けられている。ゲート電極Gの下部であって、ソース領域SNとドレイン領域DNとに挟まれた半導体層SMがチャネル形成領域である。半導体層SMは、平面視において、周囲を素子分離部STIで囲まれた活性領域AN0を含み、ソース領域SN、ドレイン領域DNおよびチャネル形成領域は、活性領域AN0内に形成されている。
【0019】
ここで、p型の半導体基板SBは、p型の単結晶シリコンからなり、絶縁層BXは、例えば、酸化シリコン膜からなり、その膜厚は、5~50nm、半導体層SMは、単結晶シリコンからなり、その膜厚は、5~20nm、チャネル形成領域の不純物濃度は、3×1017cm-3以下となっている。ソース領域SNおよびドレイン領域DNは、n型の半導体領域であり、その不純物濃度は1×1019cm-3以上である。ゲート電極Gは、高濃度のn型不純物を含有する多結晶シリコン膜であり、ゲート絶縁膜GFは、酸窒化シリコン膜、高誘電率膜、または、酸窒化シリコン膜と高誘電率膜との積層膜とすることができる。高誘電率膜としては、ハフニウムシリケート(HfSiO)または窒素添加ハフニウムシリケート(HfSiON)等を用いることができる。ゲート絶縁膜GFの膜厚は、SiO換算で5nm以下である。
【0020】
ゲート電極G、ソース領域SNおよびドレイン領域DNは、半導体層SMの主面上に形成された層間絶縁膜IL1で覆われており、層間絶縁膜IL1内には金属導体層からなる複数のプラグPG1が形成されており、ゲート電極G、ソース領域SNおよびドレイン領域DNに接続されている。層間絶縁膜IL上には、層間絶縁膜IL2が設けられており、層間絶縁膜IL2に形成された複数の配線溝の内部には、銅配線からなるソース配線WS、ゲート配線WGおよびドレイン配線WDが設けられている。ソース配線WSは、プラグPG1を介してソース領域SNに接続され、ゲート電極WGは、プラグPG1を介してゲート電極Gに接続され、ドレイン配線WDは、プラグPG1を介してドレイン領域DNに接続されている。そして、銅配線からなるソース配線WS、ゲート配線WGおよびドレイン配線WDは、銅の拡散防止膜であるバリア膜BLで覆われており、絶縁膜からなるバリア膜BL上には層間絶縁膜IL3が形成されている。バリア膜BLおよび層間絶縁膜IL3は、PECVD法で形成されるため、このプラズマプロセスにおいて、ソース配線WS、ゲート配線WGおよびドレイン配線WDがアンテナとして作用し、ソース配線WS、ゲート配線WGおよびドレイン配線WDに電荷(例えば、電子)がチャージアップする。
【0021】
図2は、配線の総面積と閾値変動量(ΔVth)との関係を示すグラフであり、チャージアップしたn型MISFET(N0)の閾値変動量(ΔVth)を示している。横軸は、配線(ソース配線WS、ゲート配線WGおよびドレイン配線WD)の総面積である。配線の総面積が増えるほど、閾値変動量(ΔVth)が増加している。これより、チャージアップする電荷量が増加するほど閾値変動量(ΔVth)が増加することが分かる。
【0022】
図3および図4は、夫々、ゲート配線WGの面積と閾値変動量(ΔVth)の関係、ドレイン配線WDの面積と閾値変動量(ΔVth)の関係を示している。図3のグラフは、図1のn型MISFET(N0)において、ソース配線WSおよびドレイン配線WDを取り除き、ゲート配線WGのみとした構造のn型MISFET(N0)を用いて検査した結果である。また、図4のグラフは、図1のn型MISFET(N0)において、ソース配線WSおよびゲート配線WGを取り除き、ドレイン配線WDのみとした構造のn型MISFET(N0)を用いて検査した結果である。ゲート配線WGの面積またはドレイン配線WDの面積が増加するほど、閾値変動量(ΔVth)が増加している。これより、n型MISFET(N0)の閾値が、ゲート配線WGのチャージアップ電荷およびドレイン配線WDのチャージアップ電荷の両方の影響を受けていることが分かる。また、図3および図4から、両者は類似した特性を示していることが分かる。なお、ソース配線WSの面積と閾値変動量(ΔVth)の関係は、ドレイン配線WDの面積と閾値変動量(ΔVth)の関係と同様になることは容易に類推できる。
【0023】
図5は、プラズマダメージのメカニズムを説明する断面図である。図5に示すように、ドレイン配線WDにチャージアップした電荷eは、プラグPG1を介してドレイン領域DNに蓄積され、ドレイン領域DNと半導体基板SBとの電位差によって、絶縁層BXにトラップされる。絶縁層BXにトラップされた電荷eは、絶縁層BX内を移動するため、絶縁層BX内に電荷eが分布することとなる。そして、ゲート電極Gの下部に分布した電荷eの影響で閾値が変動する。また、ソース配線WSにチャージアップした電荷eが、ドレイン配線WDにチャージアップした電荷eと同様の挙動を示すことは容易に類推できる。
【0024】
また、図5に示すように、ゲート配線WGにチャージアップした電荷eは、プラグPG1を介してゲート電極Gに蓄積されるが、ゲート絶縁膜GFの膜厚(SiO換算した膜厚)が非常に薄いため、ゲート電極Gと半導体基板SBとの電位差によって、ゲート絶縁膜GFをトンネル(FN tunneling : Fowler-Nordheim tunneling)して半導体層SM中に蓄積される。そして、半導体層SM中に蓄積された電荷eは、半導体層SMと半導体基板SBとの電位差によって絶縁層BXにトラップされる。絶縁層BXにトラップされた電荷eは、絶縁層BX内を移動するため、絶縁層BX内に電荷eが分布することとなる。そして、ゲート電極Gの下部に分布した電荷eの影響で閾値が変動する。
【0025】
上記メカニズムを考慮し、n型MISFET(N0)において、ゲートアンテナ比ARGおよびドレインアンテナ比ARDを定義して、それらにより閾値変動量を管理する手法を考えた。ここで、ゲートアンテナ比ARG=(ゲート電極Gに接続されたゲート配線WGの面積)/(そのゲート電極Gが交差する活性領域AN0の面積)であり、ドレインアンテナ比ARD=(ソース領域SNおよびドレイン領域DNに接続されたソース配線WSおよびドレイン配線WDの総面積)/(そのソース領域SNおよびドレイン領域DNを含む活性領域AN0の面積)である。なお、ゲートアンテナ比ARGおよびドレインアンテナ比ARDの定義に用いられているゲート配線WG、ドレイン配線WDおよびソース配線WSは、同層の配線であり、例えば、層間絶縁膜IL2に埋め込まれた配線である。また、半導体装置は、外部とのインターフェース回路であるI/O回路と、内部回路とを含んでいる。内部回路の動作電圧は、I/O回路の動作電圧よりも低く、内部回路は前述のSOTBトランジスタで構成されるが、I/O回路は、半導体基板SBに形成されたバルクトランジスタで構成されている。本実施の形態で対象とするのは、この内部回路を構成するSOTBトランジスタであり、上記手法は、全てのSOTBトランジスタ(n型MISFETおよびp型MISFETを含む)に対して適用される。
【0026】
図6は、ゲートアンテナ比と閾値変動量(ΔVth)との関係を示すグラフ、図7は、ドレインアンテナ比と閾値変動量(ΔVth)との関係を示すグラフである。図6および図7に示すように、ゲートアンテナ比ARGおよびドレインアンテナ比ARDがおよそ800以下であれば閾値変動量(ΔVth)をゼロと出来ることが確認された。言い換えると、閾値の変動を防止出来る。この結果から、ある程度のマージンを考慮して、ゲートアンテナ比ARGおよびドレインアンテナ比ARDを500以下とすることが好適であることが判明した。
【0027】
図8は、本実施の形態の半導体装置の製造工程の一部を示すフロー図である。本実施の形態では、半導体装置の製造工程の一部である設計段階を次のようにする。図8に示すように、先ず、所望の論理回路を実現する第1レイアウトを準備する工程を実施し、次に、第1レイアウトにおいてドレインアンテナ比ARDおよびゲートアンテナ比ARGが所定の値(例えば、500)以下であるかどうかを検査する工程を実施する。そして、ドレインアンテナ比ARDおよびゲートアンテナ比ARGが所定の値以下であれば、第1レイアウトを用いて半導体装置を製造する。例えば、ドレインアンテナ比ARDが所定の値を越える場合には、ドレイン領域またはソース領域、あるいは、ソース領域およびドレイン領域に保護素子を接続した第2レイアウトを用いて半導体装置を製造する。また、ゲートアンテナ比ARGが所定の値が越える場合には、上記第2レイアウト、または、ゲート配線に保護素子を接続した第3レイアウトを用いて半導体装置を製造する。詳細について、以下に説明する。
【0028】
図9は、本実施の形態の第1の例である半導体装置の要部平面図、図10は、図9のX1-X1´に沿う断面図、図11は、図9のX2-X2´に沿う断面図である。第1の例は、ドレインアンテナ比ARDおよびゲートアンテナ比ARGを所定の値(例えば、500)以下にした場合を示している。つまり、ソース領域、ドレイン領域およびゲート配線に、保護素子は設けられていない。
【0029】
図9は、3つの論理回路LC1~LC3が、順に接続された例である。論理回路LC1~LC3として、例えば、インバータを用いて説明するが、インバータに限るものではない。論理回路LC1~LC3は、夫々が、電源電位配線Vdと基準電位配線Vsとの間に接続されており、論理回路LC1は、直列接続されたp型MISFET(P1)およびn型MISFET(N1)を含み、論理回路LC2は、直列接続されたp型MISFET(P2)およびn型MISFET(N2)を含み、論理回路LC3は、直列接続されたp型MISFET(P3)およびn型MISFET(N3)を含む。
【0030】
p型MISFET(P1)は、ゲート電極G1、ソース領域SP1およびドレイン領域DP1を含み、n型MISFET(N1)は、ゲート電極G1、ソース領域SN1およびドレイン領域DN1を含む。ソース領域SP1は、配線Wd1を介して電源電位配線Vdに接続され、ソース領域SN1は、配線Ws1を介して基準電位配線Vsに接続され、ドレイン領域DP1およびドレイン領域DN1は、ゲート配線Wg12で互いに接続され、かつ、次段の論理回路LC2のゲート電極G2に接続されている。
【0031】
p型MISFET(P2)は、ゲート電極G2、ソース領域SP2およびドレイン領域DP2を含み、n型MISFET(N2)は、ゲート電極G2、ソース領域SN2およびドレイン領域DN2を含む。ソース領域SP2は、配線Wd2を介して電源電位配線Vdに接続され、ソース領域SN2は、配線Ws2を介して基準電位配線Vsに接続され、ドレイン領域DP2およびドレイン領域DN2は、ゲート配線Wg23で互いに接続され、かつ、次段の論理回路LC3のゲート電極G3に接続されている。p型MISFET(P2)およびn型MISFET(N2)にとって、ゲート配線Wg23は、ドレイン配線と呼ぶことも出来る。
【0032】
p型MISFET(P3)は、ゲート電極G3、ソース領域SP3およびドレイン領域DP3を含み、n型MISFET(N3)は、ゲート電極G3、ソース領域SN3およびドレイン領域DN3を含む。ソース領域SP3は、配線Wd3を介して電源電位配線Vdに接続され、ソース領域SN3は、配線Ws3を介して基準電位配線Vsに接続され、ドレイン領域DP3およびドレイン領域DN3は、ゲート配線Wg34で互いに接続され、かつ、次段の論理回路に接続されている。
【0033】
n型MISFET(N1)~n型MISFET(N3)は、n型MISFET(N0)と同様の構造を有する完全空乏型のSOTBトランジスタである。図10または図11に示すように、n型MISFET(N2)は、ゲート電極G2、ゲート絶縁膜GF、n型のソース領域SN2、n型のドレイン領域DN2、チャネル形成領域となる半導体層SM、を含む。ソース領域SN2にはプラグPG1を介して配線Ws2が接続され、ドレイン領域DN2にはプラグPG1を介してゲート配線Wg23が接続されている。また、ゲート電極G2には、プラグPG1を介してゲート配線Wg12が接続され、そのゲート配線Wg12は、プラグPG1を介してn型MISFET(N1)のドレイン領域DN1に接続されている。
【0034】
図9図11に示す半導体装置では、n型MISFET(N2)のゲートアンテナ比ARGおよびドレインアンテナ比ARDが、所定の値(例えば、500)以下となっている。ゲートアンテナ比ARG=(ゲート配線Wg12の面積)/(n型MISFET(N2)の活性領域AN2の面積)であり、ドレインアンテナ比ARD=(配線Ws2面積+ゲート配線Wg23の面積)/(n型MISFET(N2)の活性領域AN2の面積)である。n型MISFET(N2)において、ゲートアンテナ比ARGおよびドレインアンテナ比ARDを所定の値(例えば、500)以下としている。その為、バリア層BLおよび層間絶縁膜絶縁膜IL3形成時のプラズマ雰囲気で、配線Ws2(ソース配線に対応)、ゲート配線Wg23(ドレイン配線に対応)、および、ゲート配線Wg12(ゲート配線に対応)に電荷eがチャージアップしても、n型MISFET(N2)の閾値変動量(ΔVth)を低減、またはゼロとすることができる。なお、n型MISFET(N1)およびn型MISFET(N3)、ならびに、p型MISFET(P1~P3)等の全てのMISFETのゲートアンテナ比ARGおよびドレインアンテナ比ARDが、所定の値(例えば、500)以下となっているため、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0035】
一方、図9図11に示す半導体装置のレイアウト(第1レイアウト)では、n型MISFET(N2)のドレインアンテナ比ARDが所定の値(例えば、500)よりも大きい場合には、図8のフロー図に従って、ソース・ドレイン領域に保護素子を接続した第2レイアウトを用いて半導体装置を製造する。
【0036】
図12は、本実施の形態の第2の例である半導体装置の要部平面図(第2レイアウト)、図13は、図12のX3-X3´に沿う断面図である。ドレインアンテナ比ARD、ゲートアンテナ比ARG、または、ドレインアンテナ比ARDおよびゲートアンテナ比ARGが所定の値より大きくなり、ソース・ドレイン領域に保護素子を接続した例を示している。保護素子は、例えばダイオードである。
【0037】
図12に示すように、n型MISFET(N2)において、ゲート配線Wg23の一部を延長した配線Wc1を用いて、ドレイン領域DN2にダイオード素子Di1を接続している。また、ソース領域SN2にも配線Ws2を用いてダイオード素子Di1を接続している。
【0038】
図13に示すように、n型MISFET(N2)は、SOI領域に形成されており、ダイオード素子Di1は、バルク領域に形成されている。SOI領域とは、半導体基板SB、絶縁層BXおよび半導体層SMを含む領域であり、バルク領域とは、SOI領域から半導体層SMおよび絶縁層BXが除去された領域である。バルク領域に形成されたダイオード素子Diは、平面視にて素子分離部STIで周囲を囲まれた活性領域DAc1に形成されており、ダイオード素子Diは、p型半導体基板SBとn型半導体領域NSR1とを含む。図13に示すように、ドレイン領域DN2にダイオード素子Diが接続されているため、ゲート配線Wg23(ドレイン配線に対応)にチャージアップした電荷eは、ダイオード素子Diを介して半導体基板SBに流れる。また、図12のゲート配線Wg12にチャージアップした電荷eは、図13に示すように、ゲート電極G2に流れた後にゲート絶縁膜GFをトンネルして半導体層SMに蓄積し、絶縁層BXにトラップされるが、絶縁層BXに留まることなく、ドレイン領域DN2、プラグPG1(ドレイン領域に接続されたプラグ)、ゲート配線Wg23、配線Wc1、プラグPG1(保護素子に接続されたプラグ)、ダイオードDi1の経由で半導体基板SBに流れる。
【0039】
従って、ドレインアンテナ比ARDまたはゲートアンテナ比ARGが所定の値より大きい場合であっても、n型MISFET(N2)のドレイン領域DN2にダイオード素子Diを接続することにより、n型MISFET(N2)の閾値変動量(ΔVth)を低減することができる。
【0040】
また、図13から分かるように、ソース領域SN2に接続された配線Ws2にチャージアップされた電荷eは、ソース領域SN2から絶縁層BXにトラップされた後、絶縁層BXに留まることなく、ドレイン領域DN2、プラグPG1(ドレイン領域に接続されたプラグ)、ゲート配線Wg23、配線Wc1、プラグPG1(保護素子に接続されたプラグ)、ダイオードDi1経由で半導体基板SBに流れる。従って、図12に示すソース領域SN2(又は、ドレイン領域DN2)に接続されたダイオードDi1を省略することができる。逆に、ソース領域SN2にダイオードDi1を接続して、ドレイン領域DN2のダイオードDi1を省略しても良い。
【0041】
同様に、p型MISFET(P2)において、ドレイン領域DP2およびソース領域SP2、ドレイン領域DP2、または、ソース領域SP2にダイオード素子Di1を接続するのが望ましい。
【0042】
図14は、本実施の形態の第2の例における効果を示すグラフである。図14は、ゲート配線(Wg12)の面積とn型MISFET(N2)の閾値変動量(ΔVth)の関係を示している。図12に示すように、n型MISFET(N2)において、ドレイン領域DN2およびソース領域SN2に夫々ダイオード素子Di1を接続したことで、図14に示すように閾値変動量(ΔVth)を低減することができる。
【0043】
なお、第2の例では、図13に示すように、バルク領域に位置する半導体基板SBにn型半導体領域NSR1を形成することについて説明したが、図15に示すように、SOI領域に位置する半導体層SMにn型半導体領域NSR2を形成してもよい。詳細について、以下に説明する。
【0044】
図15は、本実施の形態の第3の例である半導体装置の要部断面図を示している。第3の例は、ドレインアンテナ比ARDが所定の値を超えた場合の対策であり、ソース・ドレイン領域に保護素子を接続した例を示している。つまり、上記第2の例においては、バルク領域において、半導体基板SBにn型半導体領域NSR1を形成したが、第3の例では、SOI領域において、半導体層SMにn型半導体領域NSR2を形成している。n型半導体領域NSR2は、活性領域DAc2に形成されている。
【0045】
図15に示すように、活性領域AN2に設けられたドレイン領域DN2と、活性領域DAc2に設けられたn型半導体領域NSR2とがゲート配線Wg23に接続されているため、ドレインアンテナ比ARDの定義式において活性領域の面積を増加することができる。従って、ドレインアンテナ比ARDを低減することができる。活性領域DAc2にn型半導体領域NSR2を設ける例を示したが、n型半導体領域NSR2に代えてp型半導体領域を設けても同様の効果が得られる。また、ソース領域SN2にも同様の構造を追加しても良い。
【0046】
また、第3の例では、前記第2の例に比べ、保護素子の面積を低減することができる。図13に示すように、SOI領域の素子分離部STIの深さは、バルク領域の素子分離部STIの深さよりも深い。そして、SOI領域とバルク領域との境界に位置する素子分離部STIには深い素子分離部STIと浅い素子分離部STIとが共存している。その為、平面視において、SOI領域とバルク領域との境界に位置する素子分離部STIの幅は、SOI領域またはバルク領域の内部に位置する素子分離部の幅よりも広くする必要がある。
【0047】
次に、図9図11に示す半導体装置のレイアウト(第1レイアウト)では、n型MISFET(N2)のゲートアンテナ比ARGが所定の値(例えば、500)よりも大きい場合には、図8のフロー図に従って、ゲート配線に保護素子を接続した第3レイアウトを用いて半導体装置を製造する。
【0048】
図16は、本実施の形態の第4の例である半導体装置の要部平面図(第3レイアウト)を示している。ゲートアンテナ比ARGが所定の値より大きい場合の対策であり、ゲート配線に保護素子を接続した例を示している。保護素子は、例えばダイオード素子である。図16に示すように、ゲート配線Wg12の一部に配線Wc2を接続して、ゲート配線Wg12にダイオード素子Di2を接続している。ダイオード素子Di2は、半導体基板SBの活性領域DAc3に形成され、図13で説明したダイオードDi1と同様の構造を有する。
【0049】
従って、ゲートアンテナ比ARGが所定の値より大きい場合であっても、n型MISFET(N2)のゲート配線Wg12にダイオード素子Diを接続することにより、ゲート配線Wg12にチャージアップした電荷eを、ダイオードDi2を介して半導体基板SBに流すことができるため、n型MISFET(N2)の閾値変動量(ΔVth)を低減することができる。
【0050】
なお、第4の例では、図16に示すように、ゲート配線Wg12の一部に接続された配線Wc2にダイオード素子Di2を接続することについて説明したが、ドレイン領域DN2、ソース領域SN2、または、ドレイン領域DN2およびソース領域SN2のそれぞれにダイオード素子Di1を接続してもよい。この理由は、上記したように、ゲート配線Wg12にチャージアップした電荷eは、ゲート電極G2に流れた後にゲート絶縁膜GFをトンネルして半導体層SMに蓄積し、絶縁層BXにトラップされる為である。そして、絶縁層BXにトラップされた電荷eは、ドレイン領域DN2、プラグPG1(ドレイン領域に接続されたプラグ)、ゲート配線Wg23、配線Wc1、プラグPG1(保護素子に接続されたプラグ)、ダイオードDi1の順で、半導体基板SBに流すことができる(図13参照)。
【0051】
また、第4の例では、図16に示すように、ゲート配線Wg12の一部に接続された配線Wc2にダイオード素子Di2を接続することについて説明したが、図17に示すように、ダミーMISFET(DM1,DM2)を保護素子として用いてもよい。詳細について、以下に説明する。
【0052】
図17は、本実施の形態の第5の例である半導体装置の要部平面図を示している。ゲートアンテナ比ARGが所定の値より大きい場合の対策であり、ゲート配線に保護素子を接続した例を示している。保護素子は、ダミーMISFETである。図17に示すように、ダミーMISFET(DM1)は、ゲート電極G4および活性領域DAc4を有する。そして、ゲート電極G4は、プラグPG1を介してゲート配線Wg12に接続されている。ダミーMISFET(DM1)は、図11に示すn型MISFET(N2)と同様の構造を有するが、必ずしもソース領域SN2およびドレイン領域DN2は設ける必要はない。活性領域DAc4は、絶縁層BX上の半導体層SMに形成されており、ゲート電極G4は、ゲート絶縁膜GFを介して半導体層SM上に配置されている。このような構造としたことで、ゲート配線Wg12にチャージアップした電荷eが、図5で説明したメカニズムにより、ダミーMISFET(DM1)の絶縁層BXにもトラップされる。従って、n型MISFET(N2)において、絶縁層BXにトラップされる電荷eを低減することができ、n型MISFET(N2)の閾値変動量(ΔVth)を低減することができる。
【0053】
また、図17に示すように、ダミーMISFET(DM1)と同様の構造を有するダミーMISFET(DM2)を更に設けることで、n型MISFET(N2)において、絶縁層BXにトラップされる電荷eをより低減することができる。
【0054】
このダミーMISFET(DM1)および(DM2)は、SOI領域に設けることができるため、保護素子としてダイオードDi2を設ける例に比べて保護素子形成領域の面積を低減することができる。
【0055】
また、ゲート電極G4の幅をゲート電極G2の幅よりも広くすることで、ダミーMISFET(DM1)および(DM2)側でトラップされる電荷eの比率を高くすることができる。ここで、幅とは、ゲート電極G4の延在方向と直交する方向における長さのことである。
【0056】
上記の第1の例では、保護素子を設ける必要がないため、半導体装置の小型化に有効である。
【0057】
保護素子としてダイオードDi1またはDi2を設ける第2および第4の例では、第3または第5の例に比べて、チャージアップした電荷eをダイオードDi1またはDi2に流し込むため、アンテナダメージを緩和する上で効果的である。
【0058】
一方、上記の第3および第5の例は、保護素子をバルク領域ではなくSOI領域に設けることができるため、保護素子を設ける領域を小型化する上で有効である。
【0059】
また、上記の第2の例から第5の例は、その複数を半導体装置に適用することができる。
【0060】
<半導体装置の製造方法>
図8に示す半導体装置の製造工程において、前述の設計段階の後に、半導体装置の製造段階を実施する。図18図21は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図であり、ここでは、上記第2の例を用いて、この製造段階の一部を説明する。
【0061】
まず、図18に示すように、SOI基板SSBを準備する。SOI基板SSBは、SOI領域とバルク領域とを含む。SOI領域において、素子分離部STIで規定された活性領域AN2は、半導体基板SB、半導体基板SB上の絶縁層BX、および、絶縁層BX上の半導体層SMからなる積層構造を有する。バルク領域においては、絶縁層BXおよび半導体層SMは除去されており、半導体基板SBの主面に、素子分離部STIで規定された活性領域DAc2が設けられている。
【0062】
次に、図19に示すように、SOI領域にn型MISFET(N2)、バルク領域にダイオード素子Di1を形成する。n型MISFET(N2)は、ゲート電極G2、ソース領域SN2およびドレイン領域DN2を含み、ソース領域SN2およびドレイン領域DN2は、半導体層SM内に形成され、ゲート電極G2は、半導体層SMの主面にゲート絶縁膜GFを介して形成されている。バルク領域の活性領域DAc2にn型半導体領域NSR1を設け、p型の半導体基板SBとの間でダイオード素子Di1を形成する。
【0063】
次に、図20に示すように、n型MISFET(N2)およびダイオード素子Di1を覆うように例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜IL1を設け、次に、層間絶縁膜IL1内に例えばタングステン(W)等からなる複数のプラグPG1を形成する。複数のプラグPG1は、ソース領域SN2、ドレイン領域DN2、n型半導体領域NSR1に接続している。ここでは図示していないが、プラグPG1は、ゲート電極G2にも接続している(図10参照)。
【0064】
次に、図21に示すように、層間絶縁膜IL1上に、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜IL2を設ける。そして、層間絶縁膜IL2に配線溝GRを形成し、配線溝GR内に配線Ws2およびゲート配線Wg23を形成する。配線Ws2およびゲート配線Wg23は、銅を主成分とする銅配線である。
【0065】
次に、図13に示すように、配線Ws2、ゲート配線Wg23および層間絶縁膜IL2を覆うように、PECVD法でバリア層BLおよび層間絶縁膜IL3を順に形成する。
【0066】
なお、配線Ws2およびゲート配線Wg23は、アルミニウムを主成分とするアルミニウム配線とすることも出来る。その場合、層間絶縁膜IL1上に配線Ws2およびゲート配線Wg23が形成され、配線Ws2、ゲート配線Wg23および層間絶縁膜IL1を覆うように、PECVD法で層間絶縁膜IL3が形成される。つまり、層間絶縁膜IL2およびバリア層BLは省略される。
【0067】
次に、図10図11図13または図15に示すように、配線Ws2およびゲート配線Wg23ならびに層間絶縁膜IL2を覆うようにバリア層BLおよび層間絶縁膜IL3を順次形成する。バリア層BLは、銅配線の銅が層間絶縁膜IL2およびIL3に拡散するのを防止するために設けており、例えば、窒素添加シリコンカーバイト(SiCN)膜、酸素添加シリコンカーバイト(SiCO)膜等とする。層間絶縁膜IL3は、例えば、炭素添加シリコン酸化膜(SiOC)等とする。そして、バリア膜BLおよび層間絶縁膜IL3は、PECVD法で形成される。なお、図示していないが、層間絶縁膜IL3には、銅配線からなる2層目の配線層が形成される。
【0068】
本実施の形態によれば、バリア膜BLまたは層間絶縁膜IL3の形成工程において、配線Ws2、ゲート配線Wg23およびゲート配線Wg12の何れか、あるいは、全てがチャージアップしても、ゲートアンテナ比ARGおよびドレインアンテナ比ARDが所定の値以下に設定されているため、n型MISFET(N2)の閾値変動を防止または抑制することができる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、バリア膜BLまたは層間絶縁膜IL3の形成工程において、配線Ws2、ゲート配線Wg23およびゲート配線Wg12等がチャージアップしても、n型MISFET(N2)のソース領域SN2またはドレイン領域DN2に保護素子を接続しているため、n型MISFET(N2)の閾値変動を防止または抑制することができる。なお、ゲート配線のチャージアップ対策だけを考慮した場合は、図16および図17のように、このゲート配線に保護素子(ダイオードまたはダミーMISFET)を接続しても良い。
【0070】
以上、本願発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
AP1、AP2、AP3、AN0、AN1、AN2、AN3 活性領域
ARD ドレインアンテナ比
ARG ゲートアンテナ比
BL バリア層(絶縁膜)
BX 絶縁層
DAc1、DAc2、DAc3、DAc4、DAc5 活性領域
Di1、Di2 ダイオード素子
DM1、DM2 ダミーMISFET
DN、DN1、DN2、DN3 ドレイン領域(n型ドレイン領域、半導体領域)
DP1、DP2、DP3 ドレイン領域(p型ドレイン領域、半導体領域)
e 電荷
G、G1、G2、G3、G4 ゲート電極
GF ゲート絶縁膜
IL1、IL2、IL3 層間絶縁膜
LC1、LC2、LC3 論理回路
N0、N1、N2、N3 n型MISFET
NSR1、 n型半導体領域(半導体領域)
P1、P2、P3 p型MISFET
PG1、PG2 プラグ
SB 半導体基板
SM 半導体層
SN、SN1、SN2、SN3 ソース領域(n型ソース領域、半導体領域)
SP1、SP2、SP3 ソース領域(p型ソース領域、半導体領域)
SSB SOI基板
STI 素子分離部(素子分離膜)
Vd 電源電位配線
Vs 基準電位配線
WD ドレイン配線
Wc1、Wd1、Ws1、Wd2、Ws2、Wd3、Ws3 配線
WG、Wg12、Wg23、Wg34 ゲート配線
WS ソース配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21