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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
F02M25/08 311E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019239612
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107704
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安食 翔悟
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-240683(JP,A)
【文献】特開2009-264273(JP,A)
【文献】米国特許第04454849(US,A)
【文献】実開昭58-116751(JP,U)
【文献】特開昭56-069455(JP,A)
【文献】特開昭60-040773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
活性炭が充填される充填室であって、活性炭を通過させない一方で蒸発燃料を通過させる一対のフィルタ及び壁面にて区画される充填室と、
1つの前記充填室内における活性炭が充填される空間に配置される少なくとも2つの内部部品を備える内部構造体と、を備え、
前記少なくとも2つの内部部品は、前記1つの充填室における蒸発燃料の流れ方向の異なる位置であって、かつ、前記流れ方向と直交する平面に投影したときに少なくとも一部が異なる位置に配置され
前記少なくとも2つの内部部品は、前記流れ方向の長さが該流れ方向と直交する方向の長さよりも大きい部分を含む、キャニスタ。
【請求項2】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
活性炭が充填される充填室と、
前記充填室内における活性炭が充填される空間に配置される少なくとも2つの内部部品を備える内部構造体と、を備え、
前記少なくとも2つの内部部品は、前記充填室における蒸発燃料の流れ方向の異なる位置であって、かつ、前記流れ方向と直交する平面に投影したときに少なくとも一部が異なる位置に配置され
前記少なくとも2つの内部部品は、前記流れ方向と直交する平面による断面形状が十字型である、キャニスタ。
【請求項3】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
活性炭が充填される充填室と、
前記充填室内における活性炭が充填される空間に配置される少なくとも2つの内部部品を備える内部構造体と、を備え、
前記少なくとも2つの内部部品は、前記充填室における蒸発燃料の流れ方向の異なる位置であって、かつ、前記流れ方向と直交する平面に投影したときに少なくとも一部が異なる位置に配置され
前記少なくとも2つの内部部品は、前記流れ方向に隣り合って配置されている、キャニスタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記少なくとも2つの内部部品は、板状の形状である、キャニスタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記少なくとも2つの内部部品のうちの少なくともいずれか1つは、前記充填室を構成する内壁面に向かって突出しており、前記内部構造体の前記流れ方向と交差する方向に関する移動範囲を制限する規制部を備える、キャニスタ。
【請求項6】
請求項5に記載のキャニスタであって、
前記規制部は、前記少なくとも2つの内部部品のうちの少なくともいずれか1つにおける当該規制部の周囲の部分と比較して前記内壁面に向かって突出する部分である、キャニスタ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記少なくとも2つの内部部品は、一つの部材として構成されている、キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンクには、蒸発した燃料の大気放出を防ぐキャニスタが装着される。キャニスタは、蒸発燃料を活性炭に吸着させると共に、吸引した空気により活性炭から燃料を脱離してパージを行い、エンジンに供給する。
【0003】
キャニスタに用いられる活性炭は、ペレット状や粒状に形成されてキャニスタの充填室内に充填され、隙間の発生を抑制するためにスプリング等で加圧される。特許文献1には、キャニスタ内の通気抵抗を抑制する目的で、充填室内に複数の棒状部を配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2018-96254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される構成では、棒状部の外周面の近傍では通気抵抗が大きく低下するものの、棒状部から離れた位置では通気抵抗が低下しない。その結果、棒状部から離れた位置の活性炭の利用効率が、棒状部に近い位置の活性炭の利用効率よりも小さくなっている。よって、キャニスタに充填された活性炭の利用効率をさらに高める余地がある。
【0006】
本開示の目的は、活性炭の利用効率の向上を図ることができるキャニスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、充填室と、内部構造体と、を備える。充填室は、活性炭が充填される。内部構造体は、充填室内における活性炭が充填される空間に配置される少なくとも2つの内部部品を備える。上記少なくとも2つの内部部品は、充填室における蒸発燃料の流れ方向の異なる位置であって、かつ、流れ方向と直交する平面に投影したときに少なくとも一部が異なる位置に配置される。
【0008】
このような構成であれば、充填室内における内部部品の表面近傍において、活性炭の充填密度の低い領域が形成される。充填密度の低い領域は、通気抵抗が小さく、蒸発燃料が流れやすい。そして、上述したように少なくとも2つの内部部品が配置されるため、蒸発燃料の流れやすい領域(以下、疎である領域と記載する)と、内部部品の表面から遠く蒸発燃料が相対的に流れにくい領域(以下、密である領域と記載する)とが、蒸発燃料の流れ方向に並ぶこととなる。その結果、疎である領域を流れた蒸発燃料が密である領域に流れ込みやすくなり、密である領域の活性炭の利用効率を高めることができる。よって、充填室内に充填された活性炭全体としての利用効率の向上を図ることができる。
【0009】
上述したキャニスタにおいて、少なくとも2つの内部部品は、板状の形状であってもよい。このような構成であれば、内部部品の比表面積を大きくすることができるので、疎である領域を広く形成しつつ、活性炭の充填量が制限されてしまうことを抑制できる。
【0010】
上述したキャニスタにおいて、少なくとも2つの内部部品は、流れ方向の長さが流れ方向と直交する方向の長さよりも大きい部分を含んでもよい。このような構成であれば、内部部品の長手方向が流れ方向に沿うように内部部品が配置されるため、蒸発燃料の流れが内部部品によって阻害されてしまうことを抑制できる。
【0011】
上述したキャニスタにおいて、上記少なくとも2つの内部部品は、流れ方向と直交する平面による断面形状が十字型であってもよい。このような構成では、充填室内の広い範囲に疎となる領域を形成することができる。
【0012】
上述したキャニスタにおいて、上記少なくとも2つの内部部品のうちの少なくともいずれか1つは、充填室を構成する内壁面に向かって突出しており、上記内部構造体の上記流れ方向と交差する方向に関する移動範囲を制限する規制部を備えてもよい。このような構成であれば、内部構造体が充填室の内部において広い範囲で移動してしまうことを抑制でき、活性炭と内部構造体の衝突による活性炭の破損を防ぐことができる。
【0013】
上述したキャニスタにおいて、上記少なくとも2つの内部部品は、一つの部材として構成されていてもよい。このような構成であれば、少なくとも2つの内部部品を充填室内に配置する際に1つの部材を配置すればよくなるため、製造工程を簡易なものとすることができる。
【0014】
上述したキャニスタにおいて、上記少なくとも2つの内部部品は、流れ方向に隣り合って配置されていてもよい。このような構成であれば、疎である領域として隣り合う部分が形成されるため、通気抵抗の高度な低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態のキャニスタであって、充填室及びポートを断面として示す正面図である。
図2図2Aが第1実施形態のキャニスタの斜視図であり、図2B図2Aの充填室及びポートを断面として示す斜視図であり、図2C図2Bとは異なる視点のキャニスタの斜視図である。
図3】第1実施形態の内部構造体の斜視図である。
図4】第1実施形態の内部構造体と充填室の配置を示す模式的な断面図であって、図4Aが左側面図であり、図4Bが右側面図である。
図5】第2実施形態のキャニスタであって、充填室及びポートを断面として示す正面図である。
図6】第2実施形態の内部構造体と充填室の配置を示す模式的な断面図である。
図7】第2実施形態の内部構造体の斜視図である。
図8】第3実施形態のキャニスタの模式的な断面図である。
図9】第3実施形態の内部構造体の斜視図である。
図10】第4実施形態のキャニスタの模式的な断面図である。
図11】第4実施形態の内部構造体の正面図である。
図12】第4実施形態の内部構造体の斜視図である。
図13】第5実施形態のキャニスタの模式的な断面図である。
図14】第5実施形態の内部構造体の斜視図である。
図15】第6実施形態のキャニスタの模式的な断面図である。
図16】第6実施形態の内部構造体の斜視図である。
図17】第7実施形態のキャニスタの模式的な断面図である。
図18】第7実施形態の内部構造体の斜視図である。
図19】本開示の作用を説明する説明図である。
図20】本開示における板状の定義を説明する図であって、図20Aが第1実施形態の内部構造体を示す斜視図であり、図20Bが板状である条件を説明する図であり、図20C及び図20Dが板状である部材の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
図1及び図2A図2Cに示すキャニスタ1は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する。キャニスタ1は、チャージポート2Aと、大気ポート2Bと、充填室3と、内部構造体4と、第1フィルタ5Aと、第2フィルタ5Bとを備える。キャニスタ1には活性炭が充填されるが、説明を容易にする目的で、活性炭の図示を省略する。
【0017】
[1-2.ポート]
チャージポート2Aは、配管を介して車両の燃料タンクに接続される。チャージポート2Aは、燃料タンクで発生した蒸発燃料を充填室3内に取り込むように構成されている。
【0018】
大気ポート2Bは、配管を通してドレンフィルター等に接続され、大気に開放される。大気ポート2Bは、蒸発燃料を取り除いた気体を大気中に放出する。また、大気ポート2Bは、外部空気(つまりパージ空気)を取り込むことで、充填室3で吸着した蒸発燃料を脱離(つまりパージ)する。
【0019】
なお、図示しないが、キャニスタ1はさらにパージポートを備えている。パージポートは、パージ弁を介して車両のエンジンの吸気管に接続される。パージポートは、充填室3内の蒸発燃料を充填室3から排出し、エンジンに供給するように構成されている。
【0020】
大気ポート2Bは、充填室3を挟んでチャージポート2A及びパージポートと対向する位置に配置されている。なお、各ポートの配置は、上記の位置に限定されない。
以下の説明において、チャージポート2Aが位置する方向を右方向、大気ポート2Bが位置する方向を左方向とし、これらに直交する方向を前後方向及び上下方向とする。これらの方向の定義はキャニスタの形状を説明するために便宜上用いるものであり、キャニスタの構成や使用態様を限定するものではない。
【0021】
[1-3.充填室]
充填室3は、チャージポート2Aから取り込んだ蒸発燃料を吸着するための活性炭が充填される空間を有している。また、充填室3は、吸着した蒸発燃料をパージポートから排出するように構成されている。
【0022】
充填室3は、左右方向に延びる中空の筒状体である。本実施形態において、充填室は円筒形である。もちろん充填室3の形状はこれに限定されることはなく、例えば充填室は断面形状が四角形や楕円形の筒状体であってもよいし、それ以外の様々な形状であってもよい。
【0023】
充填室3の右方向の端部には第1底壁3Aが設けられ、左方向端部には第2底壁3Bが設けられている。第1底壁3Aには、チャージポート2A及びパージポートが接続されている。第2底壁3Bには、大気ポート2Bが接続されている。
【0024】
充填室3の第1底壁3Aの内側には、第1フィルタ5Aが配置されている。また、第2底壁3Bの内側には、第2フィルタ5Bが配置されている。活性炭は、充填室3の第1フィルタ5Aと第2フィルタ5Bとの間の空間に充填される。
【0025】
第1フィルタ5A及び第2フィルタ5Bは、それぞれ、活性炭を通過させない一方で、蒸発燃料が通過可能に構成されている。また、第1フィルタ5Aと第1底壁3Aとの間には、グリッド7を介して第1フィルタ5Aを左方向に付勢する弾性体6が配置されている。弾性体6はバネであり、グリッド7は格子状であって、蒸発燃料が通過可能に構成されている。
【0026】
第1底壁3Aは、活性炭を充填室3内部に充填させる前には、充填室3の筒状体本体側と分離している。活性炭を充填室3に充填する工程は、充填室3に内部構造体4を挿入する工程と、キャニスタ1の右端部を上にして活性炭を投入する工程と、第1底壁3Aを充填室3の筒状体本体側に溶接等により固着する工程と、を含んでいてもよい。
【0027】
充填室3の内部では、蒸発燃料が活性炭と接触しながら、つまり活性炭層を通過しながら、大気ポート2Bとチャージポート2Aを結ぶ左右方向に流れる。即ち、左右方向が蒸発燃料の流れ方向である。
充填室3内であって、活性炭が充填される空間30には、内部構造体4が配置される。この内部構造体4によって、蒸発燃料の流れが制御される。なお空間30とは、第1フィルタ5Aと第2フィルタ5Bとに囲まれた空間である。
【0028】
[1-4.内部構造体]
(i)内部構造体の構成
図3に示されるように、内部構造体4は、第1内部部品21、第2内部部品22、第3内部部品23、第4内部部品24、及び、第5内部部品25の5つの内部部品を備える。以下の説明において、これらの5つの内部部品を指す場合に「複数の内部部品」とも記載する。また、いずれか1つの内部部品を特定せずに指す場合に、単に「内部部品」とも記載する。
【0029】
複数の内部部品21~25は、いずれも、流れ方向と直交する平面による断面形状が十字型形状であって、流れ方向に幅を有する板状の部材である。すなわち、複数の内部部品21~25は、2つの板が垂直に交差した形状である。別の言い方をすると、複数の内部部品21~25は、流れ方向に延びる基準軸Xから四方に広がる4つの板状の形状の部材を有する。以下の説明において、流れ方向と直交する平面を、「直交面」とも記載する。直交面は、上下及び前後に広がる仮想的な平面である。
【0030】
複数の内部部品21~25は、流れ方向に並べて配置される。そのため、複数の内部部品21~25それぞれは、充填室3の内部における流れ方向の異なる位置に配置される。なお、複数の内部部品21~25それぞれの右側端部は、上下方向及び前後方向の中央において左側に凹んだ凹部35が形成されている。そして、左側に位置する1つの内部部品は、その右側にある1つの内部部品の凹部35に一部が入り込んでいる。その結果、流れ方向に隣接する2つの内部部品は、流れ方向に関して一部が重複するように配置される。
【0031】
この点について、図3の第3内部部品23、第4内部部品24を用いて、蒸発燃料が左から右に流れる場合を想定して説明する。隣接する2つの内部部品において、第3内部部品23における流れ方向の最も下流側の端部36と、下流側の第4内部部品24の上流側端部37と、のうち、最も下流側の端部36は、上流側端部37の下流側に位置して、2つの内部部品同士が隣り合う。なお、端部36と上流側端部37とは流れ方向に関して同じ位置であってもよい。また/かつ、第4内部部品24の上流側端部37は、第3内部部品23における最も上流側の端部である第2の下流側端部(凹部35の底部分)と流れ方向に関して同じ位置にあって、2つの内部部品同士が隣り合う。なお、上流側端部37は第2の下流側端部よりも上流側の位置であってもよい。
【0032】
また複数の内部部品21~25は、隣り合う2つの内部部品を上記直交面に投影したときに、異なる位置となるように配置されている。図4Aに示されるように、第1内部部品21は、第2内部部品22に対して、基準軸Xを中心として45°回転させた位置に配置される。また図4Bに示されるように、第4内部部品24は、第5内部部品25に対して、基準軸Xを中心として45°回転させた位置に配置される。このように、複数の内部部品21~25は、隣接する内部部品に対して45°回転させた位置に配置されている。以上のように、複数の内部部品21~25のうちの少なくとも2つの内部部品は、流れ方向と直交する平面に投影したときに少なくとも一部が異なる位置に配置される。
【0033】
第1内部部品21における充填室3の内部空間を構成する内壁面3C側の端部、言い換えると、基準軸Xから広がる4つの板状片の外縁部分それぞれには、内壁面3Cに向かって突出する規制部31が設けられている。4つの規制部31は、内壁面3Cと接触することで、上述した流れ方向と交差する方向、即ち上下及び前後方向に関する内部構造体4の移動範囲を制限する。なお、4つの規制部31と内壁面3Cとの間には小さい隙間が形成されていても良いし、隙間が無くてもよい。また、第5内部部品25における内壁面3C側の端部にも、規制部31と同様の4つの規制部32が設けられている。
また第1内部部品21には、4つの突起部21Aが形成されており、これらは第2フィルタ5Bを第1内部部品21に固定する。
【0034】
(ii)蒸発燃料の流れ
上述した内部構造体4が設けられた充填室3内に活性炭を充填させたときに、内部構造体4の表面近傍において比較的大きな活性炭の隙間が発生する。その結果、内部構造体4の表面及びその近傍の領域において活性炭の充填密度が下がり、その領域の通気抵抗が下がる。つまり、複数の内部部品21~25に沿った領域において、蒸発燃料の流れやすい領域(以下、疎である領域と記載する)が生じる。一方、内部部品の表面から離れた領域では活性炭の充填密度が高いため通気抵抗が大きくなり、蒸発燃料が相対的に流れにくい領域(以下、密である領域と記載する)が生じる。
【0035】
ここで、内部構造体4では、複数の内部部品21~25が流れ方向に関して異なる位置に配置され、かつ、隣接する内部部品同士は直交面に投影したときに異なる位置に配置されている。そのため、疎である領域と密である領域とが流れ方向に並んで位置することとなる。例えば、第1内部部品21の表面に沿って右方向に流れる蒸発燃料は、第2内部部品22が設けられる位置まで右に移動すると、第2内部部品22の表面から離れた、活性炭の充填密度の高い部分に流れ込む。このように、疎である領域の流れ方向下流には密である領域が存在し、密である領域の流れ方向下流には疎である領域が存在する。
【0036】
(iii)その他の特徴
図1に示されるように、内部構造体4は、充填室3の内部における左右の長さよりも充分に短く形成されているため、内部構造体4と第1フィルタ5Aとの間に空間33が形成される。この空間33には、活性炭が存在する。また、内部構造体4の外側縁部のうち、規制部31及び規制部32以外の部分には、充填室3の内壁面3Cとの間に隙間34が形成される。また、複数の内部部品21~25は互いに固定されているため、内部構造体4は一つの部材として構成されている。
【0037】
[1-5.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)キャニスタ1では、内部構造体4が、充填室3の内部において疎である領域と密である領域とを流れ方向に交互に形成する。その結果、疎である領域を流れた蒸発燃料が密である領域に流れ込みやすくなり、密である領域の活性炭の利用効率を高めることができる。これにより、蒸発燃料が通過する流路の偏りが抑制され、充填室3内に充填された活性炭全体としての利用効率の向上を図ることができる。
【0038】
(1b)内部構造体4が備える複数の内部部品21~25は、板状の形状である部分が組み合わされている。複数の内部部品21~25は、板状であることにより比表面積が大きくなるので、疎である領域を広く形成することができ、また、活性炭の充填量が制限されてしまうことを抑制できる。なお、隣接する内部部品同士で流れ方向に関し重なる領域が存在するため、疎である領域が接近して配置され、通気抵抗の低下を図ることができる。
【0039】
(1c)内部構造体4が備える複数の内部部品21~25は、板状の部材の広がる方向が、流れ方向に略平行な方向である。つまり、複数の内部部品21~25は、流れ方向の長さが流れ方向と直交する方向の長さよりも大きい部分を含む。このように、複数の内部部品21~25の長手方向が流れ方向に沿うように内部部品が配置されるため、蒸発燃料の流れが複数の内部部品21~25によって阻害されてしまうことを抑制できる。
【0040】
(1d)内部構造体4が備える複数の内部部品21~25は、断面が十字型の形状である。そのため、充填室3内に疎となる領域を広く形成することができる。
(1e)内部構造体4は、4つの規制部31と4つの規制部32とを備えており、これらによって充填室3の内部での内部構造体4の移動を抑制できる。
【0041】
(1f)内部構造体4と内壁面3Cとの間には、隙間34が設けられている。そのため、例えば車両の振動に伴ってキャニスタ1が振動したときに内部構造体4が大きく振動し、それにより活性炭を破損させてしまうことを抑制できる。
【0042】
(1g)充填室3に活性炭が充填された状態において、内部構造体4の右側には空間33が形成される。これにより、第1フィルタ5Aが存在しうる範囲が左右方向に広くなる。よって、活性炭の充填量にばらつきがあっても、または、キャニスタ1の使用によって活性炭が徐々に左側に詰まっていったとしても、第1フィルタ5Aが内部構造体4に当接してしまうことを抑制できる。その結果、内部構造体4に第1フィルタ5Aが当接してしまうことに起因する活性炭への加圧不足を抑制して、弾性体6による活性炭への安定した加圧を実現できる。
【0043】
(1h)キャニスタ1は、内部構造体4を構成する複数の内部部品21~25が一つの部材として構成されている。そのため、組み付け工程においては1つの内部構造体4を充填室3に配置すればよいので、製造工程を簡易なものとすることができる。
【0044】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態のキャニスタは、第1実施形態と比較して充填室のポートの位置と内部構造体の形状のみが相違するため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0045】
図5に、第2実施形態のキャニスタ101を示す。キャニスタ101は、充填室103の内部の活性炭が充填される空間に内部構造体104を備える。充填室103は、チャージポート2Aの中心軸Aと、大気ポート2Bの中心軸Bと、が、上下方向の異なる位置に配置される点で第1実施形態の充填室3とは異なる。内部構造体104は、図6及び図7に示されるように、第1内部部品121、第2内部部品122、第3内部部品123、第4内部部品124、及び第5内部部品125を備える。これら複数の内部部品121~125は、第1実施形態の内部構造体4と同様に、2枚の板が直交した形状である。しかしながら、基準軸Cが内部構造体4のように重心に位置しておらず、下側に延び出す板状片が上方向に延び出す板状片と比較して相対的に長くなっている。そして、図5に示されるように、基準軸Cは中心軸A及び中心軸Bの両方に対して上下方向の異なる位置に配置される。
【0046】
[2-2.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、内部構造体104が内部構造体4と対応する構成を備えていることから、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1d)、(1h)と同等の効果を得ることができる。また内部構造体104は充填室103に充填される活性炭の利用効率の偏りを抑制できるため、ポートの位置が充填室103の中央からずれて配置されていても、活性炭の利用効率が低下してしまうことを抑制できる。
【0047】
[3.第3実施形態]
[3-1.第1実施形態との相違点]
第3実施形態のキャニスタは、第1実施形態と比較して内部構造体の形状のみが相違するため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0048】
図8及び図9に示されるように、第3実施形態のキャニスタ201は、充填室3の内部の活性炭が充填される空間に内部構造体204を備える。内部構造体204は、第1内部部品221、第2内部部品222、第3内部部品223、第4内部部品224、及び第5内部部品225を備える。
【0049】
複数の内部部品221~225は、それぞれ、直平面による断面がS字型であって流れ方向に幅を有する2つの板材を組み合わせた形状である。つまり、第1実施形態と比較して、内部部品が平板状ではなく曲がっている点で相違する。そして、それら複数の内部部品221~225は、蒸発燃料の流れ方向である左右方向に関して異なる位置に配置されているものを含む。また、複数の内部部品221~225は、図8から明らかなように、直交面に投影したときに、少なくとも一部が、隣接する内部部品とは異なる位置に配置される。
【0050】
[3-2.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、内部構造体204が内部構造体4と対応する構成を備えていることから、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1c)、(1h)と同等の効果を得ることができる。また、複数の内部部品221~225は曲がった板状であるが、内部構造体4と同様に充填室3内に広く延び出しており、第1実施形態の効果(1d)と同等の効果を奏する。
【0051】
[4.第4実施形態]
[4-1.第1実施形態との相違点]
第4実施形態のキャニスタは、第1実施形態と比較して内部構造体の形状のみが相違するため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0052】
図10図12に示されるように、第4実施形態のキャニスタ301は、充填室3の内部の活性炭が充填される空間に内部構造体304を備える。内部構造体304は、第1内部部品321、第2内部部品322、第3内部部品323、第4内部部品324、及び第5内部部品325を備える。また、左右方向に延びる軸部材326を備える。
【0053】
複数の内部部品321~325それぞれは、軸部材326から互いに反対方向に延び出す一対の板状片を有している。それぞれの板状片は、軸部材326と連結する部分は流れ方向に長さを有し、軸部材326から延び出した先端部は流れ方向と交差するように、捻られた板状である。つまり、それぞれの板状片は、いわゆるプロペラ状である。
【0054】
そして、それら複数の内部部品321~325は、蒸発燃料の流れ方向である左右方向に関して異なる位置に配置されているものを含む。また、複数の内部部品321~325は、図10及び図12から明らかなように、直交面に投影したときに、少なくとも一部が、隣接する内部部品とは異なる位置に配置される。
【0055】
[4-2.効果]
以上詳述した第4実施形態によれば、内部構造体304が内部構造体4と対応する構成を備えていることから、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1b)、(1h)と同等の効果を得ることができる。
【0056】
[5.第5実施形態]
[5-1.第1実施形態との相違点]
第5実施形態のキャニスタは、第1実施形態と比較して内部構造体の形状のみが相違するため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0057】
図13及び図14に示されるように、第5実施形態のキャニスタ401は、充填室3の内部の活性炭が充填される空間に内部構造体404を備える。内部構造体404は、第1内部部品421、第2内部部品422、第3内部部品423、第4内部部品424、及び第5内部部品425を備える。
【0058】
第1内部部品421、第3内部部品423、及び第5内部部品425は、直交面による断面形状が十字型であり、流れ方向に幅を有する部材である。また第2内部部品422及び第4内部部品424は、中心軸が流れ方向と平行である円筒形の部材である。そして、それら複数の内部部品421~425は、蒸発燃料の流れ方向である左右方向に関して異なる位置に配置されているものを含む。また、複数の内部部品421~425は、図13から明らかなように、直交面に投影したときに、少なくとも一部が、隣接する内部部品とは異なる位置に配置される。
【0059】
[5-2.効果]
以上詳述した第5実施形態によれば、内部構造体404が内部構造体4と対応する構成を備えていることから、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1d)、(1h)と同等の効果を得ることができる。
【0060】
[6.第6実施形態]
[6-1.第1実施形態との相違点]
第6実施形態のキャニスタは、第1実施形態と比較して内部構造体の形状のみが相違するため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0061】
図15及び図16に示されるように、第6実施形態のキャニスタ501は、充填室3の内部の活性炭が充填される空間に内部構造体504を備える。内部構造体504は、内部部品として、互いに平行な板材521A及び板材521B、板材522A及び板材522B、板材523A及び板材523B、板材524A及び板材524B、並びに、板材525A及び板材525Bを備える。これら複数の内部部品521A~525Bは、対となる板材同士が流れ方向に関する同じ位置に配置される。
【0062】
そして、それら複数の内部部品521A~525Bは、蒸発燃料の流れ方向である左右方向に関して異なる位置に配置されているものを含む。また、複数の内部部品521A~525Bは、図15から明らかなように、直交面に投影したときに、少なくとも一部が、隣接する内部部品とは異なる位置に配置される。
【0063】
[6-2.効果]
以上詳述した第6実施形態によれば、内部構造体504が内部構造体4と対応する構成を備えていることから、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1d)、(1h)と同等の効果を得ることができる。
【0064】
[7.第7実施形態]
[7-1.第1実施形態との相違点]
第7実施形態のキャニスタは、第1実施形態と比較して内部構造体の形状のみが相違するため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0065】
図17及び図18に示されるように、第7実施形態のキャニスタ601は、充填室3の内部の活性炭が充填される空間に内部構造体604を備える。内部構造体604は、直交面による断面形状がM字型形状で流れ方向に広がる内部部品621A、622A、623A、624A、及び625A、並びに、直交面による断面形状がL字型形状で流れ方向に広がる内部部品621B、622B、623B、624B、及び625Bを備える。内部部品621Aと内部部品621Bとは流れ方向に関して同じ位置に配置される。同様に、内部部品622Aと内部部品622B、内部部品623Aと内部部品623B、内部部品624Aと内部部品624B、及び内部部品625Aと内部部品625Bが、流れ方向に関して同じ位置に配置される。
【0066】
図17から明らかなように、複数の内部部品621A~625Bを直交面に投影すると、格子状となる。しかしながら図18に示されるように、複数の内部部品621A~625Bそれぞれは、屈曲する角の部分を除き、流れ方向に関して隣接する領域には他の内部部品が存在しない。すなわち、それら複数の内部部品621A~625Bには、蒸発燃料の流れ方向である左右方向に関して異なる位置に配置されている少なくとも2つの内部部品の組み合わせが含まれる。また、複数の内部部品621A~625Bは、直交面に投影したときに、少なくとも一部が隣接する内部部品とは異なる位置に配置される。
【0067】
[7-2.効果]
以上詳述した第7実施形態によれば、内部構造体604が内部構造体4と対応する構成を備えていることから、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1c)、(1h)と同等の効果を得ることができる。
【0068】
[3.その他の実施形態]
以上本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0069】
(3a)本開示の内部構造体の形状は、上述した各実施形態の構成に限定されない。例えば、内部構造体は対称形でなくともよく、分離室内で内部部品が離散的に配置されていてもよい。また内部部品の形状は特に限定されず、棒状、柱状、ブロック状などの形状であってもよい。また、内部構造体は一つの部材として構成されておらず、複数の内部部品が複数の部分に分かれて構成されていてもよい。
【0070】
以上のように、内部構造体は、少なくとも2つの内部部品が、充填室における蒸発燃料の流れ方向の異なる位置に配置されており、かつ、流れ方向と直交する平面に投影したときに少なくとも一部が異なる位置に配置されていればよい。これにより、図19に示されるように、疎となる領域701と、密となる領域702と、が流れ方向に沿って形成される。また、流れ方向の所定範囲においては、必ず疎となる領域701と密となる領域702との両方が存在することになる。このように疎となる領域701と密となる領域702とが配置されることで、蒸発燃料が広く分散して流れ、活性炭の利用効率を高めることができる。
【0071】
なお、上記各実施形態では、板状の内部部品を用いる構成を例示したが、板状とは、本開示では次のように定義できる。図20Aに示される第1実施形態のキャニスタ1の第3内部部品23を例に挙げる。流れ方向の長さをL1とし、当該部品の最大の厚さをL2としたときに、図20Bに示されるように、L1>L2となるとき、当該部品は板状の形状である。したがって、図20Cに示されるように、流れ方向に厚さが変化する構成、例えば流れ方向の両端が薄く形成されていても、当該部品は板状の形状に該当する。なお、上述した厚さL2とは、流れ方向と直交する方向の厚さである。よって、図20Dに示されるように、当該部品が流れ方向に対して角度を有する場合などには、厚さL2は当該物品の実際の厚さL3よりも厚くなる。
【0072】
(3b)本開示のキャニスタの各構成要素は、上記各実施形態で開示した構成に限定されない。例えば、充填室3の形状、チャージポート2A及び大気ポート2Bの位置及び形状は特に限定されない。充填室は、例えばL字型のように、蒸発燃料がカーブして移動するように構成されていてもよい。
【0073】
(3c)複数の内部部品の一部は、流れ方向に隣り合って配置されていてもよい。その場合、疎である領域として隣り合う部分が形成されるため、通気抵抗の高度な低減を図ることができる。
【0074】
(3d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0075】
1,101,201,301,401,501,601…キャニスタ、2A…チャージポート、2B…大気ポート、3,103…充填室、3A…第1底壁、3B…第2底壁、3C…内壁面、4,104,204,304,404,504,604…内部構造体、5A…第1フィルタ、5B…第2フィルタ、6…弾性体、7…グリッド、21,121,221,321,421…第1内部部品、21A…突起部、22,122,222,322,422…第2内部部品、23,123,223,323,423…第3内部部品、24,124,224,324,424…第4内部部品、25,125,225,325,425…第5内部部品、31,32…規制部、33…空間、34…隙間、35…凹部、326…軸部材、521A~525B…板材、621A~625B…内部部品、701,702…領域
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