IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

特許7071337タッチパネル装置を備えた分析装置、その表示制御方法、及びプログラム
<>
  • 特許-タッチパネル装置を備えた分析装置、その表示制御方法、及びプログラム 図1
  • 特許-タッチパネル装置を備えた分析装置、その表示制御方法、及びプログラム 図2
  • 特許-タッチパネル装置を備えた分析装置、その表示制御方法、及びプログラム 図3
  • 特許-タッチパネル装置を備えた分析装置、その表示制御方法、及びプログラム 図4
  • 特許-タッチパネル装置を備えた分析装置、その表示制御方法、及びプログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】タッチパネル装置を備えた分析装置、その表示制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/04845 20220101AFI20220511BHJP
   G06F 3/0488 20220101ALI20220511BHJP
【FI】
G06F3/0484 150
G06F3/0488
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019508537
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2017038860
(87)【国際公開番号】W WO2018179552
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2019-06-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017068598
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【弁理士】
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】図子 純平
(72)【発明者】
【氏名】山本 善丈
(72)【発明者】
【氏名】岩田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】石垣 雅基
(72)【発明者】
【氏名】吉村 裕之
(72)【発明者】
【氏名】下村 栄美子
【合議体】
【審判長】角田 慎治
【審判官】稲葉 和生
【審判官】小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0273477(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008011156(DE,A1)
【文献】特開2015-28768(JP,A)
【文献】特開2007-241410(JP,A)
【文献】特開2014-10568(JP,A)
【文献】特開2016-177663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/01, 3/03-3/0489,
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料分析を行う分析部と、
タッチパネル装置と、を備えた分析装置であって、
前記タッチパネル装置は、
a) 前記分析部による分析結果を表示する長方形の表示画面を備えた表示手段と、
b)ユーザによる前記表示画面へのタッチに応じてタッチ位置を示す信号を発生する抵抗膜方式のタッチセンサと、
c)前記信号に基づき、前記表示画面上でユーザによるタッチ位置の斜め方向へのスライド操作が行われたか否かを判定するスライド操作判定手段と、
d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段と、を備えた分析装置。
【請求項2】
更に、
e)前記スライド操作が行われている間に、該スライド操作の始点とユーザによる現在のタッチ位置を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である長方形を表す枠を、その時点における前記表示画面の表示内容に重畳して表示するよう、前記表示手段を制御する範囲指定枠表示手段、
を有する請求項1に記載のタッチパネル装置を備えた分析装置。
【請求項3】
前記表示拡大手段が、前記仮想的な長方形により囲まれた範囲に表示されている内容を、前記表示画面上の予め定められた領域いっぱいに表示するよう、前記表示手段を制御するものである請求項1に記載のタッチパネル装置を備えた分析装置。
【請求項4】
前記表示拡大手段が、前記仮想的な長方形により囲まれた範囲に表示されている内容を、予め定められた拡大倍率、又は前記スライド操作後にユーザにより指示された拡大倍率で表示するよう、前記表示手段を制御するものである請求項1に記載のタッチパネル装置を備えた分析装置。
【請求項5】
試料分析を行う分析部と、
前記分析部による分析結果を表示する長方形の表示画面を備えた表示手段と、ユーザによる前記表示画面へのタッチに応じてタッチ位置を示す信号を発生する抵抗膜方式のタッチセンサとを備えたタッチパネル装置と、を有する分析装置における画面表示を制御する方法であって、
a)前記信号に基づき、前記表示画面上でユーザによるタッチ位置の斜め方向へのスライド操作が行われたか否かを判定する第1のステップと、
b)前記第1のステップにおいて、斜め方向へのスライド操作が行われたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう前記表示手段を制御する第2のステップと、
を有するタッチパネル装置を備えた分析装置の表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置、その表示制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル装置は、画面上に画像や文字等を表示すると共に、ユーザが指やペン等で画面に触れることによりコンピュータへの入力操作が可能な装置であり、スマートフォンやタブレット、銀行のATMや駅の券売機などで広く用いられている(特許文献1を参照)。こうしたタッチパネル装置は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、LCD)等から成る表示装置と、該表示装置の画面上に設けられ、画面上でユーザが触れた位置を検知するためのタッチセンサとを備えており、タッチセンサによる検知機構の違いにより複数の方式に分類される。
【0003】
例えば、静電容量方式のタッチパネル装置は、指や専用のタッチペンが画面に触れることによる静電容量の変化に基づいて入力位置を検出するものであり、表面型と投影型とよばれる二つの種類がある。このうち、近年スマートフォンなどで広く使用されている投影型のものは、タッチセンサとしてマトリクス状に配列された多数の透明電極から成る二層の電極層を透明基板の上に配置し、該電極層の上にガラス等の絶縁体から成るカバーを設けて成るものを備えており、指などを画面に近づけた際における前記多数の透明電極における静電容量の変化に基づいて入力位置の座標が特定される。
【0004】
こうした投影型静電容量方式のタッチパネル装置は、画面に軽く触れるだけで入力が検知されると共に、多点同時検出を行うことができる(すなわちマルチタッチに対応できる)という特性を有している。そのため、画面を指でタッチすることで画面上に表示された文字やボタン等を選択する操作(タッチ操作)だけでなく、画面上で指を滑らせることで表示画面のスクロール等を行う操作(スライド操作)や、画面上に置いた2本の指を互いに離したり近づけたりすることで表示画像を拡大・縮小表示させる操作(ピンチアウト操作及びピンチイン操作)などの多様な入力操作を行うことができる。その一方で、投影型静電容量方式のタッチパネル装置は、構造が複雑で製造コストが高い、ゴム手袋などの絶縁物を介した操作が行えない、水滴の付着により誤作動が起こるため水を使う設備での使用に適さないといった短所を有している。
【0005】
一方、銀行のATMや駅の自動券売機などで広く使用されている抵抗膜方式(感圧式ともよばれる)のタッチパネル装置は、タッチセンサとして、それぞれ透明電極膜を備えたガラス基板と透明フィルムとを透明電極膜同士を対向させ且つ互いに離間させた状態で配置した構成のものを備えている。このタッチセンサにおいて、一方の透明電極膜のX方向の両端と他方の透明電極膜のY方向の両端(又は一方の透明電極の四隅)にはそれぞれ電圧が掛けられており、前記透明フィルムの表面が指などで押下されると、押下された位置で透明電極膜同士が接触して両者の間に電流が流れる。そこで、このときのX方向の電圧値とY方向の電圧値を検出することにより入力位置の座標を特定することができる。
【0006】
こうした抵抗膜方式のタッチパネル装置は、その原理上、多点同時検出を行うことはできない(すなわちマルチタッチに対応していない)。しかし、構造が単純で低コストに製造できると共に、ゴム手袋などの絶縁物を介した操作が可能であり、更に水滴の付着による誤作動も生じないため、例えば、ポータブル型の分析機器や水質分析等を行う環境測定機器などのタッチパネルには、この方式を採用したものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-126455号公報([0002]-[0005])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、抵抗膜方式のタッチパネル装置はマルチタッチに対応していないため、ピンチアウトによる画像の拡大操作を行うことはできない。代わりに、例えば拡大したい範囲や拡大率をユーザに数値で入力させる方法が採られる場合があるが、これは直感的な操作でなく、更に入力操作に時間が掛かるという難点もあった。
【0009】
なお、こうした問題は感圧式に限らず、マルチタッチに対応していないタッチパネル(例えば表面型静電容量方式のタッチパネルなど)に共通するものである。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、マルチタッチに対応していないタッチパネル装置であっても直感的な表示拡大操作を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係るタッチパネル装置は、
a)長方形の表示画面を備えた表示手段と、
b)ユーザによる前記表示画面へのタッチに応じてタッチ位置を示す信号を発生するタッチセンサと、
c)前記信号に基づき、前記表示画面上でユーザによるタッチ位置の斜め方向へのスライド操作が行われたか否かを判定するスライド操作判定手段と、
d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段と、
を有することを特徴としている。
【0012】
本発明において、タッチセンサは、前記表示画面上に貼り付けられる透明なシート状のものであってもよく、あるいは、前記表示画面の周縁部に配置されるものであってもよい。また、タッチ位置の斜め方向へのスライド操作とは、ユーザが表示画面上の一点をタッチし、タッチ状態を維持したままタッチ位置を前記表示画面のいずれの辺とも平行でない方向に摺動させる操作を意味する。
【0013】
上記構成から成る本発明に係るタッチパネル装置によれば、ユーザが表示画面を指やタッチペンなどで斜めになぞるだけで、該表示画面上の任意の範囲(指定範囲)が選択され、当該指定範囲に表示されている内容が拡大して表示される。そのため、従来のように数値入力によって拡大範囲を指定する必要がなく、簡便且つ直感的な表示拡大操作が可能となる。
【0014】
前記本発明に係るタッチパネル装置は、更に、
e)前記スライド操作が行われている間に、該スライド操作の始点とユーザによる現在のタッチ位置を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である長方形を表す枠を、その時点における前記表示画面の表示内容に重畳して表示するよう、前記表示手段を制御する範囲指定枠表示手段、
を有するものとすることが望ましい。
【0015】
このような構成によれば、ユーザが、前記長方形の枠を視認することにより、拡大表示の対象とする領域の位置及び大きさを確認しながらスライド操作を行うことができるため、より直感的な操作が可能となる。
【0016】
本発明に係るタッチパネル装置は、前記表示拡大手段が、
前記仮想的な長方形により囲まれた範囲(指定範囲)に表示されている内容を、前記表示画面上の予め定められた領域(所定領域)いっぱいに表示するよう、前記表示手段を制御するものとすることができる。
【0017】
このような構成によれば、斜め方向へのスライド操作により決定された指定範囲の大きさと、前記所定領域の大きさとの比率から自動的に拡大率が決定されるため、ユーザが別途拡大率を指定する必要がなく、簡便に表示拡大操作を行うことができる。なお、所定領域は、表示画面の全域であってもよい。
【0018】
また、所定領域は必ずしも長方形でなくてもよい。この場合、該所定領域からはみ出す部分が生じない最大の拡大率で指定範囲を拡大し、前記所定領域の余った部分は余白としたり、あるいは、余白ができない最小の拡大率で指定範囲を拡大し、前記所定領域からはみ出した部分はカットしたりすることが考えられる。
【0019】
また、所定領域が長方形である場合も、該所定領域の縦横比と、上述の指定範囲の長方形の縦横比とは一致しないことが多い。その場合、両者の縦横比が一致するように、縦方向と横方向とで異なる拡大率を適用するようにしてもよいが、拡大前後で縦横比が変化しないよう、縦方向と横方向で同一の拡大率を適用する方がより望ましい。縦横比を維持して拡大する場合には、例えば、拡大後の表示内容の一部を切り捨てるか、拡大後の表示内容の上下方向又は左右方向に余白を設けた上で、表示画面に表示する。
【0020】
また、本発明に係るタッチパネル装置は、前記表示拡大手段が、
前記仮想的な長方形により囲まれた範囲に表示されている内容を、予め定められた拡大倍率、又は前記スライド操作後にユーザにより指示された拡大倍率で表示するよう、前記表示手段を制御するものとすることもできる。
【0021】
また、本発明に係るタッチパネル装置の表示制御方法は、長方形の表示画面を備えた表示手段と、ユーザによる前記表示画面へのタッチに応じてタッチ位置を示す信号を発生するタッチセンサとを備えたタッチパネル装置における画面表示を制御する方法であって、
a)前記信号に基づき、前記表示画面上でユーザによるタッチ位置の斜め方向へのスライド操作が行われたか否かを判定する第1のステップと、
b)前記第1のステップにおいて、斜め方向へのスライド操作が行われたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう前記表示手段を制御する第2のステップと、
を有することを特徴としている。
【0022】
また、本発明に係るプログラムは、長方形の表示画面を備えた表示手段と、ユーザによる前記表示画面へのタッチに応じてタッチ位置を示す信号を発生するタッチセンサとを備えたタッチパネル装置における画面表示を制御するプログラムであって、
コンピュータに、
a)前記信号に基づき、前記表示画面上でユーザによるタッチ位置の斜め方向へのスライド操作が行われたか否かを判定する判定処理と、
b)前記判定処理において、斜め方向へのスライド操作が行われたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう前記表示手段を制御する表示拡大処理と、
を実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
以上で説明したように、本発明に係るタッチパネル装置、その表示制御方法、及びプログラムによれば、マルチタッチに対応していないタッチパネル装置であっても直感的な表示拡大操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例に係るタッチパネル装置の要部構成を示すブロック図。
図2】前記タッチパネル装置において斜め方向へのスライド操作がなされた際の動作を示すフローチャート。
図3】拡大前の画面表示を示す図。
図4】ユーザによるスライド操作と該操作中における画面表示を説明する図。
図5】拡大後の画面表示を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について実施例を挙げて説明する。
【実施例
【0026】
図1は、本発明の一実施例に係るタッチパネル装置の要部構成を示すブロック図である。本実施例に係るタッチパネル装置は、LCD等の既知の表示装置から成る長方形の表示画面を備えた表示部10と、表示部10の画面全域を覆うように配置された抵抗膜方式のタッチセンサ20と、これらを制御する制御部30とを備えている。
【0027】
制御部30の実体は、コンピュータであり、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)31と、RAM(Random Access Memory)から成るメモリ32と、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read Only Memory)、又はフラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置から成る記憶部33と、外部機器と通信するための入出力部34とを備えている。
【0028】
記憶部33には、表示制御プログラム40(本発明に係るプログラムに相当)が記憶されている。なお、表示制御プログラムは必ずしも単体のプログラムである必要はなく、例えば表示部10及びタッチセンサ20を制御するためのプログラムの一部に組み込まれた機能であってもよく、その形態は特に問わない。
【0029】
図1に描かれているように、表示制御プログラム40には、座標特定部41、スライド操作判定部42、範囲決定部43、グラフィック生成部44、倍率決定部45、及び表示制御部46が含まれている。これらはいずれもCPU31が表示制御プログラム40をメモリ32に読み出して実行することによってソフトウェア的に実現される機能ブロックである。
【0030】
座標特定部41は、タッチセンサ20が検知した入力信号を、入出力部34を介して取得し、該入力信号に基づいて、表示部10の画面上でユーザによるタッチ操作がなされた位置の座標を特定する。スライド操作判定部42は、座標特定部41により特定された座標の時間変化に基づいてユーザによる斜め方向へのスライド操作が行われたか否かを判定する。範囲決定部43は、スライド操作の始点及び現在のタッチ位置からユーザによる指定範囲を決定する。グラフィック生成部44は、前記指定範囲を表すグラフィックを生成する。倍率決定部45は、指定範囲の大きさ等に基づいて拡大倍率を決定する。表示制御部46は、入出力部34を介して表示部10に制御信号を送出することにより、グラフィック生成部44で生成されたグラフィックを表示部10の画面上に表示させたり、前記スライド操作により指示された範囲を拡大表示させたりする。なお、範囲決定部43、倍率決定部45、及び表示制御部46が、協同して本発明における表示拡大手段として機能し、範囲決定部43、グラフィック生成部44、及び表示制御部46が、協同して本発明における範囲指定枠表示手段として機能する。
【0031】
以下、本実施例のタッチパネル装置における拡大表示の実行手順について図2図5を参照しつつ説明する。図2は、拡大表示の実行手順を示すフローチャートである。図3図5は、表示部10による画面表示の例を示す図である。なお、表示部10の画面11上にはタッチセンサ20が重ねて配置されているが、タッチセンサ20は透明であるため図3図5では図示を省略している。
【0032】
図3は、ユーザによるスライド操作がなされる前(これを「初期状態」とよぶ)の画面表示の一例を示している。この画面表示では、表示対象のデータ群をグラフ形式で表示するグラフ表示領域12と、該データ群をテーブル形式で表示するテーブル表示領域13と、複数のGUIボタン14a~14dが表示されている。GUIボタン14a~14dのうち、「閉じる」と表示されたボタン14aにユーザがタッチすると現在の画面表示が閉じられて直前に表示されていた画面が表示される。また、「設定」と表示されたボタン14cにタッチするとユーザから各種の設定を受け付けるための設定画面が表示され、「ヘルプ」と表示されたボタン14dにタッチするとヘルプ画面が表示される。なお、「戻る」と表示されたボタン14bは、この時点では無効となっている。
【0033】
初期状態において、グラフ表示領域12には、表示対象のデータ群を表したグラフが、その全体を見やすい大きさで表示されている。この状態でユーザが画面11にタッチすると、そのタッチ位置を示す信号がタッチセンサ20から制御部30へと送出され、座標特定部41により前記信号に基づいて、画面11上における、ユーザのタッチ位置の座標が特定される。なお、ここでは画面11の左上を原点とするXY座標が設定されており、ユーザがタッチ状態を維持したまま画面11上で斜め方向に指を滑らせると、前記座標特定部41で特定されるX座標とY座標の双方が時々刻々と変化する。スライド操作判定部42は、座標特定部41で特定された座標を監視し、このような座標の時間変化があった場合に斜め方向へのスライド操作が開始されたと判定する(ステップS11でYes)。
【0034】
すると、範囲決定部43が、座標特定部41から前記スライド操作の始点の座標と現在のタッチ位置の座標を取得し(ステップS12、S13)、表示部10の画面上において、これら二つの座標位置を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形で囲まれる範囲を現在の指定範囲として決定する(ステップS14)。
【0035】
続いて、グラフィック生成部44が前記指定範囲を表す長方形の枠状のグラフィックを生成し、表示制御部46が表示部10を制御することにより、この枠(以下「範囲指定枠15」とよぶ)のグラフィックを現在の画面表示に重畳させて表示する(ステップS15、図4)。このとき、範囲指定枠15の左上の頂点がスライド操作の始点Paと一致し、範囲指定枠15の右下の頂点が現在のタッチ位置Pbと一致する。なお、図4中の始点Paを表す白丸、現在のタッチ位置Pbを表す黒丸、及びスライド操作の方向を示す白矢印は、説明のために示したものであり、実際の画面上に表示されるものではない。
【0036】
その後、画面11上におけるタッチ位置が移動(ステップS16)する毎に、ステップS13~S15の処理が繰り返し実行され、これにより画面11上に表示される範囲指定枠15が順次更新される。
【0037】
その後、ユーザがタッチセンサから指を離すと、スライド操作判定部42によってスライド操作が完了したと判定され(ステップS17)、その時点における指定範囲、すなわちスライド操作の始点Paと終点とを対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である長方形で囲まれる範囲が最終的な指定範囲として確定される(ステップS18)。
【0038】
続いて、倍率決定部45が、グラフ表示領域12の大きさとステップS18で確定された指定範囲の大きさとに基づいて、指定範囲に含まれる表示内容をグラフ表示領域12いっぱいに拡大表示するために必要な拡大倍率を決定する(ステップS19)。ここで、指定範囲の縦横比がグラフ表示領域12の縦横比と一致しない場合には、両者が一致するよう、ステップS18で確定した指定範囲を縦方向又は横方向に自動的に拡張した上で、ステップS19における拡大倍率の決定を行うようにしてもよい。あるいは、拡大後の指定範囲のサイズがグラフ表示領域12のサイズと同一となるよう、縦方向と横方向で異なる拡大倍率を決定するようにしてもよい。またあるいは、縦横比を維持し且つグラフ表示領域12からはみ出す部分がない範囲で最大の拡大率(「第1の拡大率」とよぶ)を決定したり、縦横比を維持し且つ余白ができない範囲で最小の拡大率(「第2の拡大率」とよぶ)を決定したりしてもよい。
【0039】
以上により、拡大倍率が決定されると、表示制御部46が表示部10を制御することにより、指定範囲に含まれている表示内容を、前記拡大倍率で拡大した上でグラフ表示領域12に表示させる(ステップS20)。これにより、図5に示すように、ユーザがスライド操作で指定した指定範囲(すなわち図4において範囲指定枠15で囲まれた範囲)がグラフ表示領域12いっぱいに拡がって表示される。なお、ステップS20において、拡大倍率を前記第1の拡大率とした場合、拡大後のサイズがグラフ表示領域12のサイズよりも小さくなるため、グラフ表示領域内に拡大表示された画像の上下又は左右に余白(画像のない領域)を設ける。また、ステップS20において、拡大倍率を前記第2の拡大率とした場合、拡大後のサイズがグラフ表示領域12よりも大きくなるため、拡大後の画像の上下方向又は左右方向の一部はカットされることとなる。
【0040】
このようにして拡大表示がなされると、「戻る」と表示されたGUIボタン14bが有効となり(図5)、ユーザが指などでこのGUIボタン14bにタッチすることにより、拡大表示を解除して初期状態(図3)に戻すことができる。また、こうしたGUIボタン14bを設ける代わりに、画面11をダブルタップ(所定時間内に2回タップ)することで初期状態に戻るようにしてもよい。あるいは、拡大時とは逆に、画面11上で右下から左上に向かってスライド操作することにより初期状態に戻るようにしてもよい。
【0041】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が可能である。例えば、上記実施例では、スライド操作で指定された指定範囲を、画面11上の一部の領域(上記の例ではグラフ表示領域12)いっぱいに拡大表示するものとしたが、画面11の全域いっぱいに拡大表示するようにしてもよい。また、上記実施例では、スライド操作で指定された指定範囲を、該指定範囲の大きさと表示画面上の予め定められた領域(上記の例ではグラフ表示領域12)の大きさから求められる倍率で拡大表示するものとしたが、予め指定された倍率で拡大表示するようにしてもよい。また更に、スライド操作の完了後にユーザに拡大倍率を指定させ、その倍率で拡大表示するようにしてもよい。
【0042】
また、スライド操作により、画像拡大だけでなく、画像の縮小も指示できるようにしてもよい。この場合、例えば、ユーザが左上から右下に向けてスライド操作した場合は拡大表示を行い、右下から左上に向けてスライド操作した場合は縮小表示を行うものなどとすることができる。このようにスライド操作による縮小表示を行う場合も、該スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれる範囲を指定範囲とし、該指定範囲と画面上の予め定められた領域の大きさから算出される縮小率、あるいは予め定められた縮小率(又はスライド操作後にユーザが指定した縮小率)で縮小表示を行う。
【0043】
また、上記実施例では、タッチセンサ20を抵抗膜方式のものとしたが、本発明におけるタッチセンサの方式はこれに限定されるものではなく、例えば、表面型容量結合方式のタッチセンサなど、マルチタッチに対応していない種々のタッチセンサを本発明におけるタッチセンサとして好適に用いることができる。
【0044】
なお、本発明に係るタッチパネル装置は、例えば試料分析や環境分析を行う分析部と、該分析部による分析結果を表示すると共にユーザによる入力を受け付けるタッチパネル装置とが一体に構成された分析装置、例えば、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、水質分析装置、粉塵測定装置などに適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10…表示部
11…画面
12…グラフ表示領域
13…テーブル表示領域
14a~14d…GUIボタン
15…範囲指定枠
20…タッチセンサ
30…制御部
31…CPU
32…メモリ
33…記憶部
34…入出力部
40…表示制御プログラム
41…座標特定部
42…スライド操作判定部
43…範囲決定部
44…グラフィック生成部
45…倍率決定部
46…表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5