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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/26 20060101AFI20220511BHJP
   F16J 15/3264 20160101ALI20220511BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20220511BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20220511BHJP
【FI】
F16J15/26
F16J15/3264
F16J15/16 A
F16J15/3204 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018545242
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2018013548
(87)【国際公開番号】W WO2018190145
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2017078566
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】稀代 昌道
(72)【発明者】
【氏名】森 達也
(72)【発明者】
【氏名】目黒 直樹
【審査官】土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-045357(JP,A)
【文献】特開2007-107550(JP,A)
【文献】特開2003-294154(JP,A)
【文献】特許第4332703(JP,B2)
【文献】特開2005-090569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/26
F16J 15/3264
F16J 15/16
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動軸と、この往復動軸が配置された軸孔の内面との間に配置される密封装置であって、
前記軸孔の内部に配置される剛体製の流体側剛性環と、前記流体側剛性環に取り付けられた弾性体製の流体側弾性環とを有しており、前記流体側弾性環には、前記流体側剛性環よりも半径方向内側に配置されて前記往復動軸に摺動自在に密封接触するオイルリップが形成されているオイルシール部材と、
前記流体側剛性環に着脱自在に嵌め込まれる剛体製の大気側剛性環と、前記大気側剛性環に固定された弾性体製の大気側弾性環とを有しており、前記大気側弾性環には、前記大気側剛性環よりも半径方向内側に配置されて前記往復動軸に摺動自在に接触するダストリップが形成されているダストシール部材と、
前記大気側剛性環の半径方向内側に形成され、半径方向内側及び流体側が開放された円柱状の凹部に着脱自在に嵌め込まれ、前記往復動軸の軸線方向に平行な方向において前記流体側弾性環と前記大気側弾性環との間に配置されて、前記流体側弾性環を補強する剛体製の中間剛性環とを備えることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記中間剛性環は、前記流体側弾性環の半径方向内側に形成された凹部に着脱自在に嵌め込まれることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
往復動軸と、この往復動軸が配置された軸孔の内面との間に配置される密封装置であって、
前記軸孔の内部に配置される剛体製の流体側剛性環と、前記流体側剛性環に取り付けられた弾性体製の流体側弾性環とを有しており、前記流体側弾性環には、前記流体側剛性環よりも半径方向内側に配置されて前記往復動軸に摺動自在に密封接触するオイルリップが形成されているオイルシール部材と、
前記流体側剛性環に着脱自在に嵌め込まれる剛体製の大気側剛性環と、前記大気側剛性環に固定された弾性体製の大気側弾性環とを有しており、前記大気側弾性環には、前記大気側剛性環よりも半径方向内側に配置されて前記往復動軸に摺動自在に接触するダストリップが形成されているダストシール部材と、
前記大気側剛性環の半径方向内側に形成された凹部に着脱自在に嵌め込まれ、前記往復動軸の軸線方向に平行な方向において前記流体側弾性環と前記大気側弾性環との間に配置されて、前記流体側弾性環を補強する剛体製の中間剛性環とを備え、
前記中間剛性環の少なくとも内周面は、前記往復動軸の外周面よりも軟らかい金属から形成されていることを特徴とする密封装置。
【請求項4】
前記中間剛性環の内周面には、弾性材料が固定されていないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動軸を有する機器の軸回りの封止のために用いられる密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダ装置、ショックアブソーバ等の往復動軸を有する機器においては、往復動軸と軸孔内面との間に、これらの間の環状の間隙を封止するための密封装置が設けられる。
【0003】
特許文献1には、車両の懸架装置のショックアブソーバ用の密封装置が開示されている。この密封装置は、金属製の補強環と、補強環の内周部に設けられて油室側に配置された主リップと、補強環の内周部に設けられて外部空間側に配置されたダストリップを有する。主リップおよびダストリップは、フッ素ゴム等の弾性材料から形成され、補強環に接着されている。より正確には、主リップを有する弾性体部分と、ダストリップを有する弾性体部分が補強環の両面にそれぞれ接着されているとともに、これらの弾性体部分を連結する薄い弾性体部分が補強環の内周面に接着されている。
【0004】
特許文献2には、主リップを補強するためにバックアップリングが配置された、ショックアブソーバ用の密封装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4332703号
【文献】特開2005-90569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両の走行環境や乗り方の多様化に伴い、ショックアブソーバの密封装置の使用条件が過酷になってきている。また、例えばモノチューブ型のショックアブソーバのように内部の油の圧力が高い場合には、密封装置の耐圧性および耐久性を考慮して設計する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、耐圧性および耐久性が高い密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る密封装置は、往復動軸と、この往復動軸が配置された軸孔の内面との間に配置される密封装置であって、前記軸孔の内部に配置される剛体製の流体側剛性環と、前記流体側剛性環に取り付けられた弾性体製の流体側弾性環とを有しており、前記流体側弾性環には、前記流体側剛性環よりも半径方向内側に配置されて前記往復動軸に摺動自在に密封接触するオイルリップが形成されているオイルシール部材と、前記流体側剛性環に着脱自在に嵌め込まれる剛体製の大気側剛性環と、前記大気側剛性環に固定された弾性体製の大気側弾性環とを有しており、前記大気側弾性環には、前記大気側剛性環よりも半径方向内側に配置されて前記往復動軸に摺動自在に接触するダストリップが形成されているダストシール部材と、前記大気側剛性環の半径方向内側に形成された凹部に着脱自在に嵌め込まれ、前記往復動軸の軸線方向に平行な方向において前記流体側弾性環と前記大気側弾性環との間に配置されて、前記流体側弾性環を補強する剛体製の中間剛性環とを備える。
【0009】
この密封装置においては、オイルシール部材とダストシール部材が別個の部材であり、オイルシール部材とダストシール部材の各々が、軸孔の内部に配置される剛性環と、剛性環に取り付けられた弾性環とを有しており、弾性環には往復動軸に摺動自在に接触するリップが形成されている。往復動軸の軸線方向に平行な方向においてオイルシール部材の流体側弾性環とダストシール部材の大気側弾性環との間には、これらとは別個の部材である中間剛性環が配置され、流体側弾性環が剛体製の中間剛性環によって補強される。オイルリップが形成された流体側弾性環は流体側剛性環で補強され、ダストリップが形成された大気側弾性環は大気側剛性環で補強され、さらにまた、流体側弾性環が中間剛性環に支持され、中間剛性環は、流体側剛性環に嵌め込まれる大気側剛性環の凹部に嵌め込まれて、大気側剛性環および流体側剛性環に剛的に強い支持力で支持されるので、密封装置の耐圧性および耐久性を高めることができる。
【0010】
本発明の一態様における密封装置においては、前記中間剛性環は、前記流体側弾性環の半径方向内側に形成された凹部に着脱自在に嵌め込まれる。この場合には、中間剛性環を大気側剛性環の凹部に嵌め込んだ後に、中間剛性環にオイルシール部材の流体側弾性環を組み付けることが容易である。
【0011】
本発明の一態様における密封装置においては、前記中間剛性環の少なくとも内周面は、前記往復動軸の外周面よりも軟らかい金属から形成されている。この場合には、中間剛性環を往復動軸の往復運動を案内するガイドとして使用することが可能である。
【0012】
本発明の一態様における密封装置においては、前記中間剛性環の内周面には、弾性材料が固定されていない。この場合には、中間剛性環の内周面から弾性材料が剥離するおそれがなく、また中間剛性環と往復動軸の隙間を小さく設定することができる。したがって、さらに密封装置の耐圧性および耐久性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、往復動軸の軸線方向に平行な方向においてオイルシール部材の流体側弾性環とダストシール部材の大気側弾性環との間には、これらとは別個の部材である中間剛性環が配置され、流体側弾性環が剛体製の中間剛性環によって補強される。オイルリップが形成された流体側弾性環は流体側剛性環で補強され、ダストリップが形成された大気側弾性環は大気側剛性環で補強され、さらにまた、流体側弾性環が中間剛性環に支持され、中間剛性環は、流体側剛性環に嵌め込まれる大気側剛性環の凹部に嵌め込まれて、大気側剛性環および流体側剛性環に剛的に強い支持力で支持されるので、密封装置の耐圧性および耐久性を高めることができる。また、オイルシール部材、ダストシール部材および中間剛性環は、互いに別個の部材であるので、状況に応じて、適切な部材に交換したり適切な部材を選択したりすることができる。例えば、オイルシール部材が劣化した場合に、これだけを交換することができる。また、寸法、形状、構造、またはその他の細部が異なるいくつかの種類のオイルシール部材またはいくつかの種類のダストシール部材を準備し、密封装置の使用環境に応じて、適切なオイルシール部材またはダストシール部材を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る密封装置の断面図である。
図2図1の密封装置の分解断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る密封装置の断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る密封装置の断面図である。
図5図4の密封装置の中間剛性環の変形を示す断面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係る密封装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態を示す図であり、往復動軸を有する機器であるショックアブソーバの一部と、ショックアブソーバに設けられた密封装置を示す。
【0016】
ショックアブソーバ1は、円筒状のハウジング2と、円柱状の往復動軸4とを有する。往復動軸4は、金属、例えば鋼から形成されている。ハウジング2は、円筒状であって、往復動軸4が配置された軸孔2Aを有する。軸孔2A内には、オイルすなわち流体Lが入れられている。ハウジング2の下端には、中央に開口3Aが形成された端部壁3が形成されている。
【0017】
ハウジング2の内部には、オイルシールである密封装置6およびロッドガイド8が配置されている。詳細については図示しないが、ロッドガイド8は、ハウジング2に固定されている。ロッドガイド8は、往復動軸4の図中の上下方向(すなわち往復動軸4の軸線方向)の往復運動を案内するとともに、密封装置6を端部壁3に押し付ける。
【0018】
密封装置6は、ハウジング2の内部に配置され、ハウジング2の内周面によって密封装置6の図中の横方向の移動が規制されている。また、密封装置6は、ロッドガイド8と端部壁3に挟まれており、往復動軸4の軸線方向に沿った密封装置6の移動が規制されている。密封装置6は、往復動軸4と、この往復動軸4が配置された軸孔2Aの内面との間に配置され、流体L側から大気A側へ流体Lが漏出するのを防止または低減させる。
【0019】
往復動軸4は円柱状であり、軸孔2Aは断面円形であり、密封装置6はほぼ環状であるが、図1においては、それらの左半分のみが示されている。図1には、往復動軸4、軸孔2Aおよび密封装置6の共通の中心軸線Cが示されている。
【0020】
この実施形態において、密封装置6は、3つの別個の部材、すなわちオイルシール部材10、ダストシール部材12、および剛性環(中間剛性環)14を備える。これらの3つの部材を明確に示す分解断面図である図2を必要に応じて参照されたい。
【0021】
オイルシール部材10は、軸孔2Aの内部に配置されて軸孔2Aに取り付けられる流体側剛性環16と、流体側剛性環16に固定された流体側弾性環18とを有する。流体側剛性環16は、剛体、例えば金属から形成されている。流体側剛性環16は、L字形の断面を有し、環状部分16aと、この環状部分16aの外縁から延びる円筒部分16bとを有する。
【0022】
流体側弾性環18は、弾性材料、例えばエラストマーから形成され、流体側剛性環16の環状部分16aの内周縁に固定されている。流体側弾性環18には、流体側剛性環16よりも半径方向内側に配置されたオイルリップ20が形成されている。オイルリップ20は、往復動軸4の外周面に密封接触し、流体L側から大気A側への流体の漏れを防止または低減する。往復動軸4が中心軸線Cの方向に移動するとき、往復動軸4はオイルリップ20に対して摺動する。
【0023】
流体側弾性環18は、主に流体側剛性環16の流体側剛性環16の流体L側の面に固定されているが、流体側剛性環16の内周面にも固定され、さらには、流体側弾性環18の一部の領域18qが流体側剛性環16の大気A側の面にも固定されている。領域18qは、ダストシール部材12により圧縮される。
【0024】
さらにオイルシール部材10は外側ガスケット19を有する。外側ガスケット19は、弾性材料、例えばエラストマーから形成され、流体側剛性環16の環状部分16aと円筒部分16bに密着して固定されている。流体側剛性環16は、外側ガスケット19に対して半径方向外側すなわち軸孔2Aの内周面に向かう支持力を与え、外側ガスケット19は軸孔2Aの内周面と流体側剛性環16によって圧縮される。このようにして、外側ガスケット19は、流体L側から大気A側への軸孔2Aの外側部分を通じた流体の漏れを防止または低減する。
【0025】
外側ガスケット19と流体側弾性環18は、分離していてもよいが、この実施形態では、薄膜部21を介して連結されている。すなわち、流体側弾性環18、外側ガスケット19および薄膜部21は、同一材料から形成された連続した一体の弾性部分を構成する。薄膜部21も流体側剛性環16に密着して固定されている。この実施形態では、ロッドガイド8の突起8aがオイルシール部材10の薄膜部21に接触させられ、密封装置6にハウジング2の端部壁3に向かう押圧力を与える。
【0026】
オイルシール部材10に関して「軸孔2Aに取り付けられる」とは、軸孔2Aに直接的または間接的に取り付けられることを意味する。これらが直接的に(例えば締まり嵌めによって)軸孔2Aに取り付けられてもよいし、間接的に(例えば、この実施形態のように、ロッドガイド8によって端部壁3に押圧されることによって)軸孔2Aに取り付けられてもよい。
【0027】
ダストシール部材12は、オイルシール部材10の流体側剛性環16に着脱自在に嵌め込まれる大気側剛性環22と、大気側剛性環22に固定された大気側弾性環24とを有する。大気側剛性環22は、剛体、例えば金属から形成されている。大気側剛性環22は、円環であって、流体側剛性環16の環状部分16aおよび円筒部分16bで画定された内部空間に配置され、大気側剛性環22の一方の側面が環状部分16aに接触させられ、他方の側面が端部壁3に接触させられ、外周面が円筒部分16bの内周面に接触させられる。
【0028】
大気側弾性環24は、弾性材料、例えばエラストマーから形成され、大気側剛性環22の内周縁に固定されている。大気側弾性環24には、大気側剛性環22よりも半径方向内側に配置されたダストリップ26が形成されている。ダストリップ26は、往復動軸4の外周面に接触し、主に大気A側から流体L側への異物(例えば泥、水、塵埃)の侵入を防止する役割を担う。往復動軸4が中心軸線Cの方向に移動するとき、往復動軸4はダストリップ26に対して摺動する。ダストリップ26は、流体の漏れを防止または低減する役割を果たすように、往復動軸4の外周面に密封接触してもよい。
【0029】
この密封装置6は、大気側弾性環24の周囲に巻かれるガータースプリング30を有する。ガータースプリング30は、ダストリップ26を往復動軸4に押し付ける力をダストリップ26に与える。但し、ガータースプリング30は必ずしも不可欠ではない。また、流体側弾性環18の周囲にオイルリップ20を往復動軸4に押し付けるためのガータースプリングを巻いてもよい。
【0030】
オイルリップ20およびダストリップ26は、往復動軸4の外周面に接触するために、図1に示された状態よりも半径方向外側に向けて弾性変形させられる。図1は、密封装置1が往復動軸4の周囲に配置されていない状態を表しており(往復動軸4は仮想線で示されている)、これらのリップ20,26の変形を表していない。
【0031】
ダストシール部材12の大気側剛性環22の半径方向内側には、凹部22Aが形成されている。凹部22Aは円柱状であって、その流体L側が開放されている。
【0032】
この凹部22Aに、剛体、例えば樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)または金属から形成された剛性環14(中間剛性環14)が着脱自在に嵌め込まれる。この実施形態において、中間剛性環14は、バックアップリングであり、その中央に往復動軸4が挿入される貫通孔が形成されている。また、密封装置6が組み立てられると、中間剛性環14は、オイルシール部材10の流体側弾性環18に常に接触し、流体側弾性環18を補強する。
【0033】
より具体的には、オイルシール部材10の流体側弾性環18におけるダストシール部材12付近の領域の半径方向内側に形成された凹部18Aに、中間剛性環14は、着脱自在に嵌め込まれる。図示のように、凹部18Aに少なくとも1つの溝を形成し、中間剛性環14にはその溝に締まり嵌めされる突起を形成してもよい。中間剛性環14によって、密封装置36、特にオイルリップ20の耐圧性および耐久性を高めることができる。この実施形態では、1つの中間剛性環14が使用されているが、中間剛性環14を複数の剛的な部材から構成してもよい。
【0034】
大気側弾性環24は、大気側剛性環22の内周面に固定された領域24qを有しており、中間剛性環14は領域24qにも接触させられる。
【0035】
この実施形態において、中間剛性環14の内径は、オイルシール部材10の流体側弾性環18における中間剛性環14に接触する領域の内径よりも小さく、ダストシール部材12の大気側弾性環24における中間剛性環14に接触する領域24qの内径よりも小さい。したがって、剛性環14は、往復動軸4の軸線方向に平行な方向において流体側弾性環18と大気側弾性環24との間に配置される。
【0036】
この実施形態においては、往復動軸4の軸線方向に平行な方向においてオイルシール部材10の流体側弾性環18とダストシール部材12の大気側弾性環24との間には、これらとは別個の部材である中間剛性環14が配置され、流体側弾性環18が剛体製の中間剛性環14によって補強される。オイルリップ20が形成された流体側弾性環18は流体側剛性環16で補強され、ダストリップ26が形成された大気側弾性環24は大気側剛性環22で補強され、さらにまた、流体側弾性環18が中間剛性環14に支持され、中間剛性環14は、流体側剛性環16に嵌め込まれる大気側剛性環22の凹部22Aに嵌め込まれて、大気側剛性環22および流体側剛性環16に剛的に強い支持力で支持される。このため、流体側剛性環16、大気側剛性環22および中間剛性環14が一体の剛体として働き、流体側弾性環18と大気側弾性環24を強固に補強することができるので、密封装置6、特にオイルリップ20の耐圧性および耐久性を高めることができる。
【0037】
この実施形態においては、中間剛性環14は、流体側弾性環18の半径方向内側に形成された凹部18Aに着脱自在に嵌め込まれる。したがって、中間剛性環14を大気側剛性環22の凹部22Aに嵌め込んだ後に、中間剛性環14にオイルシール部材10の流体側弾性環18を組み付けることが容易である。
【0038】
後述する第3実施形態の中間剛性環47と同様に、中間剛性環14の少なくとも内周面は、往復動軸4の外周面よりも軟らかい金属から形成してもよい。この場合には、中間剛性環14を往復動軸4の往復運動を案内するガイドとして使用することが可能である。この場合、往復動軸4に対する密封装置6の偏心が少なくなり、リップ20,26の摩耗または損傷が部分的に顕著になることを防止または低減することができる。
【0039】
この実施形態においては、密封装置6が往復動軸4と軸孔2Aの内面との間に配置されると、流体側弾性環18と大気側弾性環24の両方が、中間剛性環14に常に接触する。したがって、密封装置6の使用時には常に流体側弾性環18と大気側弾性環24の両方が中間剛性環14に補強されることになる。
【0040】
さらにまた、この実施形態においては、往復動軸4の軸線方向に平行な方向においてオイルシール部材10の流体側弾性環18とダストシール部材12の大気側弾性環24との間には、これらとは別個の部材である中間剛性環14が配置されるので、往復動軸4の外周面と中間剛性環14の内周面との隙間を小さく設定することができる。この隙間が小さいため、流体Lの圧力が高くても、往復動軸4の往復運動に伴って、オイルリップ20やダストリップ26がその隙間に侵入するおそれが少なく、密封装置6の耐圧性および耐久性をさらに高めることができる。
【0041】
中間剛性環14の内周面には、例えばエラストマーのような弾性材料を固定してもよいが、そのような弾性材料は不要であり、この実施形態では設けていない。このため、中間剛性環14の内周面から弾性材料が剥離するおそれがなく、また中間剛性環14と往復動軸4の隙間を小さく設定することができる。
【0042】
オイルシール部材10を製造するには、例えば、流体側剛性環16に、流体側弾性環18、外側ガスケット19および薄膜部21を有する弾性部材を接着剤で接着してもよい。ダストシール部材12を製造するには、例えば、大気側剛性環22に大気側弾性環24を接着剤で接着してもよい。あるいは、剛性環16または22を型の内部に配置し、型内に液状の弾性材料を注入して硬化させて弾性環18または24を成形することによって、シール部材10または12を製造してもよい。
【0043】
第2実施形態
図3は、第2実施形態に係る密封装置36の断面図である。図3以降の図面において、既に説明したものと同様の構成要素を示すため、同一の符号が使用され、それらの構成要素については詳細には説明しない。
【0044】
この密封装置36は、第1実施形態の流体側弾性環18の代わりに、流体側剛性環16に間接的に取り付けられた流体側弾性環39を有する。密封装置36のオイルシール部材37は、流体側剛性環16、流体側剛性環16に密着して固定された外側ガスケット19、流体側剛性環16に密着して固定された中間弾性環38、外側ガスケット19と中間弾性環38を連結する薄膜部21、および流体側弾性環39を有する。薄膜部21も流体側剛性環16に密着して固定されている。
【0045】
外側ガスケット19と中間弾性環38は、分離していてもよいが、この実施形態では、薄膜部21を介して連結されている。すなわち、中間弾性環38、外側ガスケット19および薄膜部21は、同一の弾性材料(例えばエラストマー)から形成された連続した一体の弾性部分を構成する。この実施形態では、流体側剛性環16の環状部分16aは、第1実施形態のそれよりも小さい。中間弾性環38は、環状部分16aの内周面に密着して固定させられている。
【0046】
流体側弾性環39は、弾性材料(例えばエラストマー)から形成されるが、上記の弾性部分とは別個の部材であって、中間弾性環38に対して着脱自在に取り付けられる。中間弾性環38の内周面には、V字形の溝38Aが形成され、この溝38Aに流体側弾性環39の突起39aが嵌め込まれる。
【0047】
流体側弾性環39には、流体側剛性環16よりも半径方向内側に配置されたオイルリップ40が形成されている。オイルリップ40は、往復動軸4の外周面に密封接触し、流体L側から大気A側への流体の漏れを防止または低減する。往復動軸4が中心軸線Cの方向に移動するとき、往復動軸4はオイルリップ40に対して摺動する。
【0048】
この実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を達成することが可能である。
【0049】
図1および図3から明らかなように、上記の異なる実施形態においては、ダストシール部材12および中間剛性環14は共通であり、オイルシール部材の詳細が異なっている。寸法、形状、構造、またはその他の細部が異なるいくつかの種類のオイルシール部材を準備し、密封装置の使用環境に応じて、適切なオイルシール部材を選択することができる。すなわち、本発明では、オイルシール部材、ダストシール部材および中間剛性環は、互いに別個の部材であるので、状況に応じて密封装置をカスタマイズすることができる。寸法、形状、構造、またはその他の細部が異なるいくつかの種類のダストシール部材を準備し、密封装置の使用環境に応じて、適切なダストシール部材を選択してもよい。また、オイルシール部材またはダストシール部材が劣化した場合に、これだけを交換することができる。
【0050】
第3実施形態
図4は、第3実施形態に係る密封装置46の断面図である。この密封装置46は、第1実施形態のバックアップリングである中間剛性環14に代えて、中間剛性環47を備える。中間剛性環47は、ダストシール部材12の大気側剛性環22の半径方向内側に形成されて流体L側が開放された円柱状の凹部22Aに、着脱自在に嵌め込まれる。
【0051】
中間剛性環47は、例えば樹脂または金属である剛体、好ましくは金属から形成されたブッシュ、すなわち円筒である。中間剛性環47の内周面は、平滑化加工されており、中間剛性環14を往復動軸4の往復運動を案内するガイドとして使用することが可能である。このように密封装置46の中間剛性環47をガイドとして使用することにより、往復動軸4に対する密封装置46の偏心が少なくなり、リップ20,26の摩耗または損傷が部分的に顕著になることを防止または低減することができる。
【0052】
中間剛性環47の少なくとも内周面は、往復動軸4の摩耗を最小限にするため、往復動軸4の外周面よりも軟らかい金属から形成されていると好ましい。
【0053】
例えば、中間剛性環47は、銅合金の粉末と鉄合金の粉末とから焼結によって成形されてもよい。この場合、多数の微少な空孔を有する多孔質体に形成されているとさらに好ましい。
【0054】
あるいは、中間剛性環47は青銅から形成されていてもよい。青銅に鉛とポリテトラフルオロエチレンの少なくとも一方が混合または含浸されていてもよい。
【0055】
あるいは、中間剛性環47はアルミニウムまたは酸化アルミニウムから形成されていてもよい。酸化アルミニウムにポリテトラフルオロエチレンが含浸されていてもよい。
【0056】
図5に示すように、中間剛性環47は、外側環47Aと、外側環47Aの内側に嵌め込まれる内側環47Bを有してもよい。内側環47Bは、上に列挙したような往復動軸4の外周面よりも軟らかい金属から形成されていると好ましい。外側環47Aは、内側環47Bの材料よりも圧縮強度が高い金属から形成されていると好ましい。中間剛性環47の部品の数は3以上でもよい。
【0057】
この実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を達成することが可能である。
【0058】
第1実施形態と異なり、この実施形態において、オイルシール部材10の流体側弾性環18には、中間剛性環47を受け入れる凹部(第1実施形態の凹部18Aに相当)は形成されていない。但し、この実施形態でも第1実施形態と同様に、密封装置46が組み立てられると、中間剛性環47は、流体側弾性環18に常に接触し、流体側弾性環18を補強する。
【0059】
この実施形態においては、中間剛性環47は、流体側弾性環18に嵌め込まれない。したがって、中間剛性環47を大気側剛性環22の凹部22Aに嵌め込んだ後に、中間剛性環47にオイルシール部材10の流体側弾性環18を組み付けることが容易である。
【0060】
中間剛性環47の内周面には、例えばエラストマーのような弾性材料を固定してもよいが、そのような弾性材料は不要であり、この実施形態では設けていない。このため、中間剛性環47の内周面から弾性材料が剥離するおそれがなく、また中間剛性環47と往復動軸4の隙間を最小限にすることができる。この隙間が小さいため、流体Lの圧力が高くても、往復動軸4の往復運動に伴って、オイルリップ20やダストリップ26がその隙間に侵入するおそれが少なく、密封装置46の耐圧性および耐久性をさらに高めることができる。
【0061】
第4実施形態
図6は、第4実施形態に係る密封装置56の断面図である。この密封装置56は、第3実施形態の流体側弾性環18の代わりに、流体側剛性環16に間接的に取り付けられた流体側弾性環39を有する。密封装置56のオイルシール部材37は、流体側剛性環16、流体側剛性環16に密着して固定された外側ガスケット19、流体側剛性環16に密着して固定された中間弾性環38、外側ガスケット19と中間弾性環38を連結する薄膜部21、および流体側弾性環39を有する。薄膜部21も流体側剛性環16に密着して固定されている。
【0062】
このように、第4実施形態は第3実施形態の修正であって、その修正は第1実施形態に対する第2実施形態の修正と同じである。詳細については、第2実施形態の説明を参照されたい。この実施形態においても、中間剛性環47を図5に例示したように複数の部品から構成してもよい。この実施形態においても、第3実施形態と同様の効果を達成することが可能である。
【0063】
図4および図6から明らかなように、第3実施形態および第4実施形態においては、ダストシール部材12および中間剛性環47は共通であり、オイルシール部材の詳細が異なっている。寸法、形状、構造、またはその他の細部が異なるいくつかの種類のオイルシール部材を準備し、密封装置の使用環境に応じて、適切なオイルシール部材を選択することができる。すなわち、本発明では、オイルシール部材、ダストシール部材および中間剛性環は、互いに別個の部材であるので、状況に応じて密封装置をカスタマイズすることができる。寸法、形状、構造、またはその他の細部が異なるいくつかの種類のダストシール部材を準備し、密封装置の使用環境に応じて、適切なダストシール部材を選択してもよい。また、オイルシール部材またはダストシール部材が劣化した場合に、これだけを交換することができる。
【0064】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、上記の説明は本発明を限定するものではなく、本発明の技術的範囲において、構成要素の削除、追加、置換を含む様々な変形例が考えられる。
【0065】
例えば、本発明は、ショックアブソーバに限らず、油圧シリンダ装置等の往復動軸を有する他の機器に使用される密封装置に適用してもよい。
【0066】
リップの形状、その他の詳細は図示の実施形態に限定されない。また、ガータースプリングをオイルシール部材とダストシール部材の一方または両方に設けてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ショックアブソーバ
2 ハウジング
2A 軸孔
3 端部壁
3A 開口
4 往復動軸
6,36,46,56 密封装置
8 ロッドガイド
10,37 オイルシール部材
12 ダストシール部材
14 剛性環(中間剛性環)
16 流体側剛性環
16a 環状部分
16b 円筒部分
18 流体側弾性環
18A 凹部
19 外側ガスケット
20 オイルリップ
21 薄膜部
22 大気側剛性環
22A 凹部
24 大気側弾性環
26 ダストリップ
30 ガータースプリング
38 中間弾性環
38A 溝
39 流体側弾性環
39a 突起
40 オイルリップ
47 剛性環(中間剛性環)
47A 外側環
47B 内側環
図1
図2
図3
図4
図5
図6