IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル)の特許一覧

<>
  • 特許-5Gスプリットベアラフロー制御の管理 図1
  • 特許-5Gスプリットベアラフロー制御の管理 図2
  • 特許-5Gスプリットベアラフロー制御の管理 図3
  • 特許-5Gスプリットベアラフロー制御の管理 図4
  • 特許-5Gスプリットベアラフロー制御の管理 図5
  • 特許-5Gスプリットベアラフロー制御の管理 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】5Gスプリットベアラフロー制御の管理
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/10 20090101AFI20220511BHJP
   H04L 1/16 20060101ALI20220511BHJP
   H04L 69/00 20220101ALI20220511BHJP
   H04L 69/14 20220101ALI20220511BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20220511BHJP
【FI】
H04W28/10
H04L1/16
H04L69/00
H04L69/14
H04W72/04 111
H04W72/04 150
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018562281
(86)(22)【出願日】2016-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 SE2016050530
(87)【国際公開番号】W WO2017209671
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2019-01-31
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161470
【弁理士】
【氏名又は名称】冨樫 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100194294
【弁理士】
【氏名又は名称】石岡 利康
(74)【代理人】
【識別番号】100194320
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 亮
(72)【発明者】
【氏名】ウィグレン, トーブイェーン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, ヴァルテル
(72)【発明者】
【氏名】スン, イン
(72)【発明者】
【氏名】ミドルトン, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】デルガド, ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ラウ, カトリナ
【合議体】
【審判長】中木 努
【審判官】圓道 浩史
【審判官】國分 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021306(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00- 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
3GPP TSG SA WG1-4
3GPP TSG CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御側マスターノード(200)とデータをワイヤレスデバイスに送信する複数のスレーブノード(300)とを備える通信ネットワーク(5)において、複数のスレーブノード(300)によって前記マスターノード(200)に提供される、前記マスターノード(200)と前記複数のスレーブノード(300)との間の少なくとも1つの制御ループと関連付けられるフィードバックを管理する方法であって、
前記方法は、前記マスターノード(200)によってまたは前記複数のスレーブノード(300)の1つによって実現され、
前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があるか否かを判定することと、
前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があるか否かの前記判定に応答して、フィードバック低減モードで動作することとを含み、
前記フィードバック低減モードは、フィードバック低減モードで動作しているときに前記スレーブノード(300)によって提供されるフィードバックの量が、ゼロではなく、フルフィードバックモードで動作しているときに前記スレーブノード(300)によって提供されるフィードバックの量よりも少ないように、前記スレーブノード(300)によって前記マスターノード(200)に提供される前記フィードバックを管理して、前記マスターノード(200)と前記スレーブノード(300)との間の合計ラウンドトリップタイムに対するキュードウェル時間遅延の寄与に等しい、予め指定されたパケットドウェル時間を満たすように、前記スレーブノード(300)のキューを制御する、方法。
【請求項2】
マスターノード(200)とデータをワイヤレスデバイスに送信する複数のスレーブノード(300)とを備える通信ネットワーク(5)において、前記複数のスレーブノード(300)によって制御側マスターノード(200)に提供される、前記マスターノード(200)と前記複数のスレーブノード(300)との間の少なくとも1つの制御ループと関連付けられるフィードバックを管理するように設定される装置であって、
前記装置は、前記マスターノード(200)に、または前記複数のスレーブノード(300)の1つに配設され、1つまたは複数の処理回路(210、310)を備え、
前記処理回路は、
前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があるか否かを判定し、
前記スレーブノード(300)が前記フィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があるか否かの前記判定に応答して、フィードバック低減モードで動作するように設定され、
前記フィードバック低減モードは、フィードバック低減モードで動作しているときに前記スレーブノード(300)によって提供されるフィードバックの量が、ゼロではなく、フルフィードバックモードで動作しているときに前記スレーブノード(300)によって提供されるフィードバックの量よりも少ないように、前記スレーブノード(300)によって前記マスターノード(200)に提供される前記フィードバックを管理して、前記マスターノード(200)と前記スレーブノード(300)との間の合計ラウンドトリップタイムに対するキュードウェル時間遅延の寄与に等しい、予め指定されたパケットドウェル時間を満たすように、前記スレーブノード(300)のキューを制御する、装置。
【請求項3】
前記装置が前記マスターノード(200)に含まれ、前記1つまたは複数の処理回路(210)が、
前記マスターノード(200)が前記スレーブノード(300)に送るパケットを有しているか否かを判定し、
前記マスターノード(200)が前記スレーブノード(300)に送るパケットを有している場合、前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があると判定し、
前記マスターノード(200)が所定の時間間隔の間に前記スレーブノード(300)に送るパケットを有さない場合、前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要はないと判定することによって、前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があるか否かを判定する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が前記マスターノード(200)に構成され、前記1つまたは複数の処理回路(210)が、前記マスターノード(200)のインターフェース回路を介してフィードバックモード信号を前記スレーブノード(300)に送るように更に設定され、前記フィードバックモード信号が、前記スレーブノード(300)が前記フィードバック低減モードで動作すべきであることを前記スレーブノード(300)に示す、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記フィードバックモード信号が、前記フィードバック低減モードで動作しているとき、前記スレーブノード(300)が前記マスターノード(200)に提供される前記フィードバックの量をどのように低減すべきかを更に示す、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が前記スレーブノード(300)に構成され、
前記スレーブノード(300)が、前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があるか否かを示す、フィードバック低減モード信号を前記マスターノード(200)から受信するように設定されたインターフェース回路(220)を更に備え、
前記1つまたは複数の処理回路(210)が、前記フィードバック低減モード信号に応答して、前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があるか否かを判定する、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が前記スレーブノード(300)に構成され、
前記スレーブノードが、キュー(330)とインターフェース回路(320)とを更に備え、
前記1つまたは複数の処理回路(310)が、
前記インターフェース回路(320)が所定の時間間隔の間に前記マスターノード(200)からパケットを受信している場合、または前記キュー(330)が空ではない場合、前記スレーブノード(300)が前記フィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があると判定し、
前記インターフェース回路(320)が所定の時間間隔の間に前記マスターノード(200)からパケットを受信していない場合、および前記キュー(330)が空である場合、前記スレーブノード(300)が前記フィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要がないと判定することによって、前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があるか否かを判定する、請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記スレーブノード(300)が、フィードバック回路(340)とインターフェース回路(320)とを備え、前記1つまたは複数の処理回路(310)が、
フィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があると前記1つまたは複数の処理回路(310)が判定したとき、前記フルフィードバックモードに対応するフィードバック情報の不明確な推定値を表す粗量子化フィードバック情報を判定するように、前記フィードバック回路(340)を設定し、
前記粗量子化フィードバック情報を前記マスターノード(200)に送るように、前記インターフェース回路(320)を設定することによって、前記スレーブノード(300)が前記フィードバック低減モードで動作するように設定する、請求項またはに記載の装置。
【請求項9】
前記スレーブノード(300)が更にインターフェース回路(320)を備え、前記1つまたは複数の処理回路(210、310)が、
フィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があると前記1つまたは複数の処理回路(310)が判定したとき、前記スレーブノード(300)と関連付けられる1つまたは複数のベアラからのフィードバックを前記スレーブノード(300)で受信するように、前記インターフェース回路(320)を設定し、
収集したフィードバックをコンパイルして複合フィードバックメッセージにし、
前記複合フィードバックメッセージを前記マスターノード(200)に送るように前記インターフェース回路(320)を設定することによって、前記スレーブノード(300)を前記フィードバック低減モードで動作するように設定する、請求項またはに記載の装置。
【請求項10】
前記スレーブノード(300)が、インターフェース回路(320)とフィードバック回路(340)とを更に備え、前記1つまたは複数の処理回路(310)が、
パケットを受信するように前記インターフェース回路(320)を設定し、
フィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があると前記1つまたは複数の処理回路(310)が判定したとき、前記受信パケットにおける予測情報と前記受信パケットにおける実際の情報との差から、前記フィードバックの誤差を推定するように前記フィードバック回路(340)を設定し、
前記推定誤差を前記マスターノード(200)に送るように前記インターフェース回路(320)を設定することによって、前記スレーブノード(300)を前記フィードバック低減モードで動作するように設定する、請求項またはに記載の装置。
【請求項11】
マスターノード(200)とデータをワイヤレスデバイスに送信する複数のスレーブノード(300)とを備える通信ネットワーク(5)において、前記複数のスレーブノード(300)によって制御側マスターノード(200)に提供される、前記マスターノード(200)と前記複数のスレーブノード(300)との間の少なくとも1つの制御ループと関連付けられるフィードバックを管理するように処理回路(210、310)を制御する、非一時的コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータプログラムであって、前記マスターノード(200)の、または前記複数のスレーブノード(300)のうち1つの前記処理回路(210、310)で実行するときに、前記処理回路(210、310)に、
前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があるか否かを判定させ、
前記スレーブノード(300)がフィードバックを前記マスターノード(200)に提供する必要があるか否かの前記判定に応答して、フィードバック低減モードで動作させる、ソフトウェア命令を含み、
前記フィードバック低減モードは、フィードバック低減モードで動作しているときに前記スレーブノード(300)によって提供されるフィードバックの量が、ゼロではなく、フルフィードバックモードで動作しているときに前記スレーブノード(300)によって提供されるフィードバックの量よりも少ないように、前記スレーブノード(300)によって前記マスターノード(200)に提供される前記フィードバックを管理して、前記マスターノード(200)と前記スレーブノード(300)との間の合計ラウンドトリップタイムに対するキュードウェル時間遅延の寄与に等しい、予め指定されたパケットドウェル時間を満たすように、前記スレーブノード(300)のキューを制御する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において提示する解決策は、概して、マルチノードデータフロー制御に関し、より詳細には、複数のスレーブノードによって制御側マスターノードに提供されるフィードバックの管理に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレスシステムは、従来、標準的な通信周波数、例えば1~2GHzにおいて、単一のネットワークノード、例えば基地局と、単一の端末、例えばユーザ機器(UE)との間におけるデータの転送を効率的に扱うように設計されてきた。しかしながら、より大容量が必要とされるため、より高いキャリア周波数へのシフト、および/または一般にマルチポイント送信と呼ばれる、複数のネットワークノードによる送信につながる。
【0003】
より高いキャリア周波数へのシフトは、一般に、受信機が得られる有用な電力を低減する。特に、より高い無線周波数によって、無線伝搬が散漫散乱からよりビーム状の伝搬へと変換される。結果として得られる急な回折効果および無線シャドーイング(例えば、障害物の後方)の増加によって、単一の基地局からの均一なカバレッジを達成することがより困難になる。より均一なカバレッジを提供するのに、複数の同じでない場所に配置された送信ポイントから受信機に、例えば複数の基地局から単一の移動局にデータが送信される、マルチポイント送信が使用されてもよい。かかるマルチポイント送信は、様々なワイヤレスシステム、例えば4Gおよび5Gシステムに使用されてもよい。従来のマルチポイントシステムには、一般に、少数の送信ポイント、例えば2つの送信ポイントが関与する。しかしながら、新しいシステムにおけるより高い周波数およびより大きい容量の要件は、多数の送信ポイントの使用を要することが予測される。しかしながら、従来のシステムおよび解決策は、かかる多数の送信ポイントに関して予測されるフィードバックを十分に管理することができない。したがって、マルチポイントシステムと関連付けられるフィードバックを管理する新たな手法が依然として求められている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において提示する解決策は、スレーブノードによって制御側マスターノードに提供されるフィードバックの量を低減することによって、複数の送信ポイントからのフィードバックを管理するものである。その際、本明細書において提示する解決策は、任意の数の送信ポイントに対する改善されたマルチポイント送信を提供し、それによって容量を改善する。
【0005】
例示的な一実施形態は、マスターノードとデータをワイヤレスデバイスに送信する複数のスレーブノードとを備える通信ネットワークにおいて、複数のスレーブノードによって制御側マスターノードに提供されるフィードバックを管理する方法を含む。方法は、マスターノードによって、または複数のスレーブノードの1つによって実現されてもよい。方法は、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定することを含む。スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かの判定に応答して、方法は、フィードバック低減モードで動作しているときにスレーブノードによって提供されるフィードバックの量が、フルフィードバックモードで動作しているときにスレーブノードによって提供されるフィードバックの量よりも少ないように、スレーブノードによってマスターノードに提供されるフィードバックを管理する、フィードバック低減モードで動作することを更に含む。例示的な一実施形態では、方法がマスターノードで実現されたとき、方法は、マスターノードがスレーブノードに送るパケットを有しているか否かを判定することによって、スレーブノードがフィードバックを提供する必要があるか否かを判定する。マスターノードがスレーブノードに送るパケットを有する場合、マスターノードは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があると判定する。マスターノードが所定の時間間隔の間にスレーブノードに送るパケットを有さない場合、マスターノードは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要はないと判定する。別の例示的な実施形態では、方法がスレーブノードで実現されたとき、方法は、フィードバックモード信号をマスターノードから受信することによって、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定する。フィードバックモード信号は、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを示す。別の例示的な実施形態では、方法がスレーブノードで実現されたとき、方法は、スレーブノードが所定の時間間隔の間にパケットをマスターノードから受信している場合、またはスレーブノードのキューが空ではない場合、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があると判定し、スレーブノードが所定の時間間隔の間にパケットをマスターノードから受信していない場合、およびスレーブノードのキューが空の場合、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要がないと判定することによって、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定する。
【0006】
別の例示的な実施形態は、マスターノードとデータをワイヤレスデバイスに送信する複数のスレーブノードとを備える通信ネットワークにおいて、複数のスレーブノードによって制御側マスターノードに提供されるフィードバックを管理するように設定された装置を備える。装置は、マスターノードに、または複数のスレーブノードの1つに配設されてもよい。装置は、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定するように設定された、1つまたは複数の処理回路を備える。1つまたは複数の処理回路は、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かの判定に応答して、フィードバック低減モードで動作しているときにスレーブノードに対して提供されるフィードバックの量が、フルフィードバックモードで動作しているときにスレーブノードによって提供されるフィードバックの量よりも少ないように、スレーブノードによってマスターノードに提供されるフィードバックを管理する、フィードバック低減モードで装置が動作するように設定するように更に設定される。例示的な一実施形態では、装置がマスターノードに構成されているとき、1つまたは複数の処理回路は、マスターノードがスレーブノードに送るパケットを有しているか否かを判定することによって、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定する。マスターノードがスレーブノードに送るパケットを有する場合、マスターノードは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があると判定する。マスターノードが所定の時間間隔の間にスレーブノードに送るパケットを有さない場合、マスターノードは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要はないと判定する。別の例示的な実施形態では、装置がスレーブノードに構成されているとき、スレーブノードは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを示す、フィードバックモード信号をマスターノードから受信するように設定された、インターフェース回路を更に備える。1つまたは複数の処理回路は、フィードバックモード信号に応答して、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定する。別の例示的な実施形態では、装置がスレーブノードに構成されているとき、スレーブノードは、キューとインターフェース回路とを備える。この例示的な実施形態の場合、インターフェース回路が所定の時間間隔の間にパケットをマスターノードから受信している場合、またはキューが空ではない場合、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があると判定し、インターフェース回路が所定の時間間隔の間にパケットをマスターノードから受信していない場合、およびキューが空の場合、1つまたは複数の処理回路がフィードバックをマスターノードに提供する必要がないと判定することによって、1つまたは複数の処理回路は、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定する。
【0007】
別の例示的な実施形態は、マスターノードとデータをワイヤレスデバイスに送信する複数のスレーブノードとを備える通信ネットワークにおいて、複数のスレーブノードによって制御側マスターノードに提供されるフィードバックを管理するように処理回路を制御する、非一時的コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータプログラム製品を備える。コンピュータプログラム製品は、マスターノードの、または複数のスレーブノードの1つの処理回路で走らせたとき、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを処理回路に判定させる、ソフトウェア命令を備える。ソフトウェア命令は、処理回路で走らせたとき、更に、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かの判定に応答して、フィードバック低減モードで動作しているときにスレーブノードによって提供されるフィードバックの量が、フルフィードバックモードで動作しているときにスレーブノードによって提供されるフィードバックの量よりも少ないように、スレーブノードによってマスターノードに提供されるフィードバックを管理する、フィードバック低減モードで処理回路を動作させる。例示的な一実施形態では、処理回路がマスターノードに構成されているとき、コンピュータプログラム製品は、マスターノードの処理回路で走らせたとき、マスターノードがパケットをスレーブモードに送るパケットを有するか否かを処理回路に判定させる、ソフトウェア命令を更に備える。マスターノードがスレーブノードに送るパケットを有する場合、マスターノードは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があると判定する。マスターノードが所定の時間間隔の間にスレーブノードに送るパケットを有さない場合、マスターノードは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要はないと判定する。別の例示的な実施形態では、処理回路がスレーブノードに構成されているとき、コンピュータプログラム製品は、スレーブノードの処理回路で走らせたとき、フィードバックモード信号をマスターノードから受信することによって、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを処理回路に判定させる、ソフトウェア命令を更に備える。フィードバックモード信号は、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを示す。別の例示的な実施形態では、処理回路がスレーブノードに構成されているとき、コンピュータプログラム製品は、スレーブノードの処理回路で走らせたとき、スレーブノードが所定の時間間隔の間にパケットをマスターノードから受信している場合、またはスレーブノードのキューが空ではない場合、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があると判定し、スレーブノードが所定の時間間隔の間にパケットをマスターノードから受信していない場合、およびスレーブノードのキューが空の場合、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要がないと判定することによって、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを処理回路に判定させる、ソフトウェア命令を更に備える。
【0008】
別の例示的な実施形態は、マスターノードとデータをワイヤレスデバイスに送信する複数のスレーブノードとを備える通信ネットワークにおいて、複数のスレーブノードによって制御側マスターノードに提供されるフィードバックを管理するように設定された装置を備える。装置は、マスターノードに、または複数のスレーブノードの1つに配設される。装置は、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定するように設定された、1つまたは複数の処理モジュールを備える。1つまたは複数の処理モジュールは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かの判定に応答して、フィードバック低減モードで動作しているときにスレーブノードによって提供されるフィードバックの量が、フルフィードバックモードで動作しているときにスレーブノードによって提供されるフィードバックの量よりも少ないように、スレーブノードによってマスターノードに提供されるフィードバックを管理する、フィードバック低減モードで装置が動作するように設定するように更に設定される。例示的な一実施形態では、装置がマスターノードに構成されているとき、1つまたは複数の処理モジュールは、マスターノードがスレーブノードに送るパケットを有しているか否かを判定することによって、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定する。マスターノードがスレーブノードに送るパケットを有する場合、マスターノードは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があると判定する。マスターノードが所定の時間間隔の間にスレーブノードに送るパケットを有さない場合、マスターノードは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要はないと判定する。別の例示的な実施形態では、装置がスレーブノードに構成されているとき、スレーブノードは、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを示す、フィードバックモード信号をマスターノードから受信するように設定された、インターフェースモジュールを更に備える。そのため、1つまたは複数の処理モジュールは、フィードバックモード信号に応答して、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定する。別の例示的な実施形態では、装置がスレーブノードに構成されているとき、スレーブノードは、キューモジュールとインターフェースモジュールとを備える。この例示的な実施形態の場合、1つまたは複数の処理モジュールは、インターフェースモジュールが所定の時間間隔の間にパケットをマスターノードから受信している場合、またはキューモジュールが空ではない場合、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があると判定し、インターフェースモジュールが所定の時間間隔の間にパケットをマスターノードから受信していない場合、およびキューモジュールが空の場合、1つまたは複数の処理モジュールがフィードバックをマスターノードに提供する必要がないと判定することによって、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】例示的なマルチポイント送信システムを示す図である。
図2】閉ループ制御システムを示す一般的なブロック図である。
図3】例示的な一実施形態によるマルチポイント送信システムを示すブロック図である。
図4】例示的な一実施形態によるフィードバック管理方法を示す図である。
図5】例示的な一実施形態によるマルチポイント送信システムのマスターノードおよびスレーブノードを示すブロック図である。
図6】別の例示的な実施形態によるマルチポイント送信システムのマスターノードおよびスレーブノードを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において提示する解決策は、マルチポイント送信システムに存在する可能性がある多量のフィードバック、特に多数の送信ポイントを含むものと関連付けられる、多数の課題を解決する。本明細書に開示するスプリットベアラフロー制御には、一般的フロー制御、ならびにデータフロー制御の両方が関与する。この解決策の詳細について記載する前に、最初に、マルチポイント送信および関連システムに関するいくつかの基本的情報を以下に提供する。
【0011】
受信機が多数の送信ポイントによって送信されるデータを受信する、5Gシステムに関して予測されるような大量マルチポイント送信システムでは、ワイヤレスインターフェースを通じて送信するため、関与する送信ポイントそれぞれに、このデータの全てまたは部分へのアクセスを付与する必要がある。ここで、異なる送信ポイントは、異なるデータ、ダイバーシティ利得のための同じデータ、またはこれらの代替例の混合を送信してもよいことに留意すべきである。多くの適用例において、いくつかの送信ポイントからのデータは、例えばデータがビデオデータであるとき、他の送信ポイントから同時に送信されるデータと密接に関係していることがある。この場合、受信デバイス、例えばUEは、ビデオの特定の部分に関して、(例えば、誤差のある所定の限界内まで)同時に異なる送信ポイントから送信されたデータを全て受信する必要がある。そうでなければ、ビデオをUEで適正に表示することができない。
【0012】
また、5G技術はウルトラリーン送信の概念を含むことにも留意されたい。そのため、ユーザデータは、ピギーバック方式で、制御チャネルデータおよびシステム情報を保持してもよい。この理由により、マルチポイント送信パスをアクティブに保つため、継続的な送信が必要とされる場合が多い。
【0013】
図1は、3G広帯域符号分割多元接続(WCDMA)システムに関連して、例示的なマルチポイント送信システムを示している。4Gおよび5Gにおける類似のアーキテクチャには、無線アクセスネットワーク(RAN)およびコアネットワーク(CN)の両方からのノードが関与する。以下、かかるマルチポイント送信システムの動作に関して使用される専門用語について説明する。
【0014】
最初に、ダイナミックプロセスの多数の表現について紹介する。ダイナミックプロセスは、出力がメモリを有し、したがって現在の入力信号だけではなく、過去の入力および出力にも依存するものである。最も基本的なダイナミックプロセスは、次の微分方程式によって説明することができる線形のものである。
(N)(t)+a(N-1)(t)+…+a=b(M)(t)+…+bu(t) (1)
式中、y(t)は出力信号を表し、u(t)は入力信号を表し、tは時間を表し、(N)は時間に対するN階微分を表し、aおよびbは、k=1,…,Nおよびl=1,…,Mである定数パラメータを表す。式(1)は、1つの入力信号および1つの出力信号を含むN階微分方程式である。単純にするため、以下の説明はこの単一入力単一出力の式を基本とするが、以下は、複数入力および/または複数出力へと簡単に拡張させられることが、当業者には認識されるであろう。
【0015】
式(1)のラプラス変換を行い、初期値をゼロにすることによって、次の伝達関数H(s)が得られる。sはラプラス変換変数を表す。
したがって、出力信号のラプラス変換Y(s)と入力信号のラプラス変換U(s)との関係は、次式である。
Y(s)=H(s)U(s) (3)
式中、このプロセスの極(p,k=1,…,N)は、A(s)=0によって与えられてもよい。単純にするため、ここでは、複素平面の左半分にある全ての極を用いる厳密に安定した(例えば、開ループ)プロセスについてのみ検討する。しかしながら、一般に、極は実または複素共役対である。ダイナミックプロセスの性質は、複素数値の確率密度関数Y(jω)、H(jω)、およびU(jω)に関連して(ωはω=2πfを満たす角周波数を表し、fはHz単位の周波数を表す)、周波数領域でも検討されることが認識されるであろう。
【0016】
図2は、式(3)と関連付けられる閉ループ制御システムの一般的なブロック図を示している。図2では、F(s)はフィードバック利得を表し、W(s)は外乱を、例えばノイズを表す。したがって、閉ループシステムは次式によって表すことができる。
Y(s)=W(s)+H(s)F(s)(Yref(s)-Y(s)) (4)
これによって次式が得られる。
式(5)は、参照信号Yref(s)および外乱W(s)の出力に対する影響を示している。制御システムの閉ループ帯域幅ωCLは、次式によって表すことができる。
制御システムの閉ループ静的誤差は、次式によって得ることができる。
制御システムの静的外乱除去は静的感度関数によって得ることができる。
一方、制御システムの動的外乱除去は感度関数によって得ることができる。
制御システムの補完的な感度関数T(jω)=1-S(jω)は、モデル化されていない力学に関して制御システムの頑健性を決定する。
【0017】
図1~2および式(1)~(9)と関連付けられる考察は、マルチ送信ポイントシステムの1つの送信ポイント、およびかかる送信ポイントの制御に対応することが認識されるであろう。送信ポイントの数が増加するにつれて、マルチ送信ポイントシステムの制御の複雑さが増加することが認識されるであろう。
【0018】
マルチポイント送信に関する1つの関心事には、現在の4Gシステムと比べて5Gシステムの場合の、ユーザ数の予測される増加、またしたがってデータ/フィードバック量の増加が関与する。かかるフィードバックは、各ベアラの各送信ノードにおいて送信バッファのレベルを制御するのを助ける。特に、フィードバックは、空のワイヤレス送信バッファが許容可能なスタベーション(starvation)確率閾値を上回るリスクを望ましくなく増加させるであろうドウェル時間である、スタベーションドウェル時間と、送信バッファと関連付けられたオーバーフローが許容可能なオーバーフロー確率閾値を上回るリスクを望ましくなく増加させるであろうドウェル時間である、オーバーフロードウェル時間とを防ぐのを助ける。予測されるユーザ数のこの大幅な増加は、式(1)~(9)などによって説明されるような、コントローラアルゴリズム例の数も劇的に増加するであろうことを意味する。特に、大幅な増加は、スプリットベアラフロー制御アルゴリズム例の量が著しく増加することを意味する。スプリットベアラフローコントローラはフィードバックの原理に基づくので、ユーザ数の予測される増加は、送信ノードと制御側マスターノードとの間でシグナリングする必要がある、フィードバック情報の量の増加を必然的にもたらす。かかる増加は、マルチポイント送信システムを制御するのに使用される制御システム全体の複雑さに望ましくない影響を与え得る。更に、本質的に、フィードバック情報は求められる接続のレイテンシの少なくとも2倍の速さ(好ましくは実際上、少なくとも5~10倍の速さ)でシグナリングしなければならないので、低レイテンシ(即ち、ラウンドトリップ遅延)の要件は、この増加したフィードバック量と関連付けられる複雑さを悪化させる。したがって、マルチポイント送信システムに関する新しい解決策が求められている。
【0019】
本明細書において提示する解決策は、マルチポイント送信システムによって提供されるフィードバックを管理する、マルチポイント送信システムに対する制御を提供する。その目的のため、本明細書において提示する解決策は、フィードバックを非活性化/排除すること(例えば、フィードバックが不要のとき)によって、あるいは例えばシグナリングのオーバーヘッドを低減すること、および/またはフィードバック情報の量/サイズを低減することにより、フルフィードバックモードで提供されてきたであろう量に対してフィードバックの量を低減することによって、フィードバックを低減する。
【0020】
考察を単純にするため、以下、スプリットベアラフロー制御アルゴリズムがベアラごとのマスターノードで実現される、マスターノードおよびスレーブノードを含む複数の送信ノードに関連して、本明細書において提示する解決策について記載する。スプリットベアラ制御アルゴリズムは多数の送信スレーブノードに接続され、ノードはそれぞれ、ベアラごとのキューと、キューの内容を送信するためのワイヤレスインターフェース接続とを備える。解決策は、単一のスレーブノードによって提供されるフィードバックに関連して提示されるが、本明細書において提示する解決策は、マスターノードと通信している複数のスレーブノードそれぞれに適用されてもよいことが認識されるであろう。「マスター」ノードおよび「スレーブ」ノードという用語は、本明細書で使用するとき、マスターノードおよびスレーブノードと従来呼ばれるノードを表すことができるが、本明細書で使用するとき、「マスターノード」という用語は、本明細書において提示するタイミング制御の解決策と関連付けられる、関連スレーブノードに対するマスター制御の機能および関連付けられた機器を提供する通信ネットワークにおける実体を表し、「スレーブノード」という用語は、本明細書において提示するタイミング制御の解決策と関連付けられる、スレーブ制御の機能および機器を提供する通信ネットワークにおける実体を表すことが、当業者には認識されるであろう。したがって、本明細書で参照されるマスターノードは、サービングセル基地局に常駐してもよいが、それは必須ではない。更に、各マスターおよびスレーブノードは異なるネットワークノードに常駐してもよいが、それが必須ではないことが認識されるであろう。いくつかの実施形態では、例えば、マスターノードと少なくとも1つのスレーブノードは両方とも、無線基地局に構成されてもよい。一般に、本明細書において提示する解決策は、各スレーブノードがマルチポイント送信システムのうち1つの送信ポイントを表すものと仮定する。更に、例えば5Gインターフェース(例えば、3GPPまたはWifi)を介した、マスターノードとスレーブノードとの接続、およびこのインターフェースは、ダウンリンク(マスターからスレーブ)およびアップリンク(スレーブからマスター)における特定の遅延と関連付けられる。
【0021】
図3は、マスターノード200と複数のスレーブノード300とを備える、例示的なマルチポイント通信システム5を示している。スレーブノード300はそれぞれ、マルチ送信ポイントシステムの送信ポイントを表し、したがって各スレーブノード300は、ワイヤレスデータをワイヤレス受信機に、例えば、移動デバイスまたは図1に示されるようなUEに送信する。マスターノード200は、個々の通信チャネル10、例えばバックホールチャネルを介してスレーブノード300と通信する。マスターノード200とスレーブノード300との間の通信チャネル10は、ワイヤレスおよび/またはワイヤードバックホール通信チャネルを含んでもよいことが認識されるであろう。更に、図3に示されるように、マスターノード200は、スレーブノード300のうち1つもしくは複数と直接通信してもよく、または中間ノード290を介してスレーブノード300のうち1つもしくは複数と通信してもよく、その場合、通信チャネル10aはマスターノード200と中間ノード290との間であり、通信チャネル10bは中間ノード290とスレーブノード300との間である。マスターノード200とスレーブノード300との間の通信を容易にするのに、中間ノード290が使用される場合、中間ノード290は、更に後述する情報、例えばスレーブノード300から(もしくはマスターノード200から)マスターノード200への(もしくはスレーブノード300への)フィードバック情報を伝達する。
【0022】
本明細書において提示する解決策は、スレーブノード300によってマスターノード200に提供されるフィードバックを管理する。その目的のため、本明細書において提示する解決策は、スレーブノードによって提供されるフロー制御の機能性を管理する。かかるフロー制御の機能性としては、フィードバック情報の測定、フィードバック情報のシグナリング、および/またはフィードフォワード情報のシグナリング、例えば、マスターノードとスレーブノードとの間の内側制御ループ100(図5を参照)と関連付けられるフィードバックおよびフィードフォワード情報が挙げられるが、それらに限定されない。かかるフロー制御の機能性と関連付けられるシグナリングは、フィードバックの原則によって支配され、予め指定されたパケットドウェル時間(マスターノードとスレーブノードとの間の合計ラウンドトリップタイムに対するキュードウェル時間遅延の寄与に等しい)を満たすように、スレーブノード300の送信キューを制御する。特に、支配的なフィードバックの原則は、(1)マスターノード200とスレーブノード300との間のデータループにおける他の遅延が、求められるドウェル時間よりも短い(また好ましくは、それよりも大幅に短い)ことと、(2)キューのドウェル時間が、求められるドウェル時間の少なくとも2倍の速度で、また良好な実用性能のために、より一般的には5~10倍の速度で測定(例えば、サンプリング)されるべきであることを要する。例えば、求められるドウェル時間が1msの場合、フィードバックの原則は、制御ループの他の遅延成分が1msよりも大幅に短く、ドウェル時間のサンプリングが一般的には0.1msよりも高速であることを要する。これらの要件を、またマルチポイント送信システムと関連付けられるフィードバック負荷の増加を所与として、スレーブノード300によってマスターノード200に提供されるフィードバックの量を低減するのが望ましいことは容易に明白となる。
【0023】
スレーブノード300によってマスターノードに提供されるフィードバックを管理するため、本明細書において提示する解決策は、フィードバックの量を従来の解決策に対して低減する。図4は、ノードにおいて、例えばマスターノード200および/またはスレーブノード300のいずれかにおいて実現されてもよい、1つの例示的なフィードバック低減方法400を示している。例示的な方法400は、スレーブノード300がフィードバックをマスターノード200に提供する必要があるか否かを判定するノードを含む(ブロック410)。この判定に応答して、ノードは、フィードバック低減モードで動作しているときにスレーブノードによって提供されるフィードバックの量が、フルフィードバックモードで動作しているときにスレーブノード300によって提供されるフィードバックの量よりも少ないように、スレーブノード300によってマスターノード200に提供されるフィードバックを管理する、フィードバック低減モードで動作する(ブロック420)。換言すれば、スレーブノード300がフィードバックをマスターノード200に提供する必要があるか否かに応答して、ノードは、スレーブによって提供されるフィードバックの量を、フルフィードバックモードに対して低減する。
【0024】
上述したように、方法400は、マスターノード200および/またはスレーブノード300によって実現されてもよい。以下、最初にマスターノードの実現に関する詳細に焦点を当て、次にスレーブノードの実現に関する詳細に焦点を当てる。これらの考察を容易にするため、図5は、例示的な一実施形態によるマルチポイント送信システムのマスターノードおよびスレーブノードのブロック図を示している。特に、図5のブロック図は、内側制御ループ100と各スレーブノード300に対する外部インターフェース接続350とを介して、複数のスレーブノード300に接続されたマスターノード200を示しており、中でも特に、インターフェース接続350は、スレーブノード300からマスターノード200へのフィードバックパスを提供してもよい。フィードバックは常に、マスターノードとスレーブノードとの間のインターフェースを介して提供され、このインターフェースは、インターフェース接続350、および/または内側ループ100と関連付けられたインターフェースであってもよいことが認識されるであろう。
【0025】
最初に、マスターノード200がフィードバック管理方法400を実現する、例示的な実施形態について検討する。その目的のため、マスターノード200は、1つまたは複数の処理回路210と、インターフェース回路220と、メモリ230と、内側ループ制御回路240とを備えてもよい。内側ループ制御回路240は、マスターノード200の内側ループ回路構成(図示なし)を制御し、したがってスレーブノード300の内側ループ回路構成345も制御することが認識されるであろう。
【0026】
マスターノード200が方法400を実現する場合、1つまたは複数の処理回路210は、スレーブノードがフィードバックをマスターノードに提供する必要があるか否かを判定する。例示的な一実施形態では、1つまたは複数の処理回路210は、マスターノード200がスレーブノード300に送るパケットを有しているか否かを判定することによって、スレーブノード300がフィードバックをマスターノード200に提供する必要があるか否かを判定する。マスターノード200がスレーブノード300に送るパケットを有する場合、処理回路210は、スレーブノード300がフィードバックをマスターノード200に提供する必要があると判定する。しかしながら、マスターノード200が所定の時間間隔の間にスレーブノード300に送るパケットを有さない場合、処理回路210は、スレーブノード300がフィードバックをマスターノード200に提供する必要はないと判定する。
【0027】
処理回路210が、スレーブノード300がフィードバックをマスターノード200に提供する必要がないと判定した場合、処理回路210は、マスターノード200によって実現されるフロー制御の機能性を非活性化する(例えば、オフにする)ことによって、フィードバックの量を低減し、それによってフィードバックを排除する、フィードバック低減モードを実現してもよい。例えば、処理回路210はメモリ230に、マスターノード200の内側ループ制御回路240の全ての状態を格納、および/またはスプリットベアラ制御のコンテキストとコードをメモリ230に保存してもよい。処理回路210は更に、マスターノード200のフロー制御の機能性を「オフ」に切り替えてもよく、これは、インターフェース回路220による、内側ループ制御回路240と関連付けられたフィードバック情報、フィードバックシグナリング、および/またはフィードフォワードシグナリングの受信を停止すること、ならびに例えば、内側ループ制御回路240の動作と、マスターノードおよびスレーブノードにおける任意の関連する内側ループ回路構成の動作とを停止することによって、内側制御ループ100の動作を停止することに役立つ。内側制御ループ100の動作を停止することによって、処理回路210は、スプリットベアラシグナリングと同じインターフェースを通じて、内側制御ループ100と関連付けられるフィードバックおよびフィードフォワードシグナリング情報を受信するのを中止する。かかるフロー制御の機能性が非活性化された場合、処理回路210は、一番最近受信したフィードバック情報の使用を継続してもよい。処理回路210は更に、スレーブノード300のキュー330が空であることを示す内部フラグを設定してもよい。更に、処理回路210は、例えばインターフェース回路220を介して、非活性化制御信号をスレーブノードに送って、スレーブノード300によって実行されるフロー制御の機能性を非活性化してもよい。
【0028】
処理回路210が、マスターノード200のフロー制御の機能性を非活性化した後で、スレーブノード300がフィードバックをマスターノード200に提供する新たな必要があると判定した場合、処理回路210は、マスターノード200のフロー制御の機能性を再活性化してもよい。例えば、処理回路210は、内側ループ制御回路240の全ての保存された状態をメモリ230から取得することによって、フロー制御の機能性を再活性化してもよい。処理回路210は、任意に、検索した状態にしたがって、例えばインターフェース回路220による、内側ループ制御回路240と関連付けられるフィードバック情報、フィードバックシグナリング、および/またはフィードフォワードシグナリングの受信を再開してもよく、検索した状態にしたがって、内側ループ制御回路240の動作を再開してもよい。この場合、処理回路210は、任意に、インターフェース回路220を介して活性化制御信号をスレーブノード300に送って、フィードバックをマスターノード200に提供すること、またしたがってスレーブノード300のフロー制御の機能性を活性化/再活性化することの新たな必要性を、スレーブノード300に対して示してもよい。
【0029】
必須ではないが、処理回路210は、インターフェース回路220を介してフィードバックモード信号をスレーブノードに送ってもよい。フィードバックモード信号は、スレーブノード300に対して、スレーブノード300がフィードバック低減モードで動作するべきであることを示す。いくつかの実施形態では、フィードバックモード信号は更に、スレーブノード200に対して、スレーブノード300がマスターノード200に提供されるフィードバックの量をどのように低減すべきかを示してもよい。
【0030】
次に、スレーブノード300がフィードバック管理方法400を実現する、例示的な実施形態について検討する。その目的のため、各スレーブノード300は、1つまたは複数の処理回路310と、インターフェース回路320と、キュー330と、フィードバック回路340とを備えてもよい。詳細を明示的には示さず、または本明細書において更に考察しないが、各スレーブノード300はまた、内側ループ回路構成(図示なし)およびマスターノード200の内側ループ制御回路240と共に働いて内側制御ループ100を形成する、内側ループ回路構成345を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、スレーブノード300が方法400を実現する場合、スレーブノード300は、受信した信号に応答して、フィードバックをマスターノード200に提供する必要があるか否かを判定する。例えば、インターフェース回路320は、スレーブノード300がフィードバックをマスターノード200に提供する必要があるか否かを示す、フィードバックモード信号をマスターノード200から受信してもよい。処理回路310は次に、受信したフィードバックモード信号に応答して、スレーブノード300がフィードバックを提供する必要があるか否かを判定する。いくつかの実施形態では、フィードバックモード信号は、マスターノード200によって送られた非活性化信号または活性化信号を含んでもよい。
【0032】
他の実施形態では、スレーブノード300は、フィードバックをそのまま提供する必要があるか否かを判定してもよい。例えば、処理回路310は、インターフェース回路320とキュー330の内容とを評価してもよい。インターフェース回路320が、所定の時間間隔の間にマスターノード200から受信したパケットを有する場合、またはキューが空ではない場合、処理回路310は、スレーブノード300がフィードバックをマスターノード200に提供する必要があると判定する。インターフェース回路320が所定の時間間隔の間にパケットをマスターノード200から受信しておらず、キューが空である場合、処理回路310は、スレーブノード300がフィードバックをマスターノード200に提供する必要はないと判定する。
【0033】
スレーブノード300がどのように判定を行うかにかかわらず、スレーブノード300は、この判定に応答してフィードバックを管理する。スレーブノード300が、フィードバックを提供する必要はないと判定すると、処理回路310は、フィードバックを事実上排除することによってフィードバックを管理する。その目的のため、処理回路310は、スレーブノード300によって実現されるフロー制御の機能性を、例えばフィードバック情報の測定、フィードバック情報のシグナリング、および/またはフィードフォワード情報のシグナリングを非活性化してもよい。スレーブノード300が後で、フィードバック情報を提供する必要があると判定した場合、処理回路310は続いて、スレーブノード300によって実現されるフロー制御の機能性を再活性化してもよい。例えば、インターフェース回路320が活性化制御信号を受信した場合、あるいは処理回路310がキュー330内でパケットを検出するか、またはインターフェース回路320がパケットをマスターノード200から受信していることを検出した場合、処理回路310は、スレーブノード300によって実現されるフロー制御の機能性を活性化(または再活性化)してもよい。
【0034】
スレーブノード300が、フィードバックをマスターノード200に提供する必要があると判定すると、処理回路は、フルフィードバックモードで提供されていたであろう量に比べて、提供されるフィードバックの量を低減することによって、フィードバックを管理する。概して、目標は、原則的なフィードバック制御の性質を満たしたままであるようにして、マスターノード200に提供されるフィードバックの量を低減することである。例えば、スレーブノード300は、少なすぎるドウェル時間および多すぎるドウェル時間を同時に回避するように、予め指定された間隔内でドウェル時間を保つのに十分なままである、低減された量のフィードバックを提供してもよい。少なすぎるドウェル時間は、空のワイヤレス送信バッファが許容可能なスタベーション確率閾値を上回るリスクを望ましくなく増加させるであろうドウェル時間である、スタベーションドウェル時間を表す。多すぎるドウェル時間は、送信バッファと関連付けられたオーバーフローが許容可能なオーバーフロー確率閾値を上回るリスクを望ましくなく増加させるであろうドウェル時間である、オーバーフロードウェル時間を表す。
【0035】
一実施形態では、処理回路310は、粗量子化フィードバック情報を判定するようにフィードバック回路340を設定することによって、フィードバック低減モードで動作するように、スレーブノード300を設定してもよい。処理回路310は次に、粗量子化フィードバック情報をマスターノード200に送るように、インターフェース回路330を設定する。かかる粗量子化フィードバック情報は、フルフィードバックモードに対応するフィードバック情報の不明確な推定値を表す。したがって、かかる粗量子化フィードバック情報によって提供されるフィードバックの量は、フルフィードバックモードの場合に提供されていたであろう量よりも少ない。一実施形態では、フィードバック回路340は、フルフィードバックモードの場合のフィードバックを表す、キュー330におけるデータ量を判定することによって、粗量子化フィードバック情報を判定する。フィードバック回路340は次に、キュー330が格納できるデータの最大量を表すキューの上限のどのパーセンテージが、キュー330の現在の内容を表すかを判定する。フィードバック回路340は、このパーセンテージを粗量子化フィードバック情報として出力してもよい。あるいは、フィードバック回路340は、判定されたパーセンテージを最も近い全パーセンテージに丸め、この丸められたパーセンテージを粗量子化フィードバック情報として出力してもよい。更に別の代替例では、フィードバック回路340は、判定されたパーセンテージを複数の可能なパーセンテージ範囲のうち最も近いパーセンテージ範囲に丸め、この丸められたパーセンテージを粗量子化フィードバック情報として出力してもよい。例えば、ほぼ同じサイズの10個の可能な範囲、例えば0%~10%、10.01%~20%、…90.01%~100%があってもよい。他のパーセンテージ範囲が可能であり、パーセンテージ範囲は様々なサイズのものであってもよいことが認識されるであろう。いずれの場合も、粗量子化フィードバックをマスターノード200に提供することによって、スレーブノードは、かかるフィードバックから得られるドウェル時間を所望の限界内に保ちつつ、提供されるフィードバックの量を低減する。
【0036】
別の例示的な実施形態では、処理回路310は、スレーブノード300に複数のベアラに関するフィードバックをマスターノード200に提供させることによって、フィードバック低減モードで動作するように、スレーブノード300を設定してもよい。かかる方策は、これらのベアラ全てに関するフィードバックを送るのに求められるオーバーヘッドの量を低減し、したがって提供されるフィードバックの量を低減する。この実施形態では、インターフェース回路320は、スレーブノード300と関連付けられた1つまたは複数のベアラに関するフィードバックを収集するように設定される。処理回路310は、収集されたフィードバックをコンパイルして複合フィードバックメッセージとし、次に、複合フィードバックメッセージをマスターノード200に送るようにインターフェース回路320を設定する。その際、複数のベアラに関して提供されるフィードバックの合計量が低減されるが、その低減は、例えば、ヘッダに関するシグナリングオーバーヘッドの低減によるものである。より詳細には、収集されたフィードバックをコンパイルして、個々にヘッダをそれぞれ要するであろう複合フィードバックメッセージにすることによって、スレーブノード300が収集されたフィードバック情報それぞれを別個に送る必要がなくなる。このように、この実施形態は、伝達されるヘッダ情報の量を低減することによって、フィードバックの量を少なくとも低減する。
【0037】
別の例示的な実施形態では、処理回路310は、エラー信号に関連してフィードバック情報を表すようにフィードバック回路340を設定することによって、フィードバック低減モードで動作するようにスレーブノード300を設定する。例えば、フィードバック回路340は、インターフェース回路320によって受信されるパケットにおける予測情報と受信パケットにおける実際の情報との差から、フィードバックの誤差を推定してもよい。処理回路310は次に、推定誤差をマスターノード200に送るように、インターフェース回路を設定する。その際、処理回路310は、フィードバックのダイナミックレンジを低減し、したがってシグナリングオーバーヘッドも低減する。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する様々な要素はある種の回路を含むことが認識されるであろう。例えば、マスターノード200およびスレーブノード300のプロセッサ、インターフェース、メモリ、内側ループコントローラ、キュー、フィードバック、および/または内側ループ要素は、例えば、プロセッサ回路、インターフェース回路、メモリ回路、内側ループ制御回路、キュー回路、フィードバック回路、内側ループ回路構成などとして実現されてもよい。そのため、マスターノード200は、図5に示されるような、1つまたは複数の処理回路210、インターフェース回路220、メモリ回路230、および内側ループ制御回路240を備える、マスターノード回路200を含んでもよい。同様に、図5のスレーブノード300は、図5に示されるような、1つまたは複数の処理回路310、インターフェース回路320、キュー回路330、フィードバック回路340、および内側ループ回路構成345を備える、スレーブノード回路300を含んでもよい。これらの回路はそれぞれ、特定用途向け集積回路(ASIC)を含む、コントローラもしくはプロセッサで実行される、ハードウェアおよび/またはソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)の形で具体化されてもよい。
【0039】
また、他の実施形態では、本明細書に開示する様々な要素は、記載した機能、例えば方法400を実行するように設定された、ある種のモジュールを含むことが認識されるであろう。例えば、マスターノード200およびスレーブノード300のプロセッサ、インターフェース、メモリ、内側ループコントローラ、キュー、フィードバック、および/または内側ループ要素は、例えば、処理モジュール、インターフェースモジュール、メモリモジュール、内側ループ制御モジュール、キューモジュール、フィードバックモジュール、内側ループモジュールなどとして実現されてもよい。そのため、マスターノード200は、図6に示されるような、1つまたは複数の処理モジュール250、インターフェースモジュール260、メモリモジュール270、および内側ループ制御モジュール280を備える、マスターノードモジュール200を含んでもよい。同様に、スレーブノード300は、図6に示されるような、1つまたは複数の処理モジュール360、インターフェースモジュール370、キューモジュール380、フィードバックモジュール390、および内側ループモジュール395を備える、スレーブノードモジュール300を含んでもよい。
【0040】
本明細書において提示する解決策は、当然ながら、解決策の本質的特性から逸脱することなく、本明細書に具体的に記述したものとは別の方式で実施されてもよい。本明細書の実施形態は、全ての点において限定ではなく例示として見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲の意味および等価性の範囲内の全ての変更はそれに包含されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6